家屋解体工事におけるcca処理木材 分別の手引き(...

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家屋解体工事におけるCCA処理木材 分別の手引き(改訂版) 平成 18 年 3 月 北海道立林産試験場 平成 15~16 年度 重点領域特別研究 「家屋解体によって発生する CCA 処理木材の分別方法の検討」

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Page 1: 家屋解体工事におけるCCA処理木材 分別の手引き( …CCA処理木材が使用されている場合がある。 これらのことから、家屋解体工事では表-1に示す部位についてCCA処理木材の使用を確認

家屋解体工事におけるCCA処理木材

分別の手引き(改訂版)

平成 18 年 3 月

北海道立林産試験場

平成 15~16 年度

重点領域特別研究

「家屋解体によって発生する

CCA 処理木材の分別方法の検討」

Page 2: 家屋解体工事におけるCCA処理木材 分別の手引き( …CCA処理木材が使用されている場合がある。 これらのことから、家屋解体工事では表-1に示す部位についてCCA処理木材の使用を確認

家屋解体工事におけるCCA処理木材分別の手引き 目次

1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2.建築物に使用されたCCA処理木材の判別方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(1)使用された建築年代 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(2)建築物への使用部位 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

(3)目視による判別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

(4)呈色試薬による判別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

3.家屋解体工事でCCA処理木材を判別・分別するための作業手順 ・・・・・・・・・ 11

(1)CCA処理木材を判別・分別するための作業フロー ・・・・・・・・・・・・・ 11

(2)CCA処理木材の判別作業手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

(3)CCA処理木材の分別作業手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

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1.はじめに

CCA処理木材は、木材の防腐・防蟻を目的としてCCA(クロム・

銅・ヒ素化合物系木材防腐剤)を木材内部に加圧注入処理したもので、

日本では 1960年代後期(昭和 40年代初期)から電柱や土台等の建築用材として使用されてきた。現在は、毒性や排水基準の強化などで国内で

はほとんど生産されていないが、今後建築物の解体に伴いこれまで使用

されていたCCA処理木材が廃棄物として大量に排出されることが予想

される。 CCA処理木材については、建設リサイクル法基本方針(特定建設資

材に係る分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進等に関

する基本方針)や建設リサイクル法の実施に係る北海道指針(北海道に

おける特定建設資材に係る分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源

化等の促進等の実施に関する指針)において、「防腐・防蟻のため木材に

CCA(クロム、銅及びヒ素化合物系木材防腐剤をいう。以下同じ。)を

注入した部分(以下『CCA処理木材』という。)については、不適正な

焼却を行った場合にヒ素を含む有毒ガスが発生するほか、焼却灰に有害

物である六価クロム及びヒ素が含まれることとなる。このため、CCA

処理木材については、それ以外の部分と分離・分別し、それが困難な場

合には、CCAが注入されている可能性がある部分を含めてこれをすべ

てCCA処理木材として適正に焼却又は埋立を行う必要がある。」とされ、

CCA処理木材とその他資材との分別および適正処理の必要性が示され

ている。 この手引きは、こうした状況を受け、家屋解体工事におけるCCA処

理木材の分別について具体的な作業手順をとりまとめたものである。

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2.建築物に使用されたCCA処理木材の判別方法

(1)使用された建築年代

CCA処理木材は、1963年(昭和 38年)に日本工業規格(JIS)が制定され、1965年(昭和 40年)頃から土台用ヒノキ材の高騰を契機として市場に出回るようになり、北海道でも 1967年(昭和 42年)に2工場がCCA処理土台の生産を開始している。1978年(昭和 53年)には、「住宅金融公庫融資個人住宅建設基準」のなかで工場生産による防腐土台の使用が指定され、こ

れ以降住宅へのCCA処理木材の使用が急速に拡大した。道立林産試験場の調査では、図-1 に

示すように 1980年代(昭和 55年以降)から 1996年(平成 8年)頃までに建築された住宅では、土台にCCA処理木材の使用されている割合が高いことを確認している。ただし、1997年(平成9 年)以降については水質汚濁防止法でヒ素の排水基準が強化されたことなどを契機としてCCA処理木材の生産量は激減し、ACQ(銅・アルキルアンモニウム化合物系)やCUAZ(銅・

ホウ素・アゾール化合物系)などヒ素やクロムを含まない薬剤への転換が進んでいる。 これらのことから、1963年(昭和 38年)以降の建築物にはCCA処理木材が使用されている可能性があるため、解体時に確認を行いCCA処理木材が使用されている場合は分別して適正に

処理しなければならない。特に 1978年(昭和 53年)以降の建築物についてはCCA処理木材が使用されている可能性が高い。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

構成比

1960年以前

60年代

70年代

80年代

90~96年

1997年以降

建築年代

調査数:旭川市内の解体物件54棟

ACQ・その他

CCA

クレオソート油

無処理

図-1 土台に使用された防腐処理薬剤の推移

(道立林産試験場の調査データ、1999~2000 年)

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(2)建築物への使用部位

北海道水産林務部が実施した木材防腐加工工場実態調査結果によると、図-2 に示すように建

築物に使用されるCCA処理木材の道内生産量全体のうち、「土台」の占める割合が約 90%となっている。残りの約 10%を占める「その他」について具体的な使用部位は示されていないが、防腐加工工場への聞き取り調査等から「大引き」への使用が多いと考えられるほか、一部は「根太」

や工場生産される木質パネル工法の枠材等として使用されている可能性がある(建築部材の名

称・位置については図-3を参照)。また、木製デッキなど建築物に付属する木質系外構資材には

CCA処理木材が使用されている場合がある。 これらのことから、家屋解体工事では表-1 に示す部位についてCCA処理木材の使用を確認

する必要がある。また、図-4にCCA処理木材の使用部位確認フローを示す。

土台用89%

その他11%

建築用CCA処理木材の生産量

12.9万m3

(1992~96年の5ヵ年合計)

図-2 建築用CCA処理木材の道内生産量

(木材防腐加工工場実態調査結果(平成 4~8年度、北海道水産林務部木材振興課)から作成)

表-1 CCA処理木材の使用確認が必要な部位

床回り 土台ど だ い

、大引お お び

き、根太ね だ

木質系外構資材 木製デッキなどの部材

その他 木質パネル工法の枠材等

※土台、大引き、根太の位置については、図-3

(P4)を参照。

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図-4 CCA処理木材の使用部位確認フロー

①土台の確認

CCA処理木材が使用されているか?

当該建築物に CCA 処理木材は使用されてい

ないと判断する。

②大引き、根太の確認

CCA処理木材が使用されているか?

土台にのみCCA処理木材が使用されていると

判断する。

土台ならびに大引き・根

太のうち使用が確認さ

れた部位について CCA処理木材が使用されて

いると判断する。

※1 建築物に付属する木質系外構資材(木製デッキ等)がある場合は、CCA処理木材の

使用有無を別途確認する。 ※2 木質パネル工法の住宅については、本フローとは別にCCA処理木材の使用部位をメ

ーカーに確認する。

使用されていない 使用されている

どちらにも使用され

ていない どちらかまたは両方

に使用されている

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写真-1 各種防腐処理木材の外観

(3)目視による判別

CCA処理木材を目視によって判別する場合に指標となるのは、外観(色)、品質表示、インサ

イジング(刺傷)である。 ア)外観(色)による判別

CCA処理木材は防腐加工工場で木材内部に薬剤が

注入されることによって薄緑色の外観を呈するため、

薬剤の注入直後には色によって他の木材と区別するこ

とは可能である。しかし、住宅の土台等に使用されて

年月が経過するうちに汚れや色あせなどで材面が変色

していくため、家屋解体時点では色による見分けがつ

きにくい場合がある。また、外回りの柱・間柱などの

地盤面から1m以下の部位には明瞭なピンク色や緑色

の防腐剤が建築現場で塗布されることがあるが、CC

A処理された土台等に対してもこれらの防腐剤が塗布

されている場合がある(CCA処理と塗布処理の二重

の防腐処理)。このため、CCA処理木材であっても本

来の外観とは異なっていることがある。 これらのことから、注入されたCCA薬剤に由来す

る薄緑色の外観によってCCA処理木材と判別できる

のは、材面の汚れが少なく、他の防腐剤やペンキなど

が材面に塗布されていない場合に限定される。

表-2 塗布処理用防腐剤、クレオソート油の概要

種類 概要

塗布処理用防腐剤

(表面処理用防腐剤)

家屋等の建築時に、地盤面から 1mまでの部位の木材には防腐処理を施

す必要があるため、建築現場で外回りの柱などに防腐剤を塗布処理して

いる場合が多い。塗布処理用防腐剤は年代により使用薬剤の変遷があり、

現在では POPs条約対象物質として国際的に使用が禁止されているクロル

デンなどの有機塩素系化合物が過去には使用されていた。

クレオソート油 石炭の乾留によって得られる 200 以上の化合物を含み、その防腐効力

や防虫効力は多数の化合物の総合効果として認められている。化合物中

にはベンゾ[a]ピレンなどのような発ガン性のある物質も含まれている。

古くから、枕木、支柱などの防腐処理に用いられ、CCA 処理木材が普及す

る以前は家屋の土台・大引きなどの防腐処理にも使用された。クレオソ

ート油で処理した木材は褐色の外観を呈する。

※塗布処理用防腐剤、クレオソート油

については表-2に概要を示す。

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図-5 JASの表示

(CのマークがCCA

処理木材を表す)

イ)品質表示による判別

CCA処理木材は、日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)によって規格化されて

おり、規格に適合した製品には品質表示がされている。CCA処理木材の品質表示として、JA

Sの場合は図のように「C-1」「C-2」「C-3」のいずれかが表示されている(C は CCA の略、数字の 1~3はクロム・銅・ヒ素の各化合物構成比の違いによる薬剤種類を示す 1号、2号、3号の略)。 これらの品質表示が確認されればCCA処理木材として判別できる。

ウ)インサイジング(刺傷さしきず

)による判別

CCA処理木材は防腐加工工場で木材内部に薬剤を加圧注入して生産されるが、薬剤の注入性

を高める目的で木材表面に多数のインサイジング(刺傷)を付ける場合がある。インサイジング

加工は 1981年(昭和 56年)に日本農林規格(JAS)で正式に認められて普及した経緯があることから、これ以降に生産されたCCA処理木材にはインサイジングの付いている可能性が高い。 解体現場で木材表面にインサイジングが確認されればCCA処理木材として判別できる。

写真-2 CCA処理木材を示すJAS表示(赤枠)

写真左:「C-3」と表示 写真右:「C-1」と表示

防腐加工工場で生産されたCCA処理木材 解体家屋の土台(CCA処理木材でインサ

イジングの有る事例)

写真-3 加圧注入防腐処理木材に付いたインサイジング(刺傷)

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(4)呈てい

色しょく

試薬による判別

CCA処理木材は、木材内部に薬剤が注入されていることから、薬剤に反応して呈色する試薬

を用いて判別することができる(ただし、薬剤の注入が少ない場合は、判別できないことがある)。 CCA薬剤の成分のうち銅に反応する試薬のひとつにクロムアズロールSがあり、銅その他各

種金属の指示薬として知られている。クロムアズロールSを蒸留水およびエチルアルコール(エ

タノール)に溶かした液体をCCA処理木材に塗布すると、写真のように薬剤が注入された部分

は青色に反応し、薬剤が注入されていない部分はピンク色またはオレンジ色を示す。ただし、解

体家屋の土台等は一般に表面が汚れており、汚れの中に金属が含まれているとCCA処理木材で

なくても試薬が反応してしまうことがある。このため、CCA処理の判別を実施する木材につい

ては、鋸で材の一部を切り欠くなどして汚れのない試薬塗布面を出すことが必要である。また、

木材に付着する釘や釘穴などについても同様に試薬が反応するため、試薬を塗布する際にはこれ

らの部位を避ける必要がある。

道外企業や大学などでは、クロムアズロールSを用いる方法以外に他の試薬(ジフェニルカルボノヒド

ラジドなど)を用いる判別方法が検討されている。また、呈色試薬を用いた判別方法以外にも近赤外線な

どを用いてCCA処理木材や防腐処理木材を判別する方法も研究されている。

CCA薬剤の注入部分が青色に反応

注)水色はマスキングテープ

写真-4 呈色試薬によるCCA処理木材の判別事例(土台部分)

写真-5 材面の汚れによる反応

(CCA処理木材ではないが、試薬を塗布した

右半分が汚れに反応し青色を示している)

写真-6 釘穴による反応(赤枠)

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ア)試薬の概要、溶液の調製方法および保存方法

【概要】 クロムアズロールS(Chrome Azurol S)の概要は次のとおり。

・別名はモーダントブルー29(Mordant Blue 29)、または C.I.43825 ・化学式は C23H13Cl2Na3O9S ・道内の試薬販売店・代理店(例えば、北海道和光純薬㈱ Tel:011-747-2811、関東化学販

売㈱ Tel:011-741-0001など)を通して購入可能 【試薬溶液の調製方法】 試薬によってCCA処理木材の判別を実施する場合は、次のとおり調製した溶液を使用する。 ・クロムアズロールS0.5gと酢酸ナトリウム 5gを蒸留水 200mlに溶解した後、試薬用エチ

ルアルコール(エタノール)を加えて全量を 500mlとする。 【調製した溶液の保存方法】

調製した溶液は、プラスチック容器等に密閉して冷蔵庫など冷暗所に保存する。保存期間は最

長1年を限度とし、これを過ぎた場合は新たに溶液の調製を行う。期限を過ぎた溶液は、適正に

処分する。

図-6 試薬溶液の調製

クロムアズロール S(左)とモーダントブルー29(右)(メーカーによって名称は異なるが同じ試薬)

酢酸ナトリウム

クロムアズロール S 0.5g(左)と酢酸ナトリウム 5g(右)を量り取る

量り取った試薬に蒸留水 200mlを加え、かき混ぜて溶解させる

さらにエタノール 300ml を加えてかき混ぜると 500ml 試薬溶液ができる

調製した試薬溶液

① ②

③ ④

※試薬の取り扱い・保管については、試薬に添付された注意事項等に従うこと。

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φ35~40

※1材面について2箇所

座ぐりする

図-9 座ぐりによる試薬塗布面の加工

イ)試薬塗布面の加工方法

試薬によってCCA処理の判別を実施する木材については、以下の方法により試薬塗布面を加

工し、汚染材面から試薬が流れ込まないよう建築用マスキングテープなどで加工面と汚染材面と

を遮断してから試薬を塗布する。 A.切断(適用部位:根太) ・鋸で木材を数 cm 程度の長さに輪切りし、写真のようにマスキングした後、切断面(木材の木口面)に試薬を塗布する。

・切断する位置は、節・割れなどの欠点部分や釘(釘穴)などの付着部分を避ける。

B.切欠き(適用部位:土台、大引き) ・鋸で木材の角

かど

を V字型に切り欠き、写真のようにマスキングした後、切り欠いた面に試薬を塗布する。

・切り欠く位置は、節・割れなどの欠点部分や釘(釘穴)などの付着部分を避ける。

C.座ぐり(適用部位:土台、大引き) ・座ぐりカッターで木材表面を深さ 1mm 程度まで座ぐりし、写真のようにマスキングした後、座ぐり面に試薬を塗布する。 ・座ぐりする位置は、節・割れなどの欠点部分や釘(釘穴)などの付着部分を避ける。

3~4cm

3~4cm

2~3cm

図-8 切欠きによる試薬塗布面の加工

数 cm

図-7 切断による試薬塗布面の加工 写真-7 切断後のマスキング

写真-8 切欠き後のマスキング

写真-9 座ぐり後のマスキング

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3.家屋解体工事でCCA処理木材を判別・分別するための作業手順

(1)CCA処理木材を判別・分別するための作業フロー

図-10に家屋解体工事でCCA処理木材を判別・分別するための作業フローを示す。

工事施工前

工事対象建築物の建築年次の確認

・施主に工事対象建築物の建築年次を確認する。 ・建築年次が昭和37年(1962年)以前の場合、CCA処理木材は使用されていないので通常の解体工事を実施する。・建築年次が昭和 38年(1963年)以降あるいは確認不能の場合、CCA処理木材の使用可能性があるので下記フローに従い作業を行う。

建築設備・内装材等

の取り外し段階

土台の判別作業(P12~13を参照)

・外壁の一部をハンマーで破壊するなどして土台を露出させる。 ・まず、目視によりインサイジング(刺傷)、CCA表示の有無を確認する。 ・目視でCCA処理木材と確認されなかった場合は、土台2本について試薬による呈色反応を確認し、CCA処理木材

の使用有無を判別する。

土台にCCA処理木材は使用されていない

土台にCCA処理木材が使用されている

大引き・根太の判別作業(P14~15を参照)

・床の一部を剥がして大引き・根太を露出させる。 ・まず、目視によりインサイジング(刺傷)、CCA表示

の有無を確認する。 ・目視でCCA処理木材と確認されなかった場合は、大

引き・根太の各1本について試薬による呈色反応を確

認し、CCA処理木材の使用有無を判別する。 屋根ふき材の取り

外し段階

外装材・上部構造部

分の取り壊し段階

床回りの解体およびCCA処理木材の分別作業

(P16~17を参照)

・土台ならびに大引き・根太の判別結果によりCCA処理

木材の使用が確認された部位を他の資材と分別する。 ・なお、CCA処理木材の使用が確認された部位について

は、解体作業時にすべての部材にスプレー等でマーキン

グし他の資材と区別できるようにする。

CCA処理木材の保管・搬出(P16~17を参照) ・CCA処理木材の使用が確認された部位のすべての部材

について、他の資材と区分可能な状態で保管・搬出する。

躯体上部(床回り以外)の解体作業

・1階床回り部分を残し、躯体上部を解体する。

通常の解体作業

・当該建築物にCCA処理木材は使用されていな

いと判断されるので、通常の解体作業を実施す

る。

基礎・基礎ぐいの取

り壊し段階

※1 CCA処理木材であっても薬剤の注入が少ない場合には、試薬で判別できないことがあるため、判別作業においては、必ず目視による判別も実施する。

※2 建築物に付属する木質系外構資材(木製デッキ等)がある場合は、CCA処理木材の使用有無を別途確認する。 ※3 木質パネル工法の住宅については、CCA処理木材の使用部位をメーカーに確認後、本フローとは別に判別・分別作業を実施する。

図-10 家屋解体工事でCCA処理木材を判別・分別するための作業フロー

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出隅部分の土台2本を露出

(2)CCA処理木材の判別作業手順

表-3、表-4 に家屋解体工事で呈色試薬を用いてCCA処理木材を判別するための作業手順を土台な

らびに大引き・根太別に示す。

表-3 土台の判別作業手順

①土台を露出させる

・外壁の一部をハンマーで破壊するなどして土台

2本を露出させる(試薬による確認は2本につ

いて実施すればよく、すべての土台を確認する

必要はない)。 ・土台を露出させる家屋の位置は任意に選んで構

わないが、家屋の出隅(コーナー)部分であれ

ば確実に2本を露出できる。

②試薬の塗布面を加工する

・土台の表面は汚れていることが多く試薬による呈色反応に影響する可能性があるため、必ず土台を切.り.欠く..

か座ぐり...

して汚れのない試薬塗布面を加工する。 ・土台1本あたりについて、切り欠く場合は上面の角を1箇所、座ぐりする場合は側面に2箇所行う。 ・土台を切欠き・座ぐりする位置は、釘・ボルトの付着部分、釘穴部分、節・割れなどの欠点部分を避ける。

・切欠き・座ぐりを行った後、切削面の周囲をマスキングし汚染材面から試薬が流れ込まないようにする。

③試薬を塗布し、CCA処理木材の使用有無を判別する

・切欠き・座ぐりした土台2本の試薬塗布面を刷毛などで

掃いた後、スプレーにより試薬を塗布し塗布面が乾くま

で10~15分程度待つ。 ・クロムアズロールSによる呈色反応の場合、CCA薬剤

が注入されている部分は青色に反応し、薬剤が注入され

ていない部分はオレンジまたはピンクに呈色する。

土台の試薬塗布面の加工1 ―手鋸による切欠き-

土台2本の試薬塗布面

を加工

手鋸で土台を切り欠く 切欠き部分 切欠き部分に接する土台

表面をマスキング

土台の試薬塗布面の加工2 -カッターによる座ぐり-

スプレーで試薬を塗布

座ぐりカッター カッターをドリル

ドライバーに装着

土台の表面を1mm程度

削る 切削部分の周囲を

マスキング

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・土台2本について切欠き・座ぐりした部分の呈色状態を観察し、CCA処理木材に該当するかどうか確認す

る(切欠き・座ぐり部分以外の土台表面に試薬が塗布された場合、CCA処理木材でなくても表面の汚れに

よって青色に反応することがあるため、必ず切欠き・座ぐりした部分について確認を行うこと)。 ・座ぐりした2箇所のうち1箇所でも青色に反応すればCCA処理木材に該当する。

※試薬による確認を行った土台2本のうち1本でもCCA処理木材に該当することが確認された場合、火打

土台も含め土台にはすべてCCA処理木材が使用されていると判断する(→P14 表-4 大引き・根太の判

別作業へ進む)。

また、試薬による確認を行った土台2本ともCCA処理木材に該当しない場合、土台にCCA処理木材

が使用されている可能性は少ないので、以後通常の解体作業を実施する(ただし、CCA処理木材であっ

ても薬剤の注入が少ない場合は、試薬で判別できないことがある)。

CCA処理木材に該当する事例

(CCA薬剤の注入されている部分に試薬が反応して青色を示す)

CCA処理木材に該当しない事例

(CCA薬剤が注入されていない場合、オレンジまたはピンクに呈色する)

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表-4 大引き・根太の判別作業手順

①大引き・根太を露出させる

・バールなどで床材の一部を剥がし、大引き・根太の一部を露出させる(試薬に

よる確認はそれぞれ1本について実施すればよく、すべての部材を確認する必

要はない)。 ・大引き・根太を露出させる家屋の位置は、任意に選んで構わない。

②試薬の塗布面を加工する

・大引きの表面は汚れていることが多く試薬による呈色反応に影響する可能性があるため、必ず大引きを切.り.

欠く..か座ぐり...

して汚れのない試薬塗布面を加工する。 ・大引きを切り欠く場合は2箇所(上面の両角)、座ぐりする場合は4箇所(2材面について各々2箇所)行う。

・大引きを切欠き・座ぐりする位置は、釘・ボルトの付着部分、釘穴部分、節・割れなどの欠点部分を避ける。

・切欠き・座ぐりを行った後、切削面の周囲をマスキングし汚染材面から試薬が流れ込まないようにする。 ・根太は床から一部を切り取り手鋸で木口面を切断し試薬を塗布する。 ・木口面の切断位置は、釘などの付着部分、釘穴部分、節・割れなどの欠点部分を避ける。 ・根太の木口面を切断した後、周囲をマスキングする。

大引き表面を座ぐりする

(座ぐり深さ1mm程度)

上面2箇所、側面2箇所

を座ぐり

大引き・根太を露出

大引きの試薬塗布面の加工1 -手鋸による切欠き-

手鋸で大引きの角

を切り欠く

上面の両角2箇所

を切り欠く

切欠き部分の周囲を

マスキング

大引きの試薬塗布面の加工2 -カッターによる座ぐり-

座ぐり部分の周囲を

マスキング

根太の試薬塗布面の加工 -手鋸による切断-

床から根太の一部を

切り取る

手鋸で切断し、汚れの

ない木口面を出す 切り出した木口面の

周囲をマスキング

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③試薬を塗布し、CCA処理木材の使用有無を判別する

・切欠き・座ぐりした大引き、木口面を切断した根太

の各1本の試薬塗布面を刷毛などで掃いた後、スプ

レーにより試薬を塗布し塗布面が乾くまで 10~15分程度待つ。 ・クロムアズロールSによる呈色反応の場合、CCA

薬剤が注入されている部分は青色に反応し、薬剤が

注入されていない部分はオレンジまたはピンクに呈色する。 ・大引きについては切欠き・座ぐりした部分、根太については木口面の呈色状態を観察し、CCA処理木材に

該当するかどうか確認する(切欠き・座ぐり部分以外の大引き表面、木口面以外の根太表面に試薬が塗布さ

れた場合、CCA処理木材でなくても表面の汚れによって青色に呈色することがあるため、必ず大引きは切

欠き・座ぐりした部分、根太は木口面について確認を行うこと)。 ・切欠き・座ぐりした箇所のうち1箇所でも青色に反応すればCCA処理木材に該当する。 ・大引きの判別事例については、P13 表-3土台の判別作業手順③の事例を参照。

※ 試薬による確認を行った大引きまたは根太についてCCA処理木材に該当することが確認された場合、大

引きまたは根太にはすべてCCA処理木材が使用されていると判断する。

CCA処理木材に該当しない事例(根太)

(CCA薬剤が注入されていない場合、オレンジ

またはピンクに呈色する)

CCA処理木材に該当する事例(根太)

(CCA薬剤の注入されている部分に試薬が反

応し青色を示す)

スプレーで試薬を塗布

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(3)CCA処理木材の分別作業手順

表-5、表-6 に家屋解体工事で確認されたCCA処理木材を分別するための作業手順について大引

き・根太ならびに土台別に示す。

表-5 大引き・根太の分別作業手順

①大引き・根太の概要

・大引きは1階の根太を支える水平材で、両端部は土

台や柱に接する。比較的古い住宅の場合には大引き

の中間部を床束で支えていることが多いが、最近の

住宅では床束を用いないことが多い。大引きの断面

寸法は、床束を用いる場合には正角材(105×105mmほか)、床束を用いない場合には平角材(105×270mmほか)が一般に用いられる。 ・根太は床板を支える部材で、通常は大引きと直交し

て架け渡され釘で大引きに固定されている。根太の

断面寸法は、45×45mm、45×105mm などが一般に用いられる。

②分別解体作業

・床回り以外の躯体上部が解体撤去された後、手作業または手作業・重

機併用により床板→根太→大引きの順に床回りを解体撤去する。 ・床下地に合板が使用されているなどの理由で上記の順に解体撤去する

ことが困難な場合は、重機による床回り撤去後に手作業または手作

業・重機併用により床板と大引き・根太を分離する。なお、重機によ

って床回りを撤去する際には、土台も同時に撤去しないよう注意する。 ・解体作業中、CCA処理木材が使用されている部位をなるべく損傷し

ないよう注意する(特に重機による作業では損傷が生じやすい)。

③マーキング・保管および搬出

・解体した大引き・根太のうちCCA処理木材が使用されている部位については、すべての部材を一本ずつ

スプレー等でマーキングし、CCA処理木材以外の資材と区別できるようにする。 ・分別したCCA処理木材(大引き・根太)を現場敷地内に他の資材と区分して保管し、床回りの解体終了

後に土台と一緒に搬出する。また、解体作業中にCCA処理木材の損傷等で生じた端材や破片は収集・袋詰

めし、CCA処理木材として搬出し適正に処理する。

※大引き・根太にCCA処理木材が使用されていない場合は、土台部分を残して通常の解体作業を実施する。

土台 105×105ほか

火打土台 105×105ほか

根太 45×45 @450ほか

布基礎

大引き 105×270 @900ほか

一般的な床回りの構造

バールによる下地合板の撤去 バールによる根太の撤去 大引きの撤去

床回りを残して躯体上部を

解体撤去

端材・破片の収集 CCA処理木材のマーキング

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表-6 土台の分別作業手順

①土台の概要

・土台には正角材(断面寸法として 105×105mm、120×120mm ほか)が一般に用いられ、布基礎上にアンカーボ

ルトで固定されている。 ・火打土台には、土台と同断面の正角材

や二つ割り(45×105mm)が使用されるほか、最近の住宅では鋼製火打も使

用されている。

②分別解体作業

・床回りの解体において、通常土台は最後に解体撤去されるため他の資材との分別が容易である。 ・土台を残して床回り部分を解体撤去した後、手作業でナットを外し土台をアンカーボルトから取り外す。

土台をアンカーボルトから取り外す際は、損傷を防ぐため重機はなるべく使用せずバール等を用いて手作業

により行う。 ・火打土台(鋼製火打を除く)についても、土台と同様にCCA処理木材として分別する。

③マーキング・保管および搬出

・解体した土台は、すべての部材を一本ずつスプレー等でマーキングし、CCA処理木材以外の資材と区別

できるようにする。 ・分別したCCA処理木材(土台)を現場敷地内に他の資材と区分して保管し、床回りの解体終了後すみや

かに搬出する。また解体作業中にCCA処理木材の損傷で生じた端材や破片は収集・袋詰めし、CCA処理

木材として搬出し適正に処理する。

④CCA木くずの処理

・CCA木くずの処理については、適切な処理施設で焼却または埋立処分を行なわなければならない。 CCAの使用が疑わしい場合についても、これと同様に処理する。

座金

ナット

土台

布基礎

アンカーボルト

土台と布基礎 アンカーボルト(赤枠)

手作業でアンカーボルトから

ナットを外す

ナットを外した状態 バールを用いて土台をアンカ

ーボルトから撤去

分別保管 搬出

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家屋解体工事におけるCCA処理木材分別の手引き

2004 年 11 月 印刷・発行

2006 年 3 月 改訂版発行

編集・発行 北海道立林産試験場

〒071-0198

北海道旭川市西神楽 1線 10 号

TEL 0166-75-4233(代表)

FAX 0166-75-3621