『改訂新版 英語音声学入門』 (解答集) -...
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(1) 本質問集は『改訂新版 英語音声学入門』において述べられた音声学理論を
理解することを容易にすることを目的として作成されました。 (2) 本書においては、綴り字と発音の関係に関するフォニックス理論については扱
いません。理由は次の 2つです。
第 1に、発音習得上、発音記号を習得すれば十分であり、フォニックス理論に
ついて学習しなくとも何の問題も生じません。
第2に、綴り字と発音の関係における規則性には例外が多いため、フォニック
ス理論を習得することは容易ではありません。
(3) 本書においては、主として標準米国発音について扱います。標準英国発音につ
いては付随的に学ぶことを提案します。
(4) 発音練習は付属のCDを利用して行うことをお勧めします。
竹林滋・斉藤弘子. (1998). 『改訂新版 英語音声学入門』(CD 付). 大修館書店.
『改訂新版 英語音声学入門』
(解答集)
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Ⅰ 現代英語の標準発音(p. 3)
1 英語のひろがり (p. 3)
(1) 約 3億人です。
(2) 英語を話す国々の中で、世界において文化的・経済的に最も大きな比重を占める
のが米国と英国であるから。
2 標準米国発音 (p. 4)
(3) テレビの全国的な放送網において使用される発音。
2 標準英国発音 (p. 5)
(4) 容認発音あるいは BBC 発音と呼ばれる発音。
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Ⅱ 音声器官と音の分類 (p. 7)
(1) 言語(language)とは、思想や感情を伝達するための音による仕組み。
(2) ある言語において、意味を伝える働きを持った音を言語音と呼ぶ。例えば、/h/
の音は、フランス語においては言語音ではない。 (3) 言語音を発するために必要な働きをする器官を音声器官と呼ぶ。
(4)
肺臓は空気を体内に吸い込んだり、体内から吐き出したりする働きをする器官。 (5) 体内に吸い込まれる空気を吸気(inspiration) と呼ぶ。
(6) 体内から吐き出される空気を呼気(expiration) と呼ぶ。
(7) 喉頭(larynx)には、音声学上重要な声帯が納まっているから。
(8) 声帯(vocal folds)は息(breath)や声(voice)を生成する。
(9) 無声音とは、呼気が声帯を通過するとき声帯を振動させないときの音。例/p//t/。
(10) 有声音とは、呼気が声帯を通過するとき声帯を振動させるときの音。例/b//d/。
(11) 息がでるとき声帯は振動しない。他方、声がでるとき声帯は振動する。
(12) 声門の一部だけが開いてそこを呼気が出るとき、ささやき音が生成される。
(13)
噪音(noise)とは、音声的に不規則性を有した音のことを言う。
(14) 調音(articulation)とは、言語音を生成する調音器官の働きを言う。 (15) 調音器官とは、言語音を生成する働きをする身体の部位をいう。例:舌、歯。
(16) 調音器官を示す第 3図(p. 9)において、各調音器官がどこに当たるのかを示す
ことができるようにすること。
(17) 声道(vocal tract)とは、声門から唇および鼻腔までを指す。
(18) 閉鎖音または破裂音とは、声道において呼気が完全に閉鎖されるときに調音され
る音、または、完全に閉鎖された呼気が開放されるときに調音される音。例:/p/ (19) 摩擦音とは、声道における狭窄を呼気が通過するときに生じる摩擦の音(おと)
を伴う音(おん)。例:/s//f/
(20) 鼻音とは、口腔内が閉鎖され呼気が鼻腔を通過するときに生じる音。
例:/m//n// / (21) 側面音とは、舌の正中線によって口腔の中央部が閉鎖され、呼気が舌の両側また
は片側から流出するとときに生じる音。例:/l/ (22) ふるえ音とは、強い呼気によって弾力性のある音声器官を震わせて調音される
音。標準的な英語にはない音。
(23) たたき音とは、強い呼気によって弾力性のある音声器官を 1回だけ震わせて調音
される音。例:米語において、writer における/t/、ladder における/d/
(24) 子音とは、口腔内において呼気が調音器官によって遮られる程度の比較的大きな
音。例:/p//b/
(25) 母音とは、口腔内において呼気が調音器官によって遮られる程度の比較的小さな
音。例:father における/ /、top における/ /
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Ⅲ 母音(p. 13)
1 母音の分類 (p. 13)
(1) 母音を分類する 3 つの基準は次のとおり。1.舌のどの部分が最も高く持ち上げ
られるのか、2.舌がどの高さまで持ち上げられるのか、3.唇の形はどのようか。
(2) 前舌母音とは、前舌面が最も高く持ち上げられることによって調音される母音。
(3) 後舌母音とは、後舌面が最も高く持ち上げられることによって調音される母音。 (4) 中舌母音とは、中舌面が最も高く持ち上げられることによって調音される母音。 (5) 高母音(狭母音)とは、舌が高めに持ち上げられることによって調音される母音。 (6) 低母音(開母音)とは、舌が低めに持ち上げられることによって調音される母音。
(7) 基本母音とは、世界中の諸言語における母音を説明する基準となる母音のこと。 (8) 第一次基本母音とは、母音を分類する 3つの基準に基づいて設定した世界中の諸
言語における母音を説明する基準となる母音のこと。 (9) 高母音とは、[i]-[u]の高さの母音を指す。 (10) 中高母音とは、[ ]-[ ]の高さの母音を指す。 (11) 中低母音とは、[ ]-[ ]の高さの母音を指す。 (12) 低母音とは、[ ]-[ ]の高さの母音を指す。
(13) 円唇母音とは、唇を丸めて調音される母音。 (14) 非円唇母音とは、唇を丸めないで調音される母音。 (15) 広い円唇とは、唇を丸める程度が弱く、唇の開きが大きいという意味。[ ] (16) 狭い円唇とは、唇を丸める程度が強く、唇の開きが小さいという意味。[u] (17) 中程度の円唇とは、広い円唇と狭い円唇の中間程度という意味。[ ]
(18) 張唇とは、唇を積極的に左右に拡げるという意味。 (19) 弛唇とは、唇を積極的に左右に拡げないという意味。
(注) 基本母音は角括弧 [ ] に入れて表示します。他方、英語音はスラッシュ / / に入れ
て表示します。この違いに注意してください。
(20) 第一次基本母音における各母音を発音するとき、唇の形を逆にして発音すると得
られる母音を第二次基本母音という。例えば、No. 9 [y]は No. 1 [i]を張唇で
はなく、狭い円唇で発音すると得られる。 (21) 国際音声学協会が用いる補助的母音記号として、[ ][ ]等がある。 (22) 発音されている間、調音器官が一定の位置を保っている母音。例:英語の/ // /
(23) 発音される時、調音器官がある位置から別の位置へと変化する母音。例:英語/a / (24) 前半の母音が後半の母音よりも強く発音される二重母音を下降二重母音という。
例:knife の/a / (25) 後半の母音が前半の母音よりも強く発音される二重母音を上昇二重母音という。
例:use の/ / (26) 長(long)を示す記号とは、母音の長さが相対的に長いことを示す。[ ]で表す。
[a ]は[a]よりも長いことを示す。 (27) [a]よりも長いが[a ]よりも短いことを表したい時は、[a ]のように半長
(half-long)を示す記号[ ]を用いる。
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2 英語の母音 (p. 18)
a 強母音と弱母音(p. 18)
(1) 米音における母音と英音における母音を総合したものを音節核音と呼ぶ。音節核
音には、短母音、長母音、二重母音が含まれる。
(2) 強母音とは、多少とも強い強勢のある音節に現れる母音。例: / // /
(3) 弱母音とは、常に弱い強勢のある音節に現れる母音。例: / // /
(4) 抑止母音とは、次の 2つの特徴を持つ母音。1. 子音で終わる音節にしか現れな
い。2. 比較的短く発音される。一般に短母音と呼ばれる。例: / // / (5) 開放母音とは、次の 2つの特徴を持つ母音。1. 子音で終わる音節にも、母音で
終わる音節にも現れる。2. 比較的長く発音される。長母音、二重母音および三
重母音に分けられる。例: / //e //a /
(6) 緊張母音とは、発音するときに舌や唇などの調音器官が緊張している母音のこと
をいう。英語の/ // / (7) 弛緩母音とは、発音するときに舌や唇などの調音器官が比較的緊張していない母
音のことをいう。英語の/ // /
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2 英語の母音
b 短母音(p. 20)
(1) 英語には短母音が 6つある。/ // // // | // // /
1 / / (p. 21)
(1) 英語の/ /は、弛緩母音で唇は張唇ないし弛唇である。
どのような特徴をしていますか。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「イ」と「エ」の中間の音に似ている。
(3) 口蓋化とは、子音が調音される際、前舌面が硬口蓋の方に持ち上げられて、[i]
のような響きを伴う現象を意味する。
(4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め kit の/ /、長め kid の/ /
(5) 口の開き方、唇の丸め方、舌の高さの 3点において、すべて日本語における「イ」
と「エ」の中間くらいの位置とする。
2
(1)
/ / (p. 23) 英語の/ /は、弛緩母音で唇は張唇ないし弛唇である。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「エ」に「ア」の響きが加わる音に似ている。 (3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め set の/ /、長め said の/ /
(4) 日本語における「エ」を発音するときよりも、口を大きめに開いて発音する。
3 / / (p. 24)
(1) 英語の/ /は、一応弛緩母音に入るが/ /よりは緊張している。唇は弛唇である。 (2) 英語の/ /の音は、日本語における「ア」と「エ」の中間の音に似ている。
(3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め cap の/ /、長め cab の/ / (4) 日本語における羊の鳴き声である「メー」と言う時の口の位置を保ったまま、「ア」
と言う。
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2 英語の母音
b 短母音
4 / / (p. 26)
(1) 英語の/ /の音は、日本語における「ア」の場合より、舌の位置が後ろよりで口
の開きも大きい。 (2) 英語の/ /の音は日本語における「ア」の音に似ている。
(3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め mop の/ /、長め mob の/ / (4) 日本語における「ア」の音を発音するときより、口を大きく開いて、のどの奥の
方で調音する感じで発音する。
5 / / (p. 27)
(1) 英語の/ /の音は、弛緩母音で唇は弛唇である。 (2) 英語の/ /の音は、日本語における「ア」と「オ」の中間の音に似ている。 (3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め cup の/ /、長め cub の/ / (4) 日本語における「オ」の音を発音するときのように口を開ける。唇を緩めておい
て、「ア」と言う。結果として唇が「ア」と「オ」の中間の開きとなるようにす
る。
6 / / (p. 29) (1) 英語の/ /の音は弛緩母音で、唇は中程度よりやや弱い円唇。舌の位置は基本母
音の[o]に近い。 (2) 英語の/ /の音は日本語における「ウ」と「オ」の中間の音に似ている。
(3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め cook の/ /、長め could の/ / (4) 日本語における「オ」の音を発音するときのように口を開ける。唇を少し緩めて
おいて、「ウ」と言う。結果として唇が「オ」と「ウ」の中間の開きとなるよう
にする。
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2 英語の母音
c
(1)
長母音 (p. 30)
5 つ。1. / / 2. / / 3. / / 4. / / 5. / /
1 / / (p. 30)
(1) 英語の母音としては最も緊張している。唇は張唇である。 (2) 日本語における「イー」に似ている。
(3) 正しくない。/ /の音の後に来る子音と/ /後に来る子音が同じとき、/ /は、
/ /より長めに発音される。しかし、有声音の前にある/ /と無声音の前にある
/ /とでは、ほぼ同じくらいの長さで発音される。例:長い bead / /、
中間 bid / / beat / /、短い bit / / (4) 日本語における「イー」と発音してよい。 (5) 長母音/ /と短母音/ /は、音の長さの違いより、音色の違いの方がはるかに重
要である。
2 / / (p. 32)
(1) 英語の母音の中で、最も口の開きが大きく、舌の位置が低い。唇は弛唇。米音で
は/ /と/ /を区別しない人が多い。その場合、次の 2語は同じ発音となる。
Balm /b / bomb /b / (2) 日本語における「アー」に似ている。ただし、「アー」より口の開きが大きい。
(3) 日本語の「アー」を発音するときより口を大きく開く。口の奥の方で調音する。 (4) 長母音/ /と短母音/ /とは、音色が基本的に同じである。音の長さが異なる。
ただし、/ /と/ /を区別しない人が多い。
3 / / (p. 34)
(1) 長母音/ /よりの少し舌の位置が高い。 (2) 日本語における「アー」に「オー」の音色が掛かっているような音。
(3) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め ought の/ /、長め awedの/ / (4) 日本語の「アー」を発音するとき、唇を少しすぼめるようにして発音する。
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2 英語の母音
c 長母音
4 / / (p. 34)
(1) 緊張母音。唇は狭い円唇。 (2) 日本語における「ウー」とはかなり音色が異なる。日本語における「ウー」は非
円唇であるのに対し、/ /は狭い円唇母音である。
(3) 正しくない。/ /の音の後に来る子音と/ /後に来る子音が同じとき、/ /は、
/ /より長めに発音される。しかし、有声音の前にある/ /と無声音の前にある
/ /とでは、ほぼ同じくらいの長さで発音される。例:長い food / /、
中間 hood / / root / /、短い foot / / (4) 日本語の「ウー」を発音するとき、唇をさらに強く丸めて発音すると/ /に近
い音がでる。 (5) 長母音/ /と短母音/ /は、音の長さの違いより、音色の違いの方がはるかに重
要である。
5 / / (p. 38)
(1) 唇は円唇気味。もり上がり舌母音とそり舌母音の 2種類がある。もり上がり舌母
音の場合、中舌面が最も高い中舌母音となる。 (2) 綴り字に rを含む単語で、r の音色のついた母音/ /を用いる方言を R音性的方
言と言う。米音は R音性的方言。一方、r の音色のついた母音/ /を用いない英
音は非 R 音性的方言と言う。
(3) 日本語における「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の中間のような音。したがって、あ
いまい音と呼ばれることがある。 (4) 1. 日本語の「ウ」を発音するときの口の形を作る。
2. その口をほんの少しだけ大きくする。
3. 舌をそらせる。あるいは、舌をもり上げる。
4. 「アー」という。 (5) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前
にある場合長めに発音される。例:短め curtの/ /、長め curd の/ / (6) hurry / | /、current / | /
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2 英語の母音
d
二重母音 (p. 41)
(1) 11 種類ある。1. / / 2. / / 3. / / 4. / / 5. / / 6. / /
7. / / 8. / / 9. / / 10. / / 11. / /
(注)本書においては、/ /も二重母音として扱われています。しかし、本クラスにおいては
/ /を二重母音として扱わず、子音/ /と長母音/ /の合わさったものとして扱いま
す。その方が理解し易いからです。
(2) 綴り字に rを含む単語中で、r の音色のついた母音/ /を用いる二重母音が含ま
れる場合、この二重母音を rの二重母音(r-diphthong)と呼ぶ。例:care/k /
1 / / (p. 41)
(1) 下降二重母音。つまり、前半の母音より後半の母音の方が強く発音される。音の
移動の範囲が狭い。p. 41 第 16 図において、矢印線が短いことは、音の移動の
範囲が狭いことを示す。この点、以下同様である。有声子音の前では長めに発音
される。出発音の舌の位置は/ /よりも高い。
(2) 日本語における「エィ」の音に似ている。 (3) 日本語「エ」をはっきりと発音し、「イ」に至るまでに音が終わる感じで発音す
る。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め cape の/ /、長め babeの/ /
2 / / (p. 43)
(1) 下降二重母音。音の移動の範囲が広い。p. 41 第 16 図において、矢印線が長い
ことは、音の移動の範囲が広いことを示す。出発音は日本語の「ア」の場合より
かなり舌の位置が低い。口の開きは、日本語の「ア」の場合より大きい。出発音
の後、日本語「エ」の方向へ移動するが、「エ」に至るまでに音が終わる。唇は
広い円唇で始まり、弛唇へ移行する。
(2) 日本語における「アィ」の音に似ている。あるいは、日本語における「オェ」の
音に似ている。 (3) 日本語「ア」よりも少し口を開き気味して「ア」とはっきりと発音する音を出発
音とする。その後、「イ」の方向へ移動するが、「イ」に至るまでに音が終わるよ
うに発音する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め sight の/ /、長め sideの/ /
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3 / / (p. 43)
(1) 下降二重母音。音の移動の範囲が広い。p. 41 第 16 図において、矢印線が長い
ことは、音の移動の範囲が広いことを示す。出発音は日本語の「オ」の場合より
かなり舌の位置が低い。口の開きは、日本語の「オ」の場合より大きい。出発音
の後、日本語「エ」の方向へ移動するが、「エ」に至るまでに音が終わる。唇は
広い円唇で始まり、弛唇へ移行する。
(2) 日本語における「オィ」の音に似ている。あるいは、日本語における「オェ」の
音に似ている。 (3) 日本語「オ」よりも少し口を開き気味して「オ」と発音する音を出発音とする。
その後、「イ」の方向へ移動するが、「イ」に至るまでに音が終わるように発音す
る。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め voice の/ /、長め noise の/ /
4 / / (p. 44)
(1) 下降二重母音。音の移動の範囲が広い。p. 41 第 16 図において、矢印線が長い
ことは、音の移動の範囲が広いことを示す。出発音は日本語の「ア」の場合より
かなり舌の位置が低い。口の開きは、日本語の「ア」の場合より大きい。出発音
の後、日本語「ウ」の方向へ移動するが、「ウ」に至るまでに音が終わる。唇は
弛唇から弱い円唇へ移行する。
(2) 日本語における「アゥ」の音に似ている。 (3) 日本語「ア」よりも少し口を開き気味して「ア」とはっきりと発音する音を出発
音とする。その後、「ウ」の方向へ移動するが、「ウ」に至るまでに音が終わるよ
うに発音する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め count の/ /、長め found の/ /
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2 英語の母音
d 二重母音
5 / / (p. 45)
(1) 下降二重母音。音の移動の範囲が比較的狭い。p. 45 第 17 図において、矢印線
が短いことは、音の移動の範囲が狭いことを示す。出発音は日本語の「オ」の場
合よりかなり舌の位置が少し高い。口の開きは、日本語の「オ」の場合より狭い。
出発音の後、日本語「ウ」の方向へ移動するが、「ウ」に至るまでに音が終わる。
唇は広い円唇で始まり、弛唇へ移行する。
(2) 日本語における「オゥ」の音に似ている。 (3) 日本語「オ」よりも少し口を開き気味して「オ」と発音する音を出発音とする。
その後、「ウ」の方向へ移動するが、「ウ」に至るまでに音が終わるように発音す
る。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め rope の/ /、長め robeの/ /
6 / / (p. 48)
(1) 子音/ /+長母音/ /の組み合わせと考えると理解しやすい。つまり、二重母音
とは考えないアプローチをとると、理解しやすい。
出発音は日本語の「イ」と同じくらいの音である。p. 45 第 17 図参照。出発
音の後、日本語「ウー」の方向へ移動する。ただし、唇は弛唇から狭い円唇へ移
行する。
上昇二重母音と呼ばれることがあるのは、前半の/ /の音よりも後半の/ /の
方が強く発音されることを意味する。
米音では/ /が脱落することが多い。例:tube/t( b/、duty/d( ti/ (2) 日本語における「ユー」とほぼ同じ。 (3) 日本語「イ」を出発音とする。その後、「ウー」へ移動する。ただし、「ウー」と
発音するときは、通常の「ウー」と発音するときよりも唇をずっと狭く丸めるこ
とに注意する。
また、出発音「イ」は非常に短く発音され、すぐに後半の/ /の音へ移行する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前
にある場合長めに発音される。
例:短め use(名詞)の/ /、長め use(動詞)の/ /
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2 英語の母音
d 二重母音
7 / / (p. 49)
(1) 下降二重母音。音の移動の範囲が比較的狭い。p. 49 第 18 図において、矢印
線が短いことは、音の移動の範囲が狭いことを示す。
出発音は日本語の「イ」と「エ」の中間音。
唇は張唇で始まり、弛唇へ移行する。つまり、唇は横に広い状態から少しすぼ
めた状態へ移行する。
口の開きについては、出発音より終了音の方が狭い。
(2) 日本語における「イ」と「エ」の中間音からあいまい音へと移動する感じ。 (3) 1. 日本語の「イ」と「エ」の中間音を出発音とする。
2. その後、あいまい音/ /へと移動する。
3. 唇は横に広い状態から少しすぼめた状態へ移行するように発音する。
4. 口の開きについては、出発音より終了音の方が狭くなるように発音する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め fierce の/ /、長め fears の/ /
8 / / (p. 50)
(1) 日本語の「エ」よりも舌が低い音を出発音とするのが最も一般的。その後、あ
いまい音/ /へと音が移動する。
唇は張唇。
口の開きについては、比較的広い状態から比較的狭い状態へ移行する。
(2) 日本語における「エ」の音からあいまい音へと移動する感じ。 (3) 1. 日本語の「エ」を発音する時よりも、大きく口を開けて「エ」と発音する。
羊の鳴き声「メェー」を発音する時の「エ」といった音を出発音とする。
2. その後、あいまい音/ /へと移動する。
3. 唇は横に広い状態から少しすぼめた状態へ移行するように発音する。
4. 口の開きについては、出発音より終了音の方が狭くなるように発音する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前に
ある場合長めに発音される。例:短め scarce の/ /、長め scares の/ /
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2 英語の母音
d 二重母音
9 / / (p. 51)
(1) 出発音は日本語の「ウ」と「オ」の中間音。その後、あいまい音/ /へと移動
する。ただし、/ /の音には幅がある。/ /よりも口の開きが狭い音となる場合
(矢印線が上昇する場合)と、/ /よりも口の開きが広い音となる場合(矢印線
が下降する場合)の 2種類がある。
(2) 日本語における「ウ」と「オ」の中間音からあいまい音へと移動する感じ。 (3) 1. 日本語の「ウ」と「オ」の中間音を出発音とする。
2. その後、あいまい音/ /へと移動する。
3. 唇は円唇柄から弛唇へ移行する。
4. 普通の場合、口の開きについては、比較的狭い状態から比較的大きい状態へ
と移行する。
10 / / (p. 53)
(1) 出発音は日本語の「ア」の場合よりも、口を大きく開きく開いた音。その後、あ
いまい音/ /へと移動する。唇は弛唇。
(2) 日本語における「アーァ」のように聞こえる。 (3) 日本語「ア」よりも少し口を開き気味して「ア」とはっきりと発音する音を出発
音とする。その後、あいまい音/ /へと移動する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前
にある場合長めに発音される。例:短め harpの/ /、長め barb の/ /
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2 英語の母音
d 二重母音
11 / / (p. 54)
(1) 出発音の/ /は音に幅がある。日本語の「オ」に近い音から、「オ」を発音する
ときよりももっと口を開けて発音する音まである。一般的には、日本語の「オ」
よりも少し舌が低い音と考えればよい。その後、あいまい音/ /へと移動する。
唇は広い円唇から弛唇へと移行する。
口の開きについては、比較的大きい状態から比較的狭い状態へと移行する。
(2) 日本語における「オァ」のように聞こえる。 (3) 1. 日本語の「オ」のときより、もう少し口を開けて、のどの奥の方で調音する
感じで出発音の/ /を発音する。
2. その後、あいまい音/ /へと移動する。
3. 口の開きについては、比較的大きい状態から比較的狭い状態へと移行する。
4. 唇は比較的円い状態から比較的平らな状態へと移行する。 (4) 正しくない。/ /の音は、無声音の前にある場合短めに発音され、有声音の前
にある場合長めに発音される。例:短め sortの/ /、長め sword の/ /
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2 英語の母音
e
三重母音 (p. 57)
(1) 母音が 3 つ重なって発音される場合、これを三重母音と呼ぶ。三重母音には、
/ /と/ /の 2 つがある。竹林・斉藤(1998)においては、/ /も三重母
音であると定義されている。しかし、多くの音声学書においては/ /は三重母
音と定義されていない。また、/ /を三重母音と定義しない方が受講者にとっ
て理解しやすいと考えられる。したがって、本授業においては、/ /について
は、子音/ /+二重母音/ /として扱う。
(2) 三重母音には、/ /と/ /の 2 つがある。
1 / / (p. 57)
(1) 子音/ /+二重母音/ /から成る。子音/ /を出発音とする。その後、母音/ /の
方向へ音が移行する。さらに、母音/ /に至る前に、母音/ /の方向へ音が移行
する。その結果、p. 58 第 22図において示されるように、音の移行する様子が、
直線ではなく、曲線で示されることになる。
(2) 日本語における「ユァ」のように聞こえる。 (3) 1. 日本語の「イ」を発音する。
2. ただし、すぐ次の「ユ」の方向へ音が移行する。したがって、始めの「イ」
の音は、「ィ」と表す方が分かりやすいかもしれない。
3. その後、あいまい音/ /へと移動する。
4. 唇は、次のように移行する。張唇 → 円唇 → 弛唇。
2 / / (p. 58)
(1) 母音/ /を出発音とする。その後、母音/ /の方向へ音が移行する。さらに、母音
/ /に至る前に、母音/ /の方向へ音が移行する。その結果、p. 59 第 23 図にお
いて示されるように、音の移行する様子が、直線ではなく、曲線で示されること
になる。
(2) 日本語における「アィァ」のように聞こえる。 (3) 1. 日本語の「ア」を発音する。
2. その後、「イ」の方向へ音が移行する。
3. しかし、「イ」の音に至る途中で、あいまい音/ /へと移動する。
第 2 要素の「イ」をはっきりと発音しないことに注意する。
(注) 質問集において、p. 4 質問(12)は次のとおりとする。
第 1次基本母音において、低母音とはどの母音ですか。
質問(12)は(13)とする。以下質問番号を 1 つずつずらす。
- 17 -
2 英語の母音
e
三重母音 (p. 57)
3 / / (p. 60)
(1) 母音/ /を出発音とする。その後、母音/ /の方向へ音が移行する。さらに、母音
/ /に至る前に、母音/ /の方向へ音が移行する。その結果、p. 59 第 23 図にお
いて示されるように、音の移行する様子が、直線ではなく、曲線で示されること
になる。
(2) 日本語における「アゥァ」のように聞こえる。 (3) 1. 日本語の「ア」を発音する。
2. その後、「ウ」の方向へ音が移行する。
3. しかし、「ウ」の音に至る途中で、あいまい音/ /へと移動する。
第 2 要素の「ウ」をはっきりと発音しないことに注意する。
- 18 -
2 英語の母音
f
弱母音 (p. 63)
(1) 強母音は常に一定の明確な音色を持ち、多少とも強い強勢、つまり第 1強勢ま
たは第 2 強勢を受ける。一方、弱母音は、常に弱強勢しか受けず、長さが短く音
色が曖昧になる傾向がある。また、弱母音は、発話の速さやスタイル、綴り字と
の関連により、音色が多少変化することがある。
弱母音には、次の 5種類がある。
1. / / 2. / / 3. / / 4. / / 5. / /
(2) 上記のとおり。
1 / / (p. 63)
(1) ひとつは、city や happy のように、綴り字が y で終わる語の語末に現れるも
のである。この場合、/ /の音はやや長めに発音される。
ふたつ目は、colonial や simultaneous のように、母音の前の i、e の綴り字
として現れるものである。この場合、/ /の音はごく短く発音される。
この音は、長母音/ /よりも舌の位置が低く、短母音/ /も舌の位置が高い。
(2) 日本語における「イ」のように聞こえる。 (3) 語末の/ /はやや長めに発音される。母音の前の/ /は短く弱く発音される。
ただし、-yで終わる形容詞に-ly、-ness が続くときは注意を要する。
-ly が続く場合、/ /は/ /または/ /と発音される。
happy /h p / → happily /h p / 他方、-ness が続く場合、母音の音色は変わらない。
happy /h p / → happiness /h p /
2 / / (p. 65)
(1) / /の音と、強母音/ /の音と/ /の音の中間音の 2種類がある。
(2) この質問は削除する。 (3) / / =「イ」という考えを採用しない方が賢明である。
「イ」と「エ」の中間音、と弱い「エ」の 2種類があると考えると良い。 (4) 「イ」と「エ」の中間音は短母音の/ /の音を発音するように発音する。
もう一方の音は、日本語の弱い「エ」の音を発音するように発音する。
- 19 -
2 英語の母音
f 弱母音 (p. 63)
3 / / (p. 67)
(1) 発話の速さやスタイル、前後の音、綴り字との関連により、音色がかなり変化
する。
例えば、to come、long ago のように、軟口蓋子音/ // // /の場合、やや高
めの音となる。一方、China、sofa のような語末の場合、低い音となる。
(2) / / =「ア」という考えを採用しない方が賢明である。/ /は、弱く短く曖昧な音
であることがその特性である。これに似た日本語の音があるとは考えない方がよ
い。 (3) 1. 日本語の「ウ」と「オ」の中間くらいに口を開く。
2. 唇は弛緩させておく。
3. 軽く「ア」と発音する。
4. 口があまり開いていないので、丁度「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の中間のよ
うな、あいまいな音が発音される。
4 / / (p. 69)
(1) 子音/ /プラス母音/ /の合わさったものと考えられる。
/ /から/ /までの変動がある。前者は、丁寧は発話で現れる。後者は、くだけ
た会話において現れる。
(2) 日本語における弱い「ユ」のように聞こえる。 (3) / /の場合、弱い「ユ」のように発音する。
/ /の場合、弱い「ャ」のように発音する。
ただし、/ // // // /の後に、/ /が続く場合、融合同化が生じ、
/ / → / /、 / / → / /、 / / → / /、 / / → / /
となる傾向がある。米音で特にこの傾向が強い。
- 20 -
2 英語の母音
5 / / (p. 71)
(1) 長母音/ /の弱化した母音。/ /の場合より調音器官が弛緩している。音は
/ /より短い。
(2) 日本語における弱い「アー」のように聞こえる。しかし、音が曖昧で、決して
日本語の「アー」ではない。
日本語における「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の中間のような音。したがって、
あいまい音と呼ばれることがある。 (3) 1. 日本語の「ウ」を発音するときの口の形を作る。
2. その口をほんの少しだけ大きくする。
3. 舌をそらせる。あるいは、舌をもり上げる。
4. 「アー」という。
5. / /の場合より調音器官が弛緩させる。
g 半弱母音 (p. 73)
(1) 強母音と弱母音との中間音を半弱母音と呼ぶ。これは、強母音でありながら、弱
化するものの、弱母音である/ /に完全に弱化しきれない音のことを言う。
(2) 半弱母音には 8種類がある。各半弱母音を発音記号で示すと次のとおりとなる。
/ / → / /、/ / → / /、/ / → / /、/ / → / /、
/ / → / /、/ / → / /、/ / → / /、/ / → / /
- 21 -
Ⅳ 子音 (p. 77)
1 子音の分類 (p. 77)
(1) 1 声帯が振動するか否か。
2 口腔または咽頭において、声道において最も狭窄が起こるのはどの箇所か。
3 調音はいかなる様式によりなされるのか。
(2) 呼気が声門を通過するとき、声帯が振動するか否かが無声子音と有声子音を区別
する基準です。子音で、声帯が振動しない音を無声子音と呼ぶ。子音で、声帯が
振動する音を有声子音と呼ぶ。
(3) 口腔または咽頭において、声道において最も狭窄が起こる箇所を調音点または調
音域と呼ぶ。 (4) 調音点において、呼気をどのように遮るのかを、調音の様式と呼ぶ。例えば、
/p//b/のように、調音点において、呼気を完全に閉鎖された後開放する様式によ
り調音される音がある。こうした音を閉鎖音あるいは破裂音と呼ぶ。
調音点による分類 (p. 77)
(1) 唇音(しんおん)とは、下唇が声道において最も狭窄が起こることに関与してい
る音。
(2) 両唇音(りょうしんおん)とは、下唇と上唇が声道において最も狭窄が起こるこ
とに関与している音。例:/p//b/
(3) 唇歯音(しんしおん)とは、下唇と上の前歯で作られる(調音される)音。
例:/f//v/
(4) 歯音(しおん)とは、舌先を上の前歯に当てることにより、声道の狭窄を起こし、
調音される音。例:/ // /
(5) 歯茎音(しけいおん)とは、舌先を上の前歯の口蓋側歯茎に当てることにより調
音される音。例:/t//d/ (6) そり舌音(そりしたおん)とは、舌先を軟口蓋と硬口蓋に近づけることにより調
音される音。英語にはそり舌音はない。 (7) 硬口蓋音(こうこうがいおん)とは、舌先を硬口蓋に近づけることにより調音さ
れる音。英語には硬口蓋音はない。
(8) 軟口蓋音(なんこうがいおん)とは、舌先を軟口蓋に近づけることにより調音さ
れる音。英語には軟口蓋音はない。
(9) 口蓋垂音(こうがいすいおん)とは、口蓋垂と後舌面の後部を近づけることによ
り調音される音。英語には口蓋垂音はない。
(10) 咽頭音(いんとうおん)とは、咽頭壁と舌根を近づけることにより調音される音。
英語には咽頭音はない。 (11) 声門音(せいもんおん)とは、声門において調音される音。例:/h/
- 22 -
調音の様式による分類 (p. 78)
閉鎖音 (p. 78)
(1) 両唇閉鎖音(りょうしんへいさおん)とは、下唇と上唇が声道を閉鎖することに
よって調音される音。例:/p//b/
(2) 歯閉鎖音(しへいさおん)とは、舌先と上の歯が声道を閉鎖することによって調
音される音。例:日本語/タ//テ//ト/における子音
(3) 歯茎閉鎖音(しけいへいさおん)とは、舌先と上の歯茎が声道を閉鎖することに
よって調音される音。例:/t//d/
(4) そり舌閉鎖音(そりしたへいさおん)とは、舌先を硬口蓋の前の部分に接触させ
ることにより声道を閉鎖することにより調音される音。英語にはない。
(5) 硬口蓋閉鎖音(こうこうがいへいさおん)とは、前舌面と硬口蓋によって声道を
閉鎖することにより調音される音。英語にはない。
(6) 軟口蓋閉鎖音(なんこうがいへいさおん)とは、後舌面と軟口蓋によって声道を
閉鎖することにより調音される音。英語にはない。 (7) 口蓋垂閉鎖音(こうがいすいへいさおん)とは、後舌面と口蓋垂によって声道を
閉鎖することにより調音される音。英語にはない。 (8) 声門閉鎖音(せいもんへいさおん)とは、声門を一時的に完全に閉鎖し、これを
強く破裂させることにより調音される音。英語にはない。
- 23 -
Ⅳ 子音
1 子音の分類
調音の様式による分類
摩擦音 (p. 78)
(1) 両唇摩擦音(りょうしんまさつおん)とは、下唇と上唇が声道を狭窄することに
よって調音される音。例:日本語の「フ」の音。英語にはない。
(2) 唇歯摩擦音(しんしまさつおん)とは、上の前歯と下唇が声道を狭窄することに
よって調音される音。例:/f//v/
(3) 歯摩擦音(しまさつおん)とは、上の前歯と舌先が声道を狭窄することによって
調音される音。例:/ // /
(4) 歯茎摩擦音(しけいまさつおん)とは、舌端と上の前歯の歯茎が声道を狭窄する
ことによって調音される音。例:/ // /
(5) そり舌摩擦音(そりしたまさつおん)とは、そり舌と上の前歯の歯茎が声道を狭
窄することによって調音される音。ロシア語にはある。英語にはない。
(6) 硬口蓋歯茎摩擦音(こうこうがいしけいまさつおん)とは、舌端が上の前歯の歯
茎後部から硬口蓋の前部にかけて声道を狭窄することによって調音される音。
例:/ // / (7) 歯茎硬口蓋摩擦音(しけいこうこうがいまさつおん)とは、声道の狭窄が硬口蓋
歯茎摩擦音より少し奥で生じるときの音。例:日本語の「シ」「ジ」の音。英語
にはない。 (8) 硬口蓋摩擦音(こうこうがいまさつおん)とは、声道の狭窄が硬口蓋歯茎摩擦音
より少し奥で生じるときの音。英語にはない。 (9) 軟口蓋摩擦音(なんこうがいまさつおん)とは、何ですか。軟口蓋と後舌面との
間で声門が狭窄されるときの音。スペイン語にある。英語にはない。
(10) 口蓋垂摩擦音(こうがいすいまさつおん)とは、軟口蓋摩擦音より声門の狭窄が
さらに奥で生じる場合の音。フランス語にある。英語にはない。 (11) 声門を普通の無声音のときより狭くするか、あるいは、普通の無声音のときより
呼気が強い場合、声門で摩擦音が聞こえることがある。このときの音を声門摩擦
音(せいもんまさつおん)と呼ぶ。例:/ /
- 24 -
Ⅳ 子音
1 子音の分類
調音の様式による分類
破擦音 (p. 79)
(1) 破擦音(はさつおん)とは、閉鎖音の特殊な種類である。閉鎖された呼気の開放
が閉鎖音と比較すると緩やかなため、閉鎖音のすぐ後に、調音点をほぼ同じくす
る摩擦音が続く音。例:/ // /。日本語の[ts][dz]
鼻音 (p. 80)
(1) 鼻音(びおん)とは、呼気が鼻腔を通過するという方法で調音される音。
例:/ // // / (2) 両唇鼻音(りょうしんびおん)とは、両唇によって呼気を閉鎖し、その呼気が鼻
腔を通過するという方法で調音される音。例:/ / (3) 唇歯鼻音(しんしびおん)とは、下唇と上の歯によって呼気を閉鎖し、その呼気
が鼻腔を通過するという方法で調音される音。英語にはない。
(4) 歯鼻音(しびおん)は英語にはない。
(5) 歯茎鼻音(しびおん)とは、舌先と上の歯によって呼気を閉鎖し、その呼気が鼻
腔を通過するという方法で調音される音。例:/ /
(6) そり舌鼻音(そりしたびおん)は英語にはない。
(7) 硬口蓋鼻音(こうこうがいびおん)は英語にはない。
(8) 軟口蓋鼻音(なんこうがいびおん)、後舌面と軟口蓋によって呼気を閉鎖し、そ
の呼気が鼻腔を通過するという方法で調音される音。例:/ /
(9) 口蓋垂鼻音(こうがいすいびおん)は英語にはない。
(注) 質問集において、p. 17 質問(5)は次のとおりとする。
歯茎鼻音(しびおん)とは何ですか。例を挙げて説明しなさい。
質問(5)は(6)とする。以下質問番号を 1 つずつずらす。
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Ⅳ 子音
1 子音の分類
調音の様式による分類
側面音 (p. 80)
(1) 歯側面音(しそくめんおん)は英語にはない。
(2) 歯茎側面音(しけいそくめんおん)とは、舌先を歯茎につけて、呼気を舌の側面
から出すようにして調音する音。例:/ /
(3) そり舌側面音(そりしたそくめんおん)は英語にはない。
(4) 硬口蓋側面音(こうこうがいそくめんおん)は英語にはない。
(5) 軟口蓋側面音(なんこうがいそくめんおん)については立ち入らない。
ふるえ音・たたき音 (p. 80)
(1) 歯茎ふるえ音(しけいふるえおん)は英語にはない。
(2) 口蓋垂ふるえ音(こうがいすいふるえおん)は英語にはない。
(3) 歯茎たたき音(しけいたたきおん)は英語にはない。
半母音 (p. 80)
(1) 半母音(はんぼいん)は次の 2つの特徴を持つ音である。
1 呼気が遮られる程度は、普通の子音より小さい。
2 きこえ度が普通の母音より小さい。そのため、子音同様、音節主音とはなら
ない。
(2) 音声器官は固定した位置を取らず、後続する母音の位置に急速に移行する。
例:基本母音[i]の近くから次の母音へ移行する[j]
基本母音[u]の近くから次の母音へ移行する[ ]
基本母音[ ]の近くから次の母音へ移行する[ ]
子音分類表 (p. 81)
(1) 正しくない。左側の音が無声音で、右側の音が有声音である。
(2) 硬音(こうおん)とは、音声器官が緊張して比較的強く発音される子音のことを
いう。無声音は硬音である。
(3) 軟音(なんおん)とは、音声器官が緩んで、比較的弱く発音される子音のことを
いう。有声音は軟音である。
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Ⅳ 子音
2 英語の子音 (p. 82)
a 閉鎖音 (p. 82) (1) 英語の子音には閉鎖音が 6つある。1 /p/、2 /b/、3 /t/、4 /d/、5 /k/、6 /g/
(2) 有声音/b/。
(3) 有声音/d/。
(4) 有声音/g/。
(5) 英語の閉鎖音と日本語の閉鎖音を比較した場合、英語の閉鎖音の方が閉鎖と破裂
も強い。
(6) 英語の無声閉鎖音/p/、/t/、/k/の後に、第 1 アクセントないし第 2 アクセント
を受けた強母音が続く場合、破裂の後に続いて[h]に似た強い息の音が聞こえる。
この音を気音(きおん)と呼ぶ。例:pen /ph n/、talk /th k/、cool /kh l/。 (7) 気音と伴う子音を有気音(ゆうきおん)と言う。例:pen /ph n/。 (8) 気音と伴わない子音を無気音と呼ぶ。例:upper / p /。 (9) 正しくない。/p/、/t/、/k/の場合、次に弱母音が続くとき、気音を伴わないか、
伴ってもごく弱い。park /ph /(有気音)と upper / p /(無気音)を比較せよ。
(10) 正しくない。/p/、/t/、/k/の場合、次に強いアクセントを受けた/ju:/が続くと
き、/j/は無声化する。ただし、この点は考慮しなくても痛痒ない。
(11) 口の前に紙片をかざして強い気音を伴った/p/、/t/、/k/を発音すると紙片は振
動する。一方、気音を伴わない/p/、/t/、/k/を発音しても紙片は振動しない。
(12) 正しくない。/p/、/t/、/k/が語末に来た場合、開放されて発音されないか、開
放されても気音を伴わない。例:cap、feet、look。
(13) 正しくない。有声閉鎖音/b/、/d/、/g/は、前後に有声音がある場合、いつも有
声である。例:labor、Sunday、ago。
(14) 正しい。有声閉鎖音/b/、/d/、/g/は、語頭にある場合、前半の音は無声化され
る。例:bed/b d/。ただし、この点は考慮しなくても痛痒ない。
(15) 正しい。有声閉鎖音/b/、/d/、/g/は、語末にある場合、後半の音は無声化され
る。例:bag/b g/。ただし、この点は考慮しなくても痛痒ない。
- 27 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音 (p. 82)
各閉鎖音の特徴および発音方法 (p. 84)
1 /p/ (p. 84)
(1) 上下の唇で呼気を閉鎖する。調音時に声帯が振動しない。
(2) 英語の/p/の音は日本語における「パ行」の子音と同じ。
(3) 日本語における「パ行」の子音の発音と同じ。ただし、気音の場合には注意する
必要がある。
2 /b/ (p. 84)
(1) 上下の唇で呼気を閉鎖する。調音時に声帯が振動する。/p/の有声音。
(2) 英語の/b/の音は日本語における「バ行」の子音と基本的には同じ。
(3) 日本語における「バ行」の子音の発音と基本的には同じ。ただし、「バ行」の子
音より、閉鎖と破裂も強い場合には注意する必要がある。
3 /t/ (p. 86)
(1) 舌先と上の歯茎とで呼気を閉鎖する。調音時に声帯が振動しない。ただし、
eighth、not that のように、歯音の/ // /の前では、閉鎖が舌先と上の歯の間
で作られ、無声歯閉鎖音となる。
(2) 有声の/t/は、/d/より、長さが短く、舌先と歯茎の接触もしっかりしていない。
舌先が歯茎に軽く 1 回だけたたく動作を行って調音されると、たたき音(tap)
の[ ]となる。
(3) 米語の特徴である有声の/t/は強母音と弱母音との間に現れる。
例:better/b /、sitting/s 、potato/p /。
(4) 正しくない。くだけた会話では有声の/t/を使うが、改まった話し方では普通の
[t]を使う人も多い。
(5) 英語の/t/の音は日本語における「タ」「テ」「ト」の子音とかなり似ている。し
かし、その違いはかなり大きい。
(6) 舌先と上の歯茎とで呼気を閉鎖する点に注意する。日本語における「タ」「テ」
「ト」の子音の場合、舌先と上の歯茎とではなく、舌先と上の歯とで呼気を閉鎖
する。 (7) 正しくない。ただし、有声の/t/は、日本語における「ラ行」の音に聞こえるこ
とを認識しておかないと、米国人のと会話において、聴解上著しい障害が生じる
恐れがある。
- 28 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
各閉鎖音の特徴および発音方法
4 /d/ (p. 86)
(1) 舌先と上の歯茎とで呼気を閉鎖する。調音時に声帯が振動する。ただし、width、
around the table のように、歯音の/ // /の前では、閉鎖が舌先と上の歯の間
で作られ、有声歯閉鎖音となる。
(2) 有声の/t/の場合と同様に、強母音と弱母音との間に現れる。例:ladder、pudding、
Adam。
(3) 正しくない。英語の/d/が有声の/t/に似た発音[ ]となる場合、/d/の前の母音の
方が、/t/の前の母音より長めに発音される。
例:(長め)ladder/l /、(短め)latter/l /。
(4) 英語の/d/の音は日本語における「ダ」「デ」「ド」の子音とかなり似ている。し
かし、その違いはかなり大きい。
(5) 母音間の/d/の音はたたき音の[ ]となる。この命題は正しいですか。例を挙げて
説明しなさい。
(6) 正しくない。ただし、有声の/d/は、たたき音の[ ]の音に聞こえることを認識し
ておかないと、米国人のと会話において、聴解上障害が生じる恐れがある。 (7) 英語の/d/の音には、2種類あると考えることが実際上役に立つ。
1 つは、舌先と上の歯茎とで呼気を閉鎖する有声歯茎閉鎖音である。/r/の前
の/d/は、有声歯茎閉鎖音である。例:dress、drive、dry。
もう 1 つは、閉鎖が舌先と上の歯の間で作られる有声歯閉鎖音である。語頭に
おいて見られる。例:desk、day、down。
5 /k/ (p. 89)
(1) 後舌面と軟口蓋とで呼気を閉鎖する。調音時に声帯は振動しない。接続する母音
によって調音点に幅がある点については考慮しなくても痛痒ない。
(2) 英語の/k/の音は日本語における「カ行」の子音と同じ。
(3) 日本語における「カ行」の子音と同じように発音すればよい。
6 /g/ (p. 90)
(1) 後舌面と軟口蓋とで呼気を閉鎖する。調音時に声帯は振動する。
(2) 日本語における「ガ行」の子音と基本的には同じ。ただし、英語の/g/の方が破
裂が日本語における「ガ行」の子音よりやや強い。
(3) 基本的には、日本語における「ガ行」の子音と同じように発音すればよい。
- 29 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
b 摩擦音 (p. 91)
(1) 英語の子音には摩擦音が 9つある。
1 /f/ 2 /v/ 3 / / 4 / / 5 /s/ 6 /z/ 7 / / 8 / / 9 /h/。
(2) 有声音/v/。
(3) 有声音/ /。
(4) 有声音/z/。
(5) 有声音/ /。
(6) 正しい。例:vote、 these、 zoo。
(7) 正しい。例:love、 bathe、 nose、garage。
1 /f/ (p. 92)
(1) 上の前歯の先が下唇の内側に軽く触れ、両者の狭い隙間から呼気が押し出され
る。その間、声帯は振動しない。
(2) 英語の/f/の音は日本語にはない音である。日本語の「フ」の子音に少しだけ似
ている。日本語の「フ」の子音は両唇摩擦音である。一方、英語の/f/は唇歯摩
擦音である。ここに、決定的な相違がある。
(3) 上の前歯の先が、下唇の外側あるいは真ん中あたりではなく、内側に軽く触れる
ように注意する必要がある。
2 /v/ (p. 93)
(1) 上の前歯の先が下唇の内側に軽く触れ、両者の狭い隙間から呼気が押し出され
る。その間、声帯は振動する。/f/に対応する有声音。
(2) 英語の/v/の音は日本語にはない音である。日本語の「バ行」の子音を英語の/v/
の音として代用すると、/b/と/v/の区別がつかなくなってしまう。
(3) /f/の場合と同様、上の前歯の先が、下唇の外側あるいは真ん中あたりではなく、
内側に軽く触れるように注意する必要がある。
- 30 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
b 摩擦音
3 / / (p. 94)
(1) 舌先が上の前歯の口蓋側に軽く触れ、舌先と上の前歯の狭い隙間から呼気が押し
出される。その間、声帯は振動しない。
(2) 英語の/ /の音は日本語にはない音である。日本語の「サ行」の子音を英語の/ /
の音として代用すると、/ /と/s/の区別が困難となってしまう。例:thigh と
sigh。
(3) 舌先を上下の歯の間から前へ出すようにすると効果的である。ただし、上下の歯
で舌先を噛まないように注意する。下の歯は舌先に接触しているだけの状態とす
る。
4 / / (p. 96)
(1) 舌先が上の前歯の口蓋側に軽く触れ、舌先と上の前歯の狭い隙間から呼気が押し
出される。その間、声帯は振動する。/ /に対応する有声音。
(2) 日本語の「ザ行」の子音[ あるいは[z]を英語の/ /の音として代用すると、
/ /と/ /、あるいは/ /と/ /の区別が困難となってしまう。例:clothing と
closing、breeze と breeds。
(3) / /の場合と同様、舌先を上下の歯の間から前へ出すようにすると効果的である。
ただし、上下の歯で舌先を噛まないように注意する。下の歯は舌先に接触してい
るだけの状態とする。
5 / / (p. 97)
(1) 舌端が上の歯茎に軽く触れる。舌の両端は上の両側の歯とぴったりと接触する。
上下の歯の隙間はごく狭い。声帯は振動しない。スー音とよばれることがある。
呼気を多く出さない場合、ほとんど聞こえない。
(2) 日本語における「サ」「ス」「セ」「ソ」の音に似ている。
(3) 舌尖が上の歯茎の方へ持ち上げるように注意する。ただし、日本語における「サ」
「ス」「セ」「ソ」で普通問題ない。
- 31 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
b 摩擦音
6 / / (p. 97)
(1) 英語の/s/の音の場合と同様。ただし、声帯は振動する。
(2) 日本語における「ザ」「ズ」「ゼ」「ゾ」の音に似ている。ただし、日本語の場合、
破擦音の/dz/と摩擦音/z/が併用される。
(3) /z/は摩擦音であるから、呼気を閉鎖しないように注意する。呼気を声道の隙間
から漏らすようにする。
(4) 正しくない。日本語の場合、語頭および「ン」/N/の前では破擦音の[dz]となる。
また、語中(母音間)では、破擦音の[dz] または摩擦音[z]となる。このため、
日本語と第 1 言語とする学習者には破擦音/dz/と摩擦音/z/との区別が難しい。
zoo のような語頭の摩擦音/z/を破擦音/dz/と発音する傾向がある。
7 / / (p. 100)
(1) 硬口蓋歯茎摩擦音。舌全体が盛り上がる。舌端が歯茎後部から硬口蓋へかけて接
近する。前舌面が硬口蓋へ接近する。舌端と歯茎の隙間は/s/より少し広い。前
舌面と硬口蓋の隙間は/s/より少し狭い。摩擦の音は、/s/は高く鋭いが、/ /は
低く鈍い。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「シ」の音に似ている。ただし、「シ」の音色の
方が、高く明るく浅い感じがする。
(3) 唇のまるめと突き出しとを伴う必要はないことに注意する。
(4) 正しくない。she を/si:/と発音することがある。ship を/sip/と発音することが
ある。
- 32 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
8 / / (p. 102)
(1) / /の場合と同様。ただし、/ /は有声音。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「ジ」の音に似ている。ただし、日本語の場合、
破擦音の/d /と摩擦音/ /が併用される。
(3) / /は摩擦音であるから、呼気を閉鎖しないように注意する。呼気を声道の隙間
から漏らすようにする。
(4) 正しくない。日本語の場合、語頭および「ン」/N/の前では破擦音の[d ]となる。
また、語中(母音間)では、破擦音の[d ] または摩擦音[ ]となる。このため、
日本語と第 1 言語とする学習者には破擦音/d /と摩擦音/ /との区別が難しい。
なお、摩擦音/ /は、語頭および語末に現れることはまれで、ほとんどが語中に
現れる。
9 / / (p. 103)
(1) 声門摩擦音。声帯を無声音の状態よりやや狭くして呼気を通して調音する。ある
いは、声帯を無声音の状態にしておいて、呼気を強くして調音する。寒いときに、
手に息を吹きかけるときにでる音である。/ /は語末には現れない。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「ハ」「ヘ」「ホ」の音に似ている。ただし、日
本語「ヒ」の音は、/ /ではなく/ /であるから注意を要する。
(3) / /は後続する母音と口のかまえが全く同じであることに注意する。また、日本
語「フ」の音は、声門摩擦音/ /ではなく、両唇摩擦音/ /であるから注意を要
する。
- 33 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
c 破擦音 (p. 105)
(1) 英語の子音には破擦音が 2つある。/t /と/ /。
(2) / /。
1 /t / (p. 105)
(1) 舌尖と舌端が歯茎後部に接触する。前舌面は硬口蓋へ接近する。閉鎖音と異なり、
閉鎖の開放は緩慢で、いったん/ /の状態へと移行し、それから呼気は完全に開
放される。
(2) 英語の/t /の音は日本語における「チ」の音に極めて近い。
(3) 日本語の[t ]で代用してよい。ただし、唇の丸めや突き出しがある方が、上手
く発音できることがある。例:beach、check。
2 / / (p. 106)
(1) /t /の場合と同様。ただし、/ /は有声音。
(2) 英語の/ /の音は日本語における「ジ」の子音[ に極めて近い。
(3) 日本語の「ジ」の子音[ で代用してよい。
(4) 正しくない。例:ledger/l /と leisure/l /を識別することは容易ではな
い。
(5) 正しい。破擦音/ /は、語頭にある場合、前半の音は無声化されることが多い。
例:judge/ /。
(6) 正しい。破擦音/ /は、は、語末にある場合、後半の音は無声化されることが
多い。例:judge/ /。
- 34 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
d 鼻音 (p. 107) (1) 英語の子音には鼻音が 3つある。1 /m / 2 /n / 3 / /
(2) 閉鎖音/p//b/と同じ調音点を持っている鼻音は/m /。
(3) 閉鎖音/k//g/と同じ調音点を持っている鼻音は/n /。 (4) 閉鎖音/p//b/と同じ調音点を持っている鼻音は/ /。 (5) 口腔に閉鎖が作られた状態で、口蓋垂が下がり、呼気が鼻腔に抜けるときに調音
される。
(6) 正しくない。鼻音はすべて有声音である。
1 /m/ (p. 107)
(1) 両唇鼻音であるから、両唇で閉鎖を作る。軟口蓋後部と口蓋が下がり、呼気が鼻
腔に抜ける。このとき調音される。
(2) 正しい。例:make。
(3) 正しくない。鼻音/m /は、無声子音の後にある場合、前半の音は無声化されるこ
とがある。例:smoke、 topmost。
(4) 鼻音/m /の音は日本語における「マ行」の子音/m/ と同じ。
(5) 日本語における「マ行」の子音/m/ と同じでよい。
2 /n/ (p. 108)
(1) 歯茎鼻音であるから、舌先と歯茎で閉鎖を作る。軟口蓋後部と口蓋が下がり、呼
気が鼻腔に抜ける。このとき調音される。
(2) 鼻音/n /の音は日本語における「ナ行」の子音/n /に極めて近い。
(3) 日本語における「ナ行」の子音/n /と同じでよい。ただし、pin、man のような語
末の/n /の場合、口を閉じてはいけないことに注意する。
3 / / (p. 110)
(1) 軟口蓋鼻音であるから、後舌面と軟口蓋で閉鎖を作る。軟口蓋後部と口蓋が下が
り、呼気が鼻腔に抜ける。このとき調音される。/ /は語頭に現れない。
(2) 鼻音/ /の音は日本語における「ン」の音に似ている。
(3) 「銀座」の「ン」の音、「飛んでる」の「ン」の音に近い。
- 35 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
e 側面音 (p. 112) (1) 英語の子音には側面音が 1つだけある。/l/。
(2) 舌尖が歯茎の中央に接触して閉鎖を作る。舌の両端または片側は開いていて、呼
気はそこから流出する。前舌面以外の舌面は下がっていて前舌母音のような構え
となる。そのため、前舌母音特有の明るい感じの音色を帯びる。
(3) 舌尖が歯茎の中央に接触して閉鎖を作る。舌の両端または片側は開いていて、呼
気はそこから流出する。ここまでは「明るい l」と同じである。後舌面が多少軟
口蓋に向かって盛り上がっていて、後舌母音のような構えとなる。そのため、後
舌母音特有の暗い感じの音色を帯びる。 (4) 「明るい l」は母音の前に現れる。例:lead/l d/。 (5) 「暗い l」は母音の後ろに現れる。例:feel/f l/。
(6) 側面音/l/は日本語には存在しない。
(7) 舌を上の歯茎の中央に付けたまま、「アー」と言えばよい。舌を離すと、母音を
伴った[la]となる。
f 半母音 (p. 115)
(1) 英語の子音には半母音が 3つある。1 /r/ 2 /j/ 3/w/。
(2) 半母音/r/と同様の調音点を持っている母音は/ /、/ /。 (3) 半母音/j/と同様の調音点を持っている母音は/ /、/ /。 (4) 半母音/w/と同様の調音点を持っている母音は/ /、/ /。 (5) 母音は呼気の続く限り持続できる。一方、半母音は、性質は母音であるが、次の
点で母音とは異なる。半母音は、音が持続せず、すぐ次の母音に移行する。
- 36 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
f 半母音
1 /r/ (p. 115)
(1) 米音の半母音/r/は、母音の前(right)、母音間(marry)、母音の後(far)のいず
れの位置にも現れる。また、米音の半母音/r/が母音の後に現れる場合、先行す
る母音と共に、母音+/r/、という形の二重母音を形成する。これを、「rの二重
母音」と呼ぶ。
(2) もり上がり舌の/r/を使う人が多い。
(3) 米音の半母音/r/は、母音/ /と同様の性質をしている。ただし、母音/ /は呼
気の続く限り持続できる。一方、半母音/r/は、持続部分がごく短く、急速に次
の母音に移行する点が異なる。
(4) 半母音/r/は日本語における「ラ行」の音に似ている。ただし、全く異なる音
である。決定的な違いは次のとおりである。
「ラ行」の音の場合、舌尖が硬口蓋前部に触れる。一方、半母音/r/の場合、
その性質が母音であるから、舌尖が硬口蓋前部に触れることは決してない。 (5) 1 唇を強く丸める。
2 舌をもり上げる。
3 「アー」と言う。
2 /j / (p. 119)
(1) 1 母音[i]または[ ]の付近から後続する母音へと急速に移行する。
2 /j/には絶対的な舌の位置はない。
3 後続する母音より舌の位置が前寄りで高く、唇の丸めを伴わない。
(2) 半母音/j/は日本語における「ヤ行」の音に似ている。
(3) 日本語における「ヤ行」の音で代用できる。ただし、yeast /j /、yield /j /
における/j /を発音する場合、前舌を極めて高い位置において、発音を始める
必要がある。
- 37 -
Ⅳ 子音
2 英語の子音
f 半母音
3 /w/ (p. 120)
(1) 1 母音[u]または[ ]の付近から後続する母音へと急速に移行する。
2 /w/には絶対的な舌の位置はない。
3 後続する母音より舌の位置が後ろ寄りで高く、唇がより丸まっている。
(2) wound/w /におけるように、後舌高母音の前では、著しく後舌よりで高い位置
から出発し、唇の丸めが強い。wind/w /や wound/w /のように、非円唇の
低母音の前では、かなり舌の位置が低く唇の丸めが弱い。
(3) 半母音/w/は日本語における「ワ」の子音とは、かなり音声的性質が異なる。大
きな違いは、日本語における「ワ」の子音は唇の丸めが少ない点である。
(4) 半母音/w/の音を正しく発音するためには、唇を強く丸めるように注意すること
が大切である。例:wound/w /、wood/w /。
- 38 -
Ⅴ 音の連続
1 音節 (p. 125)
(1) 普通は母音を中心として、前後に境目があると感じられる音声上の最小単位を音
節(おんせつ)と呼ぶ。例:helicopter の場合、英語話者には 4 つの区切りが
感じられる。
(2) きこえ度とは、ある音がある一定のエネルギーで発音されたときにその音がどれ
くらい遠くまで聞こえるかという度合いを意味する。きこえ度は、1~10 の段階
で表すことができる。例:母音は子音よりもきこえ度が大きい。低母音の方が高
母音よりきこえ度が大きい。閉鎖音のきこえ度が最も小さい。
(3) 母音と子音の連続の中で、きこえ度の底と底との間が 1つの音節を構成すると言
える。そして、1つの音節の中で、最もきこえ度が大きい音を音節主音(おんせ
つしゅおん)という。例:helicopter/ の場合、音節主音は、/
の 4つである。
(4) 音節主音は母音であるのが普通である。しかし、比較的きこえ度の小さい子音に
比較的きこえ度の大きい子音が隣接し、その隣に母音がない場合、きこえ度の大
きい子音が音節主音となることがある。この場合、その子音を音節主音的子音と
は呼ぶ。例:prism/ における/ 、button/ における/ 。
(注)すべての音節は第1アクセント、第2アクセント、弱アクセントのいずれかのア
クセントを受ける。
2 子音の結合 (p. 128)
(1) 母音を V、子音を C と表すと、日本語の場合、ほとんどが CV、あるいは VCV
という組み合わせの単語ばかりである。例えば、「さくら」は[sakura]という発
音で、CV CV CV という組み合わせの単語である。「うめ」は[ume]という発音で、
VCV という組み合わせの単語である。
他方、英語の場合、日本語の場合とは異なり、母音の前の子音の場合、C2C1V
あるいは C3C2C1V という子音結合が見られる。speak/ の場合、C2C1V という
子音結合が見られる。また、splash/ の場合、C3C2C1V という子音結合が
見られる。
日本語の場合、母音の前に子音結合が現れない。したがって、母音の前にある
子音結合に多少困難を感じることがある。この点、注意することが重要である。
(2) C1は、母音に最も近い子音のことを意味する。C2は、母音に次に最も近い子音
のことを意味する。C3C2C1の場合、数字が上付き文字となっている。これは、こ
の子音が母音の前にあることを意味している。
C1C2C3C4 のように、数字が下付き文字となっている場合、この子音が母音の後
ろにあることを意味している。
(3) C2C1V とは、母音の前に子音が 2つあることを意味する。例として、speak/
が挙げられる。この場合、母音に最も近い子音は/ 、母音に次に最も近い子音
は/ である。
- 39 -
Ⅴ 音の連続
2 子音の結合
1 /sp//st//sk/ (p. 129)
(1) 正しくない。/p//t//k/の前に/s/があり/sp//st//sk/となった場合、/p//t//k/
には気音が伴わず、/p//t//k/は無気音となる。例:spin/ /
2 /pl//kl/ (p. 129)
(1) 正しくない。無声閉鎖子音/p//k/に/l/が続き、/l/の後に強いアクセントを受け
た母音が続くとき、/l/は無声となる。無声の/l/は、無声閉鎖子音/p//k/の後の
気音[h]に似ている。例:play/ /、clean/ /
3 /pr//kr/ (p. 130)
(1) 正しくない。無声閉鎖子音/p//k/に/r/が続き、/r/の後に強いアクセントを受け
た母音が続くとき、/r/は無声の歯茎摩擦音[ ]となる。[ ]は無声の/l/と同様に、
無声閉鎖子音/p//k/の後の気音[h]に似ている。例:price/ /、cream/ /
4 /tr//dr/ (p. 130)
(1) 正しくない。無声閉鎖子音/t//d/に/r/が続くとき、/r/は、半母音ではなく摩
擦音となる。/tr/の場合、/r/は無声音で[ ]となる。しかし、この点、特に注意
を要しない。
/tr/と/ /、/dr/と/ /の両対は、いずれも歯茎付近で調音される破擦音であ
るため、両対の音色はかなり似ている。
5 /tw//kw/ (p. 132)
(1) 正しい。/tw//kw/における子音結合においては、/t//k/は、後続の/w/の調音準
備のため円唇となる。例:twin/ /、quote/ /
- 40 -
Ⅴ 音の連続
2 子音の結合
6 /hw/ (p. 132)
(1) 正しい。/w/は半母音で、有声音であるが、[ ]は/w/の無声音であると考えてよ
い。例:whale/ /、white/ /
7 子音結合C3C2C1V (p. 132)
(1) 正しい。3子音の結合は/spl//spr//str//skr//skw/に限られ、C3はすべて/s/と
なる。例:splash、spring、strike、scratch、square
8 母音の後の子音結合 (p. 133-136)
(1) C1は、母音に最も近い子音のことを意味する。C2は、母音に次に最も近い子音
のことを意味する。C1C2C3C4 の場合、数字が下付き文字となっている。これは、
この子音が母音の後にあることを意味している。
C1C2C3C4 のように、数字が下付き文字となっている場合、この子音が母音の後
ろにあることを意味している。
例:VC1C2C3C4 tempts/ /
(2) VC1C2とは、母音の後に子音が 2 つあることを意味する。例として、elm/ /が
挙げられる。この場合、母音に最も近い子音は/ 、母音に次に最も近い子音は
/ である。
(3) C1=/l/とは、母音のすぐ後に子音/l/が位置していることを意味する。例として、
elm/ /が挙げられる。
(4) 別段注意する必要はない。しかし、唇子音/p//b//f//v//m/および/k//g/の前で
は、舌先と歯茎とを接触させないで発音することも多い。
(5) C1=/m/とは母音のすぐ後に子音/m/が位置していることを意味する。例として、
nymph/ /が挙げられる。
(6) 別段注意する必要はない。しかし、dreamt のように/mt/の結合では、/m/と/t/
との間に、わたり音として[p]が入ることがある。[ ]
(7) C1=/n/とは母音のすぐ後に子音/n/が位置していることを意味する。例として、
tenth/ /が挙げられる。
(8) 別段注意する必要はない。しかし、/n/と後続の/s/との間では、[t]がしばしば
認められる。例:prince/ /、tense/ /
- 41 -
Ⅴ 音の連続
2 子音の結合
8 母音の後の子音結合 (p. 133-136)
(9) C1=/ /とは母音のすぐ後に子音/ /が位置していることを意味する。例として、
length/ /が挙げられる。
(10) 別段注意する必要はない。しかし、length、strength のように/ /の後に/ /が
続く場合、/ /と/ /の間に[k]が認められることがある。
例:length/ /、strength/ /
(注 1)質問集 p. 30、 6 /hw/(1)(p. 132)の後に、以下の質問を追加する。
7 子音結合C3C2C1V (p. 132)
(1)3 子音の結合は/spl//spr//str//skr//skw/に限られ、C3 はすべて/s/となる。この命
題は正しいですか。例を挙げて説明しなさい。
(注 2)解答集 p. 40、 7 母音の後の子音結合 を 8 母音の後の子音結合と変更する。以
下、同様に、8~12を 9~13と変更する。
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Ⅴ 音の連続
2 子音の結合
9 /ts//dz/ (p. 136)
(1) 閉鎖音/t/のすぐ後に摩擦音/s/を調音する。/ /のような破擦音と考えてよい。
(2) 英語の/ts/の音は日本語における「ツ」の音に似ている。
(3) 日本語における「ツ」を発音するように発音すればよい。
(4) 閉鎖音/d/のすぐ後に摩擦音/z/を調音する。/ /のような破擦音と考えてよい。
(5) 英語の/dz/の音は日本語における「ヅ」の音に似ている。
(6) 日本語における「ヅ」を発音するように発音すればよい。
(7) / // /の 2音は、1つの音素と考えられる。他方、/ts//dz/は 2 つの音素の連
続と考えられる。
10 /t //d / (p. 138)
(1) eighth/ /の音は日本語の「エイツ」の音に似ている。
(2) breadth/ /の音は日本語の「ブレッツ」の音に似ている。 (3) width/ /の音は日本語の「ウィッツ」の音に似ている。
11 /pt//kt//bd//gd/ (p. 138)
(1) apt/ /、sect/ /、robbed/ /、begged/ / において、/p//k//b//g/
を発音するとき、呼気は開放されない。したがって、/p//k//b//g/は呑み込まれ
るような感じで発音される。
(2) 英語では、閉鎖音が 2つ(以上)連続する場合、最後の閉鎖音しか呼気が開放さ
れないからである。
12 VC1C2C3の結合(p. 139)
(1) films/ /、solves/ /
13 VC1C2C3C4の結合(p. 140)
(1) glimpsed/ /、tempts/ /
(2) / /のように、中間の/p/を脱落させるようなつもりで発音するとよい。
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Ⅴ 音の連続
3 音節主音的子音を含む子音結合 (p. 140)
(1) rhythm/ /、prism/ /
(2) / / / / のように、/ /を入れて発音すると、/ /が音節主音となり、/ /
は音節主音ではなくなる。/ /が入らない発音を目標とすることが望ましい。
(3) / / / /から / /へ移るとき、舌尖を歯茎から離さないように注意することが大
切である。呼気を口腔ではなく鼻腔へ抜く、鼻腔開放を行うことが大切である。 (4) / / / / では、完全な鼻腔開放が行われず、/ /の前に/ /が入り込み、/ /
が音節主音で亡くなることが多い。/ /が入らない発音を目標とすることが望ま
しい。 (5) 舌尖を歯茎から離さないで、側面開放し、/ /の前に/ /が入らない発音を目標と
することが望ましい。/ /が入いると、/ / / / / /という発音となってし
まい、不自然な発音となる。 (6) 日本語の「ウ」あるいは「オ」の音に似ている。
(7) / /の前に/ /が入らない発音を目標とすることが望ましい。
4 語中の子音連続 (p. 143)
(1) 英語では、閉鎖音が 2つ(以上)連続する場合、最後の閉鎖音しか呼気が開放さ
れないからである。
(2) / // /から / /へ移るとき、舌尖を歯茎から離さないように注意することが大切
である。呼気を口腔ではなく鼻腔へ抜く、鼻腔開放を行うことが大切である。
(3) / // // /から / /へ移るとき、舌尖を歯茎から離さないようにしながら側面開
放するように注意することが大切である。 (4) 別段注意する必要はない。/ /の後に/ /を入れるように発音する方がよいとテキ
ストには記載されている。しかし、そのような方法を採用する必要はない。
(5) / /の後に/ /が続く場合、/ /をたたき音とし、さらに、そのたたき音を鼻音化
すると米音らしく発音できる。必ずしも、「鼻音化したたたき音」が発音できな
くてもよい。しかし、この音の特徴を理解しておくと聴解のとき役立つ。
5 語間の音連続 (p. 145)
(1) 日本語の「ナ行」の音に似ている。turn out の場合、「ターン アウト」より
もむしろ「ターナウト」のように聞こえる。
ただし、後続語の方がアクセントが強い場合、先行語の語末の/ /は、完全に
後続語の語頭の母音と一体化し、後の音節と繋がってしまうわけではない。
a name の場合/ /からアクセントが強くなるのに対し、an aim の場合、/ /から
アクセントが強くなる。したがって、違う発音のように聞こえる。
- 44 -
Ⅴ 音の連続
5 語間の音連続 (p. 145)
(1) a notion と an ocean の場合も同様である。a notion の場合/ /からアクセン
トが強くなるのに対し、an ocean の場合、/ /からアクセントが強くなる。
なお、後続語が it のように弱アクセントの人称代名詞などの場合、/ /と後
続の母音は完全に一体化する。例:open it における/ /のつながり具合は、
bonnet/ /における/ /と同じである。
(2) 先行の語の語末が/ /以外の子音で、後続の語頭が母音のとき、日本語話者は、
文字間の空きを意識して、take it/ /を「テイク イット」、put out/ /
を「プット アウト」のように発音する傾向が強い。
しかし、英語の場合、先行語の語末の子音を後続語の語頭の母音とつなげて「テ
イキット」、「プッタウト」のように発音する。
ただし、後続語の方がアクセントが強い場合、先行語の語末の子音は、完全に
後続語の語頭の母音と一体化し、後の音節と繋がってしまうわけではない。
take up/ /の場合、/ /からアクセントが強くなるのに対し、stop
arguing/ /の場合、/ /からアクセントが強くなる。
なお、後続語が it のように弱アクセントの人称代名詞などの場合、子音と後
続の母音は完全に一体化する。例:Take it./ /と ticket/ /の場合、/ /
のつながり具合は全く同じである。
(3) 英音では語末の綴り字の r は発音されない。したがって、here、wear、far、
war、moor などは単独では/ // // // // /と発音される。
しかし、こうした語の後に母音で始まる語が続く場合、綴り字の r は発音さ
れることが多い。このような場合に綴り字の r が発音される現象を/r/の復活と
呼ぶ。
Ⅴ
音の連続
6 音の脱落 (p. 147)
(1) やや改まってゆっくりとした会話では発音される母音や子音が、くだけた早い会
話では発音されないことがある。この現象を音の脱落と呼ぶ。
(2) 母音の中で最も脱落しやすいのは弱母音の/ /である。次の例で/( )/で示され
た母音は、くだけた会話において脱落することが多い。
camera/ ( ) /、factory/ ( ) /
(3) /t//d/の場合が特に多い。postcard/ ( ) /、handbag/ ( ) / (4) /t//d/の場合が多い。don’t know/ ( ) /、old man/ ( ) /
- 45 -
Ⅴ 音の連続
7 同化 (p. 149)
(1) 2 つの音が連続する場合、一方の音が他方の音に性質が似る現象を同化と呼ぶ。
例えば、of course/ /のように、有声子音/ /が無声子音/ /の前にある場
合、有声子音/ /が無声子音/ /に変化する現象が起こる。
(2) nymph/ /のように、唇歯摩擦音/ /の前に、両唇鼻音/ /が位置する場合、両
唇鼻音/ /は唇歯鼻音[ ]に変化する。このとき、両唇鼻音/ /の調音位置は、
両唇鼻から唇歯鼻へと変化した。このように、調音位置が変化することを調音位
置の同化と呼ぶ。
(3) of course/ /のように、有声子音/ /が無声子音/ /の前にある場合、有声
子音/ /が無声子音/ /に変化する現象が起こる。つまり、本来有声子音であった
音について、後続の音の性質のため、有声無声の点において変化が生じた。この
ような現象を声の同化と呼ぶ。 (4) 先行の音が後続の音に影響を与える同化を進行同化と呼ぶ。
例えば、please/ /において、有声子音/ /は、先行する無声子音/ /の影響
を受けて、無声子音に変化する。同様に、cry/ /において、有声子音/ /は、
先行する無声子音/ /の影響を受けて、無声子音に変化する。
(5) 後続の音が先行の音に影響を与える同化を逆行同化と呼ぶ。
例えば、of course/ /において、有声子音/ /は、後続する無声子音/ /
の影響を受けて、無声子音/ /に変化する。同様に、has to/ /において、有
声子音/ /は、後続する無声子音/ /の影響を受けて、無声子音/ /に変化する。
(6) 隣接しあう 2つの音が、互いに影響しあって、両者に似た性質を持つ別個の音
が生じる現象を融合同化と呼ぶ。
例えば、Won’t you/ /において、/ /と/ /が互いに影響しあって、両者
に似た性質を持つ/ /が生じる。同様に、Did you? において、/ /と/ /が互い
に影響しあって、両者に似た性質を持つ/ /が生じる。
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Ⅵ アクセント
1 アクセント (p. 153)
(1) ある語(または句、文)において、特定の音節が他の音節よりも目立って聞こえ
るとき、その音節にアクセントがあるという。
(2) 日本語は、主としてピッチ(声の高さ)の高低によって語の意味を区別する。
したがって、日本語のアクセントは高低アクセントであるという。
例:アクセント核のない場合。 シ タチ
ウ (牛) カ (形)
アクセント核のある場合。 ナ ツダ
ハ ヤ(花屋)テ イ(手伝い)
(3) (1)英語の場合、アクセントには 3 種類ある。第 1 アクセント、第 2 アクセン
トおよび弱アクセントである。日本語には、こうしたアクセントの違いはな
く、どの音節もだいたい同じくらいのきこえ度を伴って発音される。
(2)第 1 アクセントを伴う音節は、最も強く、最も高く、最も長く、発音され
る。日本語には、こうした特徴は見られない。
(3)また、第 1 アクセントを伴う音節で、ピッチが急激に下降する。日本語に
は、こうした特徴は見られない。 (4) 英語の単語の発音において、きこえ度が最も大きい音節には、第 1アクセント
がある、という。
例えば、communication という単語の場合、/ の 5 つの音
節から成るが、第 4番目である/ /の音節が最も目立って聞こえる。
従って、第 4番目の音節に第 1アクセントがある。 (5) 英語の単語の発音において、きこえ度が 2番目に大きい音節には、第 2アクセ
ントがある、という。
例えば、communication という単語の場合、/ の 5 つの音
節から成るが、第 2番目である/ /の音節が 2番目に最も目立って聞こえる。
従って、第 2番目の音節に第 2アクセントがある、という。 (6) 英語の単語の発音において、きこえ度が最も小さい音節には、弱アクセントが
ある、という。
例えば、communication という単語の場合、/ の 5 つの音
節から成るが、第 1 番目、第 3番目、第 5番目の音節は、第 4番目の音節および
第 2番目の音節に比較して、きこえ度が小さい
したがって、第 1番目、第 3番目、第 5番目の音節には弱アクセントがある、
という。 (7) 正しくない。強母音は第 1アクセント、第 2アクセントを伴った音節に現れる。
他方、弱母音は常に弱アクセントを伴った音節に現れる。
/ と/ は強母音にも弱母音にもなり得るので、第 1アクセント、第 2アクセ
ント、弱アクセントのすべての音節に現れる。
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Ⅵ アクセント
1 アクセント (p. 153)
(8) 正しくない。弱母音は常に弱アクセントを伴った音節に現れる。したがって、弱
母音/ // // // /は、第 1 アクセント、第 2 アクセントを伴った音節には現れ
ない。弱母音/ // // // /は弱アクセントを伴った音節においてのみ現れる。
(9) 正しい。/ と/ は強母音にも弱母音にもなり得るので、第 1アクセント、第 2
アクセント、弱アクセントのすべての音節に現れる。
(10) 正しくない。音節主音的子音から成る音節は常に弱アクセントを伴う。例えば、
prism/ /において、第 2 音節は音節主音的子音から成る音節であり、弱ア
クセントを伴う。
a 語アクセント (p. 155)
(1) communication/ という単語の場合のように、単語を形成す
る音節にかかわるアクセントを語アクセントと呼ぶ。普通、単にアクセントとい
うときは、語アクセントを指すことが多い。
(2) 1 音節語とは一つの音節から成る語を意味する。
(3) 英語においては、すべての語が本来第 1アクセントを伴って発音される。したが
って、1 音節語が単独で発音されたとき、第 1アクセントを伴って発音される。
これを記号で表すと、アクセント型は●となる。
(4) 2 音節語のアクセント型には次の 4種類がある。(第 2アクセントをоで表す)
(1) ●・ : corner, lily
(2) ●о : context, female
(3) ・● : ago, behind
(4) о● : antique, bamboo
(5) 3 音節語のアクセント型には次の 6種類がある。
(1) ●・・ : animal, character
(2) ●・о : appetite, educate
(3) ・●・ : direction, enormous
(4) о●・ : athletic, postponement
(5) ・●о : tobacco, tomato
(6) о●・ : afternoon, disappoint
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Ⅵ アクセント
1 アクセント (p. 153)
a 語アクセント (p. 155)
(6) 4 音節語のアクセント型には 9種類がある。
(1) ●・・・: beautifully, cowardliness
(2) ●・о・: educated, helicopter
(3) ●・・о: capitalize, citizenship
(4) ・●・・: democracy, impossible
(5) ・●・о: communicate, negotiate
(6) о●・・: activity, unfortunate
(7) о●・о: humidify, identify
(8) о・●・: education, continental
(9) о・・●: aquamarine, photogravure
(7) 綴りは同じでありながら、品詞によりアクセント型が異なる語として次のような
ものがある。
名詞または形容詞 動詞
record/ / record/ /
object/ / object/ /
(8) 綴りは同じでありながら、米音と英音とでアクセント型が異なる語として次の
ようなものがある。
米音では、第 1アクセントの後の第 2アクセントが保たれているのに対し、英
音では、第 1アクセントの後の第 2アクセントが消失していることに注意するこ
とが必要である。
米音 英音
dictionary/ / / /
secretary/ / / /
(9) ある語に接辞を付けて別の品詞の語を作ることを派生という。派生によって出来
た語を派生語という。例えば、名詞 Japan に-ese という形容詞を作る接辞を付
けて作った語 Japanese は名詞 Japan の派生語である。
(10) 例えば、名詞 Japanとその派生語である形容詞 Japanese を例として説明する。
名詞 Japan/ /の場合、語アクセント型は・● である。しかし、形容詞
Japanese/ /の場合、語アクセント型はо・● となる。このように、
元の語と派生語との間で、語アクセントの移動が起こり、語アクセント型が変化
することがある。
また、語アクセントの移動が起こる場合、強母音が弱母音と入れ替わることが
ある。あるいは、弱母音が強母音と入れ替わることがある。
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Ⅵ アクセント
1 アクセント
b 複合語アクセント (p. 160)
(1) 2つの単語が結びついて1つの単語のように機能する場合、これを複合語と呼ぶ。
3つ以上の単語が結びついて 1つの単語のように機能する場合もある。複合語に
は、通常次の 3タイプがある。
1. A+B → AB 例:air+port → airport
2. A+B → A B 例:police+dog → police dog
3. A+B → A-B 例:broad+minded → broad-minded
(2) 複合語にかかわるアクセントを複合語アクセントと呼ぶ。
(3) 複合語のアクセント型には次の 2種類がある。(第 2アクセントをоで表す)
1. ●+о: airport
2. ●+●: downstairs
(4) 第 1 複合語アクセント型とは、第 1 要素に第 1 アクセント、第 2 要素に第 2
アクセントを持つものを指す。
第 1 要素となる単語の語アクセントはそのまま保たれるが、第 1要素となる単
語の第 1 アクセントは、第 2アクセントに格下げとなる。
「~を…するもの」「~を…すること」という意味の複合語は、「第 1要素に第
1アクセント、第 2要素に第 2アクセント」の第 1複合語アクセント型をとる。
例:●+о airport
(5) 名詞として機能する複合語を名詞的複合語と呼ぶ。例:airport
(6) 第 2複合語アクセント型の場合、第 1要素および第 2要素の語アクセントはそ
のまま保たれる。ただし、第 1要素に第 1アクセントにおいて、通常ピッチの変
動がなくなり、●から●へと変化する。
形容詞、副詞、動詞として機能する複合語において多く見られる型である。一
部の名詞的複合語においても見られる。
例:●+● downstairs
c 句アクセント (p. 163)
(1) 2 つ以上の単語がいっしょになって句となった場合のアクセントの型を句アク
セントと呼ぶ。句アクセントには 5種類ある。
(2) 形容詞+名詞の場合、原則として句アクセントは● ●の型をとる。
例:● ● happy family
次のような、句アクセントと複合語アクセントには注意を要する。
句アクセント 複合語アクセント
● ● ● о
black bird (黒い鳥) blackbird (つぐみ鳥の 1種)
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Ⅵ アクセント
1 アクセント
c 句アクセント (p. 163)
(3) 名詞+名詞の場合、原則として句アクセントは● ●の型をとる。前の名詞が後
ろの名詞に対し形容詞として機能するため、形容詞+名詞の場合と同じ型とな
る。例:● ● garden city
次のような、句アクセントと複合語アクセントには注意を要する。
句アクセント 複合語アクセント
● ● ● о
woman doctor (女医) woman doctor (婦人科医) (4) 分詞+名詞の場合、形容詞+名詞の場合と同様に、句アクセントは● ●の型を
とる。
次のような、句アクセントと複合語アクセントには注意を要する。
句アクセント 複合語アクセント
● ● ● о
dancing teacher (踊っている先生) dancing teacher (踊りの先生)
(5) 副詞+形容詞および副詞+副詞の場合、形容詞および副詞を修飾する副詞はやや
弱く、第 2 アクセントを伴って発音されるため、句アクセントはо ●の型とな
ることが多い。例:о ● very beautiful
(6) 動詞と副詞が結びついて 1 つの動詞のように機能する場合、これを句動詞と呼
ぶ。例:give up, put out
(7) 自動詞+副詞の場合、原則として句アクセントは● ●の型をとる。
例:Stand up! He walked away.
(8) 動詞+副詞+名詞(目的語)の場合、原則として句アクセントは●о● の型を
とる。例:We will carry out the plan.
(9) 動詞+名詞(目的語)+副詞の場合、原則として句アクセントは●●оの型をと
る。例:I carried the bag out.
(10) 動詞+代名詞(目的語)+副詞の場合、代名詞は弱アクセントを受け、句アクセ
ントは●・● という型をとる。例:She pushed it away.
(11) 自動詞+副詞、動詞+副詞+名詞(目的語)、動詞+名詞(目的語)+副詞、い
ずれの場合も、動詞が come、get、go、make、put、take などのように 1 音節語
で意味が比較的漠然としたものの場合、動詞のアクセントは弱くなり、第 2アク
セント程度となることがある。
例:I put away the books. He took the book out.
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Ⅵ アクセント
1 アクセント
d 文アクセント (p. 166)
(1) 単語が文中で受けるアクセントを文アクセントという。文アクセントには、第 1
アクセント、第 2 アクセント、弱アクセントの 3段階がある。
(2) station、goといった、意味のはっきりした語を内容語という。内容語は、普通、
文中において第 1 アクセントあるいは第 2アクセントを伴って発音される。
(3) in あるいは to のように、それ自身は意味がはっきりとせず、語と語の関係を表
す意味を持つ語を機能語という。機能語は、普通、文中において弱アクセントを
伴って発音される。
(4) 内容語に属する品詞としては、名詞、動詞、形容詞、副詞等がある。
(5) 機能語に属する品詞としては、冠詞、人称代名詞、前置詞、接続詞等がある。
(6) 正しくない。-n’t のついた否定形は、普通、第 1アクセントを伴って強く発音さ
れる。
例:He doesn’t like baseball. (7) 正しくない。前置詞は、文末にある場合、第 2アクセントを伴って強く発音され
る。
例:Who are you speaking of?
(8) 正しくない。助動詞あるいは be 動詞は、文末にある場合、第 1 アクセントを伴
って強く発音される。
例:Can you play tennis? ---- Yes, I can. (9) 正しくない。強意をあらわす do は、普通、第 1 アクセントを伴って強く発音さ
れる。
例:I do remember it very well.
(10) 次のような例が挙げられる。
(1)比較級および最上級を表す more、most は、普通、第 1アクセントではなく
第 2アクセントを伴って強く発音される。
例:Please speak more slowly.
(2)再帰用法で用いられた再帰代名詞は、普通、第 1 アクセントではなく第 2
アクセントを伴って強く発音される。
例:He washed himself.
ただし、再帰代名詞は、強調の意味を表す用法で用いられた場合、第 1アクセ
ントを伴って強く発音される。
例:He washed the car himself.
(11) 強調や対比の意味を表すため、機能語であっても文中において強いアクセントを
受ける場合には、次のような例が挙げられる。
例:They voted for the bill (not against it).
So far as I know, he is not involved in the plot.
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Ⅵ アクセント
2 強形と弱形 (p. 170)
(1) 文中において普通弱アクセントを伴って発音される機能語の内、1 音節語は、
強いアクセントを伴って発音される場合と、弱アクセントを伴って発音される場
合とでは、母音(あるいは子音)の音色が違うことがある。
その場合、強いアクセントを伴って発音される場合の形を強形(strong form)
と呼ぶ。また、弱アクセントを伴って発音される場合の形を弱形(weak form)と
呼ぶ。
例:冠詞 強形 弱形
a / / / /
強いアクセントを伴って発音される場合、強母音が現れ、弱いアクセントを伴
って発音される場合、弱母音が現れることに注意する必要がある。
(2) 正しくない。人称代名詞、助動詞、接続詞の場合、文頭においては、強いアクセ
ントを伴って発音されない場合でも強形が現れることがある。
例:Can you finish it by yourself?
(3) 弱形が同じ発音となる機能語として次のものが挙げられる。
1. / /、/ / = is, has
例:Jack’s here. (Jack is here.) Jack’s finished writing. (Jack has finished writing.)
3 リズム (p. 174)
(1) 音声の流れの中で、音の強弱や長短が規則的に繰り返される現象をリズム
(rhythm)と呼ぶ。
(2) 日本語の場合、2 音節は 1 音節の 2 倍の長さで発音される。また、3音節は 1 音
節の 3倍の長さで発音される。このような場合、「音節に等時性がある」という。
例えば、「手間」は「手」の 2倍の長さで発音される。「手紙」は「手」の 3倍の
長さで発音される。
(3) 英語の場合、強アクセントがほぼ等しい時間的間隔で繰り返し発音される傾向が
ある。この現象を、「英語の場合、強アクセントに等時性がある」と呼ぶ。例え
ば、one から twelve までの数字を発音する場合、2音節語の seven も、3音節語
の eleven も、他の 1音節語の単語と、同じくらいの長さで発音される。
(4) 文中において、第 1アクセントを持つ音節(およびそれに続く弱音節)の部分を
脚(foot)と呼ぶ。英語の場合、脚が等間隔に現れる現象が見られる。この現象
を、「英語のリズムの特徴は脚(foot)の長さを等しくしようとする点にある」
と呼ぶ。
(5) 第 1アクセント同士があまり接近しすぎる場合、第 1アクセント同士が互いに可
能な限り離れて、脚の長さを等間隔に近づけようとする傾向が生じる。この現象
をアクセントの移動と呼ぶ。例:fifteen members、a Japanese girl
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Ⅶ イントネーション
1 イントネーションの機能 (p. 181)
(1) 言葉を話すときの声の高さ(ピッチ)の変動をイントネーションと呼ぶ。例え
ば、次の文においては、read からピッチが下がり、最後は一番低い音域まで声
の高さが下がるというイントネーション(ピッチの変動)となっている。
Read this.
●
・
語を正しく理解したり、情報を正しく相手に伝えるためには、英語のイント
ネーションについてよく理解することが重要である。
(2) イントネーションが有する 3つの機能とは、心情態度的機能、文法的機能、およ
び談話的機能である。
(3) イントネーションには、賛成・反対、好意・敵意等、話者の心情態度を表す機能
がある。これをイントネーションの心情態度的機能と呼ぶ。
(4) イントネーションには、句や節の切れ目がどこにあるのかを示す、言わば句読点
のような役割を果たす。また、平叙文や疑問文の違いを表す等の機能がある。こ
うした機能を、イントネーションの文法的機能と呼ぶ。
(5) イントネーションには、話題の流れやまとまりを表す機能がある。また、話題の
転換を合図し、情報の新旧を表す機能がある。こうした機能を、イントネーショ
ンの談話的機能と呼ぶ。この場合、談話とは文脈といった意味である。
2 イントネーションの構造 (p. 182)
a 音調群 (p. 182)
(1) 発話がある長さ以上になると、聞き手は、意味上の区切りにおいて、音声上の区
切りを認識する。この音声上の区切りを音調群と呼ぶ。普通は節や文が 1つの音
調群を成す。ただし、話者の意図や話し方によって音声上の区切り方は変わる。
例えば、音調群を細かく区切る傾向がある人もいれば、音調群を大きく区切る傾
向がある人もいる。
(2) なんとも言えない。格式ばった演説において、音調群を細かく区切る傾向がある
人もいれば、音調群を大きく区切る傾向がある人もいる。テキストにおいて示さ
れた、ケネディ大統領の演説においては、音調群は細かく区切られている。しか
し、最近では、テレビ向けの演説においては、普通の話し言葉で話されるため、
ケネディ大統領の演説における話し方はあまり見られない。
(3) 正しくない。普通の会話では 1つの音調群は、ケネディ演説と比較すると長い。
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Ⅶ イントネーション
2 イントネーションの構造 (p. 182)
a 音調群 (p. 182)
(4) 音調群の切り方によって文(または発話)の解釈が異なってくることがある。
例えば、非制限的用法の関係詞節は独立した音調群となる。他方、制限的用法の
関係詞節は独立した音調群とならない。
(5) 正しくない。制限用法の関係詞節は独立した音調群とならない。
(6) 正しくない。文修飾副詞は独立した音調群となる。
例:Hopefully, the weather will soon clear up.
他方、普通の副詞の場合、独立した音調群とならない。
例:Helen lied naturally.
(7) 正しくない。人に呼びかけるときの名前は独立した音調群となる。
例:Are you reading, Alice?
他方、人に呼びかけるときではない場合、独立した音調群とならない。
例:Is he William?
(8) 正しくない。選択疑問文「紅茶がいいですか、あるいはコーヒーがいいですか」
の意味の文の場合、「紅茶がいいですか」の部分は独立した音調群となる。
例:/Would you like tea,/ or coffee?/
他方、Yes-No 疑問文「紅茶やコーヒーなど、何か飲み物を召し上がりますか」
の意味の文の場合、tea のところで音調群の区切りとならない。
例:/Would you like tea or coffee?/
b 音調群の内部構成 (p. 184)
(1) 個々の話者の声の高低に関し、その上限と下限との範囲をその人の声域
(register)と呼ぶ。声域には個人差がある。
イントネーションの使用においては、話しては、自分の声域に合った声を使用
する。そのため、同じイントネーションの型を別々の 2人が使用した場合、その
2人のイントネーションは、絶対的な高低さにおいて同一ではないのが普通であ
る。
(2) 個々の音の高低をピッチと呼ぶ。例えば、次の例において、1、2、3の順でピッ
チが低くなっている。
I like this book.
1 ●
2 ●
・ 3 ・
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Ⅶ イントネーション
2 イントネーションの構造 (p. 182)
b 音調群の内部構成 (p. 184)
(3) 音調群は、前頭部、頭部、核、尾部の 4部分からなる。
音調群の始めから、最初の強い音節までの弱音節の部分を前頭部(pre-head)と
呼ぶ。この部分は、弱く、短く発音され、普通は、低いピッチで発音される。
(4) 最初の強い音節から核の直前の音節までを頭部(head)と呼ぶ。前頭部と比較す
ると、急にピッチが高くなることが多い。
(5) 通常、音調群の中で、最後にある内容語の第 1 アクセントを受ける音節を核
(nucleus)と呼ぶ。核においてピッチが大きく下降または上昇する。音調群の
中で最も聞こえ度が高く、話し手の意図する意味を示す重要な部分である。
(6) 核の後に続くすべての音節を尾部(tail)と呼ぶ。尾部においては、核音調のピ
ッチの流れをそのまま引き継いで発音する。そのため、尾部においては、余分の
ピッチの変化はない。
(7) 正しくない。核は音調群において必ず 1つ存在する。
(8) 正しい。テキスト p. 186 参照。
(9) 正しい。
(10) 正しい。しかし、だからといって、異なった意味を伝えるということではない。
(11) 音調群を、発話、脚、音節、分音節という 4用語を使用して説明すると以下の
とおりとなる。
音調群は、発話を 1つ以上の単位に分けたものである。
音調群は、1つ以上の脚(テキスト p. 175-176 6.11.2 参照)から成ってい
る。
脚は、1つ以上の音節から成っている。
音節は、1つ以上の分音節から成っている。分音節とは、音節を構成する個々
の音である。単語 hit/ /の場合、 という 1つの音節から成っているが、
という 1 つの音節は、/ // // /という 3つの分音節から成っている。
c 核音調の種類 (p. 188)
(1) 音調核において、ピッチが変動する方向には、基本的に下降調(fall)と上昇調
(rise)の 2種類あります。下降調イントネーションとは、音調核において、ピ
ッチが大きく下がる現象を指す。記号を用いると、● で表す。核のある音節を
含む語の前に、 を記して表す。
(2) 上昇調イントネーションとは、音調核において、ピッチが大きく上がる現象を指
す。記号を用いると、● で表す。核のある音節を含む語の前に、 を記して表
す。
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Ⅶ イントネーション
2 イントネーションの構造
c 核音調の種類 (p. 188)
(3) 下降上昇調イントネーションとは、音調核において、一旦ピッチが下がり、また
上がる現象を指す。記号を用いると、● で表す。核のある音節を含む語の前に、
を記して表す。
(4) 正しくない。下降調イントネーションにおいて、尾部がない場合、音調核のある
音節内でピッチの高さは下降する。例:下の場合がこれに当たる。
CARE ●
(5) 正しくない。下降調イントネーションにおいて、尾部がある場合、音調核のある
音節内でピッチの高さはあまり変わらない。音調核のある音節内でピッチの高さ
が下がり始め、尾部において声域の下限ぎりぎりの高さまで下がる。例:
CAREful ●
・
(6) 正しくない。上昇調イントネーションにおいて、尾部がない場合、音調核のある
音節内でピッチの高さは上昇する。例:下の場合がこれに当たる。
CARE
●
(7) 正しくない。上昇調イントネーションにおいて、尾部がある場合、音調核のある
音節内でピッチの高さはあまり変わらない。音調核のある音節内でピッチの高さ
が上がり始め、尾部において声域の上限に向かって徐々に上がる。例:
CARE CAREful ・
● ●
(8) 正しくない。下降上昇調イントネーションにおいて、尾部がない場合、音調核の
ある音節内でピッチの高さは一旦下がり、次に上昇する。例:
CARE
●
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Ⅶ イントネーション
2 イントネーションの構造
c 核音調の種類 (p. 188)
(9) 正しくない。下降上昇調イントネーションにおいて、尾部がある場合、音調核の
ある音節内でピッチの高さは下がり始める。そして、尾部において下部から中ぐ
らいの高さに上昇する。このとき、上昇部においては強いアクセントを伴わない
点に注意することが重要である。例:下の場合がこれに当たる。
CAREful (核と尾部)
● ・
(10) 正しい。
英語の上昇調イントネーションにおいて、音調の部分を低くして尾部を徐々に上
げていくよう発音される。しかし、日本語においては、上昇調の場合、最後の部
分が少し上昇するように発音されるだけである。したがって、日本語を第 1言語
とする学習者は、英語の上昇調イントネーションにおいて、音調の部分を低くし
て尾部を徐々に上げていくように注意することが重要である。
3 各音調の用法 (p. 191)
a 下降調の用法 (p. 191)
(1) 下降調イントネーションは、「終了」「完結」「断定」という意味を伝えること
を基調とする。したがって、下降調イントネーションは、話者が伝えた情報は確
かであり、その情報に対し話者は迷いや遠慮がなく自信を持っている、と言う気
持ちを伝える。
(2) 下降調イントネーションは、「終了」「完結」「断定」という意味を伝えることを
基調とする。したがって、下降調イントネーションは、ニュース放送に極めて多
く見られる。また、事実や情報を伝える陳述文、目下のものに対する命令文、自
分が感じたままを述べる感嘆文にも使用される。
(3) 疑問詞で始まる疑問文にも下降調イントネーションが使用される。しかし、疑
問詞で始まる疑問文においては、特定の情報を相手に求めることが目的であり、
迷いや不確実な気持ちはない。
ただし、相手の言ったことが聞こえなかった場合、「今なんと言ったのですか」
という意味の What did you say?という種類の疑問詞で始まる疑問文には上昇調
イントネーションが使用される。不確実な気持ちがあるからである。
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Ⅶ イントネーション
3 各音調の用法
b 上昇調の用法 (p. 192)
(1) 上昇調イントネーションは、「未完結」「継続」「不確か」という意味を伝える
ことを基調とする。「信じられない」といった驚きの気持ちを表すこともある。
したがって、上昇調イントネーションは、「今なんと言ったのですか」と、相
手の言ったことをおうむ返しに問い返すときに使用される。また、自分では判断
しかねるので相手に答えを尋ねる yes-no 疑問文においても使用される。
また、上昇調イントネーションは、断定的な口調ではないため、相手に返答や
反論の余地を残すため、柔らかな印象を与える効果がある。そのため、依頼や勧
誘、挨拶に使用される。
c 下降上昇調の用法 (p. 194)
(1) 下降上昇調イントネーションは、「話し手の不確かな気持ち・疑念」を基調と
すると言えそうである。
例えば、「スキーならできるが、しかしスケートはできない。」と言う対比の意
味を表すことがある。また、「私が部屋に入ると、ジョンは本を読んでいた」と
いった文において、文の途中でありまだ発言が続くという意味を表すことがあ
る。「メリーは良い料理人だが…」という文において使用し、「明言回避」「条件
付陳述」の意味を表すことがある。
4 特殊なイントネーション (p. 196)
a 核が音調群の最後に内容語ではない例 (p. 196)
(1) 例えば、Mary bought the book.という文において、book に音調核がある場合、
この文全体が新情報であるか、あるいは、What did May buy?という疑問に対す
る回答を意味すると解釈できる。
しかし、誰かが本を買ってきたことはすでに分かっていて、Who bought the
book? という疑問に対する答えの場合、音調核は最も重要な情報である Mary
に置かれる。
(2) 「本当に幽霊を見たんだ」という意味の I did see a ghost. という文において
は、did に音調核を置く。
(3) 正しくない。「A は~だが B は~だ」「Aではなく Bだ」等の場合のように、意味
の対比を表したいときは、対比させる双方の語に音調核を置く。
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Ⅶ イントネーション
4 特殊なイントネーション (p. 196)
a 核が音調群の最後に内容語ではない例 (p. 196)
(4) 正しくない。選択疑問文の場合、選択肢すべてに音調核を置く。その内、始めの
選択肢を上昇調で発音し、最後の選択肢だけを下降調で発音する。
例 : Would you like to play TENnis,/ go SWIMming 、 / or do HORSEback riding?
(5) 正しくない。挨拶における How are you? の場合、始めに How are you?と言う
人とそれを受けて同じ質問をする人とでは、音調核の位置は異なる。
(6) 事件文においては、「音調群の最後の内容語に音調核が置かれる」というルール
に対する例外が見られる。事件文においては、しばしば、最後の内容語の前にあ
る名詞(句)に音調核が置かれる。この場合、述語は自動詞であることが多い。
また、聞き手の注意を主題となっている名詞の方に向けたいという意図がある。
(7) 誰かが「ドアを開けてくれ」と言い、それに対して「開いてるよ」と応える場合、
すでに「ドア」という語が話題となっている。つまり「ドア」は旧情報である。
そのため、新情報である open に音調核が置かれる。したがって、The door’s Open. と発音される。
(8) この命題は正しい。例:The KETtle’s boiling. (9) 正しい。ただし、この場合、付加詞とは副詞のことである。
例:I stayed HOME today.
b 付加疑問文の音調 (p. 200)
(1) 正しくない。陳述文の後に付く付加疑問の音調は、相手に質問している場合は上
昇調イントネーションとなる。
例:Paul’s going aWAY,/ ISn’t he? (2) 正しくない。陳述文の後に付く付加疑問の音調は、単に念を押している場合は下
降調イントネーションとなる。
例:Paul’s going aWAY,/ ISn’t he?
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Ⅷ 音素 (p. 203)
(1) leaf の/l/は「明るい/l/」であるのに対し、cool の/l/は「暗い/l/」である。
しかし、一般の英米人は、leaf の/l/と cool の/l/は同じ音であると考えている。
このように、音声学的に精密に観察すると多少異なった音であるのにもかかわら
ず、同じ音であると考えられている音がある。こうした、音声的によく似た関係
にある音同士を、音声的類似関係にあるという。
(2) 「明るい/l/」と「暗い/l/」は決して同じ位置には現れない。つまり、同じ音の
前には現れない。具体的に言うと、「明るい/l/」は母音の前にだけ現れる。一方、
「暗い/l/」は母音の後にだけ現れる。このような関係にある音は、相補分布の
関係にあるという。
(3) いくつかの音に関し、(1)その音同士には音声的類似関係があること、および(2)
その音同士には相補分布の関係がある場合、このいくつかの音は、同一の音素に
属するという。例えば、英語の/p/は、現れる位置によってその性質が多少異な
る。しかし、上記の 2 つの条件を満たす/p/はすべて同一の音素に属すると見な
される。
(4) いくつかの音に関し、(1)その音同士には音声的類似関係がある、(2)その音同
士には相補分布の関係がある、の 2条件が満たされる場合、このいくつかの音を、
同一音素の異音であるという。
(5) 音素は語義を弁別する機能を有している。これを音素の弁別的機能と呼ぶ。例え
ば、/ /(kit)と/ /(cut)では、語義が異なる。
(6) 英語の場合、母音音素は 23 個ある。
(7) 英語の場合、子音音素は 24 個ある。
Ⅸ 綴り字と発音 (p. 209)
(1) 英語のアルファベットの内、a、e、i、o、uの 5文字を英語の母音字と呼ぶ。
(2) 英語のアルファベットの内、a、e、i、o、uの 5文字以外の文字を子音字と呼ぶ。
(3) 母音とは、物理的な音で、口から発し音波となって空中を伝わるがやがて消えて
しまう。一方、母音字は母音を表す文字である。
(4) 子音とは、物理的な音で、口から発し音波となって空中を伝わるがやがて消えて
しまう。一方、子音字は子音を表す文字である。
*これ以降の理論については、フォニックスに係る理論であるので省略します。
以上