自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2...

28
2020 年3月31日 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関する調査研究事業 「伊豆ベロドロームの照明設備に関する調査研究」 一般財団法人 日本サイクルスポーツセンター

Upload: others

Post on 29-Sep-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

2020年3月31日

自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関する調査研究事業

「伊豆ベロドロームの照明設備に関する調査研究」

一般財団法人 日本サイクルスポーツセンター

Page 2: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

1 調査研究報告書 目次

1. 調査研究の目的および概要 1-1 調査研究の目的および概要 1-2 近年のLED化の潮流

2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-1 概要 2-2 自転車競技場に適したシミュレーション方法構築及び計算 2-3 照度測定方法及び結果

4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用 4-1 概要

4-2 調光機能を活用した最適運用 4-3 高速応答性を活かした最適運用

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究 3-1 VRによる調査研究の概要

3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 3-3 本施設内の建築空間のVR再現 3-4 フィールド内の任意の視点・視線方向での直視グレア(眩しさ)の評価

5. 調査研究の考察

Page 3: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

2 1-1 調査研究の目的および概要 ■事業の目的

自転車競技大会や強化合宿等、用途あるいは状況ごとに最適な照明設備のあり方を調査研究し、 自転車競技場としての競技者・指導者・観戦者・運営者の全てが満足できるような施設環境を整え、 自転車競技の普及を図るとともに関連機械工業の振興を目指す。

■調査研究の概要

①UCIカテゴリー1の基準でもある1,400lxの照度を確保したうえで、競技者のパフォーマンス発揮に支障のない照明器具の配置と色などに関する研究を行うとともに、②自転車トラック競技を広く国民に親しんで貰うためのスポーツエンターテインメント化を推し進めるライティングなどの調査研究を行う。 また、自転車競技場における照明設計のあり方についての検証を行う。

■調査研究テーマ

①-1. 国際基準を満足する最適な照明設計 ~「平均照度1400LXの確保」と「最適分布」を実現するためのシミュレーションと実測結果報告 ①-2. 3Dシュミレーション(Virtual Reality)による、自転車トラック競技空間の調査研究 ②. LED照明の特徴を活かした最適運用 ~導入するLED照明の「調光※1」及び「即時点灯」を活用した、最適運用の調査研究~

※1 照明器具の明るさを指定の範囲で自由に調節できる機能です。 調光機能を活用することで任意の明るさモードを設定し運営できることや省エネなどのメリットがある。

Page 4: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

3 1-2 近年のLED化の潮流 ■LED化の潮流

照明分野における技術革新が加速し、スポーツ施設用の照明に関しても高輝度放電灯(HID)からLED照明への置き換えが急速に加速している。LEDは従来の光源と比較し、多くのメリットがあるものの、特徴の違いから置き換えることへの懸念もあり、最適な設計により不安を解消することが重要である。 また、競技者のパフォーマンスが最大限に発揮できる照明環境を作ることに加え、観客目線では、機能性を活かしたエンターテイメント性のある観戦環境や、視聴者を意識した高品位なTV放送が実現できる撮影環境の提供など、従来では実現できなかった照明空間がLED化により可能になってきている。 運営者においても、省エネ・省メンテナンスの観点でコスト抑制のメリットは大きく、また、運営面においても調光や高速応答性の特徴を活かすことで、従来よりも最適な運用が可能となった。

眩しさ抑制

ちらつき 色再現性 【色温度 ・演色性 】

省エネ性 機能性

【調光・高速応答性】

明るさ 【最適な照明環境】

LED照明で最適な 照明環境が実現可能

※2 ※3

※2 照明器具が発する光の色を数値で表したもの。単位はケルビン(K)となります。色温度が低いほど暖色系の色を発し、高いほど寒色系の色を発します。 ※3 ある物体を照らしたときに、理想的な光源に比べ、色が忠実に再現されているかどうかの指標です。この数値が高いほど、色の見え方が自然光に近いものになります。

Page 5: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

4 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計

図1 自転車競技場のイメージ

2-1 概要 ~「平均照度1400LXの確保」と「最適分布」を実現するための最適なシミュレーションと実測結果報告~ 【1】設計照度を確保かつ、競技者のパフォーマンス発揮に支障のない照明配置を行う(図1) 【2】シミュレーションについては、自転車競技場の競技面の特性上、計算面が水平だけではなく傾斜している面が 存在するため、従来のシミュレーション方式ではなく、自転車競技場の照明環境に適した方式を開発し、採用した。 【3】照明器具設置後、競技面の照度を実測し、平均照度1400lxを満足していることを確認する。 この際に【2】同様、競技面の傾斜を考慮した測定方法で照度測定を実施する。

Page 6: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

5 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計

図2 照明器具の配置図

2-1 概要 器具配置に関しては、可能な限り選手の視線方向に照明の照射向きが重ならないよう設計。 それぞれの箇所における照射目的は以下の通り。

トラック上のストレート範囲を照射する 目的で配置。

トラック上のストレート範囲及びインフィールドを照射する目的で配置。

トラック上のコーナー範囲を照射する目的で配置。

配光※4

(光の広がり) 中角タイプ 狭角タイプ 中角タイプ

明るさ HID2kW相当 HID2kW相当 HID1kW相当

※4 通常投光器には、狭角、中角、広角の3種類の光の広がりで分類される。

用途 照度を確保し難い傾斜 したコーナー部を照射す る目的に使用している。 また、全体的に照度が 必要な箇所に配置。

直線部を照射する器具 の設置高さが低いため、 1kW相当かつ、中角型 で眩しくないよう適切に 光を分散させている。

狭角タイプの狭い光で ピンポイントに照度を 補いたい箇所に配置。 特に設置個所が高い 場合は、設置が有効。

Page 7: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

6 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-2 自転車競技場に適したシミュレーション方法構築及び計算

通常の競技場では、計算面が水平であることを想定したシミュレーションを行っているが、自転車競技場では 計算面が傾斜になる範囲があり、従来方式の計算方法では適切な結果が得られない。 この状況を踏まえ、傾斜面にも対応したシミュレーションソフトを構築し、シミュレーションを実施した。

従来計算方式 今回の計算方式

照度計算 計算点のイメージ

照明面 イメージ

特徴 計算高さは傾斜の最も低い箇所と高い箇所の平均で算出。 また、計算点の向きは、水平面と同様の向きで計算。実際の競技を行う計算面とは異なるため、正確な計算結果ではない。

トラックの傾斜を考慮し、計算点の向きを傾斜面と同様の向きとし、計算を可能とした。これにより、計算高さについては、それぞれの計算点箇所での高さ条件を考慮しての計算が可能

Page 8: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

7 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-2 自転車競技場に適したシミュレーション方法構築及び計算

P.6に示した自転車競技場に対応した計算ソフトでシミュレーションを実施。国際基準である平均照度1400lxを満足。

平均照度【lx】 最小照度【lx】 最大照度【lx】 均斉度【最小/最大】 均斉度【最小/平均】

設計値 1503 1067 2472 0.432 0.710

Page 9: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

8 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-3 照度測定方法及び結果

照度測定は、JIS Z 9127「附属書 照度測定方法」及び、実際の照度計算の計算点を参考に測定を実施する。 測定点は、横方向10m×縦方向3mを基本間隔とした各分割線の交点とし、コーナー部は、円弧を等分割した放射線上を基本間隔に分割した点とした。JIS規格に従うと測定ピッチに関しては、横方向10m×縦方向4m、測定点が68点であるが、コース上で測定点が不足するエリアがあり、測定精度の向上を考慮し測定点は84点とした。

また、シミュレーション同様に照度測定においても、従来の測定方式では正確な測定結果が得られないため、傾斜面に対応した測定機材を制作し、照度測定を実施した。

従来測定方式 今回の測定方式

測定イメージ

特徴 計算方法に合わせ、測定面も水平面と同様の向きとし、測定を行う。本施設では急傾斜の箇所もあり、人が立つことができないため、測定が困難なケースがあり、正確な測定結果が得られない。

トラックの傾斜を考慮し、測定面の向きを傾斜面と同様の向きとし測定するために、上図のように傾斜部の上方より、照度計を巻き上げる方式とした。傾斜部に人が立ち入らなくても測定が可能。

照度計

測定紐

測定棒

照度計

Page 10: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

9 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-3 照度測定方法及び結果 測定結果については、寿命初期時の測定値となるが、シミュレーションに関しては、寿命維持(4万時間後)の照度値であるため、比較する際には換算する必要がある。以下の換算値より、平均照度1400lxを満足することが確認できた。

平均照度【lx】 最小照度【lx】 最大照度【lx】 均斉度【最小/最大】 均斉度【最小/平均】

初期照度 1858 1320 2770 0.476 0.710

維持照度 1505 1069 2244 0.476 0.710

Page 11: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

10 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-3 照度測定方法及び結果 ・照度測定のイメージ

・急傾斜でない箇所は通常方式で測定

Page 12: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

11 2. 調査研究テーマ①-1 国際基準を満足する最適な照明設計 2-3 照度測定方法及び結果 ・国際大会1400lxモードの点灯イメージ

Page 13: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

12 3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究 3-1 VRによる調査研究の概要

■目的

スポーツ施設の計画において、照明配置や観客席からの見え方、眩しさ感など様々な課題の検証が必要となりますが、従来の図面上での確認では改善の効果が見えづらく、VRを活用により照明環境をビジュアル的に体験・検証することで最適な照明環境の実現を目指す。 ■VR概要

・建築周辺の簡略データの作成 ・建築屋内トラック競技空間の3Dデータの作成(トラス構造・客席など) ・照明点灯コンテンツの作成(照明パターンの3パターン) ・自由な視点移動・操作が可能なVRアプリケーションを構築します。 ※成果物のソフトウェアについては、一般的なパソコン環境で閲覧が可能。 ■VRによる調査研究

【1】本施設内の建築空間のVR再現 (照明空間、照明設置場所、キャットウォーク上、観客席からの見え方、照明パターンの再現) 【2】フィールド内の任意の視点・視線方向で、直視グレア(眩しさ)の評価

Page 14: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

13

3-3 本施設内の建築空間のVR再現(照明空間) ■鳥瞰からの視点 ■トラックからの視点1

■インフィールドからの視点 ■トラックからの視点2

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 15: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

14

3-3 本施設内の建築空間のVR再現(観客席・判定室からの見え方) ■観客席からの視点1 ■観客席からの視点2

■観客席からの視点3 ■判定室からの視点

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 16: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

15

3-3 本施設内の建築空間のVR再現(キャットウォーク上) ■キャットウォーク上の視点1 ■キャットウォーク上の視点2

■キャットウォーク上の視点3 ■キャットウォーク上の視点4

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 17: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

16

3-3 本施設内の建築空間のVR再現(外構) ■外構の視点1 ■外構の視点2

■外構の視点3 ■外構の視点4

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 18: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

17

3-3 本施設内の建築空間のVR再現(照明パターンの再現) ■国際大会1400lxモード

■練習600lxモード ■イベント600lxモード

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 19: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

18

1 3

6 5

4

3-4 フィールド内の任意の視点・視線方向での直視グレア(眩しさ)の評価

2

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 20: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

19

視点① 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:38 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:0台 以上より条件を満足

視点② 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:37 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:0台以上より条件を満足

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 21: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

20

視点③ 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:0 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:0台以上より条件を満足

視点④ 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:40 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:2台 競技者の通常の目線ではなく、見上げた際には眩しさを感じる可能性があるがGR値は満足。

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 22: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

21

視点⑤ 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:33 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:0台以上より条件を満足

視点⑥ 【実際の写真】 【VRデータ】

GR:0 シミュレーション上、眩しさが懸念される照明器具の台数:0台以上より条件を満足

3. 調査研究テーマ①-2 3Dシミュレーションによる競技空間の調査研究

Page 23: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

22 4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用 4-1 概要 ~導入するLED照明の「調光」及び「即時点灯」を活用した、最適運用の調査研究~ 【1】表1にLEDの主な特徴を示した。LEDには、従来光源にはない調光機能や高速応答性の特性があり、 これらを活用した最適運用を実現する。 【2】本施設のように国際大会以外にも複数の運用パターンで使用される際に、従来は照明を消灯し、照度を下げて 照明空間を構築していたが、LED化により消灯のみではなく、調光で従来よりムラのない照明空間の構築を行う。 【3】また、従来のHID光源は点灯後や再点灯に照明環境が安定するまでに時間を要しており、運用上点灯時間 の最適化が困難であったが、LED化により瞬時での点灯・再点灯が可能なため、無駄な電力を削減を実施する。

従来光源(HID) LED

調光機能 無し PWM調光可能型5~100%

高速応答性 安定時間:約5分 再始動時間:約10分

瞬時点灯 瞬時再点灯

表1 従来光源とLEDの性能比較

Page 24: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

23

108台を使用 160台を使用し、調光

4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用 4-2 調光機能を活用した最適運用 従来の一部を消灯し、照明パターンを構築した空間と、調光で照明パターンを構築した空間の比較を行う。 下図は国内大会1000lxの比較検証結果である。左図は全灯点灯せず108台で照度を確保した場合、右図は全灯160台を調光した場合である。 LEDの調光機能により、均斉度を確保したまま、設計照度確保ができる有用性が認められた。

Page 25: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

24

UPS UPS UPS

パターン C11 N26 C12 N23 N6 N19 N4 N2 N1 C4 N11 C5 N27 N25 N24 N22 C1 N21

一般開放 100lx P1 30% 30% 10% 10% 10% 10% 10% 10% 10% 10% 30% 30% OFF OFF 15% OFF OFF 15%

練習時① 300lx P2 40% 40% 25% 25% 25% 25% 25% 25% 25% 25% 40% 40% 20% 25% 20% 25% 20% 20%

練習時② 600lx P3 70% 70% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 70% 70% 40% 45% 40% 45% 40% 40%

イベント① 300lx P4 OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF 50% OFF OFF 50% OFF OFF

イベント② 600lx P5 OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF 90% OFF OFF 90% OFF OFF

国内大会① 800x P6 80% 80% 50% 50% 50% 50% 50% 50% 50% 50% 80% 80% 45% 50% 45% 50% 45% 45%

国内大会② 1000lx P7 100% 100% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 100% 100% 60% 60% 60% 60% 60% 60%

国際大会③ 1400lx P8 100% 100% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 100% 100% 85% 85% 85% 85% 85% 85%

パターン N20 N15 C2 N5 N18 N14 N17 N3 N13 C3 N16 N7 N8 N9 N10 N12

一般開放 100lx P1 OFF OFF OFF 15% OFF OFF 15% OFF OFF OFF 15% OFF OFF 15% OFF OFF

練習時① 300lx P2 20% OFF 20% 20% 20% OFF 20% 20% OFF 20% 20% 20% 25% 20% 25% 20%

練習時② 600lx P3 40% OFF 40% 40% 40% OFF 40% 40% OFF 40% 40% 40% 45% 40% 45% 40%

イベント① 300lx P4 OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF 50% OFF OFF 50%

イベント② 600lx P5 OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF OFF 90% OFF OFF 90%

国内大会① 800x P6 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 45% 50% 45% 50% 45%

国内大会② 1000lx P7 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60% 60%

国際大会③ 1400lx P8 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85% 85%

N6

C4

C5

N2

C11

N26

C12

N23

N19 N4

N1

N11

N17 N5 C2 N20

N22

N25

N27

N24

N21

C1

N13

N7

N16

N14 N18 N15

N3

N8

C3

N10

N12

N9

4-2 調光機能を活用した最適運用(各運用モードにおける調光率の検討例) 4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用

Page 26: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

25

4-2 調光機能を活用した最適運用

・納入する調光制御設備

図6 アリーナ部照明スイッチ 図5 調光制御設備

納入写真

4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用

Page 27: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

26 4. 調査研究テーマ② LED照明の特徴を活かした最適運用 4-3 高速応答性を活かした最適運用 HID器具とLED器具の高速応答性について以下イメージ図を示す。従来のHID器具にて運用する場合は、点灯時 及び再始動時に時間を要し、重要な興行時には前もって点灯しておくなど省エネの観点からも好ましくない。 一方LED器具では、瞬時点灯・瞬時再点灯が可能であるため、従来のような運用の煩わしさの解消や明転と暗転を 織り交ぜた演出運用など、運用面の最適化や付加価値化が可能となる。

■HID器具の場合

■LED器具の場合

100%点灯

100%点灯

100%点灯

100%点灯

消灯

消灯 フル点灯せず、 安定に時間を要する

Page 28: 自転車競技の競技運営力向上に資する 装置・機器の開発に関 …3-2 環境計画支援ツール「Virtual Reality」の特徴 . 3-3 本施設内の建築空間のVR再現

27 5. 調査研究の考察・今後の展望 ■調査研究の考察 最新のLED器具の最適配置かつ最適照射を行うことで、国際大会の照度基準である1400lxを満足しつつ、均斉度【最小/平均】:0.7を満足する照明環境を実現した。また、従来は事前のシミュレーションや設置後の照度測定に関しては、傾斜に対応したものではなかったが、高い精度が要求される競技場に適した計算方法及び測定方法を実施した。これらの最適設計に加え、LEDの特徴である長寿命や省メンテナンスを活かすことで、長期間に渡り最適な運営が行う ことが可能と推測される。 また、調光機能を活用して、運用パターンの最適化を行うことが可能である。従来光源では、省エネの観点より、試合モード以外では、可能な限り減灯し照明パターンを構築していたが、LEDは省エネ性が期待されるので、将来的には練習モードでも試合の明るさに近付けた照度モードも調光により容易に構築可能である。瞬時点灯・瞬時再点灯が可能であるため、プロジェクターなど演出器具を用いる際などでも効率的な運用が可能となる。 ■今後の展望 今後は、照明空間を従来の図面上で検証するのではなく、VRを活用することで、件名を推進する上での課題の見える化が可能となる。特に本施設のような傾斜が急であったり、トラスの形状が煩雑である場合、図面上では課題を認識及び共有が困難であるため、スポーツ施設でのVRの活用は有用であると推察される。 また、本コンテンツは関係者間でリアルタイムに課題を共有することが可能であり、事業フェイズに応じてアップデートが可能なので、将来的に仮設で演出機器を導入する場合や新たに照明機器を導入する際の配置場所の検討、照明以外の付帯設備を導入する際の配置やサイズ感の確認、イベント開催時の利用形態や光演出イメージの検証など、様々な場面で活用が可能である。