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February 2011 プラディープ・シンドゥ 本書では、大規模なデータセンターの内部ネットワークを構築する際に使用また は提案されてきた他のソリューションからQFabricを際立たせている様々な特徴 について説明します。重要な点は、これらの特徴が互いに補完し合って相乗作用 を発揮し、 QFabricのメリットを引き出していることです。「QFabric」は、これらの 特徴の一部だけでなく、すべてを備えた唯一のソリューションです。 まず始めに、 QFabricがどのようなものであるかを定義してから、 QFabricの一般 的なメリットについて解説します。次に、 QFabricの特徴をリストアップしながら、 効率性、経済性、ダイナミック、管理性に優れたデータセンターを構築する上でこ れらの特徴がなぜ重要なのかを説明します。 QFABRICの特徴

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Page 1: Defining Characteristics of QFabric - Juniper Networks · 2015. 6. 8. · これらの特徴が重要である理由 上記の特徴は、データセンターの構築に必要なネットワーキング技術の飛躍的な進歩を象徴するものです。

February 2011

プラディープ・シンドゥ

本書では、大規模なデータセンターの内部ネットワークを構築する際に使用また

は提案されてきた他のソリューションからQFabricを際立たせている様々な特徴

について説明します。重要な点は、これらの特徴が互いに補完し合って相乗作用

を発揮し、QFabricのメリットを引き出していることです。「QFabric」は、これらの

特徴の一部だけでなく、すべてを備えた唯一のソリューションです。

まず始めに、QFabricがどのようなものであるかを定義してから、QFabricの一般

的なメリットについて解説します。次に、QFabricの特徴をリストアップしながら、

効率性、経済性、ダイナミック、管理性に優れたデータセンターを構築する上でこ

れらの特徴がなぜ重要なのかを説明します。

QFABRICの特徴

Page 2: Defining Characteristics of QFabric - Juniper Networks · 2015. 6. 8. · これらの特徴が重要である理由 上記の特徴は、データセンターの構築に必要なネットワーキング技術の飛躍的な進歩を象徴するものです。

定義と一般的なメリット

1 マルチテナント型のデータセンターの場合、インフラとアプリケーション間で双方の情報を交換するなどということは考えられません。

特徴QFabricは、拡張性という基本的な特徴を備えており、インタフェース数Nが増えて実装サイズが大きくなっても、一連の特徴を維持することができます。これらの特徴には、以下のものがあります。

1. 公平でノンブロッキングなエニー・ツー・エニー接続: QFabricでは、一連の各インタフェース間のパケット送受信を制約または事前の計画なしで行うことができます。その際には、伝送速度やアクティブな送信元・受信先の数の急激な変化を吸収することもできます。また、1つのインタフェースでもう1つのインタフェースのみにパケットを送信するという特殊な場合を含め、いかなる場合でも、競合し合うすべてのインタフェースがターゲット・インタフェースの全帯域幅を平等かつ瞬時に共有し続けることができます。このように帯域幅を平等に共有できるため、「公平」と言えます。さらに、受信インタフェースと送信インタフェースの帯域幅が制限されるため、輻輳が発生しているように見えますが、輻輳が発生していないインタフェースにパケットを送信する受信インタフェースに送信インタフェースの輻輳の影響が及ぶことはありません。このように干渉が生じないことを「ノンブロッキング」と言います。

2. レイテンシとジッターの低減: QFabricの各インタフェース間のレイテンシは、小規模なデータセンターで約2マイクロ秒ですが、最大規模のデータセンターでは、約10マイクロ秒まで徐々に大きくなっていきます。また、このレイテンシは、トラフィック負荷がかかっても、急激に大きくなることはありません。さらにQFabric では、ジッターを低く抑えることもできます。

3. 輻輳が生じてもパケットドロップの発生を回避: 着信パケットの瞬間速度が送信パケットの瞬間速度を上回った場合には、QFabricがソース(サーバーや仮想マシンなど)に信号を送り、輻輳を適度に制御し、着信速度と送信速度を一致させます。その上、このスロットリングが迅速かつ継続的に発生するため、着信速度と送信速度がスムーズに一致します。

4. コストと電力消費の線形的増大: QFabricにかかるコストと電力消費は、インタフェース数Nに応じて線形的に増大します。これは、コストと電力消費の両方が線形的にではなく急激に増大する従来のソリューションと一線を画す特徴となっています。

5. 仮想ネットワークおよびサービスのサポート: QFabricを使用して、仮想レイヤー2/レイヤー3ネットワークを構築すれば、それぞれ多層アプリケーションを実行する複数のテナントをサポートすることができます。また、アプリケーション・ワークフローの任意の時点でレイヤー4-7処理を挿入し、複雑なセキュリティおよびサービス要件に対応することも可能になります。特定のインタフェースから他のインタフェースへの仮想マシンの完全な移行も可能です。なお、仮想ネットワークを構築しても、他の特徴に影響が及ぶことはありません。

6. 信頼性と拡張性に優れたモジュール型分散実装: QFabricは、分散・連携させて冗長性を高めることができるモジュール型のハードウェアおよびソフトウェア・コンポーネントで構築されており、システムの実行中にインタフェース数を増減できるモジュール型実装を実現しています。当社では、これを「動的拡張性」と呼んでいます。

7. 単一の論理デバイス: QFabricは、分散実装しても単一の論理的なパケット交換デバイスとして機能します。その上、この分散実装は、高い信頼性や動的な拡張性などの優れた特徴を排除することなく、簡単に行うことができます。

QFabricは、一般的な既製のコンピューティング要素、ストレージ要素、サービス要素を使用して、効率性、経済性、動的性、管理性に優れた大規模なデータセンターを構築できるように特別に開発された、パケット交換方式のネットワーキング技術です。これらの要素は、イーサネットやファイバーチャネルなどのオープンな標準ネットワーク・インタフェースを介してQFabricと接続することができます。

QFabricを使用すれば、インフラ要素のパフォーマンスのみを改善する場合に比べ、データセンターのパフォーマンスを迅速に向上させることができます(たとえば、マイクロプロセッサの場合、ムーアの法則)。当社では、このようにしてデータセンターのパフォーマンスを向上させることができる高度な機能を「指数関数的な拡張」と呼んでいます。

QFabric は以下の2つの重要な機能を備えています。

• インフラとアプリケーション間で双方の情報を交換することなく、データセンターのコンピューティング、ストレージ、サービス、ネットワークの各リソースを代替プールとして扱い、動的かつ迅速に分割することができます。データセンターの簡便性、効率性、セキュリティを確保するには、この機能が不可欠です。

• 複数のリソースを高速に相互接続することができます。この相互接続には、インタフェースの帯域幅が一定であること以外、制約がありません。伝送レイテンシを低く抑えることもできるこの機能は、パフォーマンスの向上だけでなく、効率アップを図る上でも重要な要素となります。

QFabricは、サーバー、ストレージ、サービス、ネットワークデバイスと接続できるN個の同一のインタフェースを持つ円形のオブジェクトで表すことができます。この円形のシンボルは、レイテンシを考慮に入れてQFabricのすべてのインタフェースが互いに等距離になるように配置すると同時に、いずれのインタフェースも帯域幅をシンクまたはソースできるようにする際に使用します。このようにしてレイテンシの差をなくすことで、ユーザーからは、QFabricの内部ネットワークがフラットで階層がないように見えるようになります。なお、インタフェース数Nは、QFabricのスケールと呼びます。

業界標準のインタフェースとプロトコル

図1:16個のインタフェースを持つQFabric

理想的なファブリックとの比較理想的なファブリックは、インタフェースの帯域幅が一定でありながらも、莫大な内部帯域幅を持ち、インタフェース間のレイテンシがありません。以下に示した特徴から分かるように、理想的なファブリックに非常に近いQFabricは、物理的な実装に制約がある場合に威力を発揮します。

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これらの特徴が重要である理由上記の特徴は、データセンターの構築に必要なネットワーキング技術の飛躍的な進歩を象徴するものです。 これらの特徴を備えたQFabricは、当社が今後10年間にわたり、データセンターの指数関数的な拡張を実現するソリューションを提供していく上で重要な役割を担います。

拡張性の重要性QFabricの基本的な特徴である拡張性が重要な理由としては、以下の2つを挙げることができます。

• 経済性: データセンターの経済性の向上を図るには、データセンターの規模を考慮する必要があります。小規模なデータセンターを大規模なデータセンターと同様に効率化することは不可能です。プーリングの原則に従って、大規模なデータセンターでは1つのリソースを同じサイズのP個のパーティションに分割してから1つのプールにまとめますが、小規模なデータセンターで同等のサービスを提供するには、リソースの単位数を個まで減らす必要があるためです。言うまでもなく、こうしたプーリン

グのメリットを享受するには、リソースを代替プールとして利用できるようにする必要があります。

• パフォーマンス: 多くの場合、1つの大規模なデータセンターで緊密に統合されたコンピューティング要素の本来のパフォーマンスは、多数の小規模なデータセンターに分散配置された各コンピューティング要素のパフォーマンスをまとめたものよりもはるかに高くなります。パフォーマンスに差が生じる理由は、1つの大規模なデータセンターの方が本質的にレイテンシが低く、プロセッサ間の通信帯域幅が広いためです。

公平でノンブロッキングなエニー・ツー・エニー接続の重要性データセンターでコンピューティングおよびストレージリソースをプールするには、このようなタイプのコネクティビティを実現する必要があります。大規模なデータセンターの場合には、こうした機能を実現しなければ、リソースの流動性がなくなり、リソースを有効に活用することができなくなります。しかし、この「フラット」なコネクティビティを実現すれば、データセンター内の通信経路のパフォーマンス階層について悩む必要がなくなり、アプリケーションを簡単に開発できるようになります。また、オペレーションスタッフも、アプリケーション・コンポーネントの「親和性」に悩むことなくパフォーマンスの向上を図ることが可能になります。

レイテンシの低減の重要性レイテンシを低減できるQFabricでは、従来のアプリケーションに比べて通信/計算比が高い近年のアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。たとえば、金融アプリケーションはレイテンシの影響を受けやすく、レイテンシが高くなると、相互接続ネットワーク上で応答を待っているアプリケーションがストールし、パフォーマンスが低下します。なお、アプリケーションのパフォーマンスは、ストールの頻度が多くなり、ストール時間が長くなればなるほど、低下していきます。

輻輳が生じてもパケットドロップの発生を回避できる環境を構築することの重要性サーバーからディスクへのバースト性トラフィックを効率的に伝送するには、輻輳が生じてもパケットドロップの発生を回避できる環境を構築する必要があります。大半のアプリケーションでは、ディスクへの読み込みおよび書き込みが高い確率で成功することを前提としています。しかし、輻輳が原因でパケットドロップが発生すると、この前提が崩れ、アプリケーションがパケットロスをエラーとして処理することで、輻輳の相対頻度が高くなり、パフォーマンスが大幅に低下します。前述したようにQFabricでは、輻輳が発生しているインタフェースに「第三者」のインタフェースのトラフィックが送られないようにし、パケットドロップの発生を回避する仕組みになっています。これは、複数のテナントやテナント内の複数のアプリケーションをサポートする上で重要なポイントとなります。

コストと電力消費の線形的増大の重要性1つのインタフェースに複数の転送ハードウェアが必要になることを考えると、ファブリックにかかるコストと電力消費がインタフェース数Nに応じて少なくとも線形的に増大しなければならないことは容易に推測されます。QFabricは、CAPEXとOPEXの両方の観点から望ましい線形的な増大を実現します。

仮想ネットワークおよびサービスのサポートの重要性マルチテナント化が進んでいるデータセンターでは、セキュリティ、パフォーマンス、信頼性に対する複雑な要件を満たす必要があります。このため、分割したリソースを必要に応じてセキュアにやり取りできる基本的なツールを利用できる仮想ネットワークのサポートが重要な意味を持ちます。また、アプリケーションをインフラから分離するには、こうした抽象化が必要になります。

モジュール型分散実装の重要性物理的または論理的分離によって各モジュールの独立性を維持しているモジュール型実装には、2つの重要なメリットがあります。それは、ハードウェアやソフトウェアに問題が発生しても、その影響がシステム全体に及ばないことと、システムの実行中にシステムのサイズを変更できることです。

単一の論理デバイスとして機能する重要性データセンターの管理者の観点から見て、この特徴が重要である理由は、ネットワークの最もシンプルなモデルを利用しながら、オーケストレーション・アプリケーションや管理アプリケーションを大幅に単純化できる点にあります。

Page 4: Defining Characteristics of QFabric - Juniper Networks · 2015. 6. 8. · これらの特徴が重要である理由 上記の特徴は、データセンターの構築に必要なネットワーキング技術の飛躍的な進歩を象徴するものです。

Copyright© 2011, Juniper Networks, Inc. All rights reserved.Juniper Networks、Junos、NetScreen、ScreenOS、Juniper Networksロゴは、米国およびその他の国におけるJuniper Networks Inc.の登録商標または商標です。また、その他記載されているすべての商標、サービスマーク、登録商標、登録サービスマークは、各所有者に所有権があります。ジュニパーネットワークスは、本資料の記載内容に誤りがあった場合、一切責任を負いません。ジュニパーネットワークスは、本発行物を予告なく変更、修正、転載、または改訂する権利を有します。

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URL http://www.juniper.net

アジアパシフィックJuniper Networks (Hong Kong) Ltd.

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電話 852-2332-3636FAX 852-2574-7803

ヨーロッパ、中東、アフリカJuniper Networks Ireland

Airside Business ParkSwords, County DublinIreland

電話 35-31-8903-600FAX 35-31-8903-601

2000384-001 JP Feb 2011

経歴

プラディープ・シンドゥ 副会長・最高技術責任者・創業者

1996年2月にジュニパーネットワークスを創業し、現在は副会長兼CTOを務める。創設時に掲げたビジョン「Connect Everything and Empower Everyone(すべてをつなぎ、すべてに力を)」を今も心に留めている。

ジュニパーネットワークスを創業する以前は、Xerox社のパロアルト研究所(Palo Alto Research Center:PARC)のコンピュータ・サイエンス・ラボで主席サイエンティストおよびディスティングイッシュド・エンジニアとして従事。

また、インド工科大学カーンプル校で電気工学の学士号を、ハワイ大学で同電気工学の修士号を、カーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの修士号および博士学位を取得している。

まとめQFabricは、既製のコンピューティングおよびストレージ要素を業界標準のネットワーク・インタフェースで接続して大規模なデータセンターを構築できるように特別に開発された革新的なネットワーキング技術です。QFabricによって、データセンターのパフォーマンスを指数関数的に拡張することができます。同時に、コンピューティングおよびストレージ要素のみを改善する場合に比べ、データセンターのパフォーマンスを迅速に向上させることができます。この指数関数的な拡張は、データセンターを大幅に強化するだけでなく、経済効率、動的性、管理性の向上を図る上でも大きな決め手となります。

QFabric は最高レベルの2つの重要な機能を備えています。1つは、インフラとアプリケーション間で双方の情報を交換することなく、データセンターのコンピューティング、ストレージ、サービス、ネットワークの各リソースを代替プールとして扱い、動的かつ迅速に分割することができることです。データセンターの簡便性、効率性、セキュリティを確保するには、この機能が不可欠です。もう1つは、公平さを維持しつつレイテンシを低く抑え、複数のリソースを高速に相互接続できることです。この機能は、パフォーマンスの向上だけでなく、大幅な効率アップを図る上でも重要な要素となります。

本書では、データセンターで使用または提案されてきた他のソリューションからQFabricを際立たせている7つの特徴について説明してきました。上記の2つの重要な機能は、これらの特徴が互いに補完し合い、パフォーマンス、コスト、電力消費、仮想化、セキュリティ、信頼性、モジュール性の各要素を連携させることで実現しています。

データセンターの構築に必要なネットワーク技術の飛躍的な進歩を象徴するQFabricは、今後10年間にわたり、高性能なコンピューティングとストレージを指数関数的に拡張するための重要な役割を担っていくでしょう。