宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙) 版 軌道力...
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宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
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軌道力学の基礎
松永三郎(東京工業大学・機械系)
第1章 序論(宇宙機力学、航行力学)
1.1 Astrodynamics の定義
自然の力および人為的な力が作用することによって、人間の作った物体の空間運動に関する
学問で、人類最初の人工衛星実現から過去 60 年間ほどの歴史を持つ。但し、その理論的背景とな
る天体力学は古い。
参考:1)Celestial mechanics(天体力学)
天体の動的な運動に関する
2)Orbital dynamics(軌道力学)
軌道上を周回する物体の運動 宇宙機(SpaceCraft,s/c)
3)Attitude dynamics(姿勢力学) 航法(Navigation)、誘導(Guidance)、
物体の姿勢運動 制御(Control)、推定(Estimation)
宇宙機
具体例:国際宇宙ステーション(the International Space Station)
通信衛星(静止、低軌道)
科学観測衛星(太陽周期軌道、極軌道)
スペースシャトル、こうのとり(HTV)
月・惑星探査機
考慮:1)どういう外力が作用するのか
地球・惑星・太陽の重力、宇宙環境(空気抵抗、電磁場、太陽輻射圧、相対論など)
2)どういう運動をするのか
軌道の推定、ケプラー軌道(2体問題の解析解(理想))、摂動解、姿勢運動
3)打上手法、軌道変更法、姿勢変更法は?
ロケット、スラスタ、運動量変換など
噴射推進機関 jet engine, ram jet
thruster(コールドガス、ヒドラジン、電気(イオン、マイクロ波など)、)
rocket(液体、固体、ハイブリッド、原子力など)
1.2 ロケットの歴史
1232 オガタイ(チンギス汗の息子)開封府を攻める時に火箭を用いた
1249 ダミエテの戦でロケット式焼夷弾の使用
1804 W.Congreve(英)ロケット弾20kg 信頼できる図面の最初
1895 P.E.Paulet 液体ロケット(ガソリン+過酸化窒素)ペルー
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1903~1930 Kontantin.E.Tsiolkowsky(ロ)理論研究
f
oe
M
Muu ln :Tsiolkowsky’s rocket eq.
oM :initial Mass, fM :final mass, u :terminal velocity , eu :exhaust velocity
spe Igu / :比推力(単位:時間、秒)
固体~200 s
液体~400 s
1923 H.Oberth(独)ガソリン+液体 2O ,ノズル付
燃焼室圧力 増 → 噴出速度 増,温度減
熱エネルギーが有効に運動エネルギーに変換
1926 Goddard(米)ガス押し、タンク圧力増
距離184 ft,高さ41 ft,2.5秒間、飛ぶ
1929 Junkers JATO(jet assisted take off)
1933 Sänger 光速飛行、光子ロケット
1941~2 Werner Von Braun A-4ロケット ICBMの小型版
13ton,14m,距離290km,高さ80km
エチルアルコール75% 水25%+液体 2O
推力25ton(sea level)
1943 Walter社
過酸化水素+メチルアルコール・水化ヒドラジン
ロケット飛行機 Me163B 965km/hr
1947 Bell X-1
有人超音速飛行 Lox-アルコール
1957 ジュピター
ICBM T-3
スプートニク1,2号(ロシア、旧ソ連)
1958 ジュピター,バンガードによる人工衛星打上
1961 アポロ計画開始
1969 月面着陸
1970 東大宇宙研で人工衛星「おおすみ」
1998 ISS(国際宇宙ステーション) フェーズⅡ
2003 小惑星探査機はやぶさ、超小型衛星 CubeSat(東工大 CUTE-I・東大 XI-IV)
2009 HTV 実証機(こうのとり)
2010 小惑星探査機はやぶさの帰還、小型ソーラー電力セイル IKAROS
2011 ISS(国際宇宙ステーション)完成
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1.3 宇宙環境
単なる真空ではない。その理解は宇宙機の設計製作運用に際して極めて重要。
1.3.1 太陽
半径 7*105 km(地球の 109 倍)、質量 2*1030 kg(地球の 3.3*105 倍)
地球は第3惑星(公転半径:1.496*108 km=1.5 億 km:光速度で約 500 秒=8 分 20 秒かかる)
表層に希薄ガス状のコロナ(温度 T=100~150 万 K):太陽風発生
(300~800km/s, 1~10 個/cm3, T=105 K)
太陽活動(11.2 年周期):コロナホール、太陽フレア 等により、太陽風増大
1 MeV 以上の高エネルギー粒子:太陽宇宙線(cosmic ray)
地球軌道上の太陽光エネルギー: 太陽光に直角な平面 1cm2 あたり 1 分間に 1.95cal
= 1.36kW/m2 太陽定数(solar constant) = 1 solar(照射エネルギー単位)
1.3.2 地球周辺の宇宙環境(space environment)
・自然環境(natural env.) : 高層大気 :大気モデル(密度、温度)、空気抵抗、原子状酸素
プラズマ環境
荷電粒子環境:太陽風、電子、ポジトロン、プロトン(放射線問題)、光量
子(X 線、ガンマ線): 回路設計上、要注意(Total Dose, SEE など)
電磁場環境
熱環境 :機械設計上、要注意
重力場 :万有引力、重力の定義、微小重力とは?
地球磁場
隕石・宇宙デブリ:近年、ますます問題化。定量的な議論が必要。
・誘導環境(spacecraft induced env.): S/C の存在により発生、汚染(contamination)
これらは、S/C の軌道運動の摂動、姿勢運動の擾乱、構成材料や搭載機器の劣化、電子部品の誤動作
や破壊、搭乗員の放射線被曝を引き起こす。
1.4 時系と座標系
1.4.1 時系
時系(time system):地球の自転、天体の運動、原子や分子の量子力学的な振動などの自然現象を時間
測定のための目盛りとして利用し、時刻と時間を定義する体系
・世界時 UT(Universal Time): 地球の自転に準拠した時系のことで、地球の極運動を補正した UT1、
季節変動を補正した UT2 がある。
・力学時 TD(Dynamical Time): 月や地球など天体の公転を基に一般相対論を用いて定義された時系
であり、地球中心に準拠した地球力学時 TDT(Terrestrial Dynamical Time)、太陽中心に準拠し
た太陽系力学時 TDB(Barycentric Dynamical Time)がある。この時系の前身となったニュート
ン力学に基づいた時系を歴表時 ET(Ephemeris Time)と呼ぶ。
・国際原子時 TAI(International Atomic Time): セシウム原子のエネルギー遷移によるスペクトル線の
周波数を基準にする時系で、世界各国のセシウム時計の平均値を取って定義される。均一な時
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の流れを提供し、現在の時間の基準となるものである。各国の時計相互の比較により平均値を
取るため、現在では、後述する GPS 比較技術を用いて行われる。
・協定世界時 UTC(Coordinated UT): 地球回転に基づく UT1 と国際原子時 TAI の妥協的時系であり、
時差の違いはあるが我々が日常使っている時刻である。ちなみに日本標準時 JST(Japan Standard
Time)は UTC より 9 時間進んでいる(UTC - JST = - 9 h)。秒の間隔は TAI を用いるが、地球
の自転が一般的に減速しているために、TAI は UT1 に比較し進んでしまう。そのため、閏(う
るう)秒(leap seconds)を用いて UTC の秒を調整し、UT1 と 0.9 秒以上ずれないようにして
いる。普通は年始めに閏秒の挿入(地球自転が増速すれば削除)が行われる。2017 年 1 月 1 日
に第 27 回目の閏秒の挿入が実施され、2017 年 10 月現在、協定世界時は国際原子時よりも 37
秒遅れている(UTC - TAI = -37s)。(理科年表などを参照)。
・GPS 時 GPST(GPS Time): 全世界測位衛星システム GPS(Global Positioning System)衛星内の
セシウム原子時計と地上施設の原子時計を総合して管理される時系であり、時間刻みは 100ns
程度の小さな誤差を無視すれば国際原子時 TAI と同一である。但し、GPST は 1980 年 1 月 6
日(日)0 時 UTC に開始したので、その時の UTC と TAI の差である 19 秒の遅れがある(TAI
- GPST = 19 s)。GPST と UTC との差は閏秒の挿入と共に増加し、2017 年 10 月現在、GPST は
UTC よりも 18 秒進んでいる(UTC - GPST= - 18s)。
1.4.2 暦
・ユリウス日 JD(Julian Date): 紀元前 4713 年 1 月 1 日正午から数えた平均太陽日
・MJD(Modified Julian Date): JD から 2400000.5 を引いた日。この変換は桁数を減じ、普通の暦
日のように始まりを真夜中にするため。
表 基準元期
通常日(UTC) ユリウス日(JD) MJD 意味
1980 年 1 月 6 日 2 444 244.5 44 244.0 GPS 基準元期
2000 年 1 月 1 日正午 2 451 545.0 51 544.5 WGS-84 基準元期(J2000.0)
1900 年 3 月から 2100 年 2 月まで有効である暦変換式を示す。通常日の年、月、日を整
数 Y, M, D、時刻を実数 UT(時分秒を時に換算)で表すと、JD への変換は次式
1720981.5UT/24D130.6001INT365.25INTJD my (1)
で計算できる。但し、INT[ ]は実数[ ]の整数部分であり、実数 y, m は
2if12,1 MMmYy
2if , MMmYy
と計算する。逆変換に関しては、まず次式を順に計算して、
25.365/1.122INT,1537,0.5JDINT bcaba
6001.30/INT, 365.25INT b-decd
通常日は次のように計算できる。
0.5JDFRAC 6001.30INT edbD
/14INT 121 eeM
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10/7INT4715 McY
ここで、FRAC[ ]は実数[ ]の小数部分である。曜日も 7 を法とする算法を用いて、
7,0.5JDINTmod N
と決定できる。ここで、N=0 は月曜日、N=1 は火曜日、などである。
1.4.3 座標系
・地球中心慣性 ECI(Earth-Centered Inertial)座標系: 座標原点が地球の質量中心にあり、ニュートン力
学の原理基盤である慣性系の役割をする。地球自身の公転運動ため厳密には慣性系ではないが、
地球近傍の衛星運動を記述するには十分である。典型的な ECI 系は、xy 面を赤道面にとり、x
軸正方向を春分点、z 軸正方向を xy 面に垂直な北極点方向、y 軸正方向を xyz 軸が右手系直交
座標系を成すように形成される。実際には、地球自身が真球ではないために太陽や月の重力の
影響で赤道面が不規則な運動を生じ(自転軸の歳差、章動運動)、上で定義した ECI 系は慣性
系とは見なし難い問題がある。そのために、GPS ECI系として、2000年1月1日正午UTC (USNO)
における赤道面を基準にした座標系を採用している。
・地球中心地球固定 ECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系: 地上局(GPS 受信機など)の位置を記
述するために、地球の自転と共に回転する座標系である。xy 面を赤道面にとり、x 軸正方向を
経度 0 度、y 軸正方向を東経 90 度、z 軸正方向を xy 面に垂直な幾何学的北極点方向にとる。衛
星の位置や速度を ECI 系から ECEF 系に座標変換し、GPS 受信機の位置を表す経緯度と高度を
計算する。その際に、地球を記述する物理モデルを必要とする。GPS 測位等に採用されている
地球標準物理モデルは、DoD の世界測地系 1984、即ち、WGS-84 (World Geodetic System 1984)
である。
赤道面基準慣性座標 (ECI)系を T
321 iii または Tˆ ˆ ̂ kji 、軌道面基準昇交点(回転)座標系を
T
cba iii 、ここで、 ai は昇交点方向、ci は軌道面垂直方向を定義する。
昇交点方向
cs /
軌道面
赤道面
昇交点方向方向
f
ai
北極点方向bi
ci
ri
r
i
u
k
j
i
i
軌道面垂直方向(面積分方向)
図 1 ECI 系と軌道面基準昇交点(回転)座標系
近点方向
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u
r
ri
ti
i
ni
ai
f
cs /
軌道面
図 2 動径横断座標系と接線垂直座標系
また、図 2 のように、 ri を単位動径ベクトルに取り、 i を rc iii に取った動径横断座標系
T
cr iii 、 ti を宇宙機の速度方向単位ベクトルに取り、 ni を tcn iii とした接線垂直座標系
T
cnt iii を定義する。
このとき、各座標系間の関係は、下記のように表される。
3
2
1
31 CC
i
i
i
i
i
i
i
c
b
a
(1)
但し、
iii
iii
ii
iii
cossincoscossin
sincoscoscossin
0sincos
100
0cossin
0sincos
cossin0
sincos0
001
CC 31
(2)
c
b
a
c
r
uiu
i
i
i
i
i
i
i
i
i3
3
2
1
313 CCCC (3)
但し、
iii
uiuiuuiu
uiuiuuiu
iu
cossincossinsin
cossincoscoscossinsincoscossinsincos
sinsinsincoscoscoscossincossincoscos
CCC 313
(4)
100
0sincos
0cossin
2C,
2C 33
c
r
c
n
t
i
i
i
i
i
i
(5)
ここで、は飛行経路角(flight path angle)である(とも書く)。
座標変換などの詳細については、講義「宇宙システム工学」の資料、または、教科書「宇宙ステーシ
ョン入門」などを参照のこと。
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第 2 章 2体問題
2.1 ニュートンの法則
第1法則)力が作用しない限り、質点は静止ないしは一定速度で運動する。
(慣性の法則)→ 慣性空間、慣性座標系の定義
第 2 法則)慣性座標系に対して、質点の運動は
pp
F td
d (1)
によって記述される。ここで、F:全作用力,p :並進運動量pの時間微分
vp m :質点の質量と速度の積(並進運動量)
慣性系を規準として時間微分を行うことに注意する。
第 3 法則)全ての作用には、向きが反対で大きさの等しい反作用が存在する。
2.2 2体問題の定式化と物理
2つの質点 1m , 2m
位置 1r , 2r
仮定: 1m , 2m に作用する力は質点の相対距離のみに依存する。
rF ˆF (2)
ここで 12 rrr
r/ˆ rr :相対方向の単位ベクトル
rrr ・r :相対距離
運動方程式(ニュートンの第 2 法則)
Fr 22m
Fr 11m
より、 FFrr12
12
11
mm
即ち rr ˆ11
12
Fmm
ここで、21
21
mm
mm
:換算質量
力のモデル: ニュートンの万有引力
2
21
r
mmGF F 21311 skgm1067.6 G :万有引力定数(測定精度が低い)
を用いて
rrr ˆ1
ˆ2212
21
21
21
rmmG
r
mmG
mm
mm
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即ち、2 体問題の基本微分方程式
03
r
rr (3)
が得られる。ここで、 21 mmG :重力定数 (測定精度は高い)
注意:
1)式(3)でr を r に変えても式は不変⇒ 1m に対する 2m の運動を与える
2m に対する 1m の運動を与える
t を t に変えても式は不変⇒ 時間反転で物理は変わらない
2)式(3)は質量 21 mm を固定原点とする単位質量 um の運動を表す。
03
rrr
mm uu
3)外力(重力)はポテンシャルで表せる。
r
r
V ,
rV
(工学では無駄を省くために符号を逆に取る場合あり)
ここで、重力ポテンシャルは無限遠点を 0 となるように定義
0limlim
rV
rr
4)質量中心という考えは運動方程式を導く際に必要としない。
5)導出に 1m , 2m は質点という仮定が必要であった。地球と月の関係は大きさを考えると質点近似で
きないように見える。 ⇒ 球対称質量分布を持つ球対称物体(半径 R)でも式(3)は成立する。但し、
Rr
ニュートンはこのことを証明できたので、ハレーに薦められて「プリンキア」を執筆、出版したと言
われている。
6)2 つの質体 1m , 2m の質量中心回りについて、 1m , 2m それぞれの運動を考えるとき、それぞれは、
見かけ上、重力定数が異なる運動方程式に支配される。詳細については、2.5 節を参照せよ。
問1 半径 R 、質量が球対称密度分布 Rrr 0, である球対称物体が、質量中心から距離 a (ただ
し、a > R)の点に作る重力ポテンシャルは
a
Gm
となることを示せ。ここで、G は万有引力定数であり、球対称物体の全質量 m は
R
drrrm0
24 :
即ち、球対称物体の質量中心に置かれた、質量が全質量 m に等しい質点の作る重力ポテンシャルと同
等である。
同様にして、任意の物体によって球対称物体(全質量 m)に働く重力は、球対称物体の質量中心にあ
る全質量 m の質点に働く重力と等しいことも示すことができる。
つまり、ニュートンの2体問題は、太陽、地球、月などの球状物体に高い精度で適用可能であること
を意味している。(別紙「球対称物体の重力ポテンシャル」参照)
備考:微小重力とは?
1)科学者や工学者が微小重力とみなすのは、地球表面の重力加速度の 100 万分の1、すなわち、 G101 6
程度である。ここで Gは地球表面の重力加速度。地球から離れることで、地球との万有引力を減少させ
て、微小重力環境を実現するには、どのくらいの距離を離れる必要があるか。
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解:地球表面上の重力加速度: 2-
2G1 r
R
GM
微小重力: 232
66
101101G101
R
GM
R
GM
必要な距離 R3101 :地球半径 6370km の 1000 倍の 6,370,000km => 非現実的
ちなみに、月までの距離は、地球半径の約 60 倍の 384,401km。この距離だけ地球から離れた場合の重力
加速度は、
G103
3600
G
360060
4
22
R
GM
R
GM
月表面の重力加速度は、 G178.06
G なので、月の質量による寄与は、地球のそれよりも、600 倍大きい。
また、月表面の重力と同じ値となるような地球からの距離は、
22245.2666
G
R
GM
R
GM
R
GM より、地球半
径の約 2.45 倍。
さらに、地球の自転角速度と同じ公転角速度を持つ静止円軌道の高度は 35,786km なので、軌道半径
は約 42,156km (=35,786 + 6370)となり、地球半径の約 6.62 倍。この地点での重力加速度は、
G023.0
8.43
G
8.4362.622
R
GM
R
GM
問)国際宇宙ステーション ISS の軌道のノミナル高度は 400km、GPS 衛星のそれは 20,200km であると
き、それぞれの地球の重力加速度を求めよ。
解)地球からの距離は、それぞれ、1.06 倍、4.17 倍なので、それぞれ、0.89G, G057.04.17
G
2)地球を周回する宇宙機の内部は、微小重力と言われているが、確かに同じような経験をすることが
できる。しかし、違いもあり、多くの加速度が宇宙機の運動に影響を与える。例えば、軌道変換スラス
タ、内部振動、大気抵抗、宇宙飛行士の運動などである。
「地球の引力と軌道上を回る宇宙機に働く遠心力が等しく、そのバランスで微小重力が生じる」と言
われる。この説明について、少し、考察しよう。
ニュートンの第 1 法則によると、「力が働かない限り、すべての質点は、停止している、または、直
線状に一様な速さで進む」はずである。しかし、地球の周りを回る宇宙機は、明らかに、直線等速運動
をするのではなく、楕円上を(可変速)運動している。この運動(楕円)が、力が働かない場合に生じ
る運動(直線)と異なる。つまり、宇宙機の位置変化は常に向きを変えるので、ニュートンの第 1 法則
によれば、宇宙機には常に力が働いていることになる。実際、地球の引力が宇宙機に働いている。
次に、遠心力というのは、宇宙機に働く本当の力ではない。宇宙機の運動を計測する座標系によって
異なる「見かけの力」と呼ばれているものの一種である。「見かけの力」は、宇宙機の位置変化を計測
する座標系(の並進の加減速運動および回転運動)に依存する。
ニュートンの第 2 法則によれば、「真の力は、慣性質量と、慣性系で計測した加速度の積に等しい」。
今の場合、慣性系から計測すると宇宙機は引力によって地球回りに楕円運動をし、その結果、加速度を
生じるが、宇宙機の運動に連動して地球回りに公転運動する回転座標系(軌道参照系、HLHV など)に
おいて、宇宙機の慣性系での位置変化である加速度を、回転座標系に変換して表現し、慣性質量を掛け
て式変形(慣性力表現)することで、見かけ上、遠心力と呼ばれる力を抽出できる(円運動の場合。本
当の楕円運動の場合は、他の見かけの力も加わる)。言い方を変えれば、宇宙機が楕円運動という時間
の関数として決められた軌道を取ることを、宇宙機は位置の拘束条件(今の場合、楕円運動)を満たさ
ないといけないと考え、力がない場合の等速直線運動とは異なる拘束条件を満たすように動かすために、
その点と一緒に動く座標系で見たときに生じる「見かけの力」である。
引力以外に外力がなく、質量中心回りに自転しない場合、質量中心において、引力と見かけの力の和
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がゼロとなり、それを無重力と呼ぶ。この運動を特に自由落下運動とも呼ぶ。
宇宙機が、引力によってひっぱられ、自由落下運動しているために、微小重力環境を生み出している。
理想的には宇宙機の質量中心は無重力になるが、外力が働くと無重力から外れる。また、宇宙機に固定
された参照点が質量中心以外の場合、宇宙機が質量中心回りに自転をしたりすると、その点にて、自転
による遠心力(見かけの力、拘束力)が働く。
微小重力の定量的な定義は、一例として、参照点に働く抗力である。これにより、詳細な解析が可能
になる。別紙(微小重力問題)参照。
地球表面のある点の重力加速度は、基本的には、地球との万有引力と地球の自転による遠心力の和に
より、定義される。なぜなら、計測点が地球に固定されており、地球の自転とともに回転しているから
である。したがって、緯度の違いにより、重力加速度は方向と大きさが異なる。ただし、引力と比較し
て、地球の自転の影響はかなり小さい。地球を周回する宇宙機は、この地球回りの公転運動による影響
が大きくなり、自由落下条件を満たすと、微小重力環境を発現する。
2.3 運動の積分の定義
n 次元 2 階常微分方程式
t,,xxFx (4)
nx
x
x
2
1
x ,
nF
F
F
F2
1
txx が式(4)の解のとき、任意の関数 tG ,,xx で
tG ,,xx =一定(時間に対して不変)
となるのを運動の積分と呼ぶ。
例 2 体問題では、まず、エネルギーと角運動量が運動の積分となる。他にもある(後述)。
もし式(4)で 2n 個の積分が存在すれば、系は、完全可積分と呼ばれ、完全解を持つ。
2体問題では、
3
2
1
x
x
x
x , xx
F3
rx :位置ベクトル
とすると式(4)を得る。 3n なので、 6322 n 個の積分が完全解を持つために必要。
2.4 2 体問題の積分
簡単のため、 1m を原点とする。(2.1 の注より、 2m 、または、全系の質量中心を原点にしてもよい)
r :位置ベクトル
r:速度ベクトル
c :面積分
固定原点、基面、基方向(基面内)
1i :基方向、3i :基面垂直方向、 132 iii
式(3)は座標系を決めずに導かれた ⇒ r をどう表すか(様々あり)
iiiiirTT
xxx xx332211 ,
3
2
1
i
i
i
i :ベクトル配列、
3
2
1
x
x
x
x
:成分行列
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2.4.1 面積分 c
基礎式は
03
rrr
(5)
r (5)を行うと
0rr
ここで 0rr を用いた。これを変形して、 0dt
d の形にすることを試みる。
rrrrrrrr dt
d ⇒ 0rr
dt
d
即ち
crr 一定 (6)
面積積分(area integral)と呼び、これが一定であることから、角運動量保存則を表す。
特に、c を角運動量ベクトル(軌道面ベクトル)と呼ぶ。
tt rrcc , 一定
の幾何学性質を調べよう。
0 rrrcr ・・
0 rrrcr ・・
これらから、c はr とrについて垂直、したがって運動の軌道面に垂直である。
言い換えれば、運動の軌道面が存在し、その方向は一定である。
特に、
0332211 cxcxcxcr・
は原点を含む平面の方程式を表す。c は平面の法線ベクトル方向。
2.4.2 エネルギー積分 h
・r (5)を行うと
03
rrr
r
・
式(6)を導いたのと同様に、
rrrrrrrr
rrrr
・・・・
・・
332
2
1
rdt
d
dt
d
rdt
ddt
d
→(問)
であることに注意して、
r
rr ・
2
1一定 h (7)
となる(注:冨田の本では2
h としている)。これは(単位質量当たりの)エネルギー保存則を表し、
rr ・2
1:運動エネルギー
r
:位置エネルギー(ポテンシャル・エネルギー):万有引力に起因
h :全エネルギー、2 体エネルギー(ケプラー・エネルギー)
と呼ぶ。
速度の大きさ v は、式(7)より
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12
h
rv
22 rr
だから
h
rv
2
と求められる。
無限遠( r )での値は
0if2
0if0
0if:21
hh
h
hh
v
虚数
注意:
双曲線軌道
放物線軌道
楕円軌道
0
0
0
h
h
h
であることが示される。特に、h < 0 のとき、実解がないので無限遠は物理的に存在しない、即ち、軌道
は有限であることを意味する。万有引力による位置エネルギーの影響が大きく、遠くに離れようとして
もある地点で動径方向速度が逆転してもとの方向に戻り出し、結果として、周期的な運動をする。
双曲線軌道(h > 0)の場合、無限に離れて脱出でき、その無限遠での速さ v を双曲線余剰速度、2
3 vC
を打ち上げエネルギーと呼び、惑星間軌道の設計に重要な指標として使用される。
ちなみに、a を半長径(長半径)とすると、(証明は後述)
ah
2
ただし、a > 0:楕円、 a :放物線、a < 0:双曲線
したがって、
arv
12 ただし、a > 0:楕円、 a :放物線、a < 0:双曲線
特に、双曲線軌道では
22
vr
v
ここで、a
v
2.4.3 ラプラス(レンツ)積分 f
角運動量式(6)基礎式(5)を行うと
03
rrrrc r
ベクトル恒等式 zxyzyxzyx より
03
rrrrrrrc r
上式を時間の全微分形に変形する。まず、 c 一定より
rcrc dt
d
また
rrrrrrr
3rrdt
d => 確認せよ。
より
0
rrc
rdt
d
即ち
rrcr
一定 εf (8)
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上式をラプラス(レンツ)積分と呼ぶ。 f をラプラスベクトル(または fε として εを離心率ベクト
ル)と呼ぶ(符号は後の便利のため)。歴史的には J.Hermann(1710)が先に見い出している。
式(6)より
frrrr r
2.4.4 積分間の関係
1)c は f に垂直:
c ・(8)より
fcrcrcc ・・・ r
即ち
0fc・ (9)
f は c に垂直であり、c は軌道面に垂直だから、 f は軌道面内にある。
注意:
rf , のなす角を とすると、その内積は
cosfrrf
一方、式(8)より
rcr 2rrcrf
したがって、
cos1cos1
/2
e
p
f
cr
ここで、
fe
cp ,
2
と置いた。
この式は幾何学における円錐曲線(円、楕円、放物線、双曲線)に対応している(後述の注意3参照)。
特に を真近点離角、e を離心率、p を半直弦( 2/ のとき、r = p)と呼ぶ。
f の方向は、 0 の方向、すなわち、軌道の動径 r の最小値を与える点(焦点 F に最も近い点)で
ある近点の方向を示している。
これは、3 つの角(オイラー角)
近点引数
軌道傾斜角
昇交点角
:
:
:
i
で表すことができる。右図は、各軌道を天球面に射影
した場合の位置関係を示す
また、離心率ベクトルε:
rrcfεr
の大きさは、 ef
fε となって、離心率に等しい。
2)c , h , f の関係
rrrcrrcrcff 2
22 2
rrf
ベクトル恒等式 zywxwyzxwzyx より
近点方向
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(第 1 項)= rrrcrcccrrrcrc 2c・
ここで、 ccrc ・ ・ 2,0 c を用いた。
また zyxzyx より
(第 2 項) 2222c
rrr
crrrcr
(第 3 項) 2
2
2
rrr
したがって、
222 2
rcf rr
( )内は 2h に等しいので
222 2 hcf
または
2
22
12
f
h
c (10)
注意1) 式(10)は、 21 eap とも書ける。ここで、h
a2
となり、円錐曲線の幾何学関係
から、半長径(長半径)に対応している。書き換えると、2 体エネルギー: a
h2
以上より、式(6),(7),(8)で与えられる積分 c, h, f は、式(9)と(10)により、お互いに独立ではない。
積分の個数は
c:3 個、h:1 個、f:3 個の計 7 個
一方、拘束条件の個数は
式(21):1、式(24):1の計 2 個
したがって、独立な積分の個数(自由度)は、7-2=5個であり、完全積分にはもう 1 個必要である。
注意2) 21 eap に関して、 p は半直弦であり、常に正。したがって、下記の注意 3 により
a) 0,100,01 2 aeae :楕円
b) 0,10,01 2 aeae :双曲線
c) aep ,1,:確定 :放物線
の 3 通りが存在する。
注意3)軌道面内のベクトルを表現するための直交座標系 x,y として、f または ε方向を x 座標、それに
垂直に y 座標、原点を軌道運動の原点(焦点)とすると、
222,,cos yxrexrx rε
式(#)より
exprrpexrprc
2
rε (#1)
と上述の 21 eap も用いて、次の結果を得る。
1) 1e のとき
222
2222222222
22222222
1
2111121
12
aexae
xaexeaexeexeaea
xepexpxexpxry
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15
だから
1
1 22
2
2
2
ea
y
a
aex
2) 1e のとき
x
pppxpxxpxry
222222222
すなわち、
a) 10 e のとき、 0a に注意して、
11 22
2
2
2
ea
y
a
aex :
中心 0,aeC 、x 方向半径 a 、y 方向半径21 eab
の楕円;焦点 F(0,0)
極座標: sin1,cos 2eayaaex
特に、e = 0 のとき、
1
2
2
2
2
a
y
a
ax : 中心 0,aC 、半径 a の円。
極座標: sin,cos ayaax
b) 1e のとき、 0a に注意して、
1
122
2
2
2
ea
y
a
aex:
中心 0,aeC 、漸近線方向 11
tan 22
e
a
ea
の双曲線;焦点 F (0,0)
e
e
e
1sin,
1cos)
2 無限遠点:
1tantantan 2 e漸近線方向:
極座標: sinh1,cosh 2 eayaaex
注意)他方の双曲線: sinh1,cosh 2 eayaaex
虚焦点 F’ (-2ae,0)
c) 1e のとき、 0p に注意して、
x
ppy
222
or 22
2 p
p
yx : 頂点
0,
2
pA の放物線
ここで、式(#1)より
一定e
p
e
rx (#2)
y 軸から x 軸正方向にe
pだけ離れた x 軸に垂直(y 軸に平行)な直線
を directrix と言う。式(#2)の x が軌道上の点 P の y 軸からの距離である
ので、式(#2)は、点 P と directrix までの距離がe
rであることを示す。
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16
Tv
Tr
0r
T
0v
0
したがって、点 P と焦点 F との距離(動径)が r なので、点 P と directrix
までの距離がe
rに注意すると、それらの長さの比が常に一定値 e となる。特に、放物線の場合 e = 0 な
ので、 prx 、したがって、上記の比は1となる。
2.4.5 運動の積分の今までのまとめ
1. 7 個の運動積分(定数)
frrc
rr
crr
r
hr
2
1
2. 2 個の拘束条件
2
22
12
0
f
h
c
fc
または
21
cos1
eap
e
pr
備考: 対称性により、力学性質が決まる:
中心力 → 系の回転対称性 ⇒ 角運動量保存則 一定c
時間を陽に含まない → 時間の平行移動に関する対称性 ⇒ エネルギー保存則(h = 一定)
隠れた対称性 ⇒ ラプラスベクトル f の保存(特に方向)
例題 離脱問題
角度)方向の局所水平からの最終飛行経路角(速度
さ最終距離,速度の大き
初期位置の距離
・,
・
T
21
21
000
TTTT vr
r
vv
rr
⇒
o
ov
を求めよ。
解)エネルギー積分 一定T
T
r
v
r
vh
22
2
0
2
0
0
2
02
2rr
vv
T
T
面積積分(角運動量) 一定 TTrc vrv00
TTT
TTT
vrvr
vrvr
coscos
2sin
2sin
000
000
∴
TTT
vr
vr coscos
00
1
0
)2(
0
)1(
0 ,
この解はアポロ宇宙機に搭載されたロケットエンジンのサイズを決めるのに使用された。
2.4.6 ケプラー方程式
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17
第 6 番目の積分を求める。
(6)より rrrrrrrrrrrrcc 2c
(7)より r
h2
2 rr
一方, rr dt
dr
dt
d 2 から
rr rr (11)
したがって
222 22 rr
rhrc
(12)
式(12)を rrft dd の形にして、時間と積分定数の関係を求めるのが目標である。
ここでは 0h (楕円)と仮定する。その他の場合は、後述の備考を参照せよ。
注) 0h 楕円
0 放物線
0 双曲線
式(12)より
22222
2222
22
hh
c
hrh
h
c
h
rrhrr
(13)
注意:楕円について、近点以降、半周期後の遠点に行くまでは 0,0 rr 、遠点通過後、近点に近づ
くまで 0,0 rr なので、 rrは周期的に両符号を取る。
式(10) h2
2
222
122
f
hh
c or
222
222
h
f
hh
c
を用いて、式(13)は
22
222
hr
h
fh
dt
drr
∴ 22
22
2
hr
h
f
rdrdth
(14)
変数変換 h
rz2
, drdz
dz
zh
f
hzdth
2
2
2
2/2
両辺は積分できて
hf
z
hz
h
fth
2/cos
22const.2 12
2
(15)
証明)下記の微積分公式を用いる。
const.d,d
d 22
2222
22
zuz
zu
z
zu
zzu
z
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18
.constcosd1 1
22
u
zz
zu
後者について、特に、 02
h
fu として、 uzuzu 022
変数変換: ,dsind,cos xxuzxuz x の取り得る範囲: x
ここでは、不定積分を求めるために、次の xu sin の値が正と仮定する。
xuxuxuxuzu sinsinsincos1 222222
すなわち、 0u に注意して、2
3
20sin
xx (第 2、第 3 象限)に限定しておく。このとき、
与式の左辺: .constcos.constd1dsin
sind
1 1
22
u
zxxx
xu
xuz
zu
証明終)
定義(離心近点離角 E):
hf
zE
2/cos 1
または Eh
fz cos
2 (16)
EE 22 cos1sin より、次を採用する(符号は議論の都合で選択している:上記の証明において、
h
fuEx
2, に対応)。
∴ 2
2
2
2sin z
h
f
f
hE
(17)
以上より
Eh
Eh
fth
2sin
2.const2
または
Ef
EKthh
sin22
ここに、 K :積分定数(6 番目)
さらに、h
a2
,
fe 10,0 ea と置き、符号を整理することで、 0h 、即ち、楕円の場合
のケプラー方程式(Kepler’s equation)が求められる。
EeEKta
sin3
(18)
特に、 ptt :近点通過時刻を定義すると、この時刻で 0E だから、式(18)より
ptK
さらに、次の平均近点離角を定義する。
0000
3
Mttnttnttn
ttntta
M
p
pp
3an
は平均速度(mean velocity,mean angular velocity)、 0t は、観測時刻(元期 epoch)である。する
と、楕円の場合のケプラー方程式は
EeEM sin (19)
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19
この式から、位置(離心近点離角 E 、真近点離角 )と時刻(平均近点離角 M)の関係が求められる。
0cos1d
d Ee
E
M
これから、M は E の単調増加関数なので、M に対して E は唯一定まる。
また
EeaEf
hhzr cos1cos1
22
(20)
こうして、動径 r を離心近点離角 E でも表現できる。
さらに、式(18)より、微分関係が得られる。
EEeta
dcos1d3
arar
a
Ee
aEt
E
1
cos1d
d3
3
(21)
離心近点離角 E 、真近点離角 の関係は、楕円の場合
2
tan1
1
2tan
E
e
e
(22)
となる(ガウスの公式)。
楕円の場合のガウス公式の証明)幾何学的にも証明できる(3 章付録1参照)が、ここでは別証を示す。
離心近点離角 E の定義式(16)、または式(20)と円錐曲線式
cos1
1
cos1
2
e
ea
e
pr
から、
cos1
cos
cos1
11
11
1cos
2
e
e
e
e
ea
r
eE
(23)
または、 Ee
eE
cos1
coscos
(24)
これより
Ee
Ee
Ee
Ee
Ee
Ee
Ee
eEEe
Ee
eEEe
Ee
eE
cos1
sin1
cos1
sin1
cos1
cos11
cos1
coscos1
cos1
coscos1
cos1
cos1cos1sin
2
22
2222
222
2
と計算できるが、符号の判別が必要である。以下の別誘導でも示すように、+符号を採用する。すなわ
ち、 Esin,sin は同符号であり、幾何学的にも正当化される。
で表示された動径 cos1 e
pr
を時間微分し、 pcr 2
に注意すると
sin
sinsin
cos1
2
2p
erp
ee
e
pr
(25)
同じく、E で表示された動径の式(20)を時間微分し、式(21)に注意すると、
Ee
E
aeE
r
aeEEaer
cos1
sinsinsin
(26)
式(25)と式(26)を等値して、 21 eap と e < 1 に注意すると
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20
Ee
Ee
Ee
Eap
r
Eap
cos1
sin1
cos1
sin/sinsin
2
(27)
式(24), (27)を用いて、
2tan
1
1
1cos
sin
1
1
1cos1
sin11
cos1cos
sin1
1cos1
coscos1
sin1
1cos
sin
2cos2
2cos
2sin2
2cos
2sin
2tan
2
2
2
E
e
e
E
E
e
e
Ee
Eee
EeeE
Ee
Ee
eEEe
Ee
または
2
tan1
1
2tan
e
eE
(28)
これより、一般に、 E
証明終)
備考:双曲線( 1,0 eh )の場合:
一定 rrc 、 222 22 rr
rhrc
0h
⇒ 2222 22 crhrrr
h
cr
hrhrr
22
22
h
c
hhrh
2222
222
注意:双曲線について、近点以降は、常に、 00,0 rrrr となるので、上式では+符号を採用し
ている。
式(10)より
22
12
f
h
c 11 22 eaeap
を用いて
222
122
f
hh
c or
222
222
h
f
hh
c
と変形できるので、
∴
22
222
h
f
hrh
dt
drr
22
22
2
h
f
hr
rdrdth
変数変換:h
rz2
, drdz
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21
2
2
2
2
2
2
2
2
h
fz
dz
h
h
fz
zdzdth
上式は積分できて
∴
hf
hfz
hh
fzth
2/
2/sinh
22const.2
22
1
2
2
証明)下記の微積分公式を用いる。
const.d,d
d 22
2222
22
uzzuz
z
uz
zuz
z
.constsinh.constcoshd1 22
11
22
u
uz
u
zz
uz
後者について、特に、 02
h
fu として、 zuuzuz ,022
今、 uz と仮定して、
変数変換: ,dsinhd,cosh xxuzuxuz x の取り得る範囲は実数全体: x
ここで、不定積分を求めるため、 0u に注意して、次の 0sinh xu となるように、x の取り得る範囲
を 0x に限定する。
xuxuxuuz sinhsinh1cosh 222222
このとき
与式の左辺: .constcosh.constd1dsinh
sinhd
1 1
22
u
zxxx
xu
xuz
uz
また、公式: 1sinhcosh 22 xx より、今、 0sinh x に限定しているので
u
uzx
u
uz
u
zxx
221
222
2 sinh11coshsinh
証明終)
定義(双曲線の場合の離心近点離角 H):
2
2
2
2sinh
h
fz
f
hH (29)
注意)式(29)と式(17)より、 EiEH 1 の関係がある。
そうすると、
∴ Hh
Hh
fth
2sinh
2const.2
∴ HHf
Kthh
sinh22
:ケプラー方程式(双曲線) (30)
ここで、 02
h
a
, 1
fe に注意して、
HHeKta
sinh3
(31)
特に、 ptt :近点通過時刻 0 H とおいて、積分定数 K は
ptK
双曲線の場合の平均近点離角を
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
22
00003Mttnttnttntt
aM pp
(32)
と定義することで、双曲線の場合のケプラー方程式は
HHeM sinh (33)
とかける。ここで、双曲線の平均運動: 3a
n
(34)
e > 1 に注意して
01coshd
d He
H
M
であることから、M は H に関して単調増加関数であり、M が指定されると、H は唯一解を持つ。
次に、公式
2
22
2
2
22 2
2
21sinh1cosh z
f
h
h
fz
f
hHH
より
zf
hH
2cosh 、
hrH
h
fz
2cosh
2
であるから
1coshcosh1cosh12
HeaHeaH
f
hr
(双曲線) (35)
また、式(31)を時間微分して 1cosh3
HedH
dt
a
a
r
、 即ち
arar
a
dt
dH
13
(36)
ここで、双曲線の円錐方程式
cos1 e
pr
、
02
1
01 22
ha
fe
eac
p
(37)
離心近点離角 H と真近点離角 との関係(双曲線の場合のガウスの公式)は、
2
tanh1
1
2tan
H
e
e
(38)
双曲線の場合のガウスの公式の証明)楕円の場合と同様にして証明できる。まず、式(28)より、
cos1
cos1
cos1
11
11cosh
2
e
e
ee
e
ea
rH
(39)
または
1cosh
coshcos
He
He (40)
次に、式(35)を時間微分して、式(36)に注意して
1cosh
sinhsinh
1sinh
He
H
aeHea
arHHaer
(41)
表示の式(25)と等値して、 11 22 eaeap に注意すると
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H30.12.28 版
23
1cosh
sinhsin
He
H
ae
pe
即ち、 1cosh
sinh1sin 2
He
He (42)
式(40), (42)を用いて、e > 1 に注意して
2tanh
1
1
1cosh
sinh
1
1
1cosh1
sinh11
11cosh
cosh1cosh
sinh1
1cos
sin
2tan
2
H
e
e
H
H
e
e
He
Hee
He
HeHe
He
または
2
tan1
1
2tanh
e
eH (43)
証明終)
放物線(h=0, e=1)の場合は、放物線の離心近点離角を D として、放物線軌道のケプラー方程式:
6
3DDrM p (44)
ここで、平均近点離角M: pttnM 、近点距離2
prp 、平均運動 n (43)
また、離心近点離角 D と真近点離角 の関係: p
D
2tan
(44)
証明)放物線軌道の場合、 ae ,1 となるが、半直弦 p は設定できる。 定数 01 2eap
このとき、近点距離21
p
e
prp
(45)
とおける。円錐曲線表示より、e = 1 に注意して
222
2
122
tan122
sec2
2cos2
22cos1
cos1u
ppppppr
(46)
upur (47)
ここで、
2
tan
u (48)
とした。式(12)より、 0h に注意して
22222 22
2 rrrrrr
hrc
(49)
一方、 pc 2 だから
prrr 222 (50)
式(46),(47) を上式(50)に代入して
pupuup
up
2
2
22 12
12
2
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
24
222
3
14
uup
0d
d
t
uu 、すなわち、 0
d
d
t
を採用して
t
uu
p
d
d1
2
23
(51)
uup
t d12
d 23
(52)
積分して
32const
33u
up
Ktt (53)
近点通過時刻を pt とすると、 ptt のとき、 02
tan,0
u だから、 Ktp 0 、すなわち、
ptK (56)
2tan
3
1
2tan
2
33
ptt p
(放物線の Kepler 方程式) (57)
ここで、放物線の離心近点離角 D、平均近点離角 M、平均運動 n を
n
ttnttM
rpD
pp
p2
tan22
tan
(58)
と定義すると、放物線の Kepler 方程式は次式のようになる。
6
3DDrM p (59)
右辺が D の3次多項式なので、実数 M を与えると、必ず、唯一解 D が存在する。
備考:
放物線の離心近点離角 D、平均近点離角 M、平均運動 n を
3
3
2
2
2tan
pn
ttnttp
M
D
pp
(58)
と定義し、放物線の Kepler 方程式を次式のようにする流儀もある。
3
3DDM
証明終)
注意)円錐曲線式
ereape
pr p
11,
cos1
2
は、下記のように式変形できる:
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H30.12.28 版
25
2
2
2
2
2
2
22
222222
1
1
2
2tan1
2tan1
2tan
1
11
2cos1
2sin
1
1
2cos
1
2sin1
2cos1
1
2sin
2cos
2sin
2cos
1
cos1
1
u
upr
e
er
e
er
ee
er
e
er
e
err
ppp
ppp
ここで、
e
e
1
1
放物線に近いとき、 0 なので、
2222
2
2
1122
tan12
tan1
2tan1
2tan1
uup
rrr pp
2.5 2体問題の質量中心回りの運動について
以上では、質点1に対する質点 2 の相対運動(質点 2 に対する質点 1 の相対運動も同様)について、
考察してきた。ここでは、質点1と 2 の質量中心についての、質点1と 2 それぞれの運動がどうなるか
を見てみよう。2つの質点の質量をそれぞれ、 1m , 2m 、位置ベクトルを 1r , 2r とすると、それぞれの
ニュートンの運動方程式は、
323211 :rr
Gmmrr
r (1)
313122 :rr
Gmmrr
r (2)
ここで、質点 1 に対する質点 2 の相対ベクトル
12 rrr (3)
質点の重力定数をそれぞれ次のように定義した。
2211 , GmGm (4)
式(1), (2)より、質点1に対する質点 2 の相対運動を記述する 2 体問題の基本微分方程式が得られる。
0r
r 3r
、 2121 mmG (5)
これに対して、各質点の質量中心回りの相対運動を考える。まず、2つの質点の質量中心の位置ベク
トルは
2211
21
2211 rrrr
r kkmm
mmCM
(6)
1,, 21
21
22
21
11
kk
mm
mk
mm
mk (7)
各質点の質量中心回りの相対ベクトルは、それぞれ
rrrrrrrr 212222111,11 1: kkkkm CMCM (8)
rrrrrrrr 112122112,22 1: kkkkm CMCM (9)
このとき、式(8)の相対ベクトルを時間微分して
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H30.12.28 版
26
rrrr 21,1 kCMCM (10)
式(1), (5)を用いて
3232
rk
rCM
rr
r
22 k なので
0r
r 322
rkCM (11)
すなわち、質量中心は、外力が働いておらず、等速直線運動をする。
CMCMCM t ,0,0 rvr (12)
また、式(8),(9)より、
vkvkrkkr CMCMCMCMCMCMCM 2,1,12,122,1,1,1,1 ,, rrrrrrrr (13)
vkvkrkr CMCMCM 1,21,21,2 ,, rr (14)
これらを用いて、各質点の運動方程式(1),(2)は、それぞれ
0r
r 3
,1
,1
,2,11 :CM
CM
CMCMr
m (15)
0r
r 3
,2
,2
,1,22 :CM
CM
CMCMr
m (16)
ここで、等価重力定数を次のように定義した。
221
3
23
2,2mm
GmkCM
(17)
221
3
13
1,1mm
GmkCM
(18)
注意)上記の関係式は添字に間して、1 と 2 を入れ替えれば、一方から他方が導出される。
さて、運動方程式(15),(16)を見ると、基本微分方程式(5)と同じ形式であるが、重力定数項が異なる。
したがって、解として円錐曲線を持つことは明らかであるが、それぞれの運動積分が同じであるとは限
らない。これらについて調べよう。運動積分は、前節より
frrc
rr
crr
r
hr
近点方向保存
エネルギー保存
角運動量保存
2
1 (19)
である。まず、角運動量保存について、質量中心回りの運動については
ckck
ckckkkk
CMCM
CMCMCMCM
2
1,2
2
1,2
2
2,1
2
2
2
222,1,1,1
,
,
cc
crrrrrrc (20)
エネルギー保存則については
hkh
hkrk
kk
rh
CM
CM
CM
CMCMCM
2
1,2
2
2
2
3
22
2
,1
,1
,1,1,12
1
2
1
rrrr (21)
ラプラスベクトル f については
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27
ff
fr
crr
crr
crf
3
1,2
3
2
3
2
2
23
2
2
22
,1
,1
,1,1,1,1
k
kr
krk
kkkk
r
CM
CM
CM
CMCMCMCM
(22)
特に、離心率ベクトル /fε については
ee
eek
k
CMCM
CMCM
CM
CM
CM
,2,2
,1,13
2
3
2
,1
,1
,1
,
,
εε
εεfff
ε (23)
すなわち、離心率はどちらも同じで、基本解と同じ値 e を取る。
半直弦
2cp については、
pkp
pkc
p
CM
CM
CM
CM
1,2
2
,1
2
,1
,1
(24)
半長径h
a2
については
aka
akh
a
CM
CM
CM
CM
1,2
2
,1
,1
,12
(25)
半長径の比をみると、
21
1212,2,1
1:
1:::
mmmmkkaa CMCM (26)
すなわち、半長径は、それぞれの質量の逆数に比例している。
質点 1 を主星、質点 2 を衛星とすると、通常、 21 mm なので、
01
111
1
1
2
12
12
21
22
1
2
1221
11
m
m
mm
mm
mm
mk
m
m
mmmm
mk
と近似できる。
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H30.12.28 版
28
3 章 ケプラーの法則
Kepler.Johannes(1571-1630) 師は Tycho Brahe
第1法則)惑星の軌道は太陽を焦点とする楕円
第2法則)太陽と惑星を結ぶベクトルの掃面積は単位時間当り常に等しい→1609
第 3 法則)惑星の周期の 2 乗は半長径の 3 乗に比例する→1618
その他の主な業績
1)望遠鏡の発明、光学の理論
2)無限小算述
3)天文計算における対数の使用
4)円錐曲線の理論への貢献
5)多角形、多面体に関する仕事
3.1 ケプラーの第 1 法則
・r ラプラス積分を行うと
frrrrcr ・・・ r
rrc ・ cosrf
2c
:位置ベクトルr とラプラスベクトル f のなす角
∴
cos1cos1
2
e
p
f
c
r
(1)
ここで
2cp :半直弦(semi-latus rectum, semi-parameter) (2)
fe :離心率(eccentricity) (3)
式(1)は円錐曲線を表す。円錐曲線については、後継の付録1を参照せよ。
幾何学関係より 21 eap 10 e
一方, 2
22
112
eapf
h
c
(4)
h
a2
:長半径 a はエネルギーh のみに依存する。 (5)
逆に、a
h2
:エネルギーh は長半径 a のみに依存する。 (6)
0 のとき
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29
u
r
ri
ti
i
ni
ai
f
cs /
軌道面
eae
ea
e
prp
1
1
1
1
2
:近点距離 peri-center distance, perifocus (peri:近い) (7)
楕円軌道の場合、 のとき
eae
pra
1
1:遠点距離 apo-center distance, apofocus (apo:遠い) (8)
特に、地球中心を焦点とするとき、それぞれ、近地点 perigee、遠地点 apogee とよぶ。また、
pa
pa
rr
rre
、
21 e
pa
、
ap r
e
r
ep
11 (9)
さらに、
調和平均相乗平均相加平均 :2
,:,:2
1
pa
pa
paparr
rrprrbrra
(10)
3.2 ケプラーの第 2 法則
LVLH 座標系を定義する:
局所垂直 局所水平座標(LVLH, Local Vertical, Local Horizontal frame)
r̂ θ̂
極座標表示 ),( r
θrθrr
rr
ˆˆˆˆ
ˆ
vvrr
r
r
(11)
ここで
rcθi ˆˆˆ :局所水平方向の単位ベクトル
cc /ˆ cci :軌道面垂直方向の単位ベクトル
rr /ˆ rri :局所垂直方向の単位ベクトル
)ˆ,ˆ,ˆ( cθr :右手直交系方向の単位ベクトル
cr iii ,, :動径横断座標系(p.5 参照)
cθrrrrc ˆˆˆˆ 2 rrrr
∴ 一定 2rc => 角運動量保存則
一方、面積レート dt
dr
dt
dA 2
2
1
) rrrA2
1
2
1高さ底辺
drAdA 2
02
1lim
⇒ 一定 cdt
dA
2
1 (12)
したがって、
面積法則:軌道上の任意の時間において、その間に動径の掃く面積は常に等しい。
3.3 ケプラーの第 3 法則
楕円軌道 0h を考える。 2.4.6 節の式(18)を再掲すると
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30
dEEeadta
cos1
(13)
または
Ee
n
Ee
a
dt
dEE
cos1cos1
3
(14)
式(14)を積分すると時間と E の関係が陽に求められるが(後述)、ここでは、式(14)を 1 周期分だけ積
分する。 t: T0 :周期 , E : 20 に注意して
2
0
3
0cos1 dEEe
adt
T
3
2a
T (15)
即ち、
aT
22 4
:周期の 2 乗は長半径の 3 乗に比例する。 (16)
係数
24は、太陽系の全ての惑星に対して近似的に等しい。
121 GmmmG ⇒ 一定1
24
Gm
21 mm (17)
sun planet
別証明)
楕円の全面積 abA
面積速度(一定)22
pc
dt
dA
周期 2
3
2
2 2
1
12
2/a
ea
eaa
c
ab
dt
dA
AT
・ a のみに依存
注意) 軌道上の任意の点での速度の大きさ v は、エネルギー保存則より
22 cos2112
eepar
v
(18)
楕円軌道の場合、近点、遠点での速度の大きさをそれぞれ ap vv , とすると
ap veve 11 (19)
そして、周期 T に関して、
2
32
2
c
cv
vTT (20)
ここで、 cc vT , は、楕円軌道上の任意の点を通る円軌道の周期と速度の大きさである:
r
vr
T cc
,2
3
(21)
証明)式 (18)より
21 2 v
rra
これを式(16)に代入して整理する。
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31
付録1 Conic Sections 円錐曲線
円錐断面幾何学(Conic-Section Geometry)
古代ギリシャにて発見
円錐面を平面で切ってできる曲線:円錐曲線
6 種類:点、円、楕円、放物線、双曲線、直線 :軌道としての解
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32
円錐曲線の一般式
cos1 e
pr
(#)
ここで
,r :円錐上の点の極座標
r:距離、動径
:真近点離角(天体力学、軌道力学)
p :半直弦(semi-latus rectum)> 0
e :離心率(eccentricity)
0e :円,焦点は1個(楕円に含まれる)
10 e :楕円。焦点は 2 個
1e :放物線になり、1 個の焦点を原点として、もう 1 個(虚焦点)は無限遠に
1e :双曲線
1)楕円 10 e
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33
F :焦点(Focus)
F :虚焦点(vacant (empty)focus)
0,1 2 aeap
aFAAF 2 2 つの焦点F , F からの距離の和が一定の点の集合
離心率: 1/12 abe
a :半長径(the semi-major axis)
b :半短径(the semi-minor axis)
直交座標表示 x,y: 1
22
b
y
a
x
aebaccFcF 22,)0,(),0,(
極座標表示 ,r : arr 2 と cos222222
crcrr を用いて
cos422222
crcrra => cos4444 22 crcara 即ち
cos1
1
cos1
1
cos
22
2
22
e
ea
a
c
a
ca
ca
car
=>
cos1 e
pr
(#)
ここで、右図の三角形 GCF について、ピタゴラスの定理より
222 1 eaaeab
三角形 AFF’について、楕円の定義より
22222 papae
∴ 21 eap
一方、ケプラー方程式より
2cp
∴ 21 eapc
動的量 と 幾何的量 が関係
次に
180,11
1
0,11
1
2
2
eae
ear
eae
ear
a
p
,)1()1( aeraer ap 遠点距離:近点距離:
地球 近地点: perigee=peri+geos=furthest+earth
遠地点: apogee=apo+geos=closest+earth
太陽 近日点、遠日点 など
特に、近点において、動径方向速度が 0 で、動径方向に垂直な接線方向速度 pv のみになるので
角運動量保存 ppvrc vr
エネルギー保存 p
pr
vh
2
2
1
を用いて、 aeaea
ea
rr
ch
pp2112
1
222
2
2
2
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34
∴ a
h2
すなわち、2 体エネルギーh は、半長径 a のみに依存
楕円は 閉軌道 であり、 周期:
3
2a
T
軌道速度方向:
cos1
sintan
e
e
証明は 4,2 節参照。
備考:楕円に関する幾何学的に導出できる関係式の例:
右図のように、楕円に対して、直径が半長径 a に等しい円を描く。
円と楕円の中心 C は同じである。
楕円上の点 P を、円上に半短径 b 方向へ射影した点を Q とする。
各変数を右図のように定義する:
Fは楕円の焦点、FP = r は動径、PD, QD は AB に垂直
は真近点離角、E は離心近点離角
e は離心率(e < 1)、CF = ae
・三角形 PDF について、ピタゴラスの定理より
Eear
Eea
EeEea
EEeeaEea
EeaEb
EaaeEaa
b
CDCFQDa
br
DFPDPF
cos1
cos1
coscos21
coscos2cos11
cossin
cossin
22
222
222222
2222
2
2
22
2
222
・一方、楕円の円錐曲線は、
cos1
1 2
e
ear
だから、上式を用いて
cos1
1cos1
2
e
eEe
すなわち
Ee
eE
cos1
coscos
または
cos1
coscos
e
eE
三角関数の2倍角の公式を用いることで
2
tan1
1
cos11
cos11
coscos1
coscos1
cos1
cos1
cos1
cos1
cos1
cos1
2cos2
2sin2
2cos
2sin
2tan
2
2
2
2
2
2
E
e
e
Ee
Ee
eEEe
eEEe
Ee
eEEe
eE
幾何学的関係から、2
tan、
2tan
Eの符号は同一だから、e < 1 に注意すると
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35
2
tan1
1
2tan
E
e
e
別証明として、点 P の座標の縦軸成分について、 Earb
asinsin より、e < 1 に注意すると
cos1
sin1sin
cos1
1
1
1sinsin
22
2 e
e
e
ea
eab
rE
これより
2tan
1
1
1cos
sin
1
1
1cos1
sin11
cos1cos
sin1
1cos1
coscos1
sin1
1cos
sin
2cos2
2cos
2sin2
2cos
2sin
2tan
2
2
2
e
e
e
e
e
Eee
ee
e
e
ee
e
E
EE
符号の判定をする必要のないことに注意。
・点 P におけるに平均近点離角 M について、面積速度一定の法則(面積法則 3.2 節)から
楕円の面積
の面積扇形FAPM
2
が成立する。このとき
EeEM
EeE
a
EaaeEa
a
QCFCAQFAQ
sin
2
sinsin
2
1
2
1
2
2
2
三角形扇形
円の面積
の面積扇形右辺
楕円の場合のケプラー方程式が求まる。
2)放物線
1e
a=> 公式 01 earp はこのままでは使えない。
半直弦 p または近点距離 pr 自身を変数に用いる。
放物線は、楕円の虚焦点を無限遠に持っていった曲線と見なすことができる。
prc :近点距離
arcp p ,22
rAFAN :動径
1e
直交座標表示 x,y: cxy 42 またはこの y 軸対称グラフ cxy 42
極座標表示 ,r : rrc cos2 => cos1
2
cos1
2
prcr =>
cos1 e
pr
(e = 1)
無限点方向 : 1cos すなわち、 deg135
軌道速度方向γ:2
3)双曲線
双曲線は、楕円の虚焦点を無限遠(例えば左)に持って行き、さらにその無限遠を通過して反対側(右
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H30.12.28 版
36
側)に虚焦点が移動してできた曲線みなせる。重力を考えると、双曲線の技が主重力体側にあるものの
み、物理的に軌道となる。
0,1 2 aeap
aFAAF 2
1e
r ,曲線は漸近線に近づく
このとき、(#)式より、 0cos1 e となり、e
1cos
直交座標表示 x,y: 0,1
22
ba
b
y
a
x
1,,)0,(),0,(2
2222
a
ba
a
ceaebaccFcF
極座標表示 ,r : arr 2 と cos222222
crcrr を用いて
cos442 222crcrra => cos4444 22 crcara 即ち
cos1
1
cos
222
e
ea
ca
acr
=>
cos1 e
pr
(#)
ここで、 0,1 2 aeap と再定義
開軌道 => aera )1( 近点: 遠点は無限遠
無限点方向 : 分子 0cos1
∴
e
1cos 1 :漸近角
r のとき衛星の速さは一定に近づく
av
rvh
22
1
2
1 22
無限遠での速度(双曲線余剰速度): 0
a
v
0a
正のエネルギー( 0h )を持つと離脱する。
打ち上げエネルギー: 2
3 vC
軌道速度方向γ:
cos1
sintan
e
e
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37
付録2 エネルギーh を用いた系の振る舞い
まず、エネルギー保存式
ar
h22
1 rr
を極座標 ),( r で表示すると、 θrr ˆˆ rr であるから
)('2
1
const.2
1
2
1
2
1
ˆˆˆˆ2
1
2
2
2
22
22
rVr
rcrr
cr
rrr
rrrrrh
θrθr
(1)
ここで、角運動量の大きさ c を指定(半直弦 /2cp を指定:基準時刻の位置・速度から決定)して、
次の等価ポテンシャルエネルギーを定義した。
2
2
2
1)('
r
c
rrV
(2)
1 項目は位置(万有引力)に、2 項目は遠心力に起因する。式(2)は動径 r が pcr /2
0 のとき唯
一の極小値 02
)('2
2
0 c
rV
を取る。また、 )(0),0()(' rrrV である。
式(1)より、動径 r の時間変化量(動径速度) rは下記のように位置のみの関数として記述できる。
)('2 rVhr (3)
式(2)のグラフ ',Vr を描くことより、h を指定した場合、と式(3)から動径速度 rの概算値、つまり、
指定された角運動量の大きさ c に対して、角速度 cr /2 で回転(公転)する動径 r の運動を定性的
に知ることができる。
注意1:速度を θrθrr ˆˆˆˆ vvrr r と書くとき、 rvr
は速度の動径方向成分(=動径速度)、
rv は速度の動径直交方向成分(=接線速度)と呼ぶ。ちなみに、飛行経路角 は、
vvrr r //tan から求められる。
注意2:ここでは重力定数 は最初から与えられている。そして、角運動量の大きさ c を指定すると、
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38
半直弦 /2cp が決まる。以下、2 体の全エネルギーh を変数として指定すると、半長径が ha 2/
が決まる。
1)h > 0:双曲線運動のとき、
離心率は、 222 /21 hce より e > 1
h と )(' rV の交点は 1 点のみで、そのときの動径 r の値を pr とする。このとき、質点は無限遠( r )
より飛来して、動径 r の値は減少して、最終的に pr に至る。そこで反転して増加し、再び無限遠へ行く。
r の最大値に制限はないので、開軌道であることが分かる。
動径速度は、最大でprrrr |max
であり、無限遠で hr 2
2)h = 0:放物線運動、e = 1
基本的な運動は双曲線運動と同様であるが、無限遠の動径速度が 0 になる。
近点( prr )では、質点の速度は接線速度ev に等しいので、全エネルギーの式より、
02
1 2
p
er
vh
=> p
er
v2
:脱出速度(escape velocity)
これは開軌道にするための最小速度でもある。主星の万有引力から脱出するためのその距離での速度を
意味する。
地球については、地球表面から出発する運動を考えて、地球の重力定数と地球半径を代入すると
11.2km/s である。これを第 2 宇宙速度と呼ぶ。なお、太陽については、地球の位置での値を考えると、
上式に、太陽重力定数、太陽地球間平均距離を代入して、42.1km/s である。
ちなみに、地球表面から双曲線軌道で打ち上げて地球圏から脱出しときに太陽の脱出速度に達するよ
うにしたい場合、地球の太陽に対する公転速度 29.4km/s を考えると、実質の脱出速度 v は 42.1 - 29.4 =
12.3km/s であるので、地球表面での速度は、22
vr
v
より、16.7km/s となる必要がある。これを、
第 3 宇宙速度と呼ぶ。
3) 02/ 22 hc :楕円運動、0 < e < 1
h と )(' rV の交点は 2 点のみで、そのときの動径 r の値を小さい順に pr (近点半径、ペリジー半径), ar
(遠点半径、アポジー半径)とする。このとき、質点は動径が ap rrr の間を往復する周期運動を行
うこと、すなわち閉軌道であることがわかる。周期は
3
33
22
122
hh
aT
4) 22 2/ ch :円運動、e = 0
動径は一定で、常に、 prapcrr /2
0 、式(3)から 0r より、質点の速度は動径に垂直
な接線速度 cv のみとなる。このとき、2
cvrr 、p
c
p rv
rch
2
2
2
2
1
22より、
円軌道速度:
ccrv
p
c
2
、周期:
2
33
23
21
22
ccr
Tp
地球について、地球表面で考えるとき、地球の重力定数と地球半径を代入すると、円軌道速度は 7.9km/s
となり、これを第 1 宇宙速度と呼ぶ。
なお、この円軌道から放物線軌道へ移行させて脱出させるには、 cv から ev へ 2 倍の速度に増速する
必要がある。
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39
5) 22 2/ ch
式(3)の値が虚数となり、指定された c の値では、物理解が存在しない。
22 2/ ch を満たすエネルギーh に対応する軌道はもちろん存在して、それは、初期に指定した c
の値、または指定された半直弦 /2cp の値よりも小さくした値を持つ軌道になる。それは、4)の
円軌道の半径よりも小さい半長径 a の円錐曲線である。
特に、楕円の場合で、地球半径よりも近点距離が小で、遠点距離が大のとき、それをサブオービタル
軌道、弾道軌道と呼ぶ。大陸間弾道ミサイルや再使用型旅行ロケットなどで採用される。大気抵抗が無
視できれば、水ロケット、モデルロケット、アマチュアロケットなどもこの軌道を描く。
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H30.12.28 版
40
4章 位置・速度の計算
4.1 積分における位置/速度
ここでは、楕円の場合のみを考える。双曲線(放物線)の場合も同様にして求められる。また、5章
で述べる universal変数を用いることで、軌道の形に関わらず統一的に表現できる。
復習: 2体問題の6個の積分(楕円 0h )
積分定数は Kh ,,, fc の 8 個
0sin22
2
1
hEf
EKthh
r
hr
・
frrrr
rr
crr
(1)
拘束条件 2 個
2
2
2
12
0
f
h
c
fc・
(2)
=> 独立な積分定数は 6 個
動径( 表示) cos1 e
pr
(3)
円錐曲線パラメーター
ha
fe
ceap
2
12
2
0h (4)
楕円の場合のケプラー方程式: EeEMttn p sin (5)
ここで 0E のとき、 ptK (境界条件), pt :近点通過時刻、0t :元期(観測時刻)
)anomalymean(
motionangularmean
22
00
3
平均近点離角
)平均運動(
:
:
MttnttnMa
hh
n
p
(6)
動径(E表示) EeaEf
hr cos1cos1
2
0h (7)
ガウスの公式:楕円の離心近点離角 E 、真近点離角 の関係
2
tan1
1
2tan
e
eE
or
2tan
1
1tan2 1
e
eE (8)
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41
1d
aae
E
b
a
2d
r
r
近地点地心
衛星
4.2 真近点離角 を用いた位置と速度
軌道面基準座標系の単位方向ベクトルの組 cidd 21の定義:
12
1
ˆ
ˆ/
/
dcd
cci
fd
c
f
c 共に不動 (9)
軌道面内の位置などは、 21,dd で記述される。
位置 21 sincos ddr rr (10)
次に、これを微分して、
21 cossinsincos ddr rrrr
cos1 e
pr
を時間微分し、 pcr 2
に注意すると
sinsin
sincos1
2
2p
erp
ee
e
pr
(11)
に戻すr pr 2
∴ 2
2
1 cossinsincossin ddr
r
pe
pr
pe
p
cos1 e
pr
より。 coscoscos,1cos 2 e
r
p
r
pe なので、最終的に
速度 21 cossin ddr
ep
(12)
速度方向を局所水平 LH 方向から測った飛行経路角は
cos1
sin
cos1
sin
/
sin
tane
e
p
ep
pe
rc
pe
r
r
(13)
角度範囲は deg90deg90 であり、近点では、 0 を代入して、 0 。
近点から遠点に行くとき正値、遠点から近点に近づくとき負値を取る。
4.3 離心近点離角 E による表現(楕円軌道)
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42
動径
Eeae
ear cos1
cos1
1 2
(14)
より、
r
eEa
Ee
eE
cos
cos1
coscos または、
cos1
coscos
e
eE
(15)
一方、式(14)の動径を時間微分して、 EEaer sin (16)
また 3.3 節の式(11)より
r
aE
/
を用いて、式(16)は
r
Eaer
sin (17)
Eaerr sinor rr
上式(17)と式(11)が等しいことから。
r
Epa sinsin (18)
式(15), (18)を式(10)に代入して
21 sincos ddr EapeEa
これを時間微分して、
2121 cossincossind
ddddd
rr E
r
pE
r
aEEapEEa
t
以上より
21
21
cossin
sincos
ddr
ddr
Er
pE
r
a
EapeEa
(19)
飛行経路角は
22
22
2
1
sin
1
sin1
coscos1
sin1
cos1
cos1
cos1
sin1
cos1
sintan
e
Ee
e
Eee
eEeEe
Eee
Ee
eEe
Ee
Eee
e
e
(20)
これから、特に
cos1
sin1sin
2
e
eE
ちなみに、式(15)より
cos1
coscos
e
eE
(21)
以上により、位置、速度が軌道面内座標系 cidd 21 で求められるが、それを別の基準座標系で表
す場合は、軌道面基準座標系の単位ベクトルの組 cidd 21 を基準座標系の単位ベクトルの組
321 eee に座標変換することで、座標成分を基準座標系で表現する。1.4.3 節を参照せよ。
4.4 ケプラー方程式の解法
ケプラー方程式は、
1)楕円軌道の場合、離心近点離角 E について
pp tta
ttnMEeE 3
sin
2)双曲線軌道の場合、離心近点離角 H について
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43
pp tta
ttnMHHe
3
sinh
3)放物線軌道の場合、離心近点離角 D について
ppp ttttnMDrD
6
3
であり、平均近点離角 M、即ち、時間 t と関係がある:
t :given ⇒ 平均近点離角 M:get
⇒ 離心近点離角 E または H, D:get
⇒ 位置と速度ベクトル rr , :get in 21,dd 面
上記のケプラー方程式を Newton-Raphson 法を用いて解く。
評価関数の定義(楕円軌道): pttnEeEEf sin (22)
(双曲線軌道): pttnHHeHf sinh
(放物線軌道): pp ttnDrDDf 6/3
問題:(楕円軌道) 0Ef なる E を求めたい。
Ef を近似値 kE 回りに Taylor 展開して
k
k
kk
k
k EEdE
dfEfOEE
dE
dfEfEf 2 (23)
0Ef より
k
kk
dE
df
EfEE (24)
ここで、ケプラー方程式より k
k
EedE
dfcos1 (25)
これを次ステップ 1kE として採用する。すなわち、
k
kkkdE
dfEfEE 1 (26)
解の判定: kk EE 1 (指定した微小量)になるまで反復 (27)
双曲線軌道、放物線軌道でも同様であり、以下を用いる。
p
k
k
k
rDdD
dfHe
dH
df 2/,1cosh 2
例1: sec3600seckm398601,10,0,7.0km,400,24 -226 ttea p のときのEを求む。
離心近点離角の近似値(平均近点離角に等しいとして): ptta
E 31
k kk EE 1 degE
1 0.9341957 87.69266
2 0.2415711 73.85166
3 0.0251371 72.41141
4 0.0002688 72.39601
5 710 72.39601
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44
注意1:通常、sin などの計算の際、角度の単位は rad に変換して行い、その結果を deg などに変換する。
注意2:収束性について、例えば、楕円軌道の場合、e が1に近づくと、反復回数が増大する。これに
対処するための各種方法が工夫されている。
注意3:ケプラー方程式等に対して Universal 変数を用いて表現することで、軌道の形を区別することな
く、数値計算できる。
軌道が指定され(a,e など)、初期位置と時間(時刻差)を与えて、その時間後の位置を求めるためには、
本節のようにケプラー方程式を用いて、M から E を求める解法を利用する。例えば、元期0t で、真近点
離角 0 にある宇宙機の、時間 t 後の真近点離角 を求める場合、
1)次式より、 0 から、元期0t の離心近点離角
0E (楕円軌道)、 0H (双曲線軌道)を求める。
2tan
1
1tan2 1
e
eE 、
2tan11
2tan11
ln
ee
eeH
2)元期0t の平均近点離角
0M をケプラー方程式から求める。
000 sin EeEM 、 000 sinh HHeM
3)時間 t 後の時刻 ttt 0 の平均近点離角M を求める。
tnMttnMM 000
ここで、3a
n
(楕円)、3a
n
(双曲線)
4)時刻 ttt 0 の離心近点離角 E(楕円軌道)、H(双曲線軌道)をケプラー方程式から反復計算で
求める。
EeEM sin (楕円)、 HHeM sinh (双曲線)
5)得られた離心近点離角から真近点離角 を求める。
2tan
1
1tan2 1 E
e
e (楕円)、
2tanh
1
1tan2 1 E
e
e (双曲線)
ここからさらに、位置、速度、経路角などが、前節で与えた式を用いて計算できる。
なお、5章で述べる universal 変数を用いることで、軌道の形に関わらず、統一的に記述できる。
例2:遠地点高度 3042km, 近地点高度 555km の楕円軌道で地球周回する衛星について下記の問いに答
えよ。但し、地球の重力定数 235 s/km10986.3 ,地球の平均赤道半径 km6378R とする。この
軌道の離心率 e、半長径 a,平均運動 3/ an ,周回周期 nT /2 を求めよ。
次に、時刻 t = 0 のとき衛星は近地点にいた。時刻 t = 100min のとき、平均近点離角 M、離心近点離
隔 E,真近点離角 を求めよ。
回答) pa
pa
a
p
aprr
rre
e
e
r
rearear
1
11,1 より、e = 0.1521、また、a = 8176.5 km
n = 8.5392e-004, T = 7.3580e+003 s = 122.6min、M = 5.12352e+000 = 293.556 deg
ステップ 1 E=4.992102391353286e+000 誤差 RR=1.475030263101385e-002
2 E=4.977946452457520e+000 RR=1.174062171558354e-003
3 E=4.976817452675328e+000 RR=9.003124168938115e-005
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45
4 E=4.976730863179304e+000 RR=6.882941007368970e-006
5 E=4.976724243280833e+000 RR=5.260818554120306e-007
6 E=4.976723737303559e+000 RR=4.020914534663689e-008
したがって E = 4.97672 = 285.145 deg, = -1.456847 = -83.47118 deg = 276.52881 deg
例 3.(半楊 2017 より引用)モルニア軌道の衛星が、元期 0t 2017 年 3 月 26 日 21 時 23 分 27 秒(UTC)
において、a=26552.305km, e=0.747411, deg7.240 M にあるとき、時刻 t 2017 年 5 月 20 日 9 時 00
分 00 秒(UTC)における、地心距離(動径) r 、真近点離角 、速度 v 、経路角 を求めよ。
回答)各時刻ユリウス日 JD を求めると、1.4.2 節の式(1)を用いて、
sec47073938day54.48371521284722457839.3952457893.870 tt
地球回りの軌道なので、地球の重力定数 23 /398600.4km s を用いて
ss
an rad/ 020.00014592
km305.26552
/398600.4km33
23
3
,
141.39deg24.74116.694230
4deg116.6942308rad2.036698539rad686.9038964707393rad*020.00014592
00
0
MttnM
ttn
ケプラー方程式を反復法で解いて、 deg69.157E
deg14.23cos1
sintan
km/s655.112
deg42.1712
tan1
12tan
km792.44911deg)69.157cos(*747411.01*305.26552cos1
1-
1-
e
e
arv
E
e
e
Eear
備考: ケプラー方程式の厳密解
楕円の場合、 MEeE sin のEに関する解は、一般に超越方程式なので、解くには工夫が必要で
あり、歴史的には、ベッセル関数を生み出すきっかけとなった。ケプラー方程式より、
EeME sin
に対して、右辺第 2 項は、 2 の周期奇関数なので、M のフーリエ級数展開(sin 展開)ができて
nMaEen
n sinsin1
係数 na は、次式で表され、それをケプラー方程式、部分積分、漸化式表現を用いると、最終的に、ベッ
セル関数(Bessel function)で表される:
neJn
MnMEea nn
2dsinsin
1
ここで、整数 n 次の第 1 種ベッセル関数:
sn
s
s
n
x
snsxnxJ
2
0
2
02!!
1dsincos
2
1
したがって、E は次のように表現できる。
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46
...4sin42
13sin3
3
22sin2sin2
sin2
4321
1
MeJMeJMeJMeJM
nMneJn
MEn
n
近似式として、べき級数展開を有限項で近似することもできる。例えば、5 次のオーダーでは
...5sin...384
1254sin...
3
3sin...128
27
8
32sin...
62sin...
1928
54
534253
Me
Me
Mee
Mee
Mee
eME
離心率 e が小さい場合は、次数が小さくても近似がよくなり、地球(e=0.0167)などでは、2 次で 5
桁程度の精度を持つ:
Me
MeME 2sin2
sin2
長楕円軌道、例えばモルニア軌道(e=0.75)では、 1.08 e なので、8 次近似で 1 桁程度の精度が期待で
きるように思われるが、実際は e が大きいと収束しない。実は、e の近似展開式では、e に関する収束半
径( ...6627434.0e )を厳密に考慮する必要がある。e が大きい場合に、厳密解を採用するときは、
厳密にベッセル関数を評価するが、むしろ、対象とする微分方程式を数値的に高精度時間積分する方が
よいだろう。
4.5 位置/速度ベクトルおよびケプラーの軌道要素の計算法
前節までの議論をまとめる。
アルゴリズム 1:位置/速度ベクトルの計算
問題:楕円軌道上の物体の初期時刻0t における位置/速度ベクトルが
00 ,rr と与えられたとき、時刻 t に
おける位置/速度ベクトル rr , を求めよ。
算法:
1) 0r の大きさとエネルギーの計算:
0
00002
1 ,
rhr
rrr ・
0, If h STOP (not elliptical)
0,If h CONTINUE.
2) 角運動量 c、その大きさ c、その単位ベクトル ci ˆc 、および半直弦 p の計算:
2
c00 , , ,c
pc
c c
icrrc
3) ラプラスベクトル f 、その大きさ f、軌道面単位方向ベクトル 21 d,d の計算
12100
0
didf
dfrcr c , f
, f, r
μf
4) 半長径(長半径)a と離心率 e の計算:
fe
ha ,
2
5) 近点通過時刻 pt の計算:
1
21-
000
020
01
Ctan ,
・sinC ,1cos
CE
aEe
a
rEeC
rr または、 120 ,Catan2 CE
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00
3
0 sin EeEa
ttp
6) 離心近点離角 E について、ケプラー方程式を反復法によって解く(後述):
Mtta
EeE p 3
sin
7) 位置/速度ベクトルの計算:
21 sincos ddr EapE-ea
rr
21 cossin ddr Er
pE
r
a
アルゴリズム 2:ケプラー方程式の解(Newton-Raphson 法の利用)
問題:楕円軌道の場合、現在時刻 t 、近点通過時刻 pt 、半長径 a、離心率 e そして離心近点離角の推定
値 1E が与えられたとき、現在時刻 t における離心近点離角 E を求めよ。
算法:
0) 離心近点離角 E の関数を定義する:
pp ttnMEa
μnttnEeEEF 13
, ,sin
1) 推定値 1E を用いて次を計算する:
11111 cos1d
d,sinEF EeE
E
FttnEeE p
2) 離心近点離角 E の計算:
1
11
d
dE
E
F
EFEE
3) もし、 >1EE (適切に設定した誤差許容量、例えば8-10 )ならば、 EE 1 としてステップ 1)に戻
る。
4) もし、誤差許容量内ならば、要求精度で離心近点離角 E が計算された。
アルゴリズム 3:ケプラーの軌道 6 要素の計算
問題:楕円軌道について、時刻 t における位置/速度ベクトル rr , が与えられたとき、長半径 a 、離心
率 e 、近点通過時刻 p t 、軌道傾斜角 i 、昇交点赤経 、近点引数 を求めよ。
算法:
1) エネルギーh と長半径 a の計算:
ha
rh
2 ,
2
1 , r
rrr
2) 角速度ベクトル c、ラプラスベクトル f、離心率 e の計算:
μ
f ef
r , , , frcrfrrc
または離心率 e については、次の算法を用いても計算できる:
μa
ceea
22
2
11c
ここで、 cc
3) 近点通過時刻 pt の計算:
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3
12
1
21
21 ,atan2tan ,
sin1cos
a n
CCC
C E
aEe, C
a
rEeC -
rr
EeEn
tt p sin1
注意 1:上式より、離心率 e についての別算法:
22
2
1 CCe
注意 2: 0e のとき、離心近点離角 E の値は0
0tan 1-
となって不確定。なぜなら、近点が決まらないた
め。(ケプラー要素の欠点)
4) 軌道傾斜角 i、昇交点赤経 の計算:
c
-1cos ik i
ここで、c
cci ˆ
c 。i は、0deg から 180deg までの範囲を持つが、0deg から 90deg までを順行軌道(direct
orbit)、90deg から 180deg までを逆行軌道(retrograde orbit)と呼ぶ。
,sin-cos ,sinsin cc i i ijii
-
tanc
c1-
ij
ii または -,atan2 cc ijii
注意: 0i のとき、昇交点赤経の値は不確定。(ケプラー要素の欠点:但し、 の値自体は確
定する)
5) 近点引数 の計算:
1c1 sin ,cos ,sincos diidijii aaa
cos
sintan 1-
または cos,sinatan2
注意:ケプラー要素の欠点:
e//1 fffd より、 0e のとき 1d は不確定、したがって、 は不確定。但し、 u の
値は確定する。なお、このとき M 。また、 0i のとき昇交点ベクトルai は不確定、したがって、
この場合、と は各々不確定。但し、 は確定できる。 0e かつ 0i のときは、
は確定できる。
ケプラー要素にみられるような、円軌道、または、無傾斜軌道の時に生じる特異性を回避した軌道要
素の組、例えば、Nonsingular equinoctial elements などいくつか提案されている。下記 4.6 や別紙、ケプ
ラー軌道の演習問題 5 を参照のこと。
例題1:
時刻 t における位置/速度ベクトル rr, が次のように与えられたとき、(1)ケプラーの軌道 6 要素、(2)
s3600t の位置/速度を求めよ。
,
km3400.0-
km5888.9727-
km0.0
3
2
1
321
kjikjikjir
x
x
x
xxx
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49
km/s0.0
km/s0.0
km/s10.691338
3
2
1
321 kjikjikjir
x
x
x
xxx
解) (1) 2700,30,95.0km45136000 ,ω Ωit,t, e.a p
例題2:
ケプラー軌道要素の計算アルゴリズムで注意したように、ケプラー軌道 6 要素には、軌道面姿勢を表
すオイラー角 ,, i の値が不確定になるという欠点があるが、それが生じる原因を幾何学的に説明せ
よ。
解)オイラー角 ,, iΩ は、3 軸回りにΩ、1 軸回りに i、3 軸回りに の回転変換を表す3-1-3物
体角と分類される。
この指定の仕方から、もし、 0i のとき、即ち、軌道面が基準面(赤道面)に一致する場合、昇交
点方向が決まらないので、Ωと の各角度は決まらないが、一般には、その和 Ω 自体は決まる。
一方、 0e のとき、即ち、円軌道の場合、近点方向が決まらないので、一般に、 が決まらない。
しかし、軌道面と基準面の交線上にある昇交点方向から、宇宙機方向までの角度(緯度引数) u
は確定する。
さらに、 0i かつ 0e のとき、即ち、円軌道かつ軌道面が基準面(赤道面)に一致する場合、例
えば、静止軌道のような場合は、昇交点方向と近点方向が決まらないが、春分点方向から宇宙機方向ま
での角度 Ω は確定する。
4.6 他の軌道要素
ケプラー軌道 6 要素の欠点を補うために、様々な提案がなされているが、ここでは、次のドロネー要
素(Delaunay elements)、ポアンカレ要素(Poincare elements)、Nonsingular equinoctial elements を紹介する。
これらは実用的な軌道設計検討やハミルトン力学などの理論的検討において使用される。
Delaunay Elements: HGLhgl ,,,,,
ieμaHceμaGμaLhωgtta
μMl p cos1,1,,,, 22
3
即ち、平均近点離角、近点引数、昇交点角、角運動量を用いている。
Poincare Elements: 321321 ,,,,,
,,, hHGhgGLL cos2cos2 321
hHGhgGLhgl sin2sin2 321 ,,
ここで、Delaunay Elements にて定義した記号を用いた。
Nonsingular equinoctial elements: ,,,,, yx iia
Mi
ii
iee yx ,,,, sin2
tancos2
tansincos
逆変換
M
i
iiiie
x
y
yx ,tan,tan,tan2, 1122122
注意:a の代わりに、半直弦 21 eap を用いる場合もある。
(a) 0i ,(b) 0e の各場合において、各要素の不確定性に関して調べる。
場合(a)の軌道傾斜角の大きさが小さくなるとき、 0i にしたがって、ドロネー要素では GH に
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H30.12.28 版
50
なり、ポアンカレ要素では 0, 33 となる。ドロネー要素の昇交点角 h は不定となるが、ポアン
カレ要素では問題ではない。なぜなら、 hg が確定するので、 212 ,, は確定する。
nonsingular equinoctial elements も問題なし。
場合(b)の離心率の大きさが小さくなるとき、 0e にしたがって、ドロネー要素では LG になり、
ポアンカレ要素では 0, 22 となる。ドロネー要素の近点引数 ωg は不定となる。ポアンカレ要
素では、 g が関係するのは結果的に 1 だけになり、 l となることから、 hgl が
確定するので、問題はない。nonsingular equinoctial elements も問題なし。
4.7 飛行時間
軌道が指定され、2 点間 A, B の位置、または、離角を与えれば、点 A から点 B まで軌道上を飛行する
に要する時間は、ケプラー方程式を用いて求められる。例えば、楕円軌道の場合、近点通過時刻を pt と
して、一般に、時刻 t 、離心近点離角 E では、ケプラー方程式より、
EtEeEa
n
EeEtt Ep
sin
sin 3
(1)
または、真近点離角 で表す場合は、
2tan
1
1tan2 1
e
eE 、
cos1
sin1sin
2
e
eE
に注意して、
Ep t
e
ee
e
eatt
cos1
sin1
2tan
1
1tan2
21
3
(2)
楕円軌道は周期軌道なので、1 周期を考えると、 2E を上式に代入して、
20tan22cos1
2sin1tan
1
1tan22
22sin22
31
321
3
33
aa
e
ee
e
eat
ae
aEttt
E
Ep
となって、楕円軌道の周期
3
2a
T を与える。
さて、
点 A: 時刻 At 、真近点離角 A 、離心近点離角 AE or
2tan
1
1tan2 1 A
Ae
eE
点 B: 時刻 Bt 、真近点離角 B 、離心近点離角 BE or
2tan
1
1tan2 1 B
Be
eE
と定義すると、飛行時間 AB tt は、上式より、
BEAEBEAEAB ttEtEttt (3)
ここで、楕円軌道は周期的で、位置には周期分だけの曖昧さがあるので、必要があれば、それを考慮す
る。
また、双曲線軌道の場合は、上記と同様にして、双曲線軌道のケプラー方程式
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H30.12.28 版
51
HHeKta
sinh3
に注意して
2tan11
2tan11
lncos1
sin1
sinh
23
3
ee
ee
e
eeat
HHea
Httt
H
Hp
(4)
を用いて、飛行時間 AB tt は、
BHAHBHAHAB ttEtEttt (5)
ここで、次式を用いた。
2tan11
2tan11
ln2
tan1
1tanh2 1
ee
ee
e
eH 、
cos1
sin1sinh
2
e
eH
証明: 定義 x
xx
x
xe
e
e
ee
eex x
x
x
xx
xx
tanh1
tanh1ln2
tanh1
tanh1
1
1tanh 2
2
2
なので、特に、
2tanh1
2tanh1
lnH
H
H
さらに、2
tan1
1
2tanh
e
eH の関係に注意して
2tan11
2tan11
ln
2tan
1
11
2tan
1
11
ln
ee
ee
e
e
e
e
H
次に、上式より
2tan11
2tan11
ee
eeeH
なので
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52
cos1
sin1
2tan1
2tan1
1
2tan1
2tan2
1
2tan1
2tan1
2tan2
1
2tan11
2tan12
2tan11
2tan1
2tan121
2tan1
2tan121
2
1
2tan11
2tan11
2tan11
2tan11
2
1
2sinh
2
2
2
2
2
22
2
2
2
2
2222
eeee
e
e
ee
e
ee
eeeeee
ee
ee
ee
eeee
HHH
ここで、次式を用いた。
2tan1
2tan1
cos,
2tan1
2tan2
sin2
2
2
ちなみに、同様にして
cos1
cos1
2tan1
2tan1
1
2tan1
2tan1
2tan1
2tan1
2tan1
2tan1
2tan11
2tan11
2tan11
2tan11
2tan11
2tan11
2
1
2cosh
2
2
2
2
22
22
2
2
e
eee
e
e
ee
ee
ee
ee
ee
eeee
HHH
さらに
H
H
e cosh1
cosh11cos
H
H
e
He
H
H
e
e
eH
cosh1
sinh
1
2sin
2
cosh1sin1
cosh1
cosh11
sin1
cos1
sin1sinh
2
222
例:(半楊 2017 より引用)次の地球からの脱出双曲線軌道:a=12816.733km, e=1.518, 近地点高度 260.9km
を考える。地球の作用圏(影響圏)半径を km1029.9 5 とすると、この距離だけ地球から離れるとき、
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H30.12.28 版
53
脱出したと見なす。地球の重力定数は 23/s398600.4km として、近地点から脱出するまでの時間を
求めよ。
回答)脱出時の真近点離角 を求める。動径の円錐曲線表示
cos1
1
cos1 e
er
e
pr
p
から、
deg31.1306469.0cos
6469.01929000
518.119.260137.6378
518.1
11
11cos
1
r
er
e
p
飛行時間は、式(4)より
秒分時間 35244deg31.130 Hp ttt
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54
5 章 f , g 関数
宇宙機の任意の位置、速度を初期(規準時刻)の位置、速度で直接表現することを考える。2 体問題
の場合、軌道は同一平面(2 次元)内に制限されるため、軌道面内の任意のベクトルは、軌道面内の独
立な2つのベクトルの重ね合わせで表現できる。ここでは、軌道面内の独立な2つのベクトルとして、
初期(規準時刻)の位置ベクトル、速度ベクトルを取る。
gf
gf
00
00
rrr
rrr (1)
ここで、 f , g , f, gは初期条件 0r , 0r 、時間 t または離角 の関数 tff ,, 00 rr など。
特徴:・軌道6要素にあまり依存しない形にできる。
5.1 f , g 関数表現
楕円軌道を仮定すると、4章の結果から位置・速度ベクトルを次のように表現する。
21
21
ddr
ddr
ml
ml
(2)
ここで
cos,sin
sin,cos
ep
mp
l
rmrl
(3)
または
Er
pmE
r
al
EapmeEal
cos,sin
sin,cos
(4)
欠点
000 ,, trr から rr , を求めるのに積分定数を求めねばならない。
ケプラー要素を用いると、 ie, が微小のとき数値的不安定が生じる可能性がある。
楕円軌道に限っているが、後述する Universal 変数を用いれば、放物線、双曲線の軌道を含めて統一的に
表現できるし、収束性も高まる。
さて、式(2)に、0tt を代入して
20100
20100
ddr
ddr
ml
ml
21,dd を 00 ,rr で解くと
00002
00001
1
1
rrd
rrd
ll
mm , pclmml 0000
ここで、軌道の角運動量保存則に注意して、 cccrrc ˆˆˆ000000 pclmml
式(2)に代入して整理して、式(1)と対応させて次式を得る。
0000
0000
1,
1
1,
1
lmmlp
glmmlp
f
mllmp
glmmlp
f
(5)
これらを用いて、位置・速度ベクトルが初期位置・速度ベクトルで表示できる。
1d
aae
E
b
a
2d
r
r
近地点地心
衛星
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55
00
00
rrr
rrr
gf
gf
更に、 crrc fggf 即ち、次の拘束条件が存在する。
1 fggf (6)
gfgf ,,, の内、3 つが分かれば、残りは上式から求められる。
5.2 f , g 関数の真近点離角表示
楕円軌道の場合、式(3), (5)より、 f , g は真近点離角(true anomaly) で次のように表される。
rrppf
p
rg
p
rrg
p
rf
11cos1
1
sin
cos1,cos11
sin,cos11
0
0
0
(7)
但し、
0 (8)
と定義した。
特徴:
f と gの相似性に注意。
と t の間に簡易な関係式はない(E を経由する)。
2 点境界値問題(Lambert 問題)に便利
式(7)の証明)
cos11cos1sinsincoscoscos
sinsincoscos11
000
0000
p
r
r
p
p
re
p
r
pre
pr
plmml
pf
sinsincossinsincos11 0
00
000000p
rr
p
rrrrrr
pmllm
pg
cos11coscossinsin
11 0000000
p
rre
pr
pplmml
pg
fについては、拘束条件 1 fggf を用いるのが簡単であり、
rrpprr
p
rr
prr
p
p
rr
p
r
p
r
g
gf
g
gff
11cos1
1
sin
cos1cos1
cos1
sin
sin
1cos11cos1111
0
00
0
0
0
証明終)
5.3 f , g 関数の離心近点離角表示
楕円軌道の場合、式(4), (5)を用いて、 f , g は離心近点離角(eccentric anomaly) E で表される。
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56
Er
agEE
attg
Err
afE
r
af
o
cos11,sin
sin,cos11
3
0
0
(9)
但し、
0EEE (10)
と定義した。
式(9)の証明)
Er
aEE
a
r
r
a
EEEEEer
aEEEeE
r
a
Er
aEapE
r
peEa
plmml
pf
cos11cos1
sinsincoscoscossinsincoscos
sinsincoscos11
0
00
0
000
0
00
0
0
0
0
0
00
上記を時間で微分し、
Et
EE
t
E
d
d
d
d 0 に注意して
Err
aE
r
a
r
aEE
r
a
t
ff sinsin
/sin
d
d
000
次に、
Er
a
a
rEE
r
aeEEEE
r
a
eEaEr
pEapE
r
a
plmml
pg
cos111coscoscossinsin
coscossinsin11
000
0000
最後に、g を求めるために、上式を積分すればよい。両辺を、2 章の式(21)のart
E 1
d
d で割って
EEa
tEEa
tg
arE
r
a
E
t
E
g
E
tE
r
a
E
t
E
tE
r
a
E
t
t
g
dcos1ddcos1dd
cos1d
d
d
d
d
dcos1
d
d
d
dcos11
d
d
d
d
33
上式は積分できて
.sin3
constEEa
tg
式(1)に 0tt を代入すると
1)(,0)(,0)(,1)( 0000 tgtftgtf
が得られるので、 0)( 0 ttE に注意して
000 ..0)( tconstconstttg
したがって、
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57
EEa
ttg sin3
0
証明終)
さて、g を評価する場合、 t と E の関係を表すケプラー方程式を求める必要ある。2 章の式(21)より
dEEea
dt cos13
上式を、 tt 0 , EE 0 の範囲で積分すると
00
3
0 sinsin EEeEEa
tt
(11)
そこで
EEEEEE 00 ,
に注意すると、式(11)の[ ]内の右辺第2項は次のよう書き換えられる。
1cossinsincossinsin 000 EEeEEeEEe ・・ (12)
さらに、2章の式(11), (17), (20)の関係式を、時刻0t に適用して
0000000 cos1.sin EearEaerr rr
より
a
rEe
aEe 0
00
0 1cos,sin
0rr ・ (13)
これらを式(10)に代入して、 t と E のケプラー方程式が得られる。
E
aE
a
rE
att cos1sin1 000
3
0
rr ・ (14)
Ed
dt
ar
EddE (15)
t に上式を代入して、微分
Ed
dを実行
E
aE
a
rar sincos11 000
rr ・ (16)
特徴: 0a のみが表われる。
E が分かればよい( E の初期値は必要ない)
E を用いた計算アルゴリズム
given: 0r , 0r ,0t , 1E (初期値;例えば、 tn , )
Find:r ,r
1) 00 rr ,
1
00
0
2
rr ・
ra
If 0a stop(楕円でない)
If 0a continue
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58
2)Newton-Raphson 法による E の求解
03100
10
11 cos1sin1)( tta
Ea
Ea
rEEF
rr ・
1
00
1
0
1
sincos11 Ea
Ea
r
Ed
dF
rr ・
11
1/ EddF
EFEE
反復 EEEE 11
3) Er
af cos11
0
, EEa
ttg sin3
0
00 rrr gf , rr
4) Err
af sin
0
, Er
ag cos11
00 rrr gf
5.4 f , g 関数の Universal variable 表示
Battin による Universal variable 表示を紹介する。楕円軌道だけでなく全ての軌道でも成立する式を求
める。
次の S,C 関数を定義する。これは後述の Stump 関数の一種である。
zczz
zS 3
2
753
1
!!! zc
zzzC 2
2
642
1
!!!
0,sinh
0,sin
3
3
zz
zz
zz
zz
0,1cosh
0 cos1
zz
z
zz
z
,
zSzCdz
zdSz
zCzzSdz
zdCz
32
1
212
1
さて、
!!! 642
1cos642 EEE
E
に対して、
変数の定義: xE 0 ,0
Ex
変数の定義: a
10
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59
00 :楕円 0a , 00 :双曲線 0a , 00 :放物線 a
補助変数の定義: 2
0xz :0 と x の組み合わせ xz 0 ( E :楕円の場合)
今、楕円の場合を考え、 00 とする。
!642
1coscos63
0
42
0
2
00
xxxxE
!!
)642
1(1
42
0
2
02
0 !!!
xxx
)(11 2
0
2
0 zzCxCx
同様にして
)(11!53
sin 2
0
2
00
55
0
33
0
0 zzSzxSxxxx
xE
!
を用いて、5.3 節の式(9)から、f, g 関数を S,C 関数で表現できる:
zCr
xxC
r
xf
0
22
0
0
2
11 , zzSxrr
xxSxrr
f 10
2
0
3
0
0
zSxttxSxttg 3
0
2
0
3
0
11
, zC
r
xxC
r
xg
22
0
2
11
Kepler 方程式: xrrxSxxCxtt 00
2
0
32
0
200
0 1
rr ・
または xrrzSxzCxtt 00
32000 1
rr ・
動径: 2
0
2
0
00
00
2
0
2
0 11 xSxxrxCxrr
rr ・
または zzSxrzCxrr 11 0000
2
0
rr ・
また、式(15)と定義 xE 0 0
1
a を用いて
dx
dt
xd
dt
Ed
dt
ar
0
0
r
dx
dt または
rx
dt
dx
この t から x への変換を、Sundman 変換と呼ぶ。
これは、下記のように、t を与えて対応する x を求めるための Newton-Raphson 反復計算に有用である(後
述する Kepler 方程式の解法(Universal 変数表示)を参照。):
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
60
2
0
2
000
00
2
0
2
0
00
2
0
32
0
2000
1
11
1
d
d
xSxxrxCxrxdx
dt
xrrxSxxCxtxt
xx
t
xttxx
n
nnn
rr
rr
・1
・1
初期値は、 01 x (このとき、 0tt )など。下記の備考より、
000 ttx 、
00
0,rrrr ・・
であることも利用できる。
上式は、定義から
00
00
rrr
rrr
gf
gf
を満たす。楕円の場合を元に、変数を変換して立式したが、実は、楕円に限らず、双曲線、放物線でも
成立する。実際、求められた式を、2 体問題の基本微分方程式
03
rrr
に直接代入すると、0 の符号に関係なく満たす。すなわち、得られた式は、楕円、双曲線、放物線で
成立する。下記の備考3)基本解を用いた一般解の構成を参照。
Universal Variables を用いた計算アルゴリズム
given: 0r , 0r ,0t , t
Find :r ,r
1) 00 rr ,
00
0
0
2 rr ・
r
2)下記のアルゴリズムを用いて、Kepler 方程式より x , C, S を求める
3) 2
0
0
2
1 xCr
xf , 2
0
3
0 xSx
ttg
,00 rrr gf
rr , xxSxrr
f 2
0
3
0
0
, 2
0
2
1 xCr
xg , 00 rrr gf
Kepler 方程式の解法(Universal 変数表示)
given:0t , t , 0r ,
0 , 1x (x の近似値)例えば、 01 x ( 0tt に対応)など。
Find: x , 2
0xC , 2
0xS
1)2
101 xz
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H30.12.28 版
61
1
1
112
111
121
7!5!3
1
k
kk
k
zzzzS
!!
1
1
112
111
21
!642
1
k
kk
k
zzzzC
!!!
10001
3
11
2
1
00
01 1 xrrzSxzCxttxF
rr ・
01
2
100111100
1
1 rzCxrzSxzxdx
dF
rr ・
1
11
/ dxdF
xFxx
反復 xxxxIf 11
1xxIf , 2
0xC , 2
0xS の計算を実行。
注意)下記の Stumpff 関数の数値計算法を参照。
付録:Stumpff 関数
定義:
0 !21
k
kk
nnk
zzc , ,3,2,1,0n
これより !
1,
!
10 2
nzzczc
nc nnn
また、
1,d
d2 1 nznczc
z
zcz nn
n
定義:2xz と変数をとり、無限級数を吟味して、上式の漸化式を用いることで
1 1
0cosh
0cos
00
z
z
zcc
01
0sinh
0sin
11
z
z
z
z
zcc
02
1
01cosh
0cos1
22
z
zz
z
zCzcc
06
1
01sinh
0sin
33
zz
z
zz
zz
zSzcc
などが回帰的に得られ、円錐曲線(楕円 0 、双曲線 0 、放物線 0 )に必要な関数が含まれ
ている。
zCzc 2 、 zSzc 3でもあり、
1d
d1
1
nzcxzcxx
n
n
n
n 、 zxczc
x10
d
d 、
2xz (後述)
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
62
Stumpff 関数の数値計算法:
定義や漸化式から、次式が得られる。
zzczc
zzczc
20
31
1
1 (1)
124
42
14
4
14
2
00
101
2
12
3023
zczc
zczczc
zczc
zczczczc
(2)
式(1)は、 zCzc 2 、 zSzc 3から、 zczc 10 , が求まることを示す。また、式(2)の 4 倍角公式
は、z の大きさが小さいときの zcn から、値を計算できることを示す。
すなわち、微小数を εとし、 εz のとき、例えば、6 次のべき乗までを考慮して、次式のように近似
計算すると、精度が 6ε のオーダーで値が求まる:
15141
13121
11101
981
761
541
32
1
!15!13!11!9!7!5!3
1
!321 7
65432
0
3
zzzzzz
Ozzzzzz
k
zzSzc
k
kk
(3)
14131
12111
1091
871
651
431
2
1
!14!12!10!8!6!4!2
1
!221 7
65432
0
2
zzzzzz
Ozzzzzz
k
zzCzc
k
kk
(4)
εz のとき、 ε4
k
zとなる最小の自然数を k とすると、
k
zz
41 と置換して、式(2)を用いて、 1zcn
を計算する。次に、 12 4zz と置換して 2zcn を計算することを k - 1 回繰り返す。
備考1)基本微分方程式系
Sundman 変換
r
dx
dt を利用して、 rr 2r を微分すると、
rr
tdx
dt
xx
rr rr
rr
rr
d
d
d
d
d
d すなわち、
x
r
d
d
ここで、
rr
rr
さらに、
ra
r
rar
rr
t
r
xx
r02
2
112
d
d
d
d
d
d
rrrrrr
ここで、エネルギー保存則:ar 22
rr
2 体問題の基礎微分方程式: rr3r
=>
rr
rr
2
33rrrr
a
10
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
63
を用いた。以上を利用して、
2
2
0004
4
2
2
3
3
03
3
2
2
2
2
d
d
d
d
d
d
1d
d
d
d
d
d
dx
td
x
r
dx
td
xx
r
rdx
td
xx
r
dx
td
x
r
したがって、 tr,, は次の微分方程式の解である:
0,0d
d
d
d,0
d
d2
2
04
4
03
3
02
2
dx
td
dx
td
x
r
x
r
x
位置ベクトルr の微分についても、同様にして
rr
rrr
rrrr
rr
rr
2
3
22
2
2
d
d
1
d
d
d
d1
d
d
d
d
rx
rr
rr
x
r
x
r
x
r
x
x
rr
rrr
r
xrrxxxrxx
d
d111
d
d11
d
d
d
d
d
d1
d
d
d
d
0022
0
3
3
rrrrrr
rr
rrrr
r
ここで、2 体問題の基礎微分方程式: rr3r
を用いた。これより、次式が得られる。
0rr
xx d
d
d
d03
3
備考2) 0d
d02
2
x などの基本解
備考1)の微分方程式の解を求めよう。まず、
rr
の 0d
d02
2
x について、冪級数解を
仮定し、
0k
k
k xa
と設定して、微分方程式に代入すると、係数 ka に関する漸化式が得られる。
,...2,1,0,21
02
ka
kka kk
これより、
zxcazca
zUazUa
xxxxa
xxxa
1100
1100
32
0
22
0
2
01
32
0
22
0
2
00
!7!5!31
!6!4!21
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H30.12.28 版
64
ここで、 2
0 xz である。また、 10 , aa は任意の定数であり、初期値から決まる(後述)。
zUzU 10 , は Battin の Universal 変数である。この Universal 変数は、Stumpff 関数 zczc 10 , でも表さ
れ、
zxck
zxzU
zck
zzU
k
kk
k
kk
1
0
1
0
0
0
!121
!21
、 2
0 xz
さらに、 2
011 xxczU は 2
000 xczU を x で積分したものであり、
U 表示: xzUzUx
d0
01 または zUzUx
01d
d 、 2
0 xz
c 表示: xzczxcx
d0
01 または zczxcx
01d
d 、 2
0 xz
一般に、 ,...3,2,1n として
U 表示: xzUzUx
nn d0
1 または zUzUx
nn 1d
d 、 2
0 xz
c 表示: xzcxzcxx
n
n
n
n d0
1
1
または zcxzcxx
n
n
n
n
1
1
d
d
、2
0 xz
ここで、
zcxnk
zxzU n
n
k
kk
n
0 !21 、
2
0 xz
2
000 xczU の定義式を x で微分することで、
U 表示: zUzUx
100d
d 、 2
0 xz
c 表示: zxczcx
100d
d 、
2
0 xz
また、定義式より
U 表示: !
,00,10 2000n
xzUzUUU
n
nnn 、2
0 xz
c 表示: !
1,
!
10 2
nzzczc
nc nnn 、
2
0 xz
これらから、 1m 、 mn 0 として
U 表示: mnzUx
zUx
nn ,...,2,1,0,0d
d
d
d1m
1m
01m
1m
c 表示: mnzcxx
zcxx
n
n
n
n ,...,2,1,0,0d
d
d
d1m
1m
01m
1m
証明)数学的帰納法を用いる。m = 1 のとき
zUzUx
100d
d 、 zUzU
x01
d
d
を x で微分して、
0d
d
d
d
d
d0002
2
001002
2
zUzUx
zUzUx
zUx
0d
d
d
d
d
d1012
2
10012
2
zUzUx
zUzUx
zUx
したがって、m = 1 のとき、成立している。m -1 のとき成立していると仮定すると、 10 mn のと
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
65
き
1,...,2,1,0,0d
d
d
d2m
2m
0m
m
mnzUx
zUx
nn
が成立している。上記を x で微分して、 10 mn のとき
1,...,2,1,0,0d
d
d
d1m
1m
01m
1m
mnzUx
zUx
nn
n = m については
zUx
zUxx
zUx
zUx
zUxx
zUx
mmm
m
mm
m
mmm
1m
1m
02
2
0
12
2
01m
m
m
m
1m
1m
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
d
以上から、m -1 で成立するとき、m でも成立することが示された。
証明終)
以上から、U 表示:
:1m について、 基本解: zUzU 10 ,
r,:2m r について、 基本解: zCxzUzUzU 2
210 ,,
t:3m について、 基本解: zSxzUzCxzUzUzU 3
3
2
210 ,,,
または 、c 表示:
:1m について、 基本解: zxczc 10 ,
r,:2m r について、 基本解: zCxzcxzxczc 2
2
2
10 ,,
t:3m について、 基本解: zSxzcxzCxzcxzxczc 3
3
32
2
2
10 ,,,
注意1) 2
000 xczU 、 2
011 xxczU は、 zSxzcxzUzCxzcxzU 3
3
3
3
2
2
2
2 ,
で次のように表される。
!
20n
xzUzU
n
nn または !
12
nzzczc nn の n=1,2、すなわち、
,,1 301200 xzUzUzUzU または 1,1 3120 zzczczzczc 、2
0 xz より
U 表示:
zSxxzUxzU
zCxzUzU
3
0301
2
0200 11
c 表示:
zSxxzcxxzxc
zCxzcxxc
3
03
3
01
2
02
2
0
2
00 11
注意2)基本解 zUzUzUzU 3210 ,,, 、または、 zcxzcxzxczc 3
3
2
2
10 ,,, の独立性は、線形
性を持たないこと、即ち、ロンスキーアンが 0 でないことから証明できる。
備考3)基本解を用いた一般解の構成
備考2)の t についての基本解から、一般解(ケプラー方程式)は次のように書ける。
U 表示: zUazUazUazUatt 332211000 、2
0 xz
または
c 表示: zcxazcxazxcazcatt 3
3
32
2
211000 、2
0 xz
ここで、 3210 ,,, aaaa は未定数で、次のように初期条件より決定する。
0tt のとき、x=0 として、 00 a
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H30.12.28 版
66
上式を x で微分すると、 rdx
dt 、 zUzU
xnn 1
d
d 、 zcxzcx
xn
n
n
n
1
1
d
d
なので
U 表示: zUazUazUar 231201
c 表示: zcxazxcazcar 2
2
31201
x=0 のとき 0tt なので、0rr より、 01 ra
上式を x で微分すると、 x
r
d
d、 zUzU
x100
d
d 、 zxczc
x100
d
d なので
U 表示: zUazUazUr 1302100
c 表示: zxcazcazxcr 1302100
x=0 のとき 0tt なので、0 より、
02 a
上式を x で微分すると、 rx
01d
d
なので
U 表示: zUazUzUrr 0310000001
c 表示: zcazxczcrr 0310000001
x=0 のとき 0tt なので、0rr より、 13 a
以上から、2
0 xz として
U 表示:
zUrzU
zCxzxczUrzUzUzUrr
zSxzCxzUrzUzUzUrtt
10000
2
100021000
32
010320100
1
)(
)(
または
c 表示:
zxcrzc
zCxzxczcrzcxzxczcrr
zSxzCxzxcrzcxzcxzxcrtt
10000
2
10002
2
1000
32
0103
3
2
2
0100
1
)(
)(
ここで、
rr
、
0000
0
rr
rr
同様にして、下記のように、設定する。
U 表示:
20110000
2110010
221100
1aaarr
aaar
aaar
zUzUzUr
zUzUzUr
zUzUzU
または
c 表示:
20110000
2110010
22
2
1100
1aaarr
aaar
aaar
zczxczcr
zxczczxcr
zcxzxczc
ここで、2 体問題の基本微分方程式: rr3r
を用いていることに注意。
このとき、x=0 のとき 0tt より、上記の未定ベクトル 210 ,, aaa を決定する。
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H30.12.28 版
67
順に、 2000
0
00
100
00
1,, aarrarar
r
r より、
0
0
0
0
020
0
100
1,, rrarara
r
r
したがって、U 表示:
00
0201
0
0201
0
0100001
0
010
00
0
0
0100
0010
00
03002
0
0201002
0
00
00
0
0
0200
100
11
11
11
1
111
11
1
rr
rrr
rr
rr
rrrrr
rr
rr
rr
rrrrr
gf
zUr
zUrr
zUrzUr
zUzUrzUr
zU
rzU
rzUzU
r
gf
zUttzUr
zUzUrzUr
zU
rzU
rzUzU
ここで、
zUzUzUrrzUzUzUrtt 21000320100 , 、 zUxzU 301
を用いた。
または、c 表示:
00
03
3
002
2
0
02
2
01002
2
0
00
00
0
0
02
2
00
100
111
11
1
rr
rr
rr
rrrrr
gf
zcxttzcxr
zcxzxcrzcxr
zc
rzcx
rzxczc
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H30.12.28 版
68
00
02
2
01
0
02
2
01
0
0100001
0
010
00
0
0
0100
0010
11
11
11
1
rr
rrr
rr
rr
rrrrr
gf
zcxr
zxcrr
zcxrzxcr
zxczcrzxcr
zxc
rzxc
rzczxc
r
ここで、 zcxzxczcrrzcxzcxzxcrtt 2
2
10003
3
2
2
0100 , 、
12
2
00 zcxzc を用いた。
注意)U 表示、c 表示ともに、ケプラー方程式等を用いて変形したのは見た目がすっきりするためだが、
そうしないで元のままでも微積分変換の形式がわかりやすい。
備考4)変数 x は次のように対応している:
02
tan2
tan
0
0
000
0
00
00
pDpDDp
HaHHa
EaEEa
x
ケプラー方程式などより
zUrzU
zUzUzUrtt
10000
3020010000
1
または
zxcrzc
zcxzcxzxcrtt
10000
3
3
02
2
0010000
1
を加えると
0200030100 xzUzczUzUtt
02
2
0003
3
0100 xzcxzczcxzxctt
ここで、 xzUzUzUzU 301200 ,1
または、 1,1 3
2
012
2
00 zcxzczcxzc
即ち、
000 ttx
ここで、
00
0,rrrr ・・
特に、放物線軌道の場合、 00 だから 0 x
また、 EH 1 だから、 00 のとき、 0EEax ならば、
00 のとき、 0011 HHaEEax
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H30.12.28 版
69
備考5)Sundman 変換の別形式
rx
t
d
d
を用いる。このとき、 rr ・ 、 2
0xz と再定義することで、
zUrzU
zUzUzUrr
zUzUzUrtt
10000
21000
320100
1
また
00
00
rrr
rrr
gf
gf
において、
zUr
gzUrr
f
zUzUrgzUr
f
21
0
20102
0
1,
,1
、
2
0xz
注意)この解形式は、重力定数 が負 0 でも使用できる。すなわち、反発しあう中心力の解を表
している。
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H30.12.28 版
70
6 章 2 点境界値問題
6.1 Lambert の問題
質量 1m に対する 2m の時刻0t , t における位置を 0r ,r としたとき、2 点を結ぶ軌道を求めよ。
初期速度 0r を求めれば十分。 ),,,,( 000 tt rrrr
ミッション計画、ターゲッティング、ガイダンス、ランデブーの基礎
Lambert 問題の解法(楕円軌道のみ)
Given: 00 ,, ttt rr
Find: rr ,0
1) E の推定値,例えば E
0
01
0
01 cos2orcosrrrr
rrrr
:軌道の順行、逆行などで決まる。
2)数値反復で E を調整(何等かの shooting)
3) pa, を解く:
00, rr rr
00 rrr gf , 00 rrr gf の E, 表現より
cos1cos1 0rrEapf
Err
a
rrppf
sin
11cos1
1
sin
cos1
00
を同時に解く。すなわち、
cos1cos1
sinsin11cos1
00 Err
E
rrpq
より、 q
p
cos1
そして
qE
rr
pE
rra
cos1
cos1
cos1
00
4) 0ttt の試算値~
t を解く:g の E, 表現より
sinsint 0
3~
p
rrEE
a
5)もし t~
t ステップ2
6) 0,, rgf の計算
cos11p
rf ,
sin0
p
rrg , 00
1rrr f
g
7) r,g の計算
,cos11 0 p
rg 0
1rrr g
g
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
71
6.2 ユニバーサル変数(Universal Variable)を用いた定式化
S,C 関数で f, g 関数を表示する。もっと統合的かつ見通しのよい U 関数による表示もある(前章)。
2
0
0
2
1cos11 xCr
x
p
rf (1)
2
0
3
00 sin xS
xtt
p
rrg
(2)
xxSxrrrrpp
f
2
0
3
0
00
11cos1
1
sin
cos1
(3)
2
0
2
0 1cos11 xCr
x
p
rg (4)
ここに、式(1),(4)は同じもの:
2
0
0
2
cos1 xCr
x
p
r (5)
以上から、未知数は、 xpa
,,1
0 の3つである。そこで、
2
0xz (6)
を導入して、式(5)から、次のように変形する。
cos10
pC
rrx (7)
ここで、
zCC (8)
式(3)から、
zS
pCrrxSxx
rrrrpp
1
cos11
11cos1
1
sin
cos1
0
2
0
2
0
00
zSCrr
rrp
rr
1
cos1cos1
sin
cos1
0
00
変数 y を導入:
cos10
p
rry (9)
このとき、式(3)を用いて、次式が得られる:
C
zSArry
10
ここで、
cos1
sin 0rrA (10)
zSS (11)
このとき、
C
yx (12)
式(2)より
SxyAtt 3
0 (13)
したがって、式(1),(2),(4)より
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H30.12.28 版
72
r
yg
yAg
r
yf 1,,1
0
(14)
初期速度は、00 rrr gf より
00
1rrr f
g (15)
最終速度は、 00 rrr gf と拘束条件 1 fggf を用いて
0
1rrr g
g (16)
Lambert 問題の解法(ユニバーサル変数表示)
Given: 00 ,, ttt rr
Find: rr ,0
1) 00, rr rr
0
01
0
01 cos2orcosrrrr
rrrr
:軌道の順行、逆行などで決まる。
cos1
sin 0rrA
2)z の値を推測、または式(13)などを用いた数値反復で調整
3) )(, zSzC の計算:
1
11
2
121
7!5!3
1
k
kk
k
zzzzS
!!
1
11
2
21
!642
1
k
kk
k
zzzzC
!!!
注意)前章の Stumpff 関数の数値計算法を参照。
4)y, x の計算:
C
zSArry
10 、
C
yx
5) 0ttt の試算値 t~
の計算:
SxyAt 31~
6)もし t~
t ステップ2
7) rr ,,,, 0ggf の計算
r
yg
yAg
r
yf 1,,1
0
00
1rrr f
g , 0
1rrr g
g
備考: 最近は、ニュートンの運動方程式の解を利用した解法(前述)から、ハミルトンの正準運動方
程式から導かれる母関数を利用した解法が編み出され、最適軌道を求める問題に効果を発揮している。
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H30.12.28 版
73
6.3 線形終端速度拘束条件(LTVCON)のもとでの2点境界値問題
前節の Lambert 問題とは異なり、時間の拘束条件の代わりに、次の線形終端速度拘束(Linear Terminal
Velocity CONstraint, LTVCON)を考慮した2点境界値問題を検討する:
Given: rr ,0
LTVCON: Hvccr 21 (1)
Find: 00 rv
ここで、 θrrv ˆˆHvr 、すなわち、 Hvr, はそれぞれ動径速度、接線速度である。このとき、LTVCON
は、飛行経路角 について、
HH v
cc
v
r 12tan
(2)
の関係があり、終端の飛行経路角を拘束することを示す。
例えば、宇宙機が地球大気に再突入する際(高度 100km 付近)、
飛行経路角 を適正な角度範囲内で維持することが必要である。
経路角 が深すぎると飛行速さが大きくなり、応力や空力加熱が
過剰に大きくなる(断熱圧縮に加え、衝撃波を伴うとその背後の
温度は急上昇する)し、経路角 が浅すぎると大気上をスキップ
する可能性がある。
上記の問題は、この拘束を実現するための初期速度0v を求める問題である。
初期速度0v は、楕円軌道に投入するとすれば、
0
0
000 cos11sin
1rrrrrv
p
r
rr
pf
g (3)
で表わされる。ここで、
0
01
0
01 cos2orcosrrrr
rrrr
:軌道の順行、逆行などで決まる(後述)。 (4)
であり、未知数は、半直弦 p のみである。一方、接線速度 Hv は
r
p
r
c
r
rrvH
2
(5)
と p で表され、逆に、
22
Hvrp (6)
とできる。これから、接線速度 Hv が決定できれば、問題が解ける。
Hv の表式を求めよう。まず、動径速度 rは次式となる。
cos1
ˆˆ11
ˆˆˆ000 rrg
gg
gg
gr rrrrrrrrrvr (7)
式(7)の左辺に、LTVCON: Hvccr 21 を代入し、右辺の gg , に、真近点離角 の表示式、および
式(6)を代入することで、次の Hv に関する2次方程式が求められる。
022
CBvAv HH (8)
ここで、各係数は
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H30.12.28 版
74
cos1
sin,,
2,,212
0
012 W
r
rrK
rCWcBKWcA (9)
したがって、 0Hv に注意して、 02 ACB のとき
ACBB
CACBB
AvH
2
21 (10)
特に、 01 c のときは A
CvH (11)
これらより、00 rv が決定される。
なお、終端の動径速度 rと終端速度の大きさ v は
22
21
22
21 , HHHH vvccvrvvccr v (12)
また、4 章より、全エネルギーh と半長径 a、そして、離心近点離角 ,0E E を次のように計算する:
0
002
1
rh
rr ・ 、
ha
2
(13)
1
21
21
01
021
000
0020
01
tan ,sin1
tan ,
sin1
C
C E
a
rrEe, C
a
rC
C
C E
aEe, C
a
rC
-
-
rr
(14)
こうして、ロケット噴射から再突入までの時間 0ttt は、
0220
3
CCEEa
t
(15)
と求められる。
6.4 円軌道から突入楕円軌道への増分速度
前節では、線形終端速度拘束 LTVCON: Hr vccvr 21 を課して、指定した2点間を通る楕円軌道
に投入するための初期速度を求めた。ここでは、特に、離心率が 0 に近く、ほとんど円軌道で近似でき
る軌道から離脱して、指定された高度にて指定された飛行経路角を取る楕円軌道へ移行するために必要
な速度増分 V を求める問題を検討する。速度増分は、ロケット噴射(点火、burn)を用いて瞬間的に
行うインパルス増分を仮定する。
ここでは、元の軌道の近点にて減速して軌道離脱し、楕円軌道に
移行することを考える。このとき、楕円軌道の遠点が噴射点
になる。このときの飛行経路角はほとんど 0deg(大きくて 2deg)。
以下の記号を用いる。
距離噴射後の軌道の突入時
道)の近点距離噴射後の軌道(楕円軌
道)の遠点距離噴射後の軌道(楕円軌
ど円軌道)の近点距離噴射前の軌道(ほとん
ど円軌道)の遠点距離噴射前の軌道(ほとん
係数;
interface)entry(:
;:
;:
:
:
LTVCOM:, 2121
ei
app
pcaa
acpc
pcac
Hr
r
rrr
rrr
rr
rr
vccvcc
(注意:地球の場合、突入高度は約 100km 近辺である: Rkmrei 100 )
前節で述べたように、突入時の飛行経路角を適切に制御する必要があるために、LTVCON を適用する。
即ち、飛行経路角 について、
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H30.12.28 版
75
HH
r
v
cc
v
v 12tan
の関係があり、再突入時の飛行経路角を拘束する。
Given: eia rr ,
LTVCON: Hr vccv 21 (1)
Find: pca vvV
突入時の速度とエネルギー保存則は、その地点での動径横断座標系 }ˆ,ˆ,ˆ{ cθr を用いて
θrθrv ˆˆˆˆ21 HHHrei vvccvv (2)
ar
hei
eiei22
1 vv (3)
突入軌道では、 pa rra 2 なので、
paei
HHrrr
vvcc11
222
21 (4)
投入軌道の近地点距離 pr 、半直弦 p は、離心率 e は
pa
pa
prr
rre
cp
e
pr
,,
1
2
(5)
角運動量c とその大きさ c は、
Hei
HeiHreieiei
vrc
vrvvr
cθrrvrc ˆˆˆˆ (6)
式(5),(6)から、 pr について解くと
22
22
2 Heia
aHeip
vrr
rvrr
(7)
式(7)を式(5)に代入して、接線速度 Hv で整理すると
02
CBvAv HH (8)
ここで、
2
2
12
2
2
2
21
2
22
22
,2,11ei
a
eiei
a
ei
a
ei
a
r
r
rc
r
rC
r
rccBc
r
rA
(9)
したがって、 0Hv に注意して、 042 ACB のとき、
A
ACBBvH
2
42 (10)
特に、 01 c のとき、
A
CvH (11)
突入時の速度の大きさは
22
Hrei vvv (12)
エネルギー保存則から、噴射直後と突入時において
a
a
ei
eir
vr
v
22
2
1
2
1 (13)
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H30.12.28 版
76
これより、遠点速さ av は、eia rr に注意して
eia
eiaeia
rr
rrvv
2
2 (14)
噴射前の元の軌道におけるエネルギー保存則は
pcacpc
pcrrr
v
2
2
1 (15)
であるから、元の軌道の近点速さは
pcacpc
acpc
rrr
rv
2 (16)
同じ方向の速度であることから、 apc vv に注意して、速度増分は減速量として
apcpca vvvvV (17)
また、突入時eirr の離心近点離角 eiE を、 pa rra 2 に注意して
1
21
21 tan ,sin1C
C E
a
vrEe, C
a
rC -
eirei
eiei
(18)
とすることで、ロケット噴射から再突入までの時間aei ttt は、遠近点で aE より
2
3
CEa
t ei (19)
と求められる。なお、突入時の飛行経路角は
HH
r
v
cc
v
v 12tan (20)
付録: の曖昧性の決定方法
Lambert 問題や LTVCON 問題にて、真近点離角の変化量0 が必要であるが、関係式:
0
0cosrr
rr
を解く際に、次のように 2 つの場合が存在する。
0
01
0
01 cos2orcosrrrr
rrrr
この曖昧性(ambiguity)を解決しよう。軌道上の位置ベクトルを基準面座標(ECI)系 kji ˆˆˆ で記述する。
まず、 rr 0 の z 成分を計算:
rrk 0ˆq (1)
成分は次のようになり、
sincossinˆˆ00 rrirrq ck (2)
ここで、i は軌道傾斜角である。
q の符号をもとに判別する。
1)q の符号が正の場合:
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77
2,2
)b(or,0,2
0)a(
0sin,0cos)b(or,0sin,0cos)a(
0sincos
0
ii
ii
i
q
(a) 2
0
i :順行軌道(direct orbit)の場合、 0 なので
0
01cosrr
rr
(b)
i2
:逆行軌道(retrograde orbit)の場合、 2 なので
0
01cos2rr
rr
2)q の符号が負の場合:
0,2
)b(or,2,2
0)a(
0sin,0cos)b(or,0sin,0cos)a(
0sincos
0
ii
ii
i
q
(a) 2
0
i :順行軌道(direct orbit)の場合、 2 なので
0
01cos2rr
rr
(b)
i2
:逆行軌道(retrograde orbit)の場合、 0 なので
0
01cosrr
rr
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78
7章 軌道の摂動(Perturbation of Orbit)
7.1 摂動加速度
理想的な 2 体問題:外力は球対称な中心天体力(天体を質点としたニュートン力)のみ
rr3r
(1)
実際の衛星の軌道運動は、ニュートン力以外の様々な外力を受ける。
ar 3r
(2)
a を接動力(摂動加速度)と呼ぶ。具体例
BFMBADGRSRPOBL 3aaaaaaa
モーター噴射 〃
大気抵抗 〃
(特に惑星間航行)一般相対論の効果 〃
太陽輻射圧 〃
3体問題による加速度
による加速度中心天体の非球体成分
:
:
:
:
:
:
FMB
AD
GR
SRP
B
OBL
a
a
a
a
a
a
3
7.2 実際の軌道を求める手法
1)数値的方法―Encke の定式化、Cowell の定式化
数値積分法―多段式刻み幅可変
・ある特定な問題の解析 Runge-Kutta
・厳密、容易 Adams-Bashforth-Moulton
・数値誤差への対応 Gauss-Jackson
など
2)解析的方法 摂動法 変数変化法(Variation of Parameter’s,VOP)
・問題一般の解析 Newton,Euler,Lagrange,Poisson
・近似、精度、難しい 非摂動法 解析力学(ハミルトニアンなど)の手法
Brouwer,古在、堀
3)半解析的方法―数値法と解析法の混合、Draper Semianalytical Satellite theory(DSST)
・効率的、精度良
7.3 変数変化法(Variation of Parameters,VOP 法)
1) 0a :接動力のない場合は理想的な 2 体問題。式(1): 3 次の 2 階常微分方程式⇒6 個の積分定数
例:ケプラー軌道要素: ptiea ,,,,, (あるいは M, )⇒ 一括して α (一定) とおく
時間に無関係に一定 軌道パラメーターと呼ぶ
ケプラー軌道定数
・エネルギーar
E22
1 vv・ (一定)
・角運動量 vrC (一定)
・離心率(ラプラス)ベクトル rcvfr
(一定)
2) 0a 接動力のある場合:軌道パラメーターは時間に依存すると仮定する。
tαα
即ち、実際の軌道上の点(規準点)において、位置r ,速度 rv の一致したケプラー軌道を用いて、
実際の軌道を記述(近似)する。このケプラー軌道を接触軌道(Osculating Orbit)と呼ぶ (osculate:ラ
テン語の to kiss より派生)。時間が経って、実際の軌道上の基準点が変わると、別のケプラー軌道(接
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H30.12.28 版
79
触軌道)で近似する。生成された各々の接触軌道上では、軌道定数αは時間に無依存で一定だが、その
値は接触軌道ごとに異なり、時間変化することになる。そこで、軌道パラメーターαの時間変化率を求
め、軌道運動を把握することを、変数変化法という。
7.4 ポワソン法(Poisson Method)
軌道パラメーター t,, vrαα
1) 0a のとき (1)式
rv
rv
3r
ケプラー運動 ⇒ constα t に無関係
0α
rv
αv
r
ααv
v
αr
r
αα
α
trtdt
d3
(3)
0α
rv
3r
注意:
z
y
x
r ,
zyx
r
α,
6
2
1
α ,
zyx
zyx
666
111
r
α
r
rααα
6
1
zyx
2) 0a のとき (2)式
arv
rv
3r
⇒ )(tαα
av
ααar
v
αv
r
ααv
v
αr
r
αα
α
trtdt
d3
(4)
0α
arv
3r
即ち、Poisson の摂動方程式
av
αα
(5)
計算法 以上をまとまとめると 0 α 0
①軌道関係式(要素など)αを t で微分: av
ααv
v
αr
r
αα
tdt
d
dt
d
dt
d
②上記は、αは t を陽に含まない、r は一定、 v の時間変化 v をa に置き換える、ことに相当している。
具体的には、①v
を施し、②a を掛ける、ことで時間変化分を求めることができる。下記を参照せよ。
7.5 軌道要素の変化
1)長半径 a の変化
エネルギー積分
arv
12 vv・ (7.63)テキスト p.138
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80
:定数, rr・2
1r (=定数とみなす)に注意して両辺を
v
を施すと
vv
a
a
T
22
, Taa
vv
22
(6)
注意 vvvvT・ ,
3
2
1
v
v
v
v , 321 vvvT v
vvv
vv22
TT
・(混乱の恐れがない限り)→問1
∴ avav
Taa
dt
da
22
∴ av・
22aa (7)
2)角運動量 c の変化 vrc
vrvr ・2c
v
をすると
v
vrvr
v・22
cc
xc
crvr
v・
1 (8)
注意: rrv
vr ~
x 但し、
3
2
1
r
r
r
r ,
0
0
0~
12
13
23
rr
rr
rr
x rr
明らかに xx TTrrrr ~~ :反対称行列 →以上 問2
∴ arvrav
・
c
c
dt
dc 1
arvravrr ・・・・ c
1
∴ arvrav ・・・ 21r
cc (9)
注意 ベクトル恒等式
dcbacdbadcba
dacbdbcadcba
cbabcacba
acbbcacba
・・
・・・・・
・・
・・
問3
cbacba
baba
abba
・・
・・
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H30.12.28 版
81
備考 cc・2c , xcc
rc
v
cc
v
c・・
1 vrc
∴ aiariarc
av
・・・ rc
c
dt
dcc
(10)
ここで、動径・横断座標系 cr iii ,, を用いた。
rc iii
rrir
3)離心率 e の変化
2cp (7,21),p.128 )1( 2eap (7,48),p.136 より
22 1 eac
v
⇒
vvv
eae
ae
cc 212 2
vvv
cc
apa
ae
e
1 (11)
∴ arvravav
・・・
21
rpaae
e
dt
de
(12)
(6),(8)
4)昇交点赤経と軌道傾斜角 i の変化
ccic , kjii iiic cossincossinsin (13)
ここで慣性座標系 kji ,, と昇交点方向軌道面座標系 cba iii ,, の関係
k
j
i
i
i
i3cic
c
b
a
100
0cossin
0sincos
cossin0
sincos0
0013
ii
iicic
iii
iii
cossincossinsin
sincoscoscossin
0sincos
(14)→問4(1)
cc
dt
dc
dt
dc
dt
di
ic
(13)より 0dt
d
dt
d
dt
d kji( kji ,, は慣性系)に注意して
bac
dt
di
dt
di
dt
dii
i
sin (15)→問4(2)
cbadt
dc
dt
dic
dt
dic
dt
diii
c
sin (16)
一方、 vrc より
arav
cc
dt
d (17)
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82
式(16),(17)の両辺に ai を内積すると、 1aa ii・ , 0 caba iiii ・・ より
aiaiiari ・・・ craa urrdt
dic sinsin
ai・cic
ur
dt
d
sin
sin
(但し、 0i ) (18)
同様にして
aiaiiari ・・・ crbb urrdt
dic cos 問5
ai・cc
ur
dt
di cos (19)
ここで u :緯度引数
実は同様に
aiariaric
i ・・・・ rdt
d
dt
dcccc
5)真近点離角 の変化
2
cos1c
er (7,23),(7,21)より p.128
v vvv
ccerre
2cossin (20)
一方,
sinc
rerr vr・ (7,40),p.134 より
v
vvrr
vv
c
c
cerre
1sincos ・
(21)
sin21cos20
v
vrrv
cc
c
pre T
sin
2cos
1cos ・
vr
v
crpp
rec
T
sincos1
(22) 問6
さて、 自身は 0a 即ち、ケプラー運動時、一定の速さで変化(ケプラーの第 2 法則)
面積一定
2r
c
t
(7,14),p.125
よって、全変化量は
dt
d~
:摂動a のみの変化
dt
dcrpp
recr
c
tdt
d
sincos
12
arav
・ (23)
6)近点引数 の変化
昇交点方向 ai と動径方向 ri のなす角が緯度引数u
rau ii・cos
rr ijii ・・ sincos ((14)より)
v
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83
v
ijiiv
rr
uu ・・ cossinsin
0
v
i r
rr
ri
v
iu cossin
vv
i
ucos (24)
ここで uiur sincossincoscos ii・
uiur sincoscoscossin ij・
を用いた。これは、慣性座標系 kji ,, と動径横座標系 cr iii の関係
c
b
a
c
r
uccicuc
i
i
i
k
j
i
i
i
i3313
問7
iii
uiuiuuiu
uiuiuuiu
cossincossinsin
cossincoscoscossinsincoscossinsincos
sinsinsincoscoscoscossincossincoscos
kijiii
kijiii
kijiii
・・・
・・・
・・・
ccc
rrr
(25)
dt
di
r
cu
t
u
dt
du
cos
2a
v (26)
接触軌道上(Kepler)での時間変化
u だから
vvvvv
i
ucos
av
dt
di
dt
dcos
~
cos i (27)
ここで av
dt
d~
~ (28)
以上をまとめると
◎軌道要素の摂動方程式
av・
22aa
arvrav ・・・ 21rpa
aee
arvrav ・・・ 21r
cc
crpprec
sincos
1~ ar・ ,
~2
r
c (29)
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
84
ai・cic
ur
sin
sin
ai・cc
uri
cos
~
cos i
物理的考察
a : v 方向の摂動加速度に影響
上記はベクトル形式で表現されている。具体的に計算するための最終形は、a などのベクトルを座標
成分で表現する必要があり、それは選択する基底座標系に依存する。
代表的な基底座標系を2つ紹介する:
1)動径横断座標系(LVLH) cr iii
rrir ,
0
cos1
cos
0
e
e
pr
r
crcr iiiiiiv
(7,40),(7,41)p.134
c
r
cr
a
a
a
iiia
⇒
ar
ca
c
e
c
ree
pr
ra
r
r
sin
sinsin
av
vr
ar
・
・
・
te ii cos (7,32),p.132
2)接線垂直座標系 cnt iii
cos1cos
cossin
cos21 (7,42)2
ep
vv
ep
vv
eep
v
r
sinsin
sin
c
rerv
va
av
ca
vc
re
t
nt
vr
av
ar
・
・
・・
0
cos
sin
r
r
cnt iiir , tviv ,
c
n
t
cnt
a
a
a
iiia
上記のように定義された2つの座標系にて表したガウスの変分方程式(Gauss’s variational equations)
は次のように書ける。
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
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cr iii 系
a
r
pae
c
aa rsin
2 2
arerpapc
e r cossin1
rac
arpapec
r sincos1~
, ~
2
r
c (29)
caic
ur
sin
sin
cac
uri
cos
~
cos i
cnt iii 系
tava
a
22
nt a
a
rae
ve sincos2
1
nt aea
r
p
pv
rcc sin
nt a
a
rea
ev cos2sin2
1~ (30)
caic
ur
sin
sin
cac
uri
cos
~
cos i
但し、 0,0 ei
0,0 ei のときは座標変換や変数変換により取り扱われる。
u
r
ri
ti
i
ni
ai
f
cs /
軌道面
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H30.12.28 版
86
注意:ケプラー要素 ,,,,, iea は、円軌道、または、無傾斜軌道の時に生じる特異性
がある。実用には、これを回避した軌道要素の組、例えば、Nonsingular equinoctial elements などを用い
て解析することがある(4.6 節参照)。
例えば、次の Nonsingular equinoctial elements: ,,,,, yx iia
,,,, sin2
tancos2
tansincosi
ii
iee yx
逆変換
,tan,tan,tan2, 1122122
x
y
yxi
iiiie
を用いると、ガウスの変分方程式(Gauss’s variational equations)は次のように書ける。
ここでは、ケプラーの軌道要素をベースにしている。
宇宙工学基礎 松永(東工大・機械宇宙)
H30.12.28 版
87
参考文献
1)狼、冨田、中須賀、松永、宇宙ステーション入門 第 2版補訂版、東京大学出版、2014 :教科書
2)冨田、宇宙システム入門、東京大学出版、1993
3)冨田、鬼頭、幸節、長谷川、前田、ロケット工学基礎講義、コロナ社、2001
4)岩崎、的川、図説 宇宙工学、日経印刷、2010
5)小林、宇宙工学概論、丸善、2000
6)木下、天体と軌道の力学、東京大学出版、1998
7)木田、小松、川口、人工衛星と宇宙探査機、コロナ社、2001
8)柴藤、渡辺、ロケット工学、コロナ社、2001
9)茂原、宇宙工学入門、培風館、1994
10)茂原、宇宙工学入門 II、培風館、1998
11)茂原、宇宙システム概論、培風館、1995
12)姿勢制御研究委員会編,人工衛星の力学と制御ハンドブック,培風館,2007
13)半揚稔雄、惑星探査機の軌道計算入門、日本評論社、2017
14)半揚稔雄、ミッション解析と軌道設計の基礎、現代数学社、2014
15)R.Bate, D.Mueller and J.White, Fundamentals of Astrodynamics, Dover, 1971
16)W.T.Thomson, Introduction to Space Dynamics, Dover, 1986.
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20)D.A.Valldo, Fundamentals of Astrodynamics and Applications, 4th ed. (Space Technology Library), 2013.
21)Dava Newman, Interactive Aerospace Engineering and Design, McGraw-Hill, 2002.
その他、多数