公募制推薦入試 基礎学力検査(国語) · 親 が 死 ん だ 場 合 だ っ た ら...

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159 国︲1 A方式・B方式とも、国語に関する基礎学力を検査する問題です。漢字・語彙・文法・文学史・ 古典常識などの基礎的知識を問う設問と、文脈を正確に読み取る力を多角的に試す設問とを中心 にして、全体を構成しています。解答は完全にマークシート方式で、漢字の問題も含め、すべて の設問が選択肢から選ぶ形式になっています。ですから、問題文のみならず、それぞれの選択肢 をも的確に把握する必要があります。特に選択肢が少し長めの文になっている場合には、内容を よく比較対照して相互の違いを確実に見極めなければなりません。そうした分析力も同時に試し ています。どの学部・学科においても、言葉を用いて思考し、言葉によって自らの考えを表現し ます。「国語」は、基本となる母国語について、さらには言葉というもの自体について、広く深 く学ぶ科目です。すべての基礎になる重要なものという自覚を持って、「国語」の勉強に取り組 んでください。 A方式 国語①は現代文の問題です。問題文は、語りかけるようなリズムで平易に書かれた文章ですの で、読みやすかったのではないでしょうか。ただ、その分、細部に亘ってより緻密に読み取るこ とが求められます。問一の漢字の問題では、1と2が正答率 50%を下回っていました。何とな く知っているという程度では、こうした形で出題されると迷ってしまうことが少なくないでしょ う。着実に習得するよう心掛けてください。問四・問五は、予想通りよくできていました。逆に これらで大きく間違うようでは話にならない、ということになります。問六以降の内容把握の設 問では、⓲が最も正答率が低かったです。問題文を正確に読み取って、かつ、誤答の選択肢に惑 わされないように気をつけてください。 国語②の古典の問題文は、どこかで聞いたことのあるような物語、という感じだったのではな いでしょうか。《A》と《B》との相関関係を確認しながら、物語の展開を正確に把握する必要 があります。問一の中では、㉜と㉝の正答率が 50%を下回っていました。語感に振り回されな いようにしましょう。㊲が、全設問の中で正答率が最も低く、20%台でした。文法は正確な読解 に不可欠なものなので、しっかり習熟しておいてください。問六は指示語の問題ですが、指示内 容が単純な形で示されているわけではありません。物語全体の状況から推察する必要があります。 ㊼のような基礎的用語やのような古典常識も、着実に把握しておいてほしいものです。 B方式 国語①の問題文は、内容を理解するのが少し難しかったかもしれません。しかし、注を多く加 えたり、設問を工夫したりしていますので、解答するのは特に困難ではなかったでしょう。感覚 的にではなく論理的に読解するように心掛けてください。問三の空所補充問題は、選択肢の方が 一つ多い点、注意が必要です。問六や問八では、「赤ん坊」と「幼い人(もの)たち」との境界 についての作者の考えを、正確に読み取ることが求められています。問十二の正答率が低く、特 に㉔は 10%台でした。口語文法は、あまり勉強していない人が多かったのだと思われますが、普 段使用している言葉の文法すなわち仕組みを把握しておくことは、一般常識的な教養としても必 要不可欠であるでしょう。 国語②では、袈裟御前と盛遠を中心として、登場人物の心情や意図を充分に汲み取りながら、 物語の展開を正確にたどっていく必要があります。選択肢の和歌に対する理解も求められている からなのでしょう、㊴の正答率が 20%を下回っていました。問四もあまり出来ていませんでした。 波線部A以下の盛遠の言葉を正確に把握するとともに、選択肢の内容を充分に吟味しなければな りません。問六は、古典常識を視覚的にも理解しておくことの必要性を示しています。㊾は特に 正答率が低く、約 10%でした。古典文学さらには近代文学を読解するうえで、漢文は不可欠の ものですから、国文学科に入学しようとするなら、入学前にある程度は勉強しておいてください。 公募制推薦入試 基礎学力検査(国語) 出題のねらい

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公募制推薦入試

(国   語)

国︲1

 A方式・B方式とも、国語に関する基礎学力を検査する問題です。漢字・語彙・文法・文学史・古典常識などの基礎的知識を問う設問と、文脈を正確に読み取る力を多角的に試す設問とを中心にして、全体を構成しています。解答は完全にマークシート方式で、漢字の問題も含め、すべての設問が選択肢から選ぶ形式になっています。ですから、問題文のみならず、それぞれの選択肢をも的確に把握する必要があります。特に選択肢が少し長めの文になっている場合には、内容をよく比較対照して相互の違いを確実に見極めなければなりません。そうした分析力も同時に試しています。どの学部・学科においても、言葉を用いて思考し、言葉によって自らの考えを表現します。「国語」は、基本となる母国語について、さらには言葉というもの自体について、広く深く学ぶ科目です。すべての基礎になる重要なものという自覚を持って、「国語」の勉強に取り組んでください。

 A方式 国語①は現代文の問題です。問題文は、語りかけるようなリズムで平易に書かれた文章ですので、読みやすかったのではないでしょうか。ただ、その分、細部に亘ってより緻密に読み取ることが求められます。問一の漢字の問題では、1と2が正答率 50%を下回っていました。何となく知っているという程度では、こうした形で出題されると迷ってしまうことが少なくないでしょう。着実に習得するよう心掛けてください。問四・問五は、予想通りよくできていました。逆にこれらで大きく間違うようでは話にならない、ということになります。問六以降の内容把握の設問では、⓲が最も正答率が低かったです。問題文を正確に読み取って、かつ、誤答の選択肢に惑わされないように気をつけてください。 国語②の古典の問題文は、どこかで聞いたことのあるような物語、という感じだったのではないでしょうか。《A》と《B》との相関関係を確認しながら、物語の展開を正確に把握する必要があります。問一の中では、㉜と㉝の正答率が 50%を下回っていました。語感に振り回されないようにしましょう。㊲が、全設問の中で正答率が最も低く、20%台でした。文法は正確な読解に不可欠なものなので、しっかり習熟しておいてください。問六は指示語の問題ですが、指示内容が単純な形で示されているわけではありません。物語全体の状況から推察する必要があります。㊼のような基礎的用語や�のような古典常識も、着実に把握しておいてほしいものです。

 B方式 国語①の問題文は、内容を理解するのが少し難しかったかもしれません。しかし、注を多く加えたり、設問を工夫したりしていますので、解答するのは特に困難ではなかったでしょう。感覚的にではなく論理的に読解するように心掛けてください。問三の空所補充問題は、選択肢の方が一つ多い点、注意が必要です。問六や問八では、「赤ん坊」と「幼い人(もの)たち」との境界についての作者の考えを、正確に読み取ることが求められています。問十二の正答率が低く、特に㉔は 10%台でした。口語文法は、あまり勉強していない人が多かったのだと思われますが、普段使用している言葉の文法すなわち仕組みを把握しておくことは、一般常識的な教養としても必要不可欠であるでしょう。 国語②では、袈裟御前と盛遠を中心として、登場人物の心情や意図を充分に汲み取りながら、物語の展開を正確にたどっていく必要があります。選択肢の和歌に対する理解も求められているからなのでしょう、㊴の正答率が 20%を下回っていました。問四もあまり出来ていませんでした。波線部A以下の盛遠の言葉を正確に把握するとともに、選択肢の内容を充分に吟味しなければなりません。問六は、古典常識を視覚的にも理解しておくことの必要性を示しています。㊾は特に正答率が低く、約 10%でした。古典文学さらには近代文学を読解するうえで、漢文は不可欠のものですから、国文学科に入学しようとするなら、入学前にある程度は勉強しておいてください。

公募制推薦入試 基礎学力検査(国語)

出題のねらい

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158 国︲2

子に先立たれた親、恋人を亡くした人、妻を、夫を亡くした人……。

B誰かが亡くなったとき、日本人が行ってきたのが弔いで、具体的には「お逮夜」というかたちをとってきました。「お逮夜」

というのは、誰かが亡くなった時に、週が経過するごとに、ヘンな言い方ですがテーマを決めて行うものです。最初の週は近

しんせき

親の者や親戚だけで行う。二週目は、たとえば亡くなった人が一番お世話になった人を呼んで行う。三週目は近所の人を、四

週目は職場でお世話になった人を呼ぶ。そして五週目は弔う側、つまり死なれた側の関係者を呼ぶ、というようにして、四十九

日、

忌み明けまで七週、行います。

そのときに、一〜二週のうちは、父親が死んだ場合だったら、父親のことが話題になり、生きていたころのこと、思い出を

語るたびにみな涙をこらえられない。

信じられない、今でもふっと現れそうな気がするという段階です。

そういうことを一週間、二週間、三週間と繰り返しているうちに、四週目ぐらいから、あの人はこういう人だったなとか、

こんな失敗もしたなとか、少し距離を置いた話し方もできるようになる。

五週目ぐらいになってくると、父親の話は半分かそれ以下になって、喪主の友だちを呼んだら、「お前、最近どうしてんの

や?」というような、自分たちの普段の生活や、久しぶりに会った人とお互いの様子を聞き合うような話になってくる。六週

目ぐらいになると、故人の話は

出てこない。いくらか笑顔も出てきて、冗談を言ったり、ということもあるでしょ

う。それで四十九日あたりで、もう一回しめやかに、お経も長くあげてもらう。そして百aカ日まで少し間を置いて、納骨し、

一周忌を行って締める。そんな感じで、弔いが進んでいきます。

さんず

みたま

建て前としては、故人が三途の川をちゃんと渡って、亡くなった御魂が道に迷わずに浄土へ向かうように見送るという儀礼

です。でもほんとうを言えば、実は死んだ人のためにやっているのではなく、死なれた人のためにある儀礼です。お坊さんも、

そのつもりで来ている。最初は厳粛に、お経のあとはみなをなだめるように、あるいはbサトすようにして講話を話してくれま

すが、最後のほうでは、お坊さん自身もお経のあとには世間話をしたりする。

故人が

いないということ、故人の死を、死なれた人が納得して受け入れるところまで、マラソンの伴走のように、

紙―36― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 2

次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

様々な喪失のなかでもとくに、親を亡くすこと、あるいは子どもや兄弟姉妹を亡くす、友人を亡くすこと、大切な人を亡く

すことは、何より大きな喪失の体験です。

「死なれる」という言い方が日本語にはあります。これはAすごく不思議な表現です。

日本語には、ヨーロッパの文法からするとありえない表現が少なからずあります。ヨーロッパ系の文法では、いわゆる受動

形は他動詞にしかありません。「殴る」に対して「殴られる」、「押す」に対して「押される」……。ところが日本語の場合、

英語でいう自動詞にあたるものの「受身形」の表現がいくつもある。

だれ

、誰かに「泣かれて」困った。「泣く」(cry

)は自動詞ですから、「I

was

criedby

my

wife

」(家内に泣かれて

困った)なんていう言い方は、英語ではありえない。でも日本語だと、「泣かれて困った」と言います。恋人に「逃げられた」

とか。「逃げる」も、英語では受身はありません。試験のときに監督にそばに「居られて」困った、とか。「いる」という言葉

にしても、日本語だと「いられる」という受身形がある。「居座られる」という表現もそうでしょう。

そんななかに、「子どもに先立たれる」「子どもに死なれた」という言い方があります。これも「I

was

diedby

my

son

という言い方は、英語では絶対にありえない。

どれもこれも「痛い表現」ばかりです。誰かがいるとか誰かが泣く、誰かが逃げていく、出来事としては一応は完結してい

ることで、直接的に、自分に何か働き掛けがあるわけではAない。

、その出来事が、自分にとっても取り返しがつか

ず、困ってしまったととらえて、自分にかかわりのあることとして受け止める。日本語はその気持ちを細やかに、そして強く

表現する。

わたしたちが注1震

災後のケアで考えなければいけない重要なことの一つは、「死なれた人のケア」です。親を失った子ども、

表3[右ページ]から問題開始

紙―37― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 1

それは結局、遺品・遺骨の収集に行く人たちは、自分にとって大事な人が死んだという事実をまだ受け入れていない、ある

いは納得できていないということです。独りで海で散ってしまったけれども、どういう散り方をしたのか自分には分からない

というときに、どうしても最後の最後のところで納得できない、その死を受け入れられない。亡くなった人が死者として生ま

れ変わって居ない。納得してその死を受け入れたい、そのためにどうしても、最後の最後の手がかりが欲しい。

その人が大切な人の死を受け入れて、その人にとっての死者が誕生するところまで一緒に、横で歩むこと。それが「死なれ

た人のケア」なのだと思います。

注2神

戸の震災の時にも問題になった「孤独死」は、このこととの関わりでも考えておくべきことです。孤独死だけではなく、

避難所では崩れていってしまう人がたくさんおられました。

家族を失った人が避難所に身を寄せて、最初のうちはまだお互いにいたわり合い、気遣い合う他者がいたけれど、一人ひと

り、あるいは一家族一家族減っていって、最後に取り残されたときに、

、その人との関係のなかで自分をdツムいで

いくべき他者が本当に文字通りいなくなってくる。そのときに「溶融」したまま崩れていく人、自殺する人が随分いらっ

しゃったんです。

もちろんD自分で自分を立て直した人もいました。

神戸の震災のときですが、今も印象深く残っていることがあります。ある人が思い出話で書いておられたことですが、家が

全壊してその人のお父さんが家の下敷きになった。火も出ていたので、家族みなが必死で救い出そうとしたけれど、無理だっ

た。お父さんはみなに、逃げろと言ったのだそうです。今回の震災と津波でも、一緒に逃げたのにわずかに一、二メートルの

距離があいたために後ろにいた家族が波にさらわれてしまったり、手をつないでいたのにその手を離さざるをえなかった、と

いうことがありました。

大切なあの人は死んだけれども自分は生き残った、あるいは生き延びたというときに、誰もが思うのは、逆でもありえた

ということです。そういう思いは禁じられないというか、断ち切れない。いま生き残っている自分はたまたま生き残っている

紙―34― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 4

周囲の人、

お坊さんが伴走しているということです。故人の死という事実を納得して受け入れるまでに、最低でも

四十九日はかかると、昔の人は考えていたのだろうと思います。

死を受け入れるというのは、どういうことなのか。

したい

社会学者の内田隆三さんが書かれていたことですが、死を語るときに、生体か屍体かという二分法で考えないほうがいい。

そうではなく、生体と屍体・遺体に、「死者」という三つ目のカテゴリーを入れて三分法で考えたほうがいい、と。そして命

がなくなったときに、生体が屍体に変わるけれども、死者というのは、人が死んで初めて生まれるものだというのです。「C死

者として生まれる」ということです。

その人との関係が自分のコアな部分を作っていた人を失ったとき、自分の一部をなくしたという大きな喪失感のなかでその

人の死を受け入れるのは、以後、その人が死者としてわたしの語らいの相手になるということです。それが「死者として生ま

れ変わる」ということなのです。

死者が語らいの相手になるというと、比

的な言い方に聞こえるかもしれません。しかし実際、わたしたちは自分が追い詰

められたときとか、すべてがうまくいかないときに、ポロッと、「おかあちゃん、助けて」とか「頼むわ、なんとかここを

守ってや」とかいう気持ちで、拝むように声に出して言うときがあります。死者が語らいの相手になるというのはそういうこ

とです。

自分が迷いのなかにあるとき、本当は亡くなってもういない人に、すがるように「助けて」と言ったり、「どうしたらいい

んだろう」とつぶやくように声をかけてみたり、「こんなんでいいか」と同意を求めたりする、そういう対話の相手になった

ときに初めて、自分にとって重要な意味を持った人の死をわたしが受け入れ、納得して認めたことになる。

日本人の習慣のなかで、海外の人、特に欧米の人が不思議がるのは、遺骨や遺品をとても大切にすることです。B戦後六十数

年たっても、毎年かつての戦地にcオモムいて収集をしている。ヨーロッパの人には非常に理解しにくいようです。もう死んで

いるのは分かっているはずなのに、

遺品・遺骨の確認をしたいのか、と。

紙―35― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 3

基礎学力検査 国語〔A 方式 11/17〕(時間:p.1 参照)

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国︲3

問一

線部a〜eの漢字と同じ漢字を含むものを、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

解答番号は

百カ日

転んでサッカショウを負った。

キカ学の問題。

旅立ちにカジツを選ぶ。

古今のシカを集めた本。

内容をカジョウ書きにする。

サトす

畑のサトイモを収穫する。

先生からセツユをいただいた。

長年の病がカイユした。

苦労するカクゴはできている。

ゴコクに改めて参上します。

オモムいて

薬剤を肌にトフする。

世間にフキュウする。

国民にフカを割り当てる。

遠隔地からフニンする。

旅券を申請者にコウフする。

ツムいで

ボウスイ形の積み木。

ケンボウ術数をめぐらす。

傷口をホウゴウする。

ドウホウの温かみに涙する。

神社にホウノウされた面。

クヨウ

コクウを見つめる。

厳しいケイクを吐く。

師をカツギョウする。

情報のテイキョウ者。

技術のセンク者となる。

紙―32― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 6

だけで、わたしだって死んだかもしれない、だから自分がここにあるということはたまたまなんだ、言いかえると、その人が

死んでくれたから、代わりに自分が残ったんだという思いです。自分がここにいられるのはその人のおかげなんだ、と。

自分の存在、わたしの生は、わたしのものであるようで、実はもうわたしのものではない。彼が身代わりに死んでくれたこ

ささ

とで、自分はいまこの生を与えられている。

、この残ったわたしの生は他の誰かのために捧げられてしかるべきも

のである……。そんな感覚を持つことで、死んだ大事な人だけでなく、たとえ赤の他人であっても、生き残った者としてeクヨ

ウしてあげようという気持ちも生まれてくる。こういうかたちで自分を立て直す人もいます。でもそれはなかなか大変なプロ

セスで、やはり多くの人が崩れていったんです。

注3今

回の震災で、注4一

万九四七九人の死者・行方不明者が出たということは、ものすごい数の死なれた人がいるということです。

その人たちのケアは、誰もがどうしても心砕かないといけないことです。恐ろしいほどの時間が必要になるでしょう。本当に

重い課題です。

(鷲田清一『語りきれないこと

危機と傷みの哲学』による)

注1

震災=

二〇一一年三月一一日に発生した東日本大震災のこと。

注2

神戸の震災=

一九九五年一月一七日に発生した阪神・淡路大震災のこと。

注3

今回の震災=

注1に同じ。

注4

一万九四七九人=

二〇一二年九月一九日の警察庁発表では一万八六八四人。

紙―33― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 5

問六

線部A「すごく不思議な表現です」とありますが、どうして不思議なのですか。その説明として最も適当なものを、

次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

18

ヨーロッパ系の文法からするとありえない、自動詞の受身形が、日本語には少なからずあって、日常的に用いられる

から。

自動詞による言語表現は出来事として完結しているのに、後から間接的にその影響が自分にも及ぶように受け止める

から。

自動詞の受身形を用いる日本語は、どれもこれも痛い表現ばかりで、まるで自分が関係者であるかのごとく偽装する

から。

日本語の自動詞受身形で表現される事態は、自分に作用が及ばないのに、あたかも自分に影響があるように表現する

から。

英語などにはない受身形が、日本人固有の細やかで強い感情を巧みに表現することを、世界で唯一、可能としている

から。

紙―30― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 8

問二

線部Aの「ない」と文法的に同じものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

気の置けない友達同士。

頼んでも聞いてくれない。

ふがいない後継者。

生きなければいけない。

根拠のない推測。

問三

線部B「戦後六十数年」とありますが、第二次世界大戦後に発表された作品を、次の

の中から一つ選びな

さい。解答番号は

二十四の瞳

歌行燈

夜明け前

暗夜行路

坊っちゃん

問四

に入る最も適当な言葉を、次の

の中から一つずつ選びなさい(同じ言葉は一度しか選べ

ません)。解答番号はAが

、Bが

、Cが

10

、Dが

11

、Eが

12

だから

たとえば

つまり

でも

あるいは

問五

に入る最も適当な言葉を、次の

の中から一つずつ選びなさい(同じ言葉は一度しか選べ

ません)。解答番号はアが

13

、イが

14

、ウが

15

、エが

16

、オが

17

なぜ

ほとんど

まさに

まだ

もはや

紙―31― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 7

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156 国︲4

問八

線部C「死者として生まれる」とありますが、どういうことですか。その説明として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

20

親しい人が故人となってしまい、もはや現実には話し合うことが不可能になってしまっても、胸の中に生き続けてい

ること。

大切な人が亡くなってしまったという事実をなんとか理解して喪失感を乗り越えることで、故人が語らいの相手とな

ること。

親しい人に死なれた人が大きな喪失感に陥りつつも故人の死を納得して受け入れることで、故人を語らいの相手とす

ること。

大切な人が死んで、現実には語り合うことはできなくなっても、胸の中でいつまでも相談や懇願などの対話ができ

ること。

親しい人に死なれた人がその死を理解し故人が語らいの相手となることによって、残された人の喪失感を埋め合わせ

ること。

紙―28― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 10

問七

線部B「誰かが亡くなったとき、日本人が行ってきたのが弔いで、具体的には「お逮夜」というかたちをとってき

ました」とありますが、「お逮夜」を、どういう儀礼だと筆者は考えていますか。その説明として最も適当なものを、次

の中から一つ選びなさい。解答番号は

19

親しい人の死で大きな喪失感を味わった人が故人の死という事実を理解して受け入れ、笑顔で冗談まじりに世間話が

できるまでに回復する儀礼。

大切な人の死による大きな喪失感に陥った人が故人の死という事実を受け入れ納得するまで、時間をかけ周囲の様々

な人々が見守っていく儀礼。

誰かの死によって受けた大きな喪失体験は、すぐには忘れられないので、時間をかけて周囲の人や僧侶が見守りなが

ら忘却をサポートする儀礼。

大切な人の死は大きな喪失感を生むので、様々な主題を決め、様々な集団の人々を呼び集めて、段階的にゆっくりと

故人を忘却するための儀礼。

大切な人の死による喪失感を埋め合わせるために、親しい人から縁遠い人まで段階的に集まってもらって、故人の御

魂を浄土に送るための儀礼。

紙―29― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 9

問九

線部D「自分で自分を立て直した人」とありますが、筆者が述べているのは、たとえばどういう人ですか。最も適

当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

21

自分の身代わりとなった故人と語らうなど、他者との関わりの中で、自分がたまたま生き残ったことに気がつき自殺

をせずにすんだ人。

自分のために身代わりとなった故人と語らうことで、それまでは気づかなかった勇気やアイデンティティを持つこと

ができた幸運な人。

自分のために犠牲となった多くの人に命を与えられ生き続けられたことに感謝して、赤の他人の故人のクヨウに自分

の運命を感じた人。

身代わりとなって死んでくれた人に命の尊さを教えられ、ひるがえって生き長らえられた自分の運命に感謝し自殺を

思いとどまった人。

自分のために犠牲となった人に与えられた命を他者との関わりに生かすことで、再び生きる意義やアイデンティティ

を取りもどした人。

(国語

問題

おわり)

紙―27― h25 A方式

↑130701J1 2012.10.26 15.28.06 Page 11

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国︲5

問二

線部イ「れる」(解答番号は

36

)・ロ「する」(解答番号は

37

)・ハ「つる」(解答番号は

38

)・ニ「たる」

(解答番号は

39

)・ホ「たる」(解答番号は

40

)・へ「るる」(解答番号は

41

)の文法的説明として最も適当なも

のを、次の

の中から一つずつ選びなさい(同じ選択肢を二度以上選んでも構いません)。

下二段活用動詞の活用語尾

下二段活用動詞の活用語尾+完了の助動詞

四段活用動詞の活用語尾+完了の助動詞

四段活用動詞の一部

サ行変格活用動詞

自発の助動詞

断定の助動詞

完了の助動詞

問三

線部ト「ひぬ」の文法的説明として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

42

ハ行上一段活用動詞の未然形+打消の助動詞の連体形

ハ行上一段活用動詞の連用形+打消の助動詞の連体形

ハ行上一段活用動詞の未然形+完了の助動詞の連体形

ハ行上一段活用動詞の連用形+完了の助動詞の連体形

ハ行上二段活用動詞の未然形+打消の助動詞の連体形

ハ行上二段活用動詞の連用形+打消の助動詞の連体形

ハ行上二段活用動詞の未然形+完了の助動詞の連体形

ハ行上二段活用動詞の連用形+完了の助動詞の連体形

紙―23― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 3

ほすは、山路の菊をわけ行き、かの菊の露にぬヘるる義なり。その露にぬれたる袖の、いまだトひぬひまに千代をへたりといふな

り。

(『古今集註』による)

注1

仙宮=

仙人の住む宮殿。「仙家」「仙室」に同じ。

注2

淮南王劉安=

中国前漢の高祖の孫。仙薬を服し仙人になって昇天し、さらに、その残った仙薬をなめた犬や鶏まで昇天した、という

話が伝わる。

問一

線部a〜eの意味として最も適当なものを、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

解答番号は

31

35

31

a「えもいはぬ」

いわ

美しいとは言い難い

何やら曰くありげな

どことなく奥ゆかしい

言いようのないくらい見事な

感嘆を禁じ得ない

32

b「そこばく」

あちらこちらに

あたり一面に

果てしなく

程よく

たくさん

33

c「ゆゆしげなる」

にぎ

立派そうな

恐ろしそうな

不吉そうな

楽しそうな

賑やかそうな

34

d「おぼつかなし」

気がかりだ

記憶にない

心配でない

懐かしい

疑わしい

35

e「ぐしたりける」

以前飼っていた

突然現れた

居合わせた

連れていた

忠実に仕えていた

紙―24― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 2

問四

線部A「ここにとまり侍らんことしかるべし」とは、どういう思いを述べたものですか。その説明として最も適当

なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

43

二度と仙宮には足を踏み入れないよう注意しよう、という思い。

できることならばもう仙宮にはとどまりたくない、という思い。

仙宮にとどまることになるのは望むところである、という思い。

何としてもこのまま仙宮にとどまり続けてやろう、という思い。

機会があれば再び仙宮を訪れてみるのも悪くない、という思い。

問五

線部B「立ちかへりて見て、かへりまうで来ん」とありますが、どのようにしようと言っているのですか。その内

容として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

44

ふる里と仙宮との間を行き来して、千年経ったという仙人の言葉を立証しよう。

もと来た道をたどって戻り、ふる里に帰って、以前と同じ暮らしを取り戻そう。

一度と言わず何度でもふる里に帰って、特に変わりないかよくよく見てこよう。

仙宮とふる里の間を繰り返し往復しながら、どちらに住むべきかよく考えよう。

いったん

一旦ふる里に帰ってその様子を窺ったうえで、またもとの仙宮に戻ってこよう。

紙―22― h25 A方式

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次の《A》は、『古今和歌集』に載る素性法師の和歌、《B》は、その和歌について述べた文章です。それらを読んで、後の問

に答えなさい。

《A》

注1仙

宮に菊をわけて人のいたイれるかたを詠める

素性法師

ちとせ

ぬれてほす山路の菊のつゆのまにいつか千歳を我はへにけん

《B》

わいなん

りうあん

せうえう

昔、もろこしに、注2

淮南王劉安、ふかき山よりながれ出でたる川のほとりに逍遙しけり。この川に美しきさかづきの流れける

を見て、この川上にも人のすむにこそとふしぎにおぼえて、川ばたに付きてたづね上るに、aえもいはぬ菊の、bそこばく咲きみ

いわ

だれたるをわけ行きて見るに、cゆゆしげなる仙家あり。仙人、まどゐして薬を合はロするなりけり。仙人曰く、「いかにしてこ

うんぬん

なんぢ

こには来たりつるぞ」と云々。客曰く「しかしか」と、ありのままにかたりければ、「さては、汝、この所に縁あるにこそあ

りけれ。ここは仙宮なり。山路の菊を汝がわけハつるとき、菊の露のしたたりにあニたるゆゑに、すでに一千歳をへたり」と云々。

客曰く、「この仰せすこぶるふしぎなり。我ここへ来つること、わづかに片時なり。何のゆゑに一千歳をふべきや。Aここにと

まり侍らんことしかるべしといへども、ふる里をばかりそめに立ち出でしあとのこともdおぼつかなし。B立ちかへりて見て、か

へりまうで来ん」とて、仙薬を合はすることはしりたりけるを、取りて、我もくひ、eぐしたりける犬にもくはせて、かへりき

てふる里を見れば、跡かたなくなれり。昔、山なりし所は海となり、海は山となれり。わが家は、跡かたなくなりてうせたり。

よはひ八十余ばかりなる老翁のあるに、ことのよしをとへば、「Cさることは、われらが七世のおほぢの代にこそ承り及べれ」

と言ひければ、さて、ちからなくて、またもとの仙室へかへりきて、仙人となれり。

そで

この歌の心は、山路の菊の露にぬれホたる袖の、ほすほどもいまだなきひまに、Dいかでか我は千歳をへにけんとなり。ぬれて

右ページから問題開始

紙―25― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 1

いは

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154 国︲6

問八

問題文について記した次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

《A》の素性法師の歌「ぬれてほす山路の菊のつゆのまにいつか千歳を我はへにけん」は、その前に付された

47

によれば、菊を分けて人が仙宮に到達した姿を人形に造ったものについて詠んだ歌で、素性法師がその人

48

詠んでいる。「つゆ」は、「菊の花の上にたまった露」と、「

49

」を意味する「つゆの間」の

「つゆ」との

50

である。《B》の問題文は、右の人形の姿に淮南王劉安の話を思い合わせて、《A》の歌を素

とら

性法師が詠んだものと捉えている。素性法師の歌にも劉安の話にも出てくる菊は、中国から渡来したもので、

51

の節句には、菊の花の上にたまった露や杯に菊の花を浮かべた菊酒を飲んで長寿を祈った。例えば、前漢

の雑事を録した『西京雑記』にも、「飲二

菊花酒一

、云令人長寿」と記されている。なお、素性法師は、六歌仙の一人

である

52

を父として誕生した歌人で、

53

が選定したとされる『小倉百人一首』に採られた歌「今来

むと言ひしばかりに

54

の有明けの月を待ち出でつるかな」が有名である。

47

54

(解答番号同じ)に入る最も適当な言葉を、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

ことばがき

じょことば

47

序文

詞書

序詞

前句

傍注

48

呼びかけて

頼まれて

なりきって

誘われて

自らの境遇を重ねて

49

涙を流している間

全く知らない間

咲いている間

ごくわずかの間

長い年月の間

50

掛詞

序詞

枕詞

縁語

折句

じょうし

51

人日

上巳

端午

七夕

重陽

52

阿倍仲麻呂

紀貫之

猿丸大夫

菅原道真

僧正遍昭

53

藤原道長

藤原定家

藤原俊成

藤原行成

藤原家隆

54

如月

水無月

文月

長月

霜月

紙―20― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 6

問六

線部C「さること」とは、どういうことですか。その具体的内容として最も適当なものを、次の

の中から

一つ選びなさい。解答番号は

45

川の上流の深い山の中に仙宮があって、仙人たちが不老長寿の仙薬を調合しているらしいということ。

淮南王劉安という人物がこの里に住んでいたが、ある日突然、行方不明になってしまったということ。

仙宮に迷い込んだ淮南王劉安がふる里に戻ってみると、わが家がすっかりなくなっていたということ。

千年が経つ間には、里の自然も変化し、そこに住む人々の様子も大きく変わるものであるということ。

この里に住んでいた淮南王劉安が菊の花を求めて川をさかのぼるうちに、千年経っていたということ。

問七

線部D「いかでか我は千歳をへにけん」の現代語訳として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさ

い。解答番号は

46

何とかして私は千年を経たいものだ

何とかして私は千年を経ないで終わりたいものだ

どうして私が千年を経たりするだろうか、そんなことはあり得ない

どうして私が千年を経てきたというのだろうか、そんなことはあり得ない

どうやって私は千年を経ていくのだろうか

どうやって私は千年を経てきたのだろうか

紙―21― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 5

線部の白文「云令人長寿」の訓読文として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。

解答番号は

55

令人を長寿にすと云ふ

令人をして長寿せしむと云ふ

人に令して長寿たらしむと云ふ

人に令して長寿せしむと云ふ

人を長寿にすと云ふ

人をして長寿たらしむと云ふ

(国語

問題

おわり)

紙―19― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 7

線部の白文「云令人長寿」の訓読文として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。

解答番号は

55

令人を長寿にすと云ふ

令人をして長寿せしむと云ふ

人に令して長寿たらしむと云ふ

人に令して長寿せしむと云ふ

人を長寿にすと云ふ

人をして長寿たらしむと云ふ

(国語

問題

おわり)

紙―19― h25 A方式

↑130701J2 2012.10.26 15.24.42 Page 7

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153

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しかし、深層心理学的解釈に深入りすることは止めて、私どもの問題に立ち戻ろう。ここで考えようとするのは、心的象徴

としての「棄て子」であるにまして、言説のレベルでの「棄て子」。すなわち、「棄てられる」ことでしか、言説上に浮上し得

ぬ存在としての「子ども」をcチュウシしようというのだ。既成の注5認

識野に位置づかず、意識化を拒まれる「あるもの」、それ

に「孤児」「棄て子」の形象が与えられるという、その表象のされ方ということも可能だろうか。

既知の世界のあらゆる「もの」や「こと」、それらのすべてと無縁の「あるもの」が「子ども」であるというなら、それは、

全くの外来者、他界からの訪れ人に他なるまい。「子どもはどこからやってくるのか」という、はじめての問いに対して、原

すく

初の心性は「未知の外部から」と答え、1言説の世界は、それを「孤児」「棄て子」と掬い取ったのであった。

こうのとり

幼い人たちが、赤ん坊の出自を問うとき、かつての親たちは、「鸛が運んでくる」「橋の下から拾ってきた」などという答

うり

えを用意していた。そしてまた、幼い人向けの昔語りは、「川上から流れてきた小さ子」や「瓜の中から現われた小さな姫」

の物語りを伝えている。「子どもとは、どこか知らぬ未知の外部のもの」というこの説明は、考えてみれば、2「大人」と「子ど

も」との間に結ばれる、根源的な関係のありようを指し示して絶妙である。「大人」すなわちシステムに組み込まれた者たち

にとっては、「子ども」とは完全に「外なる者」、何らかの力によって運ばれてきた来訪者に他ならない。そう、幼い人たちが

赤ん坊の誕生に首を傾け、「赤ん坊はどこから来るの」と問うとき、彼らは既に、自分たちが「

」ことを告白

している。生後何年かの歳月しか経過していず、未だ赤ん坊に毛が生えた程度の存在であったにしても、彼らは、自分たちと

は異なる「全き新来者」の出現に戸惑い不思議がって、「どこから?」と首を傾けるのだ。

3未知の訪れにおいて、人は、既知の己れらを発見し、「われわれ」という塊を出現させる。赤ん坊が遠い異界から来ると聞

いて納得する幼い人たちは、自分たちが既に赤ん坊ではなく、こちら側の存在であり、「大人」をも含めた「われわれ」であ

あんど

ることで安

しているのだ。赤ん坊の誕生が、彼らに「人であること」を自覚させるのである。

おさな

老いを迎えた一人のもの書きが、自身の幼い日をよみがえらせようと、注6『

幼ものがたり』の筆をdトった。そのなかで、一番

最初の記憶として記されたのが、「弟の誕生」であった。満一歳と数ヶ月頃のことという。

紙―32― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 2

次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

人が世界のはじまりをしるしづけようとするとき、その語りのなかには、何故か「棄て子」の物語が含まれることが多い。

あが

世界をみそなわす至高の神、あるいは国造りの祖と崇められる神々には、しばしば「棄て子」の形象が与えられるのだ。ギリ

シャ神話のゼウスや、注1デ

ィオニューソスのように、また、フィンランドの注2カ

レワラの英雄クッレルヴォのように、その誕生の

挿話が何らかのかたちで「棄て子」と結び付いている例は珍しくないのである。

そして、一方、伝統的社会では、生まれ子の誕生儀礼として、赤ん坊を儀礼的に「棄て子」するというaシュウゾクを守り伝

もら

えてもきた。

、子どもの育ちにくい家では、定められた日に「棄て子」し、拾い親に拾って貰う、あるいは、厄年

生まれの子は一度棄てて、近所の人々に拾って貰い、それを自家に買い受けるなどのように……。

たど

とすれば、

の両面から、くっきりとその痕跡を

ることの出来る「棄て子」とは、一体、何を語り告げる

「ことば」なのであろうか。「棄てられるもの」として言語化される始原の子ども……。彼らは、はじまりの語りにおいて、言

説の世界から参入を拒まれ、遺棄されることでしかその存在をあらわにし得なかったというのだろうか。

神話を、人の無意識の所産と見る深層心理学者たちは、棄て子の神話をめぐって、様々に分析と解釈を試みている。たとえ

ば、その代表的な一人である注3ユ

ングは、神話に登場する幼児の形象を根源的な注4神

話素と位置づけ、「童児神」元型としての考

察を加えた。

、それらの誕生にフカbヒと見える、「遺棄」という現象に、格別の関心を寄せている。様々な民族の

うしな

つな

神話のなかで、「童児神」の多くは、孤児であったり母を喪ったりして、親との

がりが絶たれ、見捨てられた状態で孤独に

この世に送り出されるが、それは、誕生に付随する現象であるにまして、その必然的な条件であろう、と……。

これら危難に満ちた出生の物語は、未だ認識されていない、新しい心的内容の発生を、象徴的に物語っているから、というの

である。

表3[右ページ]から問題開始

紙―33― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 1

して、しっかり足にくくりつけてくれていた。私は、まだ、ひとり草履をつっかけて、走りまわる年ではなかったとみえ

る。そして、このとき、私はもう泣いてはいなかった。伯母は、少し気もちのおさまった私に、ほうびに新しい草履を

買ってくれたのではなかったろうか。

(前掲書)

くく

履きものを括りつけ、大地に足を下ろす。それは、幼いものが「人の仲間入り」をしたことのしるしである。

が、人が獲得した文化の一パターンであり、そのなかに組み込まれることが成長という名の幼いものの歩みであるとされるの

ぺーじ

だから。とすれば、「弟誕生」の物語の最終頁に位置づくこの記憶は、赤ん坊という「異物」に遭遇して、幼い彼女が、「人の

仲間」であると自覚したことを物語るだろう。

赤ん坊は、幼い姉を脅かし、泣きわめかせた。突然に侵入してきた「異物」によって引き起こされ、コウfヨウさせられるこ

の「異和感」……。泣きわめいても足りぬほどの……。それは、出現した「未知」が、「暴力」に他ならないと告げている。

考えてみれば、「童児神」たちがしばしば部族の「始祖神話」のなかで語られ、しかも、時として凶暴かつ破壊的であり、町

を壊したり家畜を殺したりして人を怒らせ、追放の対象とされたりするのもこのことと無縁ではない。「われわれ」という塊

に既存のものたちを結集させるほどの「未知」、それは、その

のゆえに排除されねばならない。年長の兄姉に

gウトまれる「赤ん坊の誕生」、そして、追放される「童児神神話」は、こうした5「排除の構造」を物語ってもいるのだ。

(本田和子「〈原史〉としての子ども」による)

注1

ディオニューソス=

ギリシャ神話に登場する酒神。ゼウスとテーベ王女セメレの子。ゼウスの妻、ヘラに追われ逃亡生活を送る。

注2

カレワラ=

フィンランドの民俗叙事詩。クッレルヴォはカレワラに登場する悲劇の主人公。

注3

ユング=

スイスの精神医学者・心理学者。一八七五年生まれ、一九六一年没。

注4

神話素=

神話の構成要素。

注5

認識野=

認識の体系。

注6『幼ものがたり』=

児童文学作家の石井桃子(一九〇七年生まれ、二〇〇八年没)の小説。一九八一年発表。

注7

産婆さん=助産婦(今は助産師)の旧称。

紙―30― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 4

まず、弟の誕生でおどろくべきことは、私がその場に立ちあっていたらしいことである。(注7産

婆さんや身内の者たちがて

んやわんやしている最中、わけのわからない幼い子を、よくもそこらアにうろちょろさせておいたものだと、びっくりする

のだが、あるいは、私が頑強イに母のそばをはなれることをこばんだのかもしれない。)私は、母の胎内からみょうなもの

がすべりだしてくるのを見た。いま思い出す。そのときの私の感じは、きみわるいでも、いやだでもなかった。ただ見た

という事実である。私のまわりで、いく人かの女たちが、黒い影のようウに動いていた。

つぎの場面では、母は床の上におきあがって、きみょうな赤いものを抱いていた。私はその床のすそのところに立って、

からだもはりさけそうエに泣き叫んでいた。

(石井桃子『幼ものがたり』)

彼女にとって、奇妙なものの出現に泣きわめいたのが最初の記憶であり、自身に再生された「はじまりの時」であった。そ

して、自身の一生の始原の時間に、同様の記憶をよみがえらせる人は少なくない。異物が侵入し、それによって既成の秩序が

かくらん

攪乱される。そうした混乱の時空、危機的な状況で、幼いものたちは「人として」目覚めるのであろう。

石井の回想は、次のように続いていた。すなわち、泣きわめく幼い「私」は、年長の姉の背におぶさって、垣根の外をゆき

つもどりつしていた、と……。「近所のおばさんが通りかかって、姉と話して、笑いながら私をあやしてくれた。おばさんが、

私の身におこった変化について慰めてくれていることはわかったが、4私は泣きつづけた。」

さんじよく

彼女は、幼いなりに、赤ん坊とは別の、こちら側の住人であった。赤ん坊というこの侵入者は、厚かましくも母の産褥を

占拠し、その奇妙な姿をeコジして彼女を脅かすが、しかし、彼女は、姉や隣人との

がりのなかに置かれる。それになじみ切

れずに泣き続ける「私」……。しかし、続く記憶が映し出したのは、「もう泣いてはいない私」であった。

それから、これらのことと関連しているらしい、もうひとつの場面が思いだされる。明るい昼間だった。私は「裏の家」

(長屋門の端にあった離れ。母はここでお産をした)から出ようとしていた。母の姉

三室という村から、母のお産の

手伝いに出てきたのだったろう

が、上がり口の上にかがんで、私をうしろから抱くようにして、私の足に草履をはか

せようとしていた。草履についた真っ赤な鼻緒には、細い白いひもがついていて、伯母は、そのひもを私のかかとにまわ

紙―31― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 3

基礎学力検査 国語〔B 方式 11/18〕(時間:p.1 参照)

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152 国︲8

ウトまれる

一方的にケンオされた。

ユウリョすべき事態が発生した。

自分だけがソガイされている。

彼女にブジョクされるとは心外だ。

アイゾウ絡み合う仲。

問二

に入る最も適当な言葉を、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

歴史と民俗

西洋と日本

神話と儀礼

国家と個人

死と再生

問三

に入る最も適当な言葉を、次の

の中から一つずつ選びなさい(同じ選択肢は一度しか選

べません)。解答番号は甲が

、乙が

10

、丙が

11

なぜなら

しかも

たとえば

しかし

問四

線部1「言説の世界は、それを「孤児」「棄て子」と掬い取ったのであった」について、次の問に答えなさい。

Ⅰ「それ」の指示する内容として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

12

子どもが未知なる外部からやってくる者であること。

赤ん坊の出自についての、幼い人たちの問いかけ。

既知の世界のあらゆる「もの」や「こと」。

言説上についに浮上し得ぬ存在としての子ども。

こうのとり

鸛が運んできたり、橋の下から拾ってきたもの。

Ⅱ「掬い取った」とありますが、「掬い取る」を言い換えるとすれば、どのような表現が適当ですか。最も適当なものを、

次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

13

装飾する

伝承する

抽象する

表象する

省略する

紙―28― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 6

問一

線部a〜gの漢字と同じ漢字を含むものを、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

解答番号は

シュウゾク

サンマはもはやタイシュウ魚ではない。

クラス全員の力をケッシュウする。

新しい職場でケンシュウを行った。

組体操のレンシュウをした。

歌舞伎のシュウメイ興行が始まった。

フカヒ

社長職をヒメンされた。

ヒジョウ事態に対処する。

現実からトウヒしてはいけない。

相手のヒハンをかわす。

事のトウヒを判断する。

チュウシ

互いの主張のセッチュウ案を出す。

遊びにばかりネッチュウして困る。

必要部分のみチュウシュツしなさい。

機械へチュウスイを続けた。

軍隊がチュウリュウする。

トった

サイヨウ試験に合格した。

クラス写真をサツエイする。

隣のエモノは大きい。

内実はホソクし難い。

あいつはシュウネン深いぞ。

コジ

キョエイ心が見え隠れする。

議長就任依頼をコジする。

コジン情報は厳守します。

往年の活躍をカイコする。

話がコチョウされて伝わった。

コウヨウ

機体にかかるヨウリョクは十分だ。

心のドウヨウを隠せない。

罪に対してカンヨウな態度をとる。

ヨウテンのみを抜き出せ。

金属がヨウユウする。 四

紙―29― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 5

問八

線部4「私は泣きつづけた」とありますが、「私」が「泣きつづけた」ことを、問題文の作者、本田氏はどのよう

に解釈していますか。その説明として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

17

弟の誕生によって、もはや幼な子としての愛情を受けられなくなることに対して、「私」が抵抗している。

「私」自身の一生の始原の時に立ち会い、「はじまりの時」が再生されたことに驚き、不安を隠しきれずにいる。

奇妙な塊でしかなかった赤ん坊から、こちら側の住人に移行することに、「私」が拒否反応を示している。

あら

親たちから聞いていた出自とは異なる生命の誕生に遭遇し、「私」は大人に対して不信感を露わにしている。

「私」が、侵入者ではなく、既に社会との

がりのなかの存在であることを受け入れきれずに戸惑っている。

問九

に入る最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

18

履きものを履いて歩くこと

大地に足を下ろすこと

泣くのをやめて受け入れること

来訪者を迎え入れること

家から出ること

問十

に入る最も適当な言葉を、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

19

共同性

権威性

神聖性

融和性

暴力性

紙―26― h25 B方式

↑130702J1 2012.10.13 09.08.12 Page 8

問五

線部2「「大人」と「子ども」との間に結ばれる、根源的な関係」とはどのような「関係」ですか。その説明とし

て最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

14

「意識」された存在である「大人」の目には、「無意識」の存在として映るのが「子ども」であるという関係。

「棄てる」側である「大人」たちにとって、「棄てられる」立場にあるのが「子ども」であるという関係。

とら

「大人」の既知の世界に、それとは無縁の存在として訪れるのが「子ども」であると捉える関係。

既成の認識野に位置づけられる「大人」に対して、意識化を拒む存在が「子ども」であると捉える関係。

「棄てられる」存在である「子ども」からすれば、「拾う」役割を担う存在が「大人」であるという関係。

問六

に入る最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

15

赤ん坊と変わらない

もう赤ん坊ではない

外部からの来訪者である

「棄て子」である

無知で戸惑っている

問七

線部3「未知の訪れにおいて、人は、既知の己れらを発見し、「われわれ」という塊を出現させる」の説明として

最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

16

人は、異物の侵入による混乱の中で、自らが既成の秩序に属するものであることに気付くということ。

人は、遠い異界から運ばれてきた来訪者の出現によって、新しい自己を発見することができるということ。

人は、外部からの侵入者に対して、常に共同体意識に目覚め、団結する存在であるということ。

人は、赤ん坊の姿を見ることによって、新しい生命が己れの一部であることを認識するということ。

人は、子どもが誕生することで生命力の根元を目の当たりにし、生物としての自らを自覚するということ。

紙―27― h25 B方式

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151

音楽実技

一般入試

数  

一般入試

化  

一般入試

生  

一般入試

世界史

一般入試

日本史

一般入試

英  

公募制推薦入試

一般入試

国  

公募制推薦入試

(国   語)

現代社会学部

AO入試

国︲9

注5推

参せり」。渡も涙にくれけるが、これまた前世の宿因ならんと、盛遠とともに僧となつて、女の後世をとむらひける。

(『大東婦女貞烈記』による)

つな

注1

左衛門尉源渡=

嵯峨源氏。鬼退治伝説などで知られた武士・渡辺綱の子孫にあたる。

注2

橋供養=

橋をかけ終わった時に、その上で行う供養のこと。

おい

もんがく

注3

遠藤武者盛遠=

衣川の甥。出家して「文覚」と名乗った。

とばり

注4

帳台=

周囲に帳を垂らした屋根付きの台。

注5

推参=

招かれないのに自らおしかけること。

紙―22― h25 B方式

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問十一

線部5「排除の構造」を説明したものとして最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。

解答番号は

20

人は本質的には集団となじまない存在であるが、来訪者の暴力的な侵入に対処する方策として「塊」となる知恵を

持っており、これまでも多くの侵入者に対処してきた。

「異物」の持つ暴力性は、幼な子を泣きわめかせるほど凶暴なものであるが、その違和感を克服することで、幼な子

は人としての成長を遂げるものである。

凶暴かつ破壊的な侵入者を排除するためには、共同体の団結が不可欠であり、その結束を強固なものにするために、

社会は侵入者を受け入れようとする。

既存の秩序とは、「異物」が侵入した場合、秩序の攪乱、混乱という危機的な状況に対処するために、これを除外し

ようとするものである。

赤ん坊は神聖性と暴力性の両面を持つ存在であるが、この「異物」を遠ざけながらも受け入れることで、社会は成熟

の度合いを深めていく。

問十二

線部ア〜エの「に」の文法的説明として最も適当なものを、次の

の中から一つずつ選びなさい(同じ選

択肢を二度以上選んでも構いません)。解答番号はアが

21

、イが

22

、ウが

23

、エが

24

副詞の一部

格助詞

形容動詞の一部

接続助詞

助動詞の一部

とぎはなし

問十三

単なるお伽噺ではない、文芸としての童話をめざし、大正七年(一九一八)に創刊された童話童謡雑誌を、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

25

せいとう

明星

青鞜

赤い鳥

ホトトギス

白樺

(国語

問題

おわり)

紙―25― h25 B方式

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次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

じよう

わたる

ころもがは

注1左

衛門尉源渡が妻は、衣川の娘なり。その生まれつき世に類なくうつくしく、みな人、心を迷はしけり。衣川の子なれば

とて、袈裟御前とぞ言ひける。源渡といふ者、一門なりければうちとけて言ひければ、はづかしからぬことなりとて、妻とな

もりとほ

しけり。かくて三年をへて、女房は十六歳になりぬ。その年の三月中旬、注2橋

供養あり。注3遠

藤武者盛遠、生年十七歳、その日の

こし

すだれ

奉行なり。供養すぎて諸人みな下向するうちに、十六、七ばかりの女房の、輿にのらんとて

うち上ぐるをア見れば、世にaあり

がたき女なり。盛遠、目くれ心消えて、輿に付きて行くほどに、渡が家にイ入りたり。聞き及びし衣川の娘ならんと、それより

春の末つかた、秋の半ばまで病ひにふし、案じわづらひけるが、b心をきはめ、衣川のもとへ行きて刀を抜き、衣川が胸にさし

当て言ひけるは、「A我がためには伯母なれども敵なり。袈裟御前を渡に嫁し、我ひとり恋路に迷ひ、このこと思ひ積もる心よ

をひ

り、命も消え失せんとす。これこそ伯母の甥を殺すといふものなり。生きてもの思ふも苦しけれ甲ば、敵とともに死なんと思ふ

なり」。衣川は魂も消え失せけるが、「汝それほどに思ふとはc知らで、渡が奪ひ取りて帰れり。Bいかがせん。我これをはから

ん」とて、娘の方へ人を遣はし呼び寄せて、盛遠が有様をウ語り涙を流しけり。娘はこれを聞きて、d心うきことに思ひしが、親

のためにはいかなる孝養をもするものなり、夫のためには命に替はるは女の道なりと思ひ、母をなぐさめ、「互に心安くちぎ

り申すべし。さも思ひ立ち給はば、自らはかりごとを語るべし」。盛遠大いによろこび、そのはかりごとを問ふ。女の言ふや

わらは

うは、「妾は帰りて左衛門尉が髪をあらはせ、酒に酔はせてふさしめん。東枕して窓の下に髪のぬれたるをしるしに、首をう

ち給へ」。盛遠、許諾して帰る。女房は家に帰り、渡に酒をすすめ、酔ひふしたるを注4帳

台の奥にかき入れ、自ら髪をぬらし、

そで

C烏帽子を側に置きてふせり。夜半ごろに盛遠しのび入りて探り求むるに、ぬれたる髪ありしを、ただ一刀に首を切り、袖に包

み家に帰りて見れ乙ば、女の首なり。盛遠は大いに驚き、その首を抱き、夫の命に替はりけるよと悲嘆の涙に沈みしが、また思

ひなほし、ただちに渡が家に行きて、始終の趣きを語りて、「今、我が首をうち給へ。さぞや残念にeおぼすらんと推しはかり、

右ページから問題開始

紙―23― h25 B方式

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数  

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英  

公募制推薦入試

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公募制推薦入試

(国   語)

現代社会学部

AO入試

150 国︲10

問六

線部C「烏帽子を側に置きて」について、次の問に答えなさい。

Ⅰ「烏帽子」を着用した人物の絵を、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

45

紙―18― h25 B方式

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問五

線部B「いかがせん」の「いかが」(解答番号は

42

)・「せ」(解答番号は

43

)・「ん」(解答番号は

44

)の

文法的説明として最も適当なものを、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

42

「いかが」

名詞

動詞

形容詞

形容動詞

連体詞

副詞

43

「せ」

サ行四段活用動詞の未然形

サ行四段活用動詞の連用形

サ行四段活用動詞の已然形

サ行変格活用動詞の未然形

サ行変格活用動詞の連用形

サ行変格活用動詞の已然形

44

「ん」

推量の意味の助動詞の終止形

推量の意味の助動詞の連体形

推量の意味の助動詞の已然形

意志の意味の助動詞の終止形

意志の意味の助動詞の連体形

意志の意味の助動詞の已然形

紙―19― h25 B方式

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問三

線部甲「ば」(解答番号は

39

)・乙「ば」(解答番号は

40

)と文法的意味・用法の同じものを、次の

の中から一つずつ選びなさい。

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする

思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを

いひ

しひ

家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る

偽りのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし

にきた

熱田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

問四

線部A「我がためには伯母なれども敵なり」は、どういうことを言ったものですか。最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

41

すでに死んだも同然の自分にとっては、伯母であっても恋敵であっても同じことで、とにかく誰かを道連れにして死

ぬしかない、ということ。

袈裟御前への恋情に苦しむ自らを、せめて来世にて救うためには、袈裟御前を渡に嫁がせた衣川を仮に敵と見なすの

が得策である、ということ。

衣川が袈裟御前を渡に嫁がせたために、果たせぬ思いで自らの命も消え失せようとしているのであって、伯母である

衣川が、そういう意味では敵同然である、ということ。

一門だからという理由で袈裟御前を渡のもとに嫁がせた衣川は、自分にとってはあくまで伯母だが、袈裟御前にとっ

ては敵のようなものである、ということ。

命をもかけた自分の恋路を邪魔する者は、たとえ血のつながった伯母でも敵と同様なのであって、恋を成就するため

には殺すしかない、ということ。

紙―20― h25 B方式

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問一

線部a〜eの意味として最も適当なものを、それぞれ次の

の中から一つずつ選びなさい。

解答番号は

31

35

31

a「ありがたき」

どこにもいるはずのない

非のうちどころなく尊い

めったにないほど美しい

比類なく貞淑な

うちとけにくい

32

b「心をきはめ」

思いつき

発奮し

悩み尽くし

決意し

もの思いに沈み

33

c「知らで」

知らなくて

知りたくて

知ってはいたが

知らず知らず

知るはずもなく

34

d「心うき」

つらい

せつない

いたわしい

気がかりな

気に入らない

35

e「おぼすらん」

思っていることでしょう

お思いになっていることでしょう

お思いになったことでしょう

思うことでしょう

きっと思われることでしょう

問二

線部ア「見れ」(解答番号は

36

)・イ「入り」(解答番号は

37

)・ウ「語り」(解答番号は

38

)の動作の主

体(主語)を、次の

の中から一つずつ選びなさい。

源渡

衣川

袈裟御前

盛遠

以外の人物

紙―21― h25 B方式

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音楽実技

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英  

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一般入試

国  

公募制推薦入試

(国   語)

現代社会学部

AO入試

国︲11

問八

問題文に載る話に関して記された次の漢文について、後の問に答えなさい。

忠臣不レ

二君一

、貞女不レ

見二

両夫一

。蓋袈裟女之謂也。

に入る最も適当な漢字一字を、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

49

使

線部「蓋袈裟女之謂也」の現代語訳として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。

解答番号は

50

思うに袈裟御前のことなのだろう。

恐らく袈裟御前の言ったことなのだろう。

どうして袈裟御前のことであろうか、いや、そんなはずはない。

きっと袈裟御前の発言に違いない。

まさか袈裟御前がそんなことを言うだろうか。

問九

次の文中の

51

52

(解答番号同じ)に入る最も適当な言葉を、それぞれ後の

の中から一つずつ

選びなさい。

おくに

問題文に載る話は、鎌倉時代もしくは南北朝期の成立と考えられる軍記物語『

51

』のほか、出雲阿国が創始

し元禄期に隆盛した

52

や浄瑠璃などの演劇にも取り上げられ、広く人々に知られていった。

51

太閤記

源平盛衰記

幻住庵記

神皇正統記

方丈記

52

狂言

幸若舞

歌舞伎

猿楽

(国語

問題

おわり)

紙―16― h25 B方式

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Ⅱ「烏帽子を側に置」いた理由として最も適当なものを、次の

の中から一つ選びなさい。解答番号は

46

盛遠に自分の居場所がよくわかるようにするため。

盛遠が夫を見付けやすいようにするため。

盛遠の視線をそらして逃げ出せるようにするため。

自分が夫と見誤られないようにするため。

自分を夫だと思い込ませるようにするため。

問七

問題文の内容と最もよく合致するものを、次のA群(解答番号は

47

)・B群(解答番号は

48

)の

の中か

ら、それぞれ一つずつ選びなさい。

47

A群

袈裟御前は、母を救うために、やむを得ず夫を犠牲にした。

袈裟御前の計略は、あと一歩のところで失敗に終わった。

盛遠の思いを知って、袈裟御前は一瞬とはいえ浮気心を起こした。

袈裟御前の母は、盛遠を殺してやろうと思っていた。

袈裟御前は、自ら進んで夫の身代わりとなって死んだ。

48

B群

以前から病気がちだった盛遠は、半ば自暴自棄に陥っていた。

盛遠は、袈裟御前の計略の真意を知らなかった。

盛遠は、渡を殺して自分も死のうと思っていた。

ぼだい

渡は、盛遠への恨みを抱きながらも出家して、袈裟御前の菩提を弔った。

盛遠は、袈裟御前に欺かれたことが大変口惜しくて、出家した。

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