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23 海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書 (海上安全) 平成 24 4 公益社団法人 日本海難防止協会

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平 成 23 年 度

海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書

(海上安全)

平成 24 年 4 月

公益社団法人 日本海難防止協会

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問合せ先 海事局安全基準課 主査 森

代表 03-5253-8111(内線 43-954) 直通 03-5253-8636

平成 23 年 3 月 14 日 国土交通省 海事局 安全基準課

国際海事機関(IMO)第 15 回無線通信及び捜索救助小委員会の結果について

概要 ・GMDSS の見直しに向けた作業計画案を策定。次回会合に向け、作業計画案を引き続き

検討予定。 ・e-Navigation 戦略実施計画の策定に向けて、共通データ構造の構築に向けた検討手法、

及びギャップ分析手順の一部修正に合意。

3 月 7 日から 11 日まで、英国ロンドンの国際海事機関(IMO)本部において、第 15

回無線通信及び捜索救助小委員会(COMSAR15)が開催されました。 我が国からは国土交通省、総務省、海上保安庁、在英国日本国大使館、(独)海上

技術安全研究所その他関係海事機関・団体からなる代表団が出席し、我が国意見の反

映に努めました。今次会合における審議結果の概要は以下のとおりです。 1. GMDSS の見直しに向けての検討 約 20 年前の技術を前提に構築され、これまで大きな見直しがなされていなかった

GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System:全世界的な海上遭難・安全

システム)について、システム全体の維持・安全性向上を目的とする見直しの検討を

行うことが、2009 年の第 86 回海上安全委員会(MSC86)において承認され、前回会

合より検討が開始されました。

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今次会合では、GMDSS の見直しのタイムスケジュール、範囲、手法など、今後の

作業計画について審議を行いました。主な審議結果は以下のとおりです。これらは、

コレスポンデンスグループ1(CG)において、次回会合までに更なる検討を行う予定

です。 (1)タイムスケジュール

以下の 2 つのタイムスケジュール(案)が作成されました。 a.計画(Strategy)にかかるタイムスケジュール

次回会合(COMSAR16)から 5 年をかけて現行 GMDSS の見直しの検討を進

め、その後 10 年をかけて GMDSS を近代化(新たな GMDSS の導入)の検討を

進める。

b.方策(Tactics)にかかるタイムスケジュール 次回会合から 3~5 年で、GMDSS の見直しの検討状況を踏まえて、短期的・

中期的に実施可能な GMDSS の見直し内容を結論付ける。また長期的な見直し内

容(新たな GMDSS の導入)は、次回会合から 10~15 年で結論付ける。 (2)範囲及び手法 「遭難通信の信頼性確保」、「GMDSS 機器や情報の効率化」、「無線通信のための効

果的な周波数の利用」等について見直しを行っていくことに合意しました。また、

GMDSS の見直しは、関連業界や各国政府などに大きな影響を与えるため、見直しに

係る費用負担と便益のバランスを確保しつつ、検討を行っていくことに合意しました。 2. e-Navigation 戦略実施計画の策定 (1)背景 船舶の航行安全の更なる向上及び船内作業・港湾作業の更なる効率化を目的として、

2006 年から、既存及び新規の電子航行支援設備等を総合的に活用した次世代の航行支

援システム(e-Navigation)の構築に関する検討が進められています。2008年のMSC85において、e-Navigation 実現のための骨子として、以下の 5 つのステップからなる

e-Navigation 戦略が策定されました。 a. ユーザーニーズの定義 b. 基本構成(アーキテクチャ)の定義と解析 c. 現状との差異(ギャップ)分析 d. 導入具体計画

1 電子メールにて議論を行う通信部会

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平成 23 年 5 月 23 日 問い合わせ先 国土交通省海事局:03-5253-8111

安全基準課 井田(内線 43-935)【1、及びを除く】 外航課 小森(内線 43-303)【3 関係】 検査測度課 臼井(内線 44-173)【1 及び 5 関係】

国際海事機関(IMO)第 89 回海上安全委員会の結果について

概要 福島第一原子力発電所事故に関し、我が国海運への風評被害防止のための取組を説明。

基準を満たさない救命艇の離脱フックの交換を義務付ける SOLAS 条約改正を採択。

海賊対策として、民間武装警備員の使用に関する船舶所有者、運航者及び船長に対す

る暫定ガイダンスを承認。 漁船の国際安全基準を規定するトレモリノス議定書の発効のための見直し案に合意。

今年末の総会又は来年の外交会議で新協定として採択される見込み。 国際海上固体ばら積み貨物規則(IMSBC コード)の改正を採択。 船上揚貨装置の安全基準の策定等の新規作業計画に合意。

5 月 11 日から 5 月 20 日までの間、英国ロンドンにおいて 103 の国及び地域、49 の機

関等の参加のもと、国際海事機関(IMO)第 89 回海上安全委員会(MSC89)が開催され

ました。 我が国からは、国土交通省、海上保安庁、水産庁、外務省、(独)海上技術安全研究所、

(財)日本船舶技術研究協会等から構成される代表団が参加しました。 今次会合における主な審議内容・結果は以下のとおりです。 1. 福島第一原子力発電所事故に関する我が国海運への風評被害防止のための取組み

今次会合初日の全体会合において、IMO(国際海事機関)をはじめとする各国、国

際機関等から我が国に送られた支援に感謝するとともに、福島第一原子力発電所の事

故に関する風評被害防止のため、我が国港湾で行っている取組み等についてステート

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メントを発表し、その詳細についてプレゼンテーションを行いました。 ステートメント及びプレゼンテーションでは、震災の概要を説明した後、現在、我

が国各地で大気・海水の環境モニタリングが継続して実施され、その情報はホームペ

ージ等で公開されていること、東京及び横浜などの我が国主要港湾においても健康に

問題を生じさせる放射線は計測されていないこと、船舶・コンテナ貨物の放射線量の

統一測定ガイドラインを定め、事業者からの要望に拠り、横浜港から順次証明書の発

行を開始したこと等を説明しました。 出席した各国代表団からは我が国の震災被害に関しお見舞いの言葉が述べられると

ともに、我が国からの情報提供について謝辞が多数述べられました。 2. 救命艇の離脱フックの評価及び交換

(1) 背景 IMO では、救命艇の予期せぬ落下による人身事故防止のため、救命艇の離脱の

フックの基準を強化するとともに、既に現存船に搭載されているものを再評価す

るためのガイドラインの作成等の検討を行ってきました。

(2) 今次会合の結果 審議の結果、以下の改正案を採択するとともに、新たなガイドラインを承認し

ました。 ① 基準を満たさない救命艇の離脱フックの交換の義務化(SOLAS 条約附属書第

3 章第 1 規則の改正) 救命艇の離脱フックについて、下記②の国際救命設備コード(LSA コード)

の新基準に適合することを義務付けるとともに、現存の離脱フックについても、

当該基準のうち特定の要件に適合していない場合には、適用日以後 初の上架

検査の時期までに当該基準の全要件に適合した離脱フックに交換することを

義務付けるものです。

② 救命艇の離脱フックの基準の強化(LSA コード第 4 章の改正) 救命艇の進水時等の離脱フックの意図せぬ開放等による事故を防止する観

点から、離脱フックの基準を強化するものです。

③ 現存救命艇の離脱フックの評価・交換方法に関するガイドライン 現存救命艇の離脱フックの安全性を評価し、結果に応じて交換するための

手順等をとりまとめたものです。

【条約改正等の適用】

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海賊事案の現状について

日本海難防止協 会 国際室長 志水知也

はじめに 2006 年頃から状況の悪化が始まったソマリアの海賊は、2010 年後半頃から

母船型という特異な形態をとり、ソマリア周辺のみならず活動水域を拡大させ

て、依然として深刻な問題となっている。 2011 年の海賊襲撃数を見ると、全体としてソマリア周辺で発生する海賊事案

は緩やかな増加傾向にあるものの、アデン湾における件数は減少している。こ

れはアデン湾における各国から派遣された海軍艦艇による護衛と、海事事業者

が作成したベストマネジメントプラクティスの成果と言えるかもしれない。一

方で、護衛の充実したアデン湾から、より襲撃の容易な海域に活動の場を移し

ているという見方もある。また、海賊事案による人質の拘束期間は長期化する

とともに、身代金も高額化していると言われている。 海賊問題に関し、今最も関心の高まっているのは、海賊に対する自衛手段と

して、商船に民間武装警備員を乗船させることの是非である。数年前までは否

定的な意見が多かったこの問題も、近年では商船自体の武装化もやむなしとす

る考えが広まりつつある。 本稿でははじめに、2011 年に発生した海賊事案について、統計的な観点を中

心として概観を示し、その後に民間武装警備員の乗船について、議論の経緯と

主要国における対応について検討する。 なお、本稿では特に記載のない限り、統計では ICC-IMB による集計を引用す

る。

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1 2011 年の海賊事案 2011 年の世界全体の海賊事案の発生件数は、2010 年の 445 件からわずかに

減少し、成功・失敗あわせて 439 件となった。ここ数年間継続していた増加傾

向が止まり、海事業界が一体となって実施してきた取り組みが成果を示し始め

たことが伺える。 10 件以上の海賊事案が発生している海域は 10 か所あり、バングラディシュ

を除く 9 か所が、ソマリア周辺、東南アジアまたはナイジェリア周辺に分類で

きる。この 10 か所だけで世界全体の 80%以上を占めている。いわゆる「ソマリ

アの海賊」によるとみられる海賊事案は昨年よりも約 1割増加の 239件発生し、

全体の 55%を占めている。一方で東南アジアの襲撃数は 114 件から 103 件に減

少している。ソマリアと東南アジアにおける海賊事案については、次項で詳述

する。

グラフ 1:海賊事案発生主要海域(2011 年)

ナイジェリア周辺の海賊事案は、発生海域に顕著な変化が認められる。ナイ

ジェリア領内での襲撃数は 2007 年をピークに減少し、代わって周辺国沿岸での

襲撃が発生している。2010 年にはナイジェリアの東に隣接するカメルーンで 5件の襲撃が発生したが、2011 年にはカメルーンでの海賊事案は報告されておら

ず、反対にナイジェリアの西で国境を接するベナンで 20 件、さらにその西のト

ーゴで 6 件の襲撃が発生している。ナイジェリアでの襲撃は 10 件中 7 件が航行

中の船舶を狙ったものであるのに対し、ベナンでは 20 件中 15 件が錨泊中のも

のを標的としている。このことから、ナイジェリアの海賊とは直接つながらな

い可能性もあるが、少なくとも銃器を携行して乗り込んでくる手法は昨年のカ

メルーンと同じであり、ハイジャックの発生件数もソマリアに次いで多く、危

険性は極めて高いと言える。また、海賊というものが「儲かるビジネスだ」と

いう認識や、その具体的なノウハウが拡散しつつある可能性もあり、今後さら

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なる地域的拡散が発生することが懸念される。 バングラディシュでは昨年の 23 件から 10 件にまで激減している。ICC-IMB

の年次報告では、これを「バングラディシュコーストガードの尽力の成果」と

評価している。 一方で、襲撃の成

否に着目すると、襲

撃 成 功 数 ( actual attack)は 221 件、

失 敗 ( attempted attack)が 218 件で、

成功数と失敗数はほ

ぼ拮抗しているよう

に見える。しかし実

際には、襲撃成功の事例の多くは東南アジアなどで発生する、いわゆるコソ泥

的な事案であり、ソマリアの海賊に着目すると、成功事案は 47 件、失敗したケ

ースは 189 件となり、襲撃に成功した事案、すなわち乗り込まれ、あるいはハ

イジャックされた事案は 2 割以下に過ぎない。ただし、襲撃に失敗した 189 件

のうち、110 件は火器による銃撃・砲撃を受けて逃げ切ったものであり、危険性

が低いことを示すものではない。 ① ソマリア周辺で発生する海賊事案

ソマリアの海賊による

とみられる襲撃、すなわち

アデン湾、紅海及びソマリ

ア海盆で発生した海賊事

案に注目すると、襲撃数は

2010年の217件から2011年の 236 件へ緩やかに増

加しているが、アデン湾に

おける襲撃数は 2009 年の

117件から 2010年の 53件、2011 年には 37 件に

まで減少している。同期間ではソマリア海盆で 80 件~139 件~160 件、紅海

で 15 件~25 件~39 件と増加しており、アデン湾での海軍の護衛を受けてい

る商船に対する襲撃を断念し、警備の手薄なソマリア海盆や紅海などの周辺

海域に拡散していることが推測できる。 2010 年後半頃より、ソマリアの海賊の戦略として、「ハイジャックした船

2010 2011

成功 失敗 成功率 成功 失敗 成功率

全体 249 196 56.0% 221 218 50.3%

ソマリア 47 92 33.8% 38 122 23.8%

アデン湾 17 36 32.1% 5 32 13.5%

紅海 1 24 4.0% 4 35 10.3%

ソマリア合計 65 152 30.0% 47 189 19.9%

表 1:襲撃成功率の変化

グラフ 2:ソマリア周辺における海賊事案件数の推移

(2006 年~2011 年)

0

50

100

150

200

250

2006 2007 2008 2009 2010 2011

ソマリア

アデン湾

紅海

総数

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舶を利用して、さらなる襲撃を行う」という、いわゆる母船型の犯行が増加

している。これによって、天候や陸上からの距離に影響を受けない時期的・

地理的な活動範囲が活発化すること、元の乗組員を運航要員とすることで非

襲撃時の体力消耗抑制と海軍艦船からの攻撃に対する人質として利用するこ

とを懸念する声があった。 実際にソマリアの海賊によるとみられる海賊の襲撃数は、2009 年から緩や

かな増加傾向となっているが、発生海域に変化が見られるのは前述のとおり

であり、海賊の活動海域は拡大している。一方、アデン湾における海賊事案

はモンスーンが発生する 1~3 月の間、使用する小型のスピードボートによる

荒天下での襲撃が困難で

あるため、頻度が下がる

と言われていた。昨年度

の調査報告では、母船型

の襲撃形態による危険性

として、襲撃用の船艇大

型化により気候に左右さ

れない襲撃が行われる可

能性を指摘した。しかし

ながら実際のところ、そ

のような傾向は今のと

ころみとめられていな

い。 ② ハイジャック事件の身代金

ソマリアの海賊によるハイジャック事件や船員誘拐事件の発生数は減少し

ているが、海賊に支払われている身代金の総額は増加しているとみられてい

る。学識経験者の解説によると、2008 年以前はハイジャックされた船舶 1 隻

あたりの身代金は、200 万ドル未満と言われていた。この金額は年々増加し

ており、2009 年には 200~300 万ドル、2010 年には 1000 万ドルを超えたと

言われている。これは船員の身代金だけではなく、船体や積み荷、燃料油な

ども含めて、すべて解放するために支払われる金額である。支払いはすべて

米ドルのキャッシュで、クーリエによってソマリア国内に運び込まれ、受け

渡しを終えた後にロンダリングのため、再び国外に持ち出されているとみら

れている。 金額については異なる情報もあり、ある報道では一隻当たりの身代金平均

額が 2007 年には 60 万ドルであったが、現在では 470 万ドルまで上昇してい

ると報じている。いずれにせよ、身代金の金額が劇的に増加していることは

グラフ 3:アデン湾における海賊事案発生時期比較

(2010~2011 年)

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