cascaded fast による特徴点検出 ep09097 長谷川昂宏 指導教...

1
Cascaded FAST による特徴点検出 EP09097 長谷川昂宏 指導教授:藤吉弘亘 1. はじめに 画像からコーナーを検出するには,局所領域の勾配情報 に基づいた Harris のコーナー検出法 [1] や,決定木を用い て高速なコーナー検出が可能な Features from Accelerated Segment Test (FAST)[2] が用いられている.FAST は高 速にコーナー点を検出できるが,テクスチャが複雑な自然 領域においてコーナーらしくない点を多く検出する問題が ある.そこで,本研究ではコーナーらしい点のみを高速に 検出するカスケード化した FAST を提案する. 2.FAST FAST は注目画素 I p とその周囲 16 画素の輝度 I px 比較し,式 (1) により Brighter, Similar, Darker に分類 する. S px = { Brighter I p + t I px Similar I p - t<I px <I p + t Darker Ipx Ip - t (1) ここで,t はしきい値を表し,Brighter または Darker 9 画素以上連続した場合に注目画素をコーナーとして定義 する.この定義に従って,コーナーと非コーナーのラベル を与えた画素を入力として,機械学習により決定木を学習 する.コーナー検出時は注目画素をトラバーサルすること でコーナーであるかを判定する. しかし,テクスチャが複雑な自然領域においてコーナー らしくない点を多く検出する問題がある.そこで,自然領 域から検出されるコーナーらしくない点と人工物領域から 検出されるコーナーらしい点の周囲の画素と注目画素の関 係の傾向を調査する.図 1 の縦軸は周囲の画素値と注目画 素の画素値の差分値,横軸は円周上の隣り合う画素の角度 を示す.コーナーらしい点の周囲 20 画素,16 画素,12 素の差分値は大きな値が連続し,同一の傾向があることが わかる.一方,コーナーらしくない点の周囲の画素の差分 値には,ばらつきがあることがわかる. 1: コーナー点の傾向の違い 3.Cascaded FAST 上記の調査に基づき,本研究では以下の 2 つの条件を用 いたコーナー検出法を提案する. 1 つ目は周囲 {20, 16, 12} 画素の Brighter または Darker の連続性による条件,2 目は周囲 {20, 16, 12} 画素のオリエンテーションの類似性 による条件である.この 2 つの条件を用いて非コーナーの 検出の抑制を実現する. 2: 提案手法の流れ 3.1. 提案手法の流れ 提案手法では Brighter または Darker の連続性とオリエ ンテーションの類似性を用いてコーナーらしい点のみを検 出する.以下に提案手法の流れを述べる. Step1Brighter または Darker の連続性による条件 (1) により周囲 {20, 16, 12} 画素を式 BrighterSimilarDarker に分類する (2(a))Brighter または Darker それぞれ {11, 9, 6} 画素以上連続する場合に注目画素を コーナー候補点とする. Step2:オリエンテーションの算出 コーナー候補点に対して連続する Brighter または Darker の始点から終点までの角度を求める.その角度を 2 等分す る方向をオリエンテーションとする (2(b)). Step3:オリエンテーションの類似性による条件 周囲 16 画素のオリエンテーションと周囲 12 画素のオリエ ンテーションの角度 θ1,周囲 16 画素のオリエンテーショ ンと周囲 20 画素のオリエンテーションの角度 θ 2 を求める (2(c))θ 1 Th 1 2 Th 2 の条件を満たす場合,注 目画素をコーナーとして出力する.ここで,Th 1 Th 2 しきい値を表し,周囲 {20, 12} 画素のオリエンテーション はそれぞれ分解能が異なるため,それぞれのしきい値を用 いる. 3.2. カスケード化による高速化 提案手法では,周囲 16 画素を参照する決定木,周囲 12 画素を参照する決定木,周囲 20 画素を参照する決定木を 生成し,3 つの決定木をカスケード状に並べることで高速 化する.FAST と同様に決定木の学習は ID3 のアルゴリズ ムに従って決定木を学習する. 4. 評価実験 提案手法の有効性を評価実験により示す. 4.1. 実験概要 Harris のコーナー検出 (Harris) では,コーナーらしさ をレスポンス値として出力する.これを適切なしきい値に より処理して検出された点を真のコーナーとして,FAST と提案手法の F 値を比較する.実験に用いる画像は自然領 域,人工物領域が含まれる画像 130 枚を使用し,全ての画 像における F 値の平均を算出する. 4.2. 実験結果 コーナー数に対する F 値を図 4 に示す.図中の緑線は Harris の適切なしきい値を示す.コーナー数が 950 個のと き,提案手法は FAST より高い F 値となった.図 3 に各 手法のコーナー検出結果を示す.FAST では自然領域から 多くの非コーナーを検出しているが,提案手法では抑制し つつ,Harris と同じようなコーナー点のみを検出している ことがわかる.次に各手法の処理時間の比較結果を表 1 示す.提案手法の処理時間は Harris と比較すると約 11 高速であり,135fps でリアルタイム処理が可能である. 3: コーナーの検出結果 4:F 値による比較 1: 速度の比較 手法 処理時間 [ms] Harris 81.1 FAST 4.5 提案手法 7.4 5. おわりに 提案手法では FAST をベースとし,周囲 {20, 16, 12} 画素の連続性とオリエンテーションの類似性を用いること で,コーナーらしい点のみを高速に検出することが可能で ある.今後は Cascaded FAST に適した学習法について検 討する予定である. 参考文献 [1] C. Harris, et al., A Combined Corner and Edge Detector , Proc. of Alvey Vision Conference, pp. 147-151, 1988. [2] E. Rosten, et al., Machine Learning for High-speed Cor- ner Detection , ECCV, pp. 430-443, 2006.

Upload: others

Post on 12-Oct-2019

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Cascaded FASTによる特徴点検出EP09097 長谷川昂宏 指導教授:藤吉弘亘

1.はじめに画像からコーナーを検出するには,局所領域の勾配情報

に基づいた Harrisのコーナー検出法 [1]や,決定木を用いて高速なコーナー検出が可能なFeatures from AcceleratedSegment Test (FAST)[2]が用いられている.FASTは高速にコーナー点を検出できるが,テクスチャが複雑な自然領域においてコーナーらしくない点を多く検出する問題がある.そこで,本研究ではコーナーらしい点のみを高速に検出するカスケード化した FASTを提案する.2.FAST

FASTは注目画素 Ip とその周囲 16画素の輝度 Ip→x を比較し,式 (1) により Brighter, Similar, Darker に分類する.

Sp→x =

{Brighter Ip + t ≤ Ip→x

Similar Ip − t < Ip→x < Ip + tDarker Ip→x ≤ Ip − t

(1)

ここで,t はしきい値を表し,Brighter または Darker が9画素以上連続した場合に注目画素をコーナーとして定義する.この定義に従って,コーナーと非コーナーのラベルを与えた画素を入力として,機械学習により決定木を学習する.コーナー検出時は注目画素をトラバーサルすることでコーナーであるかを判定する.しかし,テクスチャが複雑な自然領域においてコーナー

らしくない点を多く検出する問題がある.そこで,自然領域から検出されるコーナーらしくない点と人工物領域から検出されるコーナーらしい点の周囲の画素と注目画素の関係の傾向を調査する.図 1の縦軸は周囲の画素値と注目画素の画素値の差分値,横軸は円周上の隣り合う画素の角度を示す.コーナーらしい点の周囲 20画素,16画素,12画素の差分値は大きな値が連続し,同一の傾向があることがわかる.一方,コーナーらしくない点の周囲の画素の差分値には,ばらつきがあることがわかる.

図 1 : コーナー点の傾向の違い3.Cascaded FAST上記の調査に基づき,本研究では以下の 2つの条件を用

いたコーナー検出法を提案する.1つ目は周囲 {20, 16, 12}画素の Brighterまたは Darkerの連続性による条件,2つ目は周囲 {20, 16, 12}画素のオリエンテーションの類似性による条件である.この 2つの条件を用いて非コーナーの検出の抑制を実現する.

図 2 : 提案手法の流れ3.1.提案手法の流れ提案手法では BrighterまたはDarkerの連続性とオリエ

ンテーションの類似性を用いてコーナーらしい点のみを検出する.以下に提案手法の流れを述べる.Step1:BrighterまたはDarkerの連続性による条件式 (1)により周囲 {20, 16, 12}画素を式Brighter,Similar,Darkerに分類する (図 2(a)).Brighterまたは Darkerがそれぞれ {11, 9, 6} 画素以上連続する場合に注目画素を

コーナー候補点とする.Step2:オリエンテーションの算出コーナー候補点に対して連続する Brighterまたは Darkerの始点から終点までの角度を求める.その角度を 2等分する方向をオリエンテーションとする (図 2(b)).Step3:オリエンテーションの類似性による条件周囲 16画素のオリエンテーションと周囲 12画素のオリエンテーションの角度 θ1,周囲 16画素のオリエンテーションと周囲 20画素のオリエンテーションの角度 θ2 を求める(図 2(c)).θ1 ≤ Th1, θ2 ≤ Th2 の条件を満たす場合,注目画素をコーナーとして出力する.ここで,Th1と Th2はしきい値を表し,周囲 {20, 12}画素のオリエンテーションはそれぞれ分解能が異なるため,それぞれのしきい値を用いる.3.2.カスケード化による高速化提案手法では,周囲 16画素を参照する決定木,周囲 12

画素を参照する決定木,周囲 20画素を参照する決定木を生成し,3つの決定木をカスケード状に並べることで高速化する.FASTと同様に決定木の学習は ID3のアルゴリズムに従って決定木を学習する.4.評価実験提案手法の有効性を評価実験により示す.

4.1.実験概要Harris のコーナー検出 (Harris) では,コーナーらしさ

をレスポンス値として出力する.これを適切なしきい値により処理して検出された点を真のコーナーとして,FASTと提案手法の F値を比較する.実験に用いる画像は自然領域,人工物領域が含まれる画像 130枚を使用し,全ての画像における F値の平均を算出する.4.2.実験結果コーナー数に対する F 値を図 4 に示す.図中の緑線は

Harrisの適切なしきい値を示す.コーナー数が 950個のとき,提案手法は FASTより高い F値となった.図 3に各手法のコーナー検出結果を示す.FASTでは自然領域から多くの非コーナーを検出しているが,提案手法では抑制しつつ,Harrisと同じようなコーナー点のみを検出していることがわかる.次に各手法の処理時間の比較結果を表 1に示す.提案手法の処理時間は Harrisと比較すると約 11倍高速であり,135fpsでリアルタイム処理が可能である.

図 3 : コーナーの検出結果

図 4 : F値による比較

表 1 : 速度の比較手法 処理時間 [ms]

Harris 81.1FAST 4.5提案手法 7.4

5.おわりに提案手法では FAST をベースとし,周囲 {20, 16, 12}

画素の連続性とオリエンテーションの類似性を用いることで,コーナーらしい点のみを高速に検出することが可能である.今後は Cascaded FASTに適した学習法について検討する予定である.参考文献[1] C. Harris, et al.,“A Combined Corner and Edge Detector”, Proc. of Alvey Vision Conference, pp. 147-151, 1988.

[2] E. Rosten, et al.,“Machine Learning for High-speed Cor-ner Detection”, ECCV, pp. 430-443, 2006.