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THE LUNG perspectives Vol.26 No.4 61( 389)

はじめに

 米国ではオバマ政権下で医療分野のIT化が推進され,医療情報の電子化が急速に進み,電子カルテの普及率は2009年の16%から2013年には80%にまで増加した.同時に患者をモニタリングする医療機器が次々と IoT(モノのインターネット)化され,バイタルサインをはじめとする様々な医療情報が医療者と患者間を行き交うようになり,業務の効率化,在宅サービスの向上,

さらに人員不足の解消など,多くの効果が認められつつある.さらに遠隔診療の一部は integrated careの一環として取り組むことでアウトカムを改善するとの認識がもたれるまでに至った1).一方,我が国は少子高齢化,人口減など社会情勢の変化を迎え医療も相応の変化が求められ,ようやく本格的な遠隔診療の法整備が進められたところである.本稿では,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructivc pulmonary disease;

COPD)を中心とした遠隔診療の現状

と課題を概説する.

我が国の遠隔診療の経緯Ⅰ

 我が国の遠隔診療は1997年に始まり,「離島・僻地の患者」,「特定の慢性疾患患者」「原則初診は対面」という条件の下に認可された.しかし,通信機器は現在ほど発展しておらず,離島など地域限定のため広くは普及せず,ようやく2015年に厚生労働省は「離島・僻地や特定疾患に限らずに,一般

 本邦では2018年4月からオンライン診療料が新たに

設定され,にわかに遠隔診療が話題となった.すでに海

外では,慢性閉塞性肺疾患(COPD)診療においては遠隔

モニタリングによる増悪の管理,遠隔呼吸リハビリテー

ション,遠隔自己管理教育などが実施されている.しか

しCOPDにおいては,そのアウトカムの多くは遠隔診

療が明らかに有効であるとの結論を得ていない.その背

景には,COPD患者に対して遠隔診療で介入する具体

的な内容,適切な生体データの遠隔モニタリングとその

解釈などがアウトカムに大きく影響しているためである.

一方,現代の情報通信技術は驚くほど進化しており,数

年後には次世代通信システムも登場し情報インフラが激

変することが予想される.同じタイミングで実施される

次期診療報酬改定ではさらに遠隔診療の推進に傾くのか

も気掛かりである.本稿では,現在の課題を整理するこ

とで遠隔診療の今後の動向を探る.

COPD,オンライン診療,遠隔モニタリング,遠隔呼吸リハビリテーション,自己管理教育

日本医科大学呼吸ケアクリニック副所長/日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野講師        茂木  孝 Takashi Motegi

株式会社インテグリティ・ヘルスケア事業開発ユニットディレクター 永井真理子 Mariko Nagai

遠隔診療の現状と問題点Current status and problems of telemedicine

Summary

特 集 呼吸器領域の治療における展望と問題点

LUNG2604_特集茂木v8.indd 61 2018/11/06 19:22

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