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1 防災を「自分ごと」化するハッカソン! 地震や台風などの災害に立ち向かうには行政だけでなく、国民一人ひとりの知識や備えが大切です。 内閣府では 2015年末に「防災 4.0」未来構想プロジェクトを発足し、災害リスクに立ち向かう取組みを推進しています。 「防災 4.0 ハッカソン」は、その一環として企画されたもの。 コワーキングスペース「LODGE」に集結した約 50 名が防災をハックします! イベント概要 開催日 2017 年 1 月 21 日(土)10:00 – 2017 年 01 月 22 日(日)19:00 開催場所 Yahoo! JAPAN 「LODGE」(東京都千代田区) 主宰 内閣府 協賛 ヤフー株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社ゼンリンデータコム、G 空間情 報センター、いすゞ自動車株式会社、日本気象協会、株式会社 NTT ドコモ、株式会社ドコモ・ インサイトマーケティング、明星電気株式会社 なぜいま「防災 4.0」なのか? 1 月 21 日と 22 日の 2 日間にわたり開催された内閣府主 催の「防災 4.0ハッカソン」。 タイトルの「防災4.0」とは、1959 年の伊勢湾台風、1995 年の阪神・淡路大震災、そして 2011 年の東日本大震災 これらの大災害の度ごとに講じられてきた措置を、それ ぞれ「防災1.0」「防災2.0」「防災3.0」と捉え、激甚化 に備えるためのこれからの取組みを指します。 HackCamp ハッカソン・ビジコン 実施例

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防災を「自分ごと」化するハッカソン!

地震や台風などの災害に立ち向かうには行政だけでなく、国民一人ひとりの知識や備えが大切です。

内閣府では 2015年末に「防災 4.0」未来構想プロジェクトを発足し、災害リスクに立ち向かう取組みを推進しています。

「防災 4.0ハッカソン」は、その一環として企画されたもの。

コワーキングスペース「LODGE」に集結した約 50名が防災をハックします!

イベント概要

開催日 2017年 1月 21日(土)10:00 – 2017年 01月 22日(日)19:00

開催場所 Yahoo! JAPAN 「LODGE」(東京都千代田区)

主宰 内閣府

協賛 ヤフー株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社ゼンリンデータコム、G 空間情

報センター、いすゞ自動車株式会社、日本気象協会、株式会社 NTTドコモ、株式会社ドコモ・

インサイトマーケティング、明星電気株式会社

なぜいま「防災 4.0」なのか?

1 月 21 日と 22 日の 2 日間にわたり開催された内閣府主

催の「防災 4.0ハッカソン」。

タイトルの「防災 4.0」とは、1959 年の伊勢湾台風、1995

年の阪神・淡路大震災、そして 2011 年の東日本大震災

これらの大災害の度ごとに講じられてきた措置を、それ

ぞれ「防災 1.0」「防災 2.0」「防災 3.0」と捉え、激甚化

に備えるためのこれからの取組みを指します。

HackCamp ハッカソン・ビジコン 実施例

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イベント冒頭には内閣府の松本洋平副大臣が登壇し、参

加者に向けて「自分ごととして防災を考えてほしい」と

熱いエールを送りました。今回のお題は「もし自分の周

りで災害が発生した時に必要なサービスやアプリ」。防災

を「自分ごと」として捉え、有事の際に自分が本当に必

要なものを創り出すことが求められています。

(松本洋平内閣府副大臣)

その前段として、減災インフォ発起人の小和田香さんに

よるインプットセミナーが開催されました。

従来の防災対策は国や自治体が担う「公助」が主流でし

たが、今後ますます激甚化する災害に立ち向かうには地

域で助け合う「共助」や、一人ひとりが災害に対して備

える「自助」が欠かせません。

小和田さんは「スマートフォンが普及したことで、国や

自治体の情報を待つのではなく、自ら情報を取りに行く

人が増えました。ただし、年代別に格差もあります」と

指摘。

また、発災から時間経過ごとに変化する被災者ニーズや、

現状存在する防災アプリなどについても情報が提供され

ました。

(減災インフォ発起人 小和田香さん)

本当に必要なモノって何だろう?

発災後の自分と周囲をとことん考える

インプットの次はアイデアを発散させるアイデアソンで

す。

HackCamp矢吹博和のファシリテートのもと、個人で災害

が起きたときの状況に思いめぐらせてアイデアを捻り、

続いてグループメンバーで情報共有しながら、サービス

やアプリ開発のプランを取りまとめていきます。

今回は 1チーム 5~6名で、合計 9チームがエントリーし

ています。一部にグループ参加もありますが、初対面の

メンバーがほとんど。自己紹介やアイデアのプレゼンテ

ーションを通して、それぞれの職業やハッカソン参加の

背景、被災体験などが語られ、徐々にチームとしての結

束力が高まっていきます。

この日のアイデアソンの流れ。

まずは自分のことを考え、そのアイデアをチーム内で共

有しながらブラッシュアップさせていく。

発災時に自分が重視するものや心配するものを記載。

アイデアをどんどん発散させながら、課題を抽出してい

く。

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発散したアイデアを整理するために、各自が出した課題

を付箋紙に書き写して、

「発災直後」「避難後 48時間-72時間」「避難後 1週間程

度」という 3つのフェーズでグルーピングする。

専用の用紙を使って、課題解決のためのアイデア出し。

さらにその案をイラストで表現して、さらにアイデアを

膨らませ、チーム内でイメージを共有する。

協賛先提供の災害救助用クラッカーや保存食のエビピラ

フなどを食べつつ、ランチタイムもディスカッションは

続く。

アイデアスケッチを並べて真剣に議論。

「自分ごと」という課題にふさわしいか、本当に必要か、

類似アプリはないか、2 日間でどの程度まで仕上げられ

るのか……話し合うテーマは尽きない。

みんなのアイデアをカタチに

いよいよハックタイムの始まり!

多数のアイデアが生まれ、チーム内での議論も煮詰まり

つつあるところで、ハッカソンのスタート。

ファシリテータを務める若狭正生から、提供されるデー

タや API、ガジェットに関する説明がありました。

窓際には技術メンターがずらりと並び、ハッカソンを支

援します。

日本 IBM様からは、Bluemixのハンズオンサポート。

2016 年 11 月に運用が開始された G 空間情報センター様

から、プローブデータの提供・サポート。

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明星電気株式会社様からは、本会場限定で「稠密気象デ

ータ(POTEKA)」をご提供。

ゼンリンデータコム様から、本会場限定で提供される「全

国避難所データベース」と「いつもナビ」についてご説

明。

NTTドコモ様、ドコモインサイトマーケティング様から、

本会場限定で「モバイル空間統計データ」をご提供。

会場をご提供いただいたヤフー様からは、myThingsのハ

ンズオンサポートもいただきました。

「Raspberry Pi ではじめるおうちハック ~ラズパイと

IoT でつくる未来の住まい」の著者・小菅昌克氏も技術

メンターとして参戦。

今回の審査基準は以下の 4つです。

<1>実現性・・・現実的に防災時に利用できるものか

<2>UI/UX・・・緊急時だけでなく平時も利用できる

仕組みやデザインか

<3>共感・・・審査員自身が素直に自分ごととして使

いたいと思ったか

<4>独創性・・・既存のアプリやアイデアとは差別化

されたオリジナリティ

しかしこれらすべてを満たす必要はなく、特定の項目が

ズバ抜けて評価が高ければ、受賞の可能性があります。

翌日 16 時のプレゼンテーションまでにアイデアソンで

掘り起こした課題解決のアイデアを、いかにして具体的

なサービスやアプリに昇華させることができるのか。そ

れぞれの挑戦が始まりました。

用意されたガジェット

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初日 18時から中間発表。それぞれのチームが現在作って

いるモノや、直面している課題などを報告し合う

2日間の集大成を披露

審査員の表情も真剣そのもの

内閣府主催「防災 4.0 ハッカソン」は 2 日目を迎え、夕

方からプレゼンテーションと審査が始まります。各チー

ム 3分間のプレゼンと 1~2分の質疑応答を行い、そのあ

とは審査員が会場を回りながら各チーム 3 分間のタッチ

&トライ。

一連の内容をもとに厳正な審査が行われました。

審査員を前にプレゼンテーション。

3 分間は意外に早く、着想の話しだけで半分以上が過ぎ

てしまい、肝心のアプリの説明が簡略化されたチームも。

そんな熱い思いになるくらい、防災を自分ごととして考

えた 2日間だった。

今回の審査員は 6人。

左から、臼田裕一郎さん(国立研究開発法人防災科学技

術研究所総合防災情報センター長)、齋藤貴之さん(東京

都総務局総合防災部防災管理調整担当課長)、加藤久喜さ

ん(内閣府政策統括官、防災担当)、寺川奈津美さん(気

象予報士)、小和田香さん(減災インフォ発起人)、及川

卓也さん(一般社団法人 情報支援レスキュー隊 代表理

事)

各チームのテーブルを回ってタッチ&トライ。

防災の現場を知る審査委員だけに「これはどんな意味が

あるのですか」「こういう機能は考えませんでしたか」な

ど質問が多数寄せられた。

「おおきなおせわ」チームは、段ボール箱に QRコードを

貼り、開封せずとも中に入っている救援物資が分かるア

プリを提案。審査の過程で実際の使用感を確認できるの

もタッチ&トライのメリット。

審査員の意見も割れた!?

ユニークなアプリが続々誕生

全 9 チームから多種多様なサービス・アプリが提案され

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ました。

どの作品にも思いが込められ、ユニークな視点を備えて

いたことから、審査員の意見が割れて審査は難航しまし

た。

喧々諤々の議論の結果、以下のチームが表彰されました。

最優秀賞

「自分サバイバル(チーム自分防災)」

≪作品概要≫

発災直後を生き延びることにフォーカスしたアプリ。子

どもがいる場合と、単身者では必要な防災対策が異なる

ため、まずは自分の環境を登録する。平時は似た環境の

人の災害体験情報を共有し、防災対策に生かす。有事に

は危険場所や要救助者などの情報をマップ上に表示して

共有。発災後すぐに適切な情報を得ることで生存率アッ

プが期待できる。

≪審査員講評≫

公助ですべての防災を担うことはできません。自助と共

助が重要なのです。審査にあたって審査員の意見は割れ

ましたが、今回はもっとも「自分ごと」というテーマに

こだわったチームを最優秀賞としました。

≪受賞コメント≫

アイデアソンで議論をしているとき、一口に「自分ごと」

といっても、それぞれ立場が違うことに気づかされまし

た。立場が違えば、成すべき防災対策も、発災時に必要

な情報も異なります。自分の環境に適したものを得るた

めにはどうしたらいいのかを追求しました。開発は夜遅

くまでかかりましたが、頑張ってよかったです!

優秀賞

「Support Chain(ディベロッパートリオと災対本

部スタッフ)」

≪作品概要≫

発災時に有効活用されている指定外避難所に着目。指定

外避難所は行政の管轄下にないため、情報や支援物資が

行きわたりにくく、通信が途絶えると孤立しがち。そこ

でオフライン状況であっても、端末間でデータを融通す

ることで、情報の拡散と集約を可能とするアプリを開発。

≪受賞コメント≫

災害対策を知る自治体職員と、若手デベロッパー3 人組

が、それぞれの経験を生かした作品です。デベロッパー

の 1人はデザイナー。普段はより良い体験を提供する UX

/UIを目指しますが、今回は有事の際に使うモノなので、

まったく違う視点が必要で、良い勉強になりました。

日本気象協会賞

「Siri 隊」

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≪作品概要≫

AI(人工知能)を活用した避難情報アプリ。被災者が食

料や避難所など必要なものをリクエストすると、人工知

能が被災エリアの状況を推測して情報を提供。人や物資

の偏在を回避することができる。

≪受賞コメント≫

親戚が阪神淡路大震災を体験していて、そのとき天候が

悪くなって急遽ブルーシートが必要になったそうです。

気象条件の変化によって被災者が必要とする物資も変化

していくことをうまく盛り込めたと思います。

NTT ドコモ賞

「チーム 10 億食」

≪作品概要≫

企業や団体が保存する備蓄をクラウドで管理する。備蓄

管理の煩雑さから解放される上に、有事の際にはどこに

何があるかがわかるので、日本全国に 10億食あるという

非常食を有効活用できる。

≪受賞コメント≫

仕事で備蓄管理に携わっている経験を生かせました。企

業や自治体がここに行っている備蓄管理を、一つのシス

テムで共有するというアイデアを提案できてよかったで

す。

今回特に防災目的で活用されたデー

タ/API等

・全国避難所データベース(ゼンリンデータコム)

今回最も多くのチームが活用した API – ゼンリンデータ

コムが位置の正確性を確保した全国避難所データを限定

公開。位置情報・利用条件・定員・困難者区分など 17の

項目を詳細に収集、データベース化しており、様々な検

索軸でのデータの抽出が可能。

・モバイル空間統計データ(NTT ドコモ、ドコモイ

ンサイトマーケティング)

各基地局ごとの携帯電話を周期的に把握する仕組みを活

用し「どこにどれくらい人がいるか」などを収集したデ

ータ。人口分布の時間変動、性別・年代別人口、居住地

域別人口、国別外国人来訪者数などを収集。今回のハッ

カソンでは、震災直後の人口動態と併せたマクロ的なデ

ータ把握のために活用され、その有用性を示した。

・POTEKA:稠密気象データ( 明星電気株式会社)

気象様々な場所に設置可能な小型気象計と、それらを結

ぶネットワークで構成され、正確な気象情報をピンポイ

ントで手に入れることができる。気象災害を「自分ごと」

と捉える上で活用できた。

(最後に全員で記念撮影)

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イベントを終えて~内閣府より~

防災や減災の取組みにもっと ICT を活用しようという視

点から、今回のプロジェクトが起こりました。

イベント名称に「防災 4.0」を冠するとか、ロゴに大胆

な色調を採用するとか、我々の発想にはなかったことを

実行できて、ある種のブレークスルーになったと思いま

す。このハッカソンで生まれたアイデアは国の施策に生

かしていきますし、ハッカソン自体が「自分ごと」とい

うコンセプトが広まるキッカケになれば幸いです。

今回のイベント開催にあたってご協力くださった企業の

方々、そして参加してくださったみなさまに、この場を

借りてお礼を申し上げます。

内閣府のみなさん。左から、主査付・大亀寛さん、参事

官補佐・堀江直宏さん、主査・小寺裕之さん

HackCamp 青木から、ハッカソンを終

えて

これまでも多くの自治体や防災関連団体で実施されてき

た防災のハッカソンですが、今回の担当者のお三方の「こ

れからの防災」にかける情熱を伺ううちに「自助・共助」

にフォーカスしたこれまでに無いテーマが生まれました。

企画では多様な人達が集まる場で、いかに「自分ごと」

を意識していただくかを工夫し、トライアルを重ねなが

らアイデアソンの設計を行いました。

株式会社 HackCamp

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