Download - レビュー記事の書き方
ゲームライター コミュニティ03
小野憲史 ゲームジャーナリスト/NPO法人IGDA日本
スケジュール• 19:00 開場
• 19:10 ゲームレビューの書き方
• 19:55 休憩
• 20:05 ゲーム開発会社 宣伝広報の仕事
• 20:50 終了
• 21:00 懇親会(希望者のみ)
アジェンダ• 自己紹介
• 前回の復習
• ゲームレビューのテンプレート解説
• レビューとは何か?
• 構造批評への誘い
• F2P時代のゲームレビュー
①自己紹介• 小野憲史
• ゲーム批評の第3代目編集長
• 取材記事が多いですが、ゲームレビューもやってます
②前回までの復習
• 原稿執筆はライター、マネタイズは編集者の仕事
• ニュース記事の基本は「ニュースの種」+「文脈」
• ゲーム紹介記事の基本は四段構成
ニュース記事のモデル
雑多な情報
ニュースの種
ニュースの種
補足
意味づけ
文脈取材対象 記事
ゲーム紹介記事のテンプレート
• ゲームの概要
• (ストーリーゲームの場合)主人公と冒険の目的
• ゲーム体験(核となる遊び or シーンループ)
• 補足情報
・このほか囲みでスペック(発売日、価格、メーカー名など)が入る ・評価や想定ユーザー(こんなユーザーにオススメ)などの情報は加えない
4段落構成で各150~200文字
テンプレートの意義• 優れたクリエイターほど理屈っぽい(ジブリで得た経験則)
• クリエイターは最初は感性で作る
• 感性だけで作るのは大変なので、理屈で作って楽をする
• でも、最後はやっぱり感性で作るしかない
川上量生、「コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと」(NHK出版新書、2015)
楽をしよう! だって1本いくらだもの
人のテンプレの真似をしよう! 自分のテンプレを作ろう
古いテンプレを壊して新しいテンプレを作ろう!
③ゲームレビューの テンプレート解説
ゲームレビューのテンプレ
• ゲームの評価(おもしろい or つまらない)
• ゲームの概要紹介(核となる遊び or シーンループ)
• 評価理由(3点くらいがオススメ)
• その1 内容(上品、シンプル、ロマンチシズム)
• その2 テーマ(ボーイミーツガール)の表現
• その3 ステージ設計(ストーリー×レベルデザイン)
• まとめ
例:ボーイ・ミーツ・ガールの切なさ。PS3配信専用ゲーム「rain」がハマるhttp://www.excite.co.jp/News/reviewapp/20131029/E1382975715751.html
④レビュー(批評)とは何か• 事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること(大辞林)
• 批評文=上記の内容を論理的に(=順序立てて、わかりやすく)記述した文章
• 作品紹介を含むが主ではない
工業製品/実用品のレビューとの違い
メーカーの宣伝文句を検証 読者のニーズが比較的明確で、客観的な検証がしやすい
エンタテインメントでは困難 おもしろさの客観的な検証が難しい→主観度合いが高い
ゲームレビューのテンプレ原形• このゲームはおもしろい/つまらない
• なぜなら・・・(評価軸は自由に設定していい)
• 理由1(グラフィックが綺麗/へぼい)
• 理由2(ゲームシステムが独創的/パクリ)
• 理由3(ストーリーがおもしろい/ダメダメ)
評価と理由が書かれていればレビューになる 理由が独創的で、多くの人に支持されれば良いレビュー 支持されなければ悪いレビュー
逆もまた真なり?• 理由1(グラフィックが綺麗/ヘボい)
• 理由2(ゲームシステムが独創的/パクリ)
• 理由3(ストーリーがおもしろい/ダメダメ)
• それゆえに
• このゲームはおもしろい/つまらない
各々の条件を満たしていても、つまらない(またはおもしろい)ゲームはたくさんある=「書き手の視点」がわかりにくい
批評ではない
私にとって
因果関係=書き手
我思う、ゆえに批評する レビューは極めて個人的な表現=作品
よくある誤解と対策• レビューは「偉い人」の専売特許ではない(誰が書いても良い)
• 匿名またはプロフィールが乏しいレビューはダメ(因果関係がわかりにくい)
• レビューに「正解」はない(ゲーム体験はプレイヤーの文脈に大きく依存する)
• 長所と短所を併記して、対象ユーザーを示すのがレビューではない(長所も短所も主観だから)
客観性と主観性• 客観的なレビュー(=万人に共通する評価)は「売上」のみ(今ならアプリストアのランキングなど)
• ただし売上には作品性(コンテンツ自体がもつ価値)以外の要素(宣伝・ブランドなど)が入る
• レビューとは「売上とは異なる価値規準を明示的・暗示的に」作り上げようとする行為
余談:ヒット作の批評
• 誰がやっても同じような内容になりやすい
• ヒット作こそ書き手の力量(=独創的な理由と説得力)が求められる
• ゲームの構造の秀逸さ(後述)を分析するのは一つのやり方(おもしろいゲームには理由がある)
④構造批評への誘い書き手が不明なレビューでは、読者にとって 「理由と評価」の因果関係がつかめない
因果関係の担保を書き手に求めない、より工学的なレビューはできないのか?
印象批評 構造批評
批評者個人の思想がベース 独りよがりになりがち 特定のフレームを必要としない
特定の物差しがベース 一般性が高い 物差しの共有が必要
• 構造批評をつきつめると「おもしろさ」の定量化が不可欠で、実用的ではない
• ある程度、評価の定まったフレームワークや考え方を引用して、自分なりに応用する
• ゲームデザインやゲーム研究に関する知識、考察が求められる
3つのフレームワーク
ゲーム
プレイヤー
情報の出力
情報の入力
ルド ゲームニクス
ゲーム メカニクス
MDAフレームワーク
• ルド→渡辺 修司、中村 彰憲「なぜ人はゲームにハマるのか 開発現場から得た『ゲーム性』の本質」(SBクリエイティブ、2014)
• ゲームニクス→サイトウ・アキヒロ「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP社、2013)
• MDAフレームワーク→英語版:http://www.cs.northwestern.edu/~hunicke/MDA.pdf 日本語版解説:http://www.slideshare.net/chankenneth/mda-framework-for-gcs2013
参考文献リスト①
• 大野功二「3Dゲームをおもしろくする技術」(SBクリエイティブ、2014)
• Tracy Fullerton「中ヒットに導くゲームデザイン」(ボーンデジタル、2014)
• Josiah Lebowitz、Chris Klug 「おもしろいゲームシナリオの作り方」(オライリージャパン、2014)
参考文献リスト②
作り手の意図• 作品を見るときになにを見ればいいか、それはつくった人がなにをやろうとしたのか、それを見ればいい。そして、それが上手くいったのか、上手くいかなかったのか、それだけだ(鈴木敏夫)「コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと」より
• 注:ただし、これは「監督」という絶対者がいて、トップダウンで作品を作る映像作品ならではの考え方かもしれない。ゲームの場合、現場のボトムアップでゲームが作られることも多い。CEDECや勉強会などでの継続的な情報収集が必要。
⑥F2Pとレビュー• ゲームレビューは家庭用ゲームの「パッケージ流通」というビジネスモデルの産物(アーケードゲーム時代はレビューという発想はなかった/攻略のみ)
• 数千円の投資が「おもしろいゲームは広めたい、つまらないゲームは批判したい」という思いを生む(=映画批評とテレビ批評のメジャー感の違い)
• 今や星の数ほどのゲームが無料で遊べる夢のような時代!→ゲームのテレビ番組化→レビューのあり方も当然変わってくる
一番貴重な資産は時間• ヒント:新聞の番組表のレビュー枠
• つまらないゲームの批判よりも、おもしろいゲームの発掘が求められている
• F2Pでは「安心して課金できるか」が新たな評価軸に浮上~継続レビュー、課金前提レビューなど
付記:媒体にとっての価値• レビューは媒体、書き手の双方にとってコスパが悪い(PVが稼ぎにくい、費用対効果が悪い)
• 媒体にとっては差別化の要因
• 書き手にとっては個性が出しやすい(個性がなければレビューではない)
• 「評価+理由」で多様なレビュー文化を(一つのゲームに対して様々な考え方が集まるのが理想)