第2章.支援活動事例集 - cabinet office ·...

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10 第2章.支援活動事例集 2-1.支援活動事例集の目的 支援団体のスタッフにとって,自らの支援スキルを高めていくことは,日々提供す る支援の質を高め,様々な悩みを抱える当事者が円滑に社会復帰していくことにつな がる。 支援スキルを高める方法は様々である。現場において支援経験を蓄積することで支 援に習熟することも重要であるが,自分以外の支援者がどのような支援を行なってい るのかを知ることも効果的である。 しかしながら,自分が所属する支援団体の業務を離れ,他の支援団体を訪問し,そ こで実施されている支援サービスを理解することは実際には難しい。参考となる支援 団体の場所が自組織と地理的に離れている,理解するためのまとまった時間を確保す ることが難しい,自分の担当業務を担える人的な余裕が自組織に無い等,実現を妨げ る理由があるためである。 さらに,現場で目にすることができる支援の背景には,視覚的に把握することが難 しい個々の支援者の判断や意思決定,コツ等の暗黙知が広がっている。これらの暗黙 知については,ただ現場を観察するだけでは理解することが困難である。 支援者個人の暗黙知的なノウハウのみならず,現場で提供される支援の背景には, 重要な活動がある。 例えば,支援サービスが提供されるためには,支援者の所属団体内で行われるカン ファレンス等の内部調整や,他の支援団体等へのリファー等の外部連携の積み重ねが 重要である。しかしながら,これらの活動は他の支援団体からは見えづらい活動でも ある。 このような,現場で目に見える形で提供される支援の背景にあるものを理解するこ とは,適切なタイミングで,より効果的な支援が提供するためには重要であるものの, それを理解することは現場で支援サービスを提供する支援者にとっては非常に難し いと考えられる。 そこで,本事例集では,支援者の興味関心のあるテーマをアンケート結果から導き 出し,テーマごとに企画分析委員の執筆したケースを掲載することで,所属する支援 団体以外の支援に関する情報を提供する。また,当事者に対する支援の背景にある暗 黙知的な要素を可視化することで,事例で言及されている支援者の考え方や意思決定 に関する情報を提供することを目的とする。

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Page 1: 第2章.支援活動事例集 - Cabinet Office · さらに,現場で目にすることができる支援の背景には,視覚的に把握することが難 しい個々の支援者の判断や意思決定,コツ等の暗黙知が広がっている。これらの暗黙

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第2章.支援活動事例集

2-1.支援活動事例集の目的

支援団体のスタッフにとって,自らの支援スキルを高めていくことは,日々提供す

る支援の質を高め,様々な悩みを抱える当事者が円滑に社会復帰していくことにつな

がる。

支援スキルを高める方法は様々である。現場において支援経験を蓄積することで支

援に習熟することも重要であるが,自分以外の支援者がどのような支援を行なってい

るのかを知ることも効果的である。

しかしながら,自分が所属する支援団体の業務を離れ,他の支援団体を訪問し,そ

こで実施されている支援サービスを理解することは実際には難しい。参考となる支援

団体の場所が自組織と地理的に離れている,理解するためのまとまった時間を確保す

ることが難しい,自分の担当業務を担える人的な余裕が自組織に無い等,実現を妨げ

る理由があるためである。

さらに,現場で目にすることができる支援の背景には,視覚的に把握することが難

しい個々の支援者の判断や意思決定,コツ等の暗黙知が広がっている。これらの暗黙

知については,ただ現場を観察するだけでは理解することが困難である。

支援者個人の暗黙知的なノウハウのみならず,現場で提供される支援の背景には,

重要な活動がある。

例えば,支援サービスが提供されるためには,支援者の所属団体内で行われるカン

ファレンス等の内部調整や,他の支援団体等へのリファー等の外部連携の積み重ねが

重要である。しかしながら,これらの活動は他の支援団体からは見えづらい活動でも

ある。

このような,現場で目に見える形で提供される支援の背景にあるものを理解するこ

とは,適切なタイミングで,より効果的な支援が提供するためには重要であるものの,

それを理解することは現場で支援サービスを提供する支援者にとっては非常に難し

いと考えられる。

そこで,本事例集では,支援者の興味関心のあるテーマをアンケート結果から導き

出し,テーマごとに企画分析委員の執筆したケースを掲載することで,所属する支援

団体以外の支援に関する情報を提供する。また,当事者に対する支援の背景にある暗

黙知的な要素を可視化することで,事例で言及されている支援者の考え方や意思決定

に関する情報を提供することを目的とする。

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2-2.事例集の活用方法

本事例集で紹介している事例は,「本文」,「脚注」,「概略図」,「所見」,「キーワード

索引」の5つのパートから構成される。

本文には,当事者の基本情報や支援に至るまでの経緯,および支援者が当事者に対

して行った支援のうち,現場において目にすることができる類の支援を記載している。

本文の最後に,企画分析委員を務める有識者から事例に関するコメントを追加してい

る。 また,本文の右側に記載されている脚注部では,本文で言及されている支援の背景

にあるものに言及している。脚注で言及されている内容は,支援時に支援者の判断や

意思決定のような支援者自身の思考に関するもの,支援を行うために行われた支援団

体内部のやり取り,支援団体同士の連携に関するもの,支援団体が考える支援ステッ

プや方針等様々である。また,記載内容に関係する意識調査結果等を参照できるよう

に,関連情報が記載されているページや概要も記載している。脚注部の情報は赤、緑、

青の3色で色分けしている。赤はその事例におけるポイント、緑は支援における留意

事項等、青は本報告書内に記載されている参考情報に言及している。

図表 3 本文と脚注の書き分け

事例の末尾に記載している概略図は,事例の全体の流れや概要を図表で示したもの

である。事例の支援プロセスや,各プロセスにおいて提供された支援や連携先,当事

者の反応といった内容を振り返る際に利用してほしい。

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図表 4 概略図の内容

(*省略)

本報告書の最後には,事例の中で言及されているキーワードを索引可能な形で掲載

している。索引ワードは,「当事者の行為・状態」,「支援」,「発達障害」,「精神障害

等」の4つの観点から整理している。情報収集時,該当する索引ワードが記載されて

いるページに移動することで,効率的に参照性の高い情報のみをピックアップして読

むことができるようにしてある。

2-3.支援活動事例

本事例集は,全16の事例により構成されている。これらの事例は,企画分析会議

の委員が所属する支援団体における事例を元にして作成されている。

また,執筆事例は,意識調査やインタビュー結果を元にしており,支援者のニーズ

や,当事者が重要と考えるポイント等を反映した内容としている。事例の記載内容に

ついては,当事者のプライベートを考慮し,当事者や家族の情報,支援に至るまでの

経緯,支援過程などの情報は,事例のポイントを損なわない形で内容を改編している。

(*実際の事例については、個人情報保護の観点から省略いたします)

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2-4.意識調査結果(当事者調査)

1 当事者調査の位置づけと目的

本調査は困難な状態から回復した当事者の意識調査を実施することでどうい

った支援が有効であったのか,また回復する前と後でどのような変化があった

のか,ということを把握するために実施した。

2 当事者調査の手順,留意点

企画分析委員6名に対し,同委員の所属団体において認める困難な状態から

回復した当事者等の内,現在も同団体と一定の交流を有し,かつ意識調査の協

力を得られた者に対して調査を実施した。調査の際には個人情報流出の防止の

ため,対象者に対して郵送ではなく企画分析委員を通じ,調査票を直接手交す

る形で実施した。また回収の際に当事者等の氏名を記載しないよう留意した。

3 当事者調査概要

企画分析委員を通じて合計 39 名より回答があった。調査内容は回答者が支

援を受ける前と後の状況についてどのような変化があったのか,という点を主

に自由回答形式で回収した。また立ち直るきっかけが何だったのか,という点

を明らかにするため支援団体・支援団体以外による支援において立ち直るきっ

かけとなった支援内容を調査した。

4 当事者調査取りまとめ方針

本調査では多くの回答が自由回答形式であるため,統計的処理はほとんど行

わずに自由回答の内容を事務局でまとめている。

5 当事者調査結果

支援を受ける前と現在(回復期)における表情を選択してもらったところ,

支援を受ける前は④~⑦が多く選択されており,ポジティブな表情(①~③)

を選択した人は皆無であった。現在の表情は①~③が多く選択されているもの

の,一部回答には⑤や⑦を選択している人も存在している(図表 5)。また支援

を受ける前の表情を選択した理由についてたずねたところ,④や⑤を選択した

人は将来に対する不安や自信の無さが理由として挙げられる一方で,⑦を選択

した人はあきらめに近い理由が挙げられている。

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図表 5 問1 支援を受ける前の表情と現在の表情

図表 6 支援を受ける前の表情を選択した理由一覧

表情 理由

おちつかない感じがするから

面接をうけるのが怖かった。

わりかしたのしみにしていた学校にいけなくなったから、ハッピーではなくなった。

中学校でいじめを受けていて、不登校になると自分で決めた時から、家にひきこもり、暗い気持ちのままでいた。

他人とのコミュニケーションが上手くとれずに、アルバイトも決まっていなかったから。

「仕事に就きたい」という気持ちはあったが、実質「14年」もの長いブランクと、これから支援を受ける所に対する「不安」があったため。

どうしていったらいいかわからない、という表情に見える。

不安がちょっとあり落ち着かなかったから。

新し環境にとびこむことや、やっていけるかということがわからず、不安だった。

自分が何をしたいのか分からず、悩んでいたので。

社会に出たいが、何をすれば良いのかわからなかった。

(無回答)

自信がなく不安な気持ち

どうなるかわからず、とりあえず来所してみた。

バイトをさがしたりするのが不定期で真面目に探していなかったから。

不安だった。

不安

人見知りが大きくて全然人と会話ができなかった。

困ってたから。

目標が漠然としていて、これからどうなるか、自分が上手く働けるのか、という不安が大きかった。

表情 理由

仕事もうまくいかない。一歩も決心できず踏み出せない。

正直仕事が見つからなくていいという時期だったからめんどくさいという気持ちだった。

いろいろ仕事を探しても見つからず、焦りや不安がいっぱいな気持ちだから。

とにかく不安だった。自分に自信がなかった。

6 将来に対する不安

・学校は行きたいけど、ふんぎりがつかない気持ち。・人と接したいけど、できない。・将来、どうしていいかわからない。

心身ともにボロボロだったので。病院に行っていたが、しっかり相談できなかったので。

職業訓練の内容等、不向きであった。

仕事をやめて何もかも終わったと思ったから。

元々、将来をどのようにするか具体的な計画を立てず、生計を立てるための働き方をしていて自分が迷っていたから。

どうすればいいか分からず悩んでいたから。

将来がとても不安だったから。生きているのが嫌だったから。生きているのがとても苦痛だったから。

ここにくる前はどうすることもできないと思っていたから。

家にこもりがちで、人と話すのも嫌だったり恐かったから。

家族や周りの理解がなく、ずっと一人でいたので。

病気で体力がなく、他人にもまったく興味がなかったので。

自分の人生はもうダメだと思ってた。

とにかく何をすればよいのか迷っていた。

目の前が暗闇でした。

① ② ③

① ⑤ ⑥

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また現在の表情を①~③に選択した理由として,就職が決まったことや自信を

つけたことなどが挙げられている(図表 7)。

図表 7 現在の表情を選択した理由一覧

表情 理由

今はもう不安な気持ちなんてない。次へ進める。

就職も決まって今まで以上に生き生きしていると思ったから。

サポステに通うようになって少しずつ体力がつき、友人が増えて楽しく生活できるようになったので。

人見知りがなくて人と会話ができるようになった。

任せてもらえる業務量が増えた(信頼されてる感じがする)。

「仕事に就きたい」という気持ちを持ちつつ、少しでも就職に向けて「前向きな心」を持てる自分に「変わりたい」という気持ちが生じてきたため。

すこしづつステップアップしていて自信がついた。

自分のやりたい仕事がある程度明確になったから。

少し自信がつき、自分から動くようになった。

週一ペースで活動できていろんな求人誌とかが置いてあるし、ゆったりとしたスペースでしっかりと探せるから。

少しだけ不安が残る。

気持ち的におちついたので。前より人と話せるようになったと思う。

外に出る事で、気持ちが上向きになり、気分転換にもなったので。

とりあえず仕事が決まったから。

おちついた感じがするから

アルバイト等で外の空気を吸える。いろいろな刺激があってうれしい。

学校にいかなくてもOKと思えたから。

コミュニケーションは上手くとれるようになったけど、長く働ける仕事がみつからないから。

何とかなるかもしれない、という表情に見える。

(無回答)

表情 理由

社会に出ることに前向きになり、気持ちも落ち着いた。

前よりかは暗闇ではなく、きりにちかい状態。

いろんな方がいるのがわかった。

まあまあ普通

プログラムを受けて少し社会人への自覚が出てきて、落ち着きも出てきた。

話してみて少し気持ちが和らいだから。

まだ不安だけど少しは自信がついた。

サポステに来て、人と接することができて、高校にも行っているので、将来の不安が少し減った。

100%安心してはいないが、少しずつ上向きな現状になっているから。

ここにきて、なんとかなると思えたから以前よりは前向きに少し思えるようになってきました。

外に出るようになった。

上記に書いていた出来事が、気持ちのトラウマになっていて、支援を受けたことによって、自分と向き合うきっかけになったから。

(無回答)

仕事に慣れるのが大変だから。

今は仕事が見つからないと大変な事になるという気持ち。

作り笑顔もできる程度、対人にも慣れてきたが不安が消えたわけではないので。

今後の方向性について、悩んでいる為。

なかなか就職できないから。現実がとてもきびしいから。はやく就職して自立したいから。何でもいいからはやく就職したいのにできないから。

7 今もまた不安で悩んでいるから。

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立ち直るきっかけとなった支援団体の支援は何だったかという問いでは,支

援団体の支援者による面談(日常会話も含む)やスキルトレーニングへの参加,

ボランティア活動等も含む就労プログラムへの参加等が挙げられている(図表

8,図表 9)。

図表 8 立ち直るきっかけとなった支援団体の支援とその理由

面談・カウンセリング

支援内容 理由

家庭訪問(OR) 学校に行くきっかけになった。

キャリコンとの面接面接の心構えを学ぶため(面接は全て自己PR、自分の土俵に持ち込む)

スタッフが、なやみ事の相談にのってくれた。自分に親身に向き合ってくれる人がいて、相手を信じて変われるようになったから。

面談今後の活動の流れや自分がどうしていきたいのかについて確認できるから。

決められたペースでの支援プログラムへの参加、支援プログラムでの個別面談、就職に向けてのトレーニングへの参加。

家で何もせずに、ただただブランクの年数を増やすよりは、少しでも「外」へ出て、就職に向けて動く「きっかけ」になったため。

カウンセリング同じ人に話を聞いてもらえて安心感がある。信頼できる。アルバイトがいただける。

個別相談 人と話すのに慣れてきた。

個人面談私の悩みを真剣に聞いてくれて、どうしたら問題を解決できるかを話をしてくれたこと。

家庭訪問(OR) 人と接する機会ができた。

サポステ 面談ちゃんと人と話せるようになった。まだ、目を見て話す事はできない時もあるけど、それでも自分の意思を言えるようになった。

サポステ 悩み相談等を聞き入れてもらえたので。

個人面談 悩みを聞いてもらったり、相談に乗ってもらえたから。

月1回の面談話を聞いてくれるのはうれしい。でも、話を聞くだけでなく、少しでもいいので、その人の悩みを解決できるような会話があってもいいのかもしれない。

面談面談をしんから不安が少なくなった。自信が少しついた。

キャリコンと面談 仕事を探すため、。自分の事を理解するため。

心理士と面談 人との接し方が分からない。人が怖い。

キャリアコンサルタントのセミナーと個別相談親身になって相談してくれる。キャリア面からアドバイスがもらえる。

相談 自分が仕事が出来ない理由がわかった。

日常会話 年関係なく話す事ができたから。

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図表 9 立ち直るきっかけとなった支援団体の支援とその理由

また支援団体以外の出来事で立ち直るきっかけとなったこととしてはアルバ

イトへの参加や家族・他人との交流,面談・カウンセリング,生活習慣の改善

等が挙げられている(図表 10)。

就労プログラム(ボランティア活動等も含む)への参加

支援内容 理由

ワーカーズチャレンジ 相談が良かった。自信がついた。

支援機関内での仕事 スタッフが一緒にいてくれて、困った事が言えるから。

ボランティア、セミナー、体験活動への参加。・人になれるため・仕事に就く前に知識や能力を得るため

ジョブトレーニング この訓練によって自分がどれくらい出来るか

ワーカーズファーム(3ヶ月のクラス制のプログラム)プログラムを通じてコミュニケーションをとる練習や、仕事に向けての心構えを教わり、不安が減ってきたから。

ボランティアへの参加(車いす清掃、巡回図書、花作り)

・コミュニケーション力の向上・会話の幅を広げるため

ボランティア働いたことがないので、雰囲気だけでも経験できたのは良かった。

就活支援相談窓口前を向けるようになった。新しい職を見つけるきっかけになった。

清掃トレーニング朝早く家を出て、外の空気を吸って、体力がつき、とても良かった。慣れるまでは大変だけど、すぐ慣れたら良いと思う。

職業体験 2週間だったが勉強になることがたくさんあった。

資源回収 体力がついたから

就職支援自分だけで仕事を探すよりも支援を通じて仕事が決まったから。

集団での就職活動自分一人では、行動に移りにくいことが集団の中で行う事で自然と競争心を出していけるため。

就労準備トレーニング いろいろ考えられる機会になった。人生を。

就労準備トレーニング 有る程度人のいる所に慣れてきた。

就労支援プログラムのコミュニケーショントレーニング

人とコミュニケーションをとるのが苦手だったけど、少しづつできるようになってきたのが、自分でもわかるくらい自分が変わった。

週2回10人前後が集まり、コミュニケーションや就労準備をするプログラム。

他人と関わる事で、対人関係に対する不安がやわらぎ、就労準備で自分の長所や自己PR、面接練習をする事で、働く事への不安が少しずつ消えていった。

就労準備、面接練習、自己分析など 支援を受けながら、前向きに取り組めたから。

お仕事探しや面接練習を行ったりします。

登録者が集まり、仕事探しをしたり企業の方の話を聞く。

参加することで、より就職について考えることができる。いろんな情報を知ることができる。一歩踏み出すための後押しになる。自分だけではないということを知って頑張ることができる。

決められたペースでの支援プログラムへの参加、支援プログラムでの個別面談、就職に向けてのトレーニングへの参加。

家で何もせずに、ただただブランクの年数を増やすよりは、少しでも「外」へ出て、就職に向けて動く「きっかけ」になったため。

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図表 10 立ち直るきっかけとなった支援団体以外の出来事

支援内容 理由

有償のボランティア活動 仕事に慣れるきっかけなどになった。

ドラム教室 ・外出する機会になった。・人と接することができた。

短期アルバイト短い間でしたが、もう一度働くことができて社会復帰できたので。

アルバイト日々の出来事。対人関係が良好になったこと。誉められた事。頼りにされたこと。

郵便局の短期バイト 仲間意識を感じれた。色んな世界を知れる。

支援内容 理由

家族の存在 具体的に仕事を紹介してくれたりした。

友人一緒に仕事をした事もあるので、その経験や、情報を共有し合っていた。

活動センターでの交流交流が無ければ今頃しっかりしていなかったと思ったのと、交流によってモチベーションが高まった気がするから。

家にこもりがちで、会話も苦手だったが少し改善できた事。

SNSで知り合った方に事情を話したら色々と後押ししてもらって。

ボーズの○○タイム「このような人達でも仕事をし、生きて行けるんだ」と勇気づけられた。

知り合いができた。 一人じゃない。

いろんなところに行っていろんな人と話をしたこと。いろんなところに行って、いろんな人と話をすると、いろんないい刺激を受けて、自然と前向きになれるような気がするから。

ネットのチャット 気軽に会話できる様になった。

アルバイトへの参加

支援内容 理由

福島学院大学(カウンセリング)面談の中で先生に「前はやらなきゃけないかんじだったけど、今はマイペースでできているからいいんじゃない」と言われたから。

ジョブカフェとハローワークの相談履歴書の添削や面接練習をして実際にアルバイトが決まったことがあったから。

就労支援機関への相談 就労などを探す所としていいと思った。

ビーンズふくしまこころの相談に来て、自分の気持ちを整理して、変われるようになった。

自分のことを常に分かってくれる方がそばにいて、気持ちを受け止めていつでも理解してくれるから。

面談・カウンセリング

家族や他人との交流

生活習慣の改善

支援内容 理由

外に出ること。 たのしいから。

生活のための働き方から、目標を作って行動に移す過程。

今までは、生活費のための働き方だったが、サポステを利用することで同じ悩みを持っている人達と同じ方向性を進めながら出来たことで前向きになれたから。

引っ越しをしたこと。住む環境が変わるとその土地になれないといけないと自分なりに頑張ったと思うから。

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6 門田副座長からのコメント

(支援を受ける前後の表情選択の理由より)

不登校の中学生を対象に,私は本人及び保護者との面談記録から,本人の発

言記録をデータとして家庭でのひきこもりから学校に通いだす要因を分析した

ことがある。この分析結果では,2つの要因が見出せた。1つは,「高校に進学

したい」「将来やりたい仕事が見つかった」などの「目標」が見出せたことと,

2つめは「話す友だちができた」などの「友人関係の形成」の要因である。他

方,家庭でのひきこもりが長期化している生徒では,「高校には行きたくない」

「何もやりたいことはない」「勉強もわからない」「友だちもいない」「人と話し

たくない」など,目標が見いだせず,また友人関係の希薄さが見られた。

今回の調査結果でも同様の結果が見いだされている。「支援を受ける前の表情」

及び「現在の表情」で④⑤⑥⑦の選択理由では,「何をしていいのかわからない」

「将来が不安だった」「悩んでいる」「他人にまったく興味がない」など,目標

が見出せず,友人関係も希薄である発言が見られている。他方,「現在の表情」

で①②の選択理由では,「就職が決まった」「仕事に就きたい」「人と会話ができ

るようになった」など,目標が決まり,友人関係も改善し始めている発言が見

られている。そして,特に重要になるのは,目標や友人関係の改善に目を向け

させる動因は何かである。それは,「現在の表情」の③にある選択理由,「気持

ちが落ち着いた」「以前より前向きに少し思えるようになってきた」ことである。

このように,「支援を受ける前後の表情選択の理由」の調査結果より,ひきこも

りから社会的自立に向けた経緯は,以下のように示すことができる(図表 11)。

図表 11 ひきこもりから社会的自立に向けた経緯

ひきこもりに至る要因

目標の未定・友人関係の希薄・精神的不安定

気持ちの落ち着き(精神的安定化へ)

目標の明確化・友人関係の形成・精神的安定

社会的自立へ

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(立ち直るきっかけとなった支援団体の支援及び支援団体以外の出来事より)

上記の図示において,「目標の未定・友人関係の希薄・精神的不安定」から「気

持ちの落ち着き」への支援に関しては,調査結果より,1つは「面談・カウン

セリング」があげられる。当事者の言葉で,「自分に親身に向き合ってくれる人

がいて,相手を信じて変われるようになった」「話を聞いてもらえて安心感があ

る。信頼できる」など,精神的不安定な状態にある当事者への面談を通した相

談員との信頼関係の形成は安心感をもたらす大切な支援であるといえる。

また,2つめには,家族や友人との会話,居場所としての当事者の集い,SNS

での人との交流などの「家族・他人との交流」も精神的な孤立化を防ぐ支援と

なる。

次のステップでの「気持ちの落ち着き(精神的安定化へ)」から「目標の明確

化・友人関係の形成・精神的安定」では,本調査結果での当事者の言葉の「少

し自信がつき,自ら動くようになった」「外に出ることで気持ちが前向きになり」

に見られるように,社会参加に向けて気持ちが動きだす。ここでの支援では,

就労に向けてのコミュニケーション・トレーニングや面接練習などの「ソーシ

ャル・スキル・トレーニング」や「ボランティア活動」など,人と関わる機会

と関わり方の学びがあげられる。

そして,人との関わりが「人見知りがなくて人と会話ができる」ようになる

ことで,当事者はさらに自信を高めていく。「目標の明確化・友人関係の形成・

精神的安定」の過程にある当事者に関しては,ご本人の自信状況やニーズに応

じて,支援者は就労プログラムや短期アルバイト,就職へと支援を展開してい

くことになる。併せて,セルフヘルプなどの当事者の集いも社会的自立に向け

た下支えとなる。

以上,本調査結果はひきこもりの方々への支援に際して,実りある支援の手

がかりを与えてくれている。支援者は,当事者の声やニーズに常に耳を傾けな

がら,当事者と一緒に支援を展開していくことの大切が本調査結果は示してい

るといえる。

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2-5.意識調査結果(支援者調査)

1 支援者調査の位置づけと目的

本調査は事例における支援実施上の留意点を検討する際の参考とするため,

各都道府県において活動を展開している支援団体の職員に対し,困難を伴った

支援事例に係る意識調査を行った。

2 支援者調査の手順,留意点

調査の対象は,平成24年度「困難を有する子ども・若者及び家族への支援

に関する調査研究」において,全国の都道府県・政令指定都市から推薦を受け

郵送調査を行ったところ回答があった支援団体142か所である。調査は各支

援団体の代表者1名,及び支援業務の経験年数が3~5年程度の支援者1名を

対象に行った。実施にあたっては紙面による調査票を作成し,郵送で送付した。

調査票の項目は,平成23年度「困難を有する子ども・若者の支援者調査」

を踏まえるほか,企画分析委員からの意見等を踏まえ作成した。

3 支援者調査概要

本調査は,支援業務を行なっている団体の代表者と本事例集の想定読者層で

ある支援業務の支援年数が3~5年程度の若手の支援者を対象とし,両者の支

援に対する意識の差を抽出することで,組織の運営を行なっている支援者は現

場で活躍する支援者の意識を定量的に把握し,彼らに対して有効なアドバイス

を示す材料としてもらい,現場で活躍する支援者は代表者がどのような意識で

活動しているのかということを定量的に把握し,組織の運営の視点から支援の

方向性を検討するための材料としてもらうことを意図している。

調査は大きく4つの項目に分かれている。1点目は態様別に子ども・若者が

抱える困難の特徴についてであり,2点目は当事者への支援,家族への支援,

法人内での連携,関係機関との連携,と4つの観点から支援において重要であ

る点を整理している。3点目は支援に対する姿勢であり,4点目は支援におい

て必要な能力やそれを育むための教育訓練についてである。

4 支援者調査取りまとめの方針

支援調査の取りまとめについては,前述のとおり本調査は代表者と若手の支

援者に対して調査を実施したため,両者の回答を比較できるような図表を掲載

している(顕著な差が出ていない設問や有益な示唆が得られなかった設問は本

報告書に掲載していない。)。

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(1)代表者と若手の支援者の意識の違いについて

支援をする上で困難を感じる当事者の態様について代表者と若手の支援者と

を比較すると,両者とも約 6 割がひきこりと回答している。また当事者への支

援における重要点(図表 28)では両者にあまり有意な差が見られなかったが,

家族への支援(図表 14),関係機関との連携(図表 15)ついてある程度の差

が見られた。

図表 12 問1(1)支援をする上で困難を感じる当事者の態様について

図表 13 問2(1)当事者への支援について重要だと思うこと

(N=97)

(N=88)

12%

11%

60%

59%

5%

6%

8%

9%

14%

15%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援機関・団体の代表

3~5年程度の支援活動歴を有する支援者

不登校 ひきこもり ニート 非行 その他

45%

52%

30%

35%

9%

6%

6%

6%

51%

42%

19%

5%

50%

55%

33%

30%

8%

6%

8%

14%

49%

34%

16%

5%

0% 20% 40% 60%

支援実践開始前のアセスメントを行うこと

支援対象者の意欲・意向を確認すること

家庭状況や家族の意向を確認すること

支援対象者・家族の状況から適切な支援計画を策定すること

支援対象者から必要以上に依存されないこと

支援対象者から拒絶反応(暴言や暴力)を受けないこと

支援対象者の状況や要求を受け入れること

支援対象者への過度な共感感情移入しないこと

支援対象者・家族の状態の変化に応じて、支援計画を評価・修正していくこと

適切なタイミングで支援対象者を出口(就労・復学等)に誘導すること

支援目的を達した後も継続的に本人状況を把握できるようにすること

その他

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者(N=97) (N=88)

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115

図表 14 問2(2)家族への支援について重要だと思うこと

図表 15 問2(3)法人内での連携について重要だと思うこと

48%

47%

7%

69%

3%

23%

40%

40%

10%

2%

51%

58%

10%

65%

3%

17%

41%

43%

9%

1%

0% 20% 40% 60% 80%

支援対象者と家族の個々の構成員との関係について把握し、アセスメント

すること

支援の目的・ゴールについて家族と支援者が理解していること

支援対象者の家族から支援の進捗状況や支援内容について過度な要望

や抗議を受けないこと

支援対象者の家族との協力や関係を構築すること

支援対象者の家族内部の問題に介入すること

支援対象者と家族との適切な距離を取らせること

支援対象者の家族が支援対象者の障害や特性を受容できるように支援す

ること

家族と支援対象者と一緒に、支援の内容や状況について、評価・確認して

いくこと

家族と支援対象者が周囲(親戚や地域社会など)との付き合い方を知って

もらうこと

その他

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者(N=97) (N=88)

72%

24%

28%

34%

23%

32%

24%

59%

1%

2%

72%

37%

30%

35%

16%

29%

16%

55%

2%

2%

0% 20% 40% 60% 80%

法人内部での役割分担や支援の進め方を明確であること

支援目標や支援計画を見直されていること

有識者など専門家の意見を実践に取り入れること

教育訓練機会があること

支援内容の有効性や妥当性の評価方法が定まっていること

精神的なストレスやリスクを軽減させる仕組みがあること

賃金など処遇面が十分であること

職場の人間関係が良好であること

土日祝日や夜間の仕事がないこと

その他

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者(N=97) (N=87)

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116

図表 16 問2(4)関係機関との連携について重要だと思うこと

支援全体において当事者への支援,家族への支援,法人内での連携,関係機

関との連携,で最も重視することについて設問したところ,若手の支援者の方

が代表者と比較して当事者への支援を重視しており,逆に家族への支援につい

ては代表者の方が若手の支援者と比較して重視している割合が高い(図表 17)。

図表 17 問2(5)困難を抱える子ども・若者を支援する際に,あなたが特に重要だと感じること

54%

53%

48%

32%

63%

54%

35%

32%

2%

59%

55%

55%

34%

79%

66%

25%

34%

4%

0% 20% 40% 60% 80%

支援対象者の個人情報や支援計画に関する情報を関係機関と共有すること

支援者や支援団体の専門分野に関する情報を関係機関と共有すること

子ども若者育成支援推進法に基づく「子ども若者支援地域協議会」など、社会的ネット

ワークが存在すること

関係機関団体等を調整する特定の担当者・担当機関が存在すること

支援対象者等との面接などからニーズを把握し、適切な機関につなげること

支援対象者のニーズの変化に応じて関係機関を含めた支援体制を再構築すること

一人の支援対象者を自立までサポートする個別支援担当者が存在すること

職業訓練等の受入れ先を確保すること

その他

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者(N=96) (N=86)

54%

66%

28%

14%

5%

8%

13%

13%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援機関・団体の代表

3~5年程度の支援活動歴を有する支援者

当事者への支援 家族への支援 法人内での連携 関係機関との連携

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117

支援に対する姿勢として両者に差があった項目は「支援者はゴールを明確に

した支援プログラムを用意すべきである」であり,若手の支援者の方が代表者

と比較して16ポイント高くなっている(図表 18)。

図表 18問3 困難を有する子ども・若者を支援する上で,あなた自身はどのような考えか

支援の終結時期についてであるが,代表者,若手の支援者ともに「本人家族

が必要ないと感じた時点」が約4割となっている。(図表 19)

図表 19 問4 どのような段階に達したら支援を終結するか

22%

84%

69%

38%

44%

21%

49%

38%

65%

16%

30%

48%

51%

56%

43%

53%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援者はゴールを明確にした支援プログラムを用

意すべきである

スモールステップを設定した段階別の支援が有効

である

子ども・若者の想いや話を受容した上で支援計画

を立てるべきである

本来、すべての子ども・若者は問題を解決できる潜

在的な力を持っている

支援者は当事者があつまりそれぞれの問題を解決

できるような環境醸成に努めるべきである

まずは家族の考え方の吟味や当事者を取り巻く環

境への働きかけに取り組むべきである

家族にしかできない役割があるので家族も支援の

一端を担うべきである

それまでの実践を活かした支援の手引きがあれば

よいと思う

そう思う どちらかといえばそう思う

27%

73%

75%

41%

36%

32%

57%

30%

44%

24%

25%

45%

57%

41%

38%

57%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援者はゴールを明確にした支援プログラムを用

意すべきである

スモールステップを設定した段階別の支援が有効

である

子ども・若者の想いや話を受容した上で支援計画

を立てるべきである

本来、すべての子ども・若者は問題を解決できる潜

在的な力を持っている

支援者は当事者があつまりそれぞれの問題を解決

できるような環境醸成に努めるべきである

まずは家族の考え方の吟味や当事者を取り巻く環

境への働きかけに取り組むべきである

家族にしかできない役割があるので家族も支援の

一端を担うべきである

それまでの実践を活かした支援の手引きがあれば

よいと思う

そう思う どちらかといえばそう思う

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者

(N=95)

(N=95)

(N=96)

(N=97)

(N=96)

(N=97)

(N=97)

(N=96)

(N=86)

(N=86)

(N=87)

(N=86)

(N=84)

(N=87)

(N=87)

(N=87)

1%

1%

2%

1%

25%

21%

11%

13%

40%

44%

16%

11%

5%

9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援機関・団体の代表

3~5年程度の支援活動歴を有する支援者

プログラム(又は事業)の終了 就学又は就業(就業形態は問わない)

就学又は就業(就業形態は問わない)の一定期間の継続後 対人関係の改善(家族以外の人間関係の構築)

本人家族が必要ないと感じた時点 支援者が必要のないと思った時点

その他

(N=96)

(N=87)

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118

支援を行う上で重視する能力については,両者に顕著な差が見られなかった

が,若干ではあるが科学的分析能力(アセスメント能力等)とカウンセリング

能力について差が見られた。科学的分析能力を重視する若手の支援者の割合は

代表者と比較して5ポイント多い一方で,カウンセリング能力を重視する若手

の支援者の割合は代表者と比較して6ポイント少ない(図表 20)。

図表 20 問5 当事者への支援を行う上で重要な能力について

15%

20%

46%

40%

24%

20%

3%

7%

4%

4%

8%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

支援機関・団体の代表

3~5年程度の支援活動歴を有する支援者

科学的分析能力(アセスメント能力等)

カウンセリング能力(共感や傾聴のスキル等)

実践を振り返る力

自己のストレスに対応する力

危機管理能力

その他

(N=92)

(N=84)

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119

必要な教育訓練については両者ともに法人内でのケーススタディや他支援団

体との合同研修,公的機関による研修・講演会への参加などが高い割合を示し

ている(図表 21)。

図表 21 問 6 専門性を高めるためにあなた自身が必要だと考える教育訓練について

(2)態様別の支援の特徴について

態様別(不登校,ひきこもり,ニート,非行,その他)の子ども・若者がど

のような困難を抱えており,どういった環境の下で生育してきたのかというこ

とを支援者の視点から調査した。非行を除く態様に共通していた困難点は「人

と関わることへの不安」,「コミュニケーション能力の低さ」,「自己肯定感の低

さ」などが挙げられる。非行については「家族への不信感」,「社会への不信感」

が他態様と比較して高いポイントを示している。

生育環境を見ると,不登校の人は他態様と比較して「両親が不仲だった

(65%)」や「学校や職場でいじめを受けた(77%)」の項目が高い割合を示し

ている(図表 27)。ひきこもりの人は他態様と比較して「不登校を経験した

(82%)」や「保護者が本人の障がいを受容できない(66%)」の項目が高い割

合を示している。またニートの人は他態様と比較して「保護者が必要以上に甘

やかしていた(60%)」,「保護者が過度の期待をかけた(60%)」の項目が高い

割合を示している。非行については他態様と比較して「家庭崩壊の状態であっ

た(81%)」,「両親が不仲であった(63%)」,「家族から虐待を受けた(56%)」

の項目が高くなっており,生活の基盤となりうる家庭環境に問題がある場合が

16%

63%

32%

45%

33%

42%

33%

10%

13%

60%

37%

54%

37%

42%

23%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

法人内の講義形式による理論・知識に関する研修

法人内のケーススタディ形式による研修

法人内の実技研修(ロールプレイングなどによるものを含む)

他の支援団体との合同研修

他の支援団体での実地体験(OJT)

公的機関が行う研修・講演会への参加

公的機関以外が行う研修・講演会への参加

その他

支援機関・団体の代表者 3~5年程度の支援活動歴を有する支援者(N=94) (N=84)

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120

多いと考えられる。

図表 22 問1(2)態様別の子ども・若者が抱える困難について(不登校)

36%

82%

45%

18%

45%

73%

18%

41%

27%

41%

18%

95%

45%

18%

68%

45%

14%

23%

9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

読み書き・計算などの基礎的な学力の低さ

コミュニケーション能力の低さ

生活自立能力の低さ

他者を思いやる心の欠如

自己表現力の低さ

自己肯定感の低さ

自尊心の高さ

他人の評価に対する過剰反応

家族への不信感

同世代への不信感

社会への不信感

人と関わることへの不安

同世代からの孤立

認知のゆがみ

こころの不安定さ

不規則な生活習慣

健康に対する不安

障害があるが、その受容ができない

その他

(N=22)

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121

図表 23 問1( 2 ) 態様別の子ども・若者が抱える困難について( ひきこもり)

15%

84%

56%

20%

56%

85%

28%

56%

49%

34%

45%

91%

49%

57%

60%

52%

23%

55%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

読み書き・計算などの基礎的な学力の低さ

コミュニケーション能力の低さ

生活自立能力の低さ

他者を思いやる心の欠如

自己表現力の低さ

自己肯定感の低さ

自尊心の高さ

他人の評価に対する過剰反応

家族への不信感

同世代への不信感

社会への不信感

人と関わることへの不安

同世代からの孤立

認知のゆがみ

こころの不安定さ

不規則な生活習慣

健康に対する不安

障害があるが、その受容ができない

その他

(N=110)

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122

図表 24 問1(2)態様別の子ども・若者が抱える困難について(ニート)

30%

70%

40%

20%

60%

60%

30%

70%

50%

30%

60%

80%

30%

40%

50%

50%

20%

50%

20%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

読み書き・計算などの基礎的な学力の低さ

コミュニケーション能力の低さ

生活自立能力の低さ

他者を思いやる心の欠如

自己表現力の低さ

自己肯定感の低さ

自尊心の高さ

他人の評価に対する過剰反応

家族への不信感

同世代への不信感

社会への不信感

人と関わることへの不安

同世代からの孤立

認知のゆがみ

こころの不安定さ

不規則な生活習慣

健康に対する不安

障害があるが、その受容ができない

その他

(N=10)

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123

図表 25 問1(2)態様別の子ども・若者が抱える困難について(非行)

31%

38%

31%

31%

38%

50%

13%

19%

75%

25%

75%

25%

38%

25%

44%

50%

0%

13%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

読み書き・計算などの基礎的な学力の低さ

コミュニケーション能力の低さ

生活自立能力の低さ

他者を思いやる心の欠如

自己表現力の低さ

自己肯定感の低さ

自尊心の高さ

他人の評価に対する過剰反応

家族への不信感

同世代への不信感

社会への不信感

人と関わることへの不安

同世代からの孤立

認知のゆがみ

こころの不安定さ

不規則な生活習慣

健康に対する不安

障害があるが、その受容ができない

その他

(N=16)

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124

図表 26 問1(2)態様別の子ども・若者が抱える困難について(その他)

30%

67%

56%

33%

67%

78%

30%

56%

56%

33%

37%

81%

56%

56%

78%

52%

11%

48%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

読み書き・計算などの基礎的な学力の低さ

コミュニケーション能力の低さ

生活自立能力の低さ

他者を思いやる心の欠如

自己表現力の低さ

自己肯定感の低さ

自尊心の高さ

他人の評価に対する過剰反応

家族への不信感

同世代への不信感

社会への不信感

人と関わることへの不安

同世代からの孤立

認知のゆがみ

こころの不安定さ

不規則な生活習慣

健康に対する不安

障害があるが、その受容ができない

その他

(N=27)

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125

図表 27 問1(3)態様別の生育環境について(不登校)

27%

32%

5%

23%

55%

45%

18%

32%

36%

45%

32%

18%

27%

41%

41%

77%

64%

23%

9%

0%

23%

23%

5%

0%

5%

32%

5%

36%

23%

9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

経済的に苦しい生活を送った

保護者が不安定な就労状態だった

保護者が多重債務状態だった

何らかの事情により住居を転々とした

両親が不仲だった

両親が離婚(再婚)をした

家族から虐待を受けた

保護者のしつけが必要以上に厳しかった

保護者が必要以上に甘やかしていた

保護者が過度の期待をかけた

保護者が子どもへ依存していた

保護者が被虐待経験を有していた

引越しや転校が多かった

学校の授業が理解できなかった

学校や職場に友人がいなかった

学校や職場でいじめを受けた

不登校を経験した

高校を中退した

進学を断念した

就職後1年以内に離職した

自傷行為をした

家庭内暴力があった

非行やぐ犯行為をしていた

本人がアルコールやギャンブルに依存していた

保護者がアルコール・ギャンブル依存していた

保護者が本人の障害を受容できない

保護者が仕事中心で家庭を顧みない

家庭崩壊の状態であった

家族全体が社会的に孤立していた

その他

(N=22)

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図表 28 問1(3)態様別の生育環境について(ひきこもり)

19%

16%

8%

12%

46%

36%

29%

41%

33%

58%

31%

17%

15%

30%

67%

65%

82%

60%

25%

41%

35%

38%

10%

17%

20%

66%

30%

33%

33%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

経済的に苦しい生活を送った

保護者が不安定な就労状態だった

保護者が多重債務状態だった

何らかの事情により住居を転々とした

両親が不仲だった

両親が離婚(再婚)をした

家族から虐待を受けた

保護者のしつけが必要以上に厳しかった

保護者が必要以上に甘やかしていた

保護者が過度の期待をかけた

保護者が子どもへ依存していた

保護者が被虐待経験を有していた

引越しや転校が多かった

学校の授業が理解できなかった

学校や職場に友人がいなかった

学校や職場でいじめを受けた

不登校を経験した

高校を中退した

進学を断念した

就職後1年以内に離職した

自傷行為をした

家庭内暴力があった

非行やぐ犯行為をしていた

本人がアルコールやギャンブルに依存していた

保護者がアルコール・ギャンブル依存していた

保護者が本人の障害を受容できない

保護者が仕事中心で家庭を顧みない

家庭崩壊の状態であった

家族全体が社会的に孤立していた

その他

(N=110)

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127

図表 29 問1(3)態様別の生育環境について(ニート)

30%

30%

30%

20%

40%

30%

30%

40%

60%

60%

40%

30%

30%

40%

60%

50%

80%

50%

30%

40%

30%

30%

20%

10%

10%

40%

30%

20%

30%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

経済的に苦しい生活を送った

保護者が不安定な就労状態だった

保護者が多重債務状態だった

何らかの事情により住居を転々とした

両親が不仲だった

両親が離婚(再婚)をした

家族から虐待を受けた

保護者のしつけが必要以上に厳しかった

保護者が必要以上に甘やかしていた

保護者が過度の期待をかけた

保護者が子どもへ依存していた

保護者が被虐待経験を有していた

引越しや転校が多かった

学校の授業が理解できなかった

学校や職場に友人がいなかった

学校や職場でいじめを受けた

不登校を経験した

高校を中退した

進学を断念した

就職後1年以内に離職した

自傷行為をした

家庭内暴力があった

非行やぐ犯行為をしていた

本人がアルコールやギャンブルに依存していた

保護者がアルコール・ギャンブル依存していた

保護者が本人の障害を受容できない

保護者が仕事中心で家庭を顧みない

家庭崩壊の状態であった

家族全体が社会的に孤立していた

その他

(N=10)

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128

図表 30 問1(3)態様別の生育環境について(非行)

38%

50%

31%

25%

63%

44%

56%

38%

38%

31%

25%

25%

6%

44%

38%

44%

56%

50%

25%

6%

38%

50%

88%

19%

44%

25%

31%

81%

44%

6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

経済的に苦しい生活を送った

保護者が不安定な就労状態だった

保護者が多重債務状態だった

何らかの事情により住居を転々とした

両親が不仲だった

両親が離婚(再婚)をした

家族から虐待を受けた

保護者のしつけが必要以上に厳しかった

保護者が必要以上に甘やかしていた

保護者が過度の期待をかけた

保護者が子どもへ依存していた

保護者が被虐待経験を有していた

引越しや転校が多かった

学校の授業が理解できなかった

学校や職場に友人がいなかった

学校や職場でいじめを受けた

不登校を経験した

高校を中退した

進学を断念した

就職後1年以内に離職した

自傷行為をした

家庭内暴力があった

非行やぐ犯行為をしていた

本人がアルコールやギャンブルに依存していた

保護者がアルコール・ギャンブル依存していた

保護者が本人の障害を受容できない

保護者が仕事中心で家庭を顧みない

家庭崩壊の状態であった

家族全体が社会的に孤立していた

その他

(N=16)

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図表 31 問1(3)態様別の生育環境について(その他)

(3)高塚座長からのコメント

この調査により,支援している立場の人間が,当事者である若者たちをどう

とらえているかが示されており,当事者の実態を考えるうえでいくつかの興味

ある傾向が示されている。調査の目的自体は,代表者と若者支援に携わって3

~5年程度の若手の支援者との間で意識面の相違が存在するか否かを調べるも

のではあったが,いくつかの点で有意差が存在してはいるものの,全体として

大きな食い違いと見ることは適切でなく,むしろ支援団体関係者の意識傾向と

して見ることに,示唆されるべき点が多いと考える。

37%

26%

19%

19%

56%

41%

48%

41%

11%

44%

15%

30%

19%

41%

48%

56%

41%

44%

22%

26%

33%

52%

26%

7%

22%

44%

22%

33%

33%

15%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

経済的に苦しい生活を送った

保護者が不安定な就労状態だった

保護者が多重債務状態だった

何らかの事情により住居を転々とした

両親が不仲だった

両親が離婚(再婚)をした

家族から虐待を受けた

保護者のしつけが必要以上に厳しかった

保護者が必要以上に甘やかしていた

保護者が過度の期待をかけた

保護者が子どもへ依存していた

保護者が被虐待経験を有していた

引越しや転校が多かった

学校の授業が理解できなかった

学校や職場に友人がいなかった

学校や職場でいじめを受けた

不登校を経験した

高校を中退した

進学を断念した

就職後1年以内に離職した

自傷行為をした

家庭内暴力があった

非行やぐ犯行為をしていた

本人がアルコールやギャンブルに依存していた

保護者がアルコール・ギャンブル依存していた

保護者が本人の障害を受容できない

保護者が仕事中心で家庭を顧みない

家庭崩壊の状態であった

家族全体が社会的に孤立していた

その他

(N=27)

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『問1(2)態様別の子ども・若者が抱える困難について』

もっとも高率で示されたのが,当事者について感じているのは「人と関わる

ことへの不安」であり,それと重なるものとして「自己肯定感の低さ」「コミュ

ニケーション能力の低さ」「自己表現力の低さ」が挙げられている。しかし,そ

の原因につながりやすいと思われる,「学力の低さ」や「他者を思いやる心の欠

如」をあげる人は少ない。つまり,もって生まれた資質的なものが背景に存在

しているというよりは,他の要因がそこには介在していると見るべきであろう。

むしろ,半数近くが指摘している「他人の評価に対する過剰反応」や「家族へ

の不信感」「認知のゆがみ」というところに注目したい。

「生活自立能力の低さ」であるとか「こころの不安定さ」をあげる人も多い

が,これも長期にわたる経過の中で結果としてそうなっていると見た方がよく,

原因としてそうだということではないのではないだろうか。

『問1(3) 態様別の生育環境について』

前問における「家族への不信感」とつながると考えられるのが「両親が不仲

だった」と「保護者が過度の期待をかけた」,「保護者のしつけが必要以上に厳

しかった」などであろう。

これらの回答傾向は,当事者の背景に,過保護,過干渉という偏った親子関

係が存在していたことを示しており,その傾向は過去に内閣府調査(平成23

年度調査研究)により示された傾向とも一致する。家族支援を考える上で,家

族支援を実施する理由や家族支援により当事者の傷ついた心をどのように解消

していくかを検討しておくことが重要であると言えよう。

『問2(1)当事者への支援について重要だと思うこと』

「支援開始前のアセスメントを行うこと」,「支援対象者の意欲・意向を確認

すること」,「支援対象者・家族の状態の変化に応じて,支援計画を評価・修正

していくこと」などが約半数から支持されているが,当然のことであると思わ

れる。一方的な目標を定めてそれを強制したり,支援者側の枠に当てはめよう

とすることは避けたいとする姿勢が示されている。しかしその一方で,この項

目に○をつけない支援者が半数近くいるということは,一方的な支援策が講じ

られている現実があるという可能性も否定できない。

『問2(2)家族への支援について重要だと思うこと』

「支援の目的・ゴールについて家族と支援者が理解していること」,「支援対

象者の家族との協力や関係を構築すること」に対して賛意が示されているが,

前述の設問(問1(2))から浮かび上がっている「家族への不信感」がもし存

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在しているとするならば,そこに当事者の意向をどのように加味するかという

点や,不信化の除去のための方策をどのように講じられているかといった点が,

その前提として問われてくるのではないだろうか。なお,代表者と若手の支援

者との間で10ポイント以上の差が見られるが,これは現場に接する機会の多

少と関わるものと思われる。

『問2(3)法人内での連携について重要だと思うこと』

法人内の連携に関する設問において,代表者と若手の支援者との間に有意差

を感じさせる結果が示されている。これは代表者が相対的に楽観的な考えを持

っているのに比べ,若手の支援者の方がより現実的な認識を示しているものと

思われる。

『問2(4)関係機関との連携について重要だと思うこと』

他機関との連携に関しても,代表者と若手の支援者との間に有意差が認めら

れる項目について考察すると,若手の支援者の方が代表者よりも現実的な課題

を意識している結果を反映しているものと思われる。

『問2(5)困難を抱える子ども・若者を支援する際に,あなたが特に重要だ

と感じること』

代表者が「家族への支援」を重視しているのに対して,若手の支援者が「当

事者への支援」を重視する傾向を示しているのは,認識の違いなのか,実務体

験から出ているものなのか判然としない。一つの仮説として,当事者の委託を

受けるに当たっては保護者からの要請が強いと見ることが出来,経営的側面か

らも家族に対する支援の必要性を代表者の方がより意識している可能性がある。

『問3 困難を有する子ども・若者を支援する上で,あなた自身はどのような

考えか』

若手の支援者のほうが,代表者よりも「支援者はゴールを明確にした支援プ

ログラムを用意すべきである」としたものが多い。これは代表者の方がこれま

での経験から現実を認識しているのに対し,若手の支援者の方が可能性にかけ

る理想論にこだわっているのではないだろうか。

『問5当事者への支援を行う上で重要な能力について』

代表者が若手の支援者に対して,当事者への対応にあたっての基本的なスキ

ルアップを求めているのに対し,若手の支援者はむしろ自身のストレス耐性の

ようなものにややこだわりを見せている。