大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度...

31
【地域事業の紹介】 大河津分水路改修事業について 国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所 所長 室永 武司

Upload: others

Post on 16-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

【地域事業の紹介】

大河津分水路改修事業について

国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所

所長 室永 武司

Page 2: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

令和元年10月8日信濃川河川事務所長 室永 武司

大河津分水路改修事業について

Page 3: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

幹線流路延長及び年間総流出量が日本一の大河川

信濃川は、長野県で千曲川と呼ばれ、支川の犀川・魚野川などを合わせ越後平野貫流し日本海へ

大河津分水路

信 濃 川

千曲川

信濃川

2

Page 4: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

「信濃川の地形と地質」より引用

■越後平野は信濃川が運んだ土砂で形成された三角州

■海岸部には砂丘が広がり、その内側は湿地帯となって、潟が多数存在した

■江戸時代からは、諸河川の付け替え、大河津分水や関屋分水の掘削、新川などの放水路の掘削などの土木工事の進展により干拓が進み、現在では水田が広がる越後平野になった

3

新潟

越後平野の成り立ち

Page 5: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

信濃川下流域の標高を50cmピッチで色分けした図面 青色系が標高の低い地域、赤色系が標高が高い地域

標高

15

(T.P m)

10

5

3

2

1

0

-1

-2

信濃川 下流域 標高図 (新潟は、低平地)

新潟

長岡

4

Page 6: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

1734年~1881年の間の破堤箇所

「信濃川改良工事沿革史」より作成 田沢実入の調査による

田沢実入の調査だけでも

合計 98 回

平均すると、3年に2回は破堤していた

5

大河津分水路ができるまでは、3年に2回、“破堤“

Page 7: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

信濃川

阿賀野川

荒川

中ノ口川

西川

山地・丘陵

砂丘

はんらん原

潟・湿地、河川

凡例

加治川

紫雲寺潟(1733)

福島潟

鳥屋野潟

新井郷川放水路(1934)

松ヶ崎放水路(1731)

落堀川(1733)

加治川放水路(1913)

胎内川放水路(1888)

関屋分水路(1972)新川放水路

(1820)

樋曽山隧道(1939)

国上隧道(1991)

新樋曽山隧道(1968)

大河津分水路(1992)

円上寺隧道(1920)

郷本川(1873)

落水川(1920)

鎧潟(1820~1966)

円上潟(1883)

田潟・大潟(1820~1950)

()は放水路通水年、干拓年

6

大河津が出来る前から、氾濫を防ぐため人々が放水路を多数建設

(1922)

Page 8: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

藩政時代の越後平野における洪水氾濫の頻発を受け、享保年間に本間屋数右衛門らによる江戸幕府への分水建設が請願されるなど、幾度となく分水構想が持ち上がる

その後明治2年(1870年)に一旦工事着手されるものの、新潟港への河川水の減少により、新潟港が、堆砂により、航路維持が困難になるとの外国人技師からの報告等により工事中止

明治29年(1896年)洪水【横田切れ】を契機として明治42年7月5日に工事に着手

7

大河津分水路建設 ~明治29年洪水・横田切れ~

Page 9: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

横田切れの浸水範囲 破堤時の状況(旧西蒲原郡横田村) 8

大河津分水路建設 ~明治29年洪水・横田切れ~

Page 10: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

長期間水が引かなかったため伝染病が蔓延し、人々は木の上に蚊帳をつくり、生活(旧中之島町)

横田切れから21日後の状況(新潟市西区)

9

大河津分水路建設 ~明治29年洪水・横田切れ~

Page 11: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

・信濃平野に入る前に、洪水を日本海に逃がす・信濃川の日本海に一番近い地点に大河津分水路を建設

10

大河津分水路建設

長岡

新潟

大河津分水路弥彦山

日本海

Page 12: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

・海岸沿いに丘陵地帯が存在

・掘削土量は約2,880万m3(東京ドーム23個分)、のべ1,000万人の工事者、総工費2,350万円(現在価値にして約280億円)

・数多くの潟の埋め立て等に活用し、土地開発を実施

・開削工事着工後、大正4年(1915年)と大正8年(1919年)の2度に亘り、大規模地すべりが発生。分水路通水後も地すべりが発生し、分水路の一部が埋没した

開削工事の状況 1回目の地すべりの状況(大正4年)11

大河津分水路建設(開削)

Page 13: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

コンクリートによる洗堰の建設遠隔操作としては日本初の近代的堰

洗堰 基礎打設洗堰 堰柱建設

12

大河津分水路建設(洗堰 大正11年完成)

・大河津分水路は、信濃川と分水路に流す水の量を調整するため、2つの堰(洗堰(信濃川)、自在堰(分水路))を建設

Page 14: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

最深河床高縦断図の経年変化

T11 通水当初S2 自在堰陥没時H23

13

完成後、大河津分水路の川底が急激に掘れた

・約60kmの川を約10kmに短くしたため、川の勾配が急になった

・勢いを増した水流に耐えられず、川底が分水路全体で掘れ、自在堰が通水5年後に陥没

Page 15: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

途方に暮れる船頭たち

昭和2年6月撮影

・信濃川の水が全て分水路へ流れ込み、洗堰下流部では農業・生活用水が枯渇し、舟運も不能になった。

・さらに、信濃川下流部では海水が逆流し、水道水が塩辛くなって飲めなくなるという事態になった。

14

大河津自在堰の陥没

陥没する自在堰

Page 16: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

大河津分水路 可動堰

宮本主任(右)と青山所長(左)可動堰 基礎工事

15

大河津分水路の補修工事(青山 士と宮本 武之輔)

大河津分水路 可動堰 (昭和6年 完成)

このほか、床止め等を設置

Page 17: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

大河津分水路(大正11年通水)により下流の洪水被害が激減するとともに排水性が向上

大河津分水路下流域は全国1位の米の収穫量を誇る新潟県の約3割を占める穀倉地帯に発展

16

大河津分水路の恩恵 (とりまたぎ→米どころ、新潟)

腰まで浸かって収穫する農夫

Page 18: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

17

大河津分水路の恩恵 (土地の開発)

・大正11年、大河津分水路の通水により、信濃川に流れる洪水が減少

・かつて川の中だった場所は、宅地や農地等として利用することが可能に

・特に、新潟市では、川幅を縮小し、新たに生まれた土地の開発も進み、本州日本海側唯一の政令指定都市となる(沼垂町と新潟町が近づき、一体の都市へ)

Page 19: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

18

大河津分水路の恩恵 (交通網の発達)

・洪水被害の軽減、低平地の排水性向上に伴い、上越新幹線や北陸自動車道等の交通網の整備が進む。

信越線

新潟

Page 20: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

第二床固の状況 右岸より望む

10月23日16時頃(ピーク付近)

19

平常時

平成29年10月出水時の状況 大河津分水路河口部

Page 21: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

副堰堤の状況 左岸より望む

10月23日16時頃(ピーク付近)

20

平成29年10月出水時の状況 大河津分水路河口部

Page 22: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

10月23日16時頃(ピーク付近)

21

大河津分水路

入り口は広いが、出口は狭い、ロート状

出口を広げれば、もっと、洪水を流せる

Page 23: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

大河津分水路は、河口部において洪水を安全に流下させる断面が不足。戦後最大規模(S56年8月)の洪水が流下した場合、分水路上流の長岡市付近まで計画高水位を超過。水位上昇の影響で氾濫が想定される区域には、新潟市、長岡市、燕市などが位置。大河津分水路の改修(分水路の拡幅)により、戦後最大規模の洪水に対して家屋の浸水被害の防止又は軽減。

※大河津分水路は、信濃川上中流部の洪水を日本海にバイパスして新潟市街地等を洪水氾濫の危険性から守る人工河川

日本海

だいにとこがため

第二床固改築

山地部掘削

のづみばし

野積橋架替低水路掘削

大河津分水路

渡部橋

大河津洗堰

信濃川

大河津可動堰

JR越後線大河津橋

7.4K

信濃川流域

位置図 事業概要

S56年8月洪水 小千谷市元町

洪水 信濃川中流部における家屋浸水被害

S56年8月洪水 床上浸水1,446戸 床下浸水1,502戸

H23年7月洪水 床上浸水 229戸 床下浸水 689戸

近年の災害

H23年7月洪水 魚沼市下島

H23年7月洪水では大河津可動堰の上流で計画高水位を超過

新潟市

長岡市

大河津分水路

計画高水位超過区間

(約23km)

燕市

川幅約310m

計画高水位+13.061DL=0.00

約100m拡幅

○目的:戦後最大規模(S56年8月)の洪水に対して家屋浸水被害を防止

○事業箇所:新潟県長岡市、燕市

○事業内容:放水路の拡幅(山地部掘削、第二床固改築等)

○全体事業費:約1,200億円

○事業期間:H27年度~R14年度

事業内容

22

大河津分水路の改修事業について(概要)

Page 24: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

23

泊地

第二床固

新第二床固

(仮称)新野積橋

副堰堤

大河津分水路 改築(第二床固+左岸掘削+野積橋掛替え)

・黄色の部分を掘削し、川幅を約100m、広げます。・新しい床固めを作ります。・野積み橋を掛け替えます。

山地掘削

Page 25: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

新第二床固

現第二床固

切下げ工

野積橋

架替工

用地取得

掘削工

13年目 14年目 15年目 16年目 17年目 18年目7年目 8年目 9年目 10年目 11年目 12年目

R3 R4 R5 R6 R7 R8

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目

H27 H28 H29 H30 R2

2026 2027 2028 2029 2030 2031

R12 R13 R14R9 R10 R11

2020 2021 2022 2023 2024 2025 20322015 2016 2017 2018 2019H31R元

●平成31(令和元)年度野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。

工事等の実施状況

●平成27年度着手~平成29年度まで用地協議後、用地取得を開始・実施。野積橋架替の詳細設計を実施(道路管理者と平成28年度末施

行協定を締結)。架替工事着手。分水路高水敷上に山地部掘削土運搬のための工事用道路工事

に着手。新第二床固の準備工事として河口部掘削工事着手。

●平成30年度用地取得を実施。野積橋架替工事を推進。工事用道路完成。

山地部掘削の推進。新第二床固等の工事に着手。

平成31(令和元)年度実施内容

これまでの経緯

事業工程

大河津分水路の改修事業工程、実施内容

新第二床固改築(H30~R8予定)

●老朽化による機能の低下が懸念。河口部の拡幅に併せ、新しい第二床固を設置。

●幅は、現在より100m大きくなり、高さは、現在と同じT.P.+5.0mで、副堰堤の下流に位置。

第二床固 完成イメージ

現 況

山地部掘削(約1,000万m3)(H30~)

山地部掘削箇所 全景 山地部掘削箇所 近景

山地部掘削状況 下流より望む 山地部掘削状況 上流より望む

野積橋架替(H29~)、河口部掘削(H29~)R元年5月10日撮影

R元年5月10日撮影

4

野積橋

第二床固

副堰堤 新第二床固

野積橋橋台跡

新第二床固

河口部(泊地部)掘削状況→

新野積橋P2橋脚の整備状況→

※上記工程は、新規事業採択時評価時(H27.3)に想定した工程を元に最新の情報を反映しているものであり、今後変更となることがあります。

24

Page 26: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

本体工 鋼殻曳航

25幅15m×奥行き28m×高さ6m

巨大ケーソンを船で河川を遡上させる

新第二床固(Ⅰ期) 施工イメージ

Page 27: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

本体工 鋼殻引込

26

巨大ケーソンを船で河川を遡上させる

新第二床固(Ⅰ期) 施工イメージ

Page 28: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

本体工 掘削沈下

新第二床固(Ⅰ期) 施工イメージ

27

Page 29: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

平成30年10月30日 燕市平成30年8月8日 三条市

締結式の様子

28

・掘削土砂量は約1,000万m3となり、掘削土砂は 河川堤防の拡幅などの自ら利用や、工業団地造成等、周辺事業への有効活用を実施

・明治時代も、潟の埋め立て等を実施。今回も、地域経済を支える施設に活用

自治体との覚書締結

大河津分水路の改修がもたらす効果(周辺開発)

Page 30: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

荒川、隅田川とスカイツリー

機械化施工

青山 士(あおやま あきら)

1878年9月23日 - 1963年3月21日

静岡県磐田市生まれ

内務省土木局 土木技官(現:国土交通省)

・パナマ運河建設に携わった唯一の日本人・荒川放水路の建設・信濃川大河津分水路の改修工事

29

Page 31: 大河津分水路改修事業についてj 平成31(令和元)年度 野積橋架替工事を推進。本格的に山地部掘削・運搬を推進。新第二床固の工事を推進。工事等の実施状況

大河津分水路記念碑には青山士によって書かれた碑文が刻まれている

30

大河津分水路の補修工事(青山 士の言葉)