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BSデジタル放送の概要とサービス
2007年3月13日
NHK技術局計画部
加藤久和
資料5-3
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2 Copyright ©2007, NHK ENG070313
BSデジタル放送の成り立ち
放送は通信と異なり、全ての国が使う権利を主張:チャンネルプラン
容易に隣接国に電波が漏れる:国際的な取り決めが必要
ITUの国際無線通信会議(WRC(旧WARC))でルールを決める
衛星放送で使われる周波数:第三地域(アジア、オセアニア)では、
11.7GHz~12.2GHzの間の24チャンネル、静止軌道は6度間隔が基本
1977年開催のWARC-BSで、日本に東経110度の8チャンネルが割り当て
2000年開催のWRC-2000で、4チャンネルが追加され計12チャンネル
BSデジタル放送の要求条件として、HDTV/データ放送中心の新たなサービス
2000年12月から、BS-1、3、13、15chを利用してBSデジタル放送を開始
2007年12月には、BS-9chもデジタル化
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BSデジタル放送方式の特徴
1. 一つの衛星中継器でハイビジョン2番組の放送が可能
(要求条件には記載がないが)システム設計当時、デジタル用の4中継器で8番組程度が放送できる必要ありと考えられた
充分な画質を保つために、 MPEG-2により1番組20Mbps程度は必要とされた→52Mbpsの伝送容量が実用化
2. 一つの衛星中継器を共用する複数の事業者が独立にサービスを提供可能
各放送局が制作したコンテンツをTSとしてそのまま放送できる
マルチ編成、融通多重、降雨対応放送、緊急警報放送など、事業者の判断で実施可能
TS生成のプラットフォームを行う構造は用意されない
3. 新たなサービスとして、ハイビジョン、データ放送、EPGなどを導入
MPEG-TSで伝送
データ放送はBML文書をデータカルーセルで伝送
現在のBSデジタル放送は、電通技審報告に盛り込まれたBSデジタル放送に関する要求条件に則って、以下のような特徴が実現されている
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BS伝送方式の主要パラメータ
所要CNと伝送可能な情報レートの関係(アナログBS方式の音声はCN=6dB程度で遮断)
最大52Mbps (全TC8PSK時)情報レート:
MPEG-2 Video(MP@HL/ML/LL)
MPEG-2 AAC
MPEG-2 Systems
符号化多重化:
0.35ロールオフ率:
MULTI-2スクランブル方式:
ブロックインターリーブ(深さ8)インターリーブ:
トレリス/畳み込み(拘束長7)+ RS(204,188)の連結符号
誤り訂正方式:
28.860Mbaud/34.5MHz伝送レート:
TC8PSK、QPSK (r=1/2~7/8)、BPSK (r=1/2)
から選択組合せ可能
変調方式:
11.7~12.2GHz (別途、広帯域CSの12.2~12.75GHzにも適用)
周波数:
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BSデジタル放送の送出構成
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BSデジタル放送の信号生成過程
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123456
48
畳み込み符号化
47
8PSKマッピング
QPSKマッピング
BPSKマッピング
時分割多重/直交変調
位相基準バースト
発生
46
#1-#46slot
#47slot
同期TMCC
DummyQPSK(r=1/2)
TC8PSK
TC8PSKTC8PSKTC8PSKTC8PSKTC8PSKTC8PSK
フレーム合成、TMCC生成
203B
エネルギ拡散
インターリーブ
(スロット毎,
スーパーフレーム方向)
エネルギ拡散
(スーパーフレーム周期)
同期,TMCC
1F2F
8F
RS(64,48)符号化
変調波
RS(204,188)符号化したTS1
RS(204,188)符号化したTS2
BS伝送方式の概要(TS合成-伝送路符号化-変調)
複数のTSに変調方式によってスロット位置を割り当て スペクトル平坦化
タイミング再生
誤り訂正性能改善
低CNでの安定受信
帯域幅34.5MHz(ITUの基準に従う)
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複数TSの伝送方式割り付け例(2TS利用の場合)48
slot
TS1
TC8PSK26.1Mbps
(映像、音声、データ、PSI/SI)
TS2
TC8PSK26.1Mbps
(映像、音声、データ、PSI/SI)
TS1
TC8PSK23.9Mbps
(映像、データ、SI)
TS2
TC8PSK26.1Mbps
(映像、音声、データ、PSI/SI)
TS1
QPSK(r=1/2) 1.1Mbps(低階層映像、
音声、PSI)
ダミースロット(伝送しない)
TS1が階層変調階層変調なしスロット割り当て
24sl
ot24
slot
両TSが階層変調
TS1
TC8PSK23.9Mbps
(映像、データ、SI)
TS2
TC8PSK23.9Mbps
(映像、データ、SI)
123::
:4748
:23242526:
TS1
TS2
伝送方式毎に割り当て、周波数利用効率の高い方式ほど先に送るTC8PSK以外は効率に応じてダミースロットで一定処理速度にする
1フ
レー
ム
TS1TS2
QPSK(r=1/2) 1.1Mbps ×2(低階層映像、
音声、PSI)
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BSデジタル放送のインターリーブ
内符号のバースト誤りを拡散させ外符号で訂正することで性能向上
スロット単位、スーパーフレーム方向深さ8のブロックインターリーブ
スロット/スーパーフレーム単位で伝送方式の割り当てができ、方式の切り換えがあっても画像音声へのショックはない
受信機ではこの逆のプロセス
12345678
書き込み方向
203B
12
i
1F
インターリーブ前
48
203B
2F3F
8F
12
i
1F
インターリーブ後
48
203B
2F3F
8F
1 2 25 26
203178 179
インターリーブ読み出し方向
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#1slotTC8PSK
SyncTMCC
#2slotTC8PSK
#46slotTC8PSK
#47slotQPSK(r=1/2)
203 symbol192 symbol
1 frame 分のシンボル(1周期目)
#3slotTC8PSK
TMCC/Sync
(BPSK)
同期捕捉用バースト(BPSK)
主信号(8PSK)
主信号(QPSK)
インターリーブされた1F~8Fの#2Slotのデータの1/8
#1slotTC8PSK
SyncTMCC
#2slotTC8PSK
#46slotTC8PSK
#47slotQPSK(r=1/2)
#3slotTC8PSK
1 frame 分のシンボル(8周期目)
フレーム同期W1
12 20 12 20
W2
TMCCデータ128シンボル
(64bit)
フレーム同期W1
12 20 12 20
W3
TMCCデータ128シンボル
(64bit)
1スーパーフレーム
変調波の構成 (TC8PSK×46+QPSK(1/2)×1の例)
フレーム同期:フレーム/スーパーフレーム識別を行うと共に、8PSKの絶対位相の確定、ビタビ復号の終端を行う
同期補足用バースト:8PSKが大半を占めている信号で、低CN時に安定にキャリア再生を行うための9次のPN信号BPSKのバースト信号
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TMCCの位置づけ
フレーム構造でスロット毎に伝送方式とTSを規定する
TMCC (Transmission & Multiplexing Configuration Control、伝送制御信号)の利用
MPEG-2 Systemsで規定していない物理層での制御を実現
利用する変調方式、TS情報等を受信機に通知
最も信頼性の高い方式で伝送し、受信開始時に解読→主信号の復調とTSの選択
その他、物理層での制御情報(緊急警報起動、サイトダイバシティ運用フラグ)の伝送も可能
スロット毎の伝送方式とTS_ID、緊急警報フラグ、サイトダイバシティ運用フラグ等
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12 Copyright ©2007, NHK ENG070313
緊急警報放送の利用(TMCCの活用)
要求条件に盛り込まれた緊急警報信号の起動制御信号をTMCCに割り当ててある。
当該中継器に割り当てられたTSのいずれかが緊急警報放送を開始すると、起動ビットがアクティブになる。
これにより、受信機のバックエンドの電源が入って緊急警報放送の開始を知らせるなどが可能となる。
PMTに記載される緊急情報記述子によって、緊急警報放送を行っているサービスID、大規模地震や津波警報の種別、地域の情報を放送する。
※現在の市販受信機にはBSの緊急警報放送開始を検知して電源投入動作を行うなどに対応したモデルはない
TS1
TS2
TS合成
①緊急警報放送の開始(TMCC生成情報と緊急
情報記述子)
放送波
アンテナODUフロントエンド
バックエンド
受信機
③TMCCの該当ビット起動を検出 ④バックエンド起動②TMCC該当ビットON(各TS間のOR処理)
該当TSに記述子付加
事業者1
事業者2
変調
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サイトダイバシティ運用(TMCCの活用)
BSは17GHz帯のアップリンクを用いており、降雨に対して高い信頼性を確保するために、サイトダイバシティ運用を行う。
主局で合成後のTS信号を菖蒲副局にデジタル回線で送り、主局/副局どちらからでもアップリンクできるような構成とし、降雨状況によって切り換えて運用する。
クロック周波数は同期させ、キャリア周波数も高い精度で近い周波数になっているが、衛星で受信される17GHz帯のアップリンク信号の連続性は保証できない。(数m秒の受信キャリアの重複または遮断が生じる)
1キャリア内には複数の番組が流れているため、必ずしも番組の切れ目での切り換えが保証できない。このため、TMCCにサイトダイバシティ告知信号を用意して、16スーパーフレーム前(約170ms)から切り換えが起きるスーパーフレームが受信機で分かるようにしている。
受信機はこれを検知して受信信号にブロックノイズが入るなどの障害の発生を極力低減するための処理を行うことができる。
TS1
TS2
TS合成
事業者1
事業者2
主局変調
遅延調整
デジタル回線
副局変調
合成TS信号、クロック情報
17GHz帯
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サイトダイバシティ運用の必要性
BSのアップリンクに使用している17GHz帯の減衰量は12GHz帯の約2倍(デシベル値として)程度になる。
フィーダーリンク遮断が生じるような降雨では急激で深い減衰が生じるため,数dBの電力増加では時間率改善効果に乏しい。
地理的に離れた場所に副局を設け、サイトダイバシティ運用を行う。
サイトダイバシティ効果は、降雨減衰量と地理的な距離によって推測できる。
渋谷-菖蒲(約49km)でのサイトダイバシティ効果
99.9%(最悪月間44分/月)↓
99.9985%(最悪月間40秒/月)
1.00.80.6
0.4
0.2
0.10.080.06
0.04
0.02
0.010.0080.006
0.004
0.002
0.001
2.0
1.00.8
0.5
0.3
0.2
0.10.08
0.05
0.03
0.02
0.01
42 6 8 10 12 14 16 18 20
降雨減衰量 [dB]
6
10
20
40
55
70
100
120
各周波数帯の降雨減衰量と時間率(東京)
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15 Copyright ©2007, NHK ENG070313
降雨対応放送(階層変調)の運用例
階層変調により、音声や低レートの画像が視聴でき、遮断時間を
低減する
12GHz帯は降雨減衰の影響が大きく、雨が強くなると、アナログテレビは徐々に画質が劣化するが、デジタルテレビは急激に画質が劣化し遮断する
伝送容量の確保とサービス時間率確保という、相反する問題を階層変調により解決
所要CNの低い伝送方式で最小限の情報を提供すれば、実際の遮断時間を短縮できる
受信機は誤り状況を判断して、有効なパケットを使って情報を表示する
受信できません
TC8PSK
26.1Mbps:映像+音声+データ+PSI/SI
TC8PSK
23.9Mbps:映像+データ+SI1.1Mbps:低階層画像+音声+PSI
QPSK(r=1/2)
CN 10dB 4dB
受信できません
受信できません
(参考)アナログ放送
(99.70%)(最悪月サービス時間率*) (99.94%)
* : 東京で45cmアンテナで受信した場合
(24スロット/TS)
(24スロット/TS[内有効は23スロット分])
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降雨対応放送(階層変調)の効果
東京を例に最悪月で計算した結果、低階層をQPSK(1/2)として45cmアンテナを用いた受信の場合に1/5以下に遮断時間が低減する
階層変調のためにHDTV用に利用する帯域は2スロット分(1/12)の減少
0
20
40
60
80
100
120
140
2/3 T
C8P
SK
7/8Q
PSK
5/6Q
PSK
3/4Q
PSK
2/3Q
PSK
1/2Q
PSK
1/2B
PSK
最悪
月遮
断時
間(分
)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
最悪
月遮
断時
間:一
日2時
間視
聴の
場合
(分)
←131分(11分→)
←24分(2分→)
階層変調による改善効果
0 20 40 60 80 100 1200
10
20
Time(minutes)
C/N
(dB
)
1994.7.25 04:18~
8PSK
QPSK
降雨減衰の観測例
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臨時チャンネルによるマルチ編成(TS内で完結)
通常チャンネルに加え、一時的に臨時チャンネルを利用。
臨時チャンネルは、アップダウンボタンで切り替わる。
臨時チャンネルは、その放送が開始されるまで、EPGに表示されない。
臨時チャンネルは、リレー録画で録画を継続できる。
野球放送が延長しても、最後まで放送を続けることが可能
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18 Copyright ©2007, NHK ENG070313
イベント共有によるマルチチャンネル編成(TS内で完結)
ほとんどの時間帯はHDTV放送を行うが、割り当てれた帯域内で、3つのSDTVチャンネルに編成を切り替えることも可能。
HDTV時は、HDTVコンポーネントを3つのPMTに割り当てることで、いずれのサービスIDでSDTVを視聴していても、次の番組では同じHDTV画面が表示される。
通常は、若い番号(下記の例では191)がワンタッチボタンに割り当てられているので、SDTVの選局はアップダウンボタンで行う。
191 or 192 or 193(HDTV)
191(SDTV)
192(SDTV)
193(SDTV)
データ放送time
191 or 192 or 193(HDTV)
イベント共有期間 イベント共有期間
ワンタッチボタンでその前のHDTVを選局していれば、
191のSDTVに移行
他のSDTVへはアップダウンボタンで切り換え
いずれのSDTVを観ていても、自動的にHDTV
に移行
帯域
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19 Copyright ©2007, NHK ENG070313
統計多重/融通多重の利用(TS内で完結)
TSの帯域の中で、映像、データ放送コンテンツの割り当てビットレートを柔軟に変更することが可能
TSの独立性が確保されているために、事業者毎に独自に設定可能
例1:映像符号化をVBR(可変レート)として画質を確保し、空き帯域でデータ放送を割り当てる
例2:複数のSDTVのマルチチャンネル編成を行う際、符号化レートを統計多重で可変とし、画質を確保する
統計多重/融通多重の概念
Video-1 時間
Video-2 時間
Video-3 時間
データ Video情報が送られていない期間にデータを送出(融通多重)
Video-1,2,3統計多重によるレート割り当て
時間
Video-1固定レート割り当てVideo-2
固定レート割り当てVideo-3
固定レート割り当て
時間
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20 Copyright ©2007, NHK ENG070313
まとめ:BSデジタル放送方式の特徴
準基幹放送として、ハイビジョン放送とデータ放送を確実に実施するための技術仕様を反映
放送事業者の制作したコンテンツをTS単位でそのまま放送
複数の伝送方式から適切な方式を選択利用可能
準基幹放送として必要な機能を実現可能
TS単位で様々な機能を実現可能
スロット/フレーム構造
TMCC
緊急警報放送
サイトダイバシティ
降雨対応放送(階層変調)
マルチ編成
イベント共有
統計多重/融通多重
HDTV放送に必要な伝送容量確保
TC8PSK/QPSK/BPSK利用
目的 技術手段 活用事例