第66 回理学療法科学学会 学術大会1 第66 回理学療法科学学会 学術大会...

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1 66 回理学療法科学学会 学術大会 テーマ:理学療法の国際化Ⅱ 平成 25 9 28 日(土)・29 日(日) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部 9 28 日(土) 【午前】 1000 開会 丸山仁司(理学療法科学学会 会長) 10101055 一般演題Ⅰ(ポスター) 〔第 1 会場:101〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 座長:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 川崎東太 1.運動前後における下腿周径の推移 松崎秀隆・他(福岡国際医療福祉学院理学療法学科) 2.角速度の違いによる内側広筋と外側広筋の筋活動の違いについて 阿武由佳・他(川﨑病院リハビリテーション科) 3.理学療法学生のストレス対処能力と社会的スキルの実態 本多裕一(柳川リハビリテーション学院理学療法学科) 4.臨床実習における社会人基礎力の経時的変化 池田拓郎・他(国際医療福祉大学福岡保健医療学部) 5.評価実習前における学部 3 年生の研究への興味・関心内容 木村和樹・他(国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室) 6.理学療法士の所属と経験年数の違いが目標設定の最重要視する項目に及ぼす影響 貞清秀成・他(介護老人保健施設マロニエ苑リハビリテーション室)

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Page 1: 第66 回理学療法科学学会 学術大会1 第66 回理学療法科学学会 学術大会 テーマ:理学療法の国際化Ⅱ 平成25 年9 月28 日(土)・29 日(日)

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第 66 回理学療法科学学会 学術大会

テーマ:理学療法の国際化Ⅱ

平成 25 年 9 月 28 日(土)・29 日(日)

国際医療福祉大学福岡保健医療学部 9 月 28 日(土) 【午前】 10:00 開会 丸山仁司(理学療法科学学会 会長) 10:10~10:55 一般演題Ⅰ(ポスター)〔第 1 会場:101〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

座長:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 川崎東太

1.運動前後における下腿周径の推移

松崎秀隆・他(福岡国際医療福祉学院理学療法学科)

2.角速度の違いによる内側広筋と外側広筋の筋活動の違いについて

阿武由佳・他(川﨑病院リハビリテーション科)

3.理学療法学生のストレス対処能力と社会的スキルの実態

本多裕一(柳川リハビリテーション学院理学療法学科)

4.臨床実習における社会人基礎力の経時的変化

池田拓郎・他(国際医療福祉大学福岡保健医療学部)

5.評価実習前における学部 3 年生の研究への興味・関心内容

木村和樹・他(国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室)

6.理学療法士の所属と経験年数の違いが目標設定の最重要視する項目に及ぼす影響

貞清秀成・他(介護老人保健施設マロニエ苑リハビリテーション室)

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11:05~11:50 一般演題Ⅱ(ポスター)〔第 1 会場:101〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

座長:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 池田拓郎 7. ACL 損傷者の階段降段動作における足関節底背屈角度と関節モーメントの分析

野村高弘・他(国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

8.近赤外分光法を用いた体組成成分の検討-除脂肪量指数,脂肪量指数の比較-

貞清香織・他(国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

9.6 週間の縄跳び運動介入による全身持久性および体組成変化

久保晃・他(国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

10.膝屈・伸筋力に関与する骨盤周囲筋に関する研究

東裕一・他(高木病院リハビリテーション部)

11.小型センサによる膝関節動作角度計測の信頼性

柊幸伸(国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

12.小型モータを使用した振動刺激が上腕二頭筋の関節位置覚に及ぼす影響

小野田公・他(国際医療福祉大学大学院理学療法学分野)

13.異なる荷重位における体幹回旋動作の運動学的分析

池野晃成・他(柳川リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【午後】 13:30~14:50 特別講演Ⅰ 韓国の理学療法士教育における国際化・・・・・・・・・・・・・・5

講師:Konyang University Lee, Byoung-Kwon 司会:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 黒澤和生

15:00~16:20 特別講演Ⅱ 青年海外協力隊への道 ・・・・・・・・・・・・6

講師:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 長谷真由 司会:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 金子秀雄

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9 月 29 日(日) 10:00~10:50 一般演題Ⅲ(口述)〔第 1 会場:101〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

座長:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 高野吉朗

14.健常成人における端座位と腹臥位での股関節内・外旋関節可動域の男女差

韓 憲受・他(国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

15.歩行開始に与える影響

白石幸太郎・他(たたらリハビリテーション病院リハビリテーションセンター)

16.下腿の形態的特徴と跳躍力との関係

伊東雅也・他(ひらまつ病院リハビリテーション部)

17.言語教示の違いによるインサイドキックスキルに与える影響

早渕澪・他(高木病院リハビリテーション部)

11:00~11:40 一般演題Ⅳ(口述)〔第 1 会場:101〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

座長:国際医療福祉大学福岡保健医療学部 江口雅彦

18.頸部矢状面位置変化が閉眼時片脚立位保持時間に与える影響

木村和樹・他(国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室)

19.ミラーセラピーの効果

田中千尋・他(川﨑病院リハビリテーション科)

20.クラシックバレエダンサーにおける身体的特徴

品川志津香・他(しん整形外科リハビリテーション&スポーツクリニック)

11:45

閉会 金子秀雄 (第 66 回理学療法科学学会 学術大会大会長)

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特別講演Ⅰ

13:30~14:50

特別講演Ⅱ

15:00~16:20

第 1 会場(101)

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特別講演Ⅰ

「韓国の理学療法士教育における国際化」

Konyang University Department of Physical Therapy Lee, Byoung-Kwon

建陽(コニャン)大学は,医学部・保健医療系列を中心に特化した,20 年の歴史を持つ

4 年制私立大学だ.理学療法学科は,大田(テジョン)メディカルキャンパスにあり,現

在学科開設から 4 年目を迎え,4 人の教授と 80 人の学部生,そして 15 人の大学院生で構

成されている. 建陽(コニャン)大学理学療法学科は,「何を教えるか」よりも「どのように教えるか」

を重視し,国際的な競争力をそなえた人材の養成を目標に掲げている. 現在韓国の理学療法士協会が実現を目指す専門理学療法士制度に歩調をそろえるかたちで,

整形徒手理学療法,児童理学療法,スポーツ理学療法,水中理学療法,心肺理学療法,神

経系理学療法などに特化したプログラムを土台に教育過程が組まれている. また,国際化

に向けたプログラムの一環として,準備段階である 1 年次は建陽(コニャン)大学病院の

協力のもと実習プログラムを実施し,2 年次は日本の国際医療福祉大学との実習交換プロ

グラム,3 年次はドイツ,スイスの大学・リハビリ専門病院での実習,4 年次は韓国全国

にある大学,リハビリ専門施設での臨床実習を通して学生は専門分野に対する体系的な教

育を受けている. さらに 4 人の国際臨床外来教授(Axell Hennes, Lasse Thue, Dichter, Heidi Sinz)を委嘱し,在学生を対象に特講,そして臨床実習指導を行っている.学生は

これらの経験を通じ,国際的な感覚を身につけている.また,2013 年 1 学期からオース

トリア ダニューブ大学(Donau University in Austia)と複数学位過程の一環として筋骨

格系理学療法修士課程を開設し,グローバル化の流れにも積極的に対応している.理学療

法の歴史は,ヨーロッパから米国に,米国からアジアへ,特に東北アジアへとその中心が

移動している. 建陽(コニャン)大学理学療法学科は,理学療法グローバル化の先頭走者

として,新しい歴史を作る小さい礎となるため日々邁進している.

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特別講演Ⅱ

「青年海外協力隊への道 ~世界も,自分も,変えるシゴト~」

国際医療福祉大学福岡保健医療学部作業療法学科 長谷麻由

1.青年海外協力隊発足の経緯と現状

日本の国際協力のスタートは,1954 年(昭和 29 年)にコロンボプランに加盟した

日を持って始まった.国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)

は,日本政府の ODA 予算によりボランティア事業を実施している.開発途上国からの

要請に基づき,それに見合った技術・知識・経験を持ち,「開発途上国の人々のために

生かしたい」というボランティアを募集し,選考,訓練を経て派遣している.その主

な目的は,(1)開発途上国の経済・社会の発展,復興への寄与,(2)友好親善・相

互理解の深化,(3)国際的視野の涵養とボランティア経験の社会還元である.その事

業の一つである青年海外協力隊(Japan Overseas Cooperation Volunteers:JOCV)は,

1965 年(昭和 40 年)のラオス派遣に始まり,約 45 年間で 88 カ国(アジア,アフリ

カ,中東,中南米,大洋州,東欧)へ計 38,300 名(2013 年 7 月 31 日現在)の隊員を

派遣している.

2.理学療法士に対する要請

理学療法士に対する派遣要請は,1979 年のマレーシア,コスタリカから始まり,2013

年度までに 62 カ国,415 名の隊員が派遣されている.派遣地域は,アジア 143 名,ア

フリカ 48 名,中東 33 名,中南米 121 名,大洋州 63 名,東欧 7 名で,国別ではマレー

シア(30 名)への派遣が最も多く,中華人民共和国,パプアニューギニア,フィジー

と続いている.2011 年から 2013 年までの3年間の理学療法士の要請は 99 件あり,領

域別では身体障害 59.6%,発達障害 18.2%,CBR10.1%,老年期障害 5.0%,混合

7.1%,地域別ではアジア,アフリカ,大洋州で身体障害,中東では発達障害,中南米

は身体障害・発達障害への要請が多い特徴がある.

3.JOCV に参加した理学療法士は何を感じ,何を得るのか

文化も価値観も異なる任国での効率的な技術移転は,日本の考え方や自分の固定観

念に固執せず,任国の文化を尊重・受容し,近隣の人々や同僚とのコミュニケーショ

ンを取ることが必要である.異なる文化,価値観の中で,隊員は必ず一度は挫折を経

験し,日本にもう帰りたいというような経験をするが,これを克服することによって,

コミュニケーション能力,問題を発見して解決する力,異文化に適応する力が身に付

く.このような経験が,その後の生き方や自身の理学療法へ与える影響について,協

力隊 OB 理学療法士の活動報告をもとに考える.

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一般演題Ⅰ(ポスター)

10:10~10:55

第 1 会場(101)

演題 1~6

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1. 運動前後における下腿周径の推移

松崎秀隆 1),光安信次 2),吉村美香 1,3)

1) 福岡国際医療福祉学院理学療法学科

2) 福岡大学スポーツ科学部

3) 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻

【はじめに】筋力発揮に関するメカニズムについては多くの先行研究がなされており,

それぞれの身体運動に必要とされる筋肉が選択的に収縮,弛緩を繰り返し身体運動が

遂行されていることが分かっている.それら先行研究の中には,筋肉を頻回に使用す

ると収縮能力が低下し,いわゆるパンプ・アップを認めるとの報告も散見される.し

かし,このパンプ・アップを含めた疲労についての定義は様々であり,生化学的な検

査が実施される事も多く,証明方法は煩雑となっている.今回,バレーボール競技に

おいて頻回に繰り返されるジャンプ動作に着目し,足関節の底背屈運動に関与する下

腿筋群が試合前後,体表でどのような変化を認めるのかについて下腿周径という簡便

な方法から測定し推察を試みた.

【対象】九州大学バレーボール連盟 1 部リーグに所属する大学の男子バレーボール選

手 13 名,平均年齢は 20.0±0.9 歳(年齢範囲 19~21 歳),平均身長 182.1±5.6 ㎝,

平均体重 72.1±6.9 ㎏.その中には,九州代表選手や西日本代表選手も含まれている.

対象者には倫理面への配慮として,口頭と文書にて研究の主旨を説明するとともに,

研究参加への同意撤回の自由について承諾を得て実施した.

【方法】4 日間の強化合宿の最終日に 3 セット以上試合に出場した選手に対し,メジ

ャー(S7190 ミナト医科学株式会社)を使用し,両膝関節を 90°屈曲させた背臥位に

て両側の下腿最大周径を同一検査者が同様の方法で測定した.測定 1 回目は合宿初日

の起床時,2 回目は合宿最終日の試合終了直後.測定結果より比較検討を実施し,統

計処理には SPSS12.0 J for Windows を用い 5%未満を統計学的有意とした.

【結果】試合前後の下腿周径に有意差は認めず,平均で右 0.4 ㎜(P 値=0.97),左 0.2

㎜(P 値=0.83)の増加に留まった.また,ポジション別においても同様の結果とな

った.逆に全選手の数値が,試合前後で殆ど変化しないということが分かった.

【考察】試合前後にバレーボール選手の下腿三頭筋には,「パンプ・アップを認める」

という仮説を立て本研究を実施した.パンプ・アップとはトレーニングを実施すると,

筋肉に血液が流入し腫れあがった状態になることを指す.しかし,今回の結果から試

合前後で下腿三頭筋に大きな変化は認めないということが分かった.もちろん,筋肉

が活動すると乳酸や二酸化炭素などの代謝産物が生成され,これらの影響で毛細血管

の透過性に変化を認めパンプ・アップを認めてもおかしくない.しかし,ジャンプ動

作は急激に筋力発揮が必要とされる動作(初動負荷)であり,十分な筋力発揮時間を

満たす(終動負荷)時間がなかったため,パンプ・アップを認めなかったと考える.

その他にも多くの理由が考えられるため,学会ではより多角的視点から報告させてい

ただく.

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2. 角速度の違いによる内側広筋と外側広筋の筋活動の違いについて

阿武由佳 1),久保下亮 2),柿田徹郎 3)

1)川﨑病院リハビリテーション科

2)福岡医療専門学校理学療法科

3)長崎記念病院リハビリテーション部

【目的】整形外科疾患などにおいて,大腿四頭筋の中で内側広筋は特に萎縮しやすく,

筋力増強運動に対する反応も遅く,回復しにくい筋として理学療法の中で苦慮する傾

向にあるとされている.さらには内側広筋の萎縮において,外側広筋との不均衡が問

題とされている報告もある.このため,内側広筋の選択的なトレーニング法確立のた

め様々な検討が報告されているが,角速度の違いにおける内側広筋の筋活動を検討し

た報告は少ない.本研究の目的は,角速度の違いが内側広筋と外側広筋の筋活動に及

ぼす影響を筋電図学的に検討し,内側広筋のより効果的トレーニング法確立のための

一助を得ることである.

【方法】対象は,下肢に整形外科疾患の既往のない健常者 7 名(男性 5 名,女性 2 名)

の両脚(14 脚),平均年齢 22 歳(21~23 歳)とした.対象者には研究内容を口頭にて

説明し同意を得た.測定肢位は座位とし,60deg/sec,180deg/sec,300deg/sec の 3

種の角速度で等速運動を行い,その際の内側広筋と外側広筋の筋放電量を測定した.

被験者には等速運動を 5 回行わせ,5 回目の筋放電量を測定した.筋電測定にはメデ

イエリアサポート社製の Km-818MT を,等速運動には酒井医療株式会社製 BIODEX

SYSTEM3 を用いた.データ処理は,3 種の角速度による内側広筋と外側広筋の筋活動を

積分し,外側広筋に対する内側広筋の割合を求めた.統計学的解析は,角速度ごとの

内側広筋と外側広筋の活動比率を比較するために,一元配置分散分析を用い,Tukey

法による多重比較を行った.有意水準は 5%とし,それ未満を有意とした.

【結果】各角速度における外側広筋に対する内側広筋の活動比率の平均値と標準偏差

は 60deg/sec で 0.70±0.15,180deg/sec で 0.83±0.28,300deg/sec で 0.78±0.45 と

なった.内側広筋と外側広筋の筋活動は,60deg/sec,180deg/sec,300deg/sec の各

角速度間において有意差は認めなかった.

【考察】筋力強化運動の効果には運動速度特異性があり,その効果にはある程度の幅

がある.低速度と高速度での運動のどちらが効果的であるかは,様々な意見がありは

っきりと報告されていないが,筋パワーを改善するためには高速度での運動の方が効

果的であるという.先行研究から 60deg/sec,180deg/sec,300deg/sec の 3 種の角速

度で訓練を行い,①低速より高速での筋力強化が運動速度に与える効果は大きいこと,

②180deg/sec での訓練は 60deg/sec,300deg/sec での測定速度全域における筋力に対

して有意な効果を示すという報告もある.本研究では内側広筋と外側広筋の活動比を

求めており,それは角速度間で有意差はみられなかった.すなわち,内側広筋が外側

広筋よりも働きやすい角速度は見出せなかった.しかし,内側広筋と外側広筋の比率

をみると,180deg/sec,300deg/sec,60deg/sec の順に内側広筋と外側広筋がバラン

ス良く働いていることが分かった.よって,内側広筋と外側広筋両方の筋をバランス

よくトレーニングする際に 180deg/sec は 60deg/sec や 300deg/sec よりも有用である

可能性が考えられる.今後の課題として,関節の角度や肢位を限定した研究によって,

内側広筋のより効果的なトレーニング方法の検討をしていきたいと考える.

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3. 理学療法学生のストレス対処能力と社会的スキルの実態

本多裕一 1,2)

1) 柳川リハビリテーション学院 理学療法学科

2) 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻

【目的】理学療法実習は一般に特殊な緊張状態におかれる場であると言われる.また

実習施設より,学生の精神面の弱さや社会的スキル,即ち「報告・連絡・相談」など

社会人としての基本的態度の形成や対人関係の構築能力の不足について指摘されるこ

とが多い.これらのことから「ストレス対処能力や社会的スキルそれぞれの能力に長

けた学生ほどストレスを感じることなく実習を全うできるのか」との疑問をもった.

そしてこの実態を把握し,相互の関連を比較検討することで事前介入指標の一つとす

ることを着想し,本調査を実施した.

【方法】文面及び口頭にて調査の趣旨,個人情報保護について説明し,同意を得た学

生(男 38 名 女 13 名 25.6±6.0 歳)に対し,評価実習の前後に 3 種類の質問紙調査を

行った.ストレス対処能力について SOC(sense of coherence)縮約版 13 項目スケー

ル(東京大学大学院医学系研究科健康社会学・Antonovsky 研究会作成)を実施した.

同スケールは,スコアが高いほど「ストレス対処能力」が高く,範囲は 7~91 点,一

般平均は 54~58 点とされる.社会的スキルについては,Kiss-18(菊池 2007)を実施

した.同スケールは,得点が高いほど対人関係の社会的スキルが高く,範囲は 18~90

点,大学生平均で男 56.40 点,女 58.35 点とされる.実習終了後,ストレスの程度に

ついての質問(選択肢:「実習中にストレスを 1.大変感じた,2.少し感じた,3.あま

り感じなかった,4.全く感じなかった」)を行った.SOC と Kiss-18 の関係について,

スピアマンの相関係数を求めて検証した.また両スケールそれぞれの平均点以上と平

均点未満の者を抽出し,両方とも平均点以上,SOC のみ平均点以上,Kiss-18 のみ平均

点以上,両方とも平均点未満の 4 群に分けた.そしてストレスの程度について,選択

肢 1.2(ストレスを感じた)と 3.4(ストレスを感じなかった)を回答した者に群分け

して分割表を作成,クラスカル・ワーリス検定を用いて検証した.有意水準は 5%と

した.

【結果】SOC の平均は実習前で 50.4±8.80,実習後で 51.40±9.40,Kiss-18 の平均は

実習前 57.53±9.47,実習 57.55±9.27 であった.両者の相関係数は,実習前 r=0.53,

実習後 r=0.41 であった.分割表では,各群とストレスの程度について関連はみられず,

各群で 63.6~91.0%(全体で 70.6%)という多数の学生がストレスを感じたと回答した.

【考察】ストレスに適切に対処する能力と対人関係構築の能力がスキルとして無関係

でないことが考えられた.しかし実習現場において,これらの能力が一定に作用する

とは言えないことが示唆された.

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4. 臨床実習における社会人基礎力の経時的変化

池田拓郎,中原雅美,松田憲亮,永井良治,黒澤和生

国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】

経済産業省は,「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必

要な基礎的な能力」を「社会人基礎力」と定義し,意識的に育成していくことが重要

としている.社会人基礎力には医学教育における情意領域の内容が含まれており,社

会人基礎力を育成することは専門職としての資質の向上に繋がると考えられる.

本研究では,臨床実習指導に活用するための基礎資料にすることを目的に,社会人

基礎力評価シートを用いて,臨床実習を経験した学生の社会人基礎力の経時的変化を

検討した.

【方法】

対象は,平成 24,25 年度に臨床実習に参加した本学部理学療法学科 4 年生のうち,

本研究に参加同意の得られた 58 名(男性 33 名,女性 25 名),平均年齢は 20.6±0.8

歳であった.本学部の臨床実習は,第 3 学年の後期から開始され,検査測定の技能向

上を目的とした検査測定実習を 2 週間,関連病院にて実施している.その後,本格的

な臨床実習として,臨床実習Ⅰおよび臨床実習Ⅱを各 8 週間,実施している.

方法は,学生に検査測定実習前後と臨床実習Ⅰ・Ⅱ後の社会人基礎力を自己評価し

てもらった.社会人基礎力評価シートは,3 分類 12 項目の能力要素(前に踏み出す力;

主体性・働きかけ力・実行力,考え抜く力;課題発見力・計画性・創造性,チームで

働く力;発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロール力)

により構成されている.本研究では,能力要素項目別に,5 段階にて評価した.統計

解析は,学生の検査測定実習前後と臨床実習Ⅰ・Ⅱ後の社会人基礎力の能力要素を 12

項目別に,一元配置分散分析および多重比較(Bonferroni 法)を用いて比較した.有

意水準は,5%未満をもって有意とした.

なお,本研究は本学倫理規定に基づき,倫理面を配慮して実施した.

【結果】

主体性,働きかけ力,課題発見力,傾聴力,規律性,ストレスコントロールの項目

では,検査測定実習前と比較し,検査測定実習後に有意に向上した(p<0.05).課題

発見力,計画性,創造性,傾聴力,状況把握力,規律性の項目は,検査測定実習前と

比較し,臨床実習ⅠまたはⅡ後に有意に向上した(p<0.05).実行力,発信力,柔軟

性では,有意差はなかった.

【考察】

学生は,臨床実習を経験することにより,チームで働く力については,比較的に早

い段階(検査測定実習後)で,考え抜く力については本格的な臨床実習終了後に,向

上する傾向があった.このことから,学生は医療職の基本となる項目から成長し,最

終的には医療系の学生として,問題解決に向けた考えた行動ができるように成長して

いくと推察する.

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5. 評価実習前における学部 3 年生の研究への興味・関心内容

木村和樹 1),大橋知央 1,2),大平和弥 1),須澤貴 1),中澤環 1),屋嘉比章紘 1,2)

貞清秀成 3),貞清香織 4),小野田公 4),石坂正大 1),久保晃 4)

1) 国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室

2) 国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻

3) 介護老人保健施設マロニエ苑リハビリテーション室

4) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

【目的】

理学療法のスキルアップには臨床・教育・研究の 3 つが重要とである.中でも研究

は,問題解決するために必要な考察をすることが多く,新しい発見があり興味・関心

をより深める.また世間に研究の内容を発表することで情報の共有をはかることがで

きる.興味を持つことで臨床・教育へのバイタリティーにも反映する.自分の興味を

見つけることは理学療法において重要であると考える.

【方法】

国際医療福祉大学理学療法学科学部生三年生 104 名(男性:51 名,女性:53 名)を

対象にアンケート調査を行った.アンケート実施時期は,評価実習前の 6 月に実施し

た.現在,研究として興味のある疾患・領域や身体部位や理学療法評価項目に分けア

ンケートを聴取した.回答は重複回答を許可した.

【結果】

回答数の結果を示す.対象者 104 名であり回収率は 100%であった.

領域:スポーツ障害 59,整形 37,脳卒中 31,健常者 21,小児 20,神経難病 16,

高齢者 12,妊婦 2

部位:足関節 50,膝関節 45,体幹 45,股関節 33,骨盤 21,肩関節 19,すべて 6,肘・

手関節 5,頚椎 3

項目:動作分析 56,筋力 54,関節可動域 43,反応時間 19,感覚 16,転倒予防 15,運

動学習 13,バランス機能 12,姿勢アライメント 6,疼痛 3,その他 15

【考察】

対象はスポーツ障害が半数以上であり,アンケートへの記載には野球やサッカー等

があがっていた.足・膝関節,体幹への関心が強く,学生に下肢に受傷歴がある方が

多くいた.興味・関心は自分が過去に経験したことが反映していた方が多くいた.そ

のため,臨床経験がないため,がんリハビリや呼吸器・内部障害の回答はみられなか

った.動作,筋力,可動性というような動きのあるものへの関心が強かった.見た目

で変化の有無が分かることが興味・関心へ関係していた.項目のその他には車椅子や

靴など福祉機器への関心もあった.まだ臨床での経験がなく自分の経験や知り合いの

経験の興味・関心が多くあったと考える.

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6. 理学療法士の所属と経験年数の違いが目標設定の最重要視する項目に及ぼす影響

貞清秀成 1),石坂正大 2),坂川昌隆 1),鈴木達也 2),木村和樹 2),小川幸宏 2)

加藤龍彦 2),前田和也 2),大橋知央 2),屋嘉比章紘 2),貞清香織 3),小野田公 3)

1) 介護老人保健施設マロニエ苑リハビリテーション室

2) 国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室

3) 国際医療福祉大学理学療法学科

【目的】理学療法士にとって対象者の評価と目標設定は重要である.しかしながら目

標設定に関しては学習する機会が多くないため,臨床の経験や知識,先行研究などを

参考にしながら設定している.先行研究によると目標設定の上で重要な項目は理学療

法評価だとされている.本研究では理学療法士の所属と経験年数によって目標設定で

最重要視する項目の違いを明らかにし,理学療法士の目標設定の一助とすることを目

的とした.

【方法】対象は国際医療福祉大学の栃木地区関連施設に勤める理学療法士 47 名(3.7

±2.1 年)とした.所属は急性期病院,回復期病院,老健施設,通所,訪問の 5 つの所

属に分類した.所属と経験平均年数は急性期病院 28 名(3.3±2.9 年),回復期病院 10

名(3.8±2.8 年),施設 3 名(4.3±1.5 年),通所 2 名(2.0±1.4 年),訪問 4 名(6.5±

3.1 年)であった.対象者には自記式アンケートにより目標設定に最も重要視する評価

及び情報について 1 項目挙げることを自由記載で実施した.得られたアンケート結果

は ICF に基づき身体機能構造,活動,参加,個人因子,環境因子に 5 分類した.また

対象者には本研究の趣旨を説明し同意,許可を得た.

【結果】分類した結果は身体機能 6 名,活動 8 名,参加 0 名,環境因子 7 名,個人因

子 25 名,分類不可 1 名であった.分類不可は以降除外とした.所属ごとでは急性期病

院が身体機能 5 名(19%),活動 2 名(7%),個人因子 18 名(67%),環境因子 2 名(7%)

であった.回復期病院が身体機能 1 名(10%),活動 3 名(30%),個人因子 3 名(30%),

環境因子 3 名(30%)であった.老健施設が活動 1 名(33%),個人因子 2 名(66%)

であった.通所が活動 1 名(50%),環境因子 1 名(50%)であった.訪問が活動 1 名

(25%),個人因子 1 名(25%),環境因子 2 名(50%)であった.経験年数の 1~3 年

26 名と 3 年以上 20 名の 2 つに分類し回答率を記載する.身体機能 4 名(15%),活動

7 名(27%),個人因子 12 名(46%),環境因子 3 名(12%)であった.3 年以上は身

体機能 2 名(10%),活動 1 名(5%),個人因子 13 名(65%),環境因子 4 名(20%)

であった.

【考察】本研究では関連施設の理学療法士は目標設定の際に個人因子である個人の希

望や思い,入院前や病前にどのような生活を送っていたかということを最重要視する

傾向にあることが明らかとなった.また所属による違いでは環境因子である退院先の

状況や今住んでいる環境などといった情報を急性期病院(2%)と比し回復期病院(30%)

や通所(50%)や訪問(50%)では最重要視する傾向にあった.急性期病院では身体

機能の回復や ADL の改善が見込むことができるが,回復期病院や在宅生活では身体機

能や ADL を維持できる環境を最重要視して目標設定しているのではないかと考えられ

る.また経験年数による違いでは身体機能や活動といった評価を 1~3 年目は(42%),

3 年以上は(15%)で最重要視する傾向があった.これに関しては 3 年以上の経験の

ある理学療法士は身体機能や活動よりも個人因子や環境因子を最重要視する傾向があ

る可能性が示唆された.また本研究の限界として対象者の属性に違いがあるため,今

後さまざまな地域や所属で勤務する理学療法士に関して調査していくことにより理学

療法の目標設定の一助とできるのではないかと考えられる.

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一般演題Ⅱ(ポスター)

11:05~11:50

第 1 会場(101)

演題 7~13

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7. ACL 損傷者の階段降段動作における足関節底背屈角度と関節モーメントの分析

野村高弘 1),勝平純司 2),丸山仁司 1)

1) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

2) 国際医療福祉大学小田原保健医療学部理学療法学科

【目的】

我が国のスポーツにおける膝関節疾患の中で,ACL 損傷の占める割合が多く,ADL の

中でも膝関節への負担が大きいと言われている階段降段動作は膝関節の不安定感を訴

えるものが多い.降段動作では歩行と異なり前足部から接地することが多く,COP や

床反力前後方向成分の変化が報告されている.しかし,ACL 損傷者における研究は行

われていない.よって,本研究では足関節底背屈角度と関節モーメントの解析を行う

ことで,ACL 損傷者の降段動作における足関節での戦略を明らかにすることを目的と

した.

【方法】

対象者は ACL 損傷者 10 名(年齢:22.0±4.0 歳,身長:165.9±9.5cm,体重:

60.7±11.4kg)からなる群(以下 ACLD)と下肢に既往がない健常者 8名(年齢:22.0±1.0

歳,身長:166.8±7.8cm,体重:55.5±8.6kg)からなる群(以下 NORMAL)とした.

対象者は実験に参加するにあたり,説明書を用いて十分に説明を受けた後に,同意書

に署名,捺印をした.運動力学的データ計測のため,6 枚の床反力計(AMTI 社)と 12

台の赤外線カメラ(VICON 社)を用いた三次元動作分析システム VICON612(VICON 社)

を使用した.身体における動作計測においては直径 14mm の赤外線反射マーカーを被験

者の身体に 30 箇所貼付した.階段降段動作の計測は歩行率 90 とし,3 回実施した.

階段降段動作は ACLD の健側及び NORMAL の非利き脚より開始し,各々患側及び利き脚

の足趾接地より一歩行周期を計測した.計測パラメータは足関節底背屈角度,足関節

底背屈モーメントとした.ACLD と NORMAL 間の比較には対応のない t 検定を用いた.

危険率は 5%未満をもって有意とした.

【結果】

足関節底背屈角度では ACLD,NORMAL いずれの波形パターンも近似していた. 2 群

間における比較では,ACLD が NORMAL に比較し背屈角度が小さい傾向にあったが,有

意差はみられなかった.足関節底背屈モーメントでは ACLD,NORMAL いずれの波形パタ

ーンも近似していた.2 群間における比較では,一歩行周期の 36~38%で ACLD が有意

に大きな底屈モーメントを示した.

【考察】

2 群間で足関節角度に有意差がみられず,ACLD で有意に大きな足関節底屈モーメン

トを示したことから,ACLD では NORMAL に比較し,足関節軸とのレバーアームが大き

いことが考えられる.すなわち,COP の前方変位,COG の前方変位による床反力の後方

への傾きを減少させる戦略をとっていることが考えられる.

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8. 近赤外分光法を用いた体組成成分の検討-除脂肪量指数,脂肪量指数の比較-

貞清香織 1),石坂正大 2),久保晃 1),丸山仁司 3)

1) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

2) 国際医療福祉大学塩谷病院 リハビリテーション室

3) 国際医療福祉大学

【目的】 現在,肥満や痩せの判断基準として Body Mass Index(BMI)が多く用いら

れている.BMI は,身長・体重で構成されているため,身体組成を反映した健康状態・

栄養状態を表していない.それを解消するため体格の影響を除去した除脂肪量指数

(FFMI),脂肪量指数(FMI)が身体組成の評価に用いられている.FFMI,FMI は除脂

肪量または脂肪量を身長の二乗で除した指数である.

身体組成の計測には,生体電気インピーダンス(BIA)法が多く用いられている.BIA

法は,測定姿勢など測定条件を守らなければならないため身体機能が低下した高齢者

や入院患者は,標準姿勢がとれず測定困難なことが多い.一方,近赤外分光(NIRS)

法は,座位や臥位でも測定可能で短時間で測定することができるため,BIA 法が使え

ない者への評価としても期待できる.本研究では,NIRS 法と BIA 法により計測した脂

肪量から FFMI と FMI 計算し比較することを目的とした.

【対象と方法】対象は,健常男性 34 名(年齢 19.3 ± 0.5 歳,BMI 22.4 ± 5.1 kg/m2)

である.研究内容を十分説明し,参加の同意を得た.体組成測定は,近赤外線方式体

脂肪計(Kett 科学研究所製 Fitness Analyzer BFT2000),BIA 法は体成分分析装置

(バイオスペース社製 InBody520)を用いた.近赤外線方式体脂肪計は,キャリブレ

ーションを行ったプローブを対象者の利き手の上腕二頭筋の最大膨隆部に垂直にあて

て測定した.測定肢位は座位とし,対象となる上肢の肘関節を可能な範囲で伸展した

状態で測定した.体成分分析装置は,床に設置された機器の定位置に立ち,両手で付

属のグリップを持ち,体幹に両腕,下肢が接しない姿勢で測定した.統計解析は,対

応のあるt検定にて測定機器の差を検討し,更に相関性を検討するため,Pearson の

相関係数を求めた.

【結果】各機器で計測された脂肪量から指数を出した.NIRS 法において FFMI の平均

値は 18.8±2.8kg/m2であった.BIA 法では 18.7±1.9 kg/m2と低値を示したが有意な差

は認められなかった.相関係数は r=0.89(p<0.01)と有意な相関を認めた.

FMI は,NIRS 法で 3.6±2.4kg/m2,BIA 法では 3.7±3.7kg/m2であった.両群に有意

差は認められず r=0.96(p<0.01)と有意な相関を認めた.

【考察】健常男性の場合, NIRS 法と BIA 法において FFMI,FMI は同定の値を示すこ

とが示唆された.FFMI,FMI の先行研究で NIRS 法を用いているものは見当たらない.

今回の結果から健常男性の場合に限り,測定機器の違いによる FFMI,FMI の差は認め

られないことが明らかになった.しかし,本研究は対象が限られているため,今後は

対象者範囲を広げ臨床での有用性について明らかにしていく必要がある.

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9. 6 週間の縄跳び運動介入による全身持久性および体組成変化

久保晃 1),丸山仁司 1),原毅 2)

1) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

2) 国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学専攻

【目的】

我々の生活に馴染みがあり,容易に行える縄跳び運動を 6 週間実施した後,6 週間

の脱トレーニング期間を設定し,全身持久性および体組成変化を明らかにすること.

【対象と方法】

対象は,縄跳び運動の実施に支障のない身体状態の 12 名(男性 7 名,女性 5 名,平

均年齢 23 歳).対象者には本研究について十分説明し参加に同意を得た.

縄跳びは週 3 回 6 週間実施した.跳躍条件は 1 分間に 80,120,160 回とし,男女そ

れぞれ BMI 順に各条件に体格差が出ないように割当てた.介入はメトロノームの音刺

激に合わせて,15 秒間の縄跳びとその後立位での 15 秒間の休憩を繰り返す非連続(間

歇)負荷とし,10 分間施行した.

被験者は 6 週間の介入前後とそれに続く 6 週間の脱介入後の 3 回,トレッドミル

(BIODEX 社製 GAIT TRAINER2)運動負荷試験による酸素摂取量(以下 VO2)と体組成

(BIOSPACE 社製 Inbody)を測定した.

VO2 の測定は,各ステージ 1 分間のランプ負荷を施行し,呼気ガス分析装置により 1

呼吸毎に呼気ガスを測定した.また,HR,不整脈も連続的に監視した.エンドポイン

トは,予測最 HR(220-年齢)の 80%への到達とし,各ステージで得られた HR と VO2 か

ら回帰直線を求め,予測最大 HR を外挿し,VO2max を推定した.

体組成は,体重,徐脂肪量,脂肪量,上肢・体幹・下肢筋量を用いた.

統計処理は SPSS12.0J を用いた.介入前の値を基に 6 週間の介入後,それに引き続

き 6 週間の脱介入後(12 週間後)の変化率を算出し,対応のある t 検定で比較した.有

意水準は 5%とした.

【結果】

VO2,体重,徐脂肪量,脂肪量,上肢・体幹・下肢筋量の 6 週間の介入後と 6 週間の

脱介入後(12 週間後)の変化率の間に有意差が認められた.

【考察】

6 週間の介入後と 6 週間の脱介入後(12 週間後)の変化率間の有意な差には 3 つのパ

ターンが確認された.

介入後上昇し,脱介入で低下する(戻る)タイプ(VO2,徐脂肪量,下肢筋量),介入に

よる変化は乏しく,脱介入後低下するタイプ(上肢・体幹筋量),介入後上昇し,脱介

入でさらに上昇するタイプ(体重,脂肪量)であった.体重,脂肪量の変化パターンは

リバウンドとも考えられ,介入終了後も観察を継続する必要性が示唆された.

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10. 膝屈・伸筋力に関与する骨盤周囲筋に関する研究

東裕一 1),榊英一 2),本多裕一 2),吉塚久記 2),浅見豊子 3)

1) 高木病院リハビリテーション部

2) 柳川リハビリテーション学院

3) 佐賀大学附属病院リハビリテーション科

【背景】二関節筋が収縮する場合,一方の関節での作用を重視するなら他端は固定さ

れていた方が都合がよい.膝の運動について考えると,強い力を発揮しようとした場

合,骨盤が安定していなければ強い力が発揮できないことになる.

【目的】今回は骨盤に付着している筋のなかで膝の運動に直接関与しないものを活性

化することによって膝屈・伸筋力が増強されるのかについて調査した.胸腰筋膜の緊

張にも影響すると言われる内腹斜筋と大殿筋に着目した.大殿筋は上部と下部に分け

て調査した.

【対象】専門学校理学療法学科の学生およびグループ内の職員であり,測定当日に膝

痛および膝に明確な既往のない 55 名を対象とした.男性 46 名,女性 9 名であり,平

均年齢 25.2±5.4 歳であった.被験者には説明書を配布した上で同意を得た.なお,

この研究については医療法人社団高邦会の倫理審査会で承認を得ている.

【方法】55名の被験者をランダムに3つの課題に振り分けた.①内腹斜筋の活性化は,

エアスタビライザーを殿部の下に入れた背臥位となり左右へ各 20 回揺すらせた.②大

殿筋上部の活性化は,側臥位にて上側の股関節と膝関節を屈曲し,足部を下側膝に乗

せた肢位から股関節を外旋させた.③大殿筋下部の活性化は,下腹部にクッションを

入れ,股関節軽度屈曲させた腹臥位から膝 90°屈曲で股関節を伸展させた.股関節は

過伸展位にならないよう指示した.いずれも筋収縮を確認しながら実施した.

筋力の測定には SAKAI 医療製徒手筋力計 mobie を使用し,膝関節 90°屈曲位の座位

にて等尺性収縮を牽引法で測定した.運動介入前における体重比の膝伸展筋力,屈曲

筋力は左右ともに3群で有意な差は無かった.

【結果】内腹斜筋の活性化では屈曲筋力が左右ともに有意に増加し(p<0.01),伸展

においても左では増加した(p<0.05).大殿筋上部の活性化では左右ともに伸展筋力

(右 p<0.05,左 p<0.01)と屈曲筋力(p<0.01)で有意に増加した.大殿筋下部の

活性化では屈曲筋力が左右ともに有意に増加した(右 p<0.05,左 p<0.01).

【考察】膝屈筋については大殿筋の上部・下部,内腹斜筋の活性化全てにおいて左右

ともに筋力発揮が大きくなった.膝伸筋については大殿筋上部のみ左右ともに筋力発

揮が大きくなった.膝屈筋はほとんどが二関節筋のために骨盤の stability がより要

求される.筋活動は単独では生じることはなく,周囲筋の組合せが影響していること

も考えられる.

【理学療法学研究としての意義】膝屈・伸筋の機能を十分に発揮させる,あるいは向

上させるには大殿筋上部を活性化する股関節外旋運動を実施した後に膝屈・伸筋力増

強を図ることも1つの手段である.

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11. 小型センサによる膝関節動作角度計測の信頼性

柊幸伸

国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

【はじめに】理学療法臨床では,姿勢・動作の分析が患者の病態把握,治療目標設定,

治療効果判定等で重要な評価となる.臨床場面では,主に観察によって動作分析が行

われ,動画や静止画で記録しても,観察記憶の可視化に過ぎない利用方法である.姿

勢・動作分析を科学的に行い,情報を共有化するためには,計測による数値化が不可欠

である.姿勢・動作の計測方法は多々あるが,臨床場面で応用できるものは少ない.昨

今のセンシング技術の進歩により,小型のセンサが普及し,理学療法分野にも応用可

能となってきた.

【目的】加速度センサと角速度センサが内蔵されたモーションレコーダを用いて,動

作時の関節角度を計測し,その信頼性を検証することでる.

【方法】信頼性の検証は,1 名の検者が 10 名の被検者を対象にそれぞれ 3 回計測を行

い評価した.計測課題は椅子からの立ち上がり動作とした.モーションレコーダ

(MVP-RF8-GC500,microstone)を 2 台使用し,右下腿部と右大腿部の外側に装着した.

立ち上がりの速度,足部の位置は特に規定せず,各々の被験者の選択に委ねた.計測

には動作角度計測ソフト(MVP-DA2-S,microstone)を使用し,X,Y,Z の各軸周りの相対

回旋角度を計測した.モーションレコーダの装着方向と膝関節の運動方向の関係は,X

軸が内外反,Y 軸が内外旋,Z 軸が屈曲伸展方向であった.それぞれ,立ち上がり動作

中の最大角度および動作終了時の静止立位の角度を計測した.計測にあたり被験者に

は研究の目的,計測の手順を説明し承諾を得た.

【結果】全被験者の全施行平均では,動作中の膝関節各運動方向の最大角度は伸展

73.6(±9.24)度,屈曲 0.3(±1.05)度,内旋 15.7(±6.20)度,外旋 0.5(±0.95)度,

内反 16.0(±8.92)度,外反 2.7(±3.41)度であった.動作終了静止肢位の膝関節の肢

位は伸展 73.6(±9.25)度,内旋 14.3(±6.77)度,内反 13.0(±11.27)度であった.3

回の終了肢位計測の検者内信頼性(ICC(1,1))は,内外反 0.23(fair),内外旋

0.46(moderate),屈曲伸展 0.74(substantial)であった.

【考察】同一被験者による繰り返し計測の検者内信頼性は矢状面上の動きである屈曲

伸展方向(センサの計測軸では Z 軸回り)以外は高いものではなかった.今回の課題は,

同一の椅子からの立ち上がり動作であったが,殿部・足部の位置は特に規定しなかっ

た.このことが試行ごとの差をもたらした可能性があった.先行研究によりモーショ

ンレコーダの精度そのものの信頼性は検証されている.ヒトの動作は試行ごとの誤差

が大きく,今回の課題統制でももっと厳密に規定する必要があったと考えた.立ち上

がり動作は,椅座位より立位への課題であり,膝関節の伸展動作に関しては再現性が

高いものと考えた.今回使用したモーションセンサは加速度センサと角速度センサを

内蔵したものであった.回転角度は主に角速度センサの計測値を積分して得られたも

のであると考えられるが,この際の計算誤差や計測前の校正の影響等も検証する必要

がある.

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12. 小型モータを使用した振動刺激が上腕二頭筋の関節位置覚に及ぼす影響

小野田公 1,3),霍明 2),丸山仁司 4)

1) 国際医療福祉大学大学院理学療法学分野

2) 姫路独協大学理学療法学科

3) 国際医療福祉大学理学療法学科

4) 国際医療福祉大学

【目的】

現在,振動刺激を用いることにより片麻痺上肢への痙縮抑制や随意運動の促通や高

齢者の筋力及び身体バランスの向上が報告されている.今回は,小型モータを使用し

た上腕二頭筋への振動刺激が関節位置覚に及ぼす即時効果を明らかにすることを目的

とした.

【対象】

若年健常男性 10 名を対象とした.対象者の年齢,身長および体重は,24.6±3.3 歳,

170.5±5.1 ㎝,65.8±13.0 ㎏(平均±標準偏差)であった.結果に影響を及ぼすと考

えられる整形外科疾患や神経疾患の既往者を除外した.

【方法】

1.関節位置覚検査について

今回は,Barrack 等が行っている関節位置覚検査法である同側肢での再現角度につ

いて実施した.ゴニオメータにて閉眼被験者の肘関節屈曲 60 度,90 度,120 度の 3

条件を開始位置として設定後に 10 秒間保持及び記憶させ,肘関節 0 度まで戻した.

その後,被験者に自覚的開始位置まで戻し,ゴニオメータで測定した.設定角度の 3

条件をランダムに設定し,それぞれ 3 回ずつ測定を行った.

2.振動刺激について

肘関節屈曲 0 度の状態で肘関節の内側上顆及び外側上顆を結んだ直線状にある上

腕二頭筋腱に振動刺激を負荷した.振動刺激は,先行研究に基づき 3 分間とした.振

動刺激には,小型モータ(Flat Coreless Vibration Motor:T.P.C)を用いた.振動

数は 13000rpm(216.7Hz)であった.振動刺激の前後において肘関節の関節位置覚検

査を実施した.

3.統計処理

振動刺激前後での各設定角度の関節位置覚の平均値を対応のある t 検定を行った.

また,刺激直後の 1 回目の値と刺激前の 1 回目の値を使用して対応のある t 検定を行

った.統計処理には,SPSS17.0 を使用した.なお,有意水準は 5%未満とした.

【結果】

関節位置覚検査の各設定角度の測定値において上腕二頭筋腱刺激前後に有意差は

認められなかった.しかし,120 度において角度が低下する傾向がみられた(p 値:

0.07).

振動刺激前の 1 回目の値と振動刺激後の 1 回目の値では,120 度において有意に低

値を示した.また,90°において角度が低下する傾向がみられた(p 値:0.10).

【考察】

今回の結果より上腕二頭筋腱を振動刺激することにより関節位置覚が設定角度よ

り低下する傾向にあることが示唆された.筋肉の腱に 100Hz 程度の振動刺激を与える

と,筋が収縮方向とは逆の方向に伸展したかのような運動錯覚が創出すると報告され

ている.このことからも関節位置角が低値傾向を示すことが考えられる.また,小型

モータの振動刺激でも関節位置覚に影響を与えることが示唆された.

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13. 異なる荷重位における体幹回旋動作の運動学的分析

池野晃成 1),歌島遼太郎 1),金子秀雄 2)

1) 柳川リハビリテーション病院リハビリテーション部

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】

体幹回旋動作は日常生活やスポーツで頻繁に行われる動作である.腰痛発生の身体

的要因には,股関節・胸椎の柔軟性の低下に伴う腰椎の代償動作により腰椎に過度な

ストレスが生じること,また身体各構造・機能の左右非対称性があるといわれている.

しかし,先行研究において荷重の非対称性が腰痛に関与するという報告はない.ま

た非対称な荷重位で体幹回旋を行った際の関節運動に関して述べた報告はない.

そこで我々は,荷重を左右非対称にした状態での体幹回旋動作に伴う骨盤・体幹運

動の変化に着目し,検討した.

【方法】

対象は右利きの健常若年男性 14 名とした.対象者には研究の趣旨と内容を説明し,

同意を得て測定した.使用機器は 3 次元動作分析装置(VICON-MX),床反力計を用い,

両側肩峰,胸骨体,胸骨柄,第 1 胸椎,両側1ASIS,両側 PSIS の計 8 点にマーカーを

貼付した.分析項目は,骨盤前後傾,骨盤回旋,体幹回旋の角度変化とした.

体幹回旋動作は前方注視で肘関節 90°屈曲位,足幅 20cm とした立位にて箱を把持

した状態を開始肢位とした.その後,左右体幹回旋動作により定めたスペースまで箱

を移動させ,再度開始肢位に戻るまでを 1 施行とした.この運動課題を主観的な正中

位荷重,左右最大荷重位の異なる肢位にて計 6 条件,各 3 セット実施した.把持する

箱は動作に影響のない重量のものを使用した.

統計処理は荷重位と回旋方向の 2 要因による反復測定の分散分析と Tukey 法による

多重比較を行った.有意水準は 5%とし,それ未満を有意とした.

【結果】

骨盤回旋及び体幹回旋角度では荷重位で主効果を認めた.また骨盤前後傾では交互

作用を認めた.

荷重側回旋は荷重対側回旋と比較し骨盤前傾角度が大きい値を示した.また,正中

位荷重においては左回旋時に骨盤前傾角度が増大した.

正中位荷重における体幹回旋では左右荷重位と比較し,骨盤回旋角度が有意に増大

し(p≤0.05),体幹回旋角度は有意に減少した(p≤0.05).左右荷重位の間に有意差は

認めなかった.

【考察】

今回の結果より,荷重側回旋時に骨盤前傾角度が増大した.また,荷重位別にみる

と正中位において骨盤回旋角度が増大し,相対的に体幹回旋角度が低下することが明

らかとなった.

偏った荷重立位での体幹回旋動作は,骨盤前傾や腰椎回旋運動を招くため,腰痛予

防の観点から正中位を意識して体幹回旋動作を行うことが望ましいといえる.

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一般演題Ⅲ(口述)

10:00~10:50

第1会場(101)

演題 14~17

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14. 健常成人における端座位と腹臥位での股関節内・外旋関節可動域の男女差

韓憲受 1),久保晃 1),丸山仁司 2)

1) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

2) 国際医療福祉大学

1.目的

理学療法の臨床において,徒手療法を行うための指標として股関節の内旋と外旋の

可動域の評価が伝統的に使用されてきている.関節可動域の肢位は日本整形外科学会

と日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示並びに測定法」によると,股関

節内旋・外旋は背臥位となっている.一部の成書には背臥位以外にも端座位と腹臥位

での測定も紹介されている.このように異なる肢位での関節可動域の測定にも関わら

ず,肢位間の関連が示されている研究が殆どない.そこで,この研究は端座位と腹臥

位における股関節内旋と外旋の可動域の相違を明らかにすることを目的としている.

2.方法

対象者は理学療法士・作業療法士養成施設に在学中の男女学生 154 名,平均年齢 21.8

±4.2歳(男21.9±4.4歳,女21.6±3.5歳),平均身長168.3±7.3cm(男170.9±5.3cm,

女 158.9±5.6cm),平均体重 60.9±11.0kg(男 62.6±10.1kg,女 54.2±12.2kg)であ

った.測定項目は端座位と腹臥位での左右の股関節内旋と外旋であった.関節可動域

の測定順はそれぞれの肢位毎にくじ引きで決め,測定は他動的に 3 回ずつ行い,平均

値を算出した.測定においては,被験者と測定者の両方とも測定が終了するまで測定

結果を知らせない二重盲検法を使用した.統計ソフトは IBM SPSS statistics21 を使

用した.統計方法は男女における端座位と腹臥位の同側同運動方向において 2 元配置

分散分析反復測定を使用した.有意水準は5%とした.

3.結果

男女における端座位と腹臥位の同側同運動方向における 2 元配置分散分析反復測定

の結果,左右内外旋ともに肢位での有意差が認められ,腹臥位での値が有意に大きか

った.また,男女の性差においても有意差が認められ,左右とも外旋においては男性

が有意に大きく,内旋においては女性の方が有意に大きかった.

4.考察

股関節の関節可動域の左内旋,左外旋,右内旋,右外旋おいて,全項目で端座位で

の可動域より腹臥位での可動域が有意に大きかったのは,最終可動域での関節可動域

の制限要因に軟部組織などが関与している可能性があると思われる.その理由の一つ

として関節可動域測定は他動的に行ったため,端座位と腹臥位の肢位の違いが関節可

動域最終域での抵抗に対する最終域感の相違が存在した可能性が挙げられる.

関節可動域の男女間の性差においては,被検者の女性は全員日本人であるため,日

本の生活習慣が影響している可能性があると思われる.即ち畳や床での正座や割り座

などの内旋を強いる姿勢を子供の時から生活の中で習慣化してきたことがそれである.

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15. 歩行開始に与える影響

白石幸太郎 1),長谷川智一 1),永井良治 2)

1) たたらリハビリテーション病院リハビリテーションセンター

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】静止立位は,重心(COG)の真下に床反力作用点(COP)が位置することで保持で

きる.しかし歩行開始では,振り出し側に COP が後側方移動し COG が前方移動するこ

とにより振り出し足の前方回転モーメントが生まれ,初歩を踏み出すことができる.

つまり,COP と COG の最大乖離距離が下肢の振り出しに大きく影響すると考えられる.

そこで本研究では,COG に対する COP の最大移動距離が下肢の振り出しにどのように

影響するのか,バイオメカニクス的視点から検討することを目的とした.

【方法】対象者は本研究に同意を得られた健常成人男性 7 名.年齢 21.6±0.5 歳,身

長 173.6±8.9 ㎝,体重 71.8±17.4kg であった.動作計測は 3 次元動作解析装置(VICON

-MX)と床反力計(ATMI)を用いた.反射マーカーは既定の 15 箇所に貼付した.床反力

計上に静止立位をとり,開始の合図で利き足を床反力計上に踏み出してもらう快適歩

行とした.被験者毎に静止立位の足部の位置を定め,歩行開始位置を固定した.また

歩行開始は,視覚刺激装置から合図し,初歩踵接地までを分析した.歩行パターンは

歩行開始時の COG の位置を調整するために,補高にて重心後方変位させた群(後方重心

群)と補高なしで歩行する群(正常群)の 2 群とした.後方重心群は正常群より 11.4±

5.1mm 後方に変位していた(p<0.01). VICON-MX から得られたデータより,①COG に

対する COP の最大移動距離(後方・側方),②直立位から初歩踵接地までの距離(歩幅),

③歩行開始の合図から初歩踵接地までの最大進行加速度を算出した.分析項目は,①2

群の COG に対する COP の最大移動距離(後方・側方)の比較,②2 群の歩幅と最大進行

加速度の比較,③COG に対する COP の最大移動距離と歩幅の関係について比較した.

統計処理は,対応のある 2群の差の検定(t検定)とピアソンの相関係数の検定を行い,

危険率は 5%未満とした.

【結果】COG に対する COP の最大移動距離(後方,側方)は後方重心群で 29.4±16.7mm・

39.1±11.6mm,正常群で 41.1±24.0mm・42.4±18.8mm であり,正常群の後側方移動距

離は増大していたが有意差を認めなかった(p>0.05).歩幅は正常群 57.7±6.9cm,後

方重心群 53.4±5.3cm となり正常群の方が有意に増大を認めた(p<0.05).最大進行加

速度は正常群 1.96±0.38m/s2,後方重心群 1.68±0.25m/s2となり正常群が有意に高値

となった(p<0.01).また,歩幅と最大進行加速度の相関関係は相関係数 0.65 となり

正の相関を認めた(p<0.05).COP 最大移動距離と歩幅の相関関係は 0.54 となり正の

相関を認めた(p<0.05)が,左右最大移動距離とは相関を認めなかった(p>0.05).

【考察】本研究より,正常群と後方重心群を比較すると,正常群では COG に対する COP

の最大移動距離は,増大を示したが 2 群間に有意差は認められなかった.一方で,歩

幅・加速度は有意に増大を示した.また,歩幅と進行加速度の間には正の相関を認め,

COP 最大移動距離と歩幅との間にも正の相関を認めた.このことから,歩行開始にお

いて COG は前方に位置していた方が,COG に対する COP の最大移動距離は増大し,歩

幅・加速度も増大する.したがって,下肢は振り出しやすくなると考えられる.一方,

COG が後方変位していると,COG に対する COP の最大移動距離は有意に減少し,歩幅・

加速度も有意に減少した.したがって,下肢は振り出しにくくなると考えられる.

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16. 下腿の形態的特徴と跳躍力との関係

伊東雅也 1),岡本龍児 2)

1) 医療法人ひらまつ病院リハビリテーション部

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】

リハビリテーションにおいて,ジャンプ動作は体力測定や前十字靭帯再建術後の競

技復帰の判定基準などに用いられる.これまでに,跳躍力と筋力の関係性についての

報告には,BIODEX などが使用され,跳躍力と筋力との間には高い相関関係が存在する

ことが報告されている.しかし,スポーツ現場では BIODEX などを使用することは困難

である.また,筋力以外に跳躍力との関係を報告したものは,ほとんど見当たらない.

そこで今回,下腿の形態的特徴と跳躍力との関係を調査することで,スポーツの現場

において簡易的な跳躍力の指標,競技復帰への一助になると考える.

【方法】

対象は,一般大学生の男性 22 名(21.8±0.7 歳)とした.対象者には事前に研究内

容を説明し,参加への同意を得た.形態測定として,身長,体重,大腿周径,下腿周

径,アキレス腱長を測定した.アキレス腱長は超音波診断装置 famio5 (TOSHIBA 社製)

を用いた.跳躍力の測定には JUMP-MD(竹井機器工業株式會社製)を用いた.中央値

を境界として跳躍が高かった群(以下,H 群),低かった群(以下,L 群)の 2 群に分類し

検討した.統計処理には対応のない t 検定を用い,有意水準 5%未満とした.有意差

があったものについて重回帰分析を用いて,貢献度の大きさによって順位をつけた.

【結果】

下腿最大周径では,H 群 36.6±1.7cm,L 群 34.8±1.2cm であった.下腿周径差異で

は,H 群 15.9±1.4cm,L 群 14.3±1.2cm であった.除脂肪体重では,H 群 57.5±4.5cm,

L 群 52.6±5.1cm であった.下腿最大周径と下腿周径差異,除脂肪体重における H 群

と L 群との比較では H 群が L 群よりも,有意に高い値を示した(p<0.05).また,変数

増加法の変数選択によって得られた変数は下腿最大周径では標準偏回帰係数 0.47,下

腿周径差異では標準偏回帰係数 0.35 であった.重回帰式の検定の結果は有意であり,

決定係数 R2は 0.56 であった.

【考察】

本研究の結果から H 群は L 群よりも下腿最大周径と下腿周径差異が有意に高値を示

した.下腿周径と下腿筋組成の中で一番大きいとされているヒラメ筋筋力に有意な関

係性があると報告されている.このことから,H 群は L 群よりも,足関節底屈筋群の

筋力が大きく,周径に差がみられたと考えられる.また,H 群は L 群よりも除脂肪体

重が有意に重いことが確認できた.これは H 群が L 群よりも筋肉量が多いことが考え

られる.脂肪が少なく,筋肉量が多い選手では,高く飛べる可能性があることが示唆

された.最後に,今回の研究より,高い跳躍には足関節底屈筋群の筋力,筋肉量が必

要となり,スポーツ選手の体力測定や競技復帰の際には,数ある評価の中で特に下腿

最大周径や下腿周径差異に着目して評価を行うことが重要であると考えられた.今後

は,対象者の運動習慣を統一し,各種目別に分けて研究を行うことにより,跳躍に関

する,より精度の高い因子を検討することができると考える.

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17. 言語教示の違いによるインサイドキックスキルに与える影響

早渕澪 1),金子秀雄 2)

1) 高木病院リハビリテーション部

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】

運動学習において,言語教示の違いによる達成率向上への効果は,内的焦点(以下

IF)よりも外的焦点(以下 EF)の方が高いとされている.しかし低い技術者に対して

は,IF が効果的であるとの見解もあり一様ではない.またサッカー競技において使用

頻度の高いインサイドキックや,フォームに与える影響の報告はないのが現状である.

そこで今回は,言語教示の違いによるインサイドキックスキルに与える影響を検証し

た.

【方法】

対象はサッカー競技経験のない女性 20 名とし,実験の目的と方法を十分に説明し書

面にて同意を得た.対象者は無作為に IF 群・EF 群の各 10 名ずつ分け,IF 群に「軸足

はボールの横に体重を乗せるようにしておき,蹴る足は足首を 90°に固定しつま先は

外に向けたまま足を真っ直ぐ振り出す」,EF 群に「軸足は体が傾かないようにボール

の横に置き,蹴る足はうちわで仰ぐイメージで的の方に向かってボールを押し出すよ

うにして蹴る」よう各セット前に指示を与えた.5m 離れ的に向けボールを蹴る課題を

10 回×4 セット行い,的が倒れた数を計測した.助走は二歩とし,20 秒に一回のペー

スで蹴らせた.ボールに対するインパクト時のフォーム分析のため,三次元動作解析

装置(VICON-MX)を利用した.対象者へのマーカ貼り付け位置は,左右の肩峰と股関

節・膝関節外側・足関節外果・第 5 趾 MP 関節・上腕骨外側上顆・尺骨茎状突起・右上

後腸骨棘上の計 15 ヶ所とした.1 セット目の最初と 4 セット目の最後 5 回を測定し,

分析可能な 3 回を抽出して足部の進行方向への速度と膝及び足関節角度の平均値を求

めた.保持テストとして,一週間後には指示は与えず同様の手順で 10 回蹴らせ,的が

倒れた数のみ計測した.期間中は他の対象者と情報交換を行わず,自主的な練習及び

教示内容に関する情報収集は行わないよう注意した.統計学的解析では,前後半各 20

回及び一週間後の達成率(的中した数/蹴った数×100)の比較として反復測定による

分散分析,初期と最終時での足部の進行方向への速度と膝及び足関節角度の比較に対

応のある t 検定を用いた.なお有意水準は 5%とし,それ未満を有意とした.

【結果】

達成率(前半・後半・一週間後)は IF 群で 32%・35%・37%,EF 群で 29%・47%・

40%となり,EF 群の前後半での比較にのみ有意差が認められた.また足関節角度では

初期から最終で,底屈方向に IF 群は平均 5°・EF 群は 1°変化しており,IF 群にのみ

有意差が認められた.なお,足部の進行方向への速度は両群ともに有意差はなかった.

【考察】

本研究の結果,低い技術者に対しての達成率向上に EF 群の方が優位であることが示

唆された.IF 群では初期と最終での足関節角度が有意に変化しており,的に当てるこ

とより身体に対する意識が集中した事が要因となったと考えられる.ただし一週間後

の持続効果としては,両群間での著明な差は示されなかった.

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一般演題Ⅳ(口述)

11:00~11:40

第1会場(101)

演題 18~20

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18. 頸部矢状面位置変化が閉眼時片脚立位保持時間に与える影響

木村和樹 1),齋藤智慶 2),塩見誠 2),藤家昌利 2),小川幸宏 1)

加藤龍彦 1),前田和也 1),石坂正大 1),貞清香織 3),久保晃 3)

1) 国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室

2) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科学部生

3) 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科

【目的】立位バランスの安定させるためには平衡機能は必要不可欠である.開眼にお

いては視覚のフィードバックは重要な働きをする.しかし,閉眼においては視覚での

フィードバックが行えない.そのため前庭の働きが中心となって片脚立位保持バラン

スをコントロールしている.本研究では頸部を屈曲伸展位にて保持する.即ち矢状面

変化が閉眼片脚立位保持時間に影響を与えるかを検討した.

【方法】対象は健常成人 29 名(男性 20 名,女性 9 名)であった.年齢 21.7±0.9 歳,

身長 168.0±9.2cm,体重 57.9±10.5kg であった.対象には研究内容を十分に説明し

同意を得た.立位バランスとして各条件の姿勢での閉眼片脚立位保持時間を左右計測

した.なお計測時間の上限は 30 秒間までとした.姿勢は閉眼片脚立位にて頸部の位置

を頸部正中位・頸部屈曲位・頸部伸展位の三種類とした.条件は閉眼とした.測定す

る順番はランダムに行なった.

統計処理は閉眼時の各条件において頸部位置の 3 つに分けて繰り返しのある一元配

置分散分析後に Bonferroni の多重比較検定を行った.なお,有意水準は 5%とした.

【結果】

結果を下表に示す.

正中位と伸展位では伸展位の方が有意に低い,屈曲位と伸展位において伸展位の方

が有意に低い結果になった.

【考察】

閉眼時に頸部位置正中位・屈曲位では差はみられない.人は移動時に前方を見て視

覚情報が得られる.しかし日常生活の中では前方だけでなく食事動作などの際に視線

を下に向けることが多く,そのため,日常生活の中での姿勢が多い正中位・屈曲位で

の片脚立位保持が安定していると考える.生活の中で頸部伸展させることは少ないた

め平衡機能を失い,立位バランスを崩す可能性がある.頸部伸展により重心がやや後

方に移動すると同時に,内耳の傾きが変化し平衡感覚に誤差が生じたと考える.

臨床において,前方の情報を得るために前方を向くことは大切であるが,安定した

立位を保つためには無理に前を向くことは重要ではない.その人の生活の中での頸部

の位置が重要になると考える.高齢者は視力が低下する傾向にあり視覚によるフィー

ドバックは少なくなる.そのため頸部の位置は重要であり,立位練習を行う際に注意

するべき点だと考える.

頸部の位置 Mean±SD(sec)

正中位 24.2±8.7

屈曲位 20.4±10.7伸展位 10.6±9.8

*:p<0.05* *

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19. ミラーセラピーの効果 ~視覚刺激・体性感覚フィードバックによる検証~

田中千尋 1),永井良治 2)

1) 川﨑病院リハビリテーション科

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】ミラーセラピー(Mirror Therapy;以下,MT)の主な治療法略は,健側肢の随

意運動を鏡に映し,その鏡像を患側肢に投影させ観察することによって,運動同側の

一次運動野を含む皮質脊髄路の活性化により,患側肢に運動覚を誘発させることにあ

る.しかし,課題条件別の効果に関する報告は少ない.そこで本研究は,他者の上肢

と自身の上肢を用いた MT を実施し,課題条件別の効果について比較することを目的と

した.

【対象】対象者は健常成人女性 11 名.平均年齢は 21.6±0.7 歳であった.対象者には

事前に口頭にて研究内容を説明し,同意を得た.

【方法】MT の運動課題はボール回しとした.ボール回しは,ゴルフボール 2 つを手掌

面に乗せ,手掌面にてボールを回してもらった.右手の場合は時計回り,左手の場合

は反時計回りに回してもらった.運動課題は,視覚刺激と体性感覚をフィードバック

させる自身の上肢を用いる場合と視覚刺激をフィードバックさせる他者の上肢を用い

る場合の 2 つの条件にて MT を行った.ボール回しの 2 つの条件を行う順序はランダム

とし,2 日間で実施した.事前に運動課題を左右それぞれ 30 秒間ずつ実施し,回数を

計測した.回数が多かった方を健側,回数が少なかった方を患側として MT を実施した.

健側肢が鏡に映るように MT を実施し,MT 中は鏡を見るように指示した.運動課題は,

健側にて 30 秒間実施し,30 秒間の休息をとってもらった.これを 1 セットとして 10

セット実施した.運動課題を 10 セット終了後,鏡の背側に置いていた患側肢で,30

秒間の回数を計測し,記録した.MT 介入前の回数を 100%とし,介入前の回数から MT

介入後の回数への変化率を算出し,各課題での比較検討を行った.統計処理では,課

題条件別に一元配置分散分析,多重比較検定を用いた.有意水準は 5%とした.

【結果】自身の上肢を用いた MT 介入後の変化率は 170.0±63.0%,他者の上肢を用い

た MT 介入後の変化率は 158.2±50.5%であった.事前評価と自身の上肢を用いた MT

介入後の変化率,事前評価と他者の上肢を用いた MT 介入後の変化率には,有意な改善

がみられた(p<0.05).しかし,自身の上肢を用いた MT 介入後の変化率と他者の上肢を

用いた MT 介入後の変化率には有意差はみられなかった(p>0.05).

【考察】本研究では,一次運動野の責任領域と示唆されている巧緻的で複雑な手指運

動であるボール回しを運動課題として MT を実施した.自身の上肢を用いる場合と他者

の上肢を用いる場合の 2 つの課題条件にて,両者ともに有意な改善がみられた.一次

運動野への入力は,補足運動野,運動前野,帯状皮質運動野と体性感覚野,頭頂連合

野から送られる.体性感覚は,体性感覚野へ入力され,体性感覚野から一次運動野へ

入力されることにより一次運動野が活性化されたと考える.また,視覚情報は頭頂連

合野で空間認知として統合され,一次運動野へ入力されることにより一次運動野が活

性化し,視覚フィードバックのみである他者の上肢を用いての MT においても,自身の

上肢を用いた MT とほぼ同様の効果が得られたと考える.

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20. クラシックバレエダンサーにおける身体的特徴

品川志津香 1),岡本龍児 2)

1) しん整形外科 リハビリテーション&スポーツクリニック

2) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科

【目的】クラシックバレエのテクニックは人間の肉体の限界を超えた非生理的な動き

である.生理的限界を理解せずに酷使する事で,障害の主たるものが起こる.過去の

研究では,クラシックバレエに特徴的な疾患は報告されているが,身体的特徴の研究

報告は少ない.よって,今回クラシックバレエダンサーの身体的特徴を研究する.

【対象者】広島県のクラシックバレエ教室に通う生徒を対象とした.女性 54 名・平均

年齢:11.6±6.2 とした.

【方法】アンケート・タイトネステスト・関節可動域テスト(ROM-T)・しゃがみ込み

動作・前後開脚・左右開脚の評価を実施した.

アンケートは経験歴,怪我の有無・部位等を調査した.タイトネステスト・ROM-T

は規定に従い実施した.しゃがみ込み動作及び左右前後開脚は規定を設け,各々3 段

階で評価した.前後開脚は左右評価した.

測定データを基に,怪我の有無による身体的特徴の比較を行った.統計解析は,対

応のない t 検定を行った.左右前後開脚・しゃがみ込み動作は Mann-Whitney の U 検定

を行った.有意水準は 5%未満とした.

【結果】アンケート調査による怪我有り群は 54 名中 28 名であった.怪我の有無によ

る特徴の比較を表 1・2 に示した.膝関節屈曲位での右股関節外旋角度・左右股関節伸

展・膝関節屈曲位での左右足関節背屈角度・タイトネステストの FFD・左前前後開脚・

しゃがみ込み動作に有意な差が認められた.(p<0.05)

【考察】本研究のアンケート調査の結果,年齢が高く経験年数が長いダンサーほど,

怪我が多い事が確認できた.また,体重が重いほど,怪我が多い事も確認できた.こ

れは,年齢が高くなるほど,体重が重くなり,身体にかかる負担が大きい為だと考え

る.また,怪我有り群では,ROM‐T の結果から股関節外旋角度・股関節伸展角度・足

関節背屈角度において,柔軟性が低い事が確認された.また,左前前後開脚やしゃが

み込み動作においても,怪我有り群の方が,柔軟性が低く,動作が不十分なダンサー

が多くみられた.クラシックバレエでは,常に下肢を外旋位にさせる事が要求される.

また,アラベスクという動作では股関節を過度に伸展させる.ジャンプ着地後にはプ

リエという,膝関節屈曲・足関節背屈動作が重要となる.股関節外旋・股関節伸展・

足関節背屈の柔軟性が不十分であれば,上記のようなクラシックバレエに特徴的な動

作を,他の関節で代償的にしなければならない為,障害が増加するのではないかと考

える.その為,股関節外旋・伸展角度の柔軟性が高い方が,怪我の発生率は低くなる

のではないかと考える.

本研究の限界として,怪我有り群となし群との間に年齢・体重・経験年数に有意な

差が認められ,比較する 2 群の差が大きい為,純粋な同年代・同性での身体的特徴を

把握するには至らなかった.今後の課題として,クラシックバレエダンサーを各年齢

層に分類し,身体的特徴及び怪我の調査をする必要があると考える.

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特別研究顧問 局  博一(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授) 船山 泰範(日本大学法学部教授 弁護士)編集顧問 藤沢しげ子編集委員  大重  匡 *  赤坂 清和 安藤 正志 黒澤 和生  解良 武士 藤田 博暁

2013年 9月 27日発行

編集発行 一般社団法人 理学療法科学学会

〒 170-0002 東京都豊島区巣鴨 1- 24- 12パブリケーションセンター内理学療法科学学会 事務局

TEL:03-5978-3576

ホームページ URL

http://www.jstage.jst.go.jp/browse/rika/

理 学 療 法 科 学

第 28 巻  特 別 号( 第 6 号 )

理学療法科学 第 28巻 特別号(第 6号)

入 会 案 内

理学療法科学学会に入会希望の方は,ホームページ(下記)を利用して下さい。または郵便振替(用紙は郵便局にあります)にて年会費 5,000円を下記の口座にご入金下さい。通信欄には新入会であること,氏名,雑誌送付先の住所(勤務先の場合は住所と所属・部署名),電話番号をご記入下さい。

  口 座 名:社)理学療法科学学会  口座番号:00170-4-391380

会 員 各 位

1.会費納入について 年度初めは 4月になります。6月前後に会費請求をさせていただきますので,年会費

5,000円を郵便振替にてご入金下さい。その際, 信欄に「平成○○年度会費」とご記入下さい。入金のない会員の皆様には,随時ご請求をさせていただきます。

2.会員自動更新について 退会のご連絡がない場合は,自動的に翌年も会員継続として自動更新されます。

3.異動及び退会について 雑誌の送付先変更や改姓等,退会はホームページ上で修正が可能です。または下記の事務局まで電話・FAXにてご連絡いただくか,郵便振替用紙の通信欄にご記入下さい。

〒 170-0002 東京都豊島区巣鴨 1-24-12 パブリケーションセンター内 理学療法科学学会事務局 TEL:03-5978-3576 FAX:03-5978-4068

関連URL(参照) ICPT(インターネットによる理学療法症例報告データライブラリ) http://www.jstage.jst.go.jp/browse/icpt/

ホームページ URL http://wwwsoc.nii.ac.jp/jpts/

Page 32: 第66 回理学療法科学学会 学術大会1 第66 回理学療法科学学会 学術大会 テーマ:理学療法の国際化Ⅱ 平成25 年9 月28 日(土)・29 日(日)