橋梁の基礎知識と点検のポイント3 橋梁の基礎知識 ①橋梁の基本構成...
TRANSCRIPT
4
躯体
橋台 橋脚
橋台杭基礎
躯体
ケーソン基礎
※
※※
※:下部構造
上部構造本体 上部構造伸縮装置
支承
落橋防止装置
橋梁
上部構造付属物
本体
基礎
躯体
・・・ 支承、伸縮装置など
・・・ 橋台、橋脚
・・・ 杭基礎、ケーソン基礎など下部構造
【橋梁を構成する構造の名称】
①橋梁の基本構成
5
橋 長 ・・・ 両端の橋台の胸壁(パラペット)前面間の長さ
桁 長 ・・・ 主桁の長さ
支間長 ・・・ 支承の間の長さ
径間長 ・・・ 下部構造の橋台(橋脚)と橋台(橋脚)の間の長さ
桁 長
支間長
径間長
橋 長
桁 長
支間長
径間長
橋台 橋脚 橋台
胸壁(パラペット)
支承支承
主桁主桁
①橋梁の基本構成【橋梁に関する長さ】
胸壁前面
胸壁(パラペット)
胸壁前面
①橋梁の基本構成
6
横断勾配
車線 路肩側帯側帯車線路肩
車道幅員歩道幅員 車道幅員 歩道幅員
総 幅 員
歩道 歩道車道車道
地覆幅 地覆幅
分離帯
分離帯幅
①橋梁の基本構成
【橋梁の幅員構成】
①橋梁の基本構成
横断勾配
23
①主 桁
橋台や橋脚の間に渡され、
床版上の通行車両等の荷重を
支え、その力を橋台や橋脚に
伝達する。
②横 桁
荷重を数多くの主桁で支持す
るため、主桁を連結する部材。
③対傾構
風や地震等の横荷重に抵抗す
るため、主桁を相互に鉛直またはほぼ鉛直に連結する部材。(コンクリート橋には無い)
④横 構
風や地震等の横荷重に抵抗するため、主桁を相互に水平またはほぼ水平に連結
する部材。(コンクリート橋には無い)
床版
橋脚
①
②
④③
【上部構造】
舗装
③構造部材の名称と働き
24
⑤支 承(シュー)
上部構造を支え、上部
構造からの荷重を下部
構造(橋台または橋脚)
に伝達する。
⑥伸縮装置(ジョイント)
温度等の影響による桁の伸縮
を吸収する装置。
また、隙間が変化しても車両や
人の通行の安全のため設置する。
⑦落橋防止装置
地震などによって上部構造が大きく移動して下部構造(橋台または橋脚)
より落下することを防止するために設置する。
⑦
⑤
⑥【上部構造】
床版舗装
③構造部材の名称と働き
25
翼壁
胸壁
竪壁
基礎
【下部構造】
橋台(アバット、abutment)橋梁の両端に位置し、道路と橋梁を接続し、上部工からの荷重や背面の土砂を支持する。「A1」「A2」等と呼称
翼壁(ウィング)
胸壁(パラペット)
竪壁
基礎(フーチング)
基礎杭
③構造部材の名称と働き
26
【下部構造】
①
②
梁部
柱部(壁部)
基礎(フーチング)
基礎杭
①橋脚(ピア、pier)橋梁の中間に設けられ、上部工からの荷重を支える。「P1」「P2」等と呼称
②基礎
橋台や橋脚の下で荷重を支え荷重を地盤に伝える。
③構造部材の名称と働き
29
【橋梁の管理】
○ 安全で円滑な交通の確保。○ 構造物としての耐久性・耐荷性等の確保。○ 第三者被害の未然防止。
事故や落橋を防止するためには、・交通の支障となる危険の早期発見。・橋梁の異常や損傷の早期発見。
適切な補修・補強
①橋梁の管理とは・・・
30
【主な点検の種類】
日常点検日常的に行う点検。
道路パトロールや現場へ行く際の目視点検
定期点検
点検頻度を定めて行う点検。橋梁の異常および損傷状況を詳細に把握するために
行う近接目視による点検
異常時点検
地震、台風、豪雨などの災害や異常時に行う点検。
橋梁の安全性を確認するために行う点検
点 検 橋梁の異常や損傷の早期発見事故落橋
①橋梁の管理とは・・・
防止
防止
31
1)高欄、防護柵、地覆の状態
2)橋梁上の舗装の状態
3)伸縮装置の状態
4)排水装置の状態
5)道路照明、道路標識の状態
6)桁、床版の状態
7)橋台、橋脚、基礎の状態
チェックポイント1
① チェックポイント1よりも詳細な
桁、床版の状態
② チェックポイント1よりも詳細な
支承の状態
③ チェックポイント1よりも詳細な
橋台、橋脚、基礎の状態
チェックポイント2
1)~5):橋面からの点検
6)~7):橋の横や下からの 遠望目視
①~③:橋の横や下を 近接目視
② 点 検
1 まず、大きな視野で見て、
2 細部を詳しく見てみる
36
1)高欄・防護柵、地覆
◆チェックポイント1
・変形したり壊れたりしていないか
・腐食はないか
・コンクリートにひび割れはないか
・コンクリートに鉄筋は見えていないか
・高欄・防護柵や地覆にズレはないか
【点検のポイント】
利用者の安全性が確保できない
◆チェックポイント2
・橋脚が洗掘され下がっている可能性がある。
・支承が損傷している可能性がある。
②点 検
40
2)橋面上の舗装
◆チェックポイント1
・穴や大きな凹凸はないか
・亀甲状のひび割れはないか
・ひび割れから土砂等が噴出していないか
・部分補修箇所に穴や凹凸はないか
◆チェックポイント2
・床版にひび割れや抜け落ちの可能性がある
【点検のポイント】
②点 検
43
3)伸縮装置◆チェックポイント1
・本体に段差はないか・本体に亀裂や破断はないか・橋面の雨水が伸縮装置に流れ込んでいないか・隙間が異常に広かったり狭かったりしていないか・車両が通るとき大きな音がしないか
【点検のポイント】
◆チェックポイント2・橋台や橋脚が傾いたり、支承の沈下や移動している可能性がある。
②点 検
47
4)排水装置の異常
◆チェックポイント1
・土砂が詰まっている
・壊れている
◆チェックポイント2
雨水が路面に滞水し、床版や伸縮装置からの漏水等により桁、支承を腐食させる可能性がある。
【点検のポイント】
②点 検
50
5)照明、標識
◆チェックポイント1
・灯具、柱、取付部(基部)
に損傷はないか
【点検のポイント】
照明柱の取付部の腐食
利用者の安全性が確保できない
柱の腐食、取付部(ボルト、ナット)の腐食やゆるみによる倒壊等により人や車両に危害を及ぼす可能性がある。
②点 検
52
【点検のポイント】
6)桁、床版の状態
◆チェックポイント1
・コンクリート橋の場合、ひびわれ・剥離鉄筋
露出はないか?
◆チェックポイント2・ひびわれ幅、形状、間隔・剥離鉄筋露出の大きさ
②点 検
53
【点検のポイント】
④桁端部②支間1/4部 ②支間1/4部
①支間中央
⑥断面急変部
支間 L
L/2 L/4
⑤支承周辺部
6)桁、床版の状態◆チェックポイント1・ひびわれはどこに発生しやすい?
・単純げたの場合
②点 検
56
【点検のポイント】
6)桁、床版の状態◆チェックポイント1・ひびわれはどこに発生しやすい?
・PCけたの場合(ポストテンション桁)
②点検
①シースに沿ったひびわれ
⇒ グラウト注入不良②定着部の支圧応力による
ひびわれ
②①
59
【点検のポイント】
6)桁、床版の状態◆チェックポイント1
・ひびわれはどこに発生しやすい?
・床版の場合
段階① 段階③段階② 段階④ 段階⑤
(昭和42年以前の基準で建設された橋に多い)
②点 検
60
【点検のポイント】
6)桁、床版の状態◆チェックポイント1
・剥離、鉄筋露出はどこに発生しやすい?
・水の影響を受けるところに多い
・飛来塩分等の影響を受ける場所も
④主桁下面②床版先端の下面、地覆水切り部下面
①壁高欄及び地覆外面 ③主桁側面、下面
②点 検
63
②点 検(基準の変遷)年代別の主な着眼点(橋の弱点)
西暦年代別橋梁数 鋼構造物 コンクリート構造物技術基準等
[1970]以前のプレテン[1968]以前のポステンT桁の間詰め部コンクリートの落下
[1967]以前に設計・施工されたRC床版の床版ひびわれ
020406080100
120
140
1 9 2 1 年
1 9 2 5 年
1 9 2 9 年
1 9 3 2 年
1 9 3 6 年
1 9 3 9 年
1 9 4 3 年
1 9 4 7 年
1 9 5 0 年
1 9 5 3 年
1 9 5 6 年
1 9 5 9 年
1 9 6 2 年
1 9 6 5 年
1 9 6 8 年
1 9 7 1 年
1 9 7 4 年
1 9 7 7 年
1 9 8 0 年
1 9 8 3 年
1 9 8 6 年
1 9 8 9 年
1 9 9 2 年
1 9 9 5 年
1 9 9 8 年
2 0 0 1 年
2 0 0 4 年
2 0 0 7 年
2 0 1 0 年
架設
年次
橋 梁 数
15m
以上
15m
未満
[1964]以前に設計・施工された杭基礎の変位
[1953]以前に設計・施工されたケーソン基礎の変位
[1956-1972]に設計・施工された溶接橋の亀裂[1975]以前に溶接補修補強された橋梁の亀裂
[1966-1980]F11Tボルトの脱落※1966年にF11T が制定された
[1986]以前に建設された橋梁の塩害・アル骨による損傷
[2000]以前に設計・施工されたRC床版のVカット型水切り部の剥離・鉄筋露出
[1995]以前に設計・施工された橋梁の床版の劣化損傷(漏水・遊離石灰etc)
020406080100
120
140
1 9 2 1 年
1 9 2 5 年
1 9 2 9 年
1 9 3 2 年
1 9 3 6 年
1 9 3 9 年
1 9 4 3 年
1 9 4 7 年
1 9 5 0 年
1 9 5 3 年
1 9 5 6 年
1 9 5 9 年
1 9 6 2 年
1 9 6 5 年
1 9 6 8 年
1 9 7 1 年
1 9 7 4 年
1 9 7 7 年
1 9 8 0 年
1 9 8 3 年
1 9 8 6 年
1 9 8 9 年
1 9 9 2 年
1 9 9 5 年
1 9 9 8 年
2 0 0 1 年
2 0 0 4 年
2 0 0 7 年
2 0 1 0 年
架設
年次
橋 梁 数
15m
以上
15m
未満
【補足Ⅰ】[1971]以前の箱桁内は継手からの漏水が問題 → 箱桁内の腐食[1988]以前の鋼製フィンガージョイントを使用している橋梁は、排水型のジョイントを採用 → 排水樋の腐食
【補足Ⅱ】[1968]以前に施工されたポスT桁で継目が斜めの横桁 → 継目部の損傷[1979]以前の設計および[1993]以前の設計で桁長27m以下のポスT桁はPC鋼材を上縁定着を採用 → 舗装の異常
[1995通達] 橋面全面防水
[1993改訂] 道示Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ・設計荷重 A・B活荷重:25tf
たわみ制限が緩和された期間
[1975] 硫黄量の脱硫技術確立
[1980改訂] 道示Ⅰ,Ⅱ・高力ボルトF11T削除
[1986通達] 建設省通達・塩分総量規制・アル骨暫定対策
[1956改訂] 鋼道示・設計荷重 1等橋:20tf 2等橋:14tf
[1972制定] 道示Ⅰ,Ⅱ
[1939制定] 鋼道示案・設計荷重 1等橋:13tf 2等橋: 9tf
[1926規定] 道構の細則案・設計荷重 1等橋:12tf 2等橋: 8tf 3等橋: 6tf
[1967通達] RC床版の配力鉄筋・配力鉄筋量:主鉄筋の70%・最小全厚 :14cm
[1964制定] 下部構造指針・具体的な計算法の導入
[1953] ケーソン基礎の設計に池原・横山式の設計計算法が普及
64
橋梁の設計荷重の変遷
RC床版の技術基準の変遷
・設計基準の変遷
基準 後輪荷重 配力鉄筋量 最小版厚(㎝) 備考
昭和31年 鋼道路橋設計示方書
P=8.0(T-20)
主鉄筋の25%以上
14(有効版厚)
昭和42年以前の基準では配力筋が少なく、部材厚も薄い
昭和39年 鋼道路橋設計示方書
昭和42年鋼道路橋1方向RC床版の配力鉄筋設計要
領
主鉄筋の70%以上
区分 大正15年(1926年) 昭和14年(1939年) 昭和31年(1956年) 平成5年(1993年)~
1等橋 12tf(600kgf/㎡) 12tf(500kgf/㎡) 20tf(350kgf/㎡) 等級の廃止25tf(350kgf/㎡)ただし交通状況に応じてA・B活荷重に区分
2等橋 8tf 9tf 14tf
3等橋 6tf - -
②点 検 (基準の変遷)
古い橋は設計荷重が小。「床版」の厚さ・鉄筋量も小。
65
塩害に対する材料規定の変遷
基準 変遷内容
昭和53年(1978年)
「道路橋示方書Ⅲコンクリート橋編」
・塩化物量をセメント量に対してNaCl換算で0.1%以下とする。・プレテン方式のコンクリート部材及びシース内のグラウトは、砂の絶乾重量に対して NaCl換算で0.03%以下とする。
昭和61年(1986年)
建設省通達「コンクリートの塩分総量規制について」
フレッシュコンクリート中の許容塩化物量・鉄筋コンクリート部材0.60㎏/m3(塩化物イオン)とする。・プレテン方式のコンクリート部材0.30㎏/m3(塩化物イオン)とする。・コンクリートやグラウト打設前に塩化物量の測定を行う。
平成8年(1996年)~
「道路橋示方書Ⅲコンクリート橋編」
フレッシュコンクリート中の許容塩化物量・鉄筋コンクリート部材0.30㎏/m3(塩化物イオン)とする。
高力ボルトの変遷
基準 変遷内容
昭和39年(1964年) - 摩擦接合用高力ボルトのJIS化
昭和41年(1966年)「鋼道路橋高力ボルト摩擦接合設計施工指針」
F9T、F11Tを制定
昭和47年(1972年) 「道路橋示方書Ⅰ共通編・Ⅱ鋼橋編」 F8T、F10T、F11Tが記載
昭和55年(1980年) 「道路橋示方書Ⅰ共通編」 F11T遅れ破壊の危険性があるため削除
・材料基準の変遷(1)
②点 検 (基準の変遷)
古い橋は破断しやすいボルト有。塩分規定も弱い。
66
<参考> コンクリートの塩害
劣
化
過
程
鉄筋が錆びて膨張
→ ひびわれ発生
ひびわれ
要因2 凍結防止剤の塩分
要因1 海から飛来する塩分
要因3 よく洗浄せずにコンクリートに使った海砂(内在塩分)
69
・材料基準の変遷(2)
アルカリ骨材反応に対する材料規定の変遷
基準 変遷内容
昭和61年(1986年)
建設省通達「アルカリ骨材反応暫定対策について」
下記のいずれかを選択して対策とする。・安全と認められる骨材の使用。・低アルカリ形セメントの使用。・混合セメントの使用。・コンクリート中の総アルカリ量の規制。
平成14年(2002年)
国土交通省通達「アルカリ骨材反応抑制対策」
下記のいずれかを選択して対策とする。・コンクリート中の総アルカリ量の抑制。・抑制効果のある混合セメント等の使用。・安全と認められる骨材の使用。土木構造物においては、上記のうち以下を優先とする。・アルカリ総量の抑制・抑制効果のある混合セメント等の使用。
②点 検 (基準の変遷)
70
<参考>アルカリ骨材反応(ASR)
劣
化
過
程
ひび割れ
反応性骨材
ひび割れ増加、鋼材の腐食
ASRによる膨張
• 反応性を有する骨材が,強アルカリ環境下(コンクリート中)で反応してアルカリシリカゲルを生じ,水分が供給される環境下で,コンクリートに異常な膨脹やひび割れを生じさせる劣化現象
アルカリシリカゲル
Na+, K+
Si
水
水
水
74
【記録写真の撮り方】(参考例)
②点検(参考)②点検【参考】
悪い例
損傷の規模が分からない
良い例
損傷の規模が分かる
良い例
損傷の規模が分かる
悪い例
損傷の規模が分からない
× ○
× ○
②点 検 【参 考】
75
【記録写真の撮り方】(参考例)
②点検(参考)②点検【参考】
良い例
損傷の規模が分かる
悪い例
平面寸法は分かるが、深さ不明
良い例
腐食孔、反対側に白いあて板紙使用
悪い例
腐食孔が認識できない
× ○
× ○
②点 検 【参 考】