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科学技術振興調整費 成果報告書 ゲノムフロンティア開拓研究 事後評価 「多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性 に関する研究」

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  • 科学技術振興調整費

    成果報告書

    ゲノムフロンティア開拓研究 事後評価

    「多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性

    に関する研究」

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究計画の概要 p.1

    研究成果の概要 p.5

    研究成果の詳細報告

    1. 質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のための

    DNAチップ(MSチップ)の開発に関する研究 p.13

    2. 長鎖長 DNA質量測定のためのイオン化機構の理論解析 p.33

    3. ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカー30,000個の設定と

    各対立遺伝子頻度の検索に関する研究 p.49

    4. 多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の感受性遺伝子の相関解析によるマッピングに関する研究

    4.1. 多型マイクロサテライトマーカーを用いた日本人の遺伝的特性の検討 p.58

    4.2. 多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の感受性遺伝子の相関解析による

    マッピングに関する研究 p.64

    5. 多型マイクロサテライトマーカーの抽出プログラムの作成とデータベースの構築 p.87

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    1

    研究計画の概要

    ■ 研究の趣旨

    ヒトゲノムの全塩基配列決定が完了した現在、今後の「ポストゲノムシークエンシング」として大きな課題の一つは、同定さ

    れた遺伝子の機能解析であるとは間違いない。そのための有力なアプローチである、ある遺伝的多型とヒトでみられる個性

    的な生物現象との相関を追求することは、遺伝子とヒトが示す表現型の機能的因果関係、例えば疾患についてはその遺伝

    要因を解明することが可能となる。このような多様性検索こそが、実験動物で行われる遺伝子ノックアウト操作が許されない

    ヒトについての、ゲノム機能の解析の突破口を開く、と期待される。

    そこで本研究では、世界的に進行しようとしているヒトゲノム多様性プロジェクトの標的である SNP(single nucleotide

    polymorphism: 単一ヌクレオチド多型;遺伝子内の一塩基置換、欠失、挿入による差異にもとづく多型)に比べ、多型に富

    み、したがってより精度の高いマッピングが可能なマイクロサテライトに注目した。すなわち、本研究はまず大量のマイクロサ

    テライトについて、その繰り返し多型を質量分析法により検索しうる DNAチップ技術(MSチップ)を開発し、続いてこの技術

    を用いてゲノムワイドにヒトの多型マイクロサテライト 30,000個を収集し、さらにマイクロサテライトを多型遺伝マーカーとする

    相関解析により、複合遺伝疾患の感受性遺伝子など、ヒト表現型を規定している遺伝要因を同定することを目的とする。こ

    のような多型マイクロサテライトを用いたゲノム多様性に関する大規模な研究は、疾患に関係する SNP の同定を効率的に

    推進し、疾患の治療と予防、創薬に役立つのみならず、学習、記憶などの高次行動を始め、ヒトの遺伝子やゲノム機能など、

    生物種として、生命現象の分子レベルでの理解へと展開するであろう。

    ■ 研究の概要

    本プロジェクトでは、ヒトゲノムは塩基配列情報を利用して、多型マイクロサテライトを 30,000 個収集・設定し、それらの多

    型マイクロサテライトを遺伝マーカーとして、相関解析により複合遺伝性疾患の感受性遺伝子を同定することを最終目標と

    する。そこで以下に示す 5 つのサブテーマに分かれ研究を実施するが、それぞれのサブテーマにて情報を共有し、さらに

    相互にサポート体制を構築することで、本プロジェクト全体を有機的に連携し、目標達成を目指す。

    1.質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のための DNA チップ技術(MS チップ)の開発に関する研究

    マイクロサテライト繰り返し多型の検索を正確かつ迅速に行うべく、分子量の差を非常に高感度で検出でき、かつ低コス

    トなMALDI-TOF型質量分析法に着目して高分子DNA測定技術の開発を推進する。まず、長鎖長DNAを高精度に測定

    するために、質量分析の至適条件の検討および測定精度に極めて重要な役割を果たすマトリックスの検索を実施する。さ

    らに、このマトリックスの検索は従来経験則に基づいて行われていたものだが、2)のサブテーマと連携し、より効率のよいス

    クリーニング方法の開発を目指す。

    さらにここまでに得られた基礎的知見を基に、実用化へ向け、MSチップの開発を遂行する。まず、低密度のMSチップに

    て試作・試験を行い、明らかになった問題点に対し改良を加え、次に高密度MSチップ作製に着手する。さらに、これらのシ

    ステムをより実用的に運用するため、アプリケーションを開発する。またこの目標達成には、多型マイクロサテライトマーカー

    の詳細な情報が必須であり、サブテーマ 3)からのその情報提供を受ける。

    2.長鎖長 DNA質量測定のためのイオン化機構の理論解析

    MALDI-TOF/MSを用いてDNAの質量を測定する時に必須であるマトリックスの探索は、一般的に経験にのみ頼ってい

    る。そこでDNAの質量をMALDI-TOF/MSを用いて測定するためにマトリックスに求められる性質を理論的に検討し、既存

    の化合物データベースに対してコンピューター上でスクリーニングすることを本サブテーマは目的とする。まず

    MALDI-TOF/MSで質量測定を可能にするマトリックスに求められる物性について検討する。さらに、DNA鎖とマトリックスと

    の特異的相互作用を解析するために molecular dynamics によるシミュレーションを実施する。次に質量測定において問題

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    2

    となる DNA の断片化について、特にグアニンの解裂モデルについて量子力学的計算を用いて検証を行う。最終的にこれ

    らの解析で得られた知見を元に、マトリックスの候補を選択し、実験的にその特性を追求する。

    3.ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカー30,000個の設定と各対立遺伝子頻度の検索に関する研究

    ゲノムワイドに複合遺伝性疾患の感受性遺伝子を検出するには、マイクロサテライトのような多型性の高いマーカーを用い

    た方が、より効率的であると考えられる。そこで我々は、多型マイクロサテライトマーカーを公開されたヒトゲノム配列上に設定

    するというプロジェクトを計画した。またこれにはコストならびに作業効率を考慮し Pooled DNA 法の採用を検討する。最終的

    にはゲノムワイドに多型マイクロサテライトマーカーを高密度に配置することが目標である。また、この目標を完遂するにはサ

    ブテーマ 5)で開発予定のアプリケーションやデータベースが必須であることから、密に連携を取り研究を推進する。

    一方、一般的に遺伝マーカーを使用した相関解析を実施する際、対象とする集団内部に遺伝的構成の異なる分集団

    (subpopulation)が存在する階層化(stratification)と呼ばれる現象が生じている場合には、遺伝的相関解析の結果に高い

    偽陽性が含まれかねないという重大な問題が生じる。そこで、多型マイクロサテライトマーカーを用いて日本人集団中での

    階層化の諸検討も実施する。

    4.多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の感受性遺伝子の相関解析によるマッピングに関する研究

    本プロジェクトの最終目標はゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカーを用いて複数個の感受性遺伝子を同定する

    ことである。しかしながら、ゲノムワイドな解析は多くの時間と多くのコストを消費せざるを得ない。そこで、100 以上の疾患と

    の相関が知られているアリルを持つ遺伝子群が存在する HLA 領域(3.6Mb)をモデル領域と位置づけ、この領域について

    多型マイクロサテライトマーカーならびに SNP マーカーを用いて、複合遺伝性疾患の感受性遺伝子のマッピングを実施す

    ることで、ゲノムワイドな解析へ向け予備的知見を得る。

    さらに、ゲノムワイドに設定が完了した多型マイクロサテライトマーカーを用いて実際に複合遺伝性疾患のゲノムワイドな

    感受性遺伝子のマッピングにチャレンジする。またこの実験から、マーカー数 X アリル数 X 対象集団数、をさらに超越する

    膨大なデータ発生すると予想されることから、アプリケーションやデータベースが必要となるとともに遺伝学的な考察も欠か

    せないことから、サブテーマ 5)との情報交換ならびに活発な議論を実施する。

    5.多型マイクロサテライトマーカーの抽出プログラムの作成とデータベースの構築

    ヒトゲノム全体にわたる多型マーカーの収集という本研究の目的においては、およそ3万のマーカーを目標としている。こ

    のような大量のマーカーを設計するに当たって、これまで行われてきたような既製のソフトウェアによる管理だけでは限界が

    ある。さらに、疾患関連遺伝子を発見する際に必要な大量の実験結果を効率良く格納するシステムも必要である。そこで、

    サブテーマ 3)ならびに 4)と密接に連携を取りつつ、複数種のデータベースならびにアプリケーションを作製するとともに、実

    用的な解析総合システムを構築し、強力なサポートを展開する。またこれにとどまらず、膨大な多型マイクロサテライトマー

    カーから得られる情報から遺伝学的な解析を実施することにより、サブテーマ 4)への学術的な支援を行う。

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    3

    ■ 実施体制

    研 究 項 目 担当機関等 研究担当者

    1.質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のた

    めのDNAチップ(MSチップ)の開発に関する研

    2.長鎖長 DNA質量測定のためのイオン化機構の理

    論解析

    3.ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカー

    30,000個の設定と各対立遺伝子の頻度に検索

    に関する研究

    4.多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の感

    受性遺伝子の相関解析によるマッピングに関す

    る研究

    5.多型マイクロサテライトマーカーの抽出プログラム

    の作成とデータベースの構築

    (株)島津製作所 分析計測事業部

    みずほ情報総研(株) サイエンスソリ

    ューション研究部 バイオテクノロジ室

    東海大学医学部基礎医学系分子生

    命科学

    東海大学医学部基礎医学系分子生

    命科学

    文部科学省 国立遺伝学研究所

    ○藤分 秀司

    ○稲垣 祐一郎

    ◎猪子 英俊

    (教授)

    ◎猪子 英俊

    (教授)

    ○五條堀 孝

    (教授)

    ◎ 代表者

    ○ サブテーマ責任者

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    4

    ■ 研究推進委員会

    氏 名 所 属

    ◎笹月 健彦

    辻 省次

    徳永 勝士

    木村 彰方

    谷口 寿章

    田代 弘行

    国立国際医療センター研究所 所長

    新潟大学脳研究所神経内科学教室 教授

    東京大学大学院医学系医学研究科人類遺伝学教室 教授

    東京医科歯科大学難治疾患研究所成人疾患研究部門 教授

    理化学研究所播磨研究所 メンブレンダイナミクス研究グループ チームリーダー

    ㈱不二家 バイオサイエンス研究所 所長

    ◎ 研究推進委員長

    ■ 研究連絡会議

    氏 名 所 属

    猪子 英俊

    五條堀 孝

    木村 穣

    安藤 麻子

    田宮 元

    椎名 隆

    岡 晃

    山形 哲司

    モク・ジウォン

    牧野 悟士

    林 英樹

    東内 健一

    木村 哲晃

    遠藤 高帆

    権田 誠

    藤分 秀司

    知久 季倫

    稲垣 祐一郎

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 教授

    文部科学省 国立遺伝学研究所 教授

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 教授

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 講師

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 助教授

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 講師

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 助手

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 助手

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 特定研究員

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 大学院生

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 大学院生

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 大学院生

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 大学院生

    東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 助手

    (株)島津製作所 分析計測事業部

    (株)島津製作所 分析計測事業部

    みずほ情報総研(株) サイエンスソリューション研究部 バイオテクノロジ室

    みずほ情報総研(株) サイエンスソリューション研究部 バイオテクノロジ室

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    5

    研究成果の概要

    ■ 総 括

    ゲノムワイドに複合遺伝性疾患の感受性遺伝子を検出するには、マイクロサテライトのような多型性の高いマーカーを用

    いた方が、より効率的であると考えられる。また、マイクロサテライトは多型を生じるメカニズムがその繰り返し数に依存して

    単純であることから、迅速に多型マーカーの設定が可能であると期待される。そこで我々は、多型マイクロサテライトマーカ

    ーを公開されたヒトゲノム配列上に設定するというプロジェクトに取り組んできた。複合遺伝性疾患の感受性遺伝子を同定

    するために、ゲノムワイドに多型マイクロサテライトマーカーを 3 万個設定することが本研究の最終目標である。これを実現

    するため、多型マイクロサテライトマーカーを効率的に検索する技術・方法を確立し、多型マイクロサテライトマーカー合計

    34,269個を収集することに成功した。

    さらに、開発に成功したこのマーカー群を用い、関節リウマチを対象として、ゲノムワイドな遺伝的相関解析にチャレンジし

    た。この結果、7個の感受性遺伝子を同定することができた。これらの内 2個は既に明らかになっているものであったが、その

    他5個は今までに報告されていない新規の感受性遺伝子であった。これにより、マイクロサテライトを多型遺伝マーカーとした

    相関解析による新規要因遺伝子同定という、本プロジェクトで設定された最終目標の達成を具体的に示すことに成功した。

    また、将来的に、これらの収集した多型マイクロサテライトマーカーを利用して疾患感受性遺伝子の探索を行う場合、タイピン

    グに費やす時間とコストが遺伝子を同定するまでの研究速度を大きく左右すると言える。従って、このような研究を進めていくに

    は、より大量・迅速・安価な多型解析を可能とする新規技術の開発が必要不可欠である。そこで、DNA チップのハイスループッ

    ト性と、質量分析法の迅速性かつ分解能の高い特性に着目し、これらの技術を合わせたマイクロサテライトのタイピング法の開

    発に着手した。この結果、同技術が実現可能であることを示し、さらに実用可能レベルまで到達することに成功した。

    最終的に、ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカーの設定にとどまらず、質量分析を利用したタイピング方法を構

    築するとともに、さらにこれらの実験を支援するインフラの整備も完了したことにより、今までアプローチが困難であった複合

    遺伝性疾患感受性遺伝子マッピングの総合システムがここに完成した。

    ■ サブテーマ毎、個別課題毎の概要

    1.質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のための DNA チップ技術(MS チップ)の開発に関する研究

    最終的には高密度 MS チップの実現へ向け、基礎的知見を得るため、質量分析そのものの至適条件およびマトリックス

    を見出した。続いて、低密度の MS チップにて試作・試験を行い、明らかになった問題点に対し改良を加えた。次に高密度

    MS チップ作製に着手し、チップ基材、スポッターならびに測定条件の至適化に成功した。続いて、これらのシステムをより

    実用的に運用するため、実験データからマイクロサテライトのアリルデータを自動的に算出できるアプリケーションの作製も

    完了した。

    2.長鎖長 DNA質量測定のためのイオン化機構の理論解析

    より長鎖長 DNA 鎖の MALDI-TOF/MS による質量測定を目指し、(1)MALDI-TOF/MS の解像度と相関のある物性値

    の探索を行い、(2)A鎖とマトリックスとの結合様式の解析結果、及び(3)グアニン塩基による DNA鎖断片化モデルの検証

    の結果を用いて、Maybridge社から公開されている 59,676化合物について(4)新規候補マトリックスの in silico スクリーニン

    グを行った。この結果、13化合物を新規候補マトリックスとして選別し、その中の化合物の1つを用いてにて 100塩基ランダ

    ム配列 DNAを検出することが出来た。

    3.ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカー30,000個の設定と各対立遺伝子頻度の検索に関する研究

    コスト削減および作業効率化を図るためPooled DNA 法の至適化を行い、さらにこの手法を応用することにより 34,269個

    の多型マイクロサテライトマーカーをゲノムワイドに 83.2kb/マーカーの密度で配置することに成功した。

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    6

    さらに日本人集団中での階層化の諸検討を行った結果、日本人集団では弥生期以降には集団の流入混合は知られて

    おらず、複合性疾患の遺伝的相関解析において、異なる系統の混合に由来する階層化を考慮する必要は無いと考えられ

    た。したがって本プロジェクトにて開発した多型マイクロサテライトマーカーによるゲノムワイドな遺伝的相関解析が可能であ

    ることを理論的に裏付けることに成功した。

    4. 多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の感受性遺伝子の相関解析によるマッピングに関する研究

    HLA 領域(3.6Mb)をゲノムワイド研究のモデル領域と位置づけ、この領域について多型マイクロサテライトマーカーなら

    びに SNP マーカーを用いて、関節リウマチおよび尋常性乾癬の感受性遺伝子のマッピングを実施した結果、多型マイクロ

    サテライトマーカーは 1個/100kb配置すれば感受性遺伝子を絞り込めることも明らかなり、予定していたゲノムワイドな多型

    マイクロサテライトマーカー数で十分な配置密度を確保できることも実証できた。

    さらに、多型マイクロサテライトマーカーを用いて前述の関節リウマチならびに尋常性乾癬のゲノムワイドな感受性遺伝子

    のマッピングを行った。その結果、関節リウマチについて解析が完了し、7個の感受性遺伝子をついに同定した。これにより、

    本プロジェクトの最終目標を達成することに成功した。

    5. 多型マイクロサテライトマーカーの抽出プログラムの作成とデータベースの構築

    本プロジェクトに必要な、ほぼすべての実験および解析ステップについてそれぞれ自動化できる多くのアプリケーション

    ならびにデータベースの作製に成功した。これによりプライマー作製、多型マイクロサテライトマーカーのマッピングならび

    にデータ格納、実験結果の自動解析、感受性候補領域の視覚化および各種情報抽出支援、統計量自動算出などが円滑

    に処理可能となり、本プロジェクトに与えた影響は計り知れず、本サブテーマの結果が無ければ、感受性遺伝子の同定は

    不可能であったと言っても過言ではない。

    ■ 波及効果、発展方向、改善点等

    総国民医療費は 30 兆円を超えて増大し続けているものの、すでに健康保険制度の破綻がとりざたされており,老齢化

    社会の到来によって生活習慣病の国民生活に与える影響は増大し,少子化の傾向も考えあわせると,このまま放置すれば

    21 世紀の国民医療は深刻な事態を迎えることは明らかである。一方、ゲノム医療は 21 世紀の理想的な目標として長年言

    い古されてきたものの、技術的な困難もあり見るべき進展がなかった。そのような意味で、ゲノム情報をもとに、疾患の発症

    と直接的に因果関係を有する感受性遺伝子を明らかにしうるゲノム解析とそれらの情報を基礎に、創薬、診断、医療の標

    的分子の効率的な絞りこみによって可能となるゲノム医療を、生活習慣病の革新的な医療として達成することは、国民の健

    康という観点から重要な社会的課題である。

    我々のマイクロサテライト技術は、2003年に決定されたヒトゲノム全塩基配列情報から設定した 3万個のマイクロサテライ

    トを利用するゲノムワイドな相関解析により、1疾患につき 40個以上という数多くの感受性遺伝子の同定が可能であり、ゲノ

    ム医療実現のブレークスルーをもたらすであろう。すなわち、我々のマイクロサテライト技術による生活習慣病の遺伝子同

    定と発症の分子機構の解明を機に、それらの情報を基礎にした、最適な疾患関連分子を標的とする効率的な医薬品の開

    発、遺伝子診断やオーダーメイド医療などのゲノム医療が現実のものとなりつつある。それゆえ、このマイクロサテライト技

    術を用いた本研究による、“遺伝子同定から医療応用まで”の一連のゲノム医療の戦略を確立は、日本国民の保健、医療、

    福祉向上に大きく貢献しうるものと信ずる。また、個人のゲノム多型情報をもとにした、個人に優しいオーダーメイド医療によ

    る“健康で安心して暮らせる”社会の実現を加速する大きな原動力にもなりうる。

    それら本事業で生まれた新技術・新知見は全て特許化され、製薬企業、CRO、検査企業、遺伝子診断開発企業、健康

    ビジネス関連企業、疾患モデル動物作成企業、バイオ関連企業に対し、事業を国際的に展開しうる。これらの市場 10年後

    の世界的な事業規模は 100兆円と予想されていることから、我々の新技術・新知見は豊かな国民生活の基盤となる日本発

    の知的財産を形成し、経済活性化にも役立てうるであろう。

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    7

    患者さん

    マイクロサテライト

    感受性遺伝子 発見|

    多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    ゲノムワイドな多型マイクロサテライトマーカー30,000個の

    設定と各対立遺伝子頻度の検索に関する研究

    多型マイクロサテライトを用いた複合遺伝疾患の

    感受性遺伝子の相関解析によるマッピングに関する研究

    多型マイクロサテライトマーカーの抽出

    プログラムの作成とデータベースの構築

    質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のための

    DNA チップ技術(MS チップ)の開発に関する研究 長鎖長DNA質量測定のためのイオン化機構の理論解析

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    8

    ■ 所要経費

    (単位:百万円)

    所要経費

    研 究 項 目 担当機関等 研 究

    担当者 H12

    年度

    H13

    年度

    H14

    年度 合計

    1. 質量分析法によるマイクロサテライト

    多型検索のための DNAチップ技術

    (MSチップ)の開発に関する研究

    2. 長鎖長 DNA 質量測定のためのイ

    オン化機構の理論解析

    3. ゲノムワイドな多型マイクロサテライ

    トマーカー30,000個の設定と各対立

    遺伝子の頻度に検索に関する研究

    4. 多型マイクロサテライトマーカーの

    抽出プログラムの作成とデータベ

    ースの構築

    5. 多型マイクロサテライトマーカーの

    抽出プログラムの作成とデータベ

    ースの構築

    (株)島津製作所 分

    析計測事業部

    みず ほ 情 報総研

    (株) サイエンスソリ

    ューシ ョン研究部

    バイオテクノロジ室

    東海大学医学部基

    礎医学系分子生命

    科学

    東海大学医学部基

    礎医学系分子生命

    科学

    文部科学省 国立遺

    伝学研究所

    藤分 秀司

    稲垣 祐一郎

    猪子 英俊

    猪子 英俊

    五條堀 孝

    39.8

    181.8

    21.6

    39.8

    189.1

    0.0

    12.6

    182.6

    0.0

    92.2

    553.5

    21.6

    所 要 経 費 (合 計) 243.2 228.9 195.2 667.3

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    9

    (単位:百万円)

    所要経費

    研 究 項 目 担当機関等 研 究

    担当者 H15

    年度

    H16

    年度 合計

    1. 質量分析法によるマイクロサテライト

    多型検索のための DNAチップ技術

    (MSチップ)の開発に関する研究

    2. 長鎖長 DNA 質量測定のためのイ

    オン化機構の理論解析

    3. ゲノムワイドな多型マイクロサテライト

    マーカー30,000 個の設定と各対立

    遺伝子の頻度に検索に関する研究

    4. 多型マイクロサテライトマーカーの

    抽出プログラムの作成とデータベ

    ースの構築

    5. 多型マイクロサテライトマーカーの

    抽出プログラムの作成とデータベ

    ースの構築

    (株)島津製作所 分

    析計測事業部

    み ず ほ 情 報 総 研

    (株)サイエンスソリュ

    ーション研究部 バイ

    オテクノロジ室

    東海大学医学部基

    礎医学系分子生命

    科学

    東海大学医学部基

    礎医学系分子生命

    科学

    文部科学省 国立遺

    伝学研究所

    藤分 秀司

    稲垣 祐一郎

    猪子 英俊

    猪子 英俊

    五條堀 孝

    39.7

    79.3

    196.4

    0.0

    0.0

    0.0

    179.8

    0.0

    39.7

    79.3

    376.2

    0.0

    所 要 経 費 (合 計) 315.4 179.8 495.2

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    10

    ■ 使用区分

    (単位:百万円)

    東海大学 島津製作所 みずほ情報総研 遺伝学研究所 計

    機械装置費 28.3 27.6 0.0 10.7 66.6

    工具器具備品費 1.7 0.0 0.0 2.1 3.9

    試作品費 0.0 50.4 0.0 0.0 50.4

    消耗品費 573.4 15.1 0.0 2.0 590.5

    人件費 205.0 31.0 5.6 1.3 242.9

    電子計算機諸費 0.1 0.0 0.0 0.1 0.3

    その他経費 113.9 35.4 0.0 5.3 154.6

    計 922.4 159.5 5.6 21.6 1,109.1

    ■ 研究成果の発表状況

    (1) 研究発表件数

    原著論文による発表 左記以外の誌上発表 口頭発表 合 計

    国 内 第Ⅰ期 0件

    第Ⅱ期 0件

    第Ⅰ期 0件

    第Ⅱ期 0件

    第Ⅰ期 1件

    第Ⅱ期 0件

    第Ⅰ期 1件

    第Ⅱ期 0件

    国 際 第Ⅰ期 32件

    第Ⅱ期 11件

    第Ⅰ期 0件

    第Ⅱ期 0件

    第Ⅰ期 12件

    第Ⅱ期 6件

    第Ⅰ期 44件

    第Ⅱ期 17件

    合 計 第Ⅰ期 32件

    第Ⅱ期 11件

    第Ⅰ期 0件

    第Ⅱ期 0件

    第Ⅰ期 13件

    第Ⅱ期 6件

    第Ⅰ期 45件

    第Ⅱ期 17件

    (2) 特許等出願件数

    第Ⅰ期 2件 (うち国内該当なし、国外 2件)

    第Ⅱ期 0件 (うち国内該当なし、国外該当なし)

    合計 2件 (うち国内該当なし、国外 2件)

    (3) 受賞等

    第Ⅰ期 該当なし

    第Ⅱ期 該当なし

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    11

    (4) 主な原著論文による発表の内訳

    国内誌(国内英文誌を含む)

    該当なし

    本研究に関連して発表した論文

    該当なし

    関連して発表した論文

    該当なし

    海外誌

    本研究に関連して発表した論文

    1. Shiina T, Ando A, Suto Y, Kasai , Shigenari A, Takishima N, Kikkawa E, Iwata K, Kuwano Y, Kitamura Y,

    Matsuzawa Y, Sano K Nogami M, Kawata H , Li S, Fukuzumi Y, Yamazaki M, Tashiro H, Tamiya G , Kohda A,

    Okumura K, Ikemura T, Soeda E, Mizuki N, Kimura M, Bahram S, Inoko H:「Genomic anatomy of a premier

    Major Histocompatibility Complex paralogous region on chrormosome 1q21-22.」, Genome Research, 11,

    789-802,(2001)

    2. Matsuzaka Y, Makino S, Nakajima K, Tomizawa M, Oka A, Bahram S, Kulski JK, Tamiya G, Inoko H:「New

    microsatellite markers in the human MHC class III region.」, Tissue Antigens, 57, 397-404,(2001)

    3. Toru Katoh, Batmunkh Munkhbat, Kenichi Tounai, Shuhei Mano, Harue Ando, Ganjuur Oyungerel, Gue-Tae

    Chae, Huun Han, Guan- Jun Jia, Katsushi Tokunaga, Namid Munkhtuvshin, Gen Tamiya, Hidetoshi Inoko.:

    「Genetic feature of Mongolian ethnic groups revealed by Y-chromosomal analysis」, Gene,(in Press)

    4. T Katoh, S Mano, T Ikuta, B Munkhbat, K Tounai, H Ando, N Munkhtuvishin, T Imanishi, H Inoko, G Tamiya.:

    「Genetic Isolates in East Asia:A study of Linkage Disequilibrium」, American Journal of Human Genetics, 71

    395-400(2002)

    5. Ota M, Katsuyama Y, Kimura A, Tsuchiya K, Kondo M, Naruse T, Mizuki N, Sasazuki T, Inoko H:「A second

    susceptibility gene for developing rheumatoid arthritis in the human MHC is localized within a 70 kb interval

    telomeric of the TNF genes in the HLA class III region.」, Genomics, 71, 263-270,(2001)

    6. MatsuzakaY, Tounai K, Denda A, Tomizazwa M, Makino S, Okamoto K, Keicho N, Oka A, Kulski JK, Tamiya G,

    Inoko H:「Identification of novel candidate genes in the diffuse panbronchiolitis critical region of the class I

    human MHC.」, Immunogenetics, 54, 301-309,(2002)

    7. Okamoto K, Makino S, Yoshikawa Y, Takaki A, Nagatsuka Y, Ota M, Tamiya G, Kimura A, Bahram S, Inoko H:

    「 Identification of IkBL as the second Major Histocompatibility Complex-Linked susceptibility locus for

    rheumatoid arthritis.」, Am J Hum Genet., 72, 303-312,(2003)

    関連して発表した論文

    1. Keicho N, Ohashi J, Tamiya G, Nakata K, Taguchi Y, Azuma A, Ohishi N, Emi M, Park H, Inoko H, Tokunaga

    K,Kudoh S:「Fine localization of a major disease-susceptibility locus for diffuse panbronchiolitis.」, Am J Hum

    Genet, 66, 501-507,(2000)

    2. Kimura A, Ota M, kastuyama Y, Ohbuci N, Takahashi M, Kobayashi Y, Inoko H, Numano F:「Mapping of the

    HLA-linked genes controlling the susceptibility to Takayasu's arthritis.」, Int J Cardiology, 75, S105-S110,

    (2000)

    3. Matsuzaka Y, Makino S, Okamoto K, Oka A, Tsujimura A, Matsumiya K, Takahara S, Okuyama A, Sada M,

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    12

    Gotoh R, Nakatani T, Ota M, Katsuyama Y, Tamiya G, Inoko H.:「Susceptibility locus for non-obstructive

    azoospermia is localized within the HLA-DR/DQ subregion: Primary role of DQB1*0604.」, Tissue Antigens, 60,

    53-63,(2002)

    4. Hui J, Oka A, Tamiya G, Tomizawa M, Kulski JK, Penhale WJ, Tay GK, Iizuka M, Ozawa A, Inoko H:

    「Corneodesmosin DNA polymorphisms in MHC haplotypes and Japanese patients with psoriasis.」, Tissue

    Antigens, 60, 77-83,(2002)

    5. Oka A, Hayashi H, Tomizawa M, Okamoto K, Hui J, Kulski JK, Beilby J, Inoko H, Tamiya G:「Localization of a

    non-melonoma skin cancer susceptibility region within the Major Histocompatibility Complex by association

    analysis using microsatellite markers.」, Tissue Antigens, 61, 203-210,(2003)

    6. Mano S, Yasuda N, Katoh T, Tounai K, Inoko H, Imanishi T, Tamiya G, Gojobori T:「Notes on the maximum

    likelihood estimation of haplotype frequencies.」, Annals of Human Gen, 68, 257-264,(2004)

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究成果の詳細報告

    13

    1. 質量分析法によるマイクロサテライト多型検索のための DNA チップ(MS チップ)の開発に関する研究

    株式会社島津製作所 分析計測事業部ライフサイエンスビジネスユニットライフサイエンス研究所

    権田 誠、 藤分 秀司

    ■ 要 約

    従来 DNA 解析に使用されている DNA シーケンサ以上にハイスループット、高精度測定が期待できる MALDI TOF 型質

    量分析計にて、マイクロサテライトの繰り返し多型検索を実施するための高密度 MS チップを作成した。1000spot/cm2 の密

    度(テーマ目標)で搭載されたチップ上の各微小スポットからマススペクトルを検出し、各サンプルにおいて多型識別に要

    求される 2 塩基識別が行える分解能をもったマスピークを確認することができた。

    高密度 MS チップ作成のために下記の 4 項目の研究項目を実施した。

    1. DNA に適した新規マトリックスの探索

    2. サンプル調製方法の検討

    3. 高密度 MS チップの開発に関する研究

    4. マイクロサテライト多型検索の自動化に関する研究

    また、長鎖長 DNA において高分解能を示すと期待される IR レーザーを用いた MALDI TOFMS の開発も実施したが、従来

    の UV レーザーを超える結果は得られなかった。

    ■ 目 的

    膨大な数の検体測定が必要となるマイクロサテライトの繰り返し多型検索においては迅速な分析が要求される。そこで従

    来 DNA 解析に使用されている DNA シーケンサ以上にハイスループット、高精度測定が期待できる MALDI TOF 型質量分

    析計を用いて、より多量検体の測定を可能にすることが目的である。

    ■ 研究方法

    1. DNA に適した新規マトリックスの探索

    MALDI TOFMS の概要

    通常、質量分析計から得られる測定結果は、その測定試料の質量数(Da)としてシグナルが検出されるため、DNA を測定した場合は

    その鎖長に対応した質量数が表示される。従って2塩基繰り返しマイクロサテライト多型を測定した場合、2塩基差は約600Daの質量数

    差となって表示される。以下に 100mer と 102mer の2つの 1 本鎖DNA が分離された場合のシュミレーションデータを示す。

    図-1 MALDI TOFMS における2塩基鎖識別のシミュレーションデータ

    100 mer 102 mer

    2塩基差=約600Da差

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

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    14

    しかし実際に DNA を MALDI TOFMS で測定する場合、その鎖長が長くなるにつれ検出されるシグナルは微弱になり感

    度・分解能の低下が引き起こり、長鎖長 DNA における 2 塩基鎖の識別は非常に困難なものとなる (図-2) 。

    図-2 50mer~100mer の合成オリゴ DNA(PolyT)を HPA をマトリックスに使用して測定したマススペクトル。

    70mer を超えると急激にピーク幅が増大、分解能低下が見られる。

    MALDI 法ではサンプルに‘マトリックス’と呼ばれる低分子化合物を混合し、レーザーを照射してサンプルのイオン化を

    行うが、実際上測定サンプルに適したマトリックスの選択が重要である。通常 DNA 測定には HPA(3-Hydroxypicolinic

    acid)がマトリックスとして使用されるが、図-2 の通り、長鎖長 DNA では十分な分解能が得られない。そこで DNA 測定に適

    したマトリックスを見出すためにマトリックスの探索を行う必要がある。

    新規マトリックスの探索

    DNA 試料に対してはマトリックスに co-マトリックスとしてアンモニウム塩を添加することで検出感度、分解能が向上する

    ことが知られている1。そこでこれまでに DNA に効果の確認されているマトリックスの類縁体と複数のアンモニウム塩を組み

    合わせ得られた‘混合マトリックス’に対しスクリーニングをおこない最も効果の高い組み合わせを検討した。

    ・1 次スクリーニング

    これまで DNA に対して効果が確認されている 18 種類のマトリックス(表-1)に Ammoniumcitrate dibasic を添加して得ら

    れる混合マトリックスで、5 種類の合成オリゴ DNA(20mer~100mer)を測定する。ピーク検出状態の良好なものについて、2

    次スクリーニングを実施する。

    ・2 次スクリーニング

    添加するアンモニウム塩を変えてピーク検出状況を比較、最も適したマトリックス/co-マトリックスの組み合わせを検討し

    た。アンモニウム塩は、Ammonium Acetate (AA)、Ammonium citrate dibase (ACDB) 、AmmoniumChloride (ACl)、

    Ammonium citrate tribase (ACTB)、Ammonium fluoride (AF)、Ammonium tartarate (AT)の 6 種類を使用した。評価には合

    成オリゴ DNA(PolyT100)を使用し、得られた分解能を元に、識別可能な塩基数を算出し比較を行った。

    理論解析により得られた候補マトリックスの検証

    サブテーマである「長鎖長 DNA 質量測定のためのイオン化機構の理論解析」によりえられたマトリックス候補 13 種類のう

    ち、入手可能な 11 種類についてそのマトリックス効果の確認を行った。

    各スクリーニングで使用する試料は下記の通り。

    ・1 次スクリーニング:合成オリゴ DNA5mer(PolyT5)

    ・2 次スクリーニング:鎖長 20mer 合成オリゴ DNA、PolyT20、Random20(ランダム配列)

    ・3 次スクリーニング:2 種類の鎖長の合成オリゴ DNA、PolyT100(100mer)、Random100(100mer、CT リピートを含む)

    各スクリーニングで良好なピークが確認できたマトリックスのみ次のスクリーニングを行った。また、3 次スクリーニングで良

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

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    15

    好な結果が得られたものについては、鎖長が異なる 2 種類の合成オリゴ DNA を混合した試料を測定、2 塩基差識別状況を

    確認する。

    なお、co-マトリックスとには ammmoniumu citrate tribase を使用した。

    2. サンプル調製方法の検討

    長鎖長 DNA に対しては、分解能の低下のためマイクロサテライト多型検索に要求される 2 塩基差識別が困難である。前

    項ではマトリックスの探索で分解能の向上を狙ったが、ここではサンプル調製方法を検討することで長鎖長 DNA における 2

    塩基差識別を試みた。

    修飾 DNA によるフラグメンテーションの抑制

    長鎖長 DNA においてはイオン化時に発生するフラグメンテーション(解裂)によって、感度・分解能が低下することが知ら

    れている(図-3)。そこで、フラグメンテーションの抑制効果のある 7-デアザ体(図-4)に置換した修飾 DNA を用い、100base

    以上の長鎖長 DNA において 2 塩基鎖識別に有効であることを確認する。

    DNA ポリメラーゼの探索

    まず、7-デアザ体 PCR 産物を効率良く作成するために、DNA ポリメラーゼの探索を実施する。市販の DNA ポリメラーゼ

    8 種類を用いてスクリーニングを行う。

    デアザ修飾による分解能向上の確認 7-デアザ修飾により得られた PCR 産物において実際に分解能が向上するのかを確認する。ノーマル PCR 産物とデアザ

    PCR 産物に対して MALDI TOFMS 測定を行い分解能の比較を行う。また本プロジェクトで見出したマトリックス DHAP を用

    いて 7-デアザ体 PCR 産物にもその効果があることを確認する。

    マイクロサテライト 2 塩基差識別の確認 実際にマイクロサテライト多型検索が行えることを確認するために、100bp のマイクロサテライトマーカー(2 塩基繰り返し、

    TA リピート)について 7-デアザ体 PCR 産物を作成し DHAP をマトリックスとして測定を行う。

    Primer Extension 反応による 1 本鎖短鎖長 PCR 産物の作成

    MALDI TOFMS の DNA 測定においては、70mer 以上で急激な分解能の低下が見られる(図-1)。また、2 本鎖 DNA を

    H+

    図 3 DNA フラグメンテーションの発生過程(グアニン)

    まずグアニン塩基の窒素原子に水素イオンが付加し 4N-glycosidic

    結合の開裂(N-C 開裂①)が発生し、引き続き Phosphodiester 結合

    の開裂(C-O 開裂②)が発生すると考えられる。

    a)

    c)

    図-4 7-デアザ-グアニン(a)、 7-デアザ-アデニン(b)の構造式。

    下段は通常の DNA を構成するグアニン(c)、アデニン(d)。

    デアザ体では 7 位の窒素原子が炭素原子となっている。

    b)

    d)

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    16

    MALDI TOFMS で測定した場合、1 本鎖 DNA として検出されるためマススペクトル上でセンス-アンチセンス 2 本のピーク

    が検出されることになり分解能の低下を引き起こす。そこで、Primer Extension 反応を用いることで MALDI TOFMS で十分

    な分解能が得られる短鎖長(

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    17

    表-1 1 次スクリーニング結果

    18 種類のマトリックスに対して各測定サンプルのピーク検出状態を比較した結果、5 種類のマトリックス

    (イタリック表示)で高い効果が認められた。

    測定サンプル

    マトリックス候補化合物(18 種類) PolyT

    20mer

    Random

    20mer

    PolyG

    20mer

    Random

    61mer

    PolyT

    100mer

    3-hydroxypicolinic acid(reference) ++ ++ + ++ +

    2,5-Dihydroxybenzoic acid ++ ++ + + ++

    2,4-Dihydroxyacethophenone ++ ++ + + ++

    Indole-2-carboxylic acid ++ ++ + + +

    3-Aminoquinoline ++ ++ - + ++

    3-Aminobenzoic acid ++ ++ - + -

    Caffeic acid ++ ++ - - ++

    3-amino-4-hydroxybenzoic acid ++ ++ - - +

    2-amino-5-nitropyridine ++ ++ - - +

    2-hydroxy-5-nitropyridine ++ ++ - - +

    2,3-dihydroxypyridine ++ ++ - - +

    2-amino-3-nitropyridine ++ ++ - - -

    3-aminopyrazine-2-carboxylic acid ++ ++ - - -

    Isovanillin ++ ++ - - -

    4-hydroxyazobenzen-2-carboxylic acid ++ ++ - - -

    Vanillic acid ++ ++ - - -

    1,5-diaminonaphthalene ++ + - - -

    1,4-dihydroxy-2-naphthoic acid ++ - - - +

    2-hydroxypyridine ++ - - - +

    シグナル検出 ++:良好 +:微弱 -:不可

    2 次スクリーニング結果

    1 次スクリーニングで良好な結果を得た 5 種類のマトリックスについて 2 次スクリーニングを行った。

    2 次スクリーニングでは、各マトリックスに対して 6 種類のアンモニウム塩、Ammonium Acetate (AA)、Ammonium citrate

    dibase (ACDB) 、AmmoniumChloride (ACl)、Ammonium citrate tribase (ACTB)、Ammonium fluoride (AF)、Ammonium

    tartarate (AT)を添加しえられる混合マトリックスで合成オリゴ DNA(PolyT100)を測定し、検出されるピークから識別可能な

    塩基差数を算出し比較する。表‐2 に各組み合わせで確認できる識別可能な塩基差を示した。マイクロサテライト多型検索

    に必要な 2 塩基差識別が可能な組み合わせがいくつか確認されたが、中でも 2,4-Dihydroxyacethophenon と Ammonium

    citrate tribasic の組み合わせで 1 塩基差の識別も可能であった。

    表-2 2 次スクリーニング結果

    2,4-Dihydroxyacethophenon に ACTB を添加したときに最も高い分解能が得られ、PolyT100mer の

    測定では、1 塩基差が識別できることが確認できた。

    co-マトリックス マトリックス

    AA ACDB ACl ACTB AF AT

    2,5-Dihydroxybenzoic acid

    2,4-Dihydroxyacethophenon

    3-Aminoquinoline

    Indole-2-carboxylic aci

    3-Aminobenzoic acid

    識別可能な塩基差

    4 塩基 3 塩基 2 塩基 1塩基

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

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    18

    1.2 2 塩基差識別の確認

    2 次スクリーニングで最も良好な結果を示した 2,4-Dihydroxyacethophenon(DHAP)と Ammonium citrate tribase の組み

    合わせによって実際に 2 塩基差識別が可能であることを確認するために、TC リピートマイクロサテライト配列を持つ 2 種類

    の合成オリゴ DNA の混合物(100mer/102mer)を用いてモデル実験を行った。図-5 に得られたマススペクトルを示す。

    図-5 合成オリゴ DNA 混合物(100/102mer)を HPA と DHAP の各マトリックスで測定したき得られた

    マススペクトル。DHAP では 2 塩基差識別が可能。

    図-5 上段は、従来のマトリックス HPA で測定したマススペクトルであるが、2 本のピークが分離できず 1 本の幅の広いピーク

    として検出されている。一方、DHAP(図-5 下段)では 2 本のピークが検出され、2 塩基差識別が可能であることが確認できる。

    理論解析により得られた候補マトリックスの検証

    理論解析により得られたマトリックス候補化合物のうち検証を行ったマトリックス(11 種類)を表-3 に示す。

    表-3 理論解析によりリストアップされた候補マトリックス(入手可能なもの)

    HPA+ACDB

    分解能:25 100mer 102mer

    DHAP+ACTB

    分解能:320

    No1 No2 No3 No4 No4 No6

    2-Amino-3-nitro-6

    -picoline

    5-Amino-3H-1,2,4

    -dithiazole-3-thione

    5-Methyl-2-thioxo

    -1,2-dihydropyridine

    -3carbonitrile

    6,8-Difuluoro-2,3

    -dihydro-4H-chromen

    -4-one

    6-Chlorochroman

    -4-one

    6-Fluorochroman

    -4-one

    No7 No8 No9 No10 N011

    3-Methyl-5-nitro-1,2

    -dihydropyridin-2-one

    Methyl 3-aminopyrazine

    -2-carboxylate

    3-methyl-5-nitro-1,2

    -dihydropyridin-2-one

    isoquinoline-1

    -carbonitrile

    3,5-dichloro-1,2

    -dihydropyridin-2-one

    NH3C NH2

    NO2

    S

    N

    S

    S

    H2N NH

    H3C

    S

    N

    O

    F

    F

    O

    O

    O

    Cl

    O

    O

    F

    O

    O

    O

    CH3N

    N

    NH2

    O

    O

    CH3

    NH

    O

    CH3NO

    O-

    +N

    N

    N

    Cl

    O

    Cl

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    研究成果の詳細報告

    19

    1 次スクリーニング

    合成オリゴ DNA PolyT 20 のマススペクトルを図-6 に示す。11 種類すべての化合物において良好にピーク検出が行えマ

    トリックス効果を有することが確認できた(図-6)。全マトリックスについて 2 次スクリーニングを実施した。

    2 次スクリーニング

    1 次スクリーニングで良好な結果が得られた 11 種類すべてのマトリックスに対して 2 種類の合成オリゴ DNA( PolyT 20、

    Random20)を用いて評価を行った。得られたマススペクトルを図-7 に示す。PolyT20、Random20 いずれにおいても良好な

    ピーク検出が確認できた、No1,3,7,9,11 の 5 種類のマトリックスについて 3 次スクリーニングを実施する。

    PolyT20 Random20

    a) PolyT20 マススペクトル b) Random20 マススペクトル 図 7 2次スクリーニング結果。(a)PolyT20 については No4 を除いてピークを検出できた。(b)Random20 については PolyT20

    が検出できたマトリックスのうち半数の 5 種類のマトリックスで(No1,3,7,9,11)良好なピークが確認された。

    No11

    No10

    No9

    No8

    No7

    No6

    No5

    No4

    No3

    No2

    No1

    (HPA)

    No11

    No10

    No9

    No8

    No7

    No6

    No5

    No4

    No3

    No2

    No1

    (HPA)

    図 6 1次スクリーニング結果。すべてのマトリックスで PolyT5mer を検出することができた。

    最下段は HPA によるマススペクトル。図中 No はマトリックス No を示す。

    No11

    No10

    No9

    No8

    No7

    No6

    No5

    No4

    No3

    No2

    No1

    (HPA)

    PolyT5

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    20

    3 次スクリーニング

    実際のサンプルを想定してマイクロサテライト配列(CT リピート)を含む合成オリゴ DNA50mer(Random50)および

    60mer(Random60)を用いて、2 次スクリーニングで良好な結果が得られた 5 種類のマトリックス(No1,3,7,9,11)について比較

    を行った。Random60 を測定した結果を図-8 に示す。

    No7,11 の 2 種類のマトリックスでピークが良好に検出されたが、この 2 種類のマトリックスについては 2 塩基識別状況を

    確認するために、2 塩基差の 2 種類の合成オリゴ DNA を混合したサンプルを用いて測定を行った。 得られたマススペクト

    ルを図-9 に示す。

    48mer/50mer、58mer/60mer、68mer/70mer 各 2 塩基差の合成オリゴ DNA 混合試料を測定した結果、No7 では 60mer

    で、No12 では 70mer でそれぞれ 2 塩基差識別を確認することができた。スクリーニング結果をまとめたものを表-4 に示す。

    図-9 2 塩基差(CT)の混合物 3 種類を No7 と No11 の 2 種類のマトリックスで測定したマススペクトル。

    マトリックス No7 では 60mer で、No11 では 70mer の鎖長で 2 塩基識別が確認できた。

    48mer/50mer

    58mer/60mer

    68mer/70mer

    No11

    No7

    No11

    No7

    No11

    No7

    CT

    CT

    CT

    a) 合成オリゴ DNA50mer のマススペクトル b) 合成オリゴ DNA 60mer のマススペクトル

    図-8 3 次スクリーニング結果。2 次スクリーニングで良好な結果が得られたマトリックス No1,3,7,9,11 にて 2 種類の合成オリゴ DNA

    (50mer、60mer)を測定を行い、ピーク検出状況を比較した。

    a) No3 を除くマトリックスで合成オリゴ DNA50mer のピークが検出された。

    b) 合成オリゴ DNA50mer のピークが検出された 4 つのマトリックスで合成オリゴ DNA50mer を測定、No7,11 のマトリックスで

    ピークが検出された。

    No11

    No9

    No7

    No3

    No1

    (HPA)

    No11

    No9

    No7

    No1

    (HPA)

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究成果の詳細報告

    21

    表-4 スクリーニング結果まとめ

    3 次までのスクリーニング結果を表に示す。1 次スクリーニングは全マトリックスでピークが検出され、

    すべてマトリックス効果があることが確認できた。また、最もマトリックス効果の高かった化合物は No11 であった。

    スクリーニング No 化合物名

    1 次 2 次 3 次 ランク**

    理論解析

    のスコ ア

    ***

    1 2-Amino-3-nitro-6-picoline + +/+ +/- 3 11

    2 5-Amino-3H-1,2,4-dithiazole-3-thione + +/- NCW* 6 12

    3 5-Methyl-2-thioxo-1,2-dihydropyridine-3carbonitrile + +/+ - 5 10

    4 6,8-Difuluoro-2,3-dihydro-4H-chromen-4-one + +/- NCW 7 3

    5 6-Chlorochroman-4-one + +/- NCW 7 7

    6 6-Fluorochroman-4-one + +/- NCW 7 2

    7 3-Methyl-5-nitro-1,2-dihydropyridin-2-one + +/+ +/+ 2 5

    8 Methyl 3-aminopyrazine-2-carboxylate + -/- NCW 11 4

    9 3-methyl-5-nitro-1,2-dihydropyridin-2-one + +/+ +/- 4 6

    10 isoquinoline-1-carbonitrile + +/- NCW 7 9

    11 3,5-dichloro-1,2-dihydropyridin-2-one + +/+ +/+ 1 1

    Passed 11/11 5/11 2/5

    +:ピーク検出 -:ピーク検出不可 スクリーニングの中で 2 種類の試料を使っている場合は/で示した。

    *未実施

    **スクリーニング結果よりマトリックス効果が高いものからをつけた順位

    ***理論解析により得られたスコアの高いものからつけた順位

    2.サンプル調製方法の検討

    長鎖長 DNA に対しては、分解能の低下のためマイクロサテライト多型検索に要求される 2 塩基差識別が困難である。前

    項ではマトリックスの探索で分解能の向上を狙ったが、ここではサンプル調製方法を検討することで長鎖長 DNA における 2

    塩基差識別を試みた。

    2.1 修飾 DNA によるフラグメンテーションの抑制

    DNA ポリメラーゼの探索

    市販の DNA ポリメラーゼ 8 種類(表-5)を用いてスクリーニングを行った結果、7-デアザ体(Primer、dNTP)を用いた PCR

    では、Expand High Fidelity PCR System が最も高い増幅効率を示すことを確認した。

    表-5 スクリーニングに使用した DNA ポリメラーゼ

    名称(製品名) メーカー名 由来

    1.AmpliTaq Gold ABI Thermus aquaticus

    2.AmpliTaq FS ABI Thermus aquaticus

    3.Thermo Sequenase DNA polymerase Amersham T7 refinement

    4.Pyrobest DNA polymerase TAKARA Pyrococcus sp.

    5.Tth DNA polymerase Roche Thermus thermophilus HB8

    6.Expand High Fidelity PCR System Roche Pyrococcus woesei

    7.Pwo DNA polymerase Roche Pyrococcus woesei

    8.Pfu Turbo DNA polymerase STRATAGENE Pyrococcus furiosus

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    研究成果の詳細報告

    22

    デアザ修飾による分解能向上の確認

    Expand High Fidelity PCR System により得られた 7-デアザ体 PCR 産物とノーマル PCR 産物に対して MALDI TOFMS

    測定を行い分解能の比較を行った。マトリックスには HPA、2,4-DHAP、2つのマトリックスを使用した。測定結果を図-10 に

    示す。HPA、2,4-DHAP いずれのマトリックスにおいても 7-デアザ体 PCR 産物で高い分解能が得られたが、特に 7-デアザ

    体 PCR 産物を 2,4-DHAP で測定したときに最も高い分解能 82 を示し(図 10-d)、通常の測定であるノーマル PCR 産物を

    HPA で測定したときの分解能 41(図 10-c)の 2 倍の分解能が得られた。以上より 7-デアザ体 PCR 産物を用いることで分解

    能が向上すること、特に 2,4-DHAP で大きな効果が得られることが確認できた。

    マイクロサテライト 2 塩基差識別の確認

    次に、実際の 100bp のマイクロサテライトマーカー(2 塩基繰り返し、TA リピート)について 7-デアザ体 PCR 産物を作成し

    2,4-DHAP をマトリックスとして測定を行った。測定結果を図-11に示す。サンプルは、ホモ、ヘテロ/2 塩基差、ヘテロ/4 塩

    基差の 3 種類であるが、ヘテロについては 2 塩基差までピークが分離でき、また塩基差に対応した位置にピークか検出さ

    れている。以上より、7-デアザ体 PCR 産物に対して 2,4-DHAP を用いることでマイクロサテライト多型検索が実施できること

    が確認できた。

    ノーマル PCR 産物 7-デアザ体 PCR 産物

    HPA

    2,4-DHAP

    図-10 ノーマル PCR 産物および 7-デアザ体 PCR 産物を HPA、2,4-DHAP 各マトリックスで測定した MS スペクトル、図中数値は得られた分解能を示す

    a) b)

    (41) (62)

    c) d)

    (25) (82)

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    23

    酵素名 メーカー 増幅率 配列依存性AmpliTaq Gold Applied Biosystems ☆ -KOD TOYOBO ☆☆☆ 有TaKaRa Z-Taq TAKARA ☆☆ -Platinum Taq DNA polymerase Invitrogen ☆☆ -KlenTaq DNA polymerase SIGMA ☆☆☆ 有Thermo Sequenase DNA polymerase Amersham ☆☆☆ 無

    ホモ

    ヘテロ/2 塩基差

    2.2 Primer Extension 反応による 1 本鎖短鎖長 PCR 産物の作成

    DNA ポリメラーゼの探索

    まず Primer Extension に用いる酵素の選定を行った。その結果、マイクロサテライト配列に依存せず増幅効率の良い酵

    素 ThermoSequenase DNA Polymerase を見出した(表-6)。

    表-6 Primer Extension使用酵素の選定

    Primer Extension 反応によって得られた PCR 産物の MALDI TOFMS 測定

    Thermo Sequenase DNA Polymerase を使用し Primer Extension 反応により得られた1本鎖 DNA から得られたマススペクトルを

    図-12 に示す。PCR 産物 200 塩基長のマイクロサテライトマーカーにおいては不可能であった 2 塩基鎖長差識別ができた。

    図-12 Primer Extension 反応を用いて得た 1 本鎖 DNA のマススペクトルヘテロ/2 塩基差において

    ピーク分離が行え、ホモ、ヘテロ識別が可能

    ヘテロ/4塩基差

    98bp

    102bp

    98bp

    100bp

    98bp

    ヘテロ/2塩基差

    ホモ

    図-11 マイクロサテライトマーカー(2塩基繰り返し、TAリピート)を含む

    7-デアザ体PCR産物を2,4-DHAPをマトリックスとして測定したマススペクトル

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    研究成果の詳細報告

    24

    ハイスループット化に向けたスケールダウン

    これまでの PCR 法あるいは Primer Extension 法を用いた MS 測定においては、大量の試料調製が必要であり、実用化を

    考えた場合にコストの面で、またハイスループットを実現するためにも大きな問題であった。そこで、試料調製のスケールダ

    ウンを試みた。Primer Extension 反応の組成、精製法などの検討の結果、通常PCRと同量の試料によってマススペクトル検

    出に成功した。この系を用いて、1 ゲノムに対する 15 種類のマイクロサテライトマーカーの Typing を行った(図-13)。図中に

    測定したマイクロサテライトマーカーの繰り返し塩基Unit,そのゲノムのホモ/ヘテロ識別結果を示した。このタイピングの成

    功により質量分析装置を用いたマイクロサテライトタイピングのハイスループット化が現実に近づいたと考えられる。

    図-13 1 ゲノムに対する 15 種類のマイクロサテライトマーカーのタイピング結果。すべて、50μスケール PCR から

    ホモ/ヘテロ識別可能なマススペクトルが検出された

    3. 高密度 MS チップの開発に関する研究

    3.1 高密度 MS チップ作成に適したスポッターの選定

    ピエゾタイプスポッター、ピンタイプスポッターいずれが高密度 MS チップ作成に適したスポッターを選定するために、微

    小スポットの搭載状態、マスピークの検出状況(強度・分解能)、キャリーオーバーの各項目について比較を行った。

    微小スポットの搭載状態

    ピンスポッター、ピエゾスポッターそれぞれのスポッターで作成した MS チップ上の微小スポット画像を図-14 に示す。

    いずれのスポッターでも 300μm 間隔でスポットでき、高密度 MS チップを作成できたが、ピエゾスポッターで搭載された

    微小スポット(b)がピンスポッターに比較して均一に搭載されていることがわかる。

    AT Repeat

    ヘテロ/4 塩基差

    CA Repeat

    ヘテロ/2 塩基差

    CT Repeat

    ホモ

    TA Repeat

    ヘテロ/2 塩基差

    TA Repeat

    ホモ

    TC Repeat

    ホモ

    TC Repeat

    ホモ

    TC Repeat

    ホモ

    TC/AC Repeat

    ヘテロ/8 塩基差

    AAT Repeat

    ホモ

    ATA Repeat

    ヘテロ/9 塩基差

    ATT Repeat

    ホモ

    CAC Repeat

    ホモ

    CCT Repeat

    ホモ

    CTT Repeat

    ヘテロ/12 塩基差

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究成果の詳細報告

    25

    図-14 MS チップ上の微小サンプルスポット。ピエゾスポッターで搭載した微小スポット(b)

    の方がピンスポッターで搭載した微小スポット(b)より均一であることがわかる。

    マスピークの検出状況

    PolyT15mer,PolyT20mer を用いて作成した高密度 MS チップ上の微小スポットから検出したマスピークについて、ピンス

    ポッターとピエゾスポッターでその検出状況の違いを確認した(図-15)。分解能に関してはほとんど差が見られないが、得ら

    れる信号強度に関してはサンプルに関係なく、ピエゾスポッターのほうが優位であることが確認できた。

    図-15 微小スポットから得られるマスピーク検出状況の比較。分解能に関してはほとんど差は見られないが、

    信号強度に関してはサンプルに関係なく大きな差が確認された。

    キャリーオーバーの影響

    スポッターを含む分注機で重要な項目キャリーオーバーについて比較を行った。今回の高密度 MS チップ作成は

    PolyT15mer,PolyT20mer2 種類のサンプルを交互にスポッティングを行ったため、キャリーオーバーが発生した場合は

    PolyT15mer 測定時は PolyT20mer が、PolyT20mer 測定時は PolyT15mer がキャリーオーバーピークとして検出される。

    ピンスポッター、ピエゾスポッターで作成した MS チップ上微小スポットから検出された PolyT15mer,

    PolyT20mer のマススペクトルを示す(図-16)。ピエゾスポッターではほとんどキャリーオーバーが確認されなかったが、ピ

    ンスポッターでは特に PolyT20mer 測定時に PolyT15mer がキャリーオーバーピークとして検出された。

    a)ピンスポッターによる搭載 b)ピエゾスポッターによる搭載

    スッポット径約 200μm、スポット間隔 300μm

    サンプル:PolyT マトリックス:HPA

    0

    2000

    4000

    0

    200

    400

    600

    800mV

    a)信号強度 b)分解能M/dM

    ピエゾスポッターピンスポッター

    PolyT15 PolyT20

    ピエゾスポッターピンスポッター

    PolyT15 PolyT20PolyT15 PolyT20 PolyT15 PolyT200

    2000

    4000

    0

    200

    400

    600

    800mV

    a)信号強度 b)分解能M/dM

    ピエゾスポッターピンスポッター

    PolyT15 PolyT20

    ピエゾスポッターピンスポッター

    PolyT15 PolyT20PolyT15 PolyT20 PolyT15 PolyT20

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    研究成果の詳細報告

    26

    PolyT20 (M/Z 6021)PolyT15 (M/Z 4500)

    ピンスポッター

    ピエゾスポッター

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    5.0 mV[sum= 80 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0019.C6 20 Aug 2003 17:26 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    7.1 mV[sum= 113 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0010.C6 20 Aug 2003 17:20 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    107 mV[sum= 1709 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0027.E14 24 Jul 2003 17:00 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    104 mV[sum= 1663 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0028.F14 24 Jul 2003 17:01 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    **

    4500 6021 4500 6021

    ×10×10

    ×10×10

    PolyT20 (M/Z 6021)PolyT15 (M/Z 4500)

    ピンスポッター

    ピエゾスポッター

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    5.0 mV[sum= 80 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0019.C6 20 Aug 2003 17:26 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    7.1 mV[sum= 113 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0010.C6 20 Aug 2003 17:20 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    107 mV[sum= 1709 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0027.E14 24 Jul 2003 17:00 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    104 mV[sum= 1663 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0028.F14 24 Jul 2003 17:01 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    5.0 mV[sum= 80 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0019.C6 20 Aug 2003 17:26 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    7.1 mV[sum= 113 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: Pin30spots0010.C6 20 Aug 2003 17:20 Cal: CP 21 Aug 2003 9:41 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    107 mV[sum= 1709 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0027.E14 24 Jul 2003 17:00 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000Mass/Charge

    1[c].E

    104 mV[sum= 1663 mV] Profiles 1-16: AveragedX10

    Data: 30spots0028.F14 24 Jul 2003 17:01 Cal: CP 21 Aug 2003 10:15 Kratos PC Axima CFR V2.2.1: Mode Linear_neg, Power: 130, P.Ext. @ 6021 (bin 102)

    **

    4500 6021 4500 6021

    ×10×10

    ×10×10

    図-16 ピンスポッター、ピエゾスポッターのキャリブレーションオーバー発生の比較。

    キャリーオーバーピークは*で示した。ピエゾスポッターではほとんど確認できなかったがピンスポッターでは

    特に PolyT20mer のスポットでキャリーオーバーが確認された。

    以上の結果より、高密度 MS チップ作成にはピエゾスポッターが適していることが確認できた。

    次にピエゾスポッターを用いて、高密度 MS チップの作成を試みた。目標である 1000spot/cm2 の搭載密度を達成する

    には 300μm 間隔で微小スポットを搭載することが要求されるが、ピエゾスポッターで達成することができた。図-17 に高密

    度 MS チップの画像を示す。

    図-17 高密度 MS チップ上微小スポット画像

    200μm 径の微小スポットを 300μm 間隔に搭載

    (1 目盛 1mm)

    3.2 高密度 MS チップを用いたマイクロサテライト塩基差識別の検証

    高密度MSチップ(1000spot/cm2)を用いて、マイクロサテライト塩基差識別が行えることを確認する。

    サンプルにマイクロサテライト配列を持つ 6 種類のLocus(表-7)を用いて高密度MSチップを作成しマススペクトル検出

    を試みた。得られたマススペクトルを図 18 に示す。

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究成果の詳細報告

    27

    表-7 高密度 MS チップ作成に使用した Locus。鎖長は Primer Extension によって得られた PCR 産物の鎖長。

    すべての Locus から 2 塩基識別が可能な良好なマススペクトルが検出され、高密度 MS チップ上でマイクロサテライト差

    長識別が行えることを確認できた。

    4. 微少サンプルスポット用ソフトウェアの試作

    4.1 高密度 MS チップ微小サンプルスポットからの連続測定

    1000spot/cm2 の密度に搭載された微小サンプルスポットに対して、レーザー照射設定パラメーターの条件検討を行い、

    連続測定でマススペクトルの検出を行った。

    測定サンプルは表-7 に示した 6Locus で各 6 回ずつ測定を実施した。得られたマススペクトルを図‐19 に示す。

    図-19 高密度 MS チップから連続測定で得られたマススペクトル。

    6Locus とも測定した全スポットから、2 塩基識別が確認できるマススペクトルが検出できた。

    Locus 繰り返し 鎖長 配列

    1805C07 TC 43 cttttccatactgacagctctctctctctctctctctctctca

    0416F10 AT 52 ctgttctcttgaggccttttatatatatatatatatatatatatatatatac

    0206E09 AT 46 gaacatgggtttcagaatatatatatatatatatatatcacactag

    1202H10 TC/AC 58 gtcatagacacacactctttctctctctctctctctctctctcacacacacacacacg

    1009H04 ATT 49 catgcccatgttttaatcaaattattattattattattattattttaag

    1308A11 ATT 47 tgaaaataagagatctccaagattattattattattattattattac

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    17 mV[sum= 277 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 1805C07_PE_piezo_0001.C4 4 Feb 2005 13:45 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    010

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    9.1 mV[sum= 145 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 0416F10_PE_piezo_0001.C4 4 Feb 2005 13:47 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    010

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    44 mV[sum= 698 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 0206E09_PE_piezo_0001.C4 4 Feb 2005 13:48 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

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    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    38 mV[sum= 613 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 1202H10_PE_piezo_0001.C4 4 Feb 2005 13:49 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    010

    20

    30

    40

    50

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    70

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    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    55 mV[sum= 883 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 1009H04_PE_piezo_0001.C5 4 Feb 2005 13:50 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    010

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    30

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    70

    80

    90

    100

    %Int.

    11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000 20000Mass/Charge

    24 mV[sum= 380 mV] Profiles 1-16 Smooth Av 20

    Data: 1308A11_PE_piezo_0001.C5 4 Feb 2005 13:51 Cal: oligo_T20_T100mer 4 Feb 2005 13:45 Kratos PC Axima CFRplus V2.4.0: Mode linear_neg, Power: 140, P.Ext. @ 15000 (bin 176)

    1805C07 0416F10 0206E09

    1202H10 1009H04 1308A11

    図-18 高密度 MS チップ上から得られた各 Locus のマススペクトル。6 つの Locus

    すべてから 2 塩基差識別が可能なマススペクトルが得られた。

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    %Int.

    12000 14000 16000 18000

    Mass/Charge1[c].A

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].B

    0

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    60

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    %Int.

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    Mass/Charge1[c].C

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    20

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    100

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    Mass/Charge1[c].D

    0

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    100

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    Mass/Charge1[c].E

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    %Int.

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].A

    0

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    60

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    100

    %Int.

    12000 14000 16000 18000

    Mass/Charge1[c].B

    0

    20

    40

    60

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].C

    0

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    100

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    Mass/Charge1[c].D

    0

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].E

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].F

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    Mass/Charge1[c].A

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].B

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].C

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    100

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].E

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    Mass/Charge1[c].A

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    100

    %Int.

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    Mass/Charge1[c].B

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    100

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    100

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    100

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    100

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    Mass/Charge1[c].C

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    100

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    100

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    Mass/Charge1[c].B

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    100

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    100

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    Mass/Charge1[c].D

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    100

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    0

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    80

    100

    %Int.

    12000 14000 16000 18000

    Mass/Charge1[c].F

    1805C07→

    0416F10→

    0206E09→

    1202H10→

    1009H04→

    1308A11→

    Spot1 Spot2 Spot3 Spot4 Spot5 Spot6

  • 多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究

    研究成果の詳細報告

    28

    6 つの Locus で、測定したすべての微小スポットから 2 塩基差識別が可能なマススペクトルが検出された。

    このことから、微小スポットに対してレーザー照射設定パラメーターを設定することで高密度 MS チップに対して連続測定

    が可能であることが確認された。

    4.2 マスシグナル処理方法の検討

    微小スポットから検出される微弱な信号から 2 塩基差識別を行う場合に、有効シグナルの選択積算機能が有効である。

    今回作成したソフトウェア(MS ビューア)で有効シグナルの選択積算機能を用いて表示したマススペクトルを図-20 に示す。

    図-20 MS ビューアメインウインドウ(a)と積算ピーク表示サブウインドウ(b,c)。

    選択されたピークは青色で表示される。

    ここでは、1スポットに対して16回のレーザーショット行いマススペクトルを検出しているが、レーザーショット毎に検出ピー

    クに大きなばらつきがあることが確認できる(図-20,a)。検出状況が良好な 3 ピーク(図中青色)を積算することで検出され

    た全ピークを積算した場合に比較して分離が明確になることがわかる。(図-20、b,c)

    また、質量分析計では得られる情報は質量数であるが、多型解析を行う場合は塩基差として表示する必要がある。そこ

    で、質量数情報を、塩基数情報として表示するソフトウェアの試作を実施した(図-21)。

    メイン画面とマスター登録画面から構成され、メイン画面には、測定結果がサンプル毎にまとめられて表示される。また、

    得られたマススペクトルから、質量数情報を鎖長情報に変換して表示することができる。測定を行う Locus については,

    マスター登録画面に配列情報、予想される測定質量数などを入力しておき、これを元に、質量数情報を塩基数情報に

    変換される。

    a)MS ビューアメインピーク。選択され�