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漁業権の概要

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Page 1: 漁業権の概要...1 公有水面において漁業を営むことは、原 則として自由 (自由漁業)。 ただし、水産資源の保護培養、漁業調整 等の必要があるものについては、例外とし

漁業権の概要

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Ⅰ 漁業法の概要

○ 漁業法(昭和24年法律第267号)の目的は、「漁業生産に関する基本的制度を定め、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によつて水面を総合的に利用し、もつて漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化を図ること」。

公有水面において漁業を営むことは、原則として自由 (自由漁業)。

ただし、水産資源の保護培養、漁業調整等の必要があるものについては、例外として、漁業法に基づく、漁業権の免許制や操業の許可制などで規制。

当事者たる漁業者及び漁業従事者自身の関与の下に漁業調整を行うことで、立体的・重複的に利用されている水面を最大限に活用し、漁業生産力を発展させるよう、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構を運用。

漁業生産に関する基本的制度 漁業調整機構

これらにより

漁業生産力 の 発展

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Ⅱ漁業権の免許 の 概要

○ 「漁業権」とは、一定の期間、一定の水面において、排他的に、特定の漁業を営む権利。通常、岸から3~5kmの沿岸で営まれる漁業が対象。

①共同漁業権(採貝採藻など)、②区画漁業権(魚類養殖などの養殖)及び③定置漁業権(大型定置など)の3種類に大別。

○ 漁業権の主な特徴は、 (1)知事により免許 【自治事務】 (2)みなし物権 【物権的請求権(妨害排除、妨害予防)が可能】 ※ 漁「場」ではなく、漁「業」の排他的独占権。免許を受けた漁業を営むことを妨げるもの(漁業権侵害)でな

い限り、同じ漁場内で、他の活動を行うことは可能。

(3)属人的な権利 【譲渡が制限されており、貸付けも禁止】

■定置漁業権(存続期間:5年) ・大型定置(身網の設置水深が原則27m以上の定置)等を営む権利。 ※ 小型定置は、共同漁業権に位置付け。

■区画漁業権(存続期間:5年又は10年) ・魚類養殖など、一定の区域において養殖業を営む権利。

■共同漁業権(存続期間:10年) ・採貝採藻など、漁場を地元漁民が共同で利用して漁業を営む権利。

<漁業権の概要>

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(参考)水面の総合的利用(漁業権の重複)のイメージ

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Ⅲ漁業権の免許 の 免許手続

○ まず、知事は、漁業生産力の維持発展を図るため、立体的・重複的に利用されている水面を最大限に活用できるよう、「漁場計画」(漁場の区割り、漁業種類、漁業時期等、免許予定日、申請期間等)の案を定め、海区漁業調整委員会の意見をきいて、漁場計画を決定・公示。

○ 次に、漁業権の免許を受けようとする者は知事に対し漁場計画に基づき申請し、知事は当該申請者の適格性・優先順位を審査し、海区漁業調整委員会の意見をきいて、免許・公示。

漁民要望や漁場条件の調査(都道府県)

漁場計画案の作成(都道府県)

海区委への諮問・答申(都道府県⇔海区委)

漁場計画の公示(都道府県)

免許申請(都道府県←申請者)

海区委への諮問・答申(都道府県⇔海区委)

免許(都道府県→申請者)

<漁業権の免許までの手続> <漁業権の免許における法定優先順位>

定置漁業権 区画漁業権 共同漁業権 特定区画 漁業権

第1順位 地元漁民の 7割以上を 含む法人

既存の 漁業者等

(地元・経験優先)

地元漁協 が管理

(行使は組合員)

地元漁協 が管理

(行使は組合員)

第2順位 地元漁民の

7人以上で構成される法人

その他の者 (新規参入者等)

地元漁民の 7割以上を 含む法人

第3順位 既存の 漁業者等

(法人を含む)

地元漁民の 7人以上で構成される法人

第4順位 その他の者 既存の 漁業者等

(法人を含む)

第5順位 その他の者

■適格性の審査 漁業・労働に関する法令を遵守する精神を著しく欠いている者でないこと等 ■優先順位の審査(→右表を参照)

※ 共同漁業権や特定区画漁業権は、歴史的に地元漁民が共同で漁場を利用し、又は毎年くじ引き等で公平に地元漁民の間で漁場を割当ててきたような 漁業が対象。このため、地元漁民集団たる地元漁協のみに又は優先的に免許。

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53 53 53 21 21 21 21 15 15 13 13 32 32 32 32

53 25 25 25 25 34 34 34 33 33 33 33 31 31 27

40 40 40 40 40 41 41 44 44 45 45 45 45 45 45 27 27 27

40 40 40 40 41 41 41 41 44 44 43 43 43 43 42 42 42

52 52 52 52 52 52 17 17 17 47 47 47 18 18 18 42

33 52 代54 代54 代54 代54 代54 代54 29 29 29 28 28 28 28 28

27 27 27 27 27 33 33 33 19 19 19 55 12 12 12 12

12 27 34 34 34 34 34 31 31 24 24 23 23 32 32 32 25 25

12 12 12 12 12 12 56 56 20 20 54 54 54 22 22 25

19 19 19 19 19 28 28 28 55 29 29 29 39 39 39 36 36 36

57 40 40 40 43 43 42 45 35 35 35 35 39 39 36 32

38 40 40 43 43 43 42 45 45 44 44 44 44 代41 32

代51 2 2 2 8 8 8 8 10 10 代41 代41 代41

代51 2 4 4 4 4 3 6 6 6 代7 代7 代7 代7 代7

50 50 26 26 26 3 6 5 5 7 7

50 26 17 17 代51 代51 代51 5

17 17 52 52 16 16

47 18 18 16

47 47 18

47 18

47

52 52 52

17 代51 代51 代51

4 3 6 5

4 3 6 代7

8 8 8 10 代41 代41

42 42 45 44 44 44

35 3942 42 45 35 35

28 28 55 55 29 29 36

22 2256 56 20 20 54 54

31 24 24 23 32 32 25

1233 33 19 19 55 12 12

28 28 28代54 代54 29 29 29

47 18 18 42

4241 44 43 43 43 42

41 44 44 45 27 27

3125 34 34 34 33 33 31

22 32 3221 21 15 15 13

17 17 17 47

1 1 2 2 2 3 3 4 5 5 5 6 6

7 7 7 8 8 8 9 9 10 10 11 11 11 12 12

32 32 32 32 32 32 13 22 15 16 9 17 12

32 20 20 20 20 21 21 23 23 24 24 24 25

27 27 27 27 19 28 28 29 29 29 25

27 31 31 31 31 3 33 33 33 34 35 35 36

19 19 19 28 28 28 38 37 37 37 36

19 19 29 29 29 32 15 21 21 24 24

35 35 35 35 38 39 20 25 25 23 23

35 35 35 36 36 36 40 41 41 3 42 42 42 42 43

33 33 33 33 33 44 44 44 45 45 45 45 43

31 31 27 27 27 34 34 2 2 47 43

9 27 48 48 48 6 6 6 4 4 7 7 5

30 30 30 30 49 50 8 10 51

31 42 18 18 51 51 8 51

18 18 17 17 47 47 47

12 12 52 4 44

12 11 4411 11 11

38 51 5

47 47

12 52 52 52

8 8 8

17 17 17

10 10

51 51 51 51

49 49 50 50 8 8

7 7 7 7 5

9

2

6 6 4

27 34 34 46 46 2

43

1 27 27

44 44 44 45 45 4321 40 40 40

41 42 42 43 4321 36 40 41 41 41

23 23 2339 20 20 20 25 2523 38 38 38

15 21 21 24 24 2432 32 32 32 15 15

37 36

25

38 38 38 38 37 3711 28 28 28 38

35 35 3633 34 34 34 34 3430 33 33

28 29 29 29 2919 19 28 28 28 2826 19

23 24 24 25 25 2519 21 21 21 23

16 18 12 1213 14 15 15 15 16

11 12 12

7

8 8 8 9 9

5 5 63 3 4 4 4

10 10

16

23

2 3 3

○有明海におけるのり養殖の例

H22 H23

割替え

新規加入

一小間

※ 小間内の各番号は、当該小間を 利用する漁業者を表す。

コ マ

(参考)漁場の地元自治管理(組合管理漁業権)のイメージ

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(参考)漁業への「法人」の参入状況

○ 漁業生産量の過半を占める「沖合・遠洋漁業」については、歴史的に法人の参入が進んでおり、指定漁業では、現在、法人の割合は約7割。

○ また、多くの漁業者を抱える「沿岸漁業」についても、例えば、ブリ・カンパチやクロマグロの養殖業等の漁業権漁業に企業が参入。

漁業権漁業への具体的な参入方法としては、地元漁協と調整した上で、 ① 企業が直接に漁業権を取得 ② 地元漁協の組合員となることで、企業が組合員として漁業権を行使 などの事例あり。 (※全国のクロマグロ養殖業者92業者のうち法人は65業者(71%)(平成25年12月31日時点))

<指定漁業における法人参入の状況> 許可数(H26.1.1時点) 企業の割合

(a) うち法人(b) うち個人 (b)/(a) %沖合底びき網漁業 316 168 148 53以西底びき網漁業 8 8 0 100遠洋底びき網漁業 10 10 0 100大中型まき網漁業 117 113 4 97小型捕鯨業 5 5 0 100遠洋かつお・まぐろ漁業 302 282 20 93近海かつお・まぐろ漁業 342 185 157 54中型さけ・ます流し網漁業 39 31 8 79北太平洋さんま漁業 165 89 76 54日本海べにずわいがに漁業 12 11 1 92いか釣り漁業 112 88 24 79

計 1,428 990 438 69 6

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特定区画漁業権 (いかだや生け簀等を使った養殖を行う権利) 下記の優先順位に基づき知事が免許を付与。

県による「復興推進計画」の作成・内閣総理大臣への申請

一般原則 特区の概要

「復興推進計画」に係る内閣総理大臣の認定 ※関係行政機関の長(農林水産大臣)の同意が必要

<同意要件>復興特別区域基本方針(平成24年1月6日閣議決定)

① 対象区域(浜)における経済活動が停滞し、かつ、 地元漁業者のみでは養殖業の再開のために必要な 施設の整備、人材の確保が困難であること ② 地元漁民の生業の維持、雇用機会の創出等対象 区域の活性化に資する経済的社会的効果が確実に 存在すること ③ 特例に係る漁場の属する水面の総合的利用に支 障を及ぼすおそれがないこと

知事による免許審査 第1順位、第2順位及び第3順位を同列に扱い、その中から、知事が免許。 (第1順位たる地元漁協の存在に関わらず、第2順位、第3順位の法人に免許が可能)

・地元漁協 (地元漁民の集団として漁業権を管理) ※ 漁業者(組合員)は漁協から漁業を営む権利(行使権)を取得。

・地元漁民の7割以上を含む法人

第2 順位

第1 順位

・地元漁民7人以上で構成される法人

第3 順位

・第2順位、第3順位以外の漁業者及び 漁業従事者(法人含む。)

第4 順位

・その他の者

第5 順位

計画認定

第1~3順位を同列に扱う

○ 漁協以外の法人が漁業権の取得・行使は現行制度でも可能であるが、壊滅的な打撃を受けた被災地の復興

という特殊事情を考慮し、被災地(宮城県)からの要望を踏まえ、特別に設けられた制度。

Ⅳ被災地における漁業権の特例 (制度概要)

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機密性○情報 ○○限り

○ 東日本大震災復興特別区域法(平成23年12月26日施行)の漁業法の特例※の適用を受けて、宮城県知事が、石巻市桃浦地区において、平成25年9月に桃浦かき生産者合同会社に直接漁業権を免許。

※ 漁協以外の法人が漁業権の取得・行使は漁業法でも可能だが、壊滅的な打撃を受けた被災地の復興という特殊事情を考

慮し、被災地からの要望を踏まえ、特別に設けた制度。

○ 桃浦かき生産者合同会社は、地元漁業者が、かき養殖生産から加工販売までの一貫し た取組を行い、6次産業化と持続的な地域産業形成によるコミュニティの再構築を目指して、 設立した合同会社。 ○ 平成25年10月に、漁業権を取得後かきを初出荷。県内の量販店等において販売。

<法人概要>

【参考:事業計画】

設立年月日:平成24年8月30日 社員構成:16名(漁業者15名、仙台水産) 目的:カキの養殖・加工・販売等

宮城県全図

牡鹿お し か

半島

桃浦地区

特区漁場

<漁業権の概要>

漁業種類:第1種区画漁業 漁業名称:かき垂下式養殖業 漁業時期:1月1日から12月31日まで 漁場位置:石巻市桃浦地先 存続期間:平成25年9月1日から 平成30年8月31日まで

※出典:宮城県復興推進計画

震災前:約120台(養殖筏の数) 平成25年度:38台 (カキ85トン、198百万円) 平成26年度:51台 (カキ95トン、220百万円)

<現在のカキ生産状況>

平成25年度はノロウイルスの検出等による出荷規制などにより、25トンの生産にとどまったが、平成26年度は85トン程度の生産を見込む

(参考)被災地における漁業権の特例 (宮城の事例)

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(参考)漁業法の概要イメージ図

日本国土

漁業権漁業

知事許可漁業

指定漁業

特定大臣許可漁業

知事

大臣

漁業調整

委員会

委員会指示

許可制

許可制

免許制

漁業調整

委員会

意見

沖合・遠洋漁業

沿岸漁業

※ 許可及び免許の対象となる魚種・漁法以外については、原則として自由 (自由漁業) 9