製造業43 第1章 第1節 小規模な事業所が支える東京の製造業 (2)...

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Page 1: 製造業43 第1章 第1節 小規模な事業所が支える東京の製造業 (2) 従業者数10人未満の事業所が8割超 従業者規模別の事業所数の構成比は、東京では10人未満の事業所が全体の81.4%を占め、30人未満の事
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製造業第1章

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第1章 製造業

1 小規模な事業所が支える東京の製造業(1) 縮小する東京の製造業 日本の製造業を取り巻く環境は、グローバル化の進展による競争の激化、新興国のキャッチアップ、資源価格の高騰や電力コストの上昇などにより、厳しさを増しています。これに加え、都内に立地する製造業は、地価や物価、人件費等の事業コストの高さや、狭隘なスペース、住工混在などの問題を抱えています。こうした中で、東京の製造業は、2000年代において事業所数、従業者数、出荷額等、付加価値額のいずれにおいても減少傾向で、2008年は1998年の約6割程度となっています。(図1) 出荷額等が上位10位までの都道府県の事業所数、従業者数、出荷額等をみると、東京は、事業所数は2番目に多いものの、従業者数は6番目、出荷額等は10番目となっており、他の道府県と比べると事業所数に対して従業者数が少なく、比較的小規模な事業所が多いことがわかります。また1都3県(埼玉、千葉、神奈川)の中で比べると、東京は事業所数は最も多いものの、出荷額等は最も少なくなっています。(図2) 2008年の出荷額上位10都道府県の2000年と2008年の事業所数と出荷額等の増減率は、事業所数ではすべての都道府県で減少しており、なかでも東京の減少率は、33.3%と最も大きくなっています。一方、東京と神奈川のみが減少している出荷額等でも、東京の減少率は31.3%と事業所数と同様に最も大きくなっています。また、全国平均と比較すると、事業所数は東京、全国平均ともに減少しており、出荷額等は全国平均がプラスに対し、東京はマイナスとなっています。(図3)

図1 事業所数・従業者数・出荷額等・付加価値額の推移(東京)

図2 都道府県別事業所数・従業者数・出荷額等   (全国、2008年)

図3 都道府県別事業所数・出荷額等増減率   (全国、2008/2000年)

Page 3: 製造業43 第1章 第1節 小規模な事業所が支える東京の製造業 (2) 従業者数10人未満の事業所が8割超 従業者規模別の事業所数の構成比は、東京では10人未満の事業所が全体の81.4%を占め、30人未満の事

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第1章

第1節 小規模な事業所が支える東京の製造業

(2)  従業者数10人未満の事業所が8割超 従業者規模別の事業所数の構成比は、東京では10人未満の事業所が全体の81.4%を占め、30人未満の事業所まで合わせると95.8%になり、比較的小規模な事業所が多くなっています。全国では、10人未満の事業所が69.3%、30人未満の事業所が89.6%であることから、東京は全国平均以上に小規模な事業所の割合が高くなっています。一方、出荷額等の構成比は、30人以上の事業所が東京では7割を超え、全国でも9割近くに達しており、大規模な事業所が大きな割合を占めています。(図4) 2000年と2008年の従業者規模別の従業者数増減率は、全ての規模で減少がみられます。最も大きく減少したのは4~9人の規模、次いで1~3人の規模の事業所となっており、小規模な事業所が大きく減少しています。(図5)

(3) 家族経営の小規模な事業所が比較的多い皮革・同製品、繊維工業 中分類別の1事業所当たりの従業員数は、情報通信機械が最も多く、次いで輸送用機械、化学工業が続いています。一方、繊維工業は最も少なく、木材・木製品、皮革・同製品、家具・装備品が続いています。また、皮革・同製品や繊維工業では従業員規模3人以下の事業所が約7割、10人以下の事業所を含めると約9割と、小規模な事業所の割合が高い一方、化学工業や情報通信機械では300人以上の大規模な事業所の割合が他の業種に比べ高くなっています。(図6) 就業形態別では、水産食料品や缶詰、パン・菓子などの製造を行う食料品は、パート・アルバイト等の割合が約半数と高くなっています。また、皮革・同製品や繊維工業は、個人事業主及び無給家族従業者の割合が約2割です。業種によって若干ばらつきはあるものの、ほとんどの業種では正社員・正職員等の割合が最も高くなっており、製造業全体でも約7割が正社員・正職員となっています。(図7)

図4 従業者規模別事業所数・出荷額等構成比   (東京・全国、2008年)

図5 従業者規模別・期間別従業者数増減数(東京)、従業者規模別増減率(東京、2008/2000年)

図6 中分類別・1事業所当たり従業者数、従業者規模別事業所数構成比(東京、2008年)

図7 中分類別・就業形態別従業者数構成比(東京、2008年)

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第1章 製造業

2 印刷、輸送用機械など様々な製品を生み出している東京の製造業(1) 東京の製造業の中で大きな比重を占める印刷・同関連業 東京と全国における製造業の中分類別の事業所数構成比は、東京では金属製品の割合が大きい点は全国と共通し、印刷・同関連業は全国に比べ大きく、食料品、繊維工業は小さくなっています。また、出荷額等構成比は、輸送用機械が比較的大きい点は全国と共通し、印刷・同関連業は全国に比べ大きく、化学工業や鉄鋼業、電子・デバイス等は小さくなっています。なお、東京の事業所数上位5業種は比較的小規模な事業所の割合が高い業種である一方、出荷額等上位5業種は比較的大規模な事業所の割合が高い業種という特徴がみられます。(図1)

(2) 事業所数、出荷額等ともに全国比が高い東京の印刷・同関連業、皮革・同製品 次に、中分類別に東京の事業所数とその全国比、全国順位をみると、事業所数の多い印刷・同関連業、金属製品、生産用機械はそのいずれも高く、全国順位はそれぞれ第1位、第2位、第3位となっています。製造業全体で事業所数が多く、全国第2位(42頁図2参照)の東京は、他にも全国比が36.2%を占める皮革・同製品のように、事業所数の全国順位の高いものが数多くあります。(図2) また、出荷額等の大きな印刷・同関連業、情報通信機械はその全国比、全国順位も高く、印刷・同関連業が全国比22.9%で出荷額等全国第1位、同じく情報通信機械が7.7%で第3位となっています。出荷額等は大きくなくてもその全国比や全国順位の高い業種もあり、8業種が全国で10位以内に入っています。なかでも、事業所数の全国比が高い皮革・同製品は出荷額等でも全国比28.6%と高くなっています。(図3)

図1 中分類別事業所数・出荷額等構成比(東京・全国、2008年)

図2 中分類別事業所数・全国比・全国順位(東京、2008年)

図3 中分類別出荷額等・全国比・全国順位(東京、2008年)

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第1章

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第2節 印刷、輸送用機械など様々な製品を生み出している東京の製造業

(3) 出荷額等が大きいオフセット印刷物、全国比の高いなめし革製旅行かばん 東京における品目別の製造業の出荷額等は、 「オフセット印刷1物(紙に対するもの)」が約9,800億円と最も大きくなっています。2位以下は、電子部品・デバイス関連、携帯電話機関連、自動車部品関連、航空機部品関連など様々な業種にわたる品目が続いており、東京の製造業がバラエティーに富んでいることがわかります。なお、上位20品目のうちオフセット印刷物の都内産出事業所数が約3千所に上るのに対し、携帯電話機やPHS電話機、はん用コンピュータの産出事業所数は数か所となっています。(図4) 品目別出荷額等の全国比は、 「なめし革製旅行かばん」が76.8%、 「補聴器」が63.2%、 「豚革」が60.0%を占めています。また、 「ラジオ放送装置,テレビジョン放送装置」や「飛しょう体、同部分品・付属品」、

「写真製版」は、出荷額等に加えその全国比も高くなっています。上位20品目を中分類別にみると、 「皮革・同製品」に属するものが9品目と最も多くなっています。(図5)

(4) 半世紀前は多くの業種で出荷額が1位であった東京の製造業 産業分類別に出荷額等が1位の都道府県の推移をみると、1955年、1965年には、東京は多くの業種で1位であったものの、それ以降は愛知県等の他府県に移っています。特に以前は東京が1位であった機械関係の3業種(一般機械、電気機械、輸送機械)は、いずれも現在は愛知県になっています。一方、 「印刷・同関連業」と「皮革・同製品」は、2008年においても1位となっています。(図6)

注1 版を直接紙に転写するのでなく、版につけたインキを一度ブランケットなどの中間転写体に転写した後に紙に印刷する印刷方式。

図4 品目別出荷額等(東京、2008年) 図5 品目別出荷額等全国比(東京、2008年)

図6 産業別出荷額等1位都道府県の推移(全国)

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第1章 製造業

3 大規模な事業所が多い多摩、小規模な事業所が多い城東(1) 事業所数が最も多い大田区 東京の製造業の立地を区市町村別にみると、事業所数は上位10位すべてを区部が占めています。東京を8つの地域区分にわけると、城南地域の大田区が最も多く、以下、墨田区、葛飾区、足立区などの城東地域が続きます。また、従業者数では、最も多いのが大田区、次いで板橋区であり、事業所数と同様に城東地域の区も多いものの、八王子市や日野市といった多摩地域の市もあります。一方、出荷額等では輸送用機械の出荷額等が多い日野市や、情報通信機械の出荷額等が多い府中市をはじめ、7つの多摩地域の市町が上位10位までに入っています。(図1)

(2) 事業所数、従業者数が大きく減少している区部  2000年から2008年までの間の、事業所数、従業者数の減少率が大きな地域は区部に多い傾向が見られ、特に、港区、渋谷区、目黒区、世田谷区でともに大きくなっています。地域区分ごとでは、事業所数の減少率が大きいのは都心、副都心、城西の順、従業者数は都心、城西、城南の順になっています。一方、3割未満にとどまる地域は事業所数では島しょと多摩、従業者数では島しょ、多摩及び城北です。島しょ地域は事業所数、従業者数ともに絶対数が小さいものの、おおむね横ばいです。(図2)

図1 区市町村別事業所数・従業者数・出荷額等(東京、2008年)

図2 区市町村別事業所数・従業者数増減率の分布図(東京、2008/2000年)

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第3節 大規模な事業所が多い多摩、小規模な事業所が多い城東

(3) 都内出荷額等の半分以上を占める多摩地域 地域区分別の出荷額等は、多摩が最も大きく、東京都全体の半分以上を占めており、次いで城東、城南、城北の順です。また、出荷額等の減少率は、都心や城西が大きいのに対して、島しょや城北は比較的小さくなっています。なお、事業所数の減少率(前のページの図2参照)よりも出荷額等の減少率の方が大きい地域は都心、城西、城南、多摩、島しょです。特に島しょは出荷額等の減少率が事業所数の減少率を10ポイント以上、多摩も5ポイント以上、上回っています。(図3) 

(4) 出荷額等が区部で大きい印刷・同関連業、多摩で大きい輸送用機械 区部、多摩、島しょのそれぞれの地域の中分類別出荷額等は、区部では印刷・同関連業の割合が約30%と最も高く、多摩は輸送用機械、情報通信機械がそれぞれ約20%、次いで電気機械が約10%を占めています。農業や水産業が主な産業である島しょは、食料品の割合が約45%と高く、窯業・土石や飲料・飼料等が続いています。(図4)

(5) 機械・金属関連の業種が多い城南 中分類別の地域区分ごとの事業所数は、事業所数では城東が最も多く、18,775所が立地しています。城東は金属製品が最も多く、皮革・同製品、繊維工業も多いことが特徴的です。城南は、区市町村の中で事業所数が最も多い大田区を含んでおり、生産用機械、金属製品の事業所数が多いほか、はん用機械やプラスチックのように、他の地域にはみられない業種が上位に入っています。多摩は、出荷額等の大きな市町を含んでおり、生産用機械、金属製品、電気機械の事業所が多く、島しょでは食料品の事業所数が最も多くなっています。なお、印刷・同関連業は、都心、副都心、城西、城北の4つの地域で最も多い業種であり、城東で2位、多摩でも4位となっています。(図5)

図3 地域別出荷額等・増減率(東京) 図4 地域別・中分類別出荷額等構成比(東京、2008年)

図5 地域別・中分類別事業所数(東京、2008年)

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第1章 製造業

(6) 金属製品は城南、城東が中心 東京の事業所数、出荷額等を区市町村別にみると、印刷・同関連業は、都心や副都心、城東、城北の地域に事業所が多く立地しています。特に、板橋区は事業所数4位にも関わらず出荷額等が1位であり、出荷額等の大きな事業所が立地していることがうかがえます。金属製品は、城南及び城東地域で多く、城南の大田区が事業所数、出荷額等ともに1位、品川区が事業所数7位、また、城東の区が事業所数2位から6位まで、出荷額等2位から7位までを占めています。一方、輸送用機械は、大企業の事業所が立地する日野市や羽村市、瑞穂町の出荷額等が大きくなっています。情報通信機械でも大手メーカーの事業所が立地する府中市の出荷額等が大きくなっており、この2つの業種では、大企業の工場が立地する多摩地域が大きな比重を占めています。生産用機械は、事業所数、出荷額等ともに1位の大田区や品川区を含む城南のほか、城東、多摩でも盛んです。皮革・同製品は城東地域の区が、事業所数、出荷額等ともに上位です。なお、事業所数、出荷額等ともに、比較的事業所規模が小さな業種である金属製品や皮革・同製品は城東の区の割合が高く、比較的事業所規模が大きな業種である輸送機械や情報通信機械は多摩の市の割合が高い特徴があります。(図6)

図6 区市町村別中分類別事業所数・出荷額等構成比(東京、2008年)

図7 地域別1事業所当たり従業者数・   出荷額等(東京、2008年)

図8 区市町村別工場用地面積(東京、区部2006年、多摩2007年)

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第3節 大規模な事業所が多い多摩、小規模な事業所が多い城東

(7) 小規模な事業所が立地する区部、大規模な事業所が立地する多摩 次に、地域区分別の1事業所当たりの従業者数及び出荷額等は、どちらも多摩が最も大きく、区部の各地域の2倍以上です。また、区部の中で事業所の規模が最も小さい地域は城東、次いで城西であるのに対し、事業所の規模が最も大きいのは城北となっています。その一因として、業種ごとの規模の違いと地域ごとの業種の分布との関連が考えられます。なお、島しょ地域は事業所の規模が全地域の中で最も小さくなっています。(図7) 

(8) 大田区は工場用地の面積が最大、武蔵村山市は減少率が最大 東京における工場面積を区市町村別にみると、大田区が最も多く、次いで足立区、八王子市、江戸川区の順となっています。区部では、専用工場だけでなく、住居併用工場も多くみられ、特に墨田区や葛飾区などは、住居併用工場の面積の占める割合が高くなっています。(図8) 工場用地の減少率は、2000年代前半に日産自動車㈱村山工場の閉鎖があった武蔵村山市が最も大きく、㈱IHIの工場が移転した西東京市も大きくなっています。また、区部で減少率が大きな目黒区や千代田区、中央区などでは多摩地域と異なり、専用工場だけでなく、住居併用工場の減少率も大きくなっています。(図9) 工場用地の減少率が最も大きい武蔵村山市における業種別の従業者数は、自動車・同附属品が最も減少しているほか、都内需要の3割を自動車及びその部品が占める1工業用プラスチック製品など、素材関連の品目の中小規模事業所でも減少しています。(図10)

(9) 操業環境に課題を抱える事業所が過半数 操業環境で困っている点については、3割以上の事業所が「住民への気遣い」と回答しており、 「住宅増」、

「拡充不可」とする回答も15%を超えています。「特に無し」とする回答は半数を下回っています。地域別では、 「特に無し」とする回答は都心は7割、副都心は6割を超えているのに対し、城北では4分の1弱にとどまり、次いで城東が低く、他の地域も5割未満となっています。事業所数や従業者数、出荷額等の減少率が比較的小さく、工場が残っている地域の方が、操業環境で困っている傾向がみられます。(図11)

注1 平成 17 年(2005 年)東京都産業連関表をもとに東京都産業労働局で計算。

図9 区市町村別工場用地増減率・寄与度   (東京、区部2006/1996年、多摩2007/1997年)

図10 武蔵村山市の小分類別従業者増減数 (武蔵村山市、2006/1999年)

図11 地域別操業環境で困っている点(東京、2012年)

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第1章 製造業

(10) 都内立地は交通の利便性や取引先等の集積にメリット、一方で高いコスト負担感 都内の製造業の企業において、都内にある機能の今後の方向性をみると、現状維持が7~8割と大半を占めますが、今後拡大する機能としては、 「営業・販売機能」(19.2%)、 「高付加価値品の生産機能」

(16.9%)、 「研究・技術開発機能」(15.5%)、 「企画・マーケティング機能」(14.8%)など付加価値に結びつく機能の回答が多くなっています。(図12) 都内立地のメリットでは、 「交通の利便性がある」(60.5%)が最も高く、次いで「受注先が近い」(45.9%)、

「販売・納品先が近い」(31.0%)、 「部品・資材の調達のしやすさ」(29.7%)、 「外注先が近い」(26.6%)など取引先等が集積しているメリットを高く評価しています。一方、都内立地のデメリットでは、 「地価・家賃が高い」(50.5%)が最も高く、次いで「人件費が高い」(39.5%)となっており、コスト負担感を強く持っています。(図13) 立地周辺地域における移転・廃業等による変化の有無を用途地域別にみると、工業専用地域、工業地域、準工業地域の工業系用途地域で「変化があった」とする割合が高く、いずれも約6割となりました。また、立地環境の変化の状況をみると、準工業地域では、 「住宅増」が62.9%と最も高くなっています。(図14)

図12 製造業の現在都内にある機能の   今後の方向性(東京、2012年)

図13 都内立地のメリット・デメリット(東京、2012年)

図14 移転・廃業等による立地環境の変化(東京、2012年)

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第3節 大規模な事業所が多い多摩、小規模な事業所が多い城東/第4節 技術革新やグローバル化対応などの課題に取り組む製造業

(11) 各地域に受け継がれる伝統工芸 技術革新が進む一方で、東京の各地域には時代を超えて受け継がれた伝統工芸品が数多くあり、現在東京都伝統工芸品に41品目が指定されています。主な製造地は、城東地域が最も多く、特に台東区では26品目と伝統工芸品の製造が盛んです。一方、江戸時代から神田川等の水を活用した染色が行われていたことから、東京染小紋や東京手描友禅、江戸更紗、東京無地染といった染色関係の品目は新宿区や城西地域で盛んです。なお、多摩地域の伝統工芸品としては村山大島紬、多摩織があり、島しょ地域の伝統工芸品としては黄八丈があります。いずれも繊維工業関連の品目です。(表1)4 技術革新やグローバル化対応などの課題に取り組む製造業

(1) 技術革新に取り組む製造業 2005年度から2011年度の内部使用研究費支出額の推移は、企業(製造業)がどの年度も6割以上となっており大きな割合を占めています。リーマンショック後の不況の影響もあり、全体では2009年度以降横ばいが続く中で、製造業は2011年度にわずかに増加しています。また、製造業の総売上高に占める研究費の割合は近年やや上昇傾向であり、厳しい環境でも企業は研究活動を重視して一定の割合を研究費に充てていることがうかがえます。(図1) 研究開発のみならず、日常の生産活動においても製造業の中小企業は、顧客との協同作業の中で技術力を高めています。日本の製造業の強みは、すり合わせ技術にあるといわれ、発注元の設計書をもとに自ら加工方法や手順を考えるのみならず、顧客から示された仕様をもとに自ら設計を行ったり、さらには顧客から示されたニーズなどを元に、仕様についても顧客とともに決めるなど、技術に裏打ちされた提案能力が活用されています。(図2)

表1 東京の伝統工芸品(東京、2012年)

図1 内部使用研究費支出額の推移(全国) 図2 中小企業(製造業)の主要な発注元との関係における   生産・加工方法の決定方法(東京、2012年)

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第1章 製造業

(2) 輸送機械製造業で増加する海外現地法人企業 製造業の海外現地法人企業数は、2001年度から2011年度までの間に3割以上増加しています。業種別では、輸送機械が最も多く、次いで、化学、情報通信機械、電気機械の順となっています。増加率では、輸送機械は2001年度から2011年度までの間に6割以上増加しているのに対し、化学、情報通信機械、電気機械、食料品、繊維はほぼ横ばいです。(図3) 

(3) グローバル化により現地調達が進む製造業の海外現地法人 製造業海外現地法人の調達先別の仕入高は、最も大きく増加しているのは現地調達であり、2011年度は2000年度の2倍以上となり、全体の6割弱を占めています。特に輸送用機械における現地調達額は3倍以上に増加しています。一方、日本からの輸入による調達は、製造業全体で2000年度の14兆円から2011年度の16兆円へ増加しているものの、現地調達額に比べると伸び率は小さくなっており、特に輸送用機械以外の業種ではおおむね横ばいにとどまっています。これらのことから、2000年代を通じて、海外現地法人の生産に関しては、輸送用機械などを中心として、現地調達が進んだことがうかがえます。(図4) 次に、地域、国別に仕入高の調達先別構成比をみると、日本からの輸入による調達の割合はNIEs3で高くなっており、情報通信機械における日本からの輸入が多いことが原因です。現地調達の高い中国、ASEAN4、アメリカのうち、中国は日系企業からの現地調達が少なく、地場企業からの現地調達が他に比べ多くなっています。アメリカは輸送機械において日系企業からの現地調達が大きいことなどにより、その割合が他の国・地域に比べて大きくなっています。第三国からの輸入による調達はEUとNIEs3で多く、EUでは輸送機械におけるヨーロッパ(EU加盟国を含む)からの輸入が、NIEs3では情報通信機械におけるアジアからの輸入が多いことが主な原因です。(図5)

(4) 環境関連等の新規分野への参入を目指す都内中小製造業 都内中小企業の新規分野への参入の意向は、全体では、環境が11.5%と最も高く、スポーツ・健康・医療福祉、エネルギーと続いています。一方、一般・精密機械ではロボットや航空機・宇宙も高く、材料・部品(金属)でも航空機・宇宙が比較的に高くなっており、業種ごとに特徴がみられます。(図6)

図3 製造業の業種別現地法人企業数の推移   (全国)

図4 製造業業種別・調達先別海外現地法人   仕入高の推移(全国)

図5 地域、国別・製造業海外現地法人   調達先別仕入高構成比(全国、2011年度)

図6 業種区分別都内中小製造業の新規分野として   取り組みたいと考える事業分野(東京、2012年)

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第1章

○航空機産業の現在とAMATERASの誕生 現在、日本の航空機産業の生産額は約1兆2000億円と言われており、今後人々の国境を越えた移動の活発化に伴い、更なる拡大が予想されます。都内には、航空機産業で必要とされる先端技術・高度な技術を持つ企業が数多くあります。製造業を取り巻く環境が厳しさを増している昨今、今後の成長を見込める航空機産業への参入を目指す企業も少なくありません。しかし、航空機産業は安全性に対する要求レベルが非常に高く、数十年に渡る長期間の品質保証を求められ、また国際的な品質管理基準への対応や認証取得の必要がある等、高い参入障壁があることでも知られています。 そうした中、東京都の航空機産業参入支援事業をきっかけとして、航空機産業に実績を持つ都内の部品加工企業10社が、さらなるマーケットの獲得を目指して設立したのが、企業集合体(コンソーシアム)「AMATERAS」です。

○新市場開拓を目指すビジネスモデル AMATERASの最大の特徴は、板金・プレスから、放電、レーザー /電子ビーム、切削、表面処理、絞り、熱処理までの広い範囲に及ぶ高水準の技術を持つ企業が結集し、「一貫生産」できる体制を整えたことです。このグループのメンバーはもともと航空機産業への参入実績のある企業です。ただし、AMATERAS結成以前は、国内メーカーから個別に加工受注していたため、メーカーは複数の企業と契約を結ぶ必要がありました。それが、AMATERAS結成後は、一つのオーダーで一貫生産を行い、メーカーのニーズに対応できるようになりました。 さらに、海外マーケットの獲得も現実的に視野に入るようになってきました。元来、海外との取引は、距離、英語力及び国際規格の取得等、困難も多いものです。それでも、きめ細かい管理、安定した品質とスピード感を強みに事業展開すれば、成功の可能性は十分にあると考えられます。海外の展示会に出展を続けながら、継続的に海外市場にチャレンジをしていく予定です。

○企業連携の課題と成果 一貫生産への市場ニーズは高いものの、課題も多くあります。その一つが、工程をまたがる中間検査や品質保証の方法です。国内メーカーの発注システムがまだ一貫生産に対応していないケースもあり、一貫生産のメリットを十分に発揮することができないこともあります。さらに、一貫生産の工程中に不具合品が発生してしまった場合、部材は高価なものが多いため、損失や補償の企業間での分担方法も問題になります。 また、異なる技術分野の企業が連携して一貫生産を行う場合、仕事の割り振りも難しい問題です。互いの技術を知らなければ仕事の割り振りはできませんし、連携により得られるメリットがメンバー間で大きく異なると、連携の維持が難しくなります。メンバーの技術を熟知しバランスよく仕事の割り振りができる人材の存在が重要です。 AMATERASでは、メンバー間の技術の理解や顧客ニーズの把握のため、東京都の支援を受け定期的に集まり勉強会を実施しています。また、アフター5での交流やフランクな意見交換が互いの信頼関係を築くうえで大きな役割を果たしているとのことです。 実際に、AMATERASとしての活動は、メンバー各社の営業や技術力等によい影響をもたらしています。互いの会社の技術レベルが把握できたおかげで、AMATERAS以外の部分でも協力が可能となり、また、様々な工程に関する知識が身についたことで、より効率的な生産ができるようになる等の成果も現れてきています。

○現在までの実績と今後の取組 AMATERASは設立5年目を迎え、国内外で知名度も上昇し、着実に実績を積み上げています。米国航空部品メーカーへの納入事例は、日本の中小企業コンソーシアムが商社を通さず受注した日本で初めてのケースとなりました。 現在、国内の航空機産業は、国産初の小型ジェット旅客機(MRJ)の開発が進む等、環境が整いつつあります。AMATERASはMRJでも1アイテム獲得していますが、今後も顧客のニーズを適確にとらえ、一貫生産サプライヤーとして、国内、海外でより良い信頼関係を築き、マーケットシェアを拡大していくことを目指しています。

コラム 東京から世界の航空機市場へ!~ 中小企業グループAMATERAS(アマテラス)~

ベルリン・エアショー 2012 に出展

東京都ブース 海外メーカーとの商談