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4-2013 47 DOCOSIS3.1の 2 つの技術的特徴 DOCOSIS3.1の技術的な特徴は2つあ る。 第1は、変調方式がOFDMであること だ。これによって周波数当たりの伝送効 率を上げることができる。 「OFDMはサブキャリアを細かく立ててい くので、4096QAMなど高い変調方式が使 える。周波数帯域においてチャンネルという 考え方が取り払われている。今までの DOCSIS通信は放送と同じ6MHzの枠があ り、その中で64QAM、256QAMで変調し てデ ータを 流していた。DOCSIS3.1は OFDMを用いてそのサブキャリアを空いて いる帯域に埋めてデータを流す。細かいサ ブキャリアを並べてボンディングする方式な ので、今までは扱えなかった細かい隙間の 周波数帯域も使用できるようになる。今ま では、下りは6 MHz、上りは3.2 MHzの幅 でまとまっていなければ使えなかったが、 DOCSIS3.1は周波数を有効に使うことがで きる技術だ」(アリス・グループ・ジャパン(株) の友松和彦・事業開発本部SE部長) 技術的な特徴の第2は、周波数の拡張 だ。DOCSIS3.1は上りが最低でも200MHz まで、下りが1GHzより高い周波数まで信 号を流せるようになる。上りと下りの周波数 をどこまで拡張するかはまだ議論中であり、 現段階では決まっていない。米国ケーブル ラボでDOCSIS3.1のコミュニティが正式に 立ち上がったのは、2012年6月。今年中に すべての仕様を固める予定で進んでいる。 伝送容量の大幅向上は RFoGとの組み合わせで しかし、DOCSIS3.1のOFDMなどによる 周波数当たりの伝送効率は、DOCSIS3.0 に比べて大幅に向上するわけではない。 「4096QAMなどOFDMの高密度変調 方式と高度誤り訂正符号のLDPCの組み 合わせによって、周波数当たりの伝送効 率はDOCSIS3.0に比べ30%向上する。 LDPCの効果は、エラー訂正のための情 報量が少なくて済むことだ。伝送容量をさ らに劇的に拡大するためには、周波数帯 域を上りと下りで拡張することが必要だ。 日本では、設備投資が可能なケーブルテ レビ事業者はどんどんFTTH化を進めて いる。現状のHFCでDOCSIS3.1によっ て変調方式を改善することで、伝送効率 を上げることもできるが、伝送容量の劇的 な増大は、FTTHでDOCSIS3.1を使用 することによって可 能となる。例えば、 RFoGを使ってFTTH上でDOCSIS3.1 のデバイスを使用するという方法だ」(友 松部長) GE - PONと比較し 何が優れているか DOCSIS3.1はボンディングの数を最大 にすれば、下り10Gbps、上り2.5Gbpsま で高速化できる。FTTHに1Gbps 程度の GE - PONを導入するよりも高速だ。 CMTS・モデムメーカーから見た DOCSIS3.1の技術的特長と期待 DOCSISのCMTS、ケーブルモデムで高いシェアを誇るアリス・グループ・ジ ャパン(株)に、DOCSIS3.1の技術的特長と、DOCSIS3.1を活用した次世代ケ ーブルテレビシステムへの期待を聞いた。 (取材・文:渡辺 元・本誌編集部) DOCSIS3.1が ケーブルテレビを変える 後編 特集後編の今回は、CMTS・モデムメーカーが見たDOCSIS3.1の技術とケーブル テレビへの提案、国際標準化の動向、DOCSIS3.1にも期待されるケーブルテレビ での4K・8K 伝送の最新動向を掲載する。 (取材・文:渡辺 元・本誌編集部)

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DOCOSIS3.1の2つの技術的特徴

 DOCOSIS3.1の技術的な特徴は2つある。 第1は、変調方式がOFDMであることだ。これによって周波数当たりの伝送効率を上げることができる。 「OFDMはサブキャリアを細かく立てていくので、4096QAMなど高い変調方式が使える。周波数帯域においてチャンネルという考え方が取り払われている。今までのDOCSIS通信は放送と同じ6MHzの枠があり、その中で64QAM、256QAMで変調してデータを流していた。DOCSIS3.1はOFDMを用いてそのサブキャリアを空いている帯域に埋めてデータを流す。細かいサブキャリアを並べてボンディングする方式なので、今までは扱えなかった細かい隙間の

周波数帯域も使用できるようになる。今までは、下りは6MHz、上りは3.2MHzの幅でまとまっていなければ使えなかったが、DOCSIS3.1は周波数を有効に使うことができる技術だ」(アリス・グループ・ジャパン(株)の友松和彦・事業開発本部SE部長) 技術的な特徴の第2は、周波数の拡張だ。DOCSIS3.1は上りが最低でも200MHzまで、下りが1GHzより高い周波数まで信号を流せるようになる。上りと下りの周波数をどこまで拡張するかはまだ議論中であり、現段階では決まっていない。米国ケーブルラボでDOCSIS3.1のコミュニティが正式に立ち上がったのは、2012年6月。今年中にすべての仕様を固める予定で進んでいる。

伝送容量の大幅向上はRFoGとの組み合わせで

 しかし、DOCSIS3.1のOFDMなどによる

周波数当たりの伝送効率は、DOCSIS3.0に比べて大幅に向上するわけではない。 「4096QAMなどOFDMの高密度変調方式と高度誤り訂正符号のLDPCの組み合わせによって、周波数当たりの伝送効率はDOCSIS3.0に比べ30%向上する。LDPCの効果は、エラー訂正のための情報量が少なくて済むことだ。伝送容量をさらに劇的に拡大するためには、周波数帯域を上りと下りで拡張することが必要だ。日本では、設備投資が可能なケーブルテレビ事業者はどんどんFTTH化を進めている。現状のHFCでDOCSIS3.1によって変調方式を改善することで、伝送効率を上げることもできるが、伝送容量の劇的な増大は、FTTHでDOCSIS3.1を使用することによって可能となる。例えば、RFoGを使ってFTTH上でDOCSIS3.1のデバイスを使用するという方法だ」(友松部長)

GE-PONと比較し何が優れているか

 DOCSIS3.1はボンディングの数を最大にすれば、下り10Gbps、上り2.5Gbpsまで高速化できる。FTTHに1Gbps程度のGE-PONを導入するよりも高速だ。

CMTS・モデムメーカーから見たDOCSIS3.1の技術的特長と期待DOCSISのCMTS、ケーブルモデムで高いシェアを誇るアリス・グループ・ジャパン(株)に、DOCSIS3.1の技術的特長と、DOCSIS3.1を活用した次世代ケーブルテレビシステムへの期待を聞いた。(取材・文:渡辺 元・本誌編集部)

DOCSIS3.1がケーブルテレビを変える 後編

特集後編の今回は、CMTS・モデムメーカーが見たDOCSIS3.1の技術とケーブルテレビへの提案、国際標準化の動向、DOCSIS3.1にも期待されるケーブルテレビでの4K・8K伝送の最新動向を掲載する。(取材・文:渡辺 元・本誌編集部)