動脈瘤と静脈瘤の体に優しい治療法...動脈瘤と静脈瘤の体に優しい治療法...
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動脈瘤と静脈瘤の体に優しい治療法~ステントグラフト内挿術とラジオ波焼灼術~
沼津市立病院 心臓血管外科
神藤由美
動脈と静脈
血管は血液の通り道。
動脈:心臓から出て行く。
静脈:心臓に戻る。
血液は肺で取り入れた酸素を臓器に届け、不要物を回収する。
・薄く伸縮性に富む。
・逆流防止の弁がある。
静脈
静脈から心臓へ血液の戻り方~筋ポンプ作用~
【筋肉弛緩時】
⇒静脈が広がる
⇒下から血液を吸い込む
【筋肉収縮時】
⇒静脈が圧迫される
⇒血液が上に押し上げられる
「ふくらはぎは第二の心臓」
下肢静脈~表在静脈~交通枝~深部静脈~
静脈弁~逆流を防止する仕組み~
静脈弁
血液が逆流しないように、遠位から近位、浅層から深層、表在から深部へ一方向に流れるように並んでいる。
静脈の病気:下肢静脈瘤
弁が正常に働いていると血液は上へ流れる
弁の働きが悪くなると血液は逆流し、さらにその下の静脈は拡張し静脈瘤になる
静脈弁の働きが悪くなることにより、逆流が起こり、静脈が拡張した状態
発生機序と危険因子
たち仕事
妊娠
遺伝的素質
高度肥満
便秘
静脈うっ滞
静脈弁不全
逆流
静脈還流障害
静脈拡張
・静脈瘤
・皮膚の循環障害(皮膚炎・潰瘍・色素沈着)
症状
こむら返りむくみ
血栓性静脈炎 潰瘍色素沈着
初期無症状
(美容状の問題)血液がうっ滞し老廃物が除去できない
傷から感染
ここまで進行すると、きれいに治らないので、早めに受診して下さい。
分類
原因別• 一次性:表在静脈の拡張や弁不全による。
• 二次性:深部静脈血栓症、妊娠、骨盤内腫瘍などによる深部静脈の還流障害によって生じる。
タイプ別
タイプ 伏在型 側枝型 網目状 クモの巣状
太さ ≧4mm 3-4mm 1-2mm ≦1mm
治療法 手術 弾性ストッキング
手術
ストリッピング術(100年以上前~)
血管内治療レーザー(2011年1月~980nm2014年5月~1470nmが保険適応)
ラジオ波(2014年6月~保険適応)
大伏在静脈を切り離し引き抜く
波長1470nmのレーザー(約1000度)で血管内を焼灼
120度のラジオ波で血管内を焼灼
手術比較
ストリッピング
・静脈を引き抜く際に、伴走する神経を損傷する危険がある。・全身または下半身麻酔が必要。・手術後の痛みや出血などのリスクがある。・傷跡が目立つ 血管内治療に比べて
体への負担が大きい
手術比較
血管内治療
・ラジオ波の方が・・・均一に焼灼出来る。温度が低いため、熱傷や、痛みが少ない。
レーザー 1000度 ラジオ波 120度
・局所麻酔で出来る。・傷跡が目立たない。(切開長 2mm)・痛みも少ない。
当院ではラジオ波焼灼術を行っています。
体に優しい
血管内治療 適応
血管内治療 除外基準
①伏在型以外は適応なし
②基本的に除外されるもの
・深部静脈血栓症
・動脈性血行障害
*歩行困難
*妊婦
*ステロイド・ホルモン治療・経口避妊薬・骨粗しょう症治療薬
*血栓性素因
伏在型 側枝型 網目状 クモの巣状
ラジオ波焼灼術
ラジオ波焼灼術
①カテーテル挿入 ②TLA麻酔
③血管を焼灼 ④下腿の瘤の切除
ラジオ波焼灼術 ビデオ
治療の流れ
【外来受診】
診察
下肢静脈超音波検査
入院予約
【手術:一泊入院】
午前:入院
午後:手術(1時間程度)翌日:超音波確認後、退院
動脈
心臓から送り出された血液(酸素や栄養)を全身の細胞へ届けるための通路
動脈の病気
• 動脈硬化
動脈瘤
無症状で偶然発見されることが多い。
胸部大動脈瘤 腹部大動脈瘤
大動脈の一部の壁が全周性,または局所性に拡大/突出した状態
破裂の危険
・大きくなると破裂する。
・破裂すると胸部大動脈瘤:ほとんど病院にたどり着く前に死亡腹部大動脈瘤:死亡率90%
手術室にたどり着けても50~70%は死亡
治療法
ステントグラフト内挿入術 開胸・開腹手術
動脈の中でステント付の人工血管を圧着して破裂を予防する
動脈瘤を人工血管に取り替える
大動脈 部位別名称
①上行
②弓部
③下行
④胸腹部
⑤腹部
横隔膜
心臓から出た大動脈は、各臓器に枝を出す。
大動脈だけ抜き出すと・・・
①上行大動脈
上行
基部
基部拡張症
上行大動脈瘤
①上行大動脈瘤
上行
基部
*ステントグラフトは適応なし
上行大動脈瘤
基部拡張症
①上行大動脈瘤
上行
基部
基部置換術
上行大動脈瘤
上行置換術
開胸手術のみ
基部拡張症
上行大動脈瘤
①上行大動脈瘤
治療法 開胸手術のみ
上行置換 基部置換
麻酔 全身麻酔+人工心肺
傷 胸骨正中切開
手術時間 4時間程度 8時間以上合併症出血感染神経系
輸血あり肺炎・創感染脳梗塞
死亡率 1.7% 1.9%胸骨正中切開
人工心肺とは?
心臓を止める必要がある手術の際、心臓と肺の機能を代わりに行うための機械。
静脈から血液を抜き、人工の肺で酸素化した血液を動脈→全身に送る。
①静脈から血を抜く
②貯血槽に貯める
③人工肺で酸素化する
④ポンプで動脈→全身に送る
外科医
臨床工学技士
患者
人工心肺
看護師
弓部
腕頭
総頸
鎖骨下
②弓部大動脈
弓部大動脈瘤
脳に行く血管、上肢に行く血管=頸部3分枝が出ている。
②弓部大動脈瘤
ハイブリッド治療
ステントグラフト内挿術
開胸手術:弓部置換弓部大動脈瘤
脳に行く血管、上肢に行く血管の再建が必要。
②弓部大動脈瘤
治療法 ステントグラフト ハイブリッド 開胸:弓部置換
麻酔 全身麻酔 全身麻酔 全身麻酔+人工心肺+脳分離
傷 片側鼠径 片側鼠径+両側腋窩+左頸部
胸骨正中切開
手術時間 2時間程度 5時間程度 8時間以上合併症出血感染神経系
少量稀
脳梗塞
輸血の可能性あり肺炎脳梗塞
輸血あり肺炎・創感染脳梗塞
死亡率 1.9% 2-3% 4%
片側鼠径
両側腋窩+左頸部
脳分離とは?
弓部置換の頸部3分枝を再建するまでの間、脳への血流を途絶えさせない為に、それぞれの枝に選択的に血液を送る方法。
*血管壁についたコレステロールを脳に飛ばす→脳梗塞になる危険もある!
③下行大動脈
下行大動脈瘤
脊髄への責任肋間動脈(アダムキービッツ動脈)が出ている。
③下行大動脈瘤
下行大動脈瘤
開胸手術:下行置換
ステントグラフト内挿術
対麻痺が起きる危険がある
両足が動かなくなり感覚もなくなる、排便や排尿の感覚もなくなる
対麻痺とは?
脊髄を栄養している血管が手術によって閉塞し脊髄が虚血になるため起こる。
脊髄は様々な血管から血液の供給を受けるが、肋間動脈、特にアダムキュービッツ動脈が分岐する肋間動脈は脊髄下部の1/3を栄養する重要な血管である。
対麻痺とは?
脊髄を栄養している血管が手術によって閉塞し脊髄が虚血になるため起こる。
脊髄は様々な血管から血液の供給を受けるが、肋間動脈、特にアダムキュービッツ動脈が分岐する肋間動脈は脊髄下部の1/3を栄養する重要な血管である。
対麻痺とは?
脊髄を栄養している血管が手術によって閉塞し脊髄が虚血になるため起こる。
脊髄は様々な血管から血液の供給を受けるが、肋間動脈、特にアダムキュービッツ動脈が分岐する肋間動脈は脊髄下部の1/3を栄養する重要な血管である。
対麻痺とは?
脊髄を栄養している血管が手術によって閉塞し脊髄が虚血になるため起こる。
脊髄は様々な血管から血液の供給を受けるが、肋間動脈、特にアダムキュービッツ動脈が分岐する肋間動脈は脊髄下部の1/3を栄養する重要な血管である。
対麻痺とは?
脊髄を栄養している血管が手術によって閉塞し脊髄が虚血になるため起こる。
脊髄は様々な血管から血液の供給を受けるが、肋間動脈、特にアダムキュービッツ動脈が分岐する肋間動脈は脊髄下部の1/3を栄養する重要な血管である。
③下行大動脈瘤
治療法 ステントグラフト 開胸:下行置換
麻酔 全身麻酔+脊髄保護
全身麻酔+人工心肺+分離肺換気+脊髄保護
傷 片側鼠径 左側開胸
手術時間 2時間程度 8時間以上合併症出血感染神経系
少量稀
脳梗塞・対麻痺
輸血あり肺炎・創感染脳梗塞・対麻痺
死亡率 1.9% 3.1%左側開胸
脊髄保護の方法
①術前にCTでアダムキービッツ動脈を同定。②術直前に脳脊髄液ドレナージを挿入。③術中は脊髄運動機能モニター(MEP)、ナロキソン投与。
①CT ②脊髄血流の灌流圧を維持する目的
③術中モニター
④胸腹部大動脈
動脈瘤が下行大動脈から横隔膜を超えて腹部大動脈に進展し、腹部分枝動脈を含むもの。
胸腹部大動脈瘤
Crowford分類
④胸腹部大動脈
胸腹部大動脈瘤
ステントグラフト/ハイブリッド治療(一部施設でのみ試験的)
開胸手術:胸腹部置換
④胸腹部大動脈
治療法 ハイブリッド 開胸:胸腹部置換
麻酔 全身麻酔 全身麻酔+人工心肺+分離肺換気+脊髄保護
傷 片側鼠径+開腹 左側開胸
手術時間 5時間程度 8時間以上合併症出血感染神経系
輸血あり創感染
脳梗塞・対麻痺
輸血あり肺炎・創感染脳梗塞・対麻痺
死亡率 データなし 6.5%
分離肺換気とは?
左側開胸で手術する際、左肺には換気しない方法。
術後、呼吸機能がなかなか回復しない危険がある。
⑤腹部大動脈
腹部大動脈瘤
腹腔内の内臓に枝を出す
⑤腹部大動脈
腹部大動脈瘤
ステントグラフト内挿術
開腹手術:人工血管置換術
⑤腹部大動脈
治療法 ステントグラフト 開腹手術
麻酔 全身麻酔 全身麻酔+硬膜外麻酔
傷 両側鼠径 腹部正中切開
手術時間 2時間程度 5時間程度
合併症出血感染神経系
少量稀脳梗塞
輸血あり肺炎・創感染下肢虚血
死亡率 1% 1-2%
ステントグラフト内挿術 ビデオ
体に優しい治療
動脈瘤:ステントグラフト
静脈瘤:ラジオ波焼灼術
動脈瘤を指摘された方、
足の静脈瘤が気になる方は、心臓血管外科外来を受診して下さい。