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5教科研究 TOTAL ENGLISH No.127
1. 「できる」ための活動を確保するまずは昨年の授業を振り返ってみる。1年
間の様々な授業は,「知っている」ための活動と,「できる」ための活動の大きく 2つに振り分けることができる。次に挙げる活動は,すべて「言語や文化についての知識・理解」を育てる,いわば「知っている」ための活動に振り分けられる。◆ 「知っている」ための活動例
これら「知っている」ための活動だけでは,英語が使えるようになるのは難しい。ではどのようなものが「できる」ための活動に振り分けられるだろうか。◆ 「できる」ための活動例
授業では「表現の能力」と「理解の能力」を育てる,いわば「できる」ための活動の時間が十分に必要だろう。しかし上の「できる」ための活動例を毎日行えるかというとそれは簡単ではない。CAN-DOリストの作成は,授業で学んだ「知っている」ことを使い,4技能を毎日の授業でバランスよく練習して,コミュニケーションが「できる」ような生徒を育てるための授業計画をすることに目標がある。本稿では,毎日の授業で「できる」ための活動例をいくつか紹介する。2. 各 Lesson でできること毎日の英語の授業の大半を割く Lessonを
扱う時間を「できる」ための活動に使えたら非常に大きな効果が期待できる。教科書のす
べての Lessonに,次のように CAN-DOリストに連動した単元目標を設定する。
実際には各 Lessonで学習するテーマが様々であるため,単元目標の文言は異なるし,「伝達」の方法はスピーキングでもライティングでも可能だ。例えば,Book 2 Lesson 6「The 3Rs in Germany and Japan」について,
とし,授業を計画してみよう。まず上記の目標を達成するための評価課題から作成する。スピーキングの評価課題例と進め方
この課題は,1時間の練習だけでは到底できるようにはならない。ワークシートはLessonを学習し始めるころに渡しておき,毎時間少しずつ記入,練習していく。生徒は指定された日にスピーキングテストがあることを知っているから,毎日の新出語句の練習や音読,文法の練習などの意味,つまり「知っている」ための活動が「できる」ため
雨宮 真一東京学芸大学附属国際中等教育学校
毎日の授業でできることを計画する
・新出単語の意味調べ・練習・パターンプラクティス・文法問題の取り組み・ 教科書の音読・教科書の本文をノートに書写
● 評価課題Lesson 6 の内容を説明する 2 分間プレゼンテーションLesson についての 10 枚の絵を見せながら教師に内容を説明し,教師からの質問に答える。
● 進め方・教師は Lesson の概要を説明するために適当なピ
クチャーカードを 10 枚選ぶ。・授業で,各ピクチャーカードで説明すべきキー
ワードを確認する。書き込み用の絵入りのワークシートも配付する。・2 分間で説明する練習を繰り返し行い,1 人ひと
り教師の前で説明する。・説明後教師からの質問に答える。
環境問題(3Rs)について口頭で説明し,自分の考えを述べる。
Lesson の内容と自分の考えを,自分の言葉で他者に伝達する。
・スピーチをする・ 日記を書く・ ディスカッションで相手の発言に反応する・物語を読んで内容を理解する
キーワード例・Elena Kessler・from Germany・learn about Japan・mottainai⇔ 3Rs・reducing/reusing/recycling
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[特集]CAN-DOリストを活用した授業展開
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の活動につながっていることを理解し,主体的に授業に参加するようになる。3. 毎日の授業でできること各 Lessonの評価課題スピーチを成功させるには,言語材料や新出語句もしっかりと使えるようにしておかなければならない。フラッシュカードで反復練習を行う新出語句は発音を繰り返すだけでなく,慣れてきたら自分で例文を作って言う練習をする。フラッシュカードを使った語句練習の例
例文を作るときもフラッシュカードの練習時と同様にリズミカルに進めると緊張感を保てる。始めは教科書本文の 1文を思い出して言えれば素晴らしいだろう。それだけしっかり音読練習をしているということだ。長い文を言えたらみんなで拍手する。鋭い文や面白い文を言う生徒が出てきたらみんなで大いに笑う。楽しい雰囲気の中で自由に表現する機会を持ちたい。単語テストでも最後に指定の(あるいは任意の)語で例文を書かせることで,品詞を意識するセンスが磨かれていく。
Lesson中の T/Fや Q&Aは一度だけ挑戦して終わってしまうのはもったいない。何度もやってみると,前の時間に誤った問題も次の時間にはできるようになって達成感もあるし,消化不良が減るだろう。例えば T/Fの場合,Falseの理由も問い,毎回少しずつレベルを上げていくと飽きがこない。この練習がスピーキングの評価課題の際の口頭試問で大いに役に立つだろう。
Dictoglossもリスニングとライティングが必要な「できる」ための活動として使える。Dictogloss の活動例
TOTAL ENGLISHの課末には Review①があり,その 1問目はすべてリスニング問題だ。リスニング問題にそのまま取り組んで答え合わせをした次の時間には,これを再び利用してDictoglossという活動に挑戦してみよう。リスニングから,必要な語を拾い出し,自分の言葉で書き起こすところが表現の能力を伸ばすことにつながる。また再構成する際は会話文でなく地の文に変更すると内容を整理しやすい。このとき「誰が」「何を」「どこで」などの 5W1Hを意識させるとなお良いだろう。
TOTAL ENGLISHには,「Talking Time」や「Action!」など 1~ 2ページ構成の課もある。これらのページを 1~ 2時間かけて一気に完結してしまうと知識として理解した「知っている」ための授業になってしまいがちだ。一方毎時間 Stepごとに 10分程度使いながら数日間活動すれば,費やした時間が同じでも繰り返し復習することもできて身につきやすくなる。こういったページで身につけた表現を使いのちに日記やスピーチの原稿を書いたり,インタビューで答えるときに使うことができる。このように教科書の進め方でも「できる」ための活動を工夫することができる。4. Chapter Project でできること
Chapter Projectはまさに CAN-DOリストの目標達成のためにある活動だ。ここでは主にライティングやスピーキングの表現の能力に関する「知っている」ことを,「できる」レベルに近づけることができる。ここでは Book 2 Chapter 3 Projectの進め方を挙げてみよう。Book 2 Chapter 3 Project 進め方の例
Chapter Projectで気をつけるべきことは,活動を始める前に教師が何をゴールに求めて
① 英語→英語(発音の確認)同時に日本語の意味確認
② 日本語→英語(意味の理解)③ 日本語→スペリング確認④ 英語→例文作成⑤ 日本語→例文作成
「将来の夢」スピーチ① 活動を始める 1 週間以上前にテーマを予告し,
内容を考えてくるよう通知する。② 教師自身が目標を達成する程度のサンプルス
ピーチを行う。③ 評価の観点と評価規準,評価基準を生徒に示し
て解説する。④ 活動を開始し,必要に応じてフィードバックを
行う。⑤ 発表後,活動を振り返り,評価を返却する。
① 問題の会話文を何回か(3 回以上)再生する。② 生徒は再生中自由にメモを取る。③ 終了後,メモから会話の内容を再構成して自
分の言葉で書き起こす(地の文に直す)。④ 最後にもう一度会話文を聞いて確認する。
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いるかを生徒と共有することだ。そのことにより,生徒は目標に向けて主体的に学習する態度・姿勢を身につけることができる。まず ①で生徒が話したいことを思いつくまでの考える時間を確保する。生徒にとってはどのように(how)話すかより,何を(what)話すかを考えるほうが難しいことが多い。この時間を十分にとることと, ②のサンプルで具体的なゴールの形を示すことが生徒を主体的にさせることへのカギとなる。また,先生の個性がサンプルスピーチに現れれば,「自分だったらこうしよう。」と動機も上がり,具体的なイメージもわく。そして ③で評価の観点や基準などを示し,練習時に自己評価・ペア評価を行う。この作業で生徒は目指すべき目標を明確に持つことができるようになる。下に評価表の例を示したが,より具体的なものは Teacher’s Guideに記載されている。Book 2 Chapter 3 Project の評価表の例
また,スピーチ終了後,まだ生徒の反省が新鮮なうちに活動の振り返りをさせたい。発表前に振り返りシートを手元に置いておくだけで,評価表の簡易版として一目で気をつけるポイントを確認することができる。スピーチ振り返りの例
この振り返りを毎回ファイリングすることによって学びの履歴がわかりやすく整理され,
次回の目標を定めることができるようになる。これも生徒を主体的学習者にする工夫だ。5. Reading でできること
TOTAL ENGLISHで 1つの学年に 2~ 3つ用意されている Readingでは,まとまった量の英語を新出の言語材料の導入なしに読むことができる。ここでは全体を通して読む経験を繰り返し行うことで,概要をつかんだうえで詳細を理解する練習をしたい。そのためには指示の出し方に工夫が必要だ。物語なら登場人物の人数,説明文なら一番出てくる語は何かなど,おおざっぱで簡単な質問から始め,徐々に事件や結論などの話の中心を問うようにする。2年生から用意されている Review ②でも,Lessonで学習した親しみのあるテーマでさらに読む経験を積むことができる。6. 定期テストでできること普段の授業で「できる」ための活動や評価を十分に行っていれば,定期テストでは,語彙や文法問題などの「知っている」ための到達度評価を行うことを主とすると決めてしまってよいだろう。しかしここでも「できる」にかかわる評価を盛り込むこともできる。リスニングとリーディングでは語彙や文法ではなく,内容理解を問う問題を設置し,ライティングでは学年に合わせた自由記述問題でまとまった量の文章を書かせることができる。ただし採点はつづりや文法のミスで減点していく方法ではなく,Chapter Projectの評価表で示したように評価の観点と基準を設けて内容や構成を評価する方法が良いだろう。定期テストだけでしか評定を決められる要素がないという状況をつくらないようにするのが CAN-DOリストの大きな目標でもあることを確認しておきたい。7. ゴールがあるから毎日がある
1年間,各学期で 4技能をバランスよく伸ばす計画ができているかを常に確認できるようにするために CAN-DOリストを作成する。生徒と教師が目指すべきゴールを共有しているから,安心して全力で走れる。
観点
基準
外国語表現の能力話すこと 書くこと
・声量/速さ/発音/イントネーション
・表情/姿勢/ジェスチャー・聞き手への意識
・内容/文章のまとまり・展開(主題 本論 結論)・語彙/文法
A 上記の項目がすべて適切で効果的
・明確/まとまり/十分な量・展開が明確で効果的・語彙/文法が適切で効果的
B 上記の項目のいくつかが適切
・ある程度のまとまり・展開が適切・語彙/文法の誤りがコミュ
ニケーションを妨げないC 上記に当てはまらない 上記に当てはまらない
A:十分満足できる B:おおむね満足できる C:努力を要する
次の項目の☆をできたと思う数だけ塗りつぶそう。
発表
表情聞き手への視線 ☆☆☆ 声の大きさ
話す速さ ☆☆☆
発音イントネーション ☆☆☆ 姿勢
ジェスチャー ☆☆☆
内容テーマ設定 ☆☆☆ 展開 ☆☆☆
コメント
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