下水道における 内分泌撹乱化学物質に関する 調査 …...2000年度...
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2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
下水道における
内分泌撹乱化学物質に関する
調査研究
内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問
題は,国際的にも科学的に未解明な点が多いと認識
されているが,人の健康や生態系への影響を未然に
防止する観点から,関係省庁や研究機関が各種調査
に着手している。,
平成10年5月には,環境庁より「環境ホルモン戦
略計画SPEED’鱒」が山され,内分泌撹乱作用が疑
われる67物質が示された。
本調査は,内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)
の下水処埋場内における挙動および下水道への流入
源について調査し,今後の対策の検討に資すること
を目的として,平成10年度より「下水道における環
境ホルモン対策検討委員会(委員長:松尾友矩教
授)」を設置し,下記の調査を実施した。
1)下水の特性を考慮した分析手法の開発・検討
2)下水処理場における流入下水および処理水の濃
度の実態把握
3)下水処理場内の水処理・汚泥処理工程における
挙動把握
4)今後の対策手法の検討
調査は,国土交通省からの受託研究および東京都,
茨城県,埼玉県,滋賀県,京都府,大阪府,札幌市,
仙台市,川崎市,横浜市,名古屋市,京都市,大阪
市,神戸市,福岡市の15都府県市と財団法人下水道
新技術推進機構との共同研究により実施した。
2.1調査対象物鷲
調査対象物質は,環境庁の「環境ホルモン戦略計
画SPEED’醐」において内分泌撹乱作用が疑われて
いる化学物質のうち,生活排水または工場排水に含
まれると考えられる物質の中から年間生産鼠と環境
中での検出状況を勘案し25物質を抽出し,さらに,
関連物質として,ノこルフェノ…ルの原因物質であ
るノエルフェノールエトキシレートおよびその中間
生成物のノエルフェノキシ酢酸類,人畜由来の女性
ホルモンであるエストロゲン(17β-エストラジオ
ール,エストロの,合成ホルモンであるエチエル
エストラジオールの5物質を追加した。
2.2 分析方法
実態調査における分析は,本調査の作業の中で作
成した「下水道における内分泌撹乱化学物質調査マ
ニュアル(案)(平成12年4月)」に従って行った。
17βエストラジオールの測定は,生物の抗原抗
体反応を利用したELISA法および機器分析である
LC/MS/MS法の2方法で実施し,その他の化学物質
は,GC!MS等の機器分析で実施した。
2.3 調査対象処理場および試料採取箇所
実態調査は,平成10年度より3年間にわたり表-
1に示す全国15都府県市48処理場において実施し
ー55-
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
た。
実態調査で試料の採取位置の例を図一1に示す。
表-1実態調査対象処理場
白子台体 名 処 理 場 名ノと弔度
10 H llH 12不L 幌 市 J享別 処 玉里場/厚 別 コ ンポ ス ト U ○
拓 北 処 王里場 ○
イ山台 市 南 蒲 生 浄 イヒセ ン ター ○ ○
広 子頼川浄 イヒセ ン ター U U秋 保 ラ鼠泉 浄イヒセ ン ター U
上 谷 メU下 水 処 理 場 ○
茨 城 県 霞 ケ子甫浄 イヒセ ン ター ○上寿玉 県 荒 川処 理 セ ン ター CJ C〕 C )
市 野 川」二流 浄 イヒセ ン ター CJ (J Uラ己荒 川処 理 セ ン ター ○ U新 i町岸 川処 理 セ ン タ… ○ U中 川処 葦里セ ン ター U 0占‾利 根 川処 理 セ ン タ… C〕 ○
頚を点 者β 多摩 川上 流 処 理 場 C〕 (J北 多摩 一 号 処 理 場 U U南 多 1攣処 理 場 し) U森 ヶ崎処 甥を場 U U落 合 処理 場 し)
川 嶋・’ト.行 等 々 力水 処 理 セ ン ター (J (U)U入江崎水処理センター/総合スラッジセンタ… (J U麻 生 水処 理 セ ン タ… 0 U力u 湘茸水 処 理 セ ン うトー U
横 浜 丁仔 北部第二下水処理場/北部汚泥センター・(J U初号筑 1こ“水 処理 機 (J U C 〕金沢 下 水 処理 場 U串か奈 川 下水 触 埋塀 U巷北 下 水 処理 J動 C...〕...呵郎 W下水 処理 場 U
ノ亀古魔 市 山崎下′水処理場/山崎汚佗処理セ ンタ、・・・・・・・(J (⊃ C.-)掘 留 .下 水 夕技理域 (...〕名 城 下 水 処 理 場 U
濯沌酎駄 湖蘭 中 部滴呵 l二セ ン タ,・・・・・ル U C.〕 U湖 西 津トイヒセ ン ター C )(J
東.北 部 針化 セ ン タ… (J (J塔偽 浄 化 セ ン タ… し)(M)
二就者に府 洛 軒 掛化 セ ン タ… (、..)し.)各所 浄 化 セ ン ター し)U
強 者β市 ′鞄羽 処 簾.竪堀 C )0
伏 .兇 処 理 場 U U C〕曽 禅 院 処 理場 (、,二)(⊃
大 阪府 渚 処 理 場 し)(、..)
中 央 W下.水 処 理 J蕩 (⊃大 井 処 蓑堅物 (、..)湾 岸 中 潮S処 芽胆場 (J
大 阪市 今福 下 水 処 理 場 C〕
放 出 下 水 処 理 場 し)O祁1芦 VlIi 碑 水 処 理 場 C)し)
欄 間 Y市一 西部 水処 理 セ ン タ・画/資 7原セ ン タ… U (〕
実態調査より明らかとなった事項を以下に示す。
3.1下水処理場の流入下水および処理水の濃度の
実態
流入下水および処理水(終沈流出水あるいは放流
水)の濃度の実態について最大値,最小値,中央値,
75%値,90%値を表-2に整理した。
また,調査対象物質の内8物質について,流入下
水と放流水の累積度数を図-2に示した。
これによると,調査を行った内分泌撹乱作用の疑
いのある25化学物質のうち,1検体でも定量下限値
以上の濃度で確認されたものとしては,流入下水で,
4-トプチルフェノール,4-n-オクチルフェノール,4-
トオクチルフェノール,ノこルフェノール,ビスフ
ェノールA,2,4-ジクロロフェノール,フタル酸ジ
エチル,ブタル酸ジーn-プチル,ブタル酸ジW2-エチ
ルへキシル,ブタル酸プチルペンジル,ベンゾ(a)ピ
レン,アジピン醸ジー2-エチルへキシル,ベンゾフ
ェノン,スチレンの2および3遺体,n-プチルベンゼ
ンの15化学物質であった。
処理水では,4-トオクチルフェノール,ノエルフ
ェノール,ビスフェノ恒ルA,2,4-ジグr=コフェノ
ール,フタル駿ジ元一プチル,フタル酸ジー2Wエチル
へキシル,アジピン酸ジー2-エチルへキシル,ペン
ゾフェノンの8化学物質であった。
なお,関連物質として調査を行ったノエルフェノ
h珊ルエトキシレー鵬ト,ノニルフェノキシ酢酸類,17
Pエストラジオール(EuSA法およびLC/MS/MS
法),エストロン(LC/MS/MS法)は,流入下水お
よび処理水において少なくとも1検体で定量下限値
以上の濃度が確認された。
下水処理場の処理工程の一例
(消化工程,焼却工程は含まない場合有り) ●試料の採取箇所
図-1試料採取箇所
-56-
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
表-2 流入水および放流水における調査対象物質の濃度範囲
物 質 名検 出
下 限 値
定 量 l
卜 限 値 l
流 人 下 水 濃 度 (!J g /ゼ )デ ー タ数
流 入 下 水 濃 度 (〃 g /ど )デ ー タ 数
最 小 値 中 央 値 7 5 % 価 9 0 % 値 最 大 値 最 小 値 中 央 値 7 5 % 値 9 0 % 値 最 大 値
内 分 泌 1覚 乱 作 用 の 疑 い の あ る イヒ 学 物 質
4 -t-プ チ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n .d . rl.d . n .d . 0 .4 0 .4 8 円.d , n .d . n ,d . n .d . n A 10
4 _n _ペ ン チ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n .d . rl.d . n .d . n .d . n .d . 8 n d . n .d . n .d . n .d . n .d . 10
4 -n -ヘ キ シ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n A rlA n A n .d . n d . 8 n .d . 日.d . n .d . n .d , n d . 10
4 _ヘ プ チ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n .d . rL d . n A n .d . n .d . 8 n .d . n A n .d . n .d . n .d . 10
4 -n -オ ク テ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n .d . rl.d . n d . n .d . 0 .4 3 5 n .d . n .d . n .d . n d . n .d . 4 8
4 -ト オ ク チ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 n .d . tr (0 .2 ) 0 .4 0 .9 7 .4 7 7 n .d . n .d . n .d . tr (0 .1 ) 0 .5 9 3
ノ こ ル フ ェ ノ ー ル 0 .1 0 .3 0 .7 4 .4 7 .5 12 7 5 1 3 2 n .d . tr (0 .2 ) 0 .4 0 .5 1 .0 1 5 5
ビ ス フ ェ ノ ー ル A 0 .0 1 0 .0 二3 tr (0 .0 4 ) 0 .5 3 0 .9 5 1.5 9 .6 1 3 3 n .d . tr (0 .0 2 ) 0 .0 () 0 .2 0 0 .5 2 1 5 4
2 ,4 -ジ ク ロ ロ フ ェ ノ ー ル 0 .0 2 0 .0 6 n .d . 0 .0 7 0 .1 0 0 .1() 0 .90 5 2 n .d . n .d . tr (0 .0 2 tr (0 .0 5 0 .1 4 5 8
フ タ ル 酸 ジ エ チ ル 0 .2 0 .6 0 .9 :3.1 5 .8 7 .3 8 .9 5 2 n .d . n .d . n .d . n .d . tr (0 .3 ) 5 8
ブ タ ル 酸 ジ プ ロ ピ ル 0 .2 0 .6 n .d . ll.d . n .d . n .d . n d . 8 n .d . n .d . n .d . n .d . n .d . 1 0
フ タ ル 酸 ジ んn 一プ チ ル 0 .2 0 .6 n .d . 2 .6 4 .0 5 .8 14 7 7 n .d . n .d . n .d . tr (0 .2 ) 0 .7 男
フ タ ル 酸 ジ ペ ン チ ル 0 .2 0 .6 n d . n .d . n .d . n .d . n .d . 8 n A n .d , n .d . n .d . n .d . 1 0
ブ タ ル 酸 ジ ヘ キ シ ル 0 .2 0 .6 n .d . n .d . 日.d . n .d . n .d . 8 n .d . 日.d . n A n A n .d . 1 0
ブ タ ル 酸 ジ ー2 -エ チ ル へ キ シ ル 0 .2 0 .6 1.4 12 1 9 2 9 6 8 1 3 2 n .d . tr (0 .4 ) 0 .8 1.7 6 .2 15 5
ブ タ ル 酸 ジ シ ク ロ へ キ シ ル 0 .2 0 .6 n .d . n A n A tr (0 .3 ) tr (0 .3 ) S n A n .d . n A n d n .d . 1 0
ブ タ ル 酸 プ チ ル ベ ン ジ ル 0 .2 0 .6 n .d . tr (、0 .2 ) tr (0 .4 ) 0 .7 1 .9 7 7 n .d . n A n .d . n A n .d 、 9 3
ベ ン ゾ (a ) ピ レ ン 0 .0 1 0 .0 3 n .d 、 n .d . tr (0 .0 2 ) 0 .0 () 0 .14 3 2 n .d . n .d . n .d . n .d . tr (0 .0 1 ) 3 7
ア ジ ピ ン 酸 ジ ー2 -エ チ ル へ キ シ ル 0 .0 1 0 .0 3 n .d . (し0 9 0 .2 5 0 .9 3 6 .9 1 0 3 n A n .d . tr 仙 0 2 ) 0 .0 5 0 .2 0 12 3
4 _ニ ト ロ ト ル エ ン 0 .0 1 0 .0 3 n .d . tl.d . n A n .d . 日.d . 8 tl.d . n .d . n .d . n A tr (0 。0 1 ) 1 0
ベ ン ゾ フ ェ ノ ン 0 .0 .1 0 。0 3 0 。0 3 n l† 0 .3 0 0 .鵬 2 .6 10 2 n .d . 0 .0 5 0 .0 8 0 .19 1.0 1 10
ス チ レ ン の 2 お よ び 3 遺 体
り -ジ フ ェ ニ ル プ ロ パ ン (1、3 -D P P ) 0 .0 1 0 .0 3 n .d . ll.(1.. n .d n .〔1. n .d . lh n .d . n .d . n .d . n .d . m d . 18
2 ,4 -ジ フ ェ ニ ル ート プ チ ン (2 ,4 -D P B ) 0 .0 1 0 .0 3 n .d . ll.(1. rl.d . n .d . n .d . lO n A n .d . n .d . n d . n A 10
2 ,4 ふ トリ ブ ェ こ ル ル へ キ セ ン 熔 時 T P 甘) 0 .0 1 0 .0 3 n .d . tr ((.1.0 1 tr 仙 0 1 lr (0 .0 2 ) 0 .10 5 8 n .d . n .d , 11,d , tl,d , n ,d . 6 2
c is1 ,2 ハジ フ ェ ニ ル シ ク ロ ブ タ ン (c iSやn P C .B 0 .0 1 0 .0 3 n .d . Il.d . 11 .d . n .止 n .d . 1小 n A n .d . 11.d , 11,d , n ,d , 摘
trallS・け ジ フ ェニ ル シ ク ロブ タ ン (trans・D P m l 0 .()1 0 .0 3 n .(1. Il.d . n .d . 日.d . 11.d , 1 6 rl.d . n ,d , n ,(l, 日,d , rl.d , 摘
主フ ェニルヰ (ト フェニ ルエチ ルけ トラ ル く1、2 〉 0 .0 1 0 .0 3 m d . Il.d . n A 11止 0 ,0 4 4 2 tl,d , rl,d . rl.d . n A n .d . 4 6
トフ ェニル・4 ・(ト フェニ ルエチ ルけ トラ リンく3、4 〉 0 .0 1 0 .0 3 n .d . Il,d . rl.d . 日.d , 日.d , 4 2 rlA rL d . n 止 n .止 n .止 4 ()
n -プ チ ル ベ ン ゼ ン 0 ,1 0 .3 rl,d , Il,d . n ,d . 0 ,7 2 .9 2 6 n .d , n .d . rL d . rL d . n .d . 2 8
ポ リ 風 化 ビ フ ュ エ ル 類 0 ,0 1 0 ,0 3 rl,d , 11,d , n ,d . rl,d . m 止 8 n .d . n d . n .d n .d n .d 10
オ タ ダ ク U ロ ス チ レ ン 0 .0 1 0 .0 3 n .d . Il.d . n A n d . Il .d , 8 n d , n ,d , n ,d , rl,d , n .d , 10
関 連 物 質 ( ノ ここ ル フ ェ .ノ ー ル の 原 因 物 質 お よ び 入 歯 由 来 ホ ル モ ン )
ノ ニ ル フ ェ ノ … ル エ トキ シ レー ト (n ニ ト 4 0 ,2 (用 丘 1 2 8 4 3 6 2 2 7 0 1 国 n .止 0 .7 2 .1 4 .2 2 3 1 2 2
ノ こ ル フ ェ ノ 柄 ル エ トキ シ レ 恒 ト (n 迦5 0 ,2 0 ,6 灯 れ 2 ) 8 1 1 (iO 2 5 (:) 8 10 1 1 3 n .止 tr (0 .4 ) 1 .2 4 .6 2 4 1 2 2
ノ エ ル フ エ ノ キ シ 酢 酸 (N P l E C ) 0 .5 1 .5 n .d . (:).8 1 .5 3 .O 3 .4 2 :ち n 丑 tr 仙 7 ) tr (1 .1 ) 2 .り 1 1 2 5
ノエ ル フ ェノ 困 ル モ ノエ トキ シ 酢酸 (N P2 EC ) 0 .5 1,5 2 ,5 4 4 9 2 国 0 2 5 0 2 3 n ,d . 3 ,1 3 ,8 9 .7 2 9 2 5
ノ ニ ル フ ェ ノ … ル ジ エ トキ シ酢 酸 (N P 3 E C ) 0 .5 1 ,5 5 ,9 t小 2 0 2 9 10 0 2 3 n .d . 3 .1 5 .8 15 4 8 2 5
1 7 ′・・クーエ ス ト ラ ジ オ ーー ル < E L IS A :> 0 .0 (拇 2 0 .0 0 0 6 0 .0 0 9 1 (.1.0 4 2 ().0 5 2 0 ,0 ()4 0 .0 舛 12 5 軋 d , (川 1 0 0 .(.)2 1 0 .0 2 8 0 .0 6 6 1 4 ()
1 7 声 J ス ト ラ ジ オ 恒 ル く L m 略 制 約 0 .(拇 0 5 0 .0 0 15 私 (.10 :36 0 .0 0 馴 0 ,0 1 1 0 .0 13 0 .0 18 2 3 n ,d . n .d , tr l:.0.(伽 8 (用 O t7 0 .0 0 3 3 2 4
エ ス ト ロ ン く L C /M S /M S > 0 ,O 0 0 5 0 .0 0 15 0 ,0 1 5 (.1,榊 3 0 ,0 5 6 0 .0 6 (.) 0 .0 7 7 2 3 n .d . 0 .0 0 5 4 0 .(.)1 1 仕 0 2 7 0 ,0 6 3 2 4
エ チ こ ル エ ス トラ ジ オ 冊 ル く L 〔二/M S /M S :〉 0 .0 0 0 5 0 .0 0 15 日.d , †1.(1. n .(1. n .d . n ,d . 2 3 rl.d , 札 d . tl.d . 11.d . n .(1. 2 4
0
n
U
O
O
R
U
′
n
4
2
へ辞) 強健璧料
0 1 二弓 4 5
濃度(畑がり
0 5 1U 15 20 25 二10 00 0.2 0.4 0.6 08 10
濃度(.′一釘り 濃度(/射りl
図-2 流入下水および放流水の累積度数
一57一
0
ハ
U
O
O
p
り
′
h
U
4
2
-、cc∴率堅蟹騒
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
濃度(!‘g〃)
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
表-2に示すように,内分泌撹乱作用の疑いのあ
る25化学物質のうち,流入下水で8物質,処理水で
は1物質が中央値において定量下限値以上となって
いる。関連物質として調査を行ったノニルフェノー
ルエトキシレート,ノこルフェノキシ酢酸類,17
βエストラジオール(ELISA法),エストロン
(LC!MS/MS法)は流入下水および処理水の両方で
中央値が定量下限値以上で存在していることが確認
されたが,17ノウ∴エストラジオール(LC/MS/MS法)
では処理水は定量下限値未満となっていた。なお,
17P-エストラジオールについては,LC/MS/MS法
よりもELISA法で高い濃度が確認される傾向にあっ
た。
中央値濃度で見ると流入下水に比べ処理水では,
ほとんどの物質で90%以上減少しており,下水処理
場は概ね大きな低減効果を有していることが確認さ
れた。
3.2 水処理工程における挙動
ド水処理場の水処理の各プロセスにおける挙動を
調査し,流入ド水を100として表-3に示した。
表-3 水処理工程における挙動(申矧直)
謝礼ノ経 対 象 物 質 名 流人下水 裾腑 入水 舶用 腑 処 理 水 デ仰夕数
ノ..ニル フWL ノ、・・・・-ル 1 0 0 8 2 5 0 ト 」 5 5
ビス フェ ノー・・・・・ルA 1.0 0 8 6 4 0 ト 」 5 5
ブ タル酸 ジ芯ユサ ルへ ・キシル 10 0 10 4 4 9 (… ) 舗
ア ジビン酸 ジY ルエチ ルへ キシル 1 0 (:) 9 3 5 4 (… ) 3 6
ハ∵ンソ∵プェ ノン 10 0 9 7 8 9 2 9 4 8
ノエ ルフェ ノ柄ル (11㍊ 1・・、・・・・、4 ) 10 0 別 ....I 5 9 3 4 7
エ トキ シ レ… ト (n 逮5) 1.0 0 8 2 4 2 l 4 7
17 ノ㌢∴L ス トラジオ困 ルく宜L ISA 法> 10 0 10 5 .10 5 3 4 4 7
・流入下水を1脚としたときの各t磯の値・処埋工程について調査を実施した中央値の漉度で貸出したもの・(~)は,当該L堆水の中央値が,定螢下限値未満で虜藩もの-処理水は,終沈流出水または放流水・流入下水の中央値が定温下限値湖上で,日用一h・YH12を適して調査を行った物釦、ニついて示す(H】2に=険体のみ調査は省略)
上表によれば,反応タンクから最終沈殿池の工程
において,大きな低減効果が認められた。
また,反応タンクの滞留時間と減少率の関係を一
部の物質について図-3に示す。
100%
80%
掛60%章\
鸞40%
20%
0%
図によると,反応タンクの運転条件と内分泌撹乱
化学物質の低減効果について,反応タンクの水理的
な滞留時間が長い方が高い減少率で安定する傾向が
みられた。また,反応タンク内の活性汚泥の滞留時
間が長くなると同様の傾向を示した。これらのこと
から,窒素・りん除去を行うための高度処理方式と
するなど,反応タンクの運転条件を変更することで
内分泌撹乱化学物質の低減がさらに図られる可能性
が示唆された。
3.3 汚泥処理工程における挙動
汚泥焼却工程における調査結果として,脱水汚泥
と焼却灰の濃度を表-4に示す。焼却灰においては
ほとんどの検体で検出下限値未満となっており,ま
た,焼却排ガスについて,フタル酸ジー2-エチルへ
キシルは定量下限値以上の濃度で確認されたが,ノ
エルフェノール,ビスフェノールAは検出下限値未
満となった。
康一4 汚泥処理工矧こおける濃度
物質名脱水酬 芭h ・l悔wdry) 焼却灰 rm g!k両所 排ガスll。′凍NmlI
範囲 中畑 割合 範囲 枠 知日割合 範囲 割合
ノニルフT、ノいル 両用卜210 6.0 21/23 n.(ト 0.57 日.d. 1/19 全てn.d. 0/2
ビス“7ニノMルA n.(上目 t川2り:l !即 全てn.d. Il.d. O‡lウ 全てn.d. 0/2
細 ㈱ -V・エ柚へ朽 ル 仕れ聞 97 け/柑 全てnA nA 0!摘 0.ト 掴 2!2
ペンゾワニノン n上州.42.:l n.d, 肌 V雄 n.d. n,d. 0佃 -ノニルブェノー・・Aル :nニト4:l nA 欄 14 17/18 全てIl.d, n.d. 0/14 ー
ニ待 い い.濾5.) I用骨刊 鮒 )机8 全てrl.d. 月.d. fy国 -T,トエストラジ事 ルくEL鵬 〉 nd!Ⅷ鵬2 州榔 4/用 全てn、d, n.d. 0/16 …
割合は,走巌下限値以上の検体数/調査検体数…”は調査を実施していない物質
3.4 下水処理場におけるマスバランス
下水処理場に流入した内分泌撹乱化学物質のマス
バランスについては,サンプリング誤差が大きいこ
と,汚泥の分析について真備が確定できていないこ
と等,厳密にマスバランスをみられない状況ではあ
るが,次の仮定条件を設定し,マスバランスの試算
を行った。
100%
80%
掛60%さ\
鸞40%
20%
0%0 5 10 15 20 0 5 10 15 20 0 5 10 15 20
生物反応槽の滞留時間(hr) 生物反応槽の滞留時間(hr) 生物反応槽の滞留時間(hr)
図-3 反応タンクの滞留時間と減少率の関係例
-58-
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
① 負荷量の算出に用いた水量および汚泥量は,
各処理場にヒアリング調査により得られた数値
により負荷量を算出。
② 流入および放流水質は,実測水質を用いた。
③ 初沈においては,沈殿作用のみで内分泌撹乱
化学物質の分解や形態変化等の挙動はないもの
と仮定し,初沈での減少負荷量=初沈流入負
荷一初沈流出負荷として負荷量を算出。
④ 余剰汚泥の負荷量は,実測値に初沈周りから
設定した補正係数を用いて算出した。
⑤ 分析値がn.d.の場合,検出下限値の1/2の値を
使い計算。
上記,仮定条件の下で試算したマスバランスは,
流入下水の負荷量を100とすると,放流水の負荷量
は1~30程度に減少していた。
発生汚泥(初沈汚泥,余剰汚泥)の負荷畳は,フ
タル酸ジー2-エチルへキシルおよびアジピン酸ジー2-
エチルへキシルについては60~70程度であったが,
ノエルフェノ…ル,ビスフェノールA,ベンゾフェ
ノン,ノエルフェノールエトキシレ}ト,17ノダーエ
ストラジオールについては10~40程度となりてい
た。)
放流水の負荷登と汚泥の負荷最の合帥ま,物質に
よりてその数個が異なるが,20㌦80と流入負荷より
も小さくなっており,下水処理場の中で内分泌撹乱
化学物質の分解等が生じていることが考えらる。
汚泥の焼却を行った後は,汚泥の負荷巌はほとん
どゼロとなっていた。ただし,ノエルフェノール,
エストロゲンについては,後述のように下水処理場
内で形態変化していることに留意する必要がある。
また,マスバランスの検討において反応タンクで
の曝気による揮発性については考慮しないで検討を
行っておりこの点は今後の課題であると考えられ
る。
3.5 高度処理による低減効果
物理化学的な高度処理における内分泌撹乱化学物
質の低減効果に関する調査を行った例として,17β-
エストラジオール(ELISA法)の結果のうち,オゾ
ン処理法とRO膜(逆浸透膜)法について図-4に
示す。10処理場で調査を行った結果,オゾン処理法,
活性炭吸着法,RO膜法等において,濃度が大きく
減少しており,ほとんどの検体で検出下限値未満と
なっていることが確認された。しかしながら,一部
の物質では,濃度は低減するもののわずかに処理水
中に残っている場合もあった。
0.04
( 0.03でS.ン
、・、.
b8
ヱ0.02
雌蝶0.01
0.00
0.04
′へ
軸 0.03‘、、
e心
、ヱ0.02
戦機0.01
0.00
4調査事例結果
終沈流出水 砂ろ過水 RO膜ろ過水
図-4 高度処理における調査例
(17β エストラジオール(ELISA法))
3.6 下水処理場における形態変化
下水処理場の中において,ノエルフェノー榔ル関連
物質とエスロゲンは形態変化が生じていることが報
告されている。-平成12年度には,下水処理場の中に
おいて,形態変化のメカニズムが概ねわかっていて
検討可能なノこルフェノール関連物質およびエスト
ロゲンの形態変化についての検討を加えた。
水処理工程におけるノこルフェノ伊ル関連物質の
挙動について,ノニルフェノhル換算濃度で示した
ものが図-5で,総選として大きく低減しているこ
とが示されている。処理工程で物質の存在割合が変
化しており,下水処理場内での挙動の把握のために
は,ノニルフェノール,ノニルフェノールエトキシ
レート,ノこルフェノキシ酢酸類を全体として捉え
る必要があることがわかる。また,ノニルフェノー
ルとしてよりも,ノニルフェノールエトキシレート
およびノニルフェノキシ酢酸類の濃度が高く,処理
場内あるいは公共用水城での形態変化の可能性を考
慮した検討が必要と考えられる。
同様に,エストロンおよび17ノダ-エストラジオー
ルは相互に変化する物質であることから,処理場内
でも変化している可能性がある。そこで,水処理工
程におけるエストロゲンの挙動について,17ノウエ
ストラジオールとエストロンについて,エストロゲ
ン作用の大きさで換算した17/9-エストラジオール
159-
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
理論換算値について図-6に示した。この結果,エ
ストロゲンの強さとしては大きく減少していること
が示唆された。また,処理水に残存するエストロゲ
ンとしては,17声エストラジオールよりもエスト
ロンの割合が大きくなっており,中央値では17β-
エストラジオールは検出下限値以下となっていた。
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こも三郎鱒漱庶ミ…ヽT卜桑日\
流人下水 初沈胤入水 初沈流山水 処理水
図-5 ノニルフェノール関連物鷺の挙動(中央値)
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こ協ヱ倶軸邸絹翠で⊥ふふふ㌻ユ慈
i′危大下水 初沈流入水 初沈流出水 処理水
図-8 エストロゲンの挙動(中央値)
3フ 下水処理場への流入源に関する検討
家庭系排水のみを処理する団地汚水処理場の流入
下水において,ノこルフェノー一一ル,ビスフェノール
A,フタル酸ジー2-エチルへキシル,アジピン酸ジー
2-エチルへキシル,ノニルフェノールエトキシレー
ト,17βエストラジオーールについて調査を行った。
下水処理場の流入下水濃度との比較表を表-5に示
す。
表-7 家庭系排水の濃度範囲
iil・1、ン二(′′‘g/′)
調 査 対 象 物 質 名
家 庭系排 水 水処理 場流 人 卜水
‖当地 汚水処 理場 :2 ヶ所 ) 日 成 10- 12年 度結 果)
範閃 中央値 範園 中 央値
ノ二ルフェノール ().7\ 1.5 l l 0.7 \7 5 4.4
ビスフェノールA 0.3「、0.4 4 0.3 8 0.0 4 、り.6 0.5 3
ブタル醸ジー2エ チルへキシル 日 、12 = 1.4 \柚 12
アジピン酸ジー2-エチルへキシル (川 7 、(H Jq 0.0 8 n d.、6.9 0.09
ノ二ルフェノールエ トキシレー ト nこ1、4:・ 6.8 、9.3 8.1 6.1\2 70 2 8
ノ二ルフェノー1ルエ トキシレ ート n≧5) 】5 、4 】 2 8 T r (0.2 ) 、8 10 8 1
1り -エストラジオールくE L IS A法> 0 .0 4 2 \0.0 6 1 0.0 5 2 0.00 9 】-0.0 94 0.0 4 2
60
この結果,これらの物質は家庭系排水にも含まれ
ていることが確認された。
また,下水処理場の流入区域内の事業所等の排水
割合と流入下水濃度についての検討を行った。検討
例として,図-7にノニルフェノールおよびその原
因物質であるノニルフェノールエトキシレートにつ
いて示すが,これについては,事業所等の排水の割
合が高い場合に,濃度が高くなる傾向がみられた。
ノこルフェノール
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0 0 05 0 5
6 .5
3 .9
獲東彿受
山.「.」。-、一】一
事業所排水割合の区分
ノエルフェノ・」レエトキシレ恒ト(nここ卜4)
つ り7
樫楳成虫
山.一.↓l-、ムへー一
事業所排水割合の区分
ノニルフェノールエトキシレ一一ト(n≧5)
事業所排水割合の区分
図-7 事業所等の排水割合と流入下水の濃度
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
これまでの調査で,下水道では現時点でも,多く
の内分泌撹乱化学物質を効果的に削減していること
が明らかとなった。
反応タンクの滞留時間の長い生物学的窒素・りん
除去を目的とした高度処理方式などの下水処理の場
合には減少率が高く安定していることや,物理化学
的な高度処理によりさらに低減できていることが確
認された。
しかし,わずかに残る内分泌撹乱化学物質やノニ
ルフェノール関連物質およびエストロゲン等の環境
での影響は現時点ではわかっていない。
下水道における内分泌撹乱化学物質の検討課題の
イメージ図を,図-8に示す。
図-8 内分泌親乱化学物質に関する下水道の取組方針と課題(イメージ図)
-hl-・
2000年度 下水道新技術研究所年報〔2/2巻〕
図-8に示すように下水道における今後の検討課
題は,以下の通りである。
・下水道における内分泌撹乱化学物質に関するモニ
タリング
・下水処理場における運転制御,高度処理の導入等
による負荷の低減に関する検討
・下水処理区域にある流入源に関する実態把握
・環境中における挙動の実態把握および内分泌撹乱
化学物質の調査方法の改善,評価方法の検討
・生物影響に関する知見の集積
・他省庁や関係する研究機関,地方公共団体等との
連携(例えば,使用の実態,化学物質(製品又は
原材料)の安全性評価)
以上,下水処理場における内分泌授乳化学物質に
関するこのような大規模な実態調査は,世界的にも
初めての試みであり,わが国の下水道における実態
が概ね把捉できたことは大きな成果である。
今後,上記検討課題を踏まえ,関係省庁および関
係研究機関や諸外国とも連携して,調査研究が積極
的に進められることが必要である。
●この研究を行ったのは
研究第一部長 江藤 隆
研究第一部総括主任研究員 栗林 栄
研究第一部研究員 岡本 達也
研究第一部研究員 後藤 雅子
●この研究に関するお問い合わせは
研究審議役兼研究第一部長 宮原 茂
研究第一部総括主任研究員 栗林 栄
研究第一部主任研究員 二階堂悦生
研究第一部研究員 杉本 束
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