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日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見 Consensus statement for the management of pediatric severe sepsis 日本集中治療医学会 小児集中治療委員会 2013 10 1 FOR PUBLIC COMMENTS

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日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見

Consensus statement for the management of pediatric severe sepsis

日本集中治療医学会 小児集中治療委員会 2013 年 10 月 1 日

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緒言

小児患者に発生する敗血症,なかでも急性臓器不全を伴う重症敗血症,とりわけ

急性循環不全を伴う敗血症性ショックは,集中治療管理を必要とする重篤な病態で

あり,その死亡率は重症敗血症で 15%を超え,敗血症性ショックではさらに高い

[1-3].海外では,米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会の合同会議により

2004 年に初めての敗血症診療のガイドラインである Surviving Sepsis Campaign

Guidelines (SSCG)が発表され,敗血症に対する標準的治療が提唱され広く臨床に

普及してきた.SSCG は 2008 年,2012 年と改訂を重ね[4],ガイドラインの普及に呼

応して死亡率低下が報告されるようになっている.SSCG2012 には,小児に関連した

推奨,が項目立てされている.

一方,これまで日本における小児敗血症の知見集積は進んでおらず,疫学的デー

タすら乏しい状況にあった.日本集中治療医学会小児集中治療委員会では,2007

年より日本の集中治療室で管理される小児重症敗血症を対象とした症例集積を行い,

日本における疫学及び診療の現状を明らかにしてきた[3].また,日本集中治療医学

会は 2007 年 3 月に Sepsis Registry 委員会を発足させ,重症敗血症患者の救命率

を改善することを目的に,学会認定施設を対象に 2 回の診療実態調査を行い,それ

を基にわが国独自の敗血症診療ガイドラインを策定してきた[5].しかし,本ガイドライ

ンには小児の項目は組み入れられていない状況があった.

そこで,日本集中治療医学会小児集中治療委員会では,日本語で記述され日本

で利用可能な小児重症敗血症の診療に役立つ意見書を作成する事業に取り組むこ

ととした.SSCG2012 を参照し,日本の疫学調査や診療現状(薬剤など治療介入の

特殊性,医療システム)を勘案した上で,専門家の合意意見を作成した.

さらにこの内容は,小児重症敗血症診療に関連する各学会に対して,その内容に

関する意見聴取を行い,これを参考とした改訂を行うとともに,内容について推薦(エ

ンドース)して頂いた.

本内容が日本の診療現場における小児重症敗血症診療において幅広く参考とされ,

患者予後改善に少しでも寄与できれば,これに勝る喜びはない.また今後,症例集積

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の遂行により,その影響や効果を客観的に評価する試みを継続してゆく必要性があ

ると考えている.

なお,本内容は,日本の専門家が共同提案する重症敗血症診療の一意見であり,

この内容に合致しない治療選択を妨げるものではない.また,本内容が医療訴訟の

資料として利用されることは適切でないことを明言しておく.

一般社団法人 日本集中治療医学会

理事長 氏家良人

小児集中治療委員会

担当理事 羽鳥文麿

委員長 志馬伸朗

作成者:日本集中治療医学会小児集中治療委員会(執筆順)

志馬伸朗,中川 聡,清水直樹,中村友彦,岩崎達雄,竹内宗之,平井克樹,植田育也

作成協力者(執筆・助言順):

齋藤 修,新津健裕,笠井正志,金澤伴幸,清水義之,窪田祥吾,大平智子,川崎達也,

織田成人

作成協力・承認学会/委員会(承認順)

日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会

特定非営利活動法人 日本小児集中治療研究会

公益社団法人 日本小児科学会

日本小児感染症学会

日本小児救急医学会

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文献

1) Nadel S, Goldstein B, Williams MD,et al; REsearching severe Sepsis and

Organ dysfunction in children: a global perspective (RESOLVE) study group.

Drotrecogin alfa (activated) in children with severe sepsis: a multicentre

phase III randomised controlled trial. Lancet. 2007;369:836-43

2) Inwald DP, Tasker RC, Peters MJ,et al. Emergency management of

children with severe sepsis in the United Kingdom: the results of the

Paediatric Intensive Care Society sepsis audit. Arch Dis Child 2009; 94:348–

53

3) Shime N, Kawasaki T, Saito O, et al. Incidence and risk factors for

mortality in paediatric severe sepsis: results from the national paediatric

intensive care registry in Japan. Intensive Care Med. 2012;38:1191-7

4) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

5)日本集中治療医学会 Sepsis Registry 委員会.日本版敗血症診療ガイドライ

ン:The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis. 日集中医誌

2013;20:124-73.

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内容は,以下の項目立てとした.

A. 定義

B. 初期蘇生

1.気道/呼吸/血管路

2.治療目標

3.治療アルゴリズム

4.循環作動薬

5.輸液

6.治療抵抗性ショックの対応

C. 抗菌薬治療と感染巣コントロール

1.抗菌療法

2.感染巣コントロール

D. 支持療法

1. コルチコステロイド

2. 輸血

3. 人工呼吸

4. 鎮静/鎮痛/薬物の毒性

5. 体外式膜型人工肺 (Extracorporeal Membrane Oxygenation, ECMO)

6. 血糖コントロール

7. 利尿薬と腎代替療法

8. 栄養管理

9. 免疫グロブリン

それぞれについて,1)意見,2)解説,3)文献,を記載した.

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A.定義

・意見

- 敗 血 症 と は , 全 身 性 炎 症 反 応 症 候 群 ( systemic inflammatory response

syndrome: SIRS)が感染により引き起こされた場合,とする.

-重症敗血症は,敗血症の中で,急性臓器障害を伴うものを指す.循環障害または呼

吸障害の少なくとも一つ,循環・呼吸障害がない場合は中枢神経障害,血液凝固障

害,腎障害,肝障害のうち 2 臓器以上の障害がある場合とする.

-敗血症性ショックは,重症敗血症の中で,循環障害を伴うものとする.

-本文で扱う対象は,敗血症性ショックを含む重症敗血症である.

・解説

SIRS とは,

① 中心体温 38.5℃を超える,または 36℃未満である.

② 平均心拍数が年齢別基準値を超える上昇,または他に説明のつかない 30 分

~4 時間以上持続する上昇がある(表 1).1 歳未満の児については,年齢別

基準値以下に低下する徐脈,または他に説明のつかない 30 分以上持続する

心拍数低下も含む.

③ 呼吸数が年齢別基準値(表 1)を超える,または緊急的人工呼吸管理が必要な

場合.

④ 白血球数の異常高値または低値(表 1),または未熟好中球が 10%以上の場

合.

以上の 4 項目のうち①中心体温または④白血球数の異常高値と低値のいずれかを必

須とし,合計 2 項目以上に該当する場合とする.

敗血症とは, SIRS が感染により引き起こされた場合,とする.

重症敗血症は,敗血症の中で,臓器障害を伴うものを指す.循環障害または呼吸

障害の少なくとも一つ,循環,呼吸障害がない場合は中枢神経障害,血液凝固障害,

腎障害,肝障害のうち 2 臓器以上の障害がある場合とする.臓器障害の判断には表

2 の指標を用いる[1].

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敗血症性ショックは,重症敗血症の中で,循環障害を伴うものとする.循環障害の

評価には低血圧,末梢循環障害指標(乳酸値,毛細血管再充満時間[capillary refill

time: CRT],皮膚色の不良や冷感など)を用いる.低血圧を伴うものを低血圧ショック,

伴わないものを代償性ショックとする.

SIRS の定義となる年齢別指標は 2005 年に米国より報告された値(Goldstein 基

準値)を使用する[1] (表 1).ただし,呼吸数に関して Goldstein 基準値はおしなべて

低すぎるという印象があった.特に,新生児における 40 回/分は他の団体やガイドラ

インの基準と比べ低く,多くの新生児で陽性になりやすい.また,6 歳以上の基準値

が 20 回/分を下回っており,これは成人基準値よりも低い.しかし, SSCG2012 にお

いて小児 SIRS 基準値についての特別の言及はなく,少なくとも現時点では

Goldstein 基準値が依然として普遍的に使用されていると考えられる.2011 年

Fleming は,過去に報告された 69 研究,143,346 個の外来患者データを基に,新し

い centile chart を作成し,異常限度値の同定を試みた[2] .本論文における呼吸数

の 99%タイル値(付録1)に比べ,Goldstein 基準は明らかに低い. 一方,2013 年

Bonafide らは 2 施設の入院患者を対象とした 116,383 個のバイタルサイン測定より

centile chart を作成し,入院患者での異常限度値はさらに高い可能性を示した(付録

2)[3].また,Nijman らは,呼吸数の評価おいては体温別の閾値設定が必要で,彼ら

が体温別に設定した呼吸数閾値は(やはり Goldstein 基準より高く(付録 3),Fleming

論文の閾値よりもより正確に発熱患者における下気道感染症の陽性予測率を有する

と報告した[4].以上から,SIRS の呼吸基準値については下記の様な問題点が提起

できる.

① Goldstein 基準値の呼吸数については,低い閾値設定であり,今後改変の余地

がある.

② 呼吸数の評価に際しては,患者セッティング(院内,院外)あるいは体温を考慮

した評価が必要な可能性がある.

年齢別の低血圧基準値として,改変を経た Goldstein 基準値がある(表1)[1].ただ

し,ここでは新生児での基準値(79mmHg) が高く,1-<5 歳の基準値(74mmHg)が

低いとの指摘がある. 例えば,PALS ガイドラインに用いられている基準値は新生児

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<60mmHg ,乳児<70mmHg ,1 歳以上は<70+年齢 x2 であるし[5],現在遂行中の

小児敗血症を対象とした多国籍多施設研究(SPROUT 研究)では別の基準が呈示さ

れている[6](付録 4).今後の再検証が必要な部分と考える.

なお,そもそも,SIRS や低血圧基準の年齢別指標は,患者群をある一定の年齢層

で敢えて区切り,各年齢層における平均的な上限/下限値を呈示したものであるため

に,各年齢に適用する場合に無理が生じることも認識すべきであろう.個々の患者で

の評価に際しては,経時的変動も含め,総合的に判断することが現実的かつ重要で

ある.

その他の注意点として,以下が挙げられる.

・ 血液培養で病原微生物が検出される状態は,菌血症と呼ぶ.菌血症=敗血

症ではない.ただし,多くの菌血症患者において敗血症を呈する.

・ 敗血症の原因となる微生物には,細菌のみならず,ウイルス,真菌,リケッチ

ャ,クラミジア等の病原体がある.

・ 感染の診断には,通常無菌部位からの培養同定,組織標本からの検出やポ

リメラーゼ連鎖反応 (Polymerase Chain Reaction, PCR)法による証明を必

要とするが,病原微生物が証明されなくても,感染に対する全身反応としての

敗血症が疑われる場合(点状出血,電撃性紫斑などの症状が有る場合や,消

化管穿孔等の原因診断がされた場合など)は感染として扱う.

文献

1) Goldstein B, Giroir B, Randolph A, et al. International pediatric sepsis

consensus conference: Definitions for sepsis and organ dysfunction in

pediatrics. Pediatr Crit Care Med 2005; 6: 2-8 [Erratum in Pediatr Crit Care

Med 2005; 6: 500]

2) Fleming S, Thompson M, Stevens R, et al. Normal ranges of heart rate

and respiratory rate in children from birth to 18 years of age: a systematic

review of observational studies. Lancet 2011; 377: 1011–18.

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3) Bonafide CP, Brady PW, Keren R, et al. Development of heart and

respiratory rate percentile curves for hospitalized children. Pediatrics.

2013;131:e1150-7.

4) Nijman RG, Thompson M, van Veen M, et al. Derivation and validation

of age and temperature specific reference values and centile charts to

predict lower respiratory tract infection in children with fever: prospective

observational study. BMJ 2012 ;345:e4224.

5) American Heart Association. Pediatric Advanced Life Support (PALS)

Provider Manual. 2010

6)http://sprout.research.chop.edu/ (2012年5月30日アクセス)

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B. 初期蘇生

1.気道/呼吸/血管路

・意見

-重症敗血症を疑う患者では,フェイスマスクでの酸素投与を開始する.呼吸窮迫や

低酸素血症があるときには,鼻カニューラでの高流量酸素投与法か,経鼻あるいは

フェイスマスクでの持続気道陽圧(continuous positive airway pressure, CPAP) を

開始してよい.

-気管挿管・人工呼吸管理が必要な場合,輸液を含む適切な循環系の初期対応が

必要である.

-末梢静脈路または骨髄路を初期輸液投与に用いる.

・解説

新生児や乳児では機能的残気量が小さいため,重症敗血症に罹患した場合は,早

期の気管挿管が必要となることがある.しかし,気管挿管や人工呼吸を開始する際に,

その前に十分な輸液が行われていないと,胸腔内圧の上昇が静脈還流を阻害し,さ

らにショックの状態を悪化させることがある.フェイスマスクで酸素投与をしても酸素

飽和度が低い小児患者では,機能的残気量を増加させるため,あるいは呼吸仕事量

を軽減させるために,鼻カニューラからの高流量酸素投与法か経鼻またはフェイスマ

スクでのCPAPを使用することが可能である.ただし,Nasal CPAPの有用性は,生

理学的には正当化されるが,有用性を示す臨床研究は少ない.Nasal CPAPに関す

る論文として引用されているものは,ベトナムでのデング出血熱での検討のみである

[1].また,鎮静薬の安易な使用は呼吸抑制など重度な合併症をもたらす危険性があ

ることにも注意する.

こうした処置を先行させたうえで,並行して大量輸液のためのあるいは循環作動薬

の投与のための静脈路または骨髄路を確保する.成人に比べ小児では,中心静脈

路の確保は困難であり,末梢静脈路や骨髄路を初期輸液路として使用できる.

文献

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1) Cam BV, Tuan DT, Fonsmark L, et al: Randomized comparison of oxygen

mask treatment vs. nasal continuous positive airway pressure in dengue

shock syndrome with acute respiratory failure. J Trop Pediatr 2002;48:335–9

2.治療目標

・意見

敗血症性ショックでの治療目標を,2秒以内のCRT,年齢別の正常血圧,正常心拍

数,中枢と末梢の脈の触れに差がないこと,温かい四肢末梢,1 mL/kg/時間以上の

尿量,正常な意識レベルにおく.それらが達成されたのちは,中心静脈血酸素飽和

度(central venous oxygen saturation , ScvO2)を70%以上になるように管理する.

・解説

上記に示した循環指標は日常的に利用できる非侵襲的で簡便な指標であり,これ

らを参考とすることに大きな異論はないものと考える.敗血症に関する成人のガイドラ

インでは,乳酸のクリアランスも治療目標に置くことを推奨しているが,小児でのデー

タはない.SSCG2012では,目標値として心係数が記載されているが[1],小児で心

係数の正確な測定は容易でない上に,これを目標におく管理法の支持根拠は乏しい

ため,心係数値測定の必要性は低い.一方で,ScvO2値を指標に治療をすると生存

率が改善するというブラジルからの報告がある[2].CRT≦2秒は,ScvO2≧70%とあ

る程度相関する[3].治療目標にどの方法を用いるかは,過去の報告などを参照の上,

それぞれの臨床家の判断で選択して良い[2-4].

・文献

1) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al. Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

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2) de Oliveira CF, de Oliveira DS, Gottschald AF, et al.ACCM/PALS

haemodynamic support guidelines for paediatric septic shock: An outcomes

comparison with and without monitoring central venous oxygen saturation.

Intensive Care Med 2008; 34:1065–75

3) Raimer PL, Han YY, Weber MS, et al. A normal capillary refill time of ≦ 2

seconds is associated with superior vena cava oxygen saturations of ≧ 70%.

J Pediatr 2011;158:968–72

4) Brierley J, Carcillo JA, Choong K, et al. Clinical practice parameters for

hemodynamic support of pediatric and neonatal septic shock: 2007 update

from the American College of Critical Care Medicine. Crit Care Med 2009;

37:666–88

3.治療アルゴリズム

・意見

-敗血症性ショックは,American College of Critical Care Medicine-Pediatric

Advanced Life Support (ACCM-PALS) アルゴリズムに沿って管理をする.

・解説

敗血症性ショックで早期にショックを離脱させるために,ACCM-PALSガイドライン

[1]に沿った初期治療が行われると良好な生存率が期待できる[2-4].参考とすべき治

療の流れを図1に示す[1,5].

・文献

1) Brierley J, Carcillo JA, Choong K, et al. Clinical practice parameters for

hemodynamic support of pediatric and neonatal septic shock: 2007 update from

the American College of Critical Care Medicine. Crit Care Med 2009; 37:666–88

2) Han YY, Carcillo JA, Dragotta MA, et al. Early reversal of pediatric neonatal

septic shock by community physicians is associated with improved outcome.

Pediatrics 2003; 112:793–9

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3) Carcillo JA, Kuch BA, Han YY, et al. Mortality and functional morbidity after

use of PALS/APLS by community physicians. Pediatrics 2009; 124:500–508

4) Oliveira CF, Nogueira de Sá FR, et al. Time- and fluid-sensitive resuscitation

for hemodynamic support of children in septic shock: barriers to the

implementation of the American College of Critical Care Medicine/Pediatric

Advanced Life Support Guidelines in a pediatric intensive care unit in a

developing world. Pediatr Emerg Care 2008; 24:810–5

5) 岡田和夫.小児の二次救命処置.日本蘇生協議会.日本救急医療財団.JRC蘇

生ガイドライン2010.東京:へるす出版;2010.155-165.

4. 循環作動薬

・ 意見

- 輸液負荷に反応しない小児患者では可能な限り速やかに強心薬/血管収縮薬を投

与する.中心静脈路確保に時間を要するようなら末梢静脈路もしくは骨髄路から投与

してもよい.

-心収縮力と末梢血管抵抗を評価し,循環作動薬(アドレナリン,ノルアドレナリン,血

管拡張薬)を適切に使い分ける

・ 解説

小児敗血症患者では,診断後1時間以内に有効な治療を実行する事が予後の改善

につながる[1].髄膜炎菌感染症で,死亡群では適切に循環作動薬を使用されていな

かったという報告[2]がある.そのため強心薬/血管収縮薬の投与は,可能な限り速や

かに行う.小児では中心静脈路の確保が困難な場合も多いため,その際には末梢静

脈や骨髄針からの投与が行える[1].ただし末梢静脈では安定した投与が得られない

事がある.また血管外に薬剤が漏出した際の組織壊死のため強心薬の濃度は低濃

度とし,濃度の高い強心薬が長時間末梢静脈内に存在しないようにする.ただし,循

環作動薬を末梢静脈路から投与することを正当化する論文はないため,中心静脈路

が確保でき次第,速やかに中心静脈路からの投与に変更する.

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小児の敗血症性ショックは,すべてが典型的なウォームショックではない[2,3].重要

なことは,病態ごとに心収縮力と末梢の暖かさ/冷たさを評価し循環作動薬(アドレナ

リン,ノルアドレナリン,血管拡張薬)を適切に使い分けることである(図1参照).

血圧が正常で,低心拍出量,高末梢血管抵抗では,強心薬に反応しない場合の追

加的選択肢に,後負荷減荷のためのPDEIII阻害薬や末梢血管拡張薬がある.敗血

症性ショックのうち強心薬に反応しないコールドショックになっている場合,強心作用

と血管拡張作用を持つイノダイレータであるPDEIII阻害薬やカルシウムセンシタイザ

ー(レボシメンダン) [4](本邦未発売)が使用できる.血管拡張薬使用時は,副作用と

しての低血圧に注意する.

・ 文献

1) Kissoon N, Orr RA, Carcillo JA. Updated American College of Critical Care

Medicine--pediatric advanced life support guidelines for management of

pediatric and neonatal septic shock: relevance to the emergency care clinician.

Pediatr Emerg Care, 2010;26:867-9

2) Ninis N, Phillips C, Bailey L, et al: The role of healthcare delivery in the

outcome of meningococcal disease in children: case-control study of fatal and

non-fatal cases. BMJ 2005; 330:1475

3) Ceneviva G, Paschall JA, Maffei F, et al. Hemodynamic support in

fluid-refractory pediatric septic shock. Pediatrics. 1998;102:e19.

3) Brierley J, Peters MJ. Distinct hemodynamic patterns of septic shock at

presentation to pediatric intensive care. Pediatrics. 2008;122:752-9.

4) Papoff P, Caresta E, Versacci P, et al. Beneficial effects of levosimendan in

infants with sepsis-associated cardiac dysfunction: report of 2 cases. Pediatr

Emerg Care, 2012 ;28:1062-5

5. 輸液

・意見

-敗血症性ショックの初期蘇生(概ね認識 15 分以内に完了する)として,等張晶質

液 20 mL/kg を 5-10 分かけて急速投与する.

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-介入効果は,以下の臨床症状をもって評価し,必要であれば急速輸液負荷を

追加する.肝腫大,湿性ラ音を生じた場合は,輸液による蘇生を中止し,速やか

に循環作動薬を投与する.

*輸液による蘇生への効果評価項目

・ 血圧,心拍数(いずれも年齢別基準値を参照)

・ 尿量

・ 毛細血管再充満時間

・ 皮膚色,温度

・ 末梢と中枢の脈の強さの差

・ 意識レベル

・ 心臓超音波装置を用いた心収縮力及び心腔・血管内容量評価

・解説

ACCM-PALS ガイドラインでは,認識 15 分以内に 20 mL/kg のボーラス輸液を行い,

適宜追加する,との記載がある[1].このガイドラインに従い治療した場合,患者生命

予後が改善したとの複数の観察研究がある [2-6].一つのランダム化比較試験

(randomized controlled trial, RCT)では,ScvO2>70%を目標とした迅速かつ十分

な輸液ボーラス投与(介入群の平均初期輸液量は 28 mL/kg/6 時間)と,輸血,強心

薬の投与により,敗血症性ショックの死亡率が 40%から 12%に減少した[5].一つの

診療の質改善研究では,ショックの臨床症状改善のために救急外来で 1 時間以内に

輸液負荷と抗菌薬投与を行うことで重症敗血症の死亡率を減少させることができた

(4.0%から 2.5%)[6].デング熱の循環血液量減少性性ショックの小児において膠質

液の投与を等張晶質液と比較した 3 つの RCT では,初期の 1 時間以内(重症例では

15 分以内)での 15-20 mL/kg の輸液負荷に加え,適宜追加輸液を行うことで,補液

内容にかかわらず 100%に近い生存率を得ている[7-9].さらに,髄膜炎菌による敗

血症性ショックの小児に輸液負荷,強心薬,人工呼吸器補助を救急外来で導入した

場合,死亡率を 10 分の 1 に減少させた[10,11].したがって,適切な量の輸液を,迅

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速に投与することが敗血症性ショックの治療においてとりわけ重要といえる.特に,

20 mL/kg の初期急速輸液を 5-10 分というわかりやすい時限で行うことは,認識後

15 分以内の急速輸液完了にも合致し,妥当と思われる.

等張晶質液と膠質液のどちらを投与すべきかに関して,等張晶質液は直ぐに利用

でき,安価であり,アナフィラキシーの懸念が無いなどの利点を有する.アルブミンと

晶質液の比較において,成人領域の質の高い研究[12]及びこれを含めたメタ解析の

[13]いずれもサブグループ解析において,アルブミン使用による生命予後改善の傾

向が示されているが,アルブミン使用を強く推奨する根拠としては十分でない.現在

進行中の,アルブミン使用の効果を検討する大規模研究の結果も含めて,検討が必

要な領域と考えられる.合成膠質液と晶質液の比較において,デングショックを対象

とした研究では,循環改善速度が迅速な傾向にあるものの,生命予後に差はなく,む

しろ晶質液では副作用が少なかった[8].成人領域の知見からも,合成膠質液を選択

する意義には乏しいと考えられる[14-16].以上の知見に基づき,本文では,より安全

で,迅速な使用が可能な等張晶質液(生理食塩水またはリンゲル液など)の投与を第

一選択として位置づけた.

小児の正常血圧は成人のそれよりも低く,血管収縮と頻拍により血圧低下を防ぎう

る.しかしひとたび血圧低下を生じた場合,心血管系の虚脱を容易に生じる.代表的

な感染性循環血液量減少性ショックであるデングショックの知見からは,小児におい

ては,正常血圧の時点で輸液蘇生を開始することが有益である[7-9].一方,水分投

与の過負荷を生じた小児においては,肝腫大と湿性ラ音が出現するため,これらの

所見は,水分過多の有用な兆候となる.これら所見がなく,大きな水分喪失がある場

合,初期輸液蘇生量は,40-60 mL/kg あるいはそれ以上となる.しかしながら,もし過

負荷の所見がある場合は輸液投与をやめ,利尿薬を投与する.輸液に反応しないシ

ョックの小児では,強心薬,人工呼吸器の補助が必要となる.

小児領域において,輸液による蘇生の評価は,精緻かつ継続的な臨床症状の把握

に優るものはないと考える[1,17].なお,救急・集中治療現場における小児の心収縮

力あるいは心腔・血管内容量の非侵襲的評価指標としての心臓超音波装置の有用

性を示唆する報告がある[18-20].超音波装置が広く普及している日本では,継続的

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血行動態把握の一助として,活用してよい.

・ 文献

1) Brierley J, Carcillo JA, Choong K, et al. Clinical practice parameters for

hemodynamic support of pediatric and neonatal septic shock: 2007 update from

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Reduction in case fatality rate from meningococcal disease associated with

improved healthcare delivery. Arch Dis Child 2001;85:386–90

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18) Spurney CF, Sable CA, Berger JT, et al. Use of a hand-carried ultrasound device

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19) Pershad J, Myers S, Plouman C, et al. Bedside limited echocardiography by the

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20) Chen L, Kim Y, Santucci K. Use of ultrasound measurement of the inferior vena

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dehydration. Acad Emerg Med 2007;14:841–5.

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19

6.治療抵抗性ショックの対応

・意見

治療抵抗性のショックにおいては,気胸,心タンポナーデ,腹部コンパートメント症候

群(abdominal compartment syndrome , ACS),内分泌的緊急症などを考慮する.

・解説

内分泌的緊急症としては,副腎機能低下症や甲状腺機能低下症がある.

ACCM-PALSガイドラインに沿った初期治療を行っても,治療抵抗性の患者では,気

胸,心タンポナーデの可能性は常に念頭に置く.特殊な患者においては,腹部コンパ

ートメント症候群を考慮に入れて管理をする必要がある [1-3].

・文献

1) Malbrain ML, De laet I, Cheatham M. Consensus conference definitions and

recommendations on intra-abdominal hypertension (IAH) and the abdominal

compartment syndrome (ACS)–the long road to the final publications, how did

we get there? Acta Clin Belg Suppl 2007; Suppl:44–59

2) Cheatham ML, Malbrain ML, Kirkpatrick A, et al. Results from the International

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Compartment Syndrome. II. Recommendations. Intensive Care Med 2007;

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3) Pearson EG, Rollins MD, Vogler SA, et al. Decompressive laparotomy for

abdominal compartment syndrome in children: Before it is too late. J

Pediatr Surg 2010; 45:1324–29

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20

C. 抗菌薬治療と感染巣コントロール

1.抗菌療法

・意見

-経験的抗菌薬は重症敗血症認識後1時間以内に開始する.

-抗菌薬開始前に血液培養を2セット以上採取する.ただし,このために抗菌薬投

与が遅れないようにする.

-経験的治療の薬剤は,地域での流行性,発症場所(市中・院内),基礎疾患・患

者リスクの有無(例:デバイスの有無,好中球減少症)を考慮して選択する.

・解説

重症敗血症/敗血症性ショックにおいて,成人領域の知見では,診断後 1 時間以内

の抗菌薬投与が推奨され[1,2],初期経験的抗菌薬の適切性が生命予後改善に有意

に関連する[3].小児のみに特化した知見は無いが,早期に適切な抗菌薬を投与する

意義は成人と小児とで違いはないと考えられるため,小児でも頻度の高い原因菌を

十分にカバーする広域抗菌薬を早期に投与することが勧められる.

ヘモフィルス・インフルエンザ菌及び肺炎球菌は小児重症感染症の主要な原因菌で

ある.2013年,小児のB型ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Hib)及び肺炎球菌に対す

るワクチンの公的助成プログラムが確立されたため,日本でのこれら重要な原因菌

による重症感染症が減少することが見込めるが[4-6],その動向に関しては今後の疫

学情報に注目する必要がある.また,ヘモフィルス・インフルエンザ菌では β-ラクタマ

ー ゼ 非 産 生 ア ン ピ シ リ ン 耐 性 イ ン フ ル エ ン ザ 菌 ( β-lactamase-negative

ampicillin-resistant Haemophillus influenzae, BLNAR),肺炎球菌ではペニシリン

耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae, PRSP)など耐性菌

の存在を念頭に置いた抗菌薬選択も必要である[7].

日本では,小児に対して保険適応が認められている抗菌薬が限定されており,保険

承認投与量も海外成書[8,9]の記載と解離しているものがある.少なくとも過少投与は

抗菌薬の効果を不十分にする可能性があることにも配慮し,海外成書[8,9]に準じた

用法用量設定を選択できる.

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21

SSCG2012 では,治療抵抗性の低血圧を伴うトキシックショック症候群に対し,クリ

ンダマイシンの使用が弱く推奨されている[10].トキシックショック症候群は,細菌毒

素(SPE-A,B;レンサ球菌,TSST-1;黄色ブドウ球菌,他)が原因で起こる敗血症性シ

ョックである.クリンダマイシンは,細菌毒素産生抑制効果があるとされるが,その有

効性は前向き比較試験により確認されたものではない [11,12].

日本の小児領域では髄膜炎に対する初回抗菌薬前のデキサメサゾン投与が一般

的である.しかし,本治療の小児の肺炎球菌髄膜炎を対象として有効性を評価した研

究はないため,ここでは言及しない.

血液培養採取量の目安は,新生児は 1-2 mL,乳児 2-3 mL,幼児・学童 3-5 mL,

思春期 10-20 mL である[13].1 mL 以上の採取により陽性率が上昇する[14].血液

培養ボトルには成人用と小児用(通常 3 ないし 4 mL まで)があり,ボトルに記載して

いる量を適切に接種することで陽性率が上昇する[15].

・文献

1) Kumar A, Roberts D, Wood KE, et.al. Duration of hypotension before

initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of

survival in human septic shock.Crit Care Med. 2006;34:1589-96.

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perspective. BMC Infect Dis. 2012;12:207.

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22

6) Swingler G, Fransman D, Hussey G. Conjugate vaccines for preventing

Haemophilus influenzae type B infections. Cochrane Database Syst

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7) 亀井聡,細谷光亮,志賀裕正他.編:耐性菌に対する抗菌薬の選択,細菌性髄

膜炎診療のガイドライン,神経治療 2007;24:51-2

8) John S.Bradley, John D.Nelson. Nelson’s Pocket Book of Pediatric

Antimicrobial Therapy (2010-2011). Elk Grove Village: American Academy

of Pediatrics; 2012

9) Takemoto CK, Hodding JH, Kraus DM. Pediatric & Neonatal Dosage

Handbook with International Trade Names Index: A Comprehensive

Resource for All Clinicians Treating Pediatric and Neonatal Patients

(Lexicomp's Drug Reference Handbooks), 19th. edition. United States: Lexi

Comp; 2012

10) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

11) Stevens DL. Streptococcal toxic-shock syndrome: spectrum of disease,

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12) Stevens DL, Bryant AE, Hackett SP. Antibiotic effects on bacterial viability,

toxin production, and host response. Clin Infect Dis 1995;20(Suppl):S154-7.

13) Long SS, Pickering LK, Prober CG. Principles and Practice of Pediatric

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14) Szymzcak EG, Barr JT, Durbin WA, et.al. Evaluation of blood culture

procedures in a pediatric hospital. J Clin Microbiol.1979;9:88-92

15) Connell TG, Rele M, Cowley D, et al. How reliable is a negative blood culture

result? Volume of blood submitted for culture in routine practice in a

children's hospital. Pediatrics. 2007;119:891-6.

2. 感染巣コントロール

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23

・意見

早期の積極的な感染巣コントロールを行う.

・解説

デブリードマン,ドレナージ,デバイス除去などの感染巣コントロールは重要である.

早期に,積極的に介入する意義は高い.小児領域で感染巣コントロールの有用性が

示されている感染源は,壊死性筋膜炎[1],穿孔性腹膜炎[2],肺化膿症,膿胸[3],な

どがある.経過中,適切な抗菌薬使用にも関わらず,反応が乏しい場合にも,感染巣

コントロールの必要性を再検討する.

・文献

1) Murphy JJ, Granger R, Blair GK, et al: Necrotizing fasciitis in childhood. J

Pediatr Surg 1995; 30:1131–34

2) Haecker FM, Berger D, Schumacher U, et al: Peritonitis in childhood: Aspects

of pathogenesis and therapy. Pediatr Surg Int 2000;16:182–8

3) Wu MH, Tseng YL, Lin MY, et al: Surgical treatment of pediatric lung abscess.

Pediatr Surg Int 1997; 12:293–5

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24

D. 支持療法

1. コルチコステロイド

・意見

ステロイドの使用は,輸液治療への反応が乏しく,カテコラミン抵抗性のショックで,

古典的な絶対的副腎不全が疑われる場合に限定する.適切な時期にストレス量のヒ

ドロコルチゾン補充を使用する.

・解説

SSCG2012では成人の敗血症性ショックに対するステロイドのルチーンでの使用は

推奨されていない[1].活性化プロテインCの効果を検討したRESOLVE試験の2次解

析結果からも,小児重症敗血症におけるステロイド使用は生命予後 (15.1%対

18.8%)及び循環作動薬投与期間(4.5日対4.8日)のいずれにも影響を与えない結果

であった[2].さらに,日本の小児重症敗血症の観察研究からも,ステロイドの投与が

生命予後改善に関連するという結果は得られていない[3].

一方で,SSCG2012の小児の項ではステロイド使用が推奨されている[1].この乖

離の原因として,欧米での小児の敗血症性ショックの原因に髄膜炎菌(Neisseria

meningitides; Meningococcus)があり,その電撃的かつ劇的な経過と死亡率の高さ

が小児医療に大きなインパクトを持っているという背景も考慮に入れる必要がある.

ただし,日本では当該疾患の頻度が低いことから,欧米と同程度には扱えない.

敗血症性ショックの小児のおよそ25%に絶対的副腎不全があると考えられている.

絶対的副腎不全の定義は,敗血症性ショックの診断より24時間以内に測定された血

清コルチゾールの基礎値が20µg/dL未満かつ,コルチコトロピン250µg静注後60分ま

での血清コルチゾール値の基礎値からの増加が9µg/dL以下,とされている[4].絶対

的副腎不全のリスクのある患者は,ショックに紫斑を伴う(=髄膜炎菌感染症を示唆),

慢性疾患のためにステロイド治療を受けていた,下垂体あるいは副腎機能に異常の

ある,等である.絶対的副腎不全を伴う敗血症性ショックによる死亡は発症から8時

間以内に起こる.従って,このような症例に限定したステロイドの経験的使用は否定

されない.

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25

初期治療はストレス量のヒドロコルチゾン静注である.“ストレス量“に関して定まった

ものはないが,1日量50 mg/m2(3-4分割投与)を基本とし,場合により100 mg/m2ま

で増量することが必要かもしれない[5].SSCG2012には,ショックから離脱するため

ヒドロコルチゾンが短期的に50 mg/kg/日まで必要になることもあるという記載がある

が[1],これはデングショック治療について検討した文献[6]に由来する.ただしこの文

献は50 mg/kgという高用量のヒドロコルチゾン単回投与を行ってもショックからの離

脱率は対照と比較して変わらなかったという否定的な結果を示している.よって,本

文では高用量ヒドロコルチゾンの記載は行わない.

・文献

1) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

2) Zimmerman JJ, Williams MD. Adjunctive corticosteroid therapy in pediatric

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3) Shime N, Kawasaki T, Saito O, et al. Incidence and risk factors for mortality

in paediatric severe sepsis: results from the national paediatric intensive care

registry in Japan. Intensive Care Med. 2012;38:1191-7.

4) Pizarro CF, Troster EJ, Damiani D, et al: Absolute and relative adrenal

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5) Shulman DI, Palmert MR, Kemp SF; Lawson Wilkins Drug and Therapeutics

Committee. Adrenal insufficiency: still a cause of morbidity and death in

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6) Sumarmo D, Talogo W, Asrin A, et al. Failure of hydrocortisone to affect

outcome in dengue shock syndrome. Pediatrics 1982; 69:45–9

2. 輸血

a.赤血球

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26

・意見

ヘモグロビン補正の目標は,心疾患のない場合,成人と小児で同じでよい.ScvO2

が低い場合(< 70%), Hb=10 g/dLを目標にし,初期治療後にショック,低酸素症から

回復したあとは,Hb > 7.0 g/dL とする.先天性心疾患を有する場合は,より高いヘ

モグロビン値を目標とする.

・解説

基礎疾患のない患者におけるヘモグロビン濃度の目標値は,循環不安定な場合

Hb > 10.0 g/dL,循環安定な場合 Hb > 7.0 g/dLであり[1],小児一般手術後でも同

様であるが[2],心疾患を有する場合は注意が必要である.先天性心疾患の発生率

は約1%であるが,小児の敗血症患者では基礎疾患に先天性心疾患を有する患者も

含む.チアノーゼの改善された心臓手術後の小児では Hb > 7.0 g/dLで合併症を有

意に増やさないという報告がある[3].心疾患を有する患者の貧血に対する心筋の耐

用力は非常に低く,安静時でさえ酸素摂取量は 大となっており,特に頻脈を有する

場合には余力がない.したがって,小児循環器領域のエキスパートの間では,チアノ

ーゼがない場合 Hb > 12-13 g/dL,チアノーゼが残存する場合Hb > 16-20 g/dLと高

めのヘモグロビン濃度が維持される[4,5].チアノーゼの残存する単心室修復(グレン,

フォンタン手術)の患者で,Hb > 7.0 g/dLを輸血の閾値とした場合,Hb > 10.0 g/dL

を輸血の閾値にした場合にくらべ有意に酸素摂取率が高い(31%±7% vs. 26%±6%)

とする研究があり,チアノーゼを有する(酸素飽和度が低い)場合,酸素供給を維持

するために通常より高いヘモグロビン濃度が必要とされる場合が多い[3,4].また,上

述のとおり根治術がなされていても単心室形態の修復(フォンタン手術)を受けている

患者では通常より高いヘモグロビン濃度が必要である[4].

・文献

1) Karam O, Tucci M, Ducruet T, et al. Red blood cell transfusion thresholds in

pediatric patients with sepsis. Pediatr Crit Care Med. 2011;12:512-8

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27

2) Rouette J, Trottier H, Ducruet T, et al. Red blood cell transfusion threshold in

postsurgical pediatric intensive care patients: a randomized clinical trial. Ann

Surg. 2010;251:421-7

3) Williems A, Harrington K, Lacroix J, et al. Comparison of two red-cell

transfusion strategies after pediatric cardiac surgery: a subgroup analysis.

Crit Care Med. 2010;38:649-56

4) Lacroix J, Demaret P, Tucci M. Red blood cell transfusion: decision making in

pediatric intensive care units. Semin Perinatol. 2012;36:225-31

5) Kwiatkowski JL, Manno CS. Blood transfusion support in pediatric

cardiovascular surgery, Transfus Sci. 1999;21:63-72

b. 血小板

・意見

血小板補正の目標は成人と小児で同じで,出血の危険性がない場合10,000/µL以

上,出血の危険性がある場合20,000/µL以上とする.また活動性出血がある,もしく

は手術・侵襲的な処置を行う場合は50,000/µL以上を目標に血小板投与を行う.

・解説

成人領域での敗血症性ショックにおける血小板輸血の閾値は,化学療法における

血小板減少に対する治療に基づいている.小児では,血小板減少性疾患における血

小板輸血は患者の状態が安定していれば>5,000/µl,出血もしくは感染のエピソード

があれば>10,000/µlの低めの閾値設定で患者予後は変わらないという報告もあるが

[1],敗血症性ショックにおいては成人と同様の補正目標とする.

・文献

1)Ferrara M, Capozzi L, Coppola A, et al. Prophylactic platelet transfusion in

children with thrombocytopenic disorders : A retrospective review, Hematology,

2007;12:297-9

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28

c. 凍結血漿

・意見

敗 血 症 に 起 因 す る 血 栓 性 紫 斑 病 ( 進 行 性 の 播 種 性 血 管 内 凝 固 症 候 群

[disseminated intravascular coagulation, DIC],二次性血栓性微小血管障害,あるい

は血栓性血小板減少性紫斑病)の治療に,血漿補充がある.

・解説

血小板減少を伴う多臓器不全や出血傾向のある小児では,DIC治療のひとつであ

る抗凝固因子補充を目的とした新鮮凍結血漿(fresh frozen Plasma, FFP)投与の

有効性を示唆する臨床報告やエキスパート意見がある[1-4].ショックに対する治療経

過に伴い,過凝固からの回復が期待できるが,凝固因子の著しい消費から出血傾向

が進む患者もいることに留意し,血漿補充の適用を判断する.

・文献

1) El-Nawawy A, Abbassy AA, El-Bordiny M, et al. Evaluation of early detection

and management of disseminated intravascular coagulation among Alexandria

University pediatric intensive care patients. J Trop Pediatr 2004; 50:339–47

2) Hazelzet JA, Risseeuw-Appel IM, Kornelisse RF, et al. Age-related

differences in outcome and severity of DIC in children with septic shock and

purpura. Thromb Haemost 1996; 76:932–8

3)Contreras M, Ala FA, Greaves M,et al. Guidelines for the use of fresh frozen

plasma. British Committee for Standards in Haematology, Working Party of the

Blood Transfusion Task Force. Transfus Med. 1992 ;2:57-63

4)Heim MU, Meyer B, Hellstern P.Recommendations for the use of therapeutic

plasma. Curr Vasc Pharmacol. 2009 ;7:110-9.

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29

3. 人工呼吸

・意見

人工呼吸管理は肺保護戦略に従う.

・解説

急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome , ARDS)患者にお

いては,一回換気量を6 mL/kg予測体重に制限し,プラトー圧を30 cmH2O以下に保

つことが推奨されている.またARDSでは肺胞が虚脱しやすいため,十分な呼気終末

陽圧(Positive End-expiratory Pressure, PEEP)をかけるとよい[1].成人でのPEEP

設定にはARDS Network standard PEEP strategyのPEEP設定表が用いられること

が多い[2].

小児では成人よりも胸郭が柔らかいため,プラトー圧の安全域は成人の 30 cmH2O

よりは低い可能性がある[3].一回換気量の制限に関しては,口元で換気量を測定し

ていない場合や,チューブリークがある場合は,正確に値をモニターできないので注

意を要する[4,5].小児では成人と異なり一回換気量は実体重を元に計算されること

が多い[6].

小児の ARDS における至適 PEEP の値や,至適 PEEP 設定の方法はわかってい

ない.ARDS-Network standard PEEP strategy の PEEP 設定表[2]が小児でも適応

できるか否かはわかっていない.

十分な機能的残気量を保つためにPEEPを増加させると,プラトー圧が30~35

cmH2Oを超えてしまうことがある.このような場合に気道圧開放換気 (airway

pressure release ventilation, APRV) や 高 頻 度 振 動 換 気 法 ( high-frequency

oscillatory ventilation, HFO)が使用されることがある.これらのモードでは,十分な

酸素化を得るために,通常の人工呼吸方法の平均気道内圧より高い平均気道内圧

を用いる.しかし,これらのモードがARDS患者の予後を改善すると証明した研究は

ない.むしろ,高い気道内圧をかければ,静脈還流量が減る可能性があり,より多く

の輸液負荷や昇圧薬が必要になり弊害が生じる可能性がある.実際,成人で行われ

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30

た2つのRCTでは,人工呼吸開始早期からHFOを導入してもARDS患者の予後を改

善しないか,または悪化させることが示されている[7,8].成人の重篤な敗血症性

ARDS(P/F≦150)では腹臥位管理を行うことが予後改善に有益な可能性がある[9].

小児では,腹臥位は酸素化を改善する可能性が高いが,予後を改善するという根拠

はない[10].

・文献

1) Briel M, Meade M, Mercat A, et al. Higher vs lower positive end-expiratory

pressure in patients with acute lung injury and acute respiratory distress

syndrome: Systematic review and meta-analysis. JAMA 2010; 303: 865–73.

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3) Clark RH, Slutcky AS, Gerstmann DR. Lung protective strategies of

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4) Cannon ML, Cornell J, Tripp-Hamel DS, et al. Tidal volumes for ventilated

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5) Main E, Castle R, Stocks J, et al. The influence of endotracheal tube leak on

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6) Khemani RG, Newth CJL. The design of future pediatric mechanical

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7) Ferguson ND, Cook DJ, Guyatt GH, et al. High-frequency oscillation in early

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9) Guerin C, Reignier J, Richard JC, et al; the PROSEVA Study Group. Prone

Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med.

2013 ; 368: 2159-68.

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31

10) Curley MA, Hibberd PL, Fineman LD, et al. Effect of prone positioning on

clinical outcomes in children with acute lung injury: a randomized controlled trial.

JAMA 2005; 294: 229–37.

4. 鎮痛/鎮静/薬物の毒性

a.鎮痛/鎮静

・意見

人工呼吸管理中は,鎮静スケールを利用して,目標の鎮静レベルを設定し,その目

標を達成するように鎮静剤の種類や投与法や投与量を設定・調整する.

・解説

成人では ICU 入室患者に対し,鎮静レベルの目標を定めて鎮静薬の使用を制限す

ることで,人工呼吸期間や ICU 滞在期間や入院期間が短縮することが示されている

[1].鎮静薬を一日一回中止することが,人工呼吸期間や ICU 滞在期間を短縮すると

されてきたが,それを支持しない結果も報告されており[2],鎮静薬の中断についての

結論はまだでていない.

小児では,ある特定の薬物や使用方法が重症敗血症患者の鎮静に適しているとい

う質の高いエビデンスはないが,鎮静スケールを利用して,目標の鎮静レベルを設定

し,その目標を達成するように鎮静剤の種類や投与法や投与量を設定・調整する.鎮

静レベルのスケールとしては、State Behavioral Scale(SBS)[3]などがある。 近の

小規模な RCT では,PICU 入室中の人工呼吸患者において,一日一回の鎮静薬の

中断が人工呼吸期間や ICU 滞在期間を短縮することが報告されている[4].しかし成

人での研究によれば中断中に看護師の仕事負荷が増加したり[2],譫妄が増加したり

[5],計画外抜管が増加する可能性も否定できないため,注意を要する.

プロポフォールは小児では致命的な代謝性アシドーシスとの関連が報告されている

ため,日本では基本的に小児の長期鎮静では使用禁忌である.SSCG2012 では,

敗血症性ショックではデクスメデトミジンは交感神経系を抑制するため避けた方がよ

い,と記載されているが[6],デクスメデトミジンが敗血症で予後を悪くするという根拠

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32

はない.デクスメデトミジンは小児で心拍数を低下させ,体血管抵抗を高め,心拍出

量を下げるという報告もあり[7],この特性と個々のショックの病態をよく評価すること

が使用の前提となる.

文献:

1) Brook AD, Ahrens TS, Schaiff R, et al. Effect of a nursing-implemented

sedation protocol on the duration of mechanical ventilation. Crit Care Med

1999; 27: 2609–15.

2) Mehta S, Burry L, Cook D, et al. Daily sedation interruption in mechanically

ventilated critically ill patients cared for with a sedation protocol: a

randomized controlled trial. JAMA 2012; 308: 1985–992.

3) Curley MA, Harris SK, Fraser KA, et al. State Behavioral Scale: a sedation

assessment instrument for infants and young children supported on

mechanical ventilation. Pediatr Crit Care Med. 2006 ;7:107-14.

4) Gupta K, Gupta VK, Muralindharan J, et al. Randomized controlled trial of

interrupted versus continuous sedative infusions in ventilated children.

Pediatr Crit Care Med 2012; 13: 131–5.

5) Strøm T, Martinussen T, Toft P. A protocol of no sedation for critically ill

patients receiving mechanical ventilation: A randomised trial. Lancet 2010;

375: 475–80.

6) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

7) Wong J, Steil GM, Curtis M, et al. Cardiovascular effects of

dexmedetomidine sedation in children. Anesth Analg. 2012;114:193-9

b.薬物の毒性

・意見

重症敗血症では薬物排泄が遅延する場合があり,薬物毒性のモニターを行う.

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33

・解説

重症敗血症の小児では肝機能や腎機能が低下していることが多く,薬物代謝や排

泄が遅延し,薬物による有害事象が発生する可能性が高い.また,明らかな肝機能

異常がなくても炎症の存在下では肝での代謝が減弱しているとの報告もある[1].した

がって,重症敗血症患者では,薬物毒性のモニター(随伴症状発生の有無,血中濃

度の測定など)を行うことが望ましい.

・文献

1) Carcillo JA, Doughty L, Kofos D, et al. Cytochrome P450 mediated-drug

metabolism is reduced in children with sepsis-induced multiple organ failure.

Intensive Care Med 2003; 29: 980–4.

5. Extracorporeal Membrane Oxygenation (ECMO)

・意見

標準的治療に不応性の敗血症性ショックや敗血症に合併した重症呼吸不全に対す

る治療オプションに ECMO がある.

・解説

海外からの 近の報告では,ECMO 管理の適応が広がり,敗血症性ショックに対

する循環補助として[1-4],あるいは敗血症に関連した急性呼吸不全に対する呼吸補

助として ECMO 管理が導入され,良好な成績が得られている.ECMO 管理を施行し

た敗血症患者の生存率は新生児では 73%,小児においても 39%と報告されている

[5].また,敗血症患者で呼吸不全により ECMO 管理を要した症例の 41%が生存退

院したと報告されている[6].

ただし,こうした良好な成績の背景には,重症呼吸循環不全を適応とした症例の豊

富な経験があり,これらの経験を踏まえた上で適応を拡大した結果であることが推測

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34

される.

今後,本邦においても敗血症性ショックや敗血症に関連した重症呼吸不全に対する

ECMO管理の導入は考慮されるべきであるが,そのような症例は専門施設へ搬送・

集約化されることが望まれる.

・文献

1) Meyer DM, Jessen ME. Results of extracorporeal membrane oxygenation in

children with sepsis: the Extracorporeal Life Support Organization. Ann Thorac

Surg. 1997;63:756-61

2) Goldman AP, Kerr SJ, Butt W, et al. Extracorporeal support for intractable

cardiorespiratory failure due to meningococcal disease. Lancet. 1997;349:466-9

3) Bartlett RH. Extracorporeal support for septic shock. Pediatr Crit Care Med.

2007;8:498-9

4) MacLaren G, Butt W, Best D, et al. Central extracorporeal membrane

oxygenation for refractory pediatric septic shock. Pediatr Crit Care Med.

2011;12:133-6

5) Skinner SC, Iocono JA, Ballard HO, et al. Improved survival in venovenous vs

venoarterial extracorporeal oxygenation for pediatric noncardiac sepsis patients:

a study of the Extracorporeal Life Support registry. J Ped Surg. 2012;47:63-7

6) Domico MB, Riout DA, Bronicki R, et al. The impact of mechanical ventilation

time before initiation of extracorporeal life support on survival in pediatric

respiratory failure: a review of the extracorporeal life support registry. Pediatr

Crit Care Med. 2012;12:16-21

6. 血糖コントロール

・ 意見

成人同様の目標血糖値(<=180 mg/dL)で血糖管理を行う.新生児や小児のインスリ

ン治療時は同時に糖質投与を行う.

・ 解説

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35

成人同様小児においても,高血糖と高い死亡率,高血糖と入院日数の長さの関連

を示唆する報告がある[1-7].一方,小児の高血糖では,インスリン分泌が不足してい

る場合やインスリン抵抗性が高い場合など原因が様々であり,また小児では糖の備

蓄が少ないことからインスリン投与時には頻繁な血糖モニタリングや糖質の投与が重

要であると考えられる[1-7].これらの背景は,全世界共通と考えられる.

1) Branco RG, Garcia PC, Piva JP, et al. Glucose level and risk of mortality in

pediatric septic shock. Pediatr Crit Care Med 2005;6:470–2

2) Faustino EV, Apkon M. Persistent hyperglycemia in critically ill children. J

Pediatr 2005;146:30–4

3) Jeschke MG, Kulp GA, Kraft R, et al. Intensive insulin therapy in severely

burned pediatric patients: A prospective randomized trial. Am J Respir Crit Care

Med 2010; 182:351–9

4) Day KM, Haub N, Betts H, et al. Hyperglycemia is associated with morbidity in

critically ill children with meningococcal sepsis. Pediatr Crit Care Med 2008;

9:636–40

5) Garcia Branco R, Tasker RC, Ramos Garcia PC, et al: Glycemic control and

insulin therapy in sepsis and critical illness. J Pediatr (Rio J) 2007; 83:S128–36

6) Verhoeven JJ, den Brinker M, Hokken-Koelega AC, et al. Pathophysiological

aspects of hyperglycemia in children with meningococcal sepsis and septic

shock: A prospective, observational cohort study. Crit Care 2011; 15:R44

7) Vlasselaers D, Milants I, Desmet L, et al. Intensive insulin therapy for patients

in paediatric intensive care: A prospective, randomized controlled study. Lancet

2009; 373:547–56

7. 利尿薬と腎代替療法

・意見

ショックを離脱した後にも尿量が乏しく水分過剰による弊害が危惧される場合,水分

過剰への対策を講じる.手法として,利尿薬や,腎機能低下時では血液浄化療法が

ある.

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36

・解説

急性期にショックからの離脱を目的とした大量輸液を行うことに異論はないと思わ

れるが,問題は,大量輸液後に水分過剰がある場合への対処である.初期輸液とし

て 40 mL/kg を投与した場合,20 mL/kg に比べて生命予後は変わらないが肝腫大の

発生率が増加したとの報告がある[1].

水分過剰量の目安を,明確に体重の何%以上と定義できるようなデータはないが,

持続血液濾過を受けた小児 113 人を対象とした後方視的研究において,生存者と死

亡者の水分過剰量は 7.8% vs 15.1%で,生存者において水分過剰量が有意に少な

かったという報告がある[2].また体重の 10%以上の水分過剰もしくは新たな肝腫大

やラ音聴取などがみられたら,介入を推奨する報告や[3],13 施設 297 人の前向き観

察研究で,水分過剰量が 1%上がるごとに死亡率が 3%上昇するとの報告もあり[4],

SSCG2012 では,水分過剰量の目安は体重の 10%と設定されている[5].ただし,

10%の定量評価は難しい.

持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy,CRRT)が間歇的腎

代替療法(intermittent renal replacement therapy,IRRT)に比較し予後を改善する

とのエビデンスはない.SSCG2012 では,循環動態が不安定な患者には体液バラン

ス管理の点からも IRRT ではなく CRRT が推奨されている[5].小児は IRRT では循

環動態が不安定になりやすいことを考慮すると [6],腎代替療法としては CRRT が望

ましいと考えられるが,各施設で慣れた方法を選択してよい.

文献

1) Santhanam I, Sangareddi S, Venkataraman S, et al. A prospective

randomized controlled study of two fluid regimens in the initial management

of septic shock in the emergency department. Pediatr Emerg Care.

2008;24:647-55

2) Foland JA, Fortenberry JD, Warshaw BL, et al. Fluid overload before

continuous hemofiltration and survival in critically ill children: A retrospective

analysis. Crit Care Med 2004; 32:1771–6

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37

3) Brierley J, Carcillo JA, , Zuckerberg A, et al. Clinical practice parameters for

hemodynamic support of pediatric and neonatal septic shock: 2007 update

from the American College of Critical Care Medicine. Crit Care Med.

2009;37:666-88

4) Sutherland SM, Zappitelli M, Goldstein SL, et al. Fluid overload and

mortality in children receiving continuous renal replacement therapy: the

prospective pediatric continuous renal replacement therapy registry. Am J

Kidney Dis. 2010;55:316-25

5) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637

6) Brophy PD. Renal supportive therapy for pediatric acute kidney injury in the

setting of multiorgan dysfunction syndrome/sepsis. Semin Nephrol 2008;

28:457–69

8. 栄養管理

・意見

消化管が利用できるのであれば経腸栄養を行い, 利用できなければ経静脈栄養を

行う.

・解説

小児敗血症患者において,経腸栄養が予後改善に有用であったとされる報告はな

いが,腸管粘膜構造の維持や,それによるbacterial translocationの抑制など,経腸

栄養自体の利点が考えられるため,消化管が利用可能ならば,経腸栄養を行う.敗

血症性ショックでも経腸栄養は可能であるとされるが,腹部膨満や下痢などの経腸栄

養に伴う合併症の頻度は高いとされ注意を要する[1].

SSCG2012では,10%ブドウ糖輸液(小児では常にナトリウムを含む)の維持輸液

量を投与することで,ブドウ糖の必要量が増加している敗血症の新生児や小児でも,

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38

必要な糖分の供給が可能,と記載されている[2,3].しかし,急性期には,むしろこの

量では高血糖になることもあり注意を要する.

・文献

1) López-Herce J, Mencía S, Sánchez C, et al. Postpyloric enteral nutrition in

the critically ill child with shock: a prospective observational study. Nutr J.

2008; 7: 6-11

2) Sheridan RL, Yu YM, Prelack K, et al. Maximal parenteral glucose oxidation

in hypermetabolic young children: A stable isotope study. JPEN J Parenter

Enteral Nutr 1998; 22:212–6

3) Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; Surviving Sepsis Campaign

Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving sepsis

campaign: international guidelines for management of severe sepsis and

septic shock: 2012. Crit Care Med. 2013;41:580-637

9. 免疫グロブリン

・意見

免疫グロブリン静注製剤を使用する十分な根拠はない.

・解説

免疫グロブリンに関する 近の大規模研究は二つある.一つはWerdanらによる成

人の大規模な多施設RCT(n=624)[1],もう一つはBrocklehurstらによる新生児敗血

症に対する同様の研究デザインのもの(n=3493)[2]である.いずれの研究において

も免疫グロブリン静注製剤の治療効果は認められなかった.前者では,初日600

mg/kg,翌日300 mg/kg,後者では500 mg/kgx2回の投与が行われている.いずれも,

日本での重症感染症に対する保険承認量(150 mg/kg)を超える投与量であり,病原

微生物に対する中和抗体のみならずFcγ受容体を介した免疫制御効果をも期待して

いる可能性があるが,否定的な結果であった.さらに,日本の小児重症敗血症の観

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39

察研究からも,免疫グロブリンの投与が生命予後改善に関連するという結果は得ら

れていない[3].

以前には,小児を対象とした小規模研究で免疫グロブリンの効果を示したものが存

在し[4],新生児を対象としたシステマティックレビューでも効果有りとされていた[5].し

かし,先に挙げた,成人と新生児における良くデザインされた二つの大規模研究の一

貫した否定的結果から,現時点で小児重症敗血症での免疫グロブリン静注製剤使用

を推奨する傍証には欠けているとするのが妥当である.

・文献

1) Werdan K, Pilz G, Bujdoso O, et al; Score-Based Immunoglobulin Therapy of

Sepsis (SBITS) Study Group. Score-based immunoglobulin G therapy of

patients with sepsis: The SBITS study. Crit Care Med 2007; 35:2693–701

2) Brocklehurst P, Farrell B, King A, et al; INIS Collaborative Group. Treatment

of neonatal sepsis with intravenous immune globulin. N Engl J Med 2011;

365:1201–11

3) Shime N, Kawasaki T, Saito O, et al. Incidence and risk factors for mortality

in paediatric severe sepsis: results from the national paediatric intensive care

registry in Japan. Intensive Care Med. 2012;38:1191-7

4) El-Nawawy A, El-Kinany H, Hamdy El-Sayed M, et al. Intravenous

polyclonal immunoglobulin administration to sepsis syndrome patients: A

prospective study in a pediatric intensive care unit. J Trop Pediatr 2005;

51:271–8

5) Ohlsson A, Lacy J. Intravenous immunoglobulin for suspected or

subsequently proven infection in neonates. Cochrane Database Syst Rev.

2010;(3):CD001239 FOR PUBLIC

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Table 1. Age specific parameters for the diagnosis of SIRS and

hypotension

HR, heart rate; RR, respiratory rate; WBC, white blood cell count

Age

group

HR

(bpm)

(bpm)

RR

(rpm)

WBC

(x103/mm3)

Hypotension

(mmHg)

0d~1w

1w~1m

1m~1y

2~5y

6~12y

13~18y

>180 or <100

>180 or <100

>180 or <90

>140

>130

>110

>50

>40

>34

>22

>18

>14

>34

>19.5 or <5

>17.5 or <5

>15.5 or <6

>13.5 or <4.5

>11 or <4.5

<59

<79

<75

<74

<83

<90

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Appendix 1. The 90th and 99th percentile of respiratory rate in Fleming’s study

Age group 90th 99th

0-3m 57 66

3-6m 55 64

6-9m 52 61

9-12m 50 58

12-18m 46 53

18-24m 40 46

2-3y 34 38

3-4y 29 33

4-6y 27 29

6-8y 24 27

8-12y 22 25

12-15y 21 23

15-18y 19 22

Fleming S, et al, Normal ranges of heart rate and respiratory rate in children from birth to 18 years of age: a systematic review of observational studies. Lancet. 2011;377:1011-8.

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Appendix 2. The 95th and 99th percentile of respiratory rate in Bonafide’s study

Age group 95th 99th

0-3m 62 76

3-6m 58 71

6-9m 54 67

9-12m 51 63

12-18m 48 60

18-24m 45 57

2-3y 42 54

3-4y 40 52

4-6y 37 50

6-8y 35 46

8-12y 31 41

12-15y 28 35

15-18y 26 32 Bonafide CP, Brady PW, Keren R, et al. Development of heart and

respiratory rate percentile curves for hospitalized children. Pediatrics. 2013;131:e1150-7.

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Appendix 3. The 97th percentile of respiratory rate in Nijman’s study

Age group 97th

1-12m 72

12-24m 60

2- <5y 44

5-16y 41

*data for body temperature of 38.0-38.9℃ are shown

Nijman RG, Thompson M, van Veen M, et al. Derivation and validation of age and temperature specific reference values and centile charts to predict lower respiratory tract infection in children with fever: prospective observational study. BMJ. 2012 Jul 3;345:e4224.

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Appendix 4. Hypotension cut–offs in SPROUT study

Age

group

Hypotension

(mmHg)

0d~1w

1w~1m

1m~1y

2~5y

6~12y

13~18y

<60

<65

<70

<75

<85

<90

http://sprout.research.chop.edu/

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Table 2. Organ dysfunction criteria

Cardiovascular

Respiratory

Neurologic

Hematologic

Despite administration of isotonic intravenous fluid bolus

≧40 mL/kg in 1 hr

① Hypotension table 1 & appendix 4

② Need for vasoactive drug to maintain blood pressure

③ Two of the following

Unexplained metabolic acidosis: base deficit >5.0 mEq/L Increased arterial lactate >3.0 mmol/L(27 mg/dL) Oliguria: urine output <0.5 mL/kg/hr Prolonged capillary refill >5 secs Core to peripheral temperature gap >3°C

① PaO2/FIO2 <300 torr in absence of cyanotic heart

disease or preexisting lung disease

② PaCO2 > 65 torr or 20 torr over baseline PaCO2

③ FIO2 > 50% to maintain saturation ≧92%

④ Need for nonelective invasive or noninvasive

mechanical ventilation

① GCS ≦11

② Acute change in mental status with a decrease in GCS

≧3 points from abnormal baseline

① Platelet count <80,000/mm3 or a decline of 50% in platelet count from highest value recorded over the past 3 days (for chronic hematology/oncology patients) ② PT-INR > 2.0

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Renal

Hepatic

① Serum creatinine ≧2 times upper limit of normal for

age appendix 5 or 2-fold increase in baseline creatinine

① Total bilirubin ≧4 mg/dL (not applicable for newborn)

② ALT 2 times upper limit of normal for age appendix 5

GCS, Glasgow Coma Score; PT-INR, International normalization ratio for prothrombin time; ALT, alanine aminotransferase

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Appendix 5.Creatinine and ALT cutoffs

Creatinine

ALT

boy girl boy girl

Age group

97.5%tiles

cutoffs 97.5%tiles

cutoffs 97.5%tiles

cutoffs 97.5%tiles

cutoffs

<1m 0.32 0.64 0.32 0.64 45 90 45 90

1-<2m 0.31 0.62 0.31 0.62 50 100 50 100

2-<3m 0.3 0.6 0.3 0.6 54.5 109 54.5 109

3-<4m 0.3 0.6 0.3 0.6 56 112 56 112

4-<5m 0.3 0.6 0.3 0.6 56 112 56 112

5-<6m 0.3 0.6 0.3 0.6 55.5 111 55.5 111

6-<7m 0.3 0.6 0.3 0.6 54.5 109 54.5 109

7-<8m 0.3 0.6 0.3 0.6 53 106 53 106

8-<9m 0.3 0.6 0.3 0.6 50.5 101 50.5 101

9-<10m 0.31 0.62 0.31 0.62 48 96 48 96

10-<11m 0.31 0.62 0.31 0.62 45 90 45 90

11-<12m 0.32 0.64 0.32 0.64 42 84 42 84

1yr 0.33 0.66 0.33 0.66 38.4 76.8 38.4 76.8

2yr 0.38 0.76 0.35 0.7 34 68 34 68

3yr 0.4 0.8 0.38 0.76 30 60 30 60

4yr 0.43 0.86 0.41 0.82 28 56 28 56

5yr 0.47 0.94 0.45 0.9 28 56 27 54

6yr 0.5 1 0.48 0.96 28 56 27 54

7yr 0.53 1.06 0.51 1.02 28 56 27 54

8yr 0.57 1.14 0.55 1.1 28.5 57 27 54

9yr 0.6 1.2 0.6 1.2 29 58 27 54

10yr 0.65 1.3 0.65 1.3 30 60 27 54

11yr 0.7 1.4 0.69 1.38 31 62 27.5 55

12yr 0.78 1.56 0.71 1.42 32 64 28 56

13yr 0.85 1.7 0.73 1.46 33 66 28 56

14yr 0.9 1.8 0.74 1.48 34 68 28.5 57

15yr 0.95 1.9 0.75 1.5 35 70 29 58

ALT, alanine aminotransferase

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田中敏章,山下敦,市原清志.潜在基準値抽出法による小児臨床検査基準範囲の設定.日

本小児科学会雑誌;112:1117—1132, 2008 より引用

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小児敗血症性ショック初期治療アルゴリズム

 ・末梢、中枢の脈拍触知  ・末梢温と中枢温の差  ・皮膚の色、温度  ・毛細血管再充満時間  ・血圧、心拍数  ・意識レベル  ・尿量  ・心エコー

・気道確保後、高流量酸素投与  ・静脈路あるいは骨髄路確保  ・循環不全の評価(右記)  ・全身性炎症反応の評価

5分以内に

意識低下および組織灌流悪化

初期治療と反応性評価

・20ml/kgの等張性晶質液:   組織灌流が改善するか、湿性ラ音や肝腫大が出現   するまで最大60ml/kg(またはそれ以上)ボーラス投与  ・低血糖と低カルシウム血症の補正  ・血液培養後、抗菌薬を投与  

輸液に反応なし

・中心静脈路確保  ・観血的動脈圧測定  ・気管挿管/人工呼吸開始を考慮  ・末梢が冷たければドパミンあるいはアドレナリンを使用  ・末梢が温かければノルアドレナリンを使用  

カテコラミン不応性ショック

・CVP,  AP,  ScvO2をモニタリング*1  ・年齢別正常血圧とScvO2>70%を目標

再評価と追加治療

ヒドロコルチゾン補充 あり  

なし  

・アドレナリンと輸液調節  ・PDEⅢ阻害薬やニトロ化合物を考慮  

・アドレナリンと輸液調節  ・PDEⅢ阻害薬やドブタミンを考慮  

・ノルアドレナリンと輸液調節  ・低血圧が持続すれば、バソプレシン       または低用量アドレナリンを考慮  

カテコラミン不応性ショックの持続  

・心タンポナーデ、気胸、腹腔内圧上昇への対処  

体外循環補助(ECMO)も考慮  

輸液不応性ショック

・副腎皮質機能不全の可能性

15分以内に

60分以内に

ドパミン:5〜10µg/kg/min アドレナリン:0.05~0.3µg/kg/min ノルアドレナリン:0.05~0.3µg/kg/min

低血圧、末梢が温かい  

低血圧、末梢冷感あり  

血圧正常、末梢冷感あり  

敗血症性ショックの疑い

追加治療と反応性評価

反応なし

図1

*1  AP:動脈圧,  CVP:中心静脈圧,  ScvO2  :中心静脈血酸素飽和度