術 2 fpd乳房撮影装置における表示平均乳腺線量の...

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学術大会 埼玉放射線・Vol.63 No.2 2015 簿142 (45) 1 .目的 当院で使用している 2 台の GE 社製 FPD 乳房撮影 装置(SenographeEssential, Senographe Essential-f) には、入射皮膚線量(ESE)および平均乳腺線量 (AGD)を表示する機能が搭載されている。装置 の AGD 表示値は Wu の算出式を使用して求めて おり、乳房撮影精度管理マニュアルで採用されて いる Dance の算出式とは異なる。今回、装置表示 値と Dance の算出式で求めた実測値との関係を把 握するため比較検討を行った。 2 .使用機器 ・GE 社製 FPD 乳房撮影装置 Senographe Essential Senographe Essential-f ・PMMA ファントム 20 ~ 60mm ・RaySafe Xi 検出器 ・純度 99% 以上の 1mm アルミ二ウム板(5 枚) ・X 線遮蔽板(受像器を覆う大きさ) 3 .方法 3-1 撮影条件設定 臨床で使用しているモード(STD, AUTO)にて PMMA ファントムの厚さ 20 ~ 60mm を 10mm ご とに 5 回ずつ曝射し平均を求めた。その値をマニュ アルモードで設定し撮影条件とした。 3-2 半価層測定 乳房撮影管理マニュアルに基づき Al 減弱法で 行った。得られた値を半価層の式に代入し AGD を算出するのに必要な圧迫板透過後の半価層を求 めた。 3-3 ESE 測定、AGD 算出 ESE は設定した条件にて各ファントムの厚さ 20 ~ 60mm まで 5 回ずつ曝射し、入射空気カー マの平均を求め実測値とした。AGD は測定した 入射空気カーマ、半価層、係数を AGD の式に代 入し算出した。 4 .結果 ESE の表示値と実測値の比較では両装置とも に同じ傾向を示し、ファントム厚に関係なくわず かに表示値のほうが高い値を示した。 AGD の表示値と実測値の比較では Essential は 50mm で最大 9%、Essential-f は 60mm で最大 8% の相対誤差となった。また、30 ~ 60mm ま では実測値よりも表示値のほうが高い値を示した が、20mm では表示値よりも実測値のほうが高い 値を示した。 30 ~ 60mm で作成した AGD の回帰直線より、 表示値から実測値への変換係数は Essential で 0.88、Essential-f で 0.85 となった。 5 .考察 ESE にて表示値が実測値よりも高くなった理 由としては、Wu と Dance の測定点の違いから 発生するヒール効果の影響と考える。 AGD にて PMMA20mm のみ表示値が実測値 よりも低い傾向を示した理由としては、Wu の測 定対象範囲は 30mm ~ 80mm であり 20mm が対 象範囲外であったためと考える。また、50mm 以 上の厚みで相対誤差が大きくなった理由として は、半価層測定時における線質硬化とアルミニウ ムの個体差の影響があると考えた。 6 .結語 当院の2台のFPD乳房撮影装置において、 ESE と AGD の表示値と実測値の関係を把握する ことができた。 ADG において、小さい乳房厚では過小評価と なることを考慮する必要があるが、30 ~ 60mm の範囲では、装置表示値に変換係数を乗ずること により Dance の算出式での乳腺被ばく線量を簡 便に推定できることが示唆された。 2 FPD 乳房撮影装置における表示平均乳腺線量の検討 AMG 上尾中央総合病院 ○ 栁澤 慧 内田 瑛基 伊藤 悠貴 市浦 京子 藤井 紀明 青木 俊夫 吉井 章

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学 術 大 会埼玉放射線・Vol.63 No.2 2015

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1 .目的 当院で使用している2台のGE社製FPD乳房撮影装置(SenographeEssential, Senographe Essential-f)には、入射皮膚線量(ESE)および平均乳腺線量(AGD)を表示する機能が搭載されている。装置のAGD表示値はWuの算出式を使用して求めており、乳房撮影精度管理マニュアルで採用されているDanceの算出式とは異なる。今回、装置表示値とDanceの算出式で求めた実測値との関係を把握するため比較検討を行った。

2 .使用機器・GE社製 FPD乳房撮影装置 Senographe Essential Senographe Essential-f・PMMAファントム 20 ~ 60mm・RaySafe Xi 検出器・純度 99%以上の 1mmアルミ二ウム板(5枚)・X線遮蔽板(受像器を覆う大きさ)

3 .方法3-1 撮影条件設定 臨床で使用しているモード(STD, AUTO)にてPMMAファントムの厚さ20~ 60mmを 10mmごとに5回ずつ曝射し平均を求めた。その値をマニュアルモードで設定し撮影条件とした。3-2 半価層測定 乳房撮影管理マニュアルに基づきAl 減弱法で行った。得られた値を半価層の式に代入しAGDを算出するのに必要な圧迫板透過後の半価層を求めた。3-3 ESE 測定、AGD算出 ESE は設定した条件にて各ファントムの厚さ20 ~ 60mmまで 5 回ずつ曝射し、入射空気カーマの平均を求め実測値とした。AGDは測定した入射空気カーマ、半価層、係数をAGDの式に代入し算出した。

4 .結果 ESE の表示値と実測値の比較では両装置ともに同じ傾向を示し、ファントム厚に関係なくわずかに表示値のほうが高い値を示した。 AGD の表示値と実測値の比較では Essentialは 50mmで最大 9%、Essential-f は 60mmで最大8% の相対誤差となった。また、30 ~ 60mm までは実測値よりも表示値のほうが高い値を示したが、20mmでは表示値よりも実測値のほうが高い値を示した。 30 ~ 60mmで作成したAGDの回帰直線より、表示値から実測値への変換係数は Essential で0.88、Essential-f で 0.85 となった。

5 .考察 ESE にて表示値が実測値よりも高くなった理由としては、Wuと Dance の測定点の違いから発生するヒール効果の影響と考える。 AGD にて PMMA20mm のみ表示値が実測値よりも低い傾向を示した理由としては、Wuの測定対象範囲は 30mm~ 80mmであり 20mmが対象範囲外であったためと考える。また、50mm以上の厚みで相対誤差が大きくなった理由としては、半価層測定時における線質硬化とアルミニウムの個体差の影響があると考えた。

6 .結語 当院の 2 台の FPD 乳房撮影装置において、ESEと AGDの表示値と実測値の関係を把握することができた。 ADGにおいて、小さい乳房厚では過小評価となることを考慮する必要があるが、30 ~ 60mmの範囲では、装置表示値に変換係数を乗ずることによりDance の算出式での乳腺被ばく線量を簡便に推定できることが示唆された。

24 FPD乳房撮影装置における表示平均乳腺線量の検討

AMG 上尾中央総合病院○ 栁澤 慧 内田 瑛基 伊藤 悠貴 市浦 京子

藤井 紀明 青木 俊夫 吉井 章