産科混合病棟における 助産ケア提供状況と他科患者の入院基準調査目的...
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公益社団法人日本看護協会 J a p a n e s e N u r s i n g As s o c i a t i o n
産科混合病棟における
助産ケア提供状況と他科患者の入院基準
岩澤由子 福井トシ子 山西雅子
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調査目的
• 産科混合病棟では、助産師が助産業務と看護業務の
両方を担うことが多く、新生児へのMRSA感染リスクの
高さも指摘されている。
• 産科混合病棟における助産ケア提供状況と 産科病棟への他科患者の入院基準を明らかに
することを目的とした。
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調査方法
調査対象 • 全国の分娩取り扱い病院: 1,109 施設
調査方法 • 郵送による無記名自己記入式質問紙調査
• 分娩取り扱い病院の看護部長宛に郵送
• 調査協力の承諾を得た後、産科病棟看護管理者
(看護師長)が調査票に記載し、郵送回収した。
調査期間 平成24年8月1日~9月30日
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調査内容
調査内容 産科混合病棟における助産師の他科患者受け持ち状況
産科患者の入院先病室の決定方法、他科患者が混合
病棟に入院する際のルールや基準とその遵守状況 等
論理的配慮
本調査は日本看護協会研究論理委員会の承認により
実施した。調査への協力は自由意思であり、個人名や
施設名が特定されることはない。
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調査票回収状況
調査票回収率
• 病院調査票: 54% (595施設/1,109施設)
「混合病棟」に関する質問セクションの有効回答 (質問セクションのすべての質問に回答した病院を
有効回答とした場合。)
• 病院調査票: 453施設(有効回答率76.1%)
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産科単独病棟と混合病棟の違い: 常勤助産師数・年間分娩件数
有効回答571病院のうち、80.6%(460病院)が混合病棟である。 婦人科以外の診療科も含む混合病棟は、常勤助産師数と年間分娩件数がもっとも少ない。しかしながら、年間助産師1人あたりの分娩介助件数では、産科単独病棟と大きな差がなく、少ない助産師数で分娩介助を行っている状況が伺える。
産科単独病棟(111病院)
産科と婦人科の 混合病棟 (110病院)
婦人科以外の診療科も含む混合病棟 (350病院)
常勤助産師数 (平均値±標準偏差)
27.8±15.3(人) 19.4±10.9(人) 13.6±8.4(人)
常勤助産師数 (最小-最大)
4-95(人) 0-72(人) 0-72(人)
年間分娩件数 (平均値±標準偏差)
773.2±431.8(件) 622.4±348.3(件) 358.5±262(件)
年間分娩件数 (最小-最大)
20-2810(件) 61-2400(件) 8-2533(件)
年間助産師1人あたり の分娩介助件数
28.1(件) 40.3(件) 26.5(件)
院内助産あり 18病院(16.2%) 12病院(10.9%) 27病院(7.7%)
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看護職員数に占める、助産師数の割合 (すべての病院の助産師割合を算出した際の中央値)
産科単独病棟では、看護職員数に占める助産師割合の中央値が93.3%。 産科と婦人科の混合病棟では73.1%、婦人科以外の診療科も含む混合病棟では
51.9%まで低下する。 混合病棟での、看護師と助産師の業務分担の整理と明文化が重要になる。
93.3%
73.1%
51.9%
6.7%
26.9%
49.2%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
看護師+准看護師割合
助産師割合
産科単独病棟 産科と婦人科の 混合病棟
婦人科以外の診療科も含む混合病棟
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常に他科診療科の
患者は受け持たな
い 117(25.8%)
分娩介助の時のみ
他科の患者は受け
持たない
102(22.5%)
分娩第1期の患者
が入院した時点で、
他科の患者は受け
持たない
57(12.6%)
その他
26(5.7%)
分娩時も含めて
常に
108(33.0%)
ときどき
162(49.5%)
ごくまれに
57(17.4%)
同時に受け持つ
270(59.6%)
「産科と他科患者を同時に受け持ちますか」
(有効回答数=453病院) 複数回答
全体の59.6%の病院で、「助産師が産科と他科患者を同時に受け持っている」
そのうち33%の病院では分娩介助の時も含めて、常に「同時に受け持つ」
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産科患者の入院先病室の決定方法と 母子同室について (有効回答数=453病院)
産科患者のみの病室へ入院(他科患者とは別室)が48.8%でもっとも多く、次いで他科患者
と同室が38.0%である。
混合病棟での、新生児のMRSA感染の予防には早期母子同室が重要であると指摘され
ているが、完全母子同室は14.9%にとどまり、産科単独病棟(17.8%)に比較して、完全
母子同室の割合が少ない。母子異室も7.9%だが、産科単独病棟では5.9%である。
施設 %
産科患者は基本的に個室へ入院 60 13.2%
産科患者のみの病室へ入院
(他科患者とは別室) 221 48.8%
他科の患者と同室 172 38.0%
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他科診療科患者が混合病棟に入院、もしくは産科患者が入院している病室に入院する際のルールや基準の有無と内容 (有効回答数 =453病院)
9割は基準あり
基準あり 412(91%)
感染疑い・感染患者は除外
就学前の小児科は除外
ターミナル期は除外
男性は 除外
不穏・認知の症状がある患者は除外
クリニカルパス適応者のみ入院可
その他
351 219 187 355 230 9 73
85.2% 53.2% 45.4% 86.2% 55.8% 2.2% 17.7%
ルールや基準はどの程度守られているのか?
施設 %
完全に守っている 222 54.4%
ケースバイケースで入院患者を受け入れざるをえない
117 28.7%
ルールはあるが、緊急があれば入院を受ける 63 15.4%
ルールはあるが、ほとんど守られていない 2 0.5%
その他 4 1.0%
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0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
120.0%
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 120.0%
病棟の看護職員に占める助産師数の割合
混合病棟の病床に占める産科病床割合 34.8%
41.7% 全体中央値
(330
病院)
52.8%
54.2% 全体中央値 (330病院)
中央値
中央値
混合病棟の入院ルールや基準がない、もしくはルールがあっても守ることが難しい病院の産科病床割合と助産師の割合は全体の中央値より小さい。
混合病棟への他科患者入室ルールや基準があっても 守ることが難しい病院 (有効回答数=159病院)
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考察
• 助産師が分娩時も含めて、他科患者を恒常的に受け持つなど、
看護師との業務分担が曖昧な状況が明らかとなった。
• 新生児への感染リスクが指摘されている中で、他科患者の入院
基準が遵守されていない状況や完全母子同室が少ない状況が
明らかとなった。
• しかしながら、入院基準が遵守されていない施設は産科病床の
占める割合や、常勤看護職員数に占める助産師数割合が低い
など、やむを得ない状況があると推察される。
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マネジメントの仕方を変えることで、母子にとって、働く助産師や看護職にとって、安全で安心な出産環境を整備できないか?
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考察 ~ユニットマネジメントの提案~
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母子にとって安全で安心な出産環境の整備、すなわち、①母子
が感染リスクから回避される、②母子を継続的に観察し、異常
の早期発見を行う、③助産師が継続的に母子に寄り添い、ケア
を提供することを実践するために「産科科混合病棟における
ユニットマネジメント」を提案する。
【ユニットマネジメント啓発冊子】
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産科ユニットを決め、産科と患者が別室となるように、区域管理(ゾーニング)
を行う
産科患者のための空床を確保する
看護師との業務分担を整理し、業務分担ルールを明文化する
他科患者の入室基準を作成し、病院全体で共有する。基準を遵守する
考察
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自分たちの病院が、妊産褥婦と新生児にとってどのような病院
でありたいのか、ビジョンを策定し、病院全体で共有する。
ビジョンを実現するには、どのような産科混合病棟であれば
いいのか、あるべき姿を決めることが重要。