昭和56年3月20日 161

腸炎 ビブ リオ抗原の血清学的研究

II新 しいO:K組 み合せを有する腸炎 ビブ リオ

岐阜県衛生研究所

所 光 男

(昭和55年10月13日 受付)

(昭和55年11月11日 受理)

Key words: Vibrio parahaemolyticus, Serovar, New combination of 0 and K antigen

要 旨

食 幡 患者 由来 の激 ビブ リオ菌株 で,新 しいO:K継 合せ の抗原型 として報告のあつた011:K19,

012:K19,01:K33,03:K51の 抗原型 株について0抗 原お よびK抗 原の抗 原解析を行 い,次 のよ うな成績

を得た.

1.分 離株GI-77-V-4(0113K19),GI-75-V-100(01:K33),GI-75-V-116(03:K51)のO抗 原 は 同 じ

0群 抗 原を有す るパイロ ット株 のO抗 原 と完全に一致 した.

2.GI-77.V-4株 お よびOP-204株 のK抗 原は07:K19パ イ ロッ ト株 のK抗 原 と完全 に一致 した.

3.GI-75.V-100株 は2種 類 のK抗 原を有 してお り,03:K33パ イロ ット株 と共通 なK抗 原 も有 していたが,

主要K抗 原は既知K抗 原型 には該当 しない新K抗 原型 であつ た.

4.GL75-V-116株 は011:K51パ イ βッ ト株 と主要K抗 原は完全 に一致 したが,そ の外にパイ ロッ ト株 と

は非共通 なK抗 原 も有 して いた.

5.。1:K33お よび011:K51パ イ ・ヅ ト株は 主要K抗 原 の外に 既知K抗 原型 には 該 当 しないK抗 原 も有

していた.

緒 言

腸炎ビブリオの0群 とK抗 原の抗原表がSaka-

zaki1)に より設定されて以来,K抗 原はO群 と相

関性があり,一 つのK抗 原は必ず一つのO群 に属

するとされていた2).し か しなが ら,そ の後K30

は03群 と05群 に3)4)5)6),K4はO3群 と04群

に6),K58は01群 と03群7)に 属する組 み 合せ

が報告された.こ れら3種 のK抗 原型は本菌の血

清型別委員会で二つのO群 に属するK抗 原型 とし

て承認 されている.前 報 で近年新K抗 原型の出

現頻度 が 非常 に 高いことを報告したが,新 しい

O:K組 み合せの抗原型も特に魚介類由来株の中

には種 々の組み合 せが 報告されてお り8)9)10),工

藤11),石 橋 ら12)は食中毒患者由来株の中にも新し

い0:K組 み合せの抗原型 の存在を報告 してい

る.し かしながら,こ れらの分離株の抗原型の確

認は市販の型別血清を用いる凝集反応のみに留ま

り,詳 細な抗原解析がなされていない.そ こで本

報は食中毒患者由来株 で新 しい0:K組 み合せ

の抗原型 として報告のあつた011:K19,012:

K19,01:K33お よび03:K51の 抗原型 を 有す

る菌株について抗原解析を行い若干の知見を得た

ので報告する.別刷請求先:(〒500)岐 阜市野一色4-6-3

岐阜 県衛生研究所 所 光男

162 感 染症学雑 誌 第55巻 第3号

材料および方法

使用菌株:011:K19の 抗原型 の菌株は1977年

当研究所で食中毒患者便から分離 したG1-77-V-4

(以下GI-4)を 用い,012:K19抗 原型を有する

菌株 は 大阪府立公衆衛生研究所より分与 された

OP-204を 用 いた.01:K33の 抗原型を有する菌

株 の うち 食中毒患者由来株GI-75-V-100(以 下

GI-100),食 品由来株GI-75-V-156(以 下GI-156)

は1975年 当研究所で分離 した菌株であり,T4814

株は東京都立衛生研究所 より分与された菌株であ

る.03:K51の 抗原型 の 菌株は1975年 当研究所

で食中毒患者便 より分離 したGI-75-V-116(以 下

GI-116) ,富 山県衛生研究所 より分与 された 食品

由来株TY-76-V-73(以 下TY-73)を 用いた.パ

イロット株は東芝生物理化学研究所 より分与 され

た菌株を用いた.0群1～11の 凝集反応用0抗 原

の調製に用いたパイロット株はTable2の 脚注に

示 した.

生化学的性状試験:第1報13)に 準 じて行つた.

抗O血 清の調製:寺 田14)らのグリセリン加熱法

に準 じて調製 した.

抗K血 清の調製:第1報13)に 準じて行つた.

凝集素価測定試験:凝 集反応用0抗 原 は120℃

60分間処理菌液を,凝 集反応用K抗 原は生菌浮遊

液(1%食 塩液 に 約1mg(湿 菌)/1ml浮 遊)を

用い,各 抗血清階段希釈液0.5mlに 対 して,凝 集

反応用抗原0.5mlず つ混和し,O凝 集素価測定試

験は51℃ の湯槽中で一夜放置 したのちに,K凝 集

素価測定試験は37。Cの湯槽中で一夜放置したのち

に判定した.

吸収試験:抗 血清の凝集素吸収試験は第1報13)

に準じて行つた.O抗 体吸収用抗原としては寺田

らのグリセリソ加熱法14)で処理 した菌体を,K抗

体吸収用抗原は0.02%マ ーゾニン処理菌体を用い

た.

ゲル内沈降反応:工 藤15)の方法に準 じて抽出,

精製 した0抗 原 と未吸収抗KO血 清 を 用いて,

細菌学実習提要16)の方法に準 じて行つた.

成 績

分離株の生化学的性状:当 研究所で分離 した供

試菌4株 の生化学的性状 をTable1に 示 した.

GI-4株 のアラビノース非分解以外の生化学的性状

は腸炎 ビブリオの性状と一致した.神 奈川現象は

Table 1 Biochemical characteristics of strains

GI-77-V-4, GI-75-V-100, GI-75-V-156 and GI-

75-V-116 of Vibrio parahaemolyticus

昭和56年3月20日163

a: GI-77-V-4 (011: K19)b: GI-75-V-100 (01: K33)c: GI-75-V-156 (01: K33)d: GI-75-V-116 (03: K51)

GI-100株,GI-156は 陰 性 を,GI-4株,GI-116株 は

陽 性 を示 した.

1.011:K19の 抗 原 型 を 有 す るGI-4お よび

012:K19の 抗 原 型 を 有 す るOP-204株 の抗 原解

析

1.O抗 原:Table2に 示 した よ う に,GI-4

株 の未 吸 収 抗O血 清 を07:K19パ イ ロ ッ ト株 お

よびOP-204株 の加 熱 死 菌 で 吸収 した 吸 収 血 清 は

05群 抗 原 に 対 して640倍,011群 抗 原 お よび免

疫 菌 株 に 対 して1,280倍 の凝集 素 価 を 示 した.一

方,07:K19パ イ ロ ッ ト株 の 未 吸 収 抗O血 清 を

GI-4株 の加 熱 死 菌 で 吸 収 した 吸 収 血 清 は07群 抗

原 に対 して1,280倍,010群 抗 原 に対 して640倍 の

凝 集 素 価 を 示 した.従 つ てGI-4株 の011群 抗 原

は 同 じ型 のK抗 原 を 有 す る07:K19パ イ ロ ッ ト

株 の07群 抗 原 お よびOP-204株 の012群 抗 原 と

は 類 縁 関 係 は ま った く認 め られ な か つ た.

GI-4お よび011:K50パ イ ロ ヅ ト株 の未 吸 収 抗

0血 清 を用 い交 差 吸収 を行 つた 成 績 をTable2に

示 した.両 吸 収 血 清 のO凝 集 素 は 完 全 に 吸 収 さ

れ,GI-4と011:K50パ イ ロ ッ ト株 のO抗 原 は

同 一 で あ る こ とが 明 らか と なつ た.

2.K抗 原:GI-4株,OP-204株 お よび07:

K19パ イ ロ ッ ト株 の 未 吸 収抗KO血 清 を 用 い交

Table 2 Cross absorption test (O-antigen)

a: pilot strain (01: K38)b: pilot strain (02: K28)c: pilot strain (03: K7)d: pilot strain (04: K11)e: pilot strain (05: K15)f: pilot strain (06: K46)

g: pilot strain (07: K19)0: negative at a dilution of 1: 40 or higher

h: pilot strain (08: K22)i: pilot strain (09: K44)

j: pilot strain (010: K24)k: pilot strain (011: K50)1: GI-77-V-4 (011: K19)

m: OP-204 (012: K19)

164感染 症学 雑誌 第55巻 第3号

Table 3 Cross absorption test (K-antigen)

a: GI-77-V-4 (011: K19)b: OP-204 (012: K19)c: pilot strain (07: K19)0: negative at a dilution of 1: 40 or higher

差 吸収 試 験 を 行 つ た.Table3に 示 した よ うに

GI-4株,OP-204株 お よびK19パ イ ロ ッ ト株 のK

抗 原 は 同 一 で あ る ことが 確 認 され た.即 ち,こ れ

ら3菌 株 の未 吸収 抗KO血 清 は 免 疫 菌 と同 一 の

凝 集 素 価 を他 の2抗 原 に 対 して も示 し,し か も,

交 差 吸収 で 得 られ た そ れ ぞ れ の吸 収 血 清 はGI-4

株,OP-204株 お よびK19パ イ ロ ッ ト株 に 対 し40

倍 以 下 の 凝 集 素価 しか示 さな か つ た.

これ ら の 成 績 と ほ ぼ一 致 す る成 績 が,ゲ ル 内

沈 降反 応 で も観 察 さ れ た.即 ち,Fig.1,2お よ

び3に 示 した よ うに,GI-4株,OP-204株 お よび

K19パ イ ロ ッ ト株 の 抗KO血 清 に対 しGI-4株,

OP-204株,K19パ イ ロ ッ ト株 の 抽 出K抗 原 は完

全 に 融 合 す る2本 の 沈 降 線 を形 成 した.

II.01:K33の 抗 原 型 を 有 す るGI-100株 の抗

原解 析

1.0抗 原:Table4に 示 した よ うに,GI-100

株 のO抗 原 は 同 じ型 のK抗 原 を 有 す る03:K33

パ イ ロ ッ ト株 の0群 抗 原 とは類 縁 関 係 は まつ た く

認 め られ な か つた.即 ち,GI-100株 の 未 吸 収 抗 血

清 は03:K33パ イ ロ ッ ト株 の 加 熱 死 菌 に よる 吸

収 で01群 抗 原 お よび 免 疫 菌 に 対 し640倍 の 凝 集

素 価 を 示 し,03:K33パ イ ロ ッ ト株 の 未 吸 収抗O

血 清 はGI-100株 の加 熱 死 菌 で 吸収 して も03群

抗 原 お よび 免 疫 菌 に対 す る320倍 の 凝 集 素 を保 持

した 。

次 に,Table4に 示 した よ うに,GI-100株 お よ

び0上K38パ イ ロ ッ ト株 の 未 吸収 抗O血 清 を用

い 交 差 吸 収 を 行 つ た.そ れ ぞ れ の 吸 収 血 清 は す べ

て のO群 抗 原 に対 して40倍 以下 の凝 集 素 価 で あ っ

た.従 つ て,GI-100株 の0抗 原 は01:K38パ イ

ロ ッ ト株 の01群 抗 原 と完 全 に 一 致 した .

一 方,Table4に 示 した よ うに,GI-100株 と同

一 の01:K33の 抗 原 型 を 有 す る 食 中 毒 患者 由 来

株T4814,食 品 由来 株GI-156に つ い て もGI-10

0株 とまつ た く同一 のO抗 原 を 有 して い る こ とが

確 認 され た.

2.K抗 原:Table5に 示 した よ うに ,GI-100

株 の 未 吸収 抗KO血 清 お よび抗K血 清 はK33パ

イ ロ ッ ト株 に 対 して80倍 の 凝 集 素 価 を 示 した が,

免 疫 菌 株(GI-100)の1280倍 に 比 べ て極 め て低 い

凝 集 素 価 で あ つ た.ま た,K33パ イ ロ ッ ト株 に よ

り吸 収 した 吸 収血 清 は 免 疫 菌 株 に 対 す る640倍 の

凝 集 素価 を保 持 した.一 方,K33パ イ ロ ッ ト株 の

未 吸収 抗KO血 清 お よび 抗K血 清 はGI-100株 に

対 して免 疫 菌 株 に対 す る1280倍 の 凝 集 素 価 と一 管

差 の640倍 を 示 した が,GI-100株 で 吸 収 した 吸 収

血 清 はK33パ イ ロ ッ ト株 に対 し640倍 の 凝 集 素 価

を 保 持 した.

つ ぎに,ゲ ル 内 沈 降 反応 の成 績 をFig.4,5に

示 した.GI-100株 の 抗KO血 清 に 対 してGI-100

株 の抽 出K抗 原 は 一 本 の 沈 降 線 を 形 成 した が,

昭 和56年3月20日 165

Figs. 1, 2 and 3 Immunodiffusion pattern of purified K antigens against anti-GI-77-V-4 K serum (Fig. 1).anti-OP-204 K serum (Fig. 2) and anti-pilot strain (07 : K19) K serum (Fig. 3). s-1, anti-GI-77-V-4 Kserum; s-2, anti-OP-204K serum; s-3, anti-pilot strain (07 : K19) K serum; 1, GI-77-V-4; 2, OP-204;3, pilot strain (07: K19),

Fig. 1

Fig. 2 Fig. 3

Figs. 4 and 5 Irmunodiffusion pattern of purified K antigens against auti-GI-75-V-100 K serum (Fig. 4)and anti-pilot strain (03 : K33) K serum (Fig. 5). s-1, anti-GI-75-V-100 K serum; s-2, anti-pilot strain

(03: K33) K serum; 1. GI-75-V-100; 2, pilot strain (03 : K33); 3, G1-75-V-156; 4, T4814.Fig. 4 Fig. 5

166 感染症学雑誌 第55巻 第3号

Figs. 6 and 7 Immunodiffusion pattern of purified K antigens against anti-CI-75-V -116 K serum (Fig . 6)and anti-pilot strain (O11: K51) K serum (Fig. 7). s-1, anti-GI-75-V-116 K serum; s-2, anti-pilot strain(O11: K51) K serum; 1, GI-75-V-116; 2, pilot strain (011: K51); 3, TY-76-V-73.

Fig. 6 Fig. 7

Table 4 Cross absorption test (O-antigen)

a: GI-75-V-100 (O1: K33)b: pilot strain (O3: K33)c: pilot strain (O1: K38)0: negative at a dilution of 1: 40 or higher

d: T4814 (O1: K33)e: GI-75-V-156 (O1: K33)

昭和56年3月20日 167

Table 5 Cross absorption test (K-antigen)

a: GI-75-V-100 (O1: K33)b: pilot strain (O3: K33)c: pilot strain (O1: K38)0: negative at a dilution of 1: 40 or higher

d: T4814 (O1: K33)e: GI-75-V-156 (O1: K33)f: pilot strain (O3: K7)

K33パ イ ロ ッ ト株 の抽 出K抗 原 は 沈 降 線 が 出現 し

な か つ た.一 方,K33パ イ ロ ッ ト株 の 抗KO血

清 に対 してGI-100株 の抽 出K抗 原 は2本 の 弱 い

沈 降 線 を 形 成 した が,K33パ イ ロ ッ ト株 の 抽 出K

抗 原 の沈 降 線 とは 融 合 が 認 め られ なか つ た.

GI-100株 と同一 のO1:K33抗 原 を 有 す るT

4814株 お よびGI-156株 はTable 5お よ びFig.

4,5に 示 した よ うに,GI-100株 のK抗 原 と全 く同

一 のK抗 原 を 有 す る こ とが確 め られ た.

III. O3:K51の 抗 原 型 を 有 す るGI-116株 の抗

原 解 析

1.0抗 原:Table 6に 示 した よ うに,同 じ型

のK抗 原 型 を 有 す るGI-116株 お よびO11:K51

パ イ ロ ッ ト株 の未 吸収 抗O血 清 を 用 い交 差 吸 収 を

行 つ た結 果,吸 収 血 清 は免 疫 菌 株 お よび対 応 す る

O群 抗 原 に対 す る 凝 集 素 を 保 持 した.一 方,GI-

116株 お よび03:K29パ イ ロ ッ ト株 の 未 吸収 抗O

血 清 を 用 い て の 交 差 吸 収 で は,吸 収 血清 のO凝 集

素 は 完 全 に 吸 収 され た.こ れ らの事 実 は,GI-116

株 のO抗 原 は 同 じK抗 原 型 を 有 す るO11:K51パ

イ ロ ッ ト株 のO11群 抗 原 とは 全 く類 縁 関係 は な

く,O3:K29パ イ ロ ヅ ト株 の03群 抗 原 と完 全 に

一 致 す る こ とを示 して い る.

GI-116株 と同一 のOS:K51の 抗 原 型 を 有 す る

食 品 由 来株TY-73はTable 6に 示 した よ うに,

GI-116株 と全 く同 一 の成 績 で あ つ た.

2. K抗 原:Table 7に 示 した よ うに,GI-116

株 の 未吸 収 抗KO血 清 お よび抗K血 清 に 対 し免

疫菌 株 お よびK51パ イ ロ ッ ト株 は 同 一 の2560倍

の凝 集 素価 を示 した が,K51パ イ ロ ッ ト株 で 吸 収

した 吸 収 血 清 は 免 疫 菌 株 に 対 す る320倍 の凝集 素

価 を 保 持 した.一 方,K51パ イ ロ ッ ト株 の未 吸 収

抗KO血 清 お よび抗K血 清 は 免 疫菌 株 に対 して

640倍,GI-116株 に対 し320倍 の 凝 集 素価 を示 した

が,GI-116株 を用 いて 吸 収 した 吸 収 血 清 は 免 疫 菌

株 に対 す る80倍 の凝 集 素 価 を保 持 した.

ゲル 内 沈 降反 応 の成 績 をFig.6,7に 示 した.

GI-116株 の 抗KO血 清 に対 しGI-116株 の抽 出K

抗 原 はK51パ イ ロ ッ ト株 の 沈 降 線 と融 合 す る沈

降 線 の他 に2本 の 沈 降 線 を形 成 した.一 方,K51

パ イ ロ ッ ト株 の抗KO血 清 に 対 しGI-116株 の抽

出K抗 原 はK51パ イ ロ ッ ト株 の 沈 降 線 と融 合 す

る沈 降 線 を形 成 した が,K51パ イ ロ ッ ト株 の 沈 降

線 に比 べ 明 らか に弱 い沈 降 線 で あ つ た.

GI-116株 と同 じO3:K51の 抗 原型 を 有 す る食

品 由来 株TY-73はTable 7お よびFig.5,6に 示

した よ うに,GI-116株 と全 く同一 のK抗 原 を 有 す

る こ とが 確 認 され た.

考 察

同 じK抗 原 を 有 し,O抗 原 型 を 異 に す る,

168 感 染症学雑 誌 第55巻 第3号

Table 6 Cross absorption test (O-antigen)

a: GI-75-V-116 (O3: K51)b: pilot strain (O11: K51)0: negative at a dilution of 1: 40 o. higher

c: pilot st.ain (O3: K29)d: TY-76-V-73 (O3: K51)

Table 7 Cross absorption test (K-antigen)

a: GI-75-V-116 (O3: K51)b: pilot strain (O11: K51)c: pilot strain (O3: K7)

0: negative at a dilution of 1: 40 or higher

d: TY-76-V-73 (O3: K51)e: pilot strain (O11: K50)

O12:K19,07:K19抗 原型 株 に つ い て 石 橋 ら17)

は 抗 原 解 析 を 行 い,相 互に共 通 の0抗 原 が認 め ら

れ た と報 告 して い る.し か し,著 者 の今 回 の抗 原

解 析 に お いて は,O12:K19抗 原型 株 を 除 け ば,

共通のK抗 原の有無に拘 らず,異 なる0群 抗原相

互間には類縁関係は認められなかつた.

GI-4株,OP-204株 は07:K19パ イロット株 と

全 く同一のK抗 原を有することが確認 されたが,

昭和56年3月20日169

三 つ の0群 に 属 す るK抗 原 を 有 す る腸 炎 ビブ リ

オ は 人 由 来株 で は こ のO7:K19,O11:K19,

O12:K19が 最 初 の報 告 で あ る.食 品 由来 株 で は

中 村10),Bockemuh19)の 報 告 が あ り,今 後 人 由来

株 で も こ のK19抗 原 の 外 に さ らに 検 出 され る こ

とが 予 測 され る.

Fujino18)ら は ア メ リカ 合 衆 国 で 分 離 さ れ た

O1:K33抗 原 型 株 に つ いて 抗 原 解 析 を行 い,こ

の菌 株 は2種 類 のK抗 原 を 有 して い る が主 要 抗 原

はK33パ イ ロ ッ ト株 と共 通 な 抗 原 で あ る と報 告 し

て い る.GI-100株 を 用 い た成 績 で はGI-100株 だ

け で な くO3:K33パ イ ロ ッ ト株 も2種 類 のK抗

原 を 有 して お り,し か も共 通 抗 原 はGI-100株 に

とつ て もO3:K33パ イ ロ ッ ト株 に とつ て も主 要

抗 原 で は な か つ た.こ の 点 はFujinoら の成 績 と

異 な るが,GI-100株 以 外 の 患 者 由来 株T4814,食

品 由来 株GI-156もGI-100株 と全 く同 一 の成 績 で

あ り,し か も,Fujinoら の 用 い たCDC8198株 は

O抗 原 の 抗 原 決 定基 を 欠 い て い る菌 株 で あ つ た点

を 考 慮 す る とCDC8198株 の株 特 異 性 と考 え られ

る.従 つ て,類 属 凝 集 の少 な い型 別 血 清 に す る た

めに は,K33型 別 血 清 はGI-100株 で 副 抗 原 を 吸

収 した 抗 血 清 を今 後 は用 い るべ き で あ る.

著 者 はGI-100株 の 抗K血 清 は パ イ ロ ッ ト株

K1～64の 総 て に 対 して100倍 以下 の類 属凝 集 しか

認 め られ な い ことを 確 認 して お り,GI-100株 の 主

要K抗 原 は既 知 のK抗 原 型 に は該 当 しな い新K抗

原 型 と考 え られ る.

GI-116株 もK51パ イ ロ ッ ト株 と共 通 なK抗 原

と非 共 通 なK抗 原 を 有 して い た が,主 要K抗 原 は

K51パ イ ロ ッ ト株 の 主要 抗 原 と共 通 で あつ た.従

つ て,GI-116株 は新 しいO:K組 み 合 せ,O3:

K51抗 原 型 株 と して 抗 原 表 に 追 加 す べ き で あ る と

考 え る.

パ イ ロ ヅ ト株 は 既 知K抗 原 に 対 す る 類属 凝 集 は

十 分 検 討 され て お り,こ れ迄 一 菌 種 の 保 有 す るK

抗 原 は 単 一 抗 原 で あ る と考 え られ て いた.今 回 の

著 者 の 検 討 で,K33お よびK51パ イ ロ ッ ト株 は主

要K抗 原 の外 に 既 知K抗 原 型 に は 該 当 しな いK抗

原 を有 して い る こ とが 明 らか とな つ た.こ の事 実

は,他 の パ イ ロ ッ ト株 に も主 要K抗 原 の 外 に 既 知

K抗 原 以外 の 抗 原 の 存 在 が 推 定 され,注 目され

る.

今 回 の著 者 の 抗 原解 析 で4種 の 新 しいO:K

組 み 合 せ の抗 原 型 株 のK抗 原 は 対応 す るパ イ ロ ッ

ト株 のK抗 原 との関 係 か ら,1.パ イ ロ ッ ト株 と

完全 に 一致 す る もの2.パ イ ロ ッ ト株 と主 要K抗

原 は 共 通 で あ るが,そ の外 に パ イ ロ ッ ト株 と非 共

通 の 抗 原 も 有 して い る も の3.パ イ ロ ッ ト株 と

共 通 な抗 原 は 有 す るが,主 要K抗 原 は非 共 通 で あ

る も の,の3グ ル ー プに分 類 され る こ とが判 明 し

た.魚 介 類 お よび海 水 由来 株 に は 種 々の 新 しい

O:K組 み 合 せ の抗 原 型 株 が 報 告8)9)10)され て い

るが,こ れ らの抗 原型 株 のK抗 原 につ いて も前 述

の どの グル ー プに 該 当 す るか を抗 原解 析 す る こと

は,パ イ ロ ッ ト株 の 抗 原 性 の再 検 討 お よび類 属凝

集 の な い型 別 血 清 作 製 の見 地 か らも必 要 と思 わ れ

る.

稿 を終 るにあた り,御 校閲を 賜った 岐阜大学医学部

微生物学教室鈴木祥一郎教授 に 深謝致 します,ま た,

菌株を分与 された 東芝生物理化学研究所寺田友 次博士,

東京都立衛生研究所 工藤 泰雄博士,富 山県 衛生 研究所

山崎茂一先生,大 阪府 立 公衆 衛生 研究所 木下喜雄先生

に深謝致 します.さ らに,御 指導下 さいました 当研究

所 山田不二造博士,渡 辺実博 士,後 藤 喜一 先生 に 深謝

致 します.

文 献

1) Sakazaki, R.: Proc. Cholera Res. Symp.,Honolulu, Hawaii, Edited by Bushnell, O. A.Sc. Bookhyser, D. C., 1965, p.30-34.

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Serological Studies on Vibrio parahaemolyticus

II. Vibrio parahaemolyticus with New Combination of O and K Antigen

Mitsuo TOKORO

Gifu Prefectural Institute of Public Health

Antigenic analysis of Vibrio parahaemolyticus with new combination of O and K antigen, O11: K19,

O 12: K19, O1: K33 and O3: K51 , was carried out.

The results were as follows.1. The O antigens of strain GI-77-V-4 (O11: K19) , strain GI-75-V-100 (O1: K33) and strain GI-

75-V-116 (O3: K51) agreed perfectly with the corresponding pilot st rains.2. The K antigens of strain GI-77-V-4 and strain OP -204 agreed perfectly with pilot strain (O7:

K19).

3. Strain GI-75-V-100 had two kinds of specific K antigens and had a K subantigen in commonwith pilot strain (O3: K33), but the main K antigen of the isolate was different from the known K antigentypes from type I to type 64 .

4. Strain GI-75-V-116 had a main K antigen in common with pilot strain (O11: K51) but had

also a K subantigen which was not common with the pilot strain .5. It was shown that pilot strain (O3: K33) and pilot strai n (O11: K51) possessed two kinds of

specific K antigens, one was a known type and the other an unknown.