第10回天文宇宙検定2級問題・解答 · 2020. 11. 27. ·...

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第10回天文宇宙検定2級問題・解答 No. 正答 解説 1 次の式は、銀河系(天の川銀河)内の宇宙文明の数N を見積もる ドレークの式である。空欄の項に当てはまる正しい組み合わせは どれか。 ①ア:惑星が存在する場合の地球型惑星の数 イ:知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文明を発達さ せる確率 ②ア:惑星が存在する場合の地球型惑星の数 イ:知的生命が宇宙へ探査機を打ち上げられるほどの技術文明 を発達させる確率 ③ア:複数の衛星をもつ惑星の数 イ:知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文明を発達さ せる確率 ④ア:複数の衛星をもつ惑星の数 イ:知的生命が宇宙へ探査機を打ち上げられるほどの技術文明 を発達させる確率 ドレークの式は、「宇宙文明の数」=「銀河系における恒 星の生成率」×「恒星に惑星が存在する確率」×「惑星が 存在する場合の地球型惑星の数」×「地球型惑星に生命 が発生する確率」×「生命が知的生命まで進化する確 率」×「知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文 明を発達させる確率」×「技術文明の寿命」で表される。 近年、系外惑星の探査などが進み、f p や、空欄【 ア 】に 当てはまるn e の数はかなり正確に見積もれるようになっ てきた。 なお、「n e」 の意味について、『2級公式テキスト』P.16「プ ラスワン」では、この問題の選択肢と同様に「n e =地球型 惑星の数」としている。しかし、「地球型惑星(岩石惑星)」 という条件だけでは、必ずしも「生命が発生し進化できる 環境」にはなりえない。正確には、「n e 」はテキスト本文の 記述のとおり、「地球上の生命に似た生命が発生し進化 できる環境をそなえた惑星の数」、つまりハビタブルな惑 星の数を意味する。ここで補足し、訂正する。 1 2 2018年に打ち上げられたNASAの探査機「パーカー・ソーラー・プ ローブ」 に関する記述で、正しい組み合わせはどれか。 「太陽の【 A 】をその場で観測することを目的として打ち上げられ た。金星での複数回の【 B 】スイングバイを経て、太陽半径の約9 ~10倍の位置まで接近し、直接観測を行う予定である。」 ①A:光球 B:減速 ②A:コロナ B:減速 ③A:光球 B:加速 ④A:コロナ B:加速 太陽コロナをその場で観測することを目的として、2018年 8月にNASAの宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」 が打ち上げられた。「パーカー・ソーラー・プローブ」は、金 星での複数回の減速スイングバイを経て、太陽半径の約 9 ~10 倍、太陽表面からの距離にして約600万 km の位 置まで接近し、太陽コロナの直接観測を行う予定である。 2 3 地球と惑星の位置関係で、正しい組み合わせはどれか。 ①A:衝 B:合 C:西矩 D:東矩 ②A:衝 B:合 C:東矩 D:西矩 ③A:合 B:衝 C:西矩 D:東矩 ④A:合 B:衝 C:東矩 D:西矩 地球から見て太陽と惑星が同じ方向に重なるのが合(内 惑星は内合と外合がある)、太陽と惑星が真反対(なす角 が180度)の位置になるのが衝(内惑星に衝はない)であ る。矩は外惑星と太陽のなす角が90度になる場合で、外 惑星が東側90度(太陽を正面にして左手側で日没の頃に 南中)のときが「東矩」、西側90度(太陽を正面にして右手 側で日の出の頃に南中)のときが「西矩」である。 3 1

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    1 次の式は、銀河系(天の川銀河)内の宇宙文明の数N を見積もるドレークの式である。空欄の項に当てはまる正しい組み合わせはどれか。

    ①ア:惑星が存在する場合の地球型惑星の数  イ:知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文明を発達さ   せる確率②ア:惑星が存在する場合の地球型惑星の数  イ:知的生命が宇宙へ探査機を打ち上げられるほどの技術文明   を発達させる確率③ア:複数の衛星をもつ惑星の数  イ:知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文明を発達さ   せる確率④ア:複数の衛星をもつ惑星の数  イ:知的生命が宇宙へ探査機を打ち上げられるほどの技術文明   を発達させる確率

    ① ドレークの式は、「宇宙文明の数」=「銀河系における恒星の生成率」×「恒星に惑星が存在する確率」×「惑星が存在する場合の地球型惑星の数」×「地球型惑星に生命が発生する確率」×「生命が知的生命まで進化する確率」×「知的生命が他の星へ通信ができるほどの技術文明を発達させる確率」×「技術文明の寿命」で表される。近年、系外惑星の探査などが進み、f pや、空欄【 ア 】に当てはまるn eの数はかなり正確に見積もれるようになってきた。なお、「n e」の意味について、『2級公式テキスト』P.16「プラスワン」では、この問題の選択肢と同様に「n e=地球型惑星の数」としている。しかし、「地球型惑星(岩石惑星)」という条件だけでは、必ずしも「生命が発生し進化できる環境」にはなりえない。正確には、「n e」はテキスト本文の記述のとおり、「地球上の生命に似た生命が発生し進化できる環境をそなえた惑星の数」、つまりハビタブルな惑星の数を意味する。ここで補足し、訂正する。

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    2 2018年に打ち上げられたNASAの探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」 に関する記述で、正しい組み合わせはどれか。

    「太陽の【 A 】をその場で観測することを目的として打ち上げられた。金星での複数回の【 B 】スイングバイを経て、太陽半径の約9~10倍の位置まで接近し、直接観測を行う予定である。」

    ①A:光球    B:減速②A:コロナ   B:減速③A:光球    B:加速④A:コロナ   B:加速

    ② 太陽コロナをその場で観測することを目的として、2018年8月にNASAの宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が打ち上げられた。「パーカー・ソーラー・プローブ」は、金星での複数回の減速スイングバイを経て、太陽半径の約9 ~10 倍、太陽表面からの距離にして約600万 km の位置まで接近し、太陽コロナの直接観測を行う予定である。

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    3 地球と惑星の位置関係で、正しい組み合わせはどれか。

    ①A:衝  B:合  C:西矩  D:東矩②A:衝  B:合  C:東矩  D:西矩③A:合  B:衝  C:西矩  D:東矩④A:合  B:衝  C:東矩  D:西矩

    ④ 地球から見て太陽と惑星が同じ方向に重なるのが合(内惑星は内合と外合がある)、太陽と惑星が真反対(なす角が180度)の位置になるのが衝(内惑星に衝はない)である。矩は外惑星と太陽のなす角が90度になる場合で、外惑星が東側90度(太陽を正面にして左手側で日没の頃に南中)のときが「東矩」、西側90度(太陽を正面にして右手側で日の出の頃に南中)のときが「西矩」である。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    4 太陽と1等星の見かけの明るさは、およそ何倍違うか。

    ①約1000万倍②約10億倍③約1000億倍④約10兆倍

    ③ 太陽の実視等級は約-27等級である。1等星とは、28等級の違いがある。5等級異なると明るさは100倍変わるので、28等級の違いは大雑把に100億倍(25等級の差)から1兆倍(30等級の差)の間の、およそ1000億倍であることがわかる。

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    5 赤色巨星の1つであるベテルギウスの半径は、太陽の半径のおよそ何倍か。

    ①約10倍②約100倍③約1000倍④約1万倍

    ③ 多くの星は進化の過程で膨張し、主系列星から赤色巨星になる。ベテルギウスはオリオン座にある、赤色(超)巨星である。その大きさは太陽の約1000倍である。2019年から2020年にかけて、約1等級という大きな減光が観測された。

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    6 散開星団の特徴として、間違っているものはどれか。

    ①星の数は数十から数百程度である②多くの散開星団には、高温の主系列星が含まれる③星の重元素量は、球状星団に比べて少ない④主に銀河系の円盤部に存在する

    ③ 散開星団には高温の星が含まれる場合が多い。つまり、比較的年齢の若い星の集団である。そのため、銀河系の重元素がある程度増えてから形成されたと考えられる。その星の重元素量は、太陽と同じくらいか、それより多い場合がある。なお、球状星団の重元素量は太陽の100分の1から1000分の1程度であり、非常に少ない。

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    7 次の画像の銀河のうち、局部銀河群に属している銀河はどれか。 ③ 局部銀河群は銀河系が属す銀河のグループで、大型の銀河としては銀河系、アンドロメダ銀河、さんかく座銀河M33のみが含まれる。画像は①が子持ち銀河 M 51、②がM 87、③がアンドロメダ銀河、④がソンブレロ銀河 M 104である。

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    8 1838年にフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッセルが初めて星の年周視差を測定した星の名前はどれか。

    ①ペガスス座51番星②はくちょう座61番星③ケンタウルス座α星④わし座53番星

    ② ベッセルは、はくちょう座61番星の見かけの位置が0.3秒角変化する年周視差を検出した。この測定により、地動説が確認された。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    9 図に示す日本の「みちびき」のように、地表から見て8の字を描く人工衛星の軌道はどれか。

    ①静止軌道②回帰軌道③太陽同期軌道④準天頂軌道

    ④ 「みちびき」は内閣府の宇宙開発戦略推進事務局が構築した準天頂軌道の人工衛星を主体とした衛星測位システムである。準天頂軌道とは、特定の一地域に長時間とどまる軌道で、通常は複数の衛星が見かけ上同じ軌道(地表から見て8の字軌道)に配置し、つねに上空に1機は現れるようにしている。

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    10 アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズでよく登場するスペースコロニーでは、どのようにして重力と同じ働きをする力を得ようとしているか。

    ①マイクロブラックホールを搭載している②超高速で回転するジャイロを搭載している③スペースコロニー自体が並進加速度運動をしている④スペースコロニー自体が回転している

    ④ スペースコロニーは1969年にジェラルド・オニールが提唱した宇宙空間の人工居住地で、スペースコロニー自体を回転させることで遠心力による擬似重力を得ることが考えられている。例えば直径6.4kmのスペースコロニーが、110秒で1回転すれば地球と同程度の疑似重力が得られるが、回転と同じ方向に移動すれば疑似重力は大きくなり、横方向であればコリオリの力を受ける。例えばコロニー内で野球をすると、野球場の向きによって打球の行方が大きく変わるとの試算もある。

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    11 ビックバンという用語の命名者は次のうち誰か。

    ①フレッド・ホイル②ジョージ・ガモフ③アラン・グース④エドウィン・パウエル・ハッブル

    ① 膨張宇宙論が提唱された当時、対立する宇宙論として定常宇宙論を提唱していたホイルが、これを揶揄して「ビックバン(大爆発)」と呼んだのを、膨張宇宙論の提唱者ガモフ自身が気に入って使い始めた。グースは佐藤勝彦と独立して同時に「インフレーション(命名はグースの方)」を提唱した。ハッブルはハッブル‐ルメートルの法則を観測結果を用いて最初に示した一人。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    12画像の中央の白い円は何を表しているか。

    ①太陽光球の大きさ

    ②写真の中心合わせの目印

    ③地球の大きさ

    ④2種類ある遮蔽しゃへい

    ディスクのもう1つの大きさ

    ① 写真は太陽観測衛星「SOHO」がとらえた太陽コロナであり、眩しい太陽本体をディスクで隠すことでコロナを撮影できる。ディスク部分に示された白丸は太陽光球の大きさを表す。このように、装置での観測では十分大きなディスクで太陽を覆うため、光球極近傍のコロナは観察できない。それらは皆既日食の時のみ観測され、日食の研究的意義の1つになっている。

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    13 次の3つの文のうち、木星が大きな惑星となった理由としてふさわしくないものはいくつあるか。

    ・太陽から遠く、大量の氷も材料になった・近くにあった小惑星帯から、特に近い小惑星をたくさん取り込めた・天王星・海王星よりも形成時の成長のスピードが速く、強い引力でよりたくさんの材料を集められた

    ①0個②1個③2個④3個

    ② 木星は水の昇華温度となる位置(雪線)より外側なので、氷も材料とできた。また、現在考えられるシナリオでは太陽から遠いほど成長がゆっくりで、天王星、海王星より先に大きくなり、土星とともに周りのガスをどんどん集めた。天王星と海王星は、大きくなる前に原始太陽系星雲が吹き払われてガスが欠乏したため、不十分な成長しかできなかった。小惑星は先に大きく成長していた木星の巨大な引力が原因でたくさんできたと考えられている。

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    14 HR図の説明として、間違っているものはどれか。

    ①「HR」はヘルツシュプルングとラッセルの頭文字からとられた②白色矮星、主系列星、赤色巨星の3つのグループに星を大別できる③HR図の右(低温側)にあるほど、質量の小さな星である④HR図を使えば、星の内部構造や進化段階を推定できる

    ③ HR図は、最初に、独立に提唱したアイナー・ヘルツシュプルングとヘンリー・ノリス・ラッセルの頭文字をとって名付けられた。HR図の縦軸は星の光度(もしくは絶対等級)、横軸は星の表面温度(もしくはスペクトル型)である。HR図を使うと、左上から右下に伸びる主系列星、主系列星の右上にある赤色巨星、主系列星の左下に位置する白色矮星の3つのグループに星を分けることができる。またHR図を使うと、内部構造や進化段階といった、星の性質を調べることができる。主系列星だけに限れば、低温の星ほど低質量であるが、赤色巨星や白色矮星を含めると、表面温度と質量の間に一定の関係性はない。

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    15 原始星の特徴として、間違っているものはどれか。

    ①主に赤外線で輝いている②重力エネルギーで輝いている③太陽よりも表面温度は低い④周囲のガスを集め、膨張しながら前主系列星になる

    ④ 原始星は、収縮と周りのガスの降着による重力エネルギーで輝いている。表面温度は低く、主に赤外線で明るく輝く。収縮するとともに、前主系列星とよばれる段階に進化する。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    16 次のうち、星間空間に存在する最も密度の低いガスはどれか。

    ①暗黒星雲②暖かいHⅠ雲③惑星状星雲④銀河コロナ

    ④ 一般的に温度が高ければ高いほど、密度は小さくなる。銀河コロナは温度が10万から100万Kと非常に高く、密度は1立方センチメートル当たり0.004程度と非常に小さい。

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    17 「ハッブル‐ルメートルの法則」の説明として用いるのに最も適当な方法はどれか。

    ①用紙に銀河を多数描き、拡大コピーで拡大していく②運動場の1カ所に大勢の人が集まり、みんなで四方八方に勝手に広がってい く③ある程度膨らませた風船の表面に銀河の絵を多数描き、さらに風船を膨らませる④ある程度膨らませた風船の表面に銀河に見立てた小さなシールを貼り付け、さらに風船を膨らませる

    ④ ハッブル‐ルメートルの法則は、空間が膨張するため、銀河間の距離が時間とともに大きくなることを表す法則である。②の、大勢の人が一カ所から勝手に四方八方に広がるのは、法則性がないので、ハッブル‐ルメートルの法則の説明としては明らかに不適切である。①、③は、いずれも銀河間の距離が次第に大きくなる点では、ハッブル‐ルメートルの法則の一面を説明しているが、銀河そのものも拡大していく。これに対して、④の場合は、銀河の大きさはそのままで、銀河間距離だけが大きくなっていくので、ハッブル‐ルメートルの法則の説明としては、この方法が最も適当である。したがって④が正答となる。

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    18 次の4つの出来事を新しい方から並べた際、2番目にくるのはどれか。

    ①ケレスの発見②海王星の発見③年周視差の検出④年周光行差の発見

    正答と解説に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

    ケレスは1801年にジュゼッペ・ピアッチにより発見、海王星は、1846年にユルバン・ルヴェリエが計算によってその位置を予報、ルヴェリエの依頼を受けたヨハン・ゴットフリート・ガレが観測して発見した(なお、同じころ、これとは独立にジョン・クーチ・アダムズも計算によって海王星の位置を予測していた)。年周視差は1838年にフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ベッセルにより初めて検出成功(概念はそれ以前から既にあった)、年周光行差は1727年ジェームズ・ブラッドリーとサミュエル・モリノーが発見。そこで新しい順に並べると②③①④となるため、正答は③。

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    19 現在、ほとんどの惑星探査機が最小のエネルギーで目的の惑星に到達するホーマン軌道ではなく、速度を上げ、打ち上げ方向を少しだけ変えた準ホーマン軌道で打ち上げる。それはなぜか。

    ①スペースデブリとの遭遇確率が小さくなるから②月との衝突を避けることができるから③目的の惑星までの飛行日数を減らすことができるから④地球から見て、常に天球上で同じ位置となるから

    ③ 火星へのホーマン軌道では片道258日を要するが、2018年に打ち上げられたアメリカの火星探査機「InSight(インサイト)」は打ち上げから209日後に火星に着陸している。

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    20 系外惑星の「系」は何を指すか。

    ①太陽系②惑星系③恒星系④銀河系

    ① 系外惑星といえば太陽系外惑星のことである。同じ「系外」でも系外銀河といえば銀河系(天の川銀河)以外の銀河を指す。惑星系は、恒星の重力によって複数の天体が公転している構造で、太陽系も惑星系の1つである。恒星系は、互いに重力を及ぼし合う複数の恒星からなる構造で、連星、星団、銀河など様々な規模のものが該当する。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    21 宇宙の晴れ上がりとは、宇宙の歴史におけるどのような現象か。

    ①無からの宇宙誕生②宇宙誕生から10秒後の電子と陽電子の対消滅③宇宙誕生から38万年後の陽子と電子の結合

    ④10100年先に考えられているブラックホールの蒸発

    ③ 宇宙誕生から38万年後には、宇宙の温度が陽子と電子が結合して水素原子ができるほどまで下がり、光子が電子に妨げられず長距離を進むことができるようになった。この現象を宇宙の晴れ上がりという。ちなみに、これまでの観測結果から推測すると、宇宙はこのまま膨張するのに伴い、冷却され、星形成ができなくなる。そして最後はブラックホールだけが残り、そのブラックホールさえもホーキング放射によって蒸発し、宇宙は完全に活動しなくなると考えられている。

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    22 黒点の周囲に見られる太陽の彩層の明るい領域を何というか。

    ①コロナホール②スピキュール③白斑④プラージュ

    ④ プラージュは太陽の彩層の明るい領域のことで、羊斑ともいう。コロナホールはコロナが平均よりも暗く冷たく、密度が低い領域である。スピキュールは彩層に見られるジェット現象、白斑は光球面に見られる白い模様である。

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    23 太陽大気に存在する元素の個数を、多い順に正しく並べたものはどれか。

    ①水素、ヘリウム、酸素、炭素②水素、ヘリウム、リチウム、炭素③水素、ヘリウム、炭素、ネオン④水素、ヘリウム、鉄、酸素

    ① 宇宙にある元素の大部分が、宇宙初期にできた水素とヘリウムである。太陽にある元素組成でも、それは変わらない。次に多いのは、比較的低質量(太陽の8倍以下)の星の内部でも形成される酸素と炭素である。

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    24 次の3つの天体はいずれもガスの電離によって光っている。それらのうち電離の機構が異なるものがあれば、それはどれか。

    ①輝線星雲②超新星残骸③惑星状星雲④電離に関わる温度が違うだけで、どれも機構としては同じ

    ② 輝線星雲と惑星状星雲は中心星からの放射によりガスが電離するのに対し、超新星残骸では爆発で放出されたガスが周囲のガスと衝突する運動エネルギーにより電離する。この衝突は高速で激しく、同時にX線も放出される(ガスが非常に高温になるため)。輝線星雲と惑星状星雲では、中心星の温度が異なり、同じ機構だが輝線の種類が違ってくる。

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    25 活動銀河や活動銀河中心核に関連して述べた文として、間違っているものはどれか。

    ①異様に明るい活動銀河中心核は、クェーサーと呼ばれる②大半は、超巨大ブラックホールや強いジェット流を伴う③活動銀河中心部の観測は可視光では難しく、赤外線や電波で行われる④M 87も活動銀河の1つである

    ③ 銀河には、中心部の非常に狭い領域から銀河全体を凌駕するような強い電磁波を放射するものがある。この銀河中心部領域を活動銀河中心核、その中でも特に明るいものをクェーサーと呼び、電波からX線(ガンマ線)までの広い波長域で観測される。超巨大ブラックホールやジェットを伴うものも多い。ブラックホールの直接撮像で話題になったM 87も活動銀河の1つである。

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    26日本で使われた暦を年代順に正しく並べたものはどれか。

    ①貞享暦じょうきょうれき

    →寛政暦か ん せ い れ き

    →宝暦暦ほ う れ き れ き

    →宣明せんみょう

    暦れ き

    →天保暦て ん ぽ う れ き

    ②宣明暦→貞享暦→宝暦暦→寛政暦→天保暦

    ③宝暦暦→貞享暦→天保暦→宣明暦→寛政暦

    ④宣明暦→宝暦暦→寛政暦→天保暦→貞享暦

    ② 平安時代前期に採用された宣明暦は、江戸時代までの800年以上にわたり、一度も改暦されることなく施行され続けた。幕府老中の意向を受けた囲碁師の安井算哲二世(後の渋川春海)は、元の授時暦を参考にして独自の改良を加えた大和暦(貞享暦)を編纂した。その後、1755年に宝暦暦、1798年に寛政暦への改暦が行われ、江戸時代最後の天保暦を経て明治5年に太陽暦(グレゴリオ暦)への改暦が行われ、現在に至っている。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    27 現在見つかっているブラックホールの質量分布を模式的に表すとどのようになるか。

    ④ ブラックホールには、太陽質量の10倍程度の恒星質量ブラックホールと、太陽質量の数百万倍から数十億倍の超大質量ブラックホールがあることが観測的にわかっている。その間の質量範囲にはブラックホールの存在が明らかではなく、ブラックホール砂漠と呼ばれている。

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    28 黒点が黒く見えるのはなぜか。

    ①完全な黒体であるから②マイクロブラックホールとなっているから③黒点周囲よりも温度が低いから④炭素の合成がさかんに行われているから

    ③ 黒点の温度は4000 K程度なので、黒点だけを取り出すとオレンジがかって光っている。しかし、黒点周囲のほうが温度が高く、明るく光っているために、黒く見える。黒体とは、電磁波(光)を完全に吸収する想像上の物体であるが、熱放射を考える上で重要なモデルである。マイクロブラックホールは、量子サイズでビックバン直後に存在した可能性はある。太陽は炭素が乏しいうえに、そもそも表層近くでは核融合は起こらない。

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    29 質量がm 1とm 2の恒星が、連星間距離 a [au]、公転周期 P [年]で円運動している。太陽の質量を1とする単位で恒星の質量を測るとき、m 1+m 2の値はどのように表されるか。

    ①a 2 / P 3

    ②a 3 / P 2

    ③P 2 / a 3

    ④P 3 / a 2

    ② 一般化されたケプラーの第3法則は、連星間距離をau単位で、公転周期を年単位で、質量を太陽の質量を1とする

    単位で測るとき、a 3/P 2=m 1+m 2で与えられる。したがって②が正答となる。

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    30 次のうち、銀河系の中心が太陽系でないことが初めて示された際の根拠となったのはどれか。

    ①球状星団の分布②散開星団の分布③超新星残骸の分布④銀河系の銀河回転速度の分布

    ① 球状星団の空間分布から、ハーロー・シャプレーは太陽系が銀河系の中心には位置しないことを20世紀前半に示した。銀河系の回転曲線(中心からの距離に対する回転速度の分布)から示されたのは、例えばダークマターの存在である。

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    31 国際宇宙ステーション(ISS)滞在中の宇宙飛行士の宇宙放射線の被曝線量は1日あたりでどれくらいか。

    ①地上と同じくらい②地上でのおよそ1週間分③地上でのおよそ1カ月分④地上でのおよそ半年分

    ④ JAXAによれば、ISSに滞在中の宇宙飛行士は1日あたり0.5~1ミリシーベルトの宇宙放射線を受ける。地上で受ける自然放射線による被曝量は、1年で平均2.4ミリシーベルトであるから、宇宙飛行士は1日で地上のおよそ半年分もの放射線を被曝している。JAXAでは宇宙滞在中の宇宙飛行士に携帯型線量計を携帯させて、個人の被曝管理を行っている。

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  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    32 地球と生命の共進化の図において、酸素濃度と二酸化炭素濃度の正しい組み合わせはどれか。

    ①A:酸素濃度          B:二酸化炭素濃度  C:二酸化炭素濃度    D:酸素濃度②A:酸素濃度         B:二酸化炭素濃度  C:酸素濃度         D:二酸化炭素濃度③A:二酸化炭素濃度     B:酸素濃度  C:酸素濃度         D:二酸化炭素濃度④A:二酸化炭素濃度     B:酸素濃度  C:二酸化炭素濃度     D:酸素濃度

    ④ ラン藻などの登場によって酸素濃度が上昇し、相対的に二酸化炭素濃度が下がるので、Cが二酸化炭素濃度、Dが酸素濃度。現在における酸素と二酸化炭素の濃度は

    それぞれ21%(2×10-1)、0.03%(3×10-4)なので、Aが二酸化炭素濃度、Bが酸素濃度。

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    33 ブラックホールに関する次の記述のうち、間違っているものはどれか。

    ①ブラックホール砂漠とは、ブラックホールによって周囲の天体が吸い込まれつくした空間領域をいう②活発に活動しているブラックホールを有する銀河を、活動銀河という③ブラックホール周辺から高温のプラズマガスが噴き出されているので、それを観測することでブラックホールも観測することができる④ブラックホールの重力はとても強いため、光でさえその重力から逃れることができない

    ① ブラックホールはどんな物質でも吸い込み、一度落ち込むと光すら出てこられない。したがって真っ黒い穴、ブラックホールと呼ばれる。ブラックホールは、観測することは可能である。なぜなら、まわりに重力の影響を及ぼしているので、その影響により周りの星やガスを引きつける。その効果を利用することで観測することができる。ブラックホール砂漠とは、太陽の10倍程度の質量をもった恒星質量ブラックホールと、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量をもった超大質量ブラックホールの間の質量範囲を指す。その質量範囲の領域ではブラックホールの存在が明らかでない。

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    34 太陽コロナに関する次の記述のうち、間違っているものはどれか。

    ①コロナのガスの温度は、100万Kもある②コロナは、皆既日食のときには肉眼で見ることができる③コロナとは、彩層より下層に存在する④コロナのガスからはX線が発せられている

    ③ コロナは彩層よりも上空に存在する。 2

    35 太陽系外縁天体2012 VP113は、近日点距離がおよそ80 au、遠日

    点距離がおよそ440 auの軌道をもつ。この天体の軌道長半径はどのくらいになるか。

    ①160 au②220 au③260 au④320 au

    ③ 惑星の軌道長半径をa 、離心率をe とすると、近日点距離r 1はr 1=a (1-e )、遠日点距離r 2はr 2=a (1+e )と表される。したがって、r 1+r 2=a (1-e )+a (1+e )=2a となるので、a =(r 1+r 2)/2=(80+440)/2=260 auと求めることができる。したがって③が正答となる。

    3

    8

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    36 次のうち、太陽が核融合反応を終える直前の断面図はどれか。 ③ ①は太陽質量の0.08倍より小さい原始星が核融合反応を起こすことなく褐色矮星となる直前、②は同じく0.08~0.46倍の主系列星が核融合反応でHeまで作って白色矮星となる直前の断面図である。④のようにNeやMgまで作るには8倍以上の質量が必要であり、太陽の場合を示すのは③。

    5

    37 オールトの雲について述べた文として、間違っているものはどれか。

    ①長周期彗星の起源とされる天体の集まりである②ベルト状にたくさんの小天体が分布していると考えられる③2020年10月の時点では、直接観測されていない④太陽から最も離れた太陽系の構成員と考えられる

    ② ②は、エッジワース・カイパーベルトの説明である。太陽を200年以上の周期でめぐる長周期彗星がどこからきたかをヤン・オールトが調べ、半径1光年の球殻状の領域と考えたのがオールトの雲である。現在までに直接観測は成功していない。

    3

    38 ロケットの性能を示すのに、ロケットの速度の増分であるΔV が用いられるが、ΔV についての記述で間違っているものはどれか。

    ①燃料の噴出速度をあげれば、増加する②ロケットの最終質量を小さくすれば、増加する③ロケットの初期質量を大きくすれば、増加する④初期質量のうち推進剤の割合を小さくすれば、増加する

    ④ ΔV は、ロケットの速度の増分で、ΔV =噴出速度 x ln(初期質量/最終質量)となる。つまり、噴出速度をあげれば大きくなり、最終質量を小さくすれば大きくなり、初期質量を大きくすれば大きくなる。なお、推進剤の質量は、単段ロケットの場合、初期質量-最終質量なので割合を小さくすると、最終質量が大きくなり、ΔV は小さくなる。

    9

    39 ハビタブルゾーンの範囲を判断するとき、次の3つのうち適当でないものはいくつあるか。

    ・星系によって親星からの距離範囲が異なる・惑星の大きさは考慮しない・大気による温室効果も考慮する

    ①0個②1個③2個④3個

    ②全員正解

    ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)は親星からの照射と惑星表面の放射の釣り合いで決まる。軌道半径を求める式に含まれる項目は親星の半径・表面温度、惑星表面の放射平衡温度・アルベドであり、惑星の大きさや温室効果は考慮されていない。親星の半径や親星の表面温度が変わればハビタブルゾーンの距離範囲も変わる。よって、「大気による温室効果も考慮する」が適当でないため、正答は②である。

                   ↓  ↓  ↓

    ※本問は、テキストP.148の「おまけコラム」に記載されたハビタブルゾーンの式に沿った出題であった。この式では、惑星の大きさ(質量)、大気の温室効果は考慮していない。そのため、3つのうち適当でないものは「大気による温室効果も考慮する」の1個であることがわかる。しかし、この式で求められるハビタブルゾーンは、古典的ハビタブルゾーンと呼ばれるもので、この数式に沿って計算すると、地球はハビタブルゾーンの外側に位置することになる。また、現在においても、ハビタブルゾーンについては厳密で明確な定義がされているものではなく、温室効果やその他の効果を考慮に入れる場合もみられる。つまり、この式だけでハビタブルゾーンの範囲を判断することができない。よって、本問は設問として成立しないため、全員正解とする。

    10

    40 1光年は1天文単位の約何倍になるか。

    ①1000倍②10万倍③100万倍④1億倍

    ② 1天文単位は1.5×1011mで、1光年は9.5×1015mなので約10万倍違う。さらに、1光年の10万倍が銀河系のサイズ(約10万光年)になる。

    1

    9

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    41 太陽のコロナには3種類あるが、それらのうち、光源が太陽の光球からの光ではないものはどれか。

    ①Eコロナ②Fコロナ③Kコロナ④輝き方が違うだけで、いずれも光源は太陽光

    ① Fコロナは惑星間空間に存在する微小な塵で、Kコロナはコロナ中で電離した電子で、それぞれ散乱された太陽光を見ているものだ。それに対し、Eコロナはコロナ中で電離したイオンから放射される光を見ており、いわばコロナ自身が光っているものだ。それぞれのアルファベットの意味(語源)もテキストで再確認しておこう。

    2

    42 火星の天球上の動きで、留はどのようなときに起きるか。

    ①火星が合になる前後数日で起きる②火星が西矩または東矩になる前後数日で起きる③火星が地球に接近する前後の時期に起きる④火星が衝になる瞬間に起きる

    ③ 留は、地球が火星などの外惑星を追い抜くとき、すなわち接近の前後に外惑星の天球上の進行方向が、順行から逆行、逆行から順行になる切り替わりのときに起こる現象で、天球上での位置が変化しない出来事である。衝の瞬間は、逆行のピークであり、むしろ天球上での位置変化は大きい。2020年の火星接近の際の留は、9月10日と11月16日、接近は10月6日、衝は10月14日である。なお、西矩は2020年6月14日、東矩は2021年1月22日である。

    3

    43 次の文の空欄に当てはまる語の組み合わせとして最も適当なものはどれか。

    「主系列星の寿命は【 A 】を【 B 】で割ることによって見積もることができる。」

    ①A:質量 B:光度②A:質量 B:絶対等級③A:半径 B:光度④A:半径 B:絶対等級

    ① 主系列星のエネルギーは水素がヘリウムに変わる核融合反応によって生み出されおり、燃料の水素の量は質量に比例する。他方、光度は恒星から単位時間あたりに放射されるエネルギーであり、エネルギーの消費率に対応する。したがって、主系列星の寿命は、燃料(質量)を消費率(光度)で割ることによって見積もることができ、①が正答となる。

    5

    44 次のうち、銀河の回転曲線を示した図はどれか。 ② 銀河の回転速度は、銀河中心あたりでは距離とともに増加するが、ある程度銀河中心から離れると、ほぼ一定の値をとるようになり、外縁部でも遅くなることはない。このことから、見えないが重力を及ぼす物質(ダークマター/暗黒物質)が外縁部まで広がっていると考えられる。

    6

    10

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    45 宇宙初期の出来事の順序について正しく並べたのはどれか。

    ①ビッグバン→宇宙の晴れ上がり→インフレーション→宇宙の再電離②ビッグバン→宇宙の再電離→宇宙の晴れ上がり→インフレーション③インフレーション→ビッグバン→宇宙の晴れ上がり→宇宙の再電離④ビッグバン→インフレーション→宇宙の再電離→宇宙の晴れ上がり

    ③ 確率的なゆらぎから宇宙は突如出現し、急膨張(インフレーション)を経て高温・高密度の火の玉状態(ビッグバン)となった。その後、3分以内に水素やヘリウムの原子核が生成された。この時点では宇宙は全て電離されていた。その後原子核と電子が結合する宇宙の晴れ上がりがおこり、光が自由に動けるようになった、現在、電磁波で観測できる宇宙はこの晴れ上がり以降の様子である。その後、恒星が形成されるとその強烈な紫外線が周囲の水素から電子をひきはがす再電離がおこったが、宇宙の密度が膨張により下がっていたので、光の進路が全て遮られることはなくなっていた。

    7

    46 日本は明治5年に改暦を行った。そのときの様子について正しく述べたものはどれか。

    ①明治5年から現在のグレゴリオ暦を使うようになった②調整のため、明治5年の12月は3日間であった③同時に学校令や徴兵制度が始まった④東京をはじめ日本全国で改暦反対の暴動が起こった

    ③ 日本は明治政府によって明治6年1月1日からグレゴリオ暦を使うようになった。表向きは西洋列強諸国と暦をあわせることで、外交・貿易を円滑に進めるためだったが、旧来の暦だと明治6年が閏月のある13カ月となり、月給を13回支払わないといけなくなるからであった。発表が明治5年の11月9日と、急遽行ったため、庶民の生活は混乱した。福井や福岡では、同時に導入された学校制度や徴兵令とともに廃止を求める暴動が起こったが、全国的な動きではない。なお、明治5年12月は2日間であり、12月3日=明治6年1月1日となった。3日以降は当時のカレンダーにあったものの幻の日付となった。

    8

    47 室温が17℃とする。これを絶対温度で表すと約何度になるか。

    ①17 K②90 K③256 K④290 K

    ④ 絶対温度は摂氏で表された温度に273.15を加えたものである。室温が17℃とすると、絶対温度で表すと約290 Kになる。

    1

    48 散開星団、球状星団などのHR図からは星団の特徴を調べることができるが、次のうちHR図からは調べられないものはどれか。

    ①星団の銀河系内の位置②星団の進化段階③星団の距離④星団中の星の数と質量

    ① 星団のHR図からは、進化段階(年齢)や、距離、星の質量などが求められるが、銀河系内の位置は直接関係しない。

    4

    11

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    49 HR図上において、星の進化経路(細い実線)とセファイド不安定帯(グレーの直線)との関係を表す図はどれか。なお、太い実線は主系列を表し、図中の数値は太陽を1としたときの星の質量を表わす。

    ④ セファイド不安定帯は、HR図上では、右上から左下にほぼ直線状に存在し、表面温度はおおよそ5000 Kから8000Kの範囲になる。したがって④が正答となる。

    5

    50 次の文の空欄に当てはまる組み合わせとして最も適当なものはどれか。

    「中性水素原子の放射する波長21 cmの輝線は、星間ガスや星間塵による吸収・散乱を【 A 】ため、【 B 】を推定することができる。」

    ①A:受けやすい   B:銀河の構造②A:受けやすい   B:恒星の進化③A:受けにくい    B:銀河の構造④A:受けにくい    B:恒星の進化

    ③ 波長の長い21cm線は、銀河系のあらゆる場所から放射され、星間ガスや星間塵の吸収・散乱を受けにくいため、その強弱を調べることで、銀河系の渦巻構造を推定することができる。天文学の研究に不可欠の重要な輝線である。

    6

    51 次の図の装置について正しく述べているものはどれか。

    ①インドのジャイプールのジャンタル・マンタルに置かれた日時計の一つ②イギリスのグリニッジ天文台のタイムボールを観察するための装置③京都の土御門家が使用した太陽南中高度の精密測定装置④幕府天文方が使用した望遠鏡で、土星の環の観測に使用された

    ③ これは圭表といい、京都で暦を作成していた土御門家が、暦の正確さをあげるために太陽の南中高度を測定していた装置である。ピンホールを利用し角度で1分までの精密な観測が可能であった。望遠鏡ではない。また、日時計の一種ともいえるが、インドのジャンタル・マンタルは建造物であり明らかに形状が違う。グリニッジ天文台やシドニー天文台に現在も残るタイムボールは特定の時刻に、屋根の上のボールがあがって、さがることで時報としたものである。港のどの船からでも容易に見られるのが特徴であり、観察に地面に固定するような装置は必要としない。

    8

    12

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    52次の火星探査計画のうち間違っているのはどれか。

    ①中国は「嫦娥じょうが

    4号」で、火星ローバーの着陸を成功させた

    ②インドは、「マンガルヤーン」の火星周回軌道への投入を成功さ

    せた

    ③アメリカは、「InSight」や「キュリオシティ」で火星の着陸探査をお

    こなっている

    ④アメリカは、2030年代以降に火星有人探査を目指している

    ①火星探査は、各国がしのぎを削る競争をしている。「嫦娥

    じょうが

    4号」は、世界で初めて月の裏側への着陸を成功したミッ

    ションである。中国は2020年7月に火星探査機の「天問1

    号」の打ち上げに成功、UAEも「Hope」の打ち上げに成功

    し、火星周回軌道からの長期探査を目指している。なお、

    日本は、かつて火星探査機「のぞみ」を送ったが、探査機

    の故障により軌道投入をあきらめた経緯がある。現在は

    「はやぶさ」などで培った技術を使い、火星衛星探査計画

    (MMX)で火星の衛星フォボスからのサンプルリターンを

    目指している。

    9

    53バイオマーカーとは何か。

    ①石油の代替になるエネルギー源

    ②生命が存在する徴しるし

    となるもの

    ③生物により描かれた帯状の地形

    ④系外惑星のうちハビタブルゾーンにあるもの

    ②バイオマーカーは、生物が特徴的に作り出す物質で、遠

    方からでも大気などにそれらが認められれば、その天体

    に生物が存在する徴しるし

    となる。例えば、地球上には豊富に

    酸素やオゾンが存在するが、これはもともと地球にはな

    く、生物による光合成の廃棄物として地球に存在している

    ものである。遠方から調べれば、バイオマーカーとなる。

    10

    54 宇宙ジェットの説明として正しいものはどれか。

    ①太陽から吹き出している高温のプラズマ粒子の流れ②中性子星が発するパルス状の電波③探査機「はやぶさ」が搭載したキセノンを用いたエンジン④活動銀河から吹き出ている光速に近い速度のプラズマ粒子

    ④ ①は太陽風、②はパルサー。超新星爆発後に残った中性子星が高速自転して、規則正しく可視光・X線・電波などを放射する現象。③はイオンエンジン。気体のキセノンをプラズマにして高速噴射させ推進力を得る、日本が独自開発したエンジン。

    1

    55 次の図ア、イ、ウにおける元素の存在比のグラフの組み合わせとして正しいものはどれか。

    ①ア:人体   イ:地球   ウ:宇宙②ア:宇宙   イ:人体   ウ:地球③ア:地球   イ:宇宙   ウ:人体④ア:地球   イ:人体   ウ:宇宙

    ① 宇宙初期の元素合成によって、水素とヘリウムの原子核が作られ、これより重い原子核のほとんどは星の中の核融合で作られる。よって宇宙全体では、水素とヘリウムだけで98%を占める。地球は、超新星爆発によってまき散らされた重い原子核を多く含んでいる。人の体は約7割が水(H2O)であり、水分子に注目すると、

    原子の個数としては水素Hが酸素Oの2倍になる。 しかし、OはHの約16倍の質量なので、水分子に含まれるOの重量はHの約8倍。そしてタンパク質は炭素原子C(Hの約12倍の質量)を中心に作られているので、Cの存在比も高くなる。

    4

    13

  • 第10回天文宇宙検定2級問題・解答

    No.   正答 解説 章

    56 連星系をつくっている白色矮星に、相手の星からガスが降り積もり、白色矮星の限界質量を超えたときに起こる大爆発は何か。

    ①Ⅰa型超新星②Ⅰb型超新星③Ⅰc型超新星④重力崩壊型超新星

    ① 超新星は水素の吸収線が見られないⅠ型と見られるⅡ型に分類される。Ⅰ型はさらにケイ素の吸収線が見られるⅠa型、ヘリウムの吸収線が見られるⅠb型、水素とヘリウムの吸収線がいずれも見られないⅠc型に分類される。Ⅱ型は、太陽の質量の8倍以上の恒星が進化の最終段階で起こる現象で、重力崩壊型超新星とも呼ばれる。Ⅰa型は連星系の白色矮星が限界質量を超えたときに起こる超新星爆発であるが、Ⅰb型、Ⅰc型は、Ⅱ型同様、恒星の進化の最終段階で起こる超新星爆発である。したがって①が正答となる。

    5

    57 次のハッブルの音叉型分類のうち、レンズ状銀河を表す記号はどれか。

    ①SAa②SBa③S0④E0

    ③ レンズ状銀河はS0という記号があてられる。そのうちバルジが棒構造をもたないものはS0(またはSA0)、棒状になっていればSB0となる。渦巻銀河にはSという記号があてられ、バルジが棒構造をもたないものはA、バルジが棒状であればBという記号が加わる。さらにバルジが小さくなるにつれ、a、b、cと添え字を付けて分類される。楕円銀河にはEという記号があてられ、真円の0から最も扁平な7までの数字が添えられる。

    7

    58天あま

    の岩いわ

    戸と

    伝説が、実際に起きた皆既日食に基づくと最初に提唱し

    たのは誰か。

    ①藤原定家

    ②荻生徂徠お ぎゅ うそ らい

    ③橘南谿たちばななんけい

    ④渋川春海しぶかわはるみ

    ②天あま

    の岩戸いわと

    伝説が実際の皆既日食を表すという説は多くの

    人が唱えているが、最初に唱えたのは江戸時代の儒学

    者、荻生徂徠おぎゅうそらい

    だ。藤原定家は明月記で過去に出現した客

    星を記した書状を綴じ込んでいたり、橘南谿たちばななんけい

    は日本初の

    望遠鏡を使った観望会を開いたり、渋川春海しぶかわはるみ

    は中国の暦

    に独自の改良を加え初の日本の暦を編纂したり、といず

    れも日本の天文学に貢献した先人たちだ。

    8

    59 固体ロケットの特徴について、正しく述べているのはどれか。

    ①推進剤をちくわのように、空洞をあけて充填する②量産効果は大きい③超大推力を達成するには向かない④液体燃料ロケットより比推力は大きくできる

    ① 固体ロケットは、火薬を推進剤としたもので、複雑な構造を必要とせず、また燃料や酸化剤の打ち上げ直前の注入も不要なので、扱いやすいのが特徴である。ただし、一回一回推進剤を丁寧に整形しながら詰めなければならず、さらに内部全体が燃焼場所になるので耐えるように頑丈につくらなければならないので、量産効果は低い。機械と液体燃料の組み合わせの液体ロケットだと、ラインにのせて量産することができる。一方、液体ロケットと違い、重い推進剤を使うことで超大推力を達成することもできる。ただし、そうしたものは噴出速度を上げられず、比推力は上げにくい。推進剤はちくわのように空洞をあけて充填し、その空洞部から燃料させていく。これは推進剤の気化による冷却でロケット全体の温度上昇を抑えるためである。

    9

    60 新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、生命のどのドメインに所属するか。

    ①バクテリア(真正細菌)②アーキア(古細菌)③ユーカリア(真核生物)④どこにも属さない

    ④ 生命の系統樹をいくらながめてもウイルスは見当たらない。これはウイルスが生物と無生物の境界的存在であるからである。では、どのようにして感染したり増殖したりするかというと、生物の細胞にとりつき、それを利用して増殖する。生物から生物へと渡り歩くことで増殖するので、生物どうしが近づかないかぎり、ウイルスは増殖できず、やがて不活化する。ソーシャルディスタンスをとる所以である。

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