近距離無線を用いた交差点安全支援 - minister of …...1 2015/02/17...
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2015/02/17
近距離無線を用いた交差点安全支援
愛知工科大学 工学部 情報メディア学科 宇野新太郎
中部IT融合セミナー資料
目次 1. 研究の背景 2. 従来研究 3. 採用した近距離無線 4. 交差点における実証実験(1) 5. 提案方式の課題 6. 920MHzの特徴 7. システム構成図 8. 交差点における実証実験(2) 9. 実証実験(1)と実証実験(2)の比較 10.近距離無線を用いた歩行者安全支援 11.まとめ 12.今後の課題 2
1. 研究の背景 交通事故内訳(2012年)
出会い頭事故は2番目に多い。
3 http//www.ms-ins.com/rm_car/jiko_data.pdf
出会い頭事故内訳 • 約7割が信号機のない交差点で発生
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ITARDA,No.69,2007
事故の当事者の組み合わせ • 自動車対自動車だけでなく、自動車対自転車の事故も多い。
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• 交差点出会い頭事故数は 2番目に多い。 • その7割が信号機のない交差点で発生している。 • 愛知県12年連続交通事故死者数ワーストワン
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信号機のない小規模交差点での出会い頭衝突 防止システムの早期実現が求められている。
2.従来研究 ①車と道路の間の通信を利用したDSRC(Dedicated Short Range Communication)や700MHz帯を利用したシステムなどが検討されて、 大都市で実証実験が始められている。これらは、大規模交差点が中心 であり、消費電力や開発コストも大きい。
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②ASVにおけるミリ波衝突防止装置や、車車間通信による出会い頭 衝突防止警報装置などが検討されている。衝突防止として、 一部実用化も行われているが、見通しの悪い交差点をすべてカバー できない。
DSSS
• 光ビーコン、電波ビーコンを使い、出会い頭衝突防止のための実証実験をおこなっている。
• VICSの発展形であり、幹線道路が対象となっている。
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http://www.vics.or.jp/service/dsss.html
700MHzの適用例
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https://www.toyota.co.jp/jpn/tech/its/infrastructure/
実用化されているASV • ミリ波レーダー
ミリ波レーダーを使用して追突防止を図る 車線変更時、車が接近していたら警告 車間距離の把握
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http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/index.html
3.採用した近距離無線
• 安価な無線通信手段を使って実現ができないかを検討した結果、ZigBeeに着目した。ZigBeeは、IEEE802.15.4で規格が検討されている2.4GHzの安価で消費電力の少ない近距離無線通信規格の1つであり、センサネットワークをはじめ今後の進展が期待されている通信手段である。
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DSRCとZigBeeとの比較
DSRC(理論値) ZigBee(理論値) 周波数 5.8GHz 14ch 2.4GHz 16ch
通信方式 ASK及びQPSK O-QPSK
伝送距離 数m~30m 見通し100m
伝送速度 1024kbps 20-250kbps
指向性 狭域 全方位
トポロジ スター・P-P スター・拡張スター・メッシュ
• ZigBeeは伝送速度が遅いが、伝送距離の面でメリットがある • ZigBeeのコスト、消費電力ではDSRCの1/10以下
ZigBeeとWLANとの比較
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• WLANのサービスはすでに種々普及しており、WLANを使用した場合に、安全支援サービス用データが、チャネル不足により送信できなくなったり、通信時間が非常にかかる場合がある。
• WLANは、車車間通信のようなP-P通信、アクセスポイントを介したP-MP通信に向いているが、マルチアクセスポイント間通信を考慮したネットワーク構成には不向きな場合がある。
• WLANは広帯域、高速通信が可能であるが、安全支援では大量のデータ送信は不要である。
• ZigBeeのチャネルは16個あり、WLANと重ならない周波数選択が可能であり、重なったとしても共存が可能である。
ZigBeeのトポロジー
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出典:ZigBee Alliance
管制デバイス(ZC) 中継デバイス(ZR)
末端デバイス(ZED)
研究手順
1. フィージビリティテスト(路側にZC, 自転車、自動車にZEDを置き、低中速で移動するZEDとZC間の接続実験)
2. ソフトウェアを作りこみ、交差点において自転車、自動車が近づいていることを通知する他車接近通知システムに関する実証実験
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ZigBeeを交差点安全支援に適用する
フィージビリティテスト • ZigBee端末を自転車、自動車に搭載し、路側にコーディネー
タを置き、移動しても通信が確保できるかどうかのフィージビリティテストを行った。その結果、低中速度でも通信の目安である-80dBm以上であることが確認された。
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-80
-70
-60
-50
-40
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
速度[km/h]
通信強度[dBm]
:ZigBeeコーディネータ(ZC)
:ZigBeeルーター(ZR)
:ZigBee端末(ZED)搭載車両
:Zigbee無線によるコネクション
4.交差点における実証実験(1)
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信号機のない交差点 • 交差点-路側器約35m、路側器アンテナ高0.7m
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蒲郡市緑地公園
他車接近通知 • 2台の車を使い、速度を変えて、下の通知が出るかどうか、
また、通過後消えるかどうかの試験を行った。
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車載機
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路側機
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日付・速度 試行回数 成功回数 10/26 歩行者-自転車 1 1 10/31 歩行者-自動車
(徐行) 1 1
11/2 自動車-自動車
(40k/h) 1 1
11/14 (40k/h) 2 2 11/21 (40k/h) 1 1 (60k/h) 1 1 12/7 (60k/h) 1 1 12/14 (80k/h) 2 2 1/16 (60k/h) 4 4
実証実験結果(1)
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実証実験評価
• ネットワーク参加時間(ZigBee端末がネットワーク参加要求を送信し、参加成功までの時間)としては、実証実験において、1233msec~1272msecとなった。
• 車両から他の車両への通知時間は、156msec~210msecとなった。車両から他の車両への通知時間は、156msec~210msecとなった。これは、総務省で検討されている700MHz帯安全運転支援通信
システムにおける技術要件において「システム遅延時間+システム処理時間が400msec以内であること」を満たしている。
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5.提案方式の課題 • 2.4GHz帯はWLANとBluetoothと同じ周波数帯であり、高ト
ラフィック下では、ZigBeeのチャネルが使えない場合が想定される。
• ZigBeeは初めにネットワーク参加を行う必要があり、その分の通信時間が必要となる。
• ZigBeeの通信距離は高々100mぐらいであり、それ以上の
通信距離があれば、少ない路側装置で交差点のかなり手前から通知が可能となる。
HEMSで注目を集めている920MHzに着目 車載器と路側器との通信に採用
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6.920MHzの特徴 • ISMバンド • 電波の到達距離が長い • 回り込み特性がよい • 低消費電力 • ZigBeeよりは低速(最大100Kbps)
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920MHz電波特性
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橋爪、“920MHz帯無線技術の動向とスマートコミュニティへの適用例”、ZigBee フォーラム2014
920MHzの使用例
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藤原、“センサネットワークによる道路監視システムの開発”、 ワイヤレステクノロジーパーク2013 センサネットワーク
7.システム構成図
ZigBeeコーディネータ
ZigBeeルータ
路側920MHz帯
車(車載920MHz帯)
通信の流れ
• ZigBeeルータと920MHz親機は 同じPC上で動作
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システムの概要 交差点に車が進入
路側920MHzと車載920MHzが通信
路側920MHzが受信したデータを ルータがコーディネータへ送信
コーディネータは車載920MHz宛に 他車情報を送信
車が交差点を通過したら ネットワークから離脱
ZigBeeコーディネータ
ZigBeeルータ
路側920MHz帯
車(車載920MHz帯)
通信の流れ
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各部の役割
• ZigBeeコーディネータ – 各ZigBeeルータの管理 – 車載器宛に他車の情報を送信
• ZigBeeルータと路側920MHz装置
– データを変換し、送信
• 車載920MHz帯装置 – 路側920MHz装置の検索、 – 受信データを基に、ドライバーへ警告
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使用モジュールとI/Fボード
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ZigBeeモジュール 920MHzモジュール
I/Fボード(電池駆動) NEC/NECエンジニアリング社製
8.交差点における実証実験(2)
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愛知県額田郡幸田町の信号機のない小規模交差点
路側器の設置場所
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ZC
路側器
路側器 路側器
実験手順 ①交差点に、各モジュールを設置する。 ZC、路側器間では35~45mがデータ送信での最適な距離と
なる。また、モジュールの高さ(アンテナ高)は、路側器:約1.8m、車載器:約0.8~1m、ZC:0.7mとする。
送信出力は10mWとした。 ②路側に設置されているモジュール間でネットワークを構築す
る。 ③車載器が乗っている車両が通過ごとにログ監視 車載器が乗っている車両の車速は、西側:30~40Km/h(基
本40km/h他車とすれ違い時減速)、南側:20Km/hとする。
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車載器表示
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路側器
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結果
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速度 試行回数 成功回数 成功率
20~40km/h 6 6 100%
6回中6回で、交差点からおよそ150m手前で、警告の表示があり 安定した結果が得られた。
9.実証実験(1)と(2)の比較
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参考 停止時間(秒) = 反応(空走)時間(秒) + 制動時間(秒) 時速40Kmの場合、16m, 時速50kmの場合 23m http://www5d.biglobe.ne.jp/Jusl/Keisanki/JTSL/TeisiSyasoku.html
実証実験(2)においても、総務省で検討されている700MHz帯安全運転支
援通信システムにおける技術要件において「システム遅延時間+システム処理時間が400msec以内であること」を満たしている。
警報表示 伝搬遅延 実証実験(1)(ZigBee) 交差点40m付近 ネットワーク参加時間
1233~1272msec データ伝送遅延 156msec~210msec
実証実験(2)(ZigBee+920MHz) 交差点150m付近 94~360msec
小型化について
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降雨対策について
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10.近距離無線を用いた歩行者安全支援 (目的)信号機のない小規模交差点で、車と歩行者(高齢者、児
童)の衝突事故を防ぐ。 (方法) 1.歩行者にZigBee端末(ZED)を持たせる。 2.交差点にZigBeeコーディネータ(ZC)を置き、さらには ZCにLEDパネルを接続する。 3. 歩行者が交差点に近づくことにより、 (3-1)ZEDがネットワーク参加。 (3-2)LEDにて歩行者接近通知を表示。 (3-3)ZEDネットワーク離脱後に表示を消去。
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提案内容(概念図)
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歩行者接近中
ZC
車
ZED
工場内安全支援システム、歩行者安全支援 システムにおける端末
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NECエンジニアリング製
11.まとめ • ZigBeeを使った交差点安全支援について、自転車対歩行者、車(徐行)
対歩行者、車対車 (40km/h,60km/h,80km/h)において、成功率10割で、歩行者あるいは、他車が近づいていることを車載器につながるPC上に警告表示することができた。
• ZigBeeの問題点を解決するために、新しく920MHz帯を車載器、路側器に導入した。
• 実際に実証実験を行い、交差点よりおよそ150m手前で他車接近通知ができることを確認した。
• 車対車だけでなく、車対自転車、車対歩行者にも適用が可能である。 • 今後は、より詳細なデータ取得並びに実証実験を継続的に行っていく予
定である。 • 小型化、降雨対策、商用化ステップについても同時に検討を進めていく
予定である。
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12.今後の課題
• 車載機のない車への対応 →車載器無しバージョンの開発 →車載器搭載の車を発見したら交差点 で表示するなど • 電源はどうするか →電池駆動であると保守が大変 →電柱や太陽光などの利用 • Keep aliveはどうするのか →遠隔で確認できるようにする
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• 今回参考までに、お手元に1枚のリーフレットを入れさせていただきました。
• ご関心のある方は下記までご連絡ください。 愛知工科大学工学部情報メディア学科 宇野新太郎 0533-68-1304(内線7810) [email protected]
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ご清聴ありがとうございました。
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