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25 Basic Protocol 437 Basic Protocol マークのついているものは、 (株)ニッポンジーン関連製品です。 それ以外は和光純薬工業(株)の製品あるいは取り扱い製品です。 PCR 438 Phosphorylation(T4 Polynucleotide Kinase) 441 平滑末端クローニング 442 Ligation(Ligation Pack) 444 Transformation/Transduction 446 Agarose for Electrophoresis 449 RNA Extraction (ISOGEN, ISOGEN-LS) 454 RNA Extraction (ISOGEN Ⅱ) 457 Immuno-Aptamer TM を用いたウエスタンブロッティング (North-Western 法) 460 DNA Extractor ® WB Kit の応用例 462 microRNA Isolation Kit, Human Ago2, microRNA Isolation Kit, Mouse Ago2  追加マニュアル 465 microRNA Cloning Kit Wako 追加マニュアル 470

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Basic Protocol

 マークのついているものは、(株)ニッポンジーン関連製品です。それ以外は和光純薬工業(株)の製品あるいは取り扱い製品です。

PCR 438Phosphorylation(T4 Polynucleotide Kinase) 441平滑末端クローニング 442Ligation(Ligation Pack) 444Transformation/Transduction 446Agarose for Electrophoresis 449RNA Extraction (ISOGEN, ISOGEN-LS) 454RNA Extraction (ISOGENⅡ) 457Immuno-AptamerTM を用いたウエスタンブロッティング   (North-Western 法) 460DNA Extractor® WB Kit の応用例 462microRNA Isolation Kit, Human Ago2, microRNA Isolation Kit, Mouse Ago2    追加マニュアル 465microRNA Cloning Kit Wako   追加マニュアル 470

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PCR

1. PCR の原理PCR とは、Polymerase Chain Reaction の略である。文字通

りDNAポリメラーゼを用いて連鎖反応的にDNAを増幅する方法である。PCR法の開発は、分子生物学のみならず、さまざまな分野に影響を与えた。PCR の原理は、増幅したいDNAとその両端の配列に相補的

な一対のDNAプライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼを用いて、3段階の温度変化を nサイクル繰り返すことによって標的

DNAを 2n 倍に増幅することにある。温度変化の第 1段階(94~96℃)で、標的二本鎖DNAを熱変性して一本鎖とし、第2段階(55~ 60℃)でプライマーを一本鎖DNAにアニーリングさせ、第 3段階(72 ~ 74℃)で伸長反応を進める。1サイクルで標的DNAは 2倍になる。従って理論的には nサイクルの反応で標的DNAは 2n 倍に増幅されるので 20サイクルでは約 100 万倍に増幅されることになる。実際には数 100 万倍まで増幅することができる。

2. PCR に影響を与える因子このように PCRは非常に簡単にDNAを増幅できるわけであ

るが、さまざまな反応条件によって影響を受けるので、行う実験によって反応条件の最適化を行った方がよい。Taq DNA ポリメラーゼを用いた PCRに影響を与える因子について以下に簡単に解説する。

酵素濃度 Taq DNA ポリメラーゼは、通常 1~ 2.5 units/100 µl反応液

で使用される。一般に濃度が高すぎると非特異的産物が出現することがあり、逆に濃度が低すぎると増幅が不十分になる。

dNTP濃度 dNTP 濃度は通常それぞれ 20 ~ 200 µmol/l である。各

dNTPの濃度は同一でないと誤った取り込みによるエラーが生じる原因になる。特異性と忠実度は、dNTP濃度が低いほど高くなる。理論的には、100 µl反応液で 20 µmol/lの各 dNTP が存在すれば、2.6 µg の DNAが合成できる。 Mg2+濃度 通常、総 dNTP濃度より0.5~ 2.5 mmol/l 高い濃度が採用され

る。鋳型 DNA やプライマーから持ち込まれる EDTA などのキレート剤の濃度に注意しなければならない。

プライマー プライマーは、通常18~ 28ヌクレオチド長で、G+C含量が

50~ 60%で、Tm値が 55~ 80℃となるように設計する。2つのプライマーはそれぞれ 0.1 ~ 0.5 µmol/lで使用する。

温度 変性温度は高いほど特異性や増幅度が高くなるが、逆に Taq

DNA ポリメラーゼの活性低下を早めるので、普通は 94~ 96℃で 15~ 30秒間である。

図 PCR法によるDNA増幅の原理

プライマーのアニーリング温度は、Tm値より 5℃程低い温度がよく、通常 55 ~ 60℃である。アニーリング温度が高いほど特異性は高くなる。0.2 µmol/l のプライマーは数秒間でアニーリングする。伸長反応の温度は、72℃が多く用いられる。合成速度は、他

の反応条件にもよるが、1秒間で 35~ 100ヌクレオチドである。

サイクル数 サイクル数は多いほど増幅度は高くなるが、同時に非特異的産

物が増加する。40サイクルを越えないことが望ましい。理論的には指数関数的に増幅するが、実際にはプラトーになる。プラトーになる条件は、反応条件により異なる。

その他 pH も PCR に影響をおよぼす。通常 10 ~ 50 mmol/l Tris-

HCI(pH 8.3 ~ 8.8 at 20℃)が用いられる。また、塩濃度、ゼラチンや非イオン性界面活性剤の存在によっても影響を受ける。PCRは非常に高温で反応を行うため、反応液中の水分が蒸発

し、組成が変わってしまう。反応液にミネラルオイルを重層することにより水分の蒸発を防ぐことができる(サーマルサイクラーの種類によってはミネラルオイルが必要ないものもある)。

3. PCR の実際プライマーの設計 プライマーの設計上のポイントは以下の通りである。

① 両プライマーの Tm値が同程度であること。② プライマーの 3′末端側の塩基配列が正確であること。③ プライマーの 3′末端どうしが相補的でないこと。④ G+C含量があまり高くないこと(50~ 60%がよい)。特にプ

ライマーの3′末端側にG+Cリッチな領域がないようにする。⑤ プライマー自身がヘアピンのような高次構造をとらないこと。

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Gene TaqGene Taq

M:Marker 6(λ/StyⅠ digest)

鋳型DNALane 1 ColE1 DNA 500 bpLane 2 λDNA 5 kbpLane 3 λDNA 15 kbp

0.8% Agarose S100 V、30分間

鋳型DNA < 1 µg10 × Gene Taq Universal Buff er(添付) 5 µldNTP Mixture(添付)(2.5 mmol/l each) 4 µlprimer-forward(20 pmol/µl) 1 µlprimer-reverse(20 pmol/µl) 1 µlGene Taq またはGene Taq NT(5 units/µl) 0.5 µlddH2O up to 50 µl

ColE1 DNAに挿入した 500 bp のフラグメントの増幅 λDNA(5 kbp,15 kbp)の増幅

94℃ 30 秒間55℃ 30 秒間  20サイクル72℃ 1 分間

10 µl 電気泳動

94℃ 1分間

94℃ 30秒間68℃ 12分間  

30サイクル

72℃ 5分間

10 µl 電気泳動

PCR 例 ニッポンジーンの GeneTaq または GeneTaq NT を用いた標

準的な PCRの実験例は以下の通りである。なお、プライマーのデザインや鋳型DNAなどにより反応の至適条件が変わることがある。

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4. T4 gene 32 protein を用いた PCR 阻害物質による影響の緩和

T4 gene 32 protein とは T4 gene 32 protein はバクテリオファージ T4の DNA複製に

必須な核酸結合タンパク質で、へリックス構造を不安定化する働きがある。T4 gene 32 protein は、DNAポリメラーゼによるDNA 合成の促進、site-specifi c mutagenesis あるいは電子顕微鏡による一本鎖DNAのマーキングなどに使用される。特に、最近は PCRにおける阻害物質による影響を緩和させる働きが注目されている。

T4 gene 32 protein を用いたヘミンによる PCR 阻害の緩和 0.1 ng の鋳型DNA(pBR322)と一連の濃度のヘミンを含む反

応溶液にて、T4 gene 32 protein の存在下あるいは非存在下でPCRを行った。

鋳型DNA(pBR322) 0.1 nghemin 最終濃度 10~ 0.001 µg/µl10 × Gene Taq Universal Buff er 5 µldNTP Mixture(2.5 mmol/l each) 4 µlprimer-forward(20 pmol/µl) 1 µlprimer-reverse(20 pmol/µl) 1 µlGene Taq(5 units/µl) 0.5 µlT4 gene 32 protein 0 または 2 µg(最終濃度 40 ng/µl)ddH2O up to 50 µl

94℃ 30秒間55℃ 30秒間 25 サイクル72℃ 1分間

10 µl 電気泳動

2% Agarose S100 V、30分間臭化エチジウム染色M:Marker 5(φX174/Hinc Ⅱ)

文   献1) Kreader, C. A. : Appl. Environ. Microbiol., 62, 1102(1996)2) Bittner, M., Burke, R. L. and Alberts, B. M. : J. Biol. Chem., 254, 9565(1979)3) Schwarz, K., Hansen-Hagge, T. and Bartram, C. : Nucl. Acids Res., 18, 1079(1990)4) Panaccio, M. and Lew, A. : Nucl. Acids Res., 19, 1151(1991)5) Kaspar, P., Zadrazil, S. and Fabry, M. : Nucl. Acids Res., 17, 3616(1989)6) Huang, H. and Keohavong, P. : DNA AND CELL BIOLOGY, 15, 589(1996)7) 島本功, 佐々木卓治 : 細胞工学別冊, 植物細胞工学シリーズ 7, 新版植物のPCR実験プロトコール, p.159(1997)

1µg/µlの濃度のヘミンの存在下では PCR が阻害されてい

るが、40 ng/µlの T4 gene 32 protein(gp32)を加えると、1µg/µlの濃度のヘミン存在下で阻害が緩和されている。

製品はp.152参照

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りん酸交換反応注4) この方法は、基質DNAをあらかじめ脱りん酸化しなくてよい

ので、便利である。

反応例5′りん酸化DNA 5′末端として 1~ 50 pmol注 2)

5 × Kinase Buff er C(添付) 10 µl[γ-32P]ATP(111 TBq/mmol. 0.37 MBq/µl) 50 pmol(15 µl)T4 Polynucleotide Kinase 20 units ddH2O にて 50 µl 37℃、30分間

10×Kinase Buff er A : 0.5 mol/l Tris-HCI(pH 7.6), 0.1 mol/l MgCl2, 50 mmol/l DTT, 1 mmol/l Spermidine, 1 mmol/l EDTA5×Kinase Buff er B : 250 mmol/l lmidazole-HCI(pH 6.4),

90 mmol/l MgCl2, 25 mmol/l DTT, 30%(w/v)PEG60005×Kinase Buff er C : 250 mmol/l lmidazole-HCI(pH 6.4),

90 mmol/l MgCl2, 25 mmol/l DTT, 0.5 mmol/l Spermidine, 0.5 mmol/l EDTA, 0.5 mmol/l ADP, 5 nmol/l ATP, 24%(w/v)PEG6000

Phosphorylation(T4 Polynucleotide Kinase) りん酸転移反応 (あらかじめ基質を脱りん酸化しておく必要がある)DNAや RNAの 5′末端OH基にりん酸基を付加する反応の効

率は、一般に次のような順である。①一本鎖末端>②二本鎖 5′突出末端>③二本鎖平滑末端>④二本鎖 3′突出末端

反応例 1(①、②の場合)脱りん酸化DNA注1) 5′末端として 1~ 50 pmol注 2)

10 × Kinase Buff er A(添付) 5 µl  [γ-32P]ATP(111 TBq/mmol. 0.37 MBq/µl) 50 pmol(15 µl) T4 Polynucleotide Kinase 10 ~ 20 units  ddH2O にて 50 µl  37℃、30分間 

反応例 2(③、④の場合)脱りん酸化DNA注1) 5′末端として 1~ 50 pmol注 2)

5 × Kinase Buff er B(添付) 8 µl  [γ-32P]ATP(111 TBq/mmol. 0.37 MBq/µl) 50 pmol(15 µl) T4 Polynucleotide Kinase 20 units  ddH2O にて 40 µl  37℃、30分間 

反応例 1の方法を行って反応効率が低い場合には、反応例 2の方法を試してみる。

使用例(PCR産物のリン酸化) PCR産物のリン酸化には、プライマーをリン酸化してからPCRに使用する方法(一本鎖末端)と、PCR産物をリン酸化する方法(二本

鎖平滑末端、二本鎖 3′突出末端)のどちらかになりますが、リン酸化反応は二本鎖末端よりも一本鎖末端の方が効率良く行えます。

DNA5′末端濃度 換算式   pmol of 5′ends =[g of DNA/(bp of DNA×660 g/mol/bp)]×1012 pmol/mol×2 ends/molecule   例) ・20 mer の一本鎖DNA 1 µg は約 150 pmol of 5′end に相当します。  約 150 pmol of 5′end≒[0.000001/(20× 330)]×1,000,000,000,000×1 ・1 kbp の直鎖状二本鎖DNA 1 µg は 1.52 pmol(約 3 pmol of 5′end)に相当します。  約 3 pmol of 5′end≒[0.000001/(1,000 × 660)]×1,000,000,000,000×2

注 1) 脱りん酸化DNAは、カラムクロマトグラフィー(Sepharose CL-4B など)などで、低分子量の核酸を取り除いておかねばならない。また、T4 Polynucleotide Kinase は、アンモニウムイオンで強く阻害されるので、アンモニウム塩を含む溶液中のDNAやアンモニウム塩を加えてエタノール沈殿したDNAを基質に用いてはいけない。

注 2) 1 pmolの5′末端とは、二本鎖DNAの場合、100塩基対が3.3×10-2 µgに相当し、1,000塩基対が 3.3× 10-1 µg に相当する。

注 3) りん酸交換反応は、りん酸転移反応と比較してその効率が 1/5 ~ 1/10 に低下する。

反応例 1プライマー 5′末端として 1~50 pmol10 × Kinase Buff er A 5 µl 10 mM rATP 5 µl(終濃度 1 mM) T4 Polynucleotide Kinase 20 unitsddH2O up to 50 µl 37℃で 30分間反応

70℃、10分間の加熱で酵素反応を停止すぐに使用しない場合は、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈殿による精製を行う。

反応例 2PCR産物 5′末端として 1~50 pmol5 × Kinase Buff er B 8 µl 10 mM rATP 5 µl(終濃度 1 mM程) T4 Polynucleotide Kinase 20 unitsddH2O up to 40 µl 37℃で 30分間反応

フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈殿による精製

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注 2) Alkaline Phosphatase の種類によって最適な反応条件(酵素濃度、温度、時間)と失活方法が異なります。必ず確認してから実験を最適化して下さい。

注 3) 脱リン酸化反応の前に、DNA溶液の一部をライゲーション反応のコントロール用に分取する。

注 4) BAP の場合、キレート剤存在下の 100℃の加熱で一時的に失活するが、室温における静置で活性が復活する。CIPと比較して失活しにくい酵素であるため、フェノール/クロロホルム処理も数回必要である。

注 5) 調製したベクターは、脱リン酸化の程度を確認してから保存する。

実験の用途によっては、Cloning Vector pTS1 DNA, Hinc Ⅱ Treated(Code No. 301-10131)のようなあらかじめ平滑化と脱リン酸化済みのベクターを購入すると時間の短縮に便利です。

2) PCR産物の平滑化 Taq のような PCR 酵素で得られる増幅産物は、二本鎖DNA

の 3′末端に 1塩基だけ Aが付加された形になっているため、T4 DNA Polymerase で平滑化させます。本酵素は、3′→ 5′Exonuclease 活性と 5′→ 3′Polymearse 活性を持ち、5′突出末端および 3′突出末端のどちらの場合も平滑化できます。Blunting-Convenience Kit(p.131)には T4 DNA Polymerase

と dNTPs を含む最適化された 10× Blunting Buff er が入っていますので、以下のプロトコールでは本キットを使用します。

PCR産物(0.1 ~ 10 pmol) 17 µl注 6)

10 × Blunting Buff er 2 µlT4 DNA Polymerase 1 µlTotal 20 µl 37℃で 5分間反応させる

平滑化反応液を氷中に置いて反応を停止すぐに使用しない場合はフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出、エタノール沈殿し、-20℃で保存

注6) 末端を平滑化したいDNA(DNA末端濃度で0.1~10 pmol)を17 µl用意します。例えば、pUC19 DNA(2,686 bp)1 µg は、約 1 pmol of 5′end に相当します。

約 1 pmol of 5′end ≒[0.000001 g/(2,686 bp × 660)]× 1012 × 2

① PCR産物のリン酸化脱リン酸化済みのベクターを使用する場合(1)②参照)、ライ

ゲーション反応にインサートDNAの 5′末端のリン酸基が必須になります。制限酵素で切断させた末端と異なり、普通のプライマーで増幅させたPCR産物の 5′末端にはリン酸基が付加されていません。PCR 産物のリン酸化には、プライマーをリン酸化してから

PCRに使用する方法(一本鎖DNAの 5′末端OH基にリン酸基を付加)と、平滑化したPCR産物をリン酸化する方法(二本鎖DNAの 5′末端OH基にリン酸基を付加)のどちらかになりますが、リン酸化反応は、平滑末端よりも一本鎖末端の方が効率良く行えます。T4 Polynucleotide Kinase を用いたリン酸化のプロトコール

は、Phosphorylation(p.441)を参照。

平滑末端クローニング1. 遺伝子クローニング方法の選択遺伝子クローニングを検討する際に、操作の簡便さと効率の面

で二種類(もしくは一種類)の制限酵素でそれぞれ切断したベクターとインサートDNAを用いた突出末端クローニングがよく選択されます。また、Taq DNA Polymerase などのターミナルトランスフェラーゼ活性を有するPCR酵素で得られた増幅産物は、二本鎖DNAの 3′末端に 1塩基だけ Aが付加された形になるため、Tベクターを用いた TAクローニングが有効な選択肢の一つになります。一方、平滑末端になる校正活性を有する PCR酵素で得られた増幅産物を使用する場合は、制限酵素サイトを持つリンカーを連結させて突出末端クローニングにするか、平滑末端ベクターDNAを用いた平滑末端クローニングが考えられます。平滑末端クローニングは、目的の遺伝子とベクターDNAに適

当な制限酵素サイトがない場合、DNA末端が平滑であれば配列に依存することなくライゲーションすることができます。

2. 実験の流れここでは、3′末端に Aが付加した PCR産物を平滑化させて

行う平滑末端クローニングの一例を、ニッポンジーンの製品を用いてご紹介します。

1) 平滑化ベクターの用意 平滑末端を作る適当な制限酵素で 1~ 10 µg のプラスミド

DNAを切断する注1)。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈殿で精製する。TE(pH 8.0)で溶解し、~ 100 µg/mlのDNA溶液にする。注1) DNA 溶液の一部をアガロースゲル電気泳動し、切断の程度やおおよそのDNA

濃度を確認する。

① 脱リン酸化しない場合ベクターの 5′末端にはリン酸が付加しているため、このまま

ライゲーション反応に使用するとセルフライゲーションの割合が多くなります。以下の 1)②のように、リン酸化インサートDNAを用意して、ベクターは脱リン酸化させてセルフライゲーションを減らす方法がありますが、操作が煩雑になるため、あえてバックグラウンドの高さを承知して脱リン酸化をしない方法も実験目的によっては可能です。

② 脱リン酸化する場合Alkaline Phosphatase注 2)で脱リン酸化反応を行います。

平滑末端DNA(~ 10 µg) ~ 44 µl注 3)

10 × AP Buff er 5 µlAlkaline Phosphatase 1 ~ 2 µlTotal 50 µl 50℃で 30~ 60分間反応

脱リン酸化反応液 50 µl注 4)

ddH2O 49 µl0.5 M EDTA(pH 8.0) 1 µl(終濃度 5 mM)

65℃で 30分間または 75℃で 10分間加熱

室温に戻してから、フェノール /クロロホルム /イソアミルアルコール抽出を2回クロロホルム抽出を1回エタノール沈殿後、TE(pH 8.0)で溶解し~ 100 µg/mlのDNA溶液にする。注5)

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3) 平滑末端ライゲーション Blunting-Convenience Kit または Ligation-Convenience Kit の

2 × Ligation Mix を使用します。2× Ligation Mix は、T4 DNA Ligase、ATP、DTT などを含むプレミックスタイプのライゲーション用試薬です。

① DNA溶液の調製(モル比の検討)ライゲーション反応液に持ち込むDNA溶液の、ベクターとイ

ンサートのモル比はライゲーション効率に大きく影響します。以下は、ニッポンジーンで様々な長さのインサートDNAをライゲーション、形質転換した結果、下記の特定の条件で最も良い結果が得られたモル比を示した表です。<平滑末端>インサート長 200 bp 600 bp 1,000 bp 3,000 bpベクター 1 1 1 1インサート 5 5 2~10 0.5~2

ベクター:SmaⅠで切断したpUC19 DNA(0.03 pmol)インサート:SmaⅠで切断したインサートDNA(0.015 pmol, 0.03 pmol, 0.06 pmol, 0.15 pmol, 0.3 pmol)ライゲーション反応:16℃、5分間

二本鎖DNAの重量とモル数の簡易換算  pmol = µg ÷ bp × 1,515  µg = pmol × bp × 0.00066

例)  pUC19 DNA のサイズは 2,686 bp なので、0.03 pmol のDNA重量は 53 ng に相当します。

② ライゲーション反応インサートDNADNAベクター        ddH2O to 10 µl2 × Ligation Mix 10 µlTotal 20 µl 16℃で 5~ 30分間反応

氷上に反応液を置いて、そのまま形質転換に使用

4) 形質転換 2 × Ligation Mix で反応させた溶液は、そのまま形質転換に使

用できます。形質転換に用いる反応液の量はコンピテントセルの10%以下にして下さい。反応液の量が 10%以上になる場合は、ライゲーション反応後、エタノール沈殿によってDNA溶液を濃縮してからご利用下さい。また、ニッポンジーンの ECOS Competent E.coli を用いると

高速6分間プロトコールが利用できます(プロトコールは p.158参照)。ECOS Competent E.coli を使用する場合、反応液の量はコンピテントセルの 5%以下にして下さい。また、6分間プロトコールは薬剤にアンピシリンを使用した場合にのみ有効です。

5) コロニー PCR ここでは、M13系ベクター(pUC19 DNAなど)のインサート

チェックにGene RED PCR Mix(p.62 参照)と 2×M13 Primer Mix(Code No. 312-07651)を使用したコロニーPCRの使用例を紹介します。

必要本数分のGene RED PCR Mix を 1.5 ml容チューブに添加し、等量の2×M13 Primer Mixを加え軽くピペッティングかタッピングで混合し、50 µlずつPCRチューブに分注

Gene RED PCR Mix 25 µl2 ×M13 Primer Mix 25 µlTotal 50 µl 爪楊枝またはチップでコロニーを軽く突き、反応液中で懸濁(コロニーは多量に持ち込まない)

直ちに PCRを行う 94℃ 3 分間 94℃ 20 秒間 55℃ 20 秒間 25 cycles           72℃ X 秒間注7)

PCR 後、各反応液の 5~ 10 µlをそのままアガロースゲルにアプライし、電気泳動注8)

注 7) X 秒間=インサートDNA 1 kbp あたり 10秒間。1 kbp 以下の場合は 10秒間にします。

注 8) Gene RED PCR Mix には Loading Dye と Glycerol が既に含まれているため、PCR終了後の溶液をそのまま電気泳動に使用できます。

主なM13系ベクター(no insert)の PCR増幅産物サイズpUC18/19 121 bp pGEM-T easy 250 bp pT4Blue2 388 bp

pBluescript Ⅱ 247 bp pT7Blue 172 bp λ ZAP Ⅱ 244 bp

文   献1) Michael R. Green and Joseph Sambrook : “Molecular

Cloning”, A Laboratory Manual, 4th ed.(2012)

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Ligation(Ligation Pack)

1. Ligation Pack の内容1) 10 × Ligation Buff er (1 ml) 500 mmol/l Tris-HCI(pH 7.9) 100 mmol/l MgCl2 200 mmol/l DTT 10 mmol/l ATP2) 2 mg/ml BSA Solution(1 ml)3) 20 mmol/l Spermidine(100 µl)4) 20 mmol/l Hexamine Cobalt Chloride(HCC)(100 µl)5) H2O(1 ml × 2 本)6) Enzyme Solution〔T4 DNA Ligase(300 units/µl)100 µl〕

2. ライゲーション反応のてびきある遺伝子をクローニングする際、全ての過程で高効率を得る

にはある程度経験を積む必要がある。実験には、調製したベクターをクローニングしたいDNA断片とどのような比で混合したらよいかなど試行錯誤的な要素が多い。このような場合、Revie, D2)

らの報告は大変参考になる。

3. Ligation Pack の使用方法反応の 1回分は、50 µlの体積で Enzyme Solution(T4 DNA

Ligase)を 1 µl 加える系を想定している。これらは通常、平滑末端ライゲーションが行える条件である。反応容量や、加えるEnzyme Solution の量は適宜変更することができる。Enzyme Solution は、Ligation Pack 専用に調製してある。

粘着末端ライゲーション 12 ~ 16℃で 30 分~ 16 時間反応する。高温(~ 37℃)では

粘着末端のアニーリングが不十分となり、低温(~ 4℃)では T4 DNA Ligase の活性を低下させる結果となる。通常、スペルミジンや塩化ヘキサアンミンコバルトを入れる必要はないが、塩化ヘキサアンミンコバルトがライゲーション効率を 5倍程度促進するという報告もある 3)。

平滑末端ライゲーション 粘着末端ライゲーションと異なりアニーリングさせる必要はな

いので、16~ 26℃などで反応させる。ただし、粘着末端ライゲーションに必要な酵素量の 10 ~ 100 倍が必要である。Ligation PackのEnzyme Solutionは、1 µlで通常の平滑末端ライゲーションが行えるように調製してある。平滑末端ライゲーションは、スペルミジンや塩化ヘキサアンミ

ンコバルト 1)を加えると効率が促進される。これらの存在は、制限酵素反応を阻害しないので、例えばリンカーライゲーションの

場合、ライゲーション反応後、T4 DNA リガーゼを熱失活させ、そのまま引き続いて制限酵素反応が行える。

その他の注意事項 ① T4 DNA Ligase の反応は、NaCl 150 mmol/l以上の濃度で

阻害されるので、DNA溶液の塩濃度が高い場合は注意が必要です。

② BSAは、最終濃度 50~ 250 µg/mlが適当です。

4. Ligation Pack の反応例通常行われる条件を例としてあげた。特に効率が問題となる

場合は、「2. ライゲーション反応のてびき」および「3. Ligation Pack の使用方法」を参考にしてDNA濃度、反応温度の検討が必要である。

ベクターDNAへのサブクローニング ① ベクターDNA(pUC, pBR など)を適当な制限酵素で切断、脱

りん酸化し、除タンパク質後、TEバッファーに溶解する。② クローニングしたいDNA 断片を精製し、TEバッファーに溶

解する。③ ライゲーション反応を行う。

a)例えば粘着末端ライゲーションの場合ベクターDNA 0.05 ~ 0.5 µgDNA断片10× Ligation Buff er 2 µl2 mg/ml BSA Solution 2.5 µlEnzyme Solution 0.5 ~ 1 µlddH2O up to 20 µl16℃で 30分~ 16時間反応させる。

参 考脱りん酸化していない粘着末端ベクターDNA と 1.5 kbp の

DNA 断片を用いた Ligation のモル比による transformation の結果を示す。

ベクターDNA:pUC19/EcoR Ⅰ(脱りん酸化処理なし)DNA断片:1.5 kbp

ベクターDNA 50 ngDNA断片(1.5 kbp)vector のモル比 0.1,0.3,1,3,10,20,5010 × Ligation Buff er 2 µl2 mg/ml BSA Solution 2.5 µlEnzyme Solution 0.5 µlddH2O up to 20 µl16℃で 30分間または 16時間反応させる。

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ベクターDNA 50 ng の時、DNA 断片はベクターDNAのモル比で 10 倍以上加えないと白コロニー%が非常に低い。Ligation時間を比較すると全体のコロニー数や、白コロニー%などを比べても何ら変わりはない。このため 30分間で既に Ligation 反応がかなり進んでおり、Ligation 時間としては 30分間で十分であると思われる。

b)例えば平滑末端ライゲーションの場合ベクターDNA 0.05 ~ 0.5 µgDNA断片10× Ligation Buff er 2 µl2 mg/ml BSA Solution 2.5 µl20 mmol/l Spermidine 1 µlEnzyme Solution 1 ~ 2 µlddH2O up to 20 µl16℃で 30分~ 16時間反応させる。

リンカーライゲーション この反応は、リンカーDNAを DNA断片の平滑末端にライゲー

ションさせることを目的としている。一般にリンカーDNAは、DNA断片の 10~ 20倍程度のモル比で加え、以下のような反応系(10~ 20 µl)を用いる。

DNA断片リンカーDNA10 × Ligation Buff er 2 µl2 mg/ml BSA Solution 1 µl20 mmol/l Spermidine 1 µl20 mmol/l Hexamine Cobalt Chloride 1 µlEnzyme Solution 1 ~ 2 µlddH2O up to 20 µl16℃で 30分~ 16時間反応させる。

トラブルシューティング

トラブル 予想される原因 対   策

全くライゲーションしないATPが反応系に含まれていない 添付の反応バッファーを用いるか、新たにATPを添加して下さい。

DNA断片の末端の不一致末端を確認して下さい。特に認識配列Py、Pu、Nを含む制限酵素断片の場合には要注意です。

ライゲーション効率が低い

短いDNA断片の混入制限酵素反応で生ずる短いDNA断片をゲル電気泳動などで除去して下さい。

PCR断片PCR断片は、末端が不揃いなので結合しにくいため、極端に効率が低い場合にはDNAポリメラーゼなどで末端を揃えて下さい。

高塩濃度T4 DNA Ligase は高塩濃度で反応阻害を受けるので、エタノール沈殿などで余分な塩を除いて下さい。

組換えプラスミドとトランスフォーメーション効率が低い

PEGの混入PEGはトランスフォーメーションを阻害するので、エタノール沈殿などで除去して下さい。

ベクターの脱りん酸化が不十分 セルフライゲーションの有無をあらかじめ確認して下さい。

文   献1) Rusche, J. R. et al. : Nucl. Acids Res., 13, 1997(1985)2) Revie, D. et al. : Nucl. Acids Res., 16, 10301(1988)3) Berger, S. L. and Kimmel, A. R. : Methods in Enzymol., 152, 343(1987)4) Sambrook, J. et. al.: “ Molecular Cloning”, A Laboratory Manual, 2nd ed.(1989)

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Transformation/Transduction

Ⅰ . Transformation of E. coli (Transformation Kit)1. Transformation Kit の原理1970 年 Mandel と Higa は、塩化カルシウムで処理した大腸

菌がバクテリオファージλのDNAを取り込むことを発見した 1)。これが大腸菌の形質転換の最初の例である。1973 年に Choen, Chang, Hsu らにより、この方法はプラスミドDNAにおいても有効であることが示された 2)。以来大腸菌の形質転換は、遺伝子工学研究の基本的かつ重要な手段となり、さまざまな改良が試みられた。塩化カルシウム処理の他、一価カチオン 3)、DMSO3)、DTT3)、PEG4)などを用いてコンピテント大腸菌を調製する方法が報告されている。これらのプロトコールに従えば、1µg のプラスミドあたり 107 ~ 109 のトランスフォーマントが得られる。しかしながら実験の度にコンピテント大腸菌を調製すると手間がかかるうえに、常に効率の高いものが調製できるとは限らない。また、仮に高いコンピテント大腸菌が得られても、それを長期にわたり安定に保存することは容易ではない。

2. Transformation Kit の内容Transformation Kit は、大腸菌のプラスミド形質転換を効

率よく行うためのキットである。高いコンピテンシーを持つCompetent E. coli とトランスフォーメーションを促進させる特殊培地Hi-Competence Broth との組み合わせで高い形質転換効率を得ることができる。

宿主にE. coli HB101 を用いたTransformation Kit HB101(Code No. 316-01331)、宿主にE. coli JM109を用いたTransformation Kit JM109(Code No. 319-01321)、宿主にE. coli DH5 を用いた Transformation Kit DH5(Code No. 313-01721)が利用できる。それぞれの形質転換効率を表 1 に示す。

表 1 Transformation Kit を使用したときの形質転換効率Transformation Kit HB101 > 5× 107 cfu/µg pBR322Transformation Kit JM109 > 1× 108 cfu/µg pBR322Transformation Kit DH5 > 5× 108 cfu/µg pBR322

Hi-Competence Broth(Code No.319-01343)Hi-Competence Brothには、外来DNAを取り込んだCompetent

E. coli の回復や成育を促進する作用がある。Competent E. coliのプレパレーションには多価のカチオンが含まれているが、これらのカチオンは本来大腸菌の成長を阻害する。Hi-Competence Broth には、これを取り除く作用があり、外来 DNA を取り込んだ大腸菌の成育を促進する物質を含むため、Hi-Competence Broth を添加することによって大腸菌の形質転換効率が数倍から数百倍に上昇する。Hi-Competence Broth を用いた実験例を表 2 に示す。

表 2 Hi-Competence Broth を用いた実験例実験No.

宿  主 DNALB Broth を使用したときの形質転換効率

Hi-Competence Broth を使用したときの形質転換効率

1 E. coli DH5 pBR322 1.6 × 106 cfu/µg pBR322 2.4 × 107 cfu/µg pBR3222 E. coli JM109 pBR322 2.3 × 106 cfu/µg pBR322 1.5 × 107 cfu/µg pBR3223 E. coli JM109 Ligation Mixture* ~1× 103 cfu/µg pUC19 ~1× 106 cfu/µg pUC19

* pUC-4K(カナマイシン耐性遺伝子;Kmr を EcoRⅠで切り出せる)をEcoRⅠで切断し、アガロースゲル電気泳動でKmr フラグメントを分離、回収、精製し、この0.3 µgをEcoRⅠおよびCIPで処理した0.05 µgの pUC19とライゲーションした後、JM109 に形質転換し、Kmr、Ampr コロニーを得た。

3. Transformation Kit の実際注 1) この時加えるプラスミドDNAの容量は約 10 µlまでにする。10 µl以上加えても

よいが、効率が下がる場合がある。注 2) 使用直前に融解し、よく振って一様にした後コンピテントセルの 4倍量を分注し

てあらかじめ 37℃で保温しておく。SOC培地も使用できる。注 3) 試験管は、なるべく径の太いものを使用した方がHi-Competence Broth の効果が

高まる。注 4) 必要であればHi-Competence Broth で希釈する。

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トラブルシューティングト ラ ブ ル 予想される原因 対     策

高いトランスフォーメーション効率が得られない

Competent E. coli が温度上昇により溶解 他のCompetent E. coliを用意して下さい。導入組換えプラスミドの純度が低い 組換えプラスミドを再度精製して下さい。

ライゲーション反応が不十分

ATPが反応系に含まれていない ATPを添加して下さい。

DNA断片の末端の不一致末端を確認して下さい。特に認識配列にPy、Pu、Nを含む制限酵素断片の場合には要注意です。

短いDNA断片の混入制限酵素反応で生ずる短いDNA断片をゲル電気泳動などで除去して下さい。

PCR断片PCR断片は、末端が不ぞろいなので結合しにくい。極端に効率が低い場合にはDNA Polymerase などで末端を揃えて下さい。

高塩濃度T4 DNA Ligase は高塩濃度で反応阻害を受けるのでエタノール沈殿などで余分な塩を除いて下さい。

PEGの混入PEGはトランスフォーメーションを阻害するのでエタノール沈殿などで除去して下さい。

ベクターの脱りん酸化が不十分セルフライゲーションの有無をあらかじめ確認して下さい。

文  献1) Mandel, M. and Higa, A. : J. Mol. Biol., 53, 159(1970)2) Cohen, S. N., Chang, A. C. Y. and Hsu, L. : Proc. Natl. Acas. Sci. USA, 69, 2110(1973)3) Hanahan, D. : J. Mol. Biol., 166, 557(1983)4) Chung, C. T., Niemela, S. L. and Miller, R. H. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 2172(1989)5) Hara, N. et al. : Nucl. acids Res., 16, 8727(1988)

4. Electroporation の原理エレクトロポレーション法によるプラスミドの大腸菌への導入

は、限られた量の臓器、組織からクローンサイズの大きいプラスミド cDNAライブラリーを作製するために研究されてきた技術である。電気パルスにより細胞がDNAを取り込む機構の詳細は不明であるが、おそらく高い電場強度により細胞膜にプラスミドDNAが通過する一過性の小孔ができるためと考えられている。

5. Electroporation の実際

注 1) p.160参照。HB101(Code No. 317-02581)、JM109(Code No. 314-02591)注 2) ジーンパルサーキュベット 0.1cm(Bio‐Rad 社製)注 3) ジーンパルサー(Bio‐Rad 社製)

文  献Bottger, E. C. : Bio Techniques, 6, 878(1988)

Ⅱ . In vitro Packaging (In vitro Packaging Kit LAMBDA INN)1. In vitro Packaging Kit LAMBDA INN の原理1975年にBeckerとGoldによって初めて発表されたλファージ

DNA の in vitro Packaging は、以来改良を重ねられ、108 pfu/µgλDNAを越えるパッケージング効率を示すまでとなった。(用いられたλファージDNA分子の 0.05 ~ 0.5%の分子がファージ粒子として得られる計算になる)パッケージングは大まかに、①外殻前駆体形成、② cos site

で連結して concatemer を形成しているλファージDNAの外殻前駆体への挿入、③ cos site での切断、④ファージ粒子の成熟という課程で進む。In vitro Packaging Kit LAMBDA INN に含まれる Packaging

Extract は、1985 年に Rorsenberg らが発表した、1種類の溶原菌(cos site を持たないλファージDNAが溶原化している)を用いて extract を調製する方法を改良して調製しており、より簡便にパッケージングを行うことが可能である。

2. In vitro Packaging Kit LAMBDA INNの実際注1)

Packaging の反応 ① Packaging Extract を- 80℃のフリーザーから氷中に移し、

速やかに溶かす。② DNA溶液(~ 1 µg/µl)を 1~ 6 µl 加える。③ 室温(約 22℃)にて 1~ 2 時間放置する。④ ファージバッファー 注2)を 1 ml 加え、穏やかに混合する。 (数日 4℃に保存する場合にはクロロホルムを一滴加える)

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宿主菌への導入 ① 宿主菌の調製 ⓐ E. coli VCS257の単一コロニーを2 mlのLB broth(20%

マルトースを70 µl含む)に植菌し、37℃にて一晩培養する。 ⓑ 菌液 1 mlを 1.5 mlのチューブに取り、上清を残さぬよ

うに取り除き、10 mmol/l MgCl2(またはMgSO4)0.5 mlに懸濁する。

② パッケージングの反応後のファージ液を軽く遠心して残査を落とし、上清を 105 希釈した液から 100 µl取り、調製した菌液 100 µlと混合し、室温(約 22℃)にて 15分間放置する。

③ 48℃に保温しておいた LB top agar注 3)3 mlと速やかに混合し、すでに固化している LB-plate に重層する。

注1) 「2. In vitro Packaging Kit LAMBDA INN の実際」に示したプロトコールは、In vitro Packaging Kit LAMBDA INN に含まれているλファージDNAを用いた対照実験の手順である。組換えDNAのパッケージング効率が、λファージDNAのパッケージング効率より低下すると考えられる場合には、DNA溶液の濃度を高くするなどの変更が必要となる。

注 2) Phage Buff er NaCl 2.9 g MgSO4

.7H2O 1 g 1 mol/l Tris-HCl(pH 7.5) 25 ml 2% gelatin 2.5 ml以上をH2Oにて 500 mlとし、オートクレーブ処理し、4℃にて保存する。

注 3) LB top agar Tryptone 10 g Yeast Extract 5 g NaCl 5 g agar 7.5 g以上をH2Oにて 1 lとし、オートクレーブ処理し、4℃にて保存する。

備考) Packaging Extract を調製する際に混入する溶原化λファージ DNA が、目的DNAのパッケージング反応時にパッケージングされ、プラークが形成されることはほとんどない。

図 1 Packaging 反応における温度の影響

図 3 Packaging 反応におけるλDNA量とプラーク数の関係

LAMBDA INN

図 2 Packaging 反応における Incubation time の影響

トラブルシューティングト ラ ブ ル 予想される原因 対     策

高いパッケージング効率が得られない

Packaging Extract が温度上昇により溶解した 他のPackaging Extract を用意して下さい。ライゲーション産物が、挿入DNAとベクターが交互に線状に連なったコンカテマーを形成していない

挿入DNA とベクターのモル比などのライゲーションの条件を再検討して下さい。

パッケージングに用いたDNAが高度にメチル化されている

メチル化されていないDNAを用いて下さい。

文  献1) Sambrook, J. et al.“ Molecular Cloning”, A Laboratory Manual, 2nd ed. 2. 3(1989)2) Rorsenberg, S. M. et al. : Gene, 39, 165(1985)3) Rorsenberg, S. M. et al. : Gene, 39, 313(1987)

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Agarose for Electrophoresis

1. アガロースの使用例1)DNA断片の分離 アガロースゲルを用いた電気泳動については、多くの参考書に

詳しく説明されている。ここでは、ニッポンジーンで行っている例を示した。

① 5 × TBE(Code No. 318-90041)を 5倍希釈した TBEバッファー(89 mmol/l Tris-borate, 2 mmol/l EDTA)に目的の濃度になるようアガロースを加えて分散させる。この場合、バッファーを撹拌しながらアガロースを少しずつ加えると、きれいに分散する。特にアガロースHの場合は、アガロースを一度に加えると固まりができて、溶けにくくなることがある。

② 湯浴、ヒーター、オートクレーブ(120℃、1~ 2分間)、電子レンジなどでアガロースを完全に溶解する。

③ 50 ~ 60℃ぐらいまで室温に放置した後、コームをセットしたゲルトレイに注ぐ。あらかじめゲルトレイのすきまは、温めたパスツールピペットなどを用いて同じアガロースでシールしておくとよい。

④ アガロースが十分固化したら、ゲルの表面が浸る程度に TBEバッファーを注ぎ静かにコームを抜く。コームを乱暴に抜いたりすると、ウェルが壊れてきれいな泳動パターンが得られないので注意が必要である。

⑤ DNAサンプルに1/10量のローディング溶液(Loading Buff er, Code No. 313-90111, 50% Glycerol, 0.02% Bromophenol Blue, 0.02% Xylene Cyanol, 1% SDS を使用できる、ただし SDSは、酵素反応を終了させる場合以外はなくてもよい)を加えて混合し、ウェルに静かに注入する。この時、必ずDNA分子量マー力ーのレーンも設ける。

Marker 1, 2, 3, 6 のようなλDNAの制限酵素断片を用いる場合は、ウェルに注入する直前に65℃で1~2分間加熱すると、λDNAの両端の粘着末端どうしのアニーリングが分かれるため、きれいな泳動パターンが得られる。(図 1)

⑥ 定電圧 50~ 100 V(~ 5 V/cm)で 2~ 3 時間、泳動する。⑦ 0.5 µg/ml の臭化エチジウム溶液(EtBr Solution, Code No.

315-90051)に泳動後のゲルを浸し、15~ 20 分間放置して染色する。もし、大ざっぱにパターンを確認するだけであれば、最初からゲルに 0.5 µg/mlになるように臭化エチジウムを加えておくと便利である。なお、臭化エチジウムは発がん性物質であるため、取り扱いの際は直接皮膚に触れないように手袋などを使用する。

⑧ 染色が終わり次第ゲルを取り出し、UVランプまたはトランスイルミネーター(250~ 370 nm、短波長側は長時間の照射でDNAを傷つけるので注意)にて暗所でDNAパターンを観察する。写真を撮影する場合は赤色のフィルターを用いる。

2)DNA断片の抽出 アガロースゲルからDNA を抽出する方法については種々の方

法が報告されているが、いずれの場合でも、アガロース中の不純物(特に硫酸化合物)がDNAと共に回収されるために引き続いて行われる酵素反応がうまくいかないことがよくある。従って、一般に抽出DNA断片を効率よくベクターに結合させたりラベルしたりする場合には、抽出DNAをゲルろ過(例えば SephadexTM G-50)などにより精製することを奨める。しかしながら、反応効率がさほど問題にならないようなときには、アガロースより抽出されたDNAをそのまま用いる。この場合、アガロースの純度が高いものほど反応効率も上がる。また、大きなDNA断片をゲルから抽出する場合に、β-Agarase を用いて抽出する(プロトコール 1、3 p.451、452 参照)と、回収率も高く、DNA切断もあまり受けずにすむ。ここでは、Agarose L を用いて、DNAを抽出し、抽出DNAの

酵素反応性および大腸菌の形質転換への影響について示した。

① 1)の④までの手順で 1% ゲルを作製する。② 3 µgの pBR322を30 µl中で10 units のHindⅢにより、37℃、

20時間反応させ切断し、これに3 µlの反応停止液(1)の⑤のローディング溶液)を加えて混合し、この11 µlをウェルに静かに注入する。

③ プロトコール集のプロトコール 3(p.452)にて、DNAを抽出する。

④ 抽出 DNA の一部を、濃度既知の pBR322/Hind Ⅲの種々の希釈液と共に電気泳動後、0.5 µg/mlの臭化エチジウム溶液で染色し、その輝度を比較しておおよその濃度を測定する。

以下に、そのようにして抽出したDNAについて、 a) 制限酵素による切断 b) T4 DNA Ligase による再結合 c) 再結合DNAによる大腸菌の形質転換を行った結果を示した。 a)制限酵素による切断抽出DNA約 0.1 µgを 1~ 4 units の制限酵素を用いて、37℃、

20分間反応させたものである。

図 2 抽出DNA断片の制限酵素による切断

Lane 1:加熱前Lane 2:加熱後

図 1  Marker 1(λ/Hind Ⅲ digest)の 65℃加熱処理の影響

Lane 1:pBR322/Hind ⅢLane 2: ゲルより抽出した pBR322/

Hind Ⅲを Ava Ⅱで切断Lane 3: ゲルより抽出した pBR322/

Hind Ⅲを Hinc Ⅱで切断Lane 4: ゲルより抽出した pBR322/

Hind Ⅲを Pst Ⅰで切断

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b)T4 DNA Ligase による再結合 抽出 DNA約 0.1 µg を 20 units の T4 DNA Ligase を用いて、4℃、16時間反応させたものである。

図 3 抽出DNA断片の T4 DNA Ligase による再結合

c)再結合DNAによる大腸菌の形質転換 b)で再結合した pBR322 にて、E. coli JM109 を形質転換した結果は次の通りであった。1. pBR322 100%2. pBR322/Hind Ⅲ 6%3. 2. の pBR322/Hind Ⅲを再結合したもの 60%4. 抽出した pBR322/Hind Ⅲ 58% なお、Agarose S、HS、21 および XからDNAを抽出することもできる。抽出の方法はプロトコール集のプロトコール 1(p.451)を参照するとよい。

3)サザンブロッティング アガロースゲル電気泳動で分画したDNA断片を、直接ニトロ

セルロースなどのフィルターに移す、いわゆるサザンブロッティングは操作が簡単で、なおかつ分析が容易であることから、現在、広く利用されている。代表的なブロッティング方法を図 4に示した。

図 4 サザンブロッティング

 ここでは、アガロースHを用いてサザンブロッティングを行った例を示した。① 1)の⑥までの手順で、0.3%ゲルにて電気泳動を行う。② 0.5 µg/mlの臭化エチジウム溶液にゲルを浸し、15~ 20 分

間放置して染色し、長波長のUVを照射し、写真を撮影する。さらに、使用済のフィルムなどにDNAパターンをトレースしておくとオートラジオグラムとの比較に便利である。

③ ゲルを 0.2 mol/l HCl に浸し、室温で 20~ 30分間ゆっくり振とうすると、BPB(Bromophenol Blue)が黄色に変色する。大きなDNA断片はゲルから溶出されにくいため、0.2 mol/l HCl にて部分切断して断片を短くするわけである。従って、アガロース Sなどを用いて数 kbp 程度の短いDNA断片をブロッティングする場合には、処理時間を短くしたり省略しても大丈夫である。

④ 次にゲルを変性液(0.5 mol/l NaOH, 1.5 mol/l NaCl)に移し、室温で 20分間ゆっくり振とうした後、新しい変性液に交換し、さらに、20分間振とうする。この処理で二本鎖DNAが解離する。

⑤ 次にゲルを中和液(0.5 mol/l Tris-HCl, pH 7.5, 3 mol/l NaCl)に移し、室温で 20分間振とうする。さらに新しい中和液と交換して、20~ 30分間振とうする。

⑥ ブロッティング台に大きめに切ったろ紙を図4 のように置き、20 × SSC(3 mol/l NaCl, 0.3 mol/l Sodium citrate, Code No. 319-90015)にて湿らせる。ろ紙とブロッティング台の間の気泡は指でなでて追い出す。

⑦ ろ紙の上に、アガロースゲルを静かに気泡が入らないようにのせる。このとき、アガロースゲルは裏返して、電気泳動中下側だった面が上側にくるようにする。

⑧ メンブランをゲルの大きさに切り、水に一旦浸した後 2×SSC(20×SSCを 10 倍希釈したもの)に浸し、ゲルの上にのせる。指でなでてゲルとメンブランの間にある気泡を追い出す。

⑨ ゲルの大きさに切ったろ紙 2~ 3枚を 20×SSCに浸し、メンブランの上に重ねる。メンブランとろ紙の間に気泡が入った場合は指でなでて追い出す。

⑩ さらに 5~ 7枚の乾いたろ紙(ゲルの大きさに切ったもの)を重ね、その上にゲルの大きさに切ったぺーパータオルを 4~6 cm 積み重ねる。

⑪ ガラス板を置いて、適当な重さの重しをのせる(5 g/cm2)。⑫ バッファー槽に 20× SSC を加えて、一晩静置する。⑬ ブロッティングが終了したら、メンブランを注意深くはがし、

0.1~ 2× SSCにてアガロースを洗い落とした後、風乾する。⑭ メンブランは真空オーブン中で 80℃ にて 2時間処理した後、

ハイブリダイゼーションなどに供する。ナイロンメンブランの場合は乾熱処理のかわりにUVを 2~ 5分間照射するだけで、DNAがメンブランに固定されるので便利である。

図 5  マウス細胞の DNA 5 µg を EcoR Ⅰで消化後、0.7% Agarose S で電気泳動を行い、ニトロセルロースメンブランにブロッティングし、32P 標識した cDNA をプローブとして、ハイブリダイゼーションを行った。オートラジオグラフィーは4℃で一晩行った。

Lane 1 :pBR322Lane 2 :pBR322/Hind ⅢLane 3 : pBR322/Hind Ⅲをライゲー

ションしたものLane 4 : ゲルより抽出したpBR322/

Hind Ⅲをライゲーションしたもの

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4)パルスフィールド電気泳動 アガロースゲル電気泳動を利用したDNAの分離、抽出を基本と

する遺伝子工学的手法が、遺伝子の単離およびその構造あるいは発現の研究に、多大な知見を与えていることは周知の事実である。しかしその一方で、染色体レベルでのDNAの解析を行うにあ

たり、従来型のアガロースゲル電気泳動では数十~数千 kbp のDNAの分離は不可能であるという問題があった。1983 年に Schwartz らが発表したパルスフィールド電気泳動

法は、このDNA 研究の空白領域を埋める点で画期的であった。その後多くの研究者が数々の改良を加え、現在までに考案されているシステムはPFG、OFAGE、FIGE、CHEFなどがある。また、パルスフィールド電気泳動のサンプルである染色体

DNAを完全に調製することは容易ではない。巨大DNA分子は壊れやすく、それらを調製中にささいな物理的な力によって二本鎖が切断されてしまうからである。Schwartz と Contor はアガロースで菌体を包埋した状態で酵

素処理を行うことにより、染色体DNAの損傷を最小限に抑える方法を開発した。その他、マイクロビーズ法、溶液法といったサンプルの調製法もある。p.453 にニッポンジーンで行っている、Agarose GB を用いた

パルスフィールド電気泳動用染色体DNAの調製法を大腸菌および酵母の場合について示した。

プロトコール集プロトコール 1スタンダードタイプアガロースゲル注1)からの耐熱性アガラーゼを用いた抽出         

注 1) アガロースゲルブロックから数 kbp 以上のDNAを抽出する場合は、スタンダードタイプのアガロースは適しておりませんので、低融点タイプのアガロースをご使用下さい。

注 2) アガロースやバッファーの種類によって融点は異なる。完全にゲルが融解していることをピペッティングなどで確認をしてからThermostable β -Agarase(Code No. 311-07121)を添加する。

注 3) アガロース濃度が 3%より低い場合、酵素添加量を基本の 6 µl(6 units)より減らすことができる。

〈65℃で 5分間反応させる場合の酵素添加量〉 アガロース濃度 酵素添加量 1% AgaroseS 2 µl (2 units) 1.5% AgaroseS 3 µl (3 units) 2% AgaroseS 5 µl (5 units) 3% AgaroseS 6 µl (6 units)注 4) Thermostable β -Agarase は 50 ~ 65℃で最大活性を示す。反応時間は、ゲル

ブロックの量や容器の大きさ、酵素の添加量によって異なる。5分間ごとにタッピングして混合する。

注 5) 未分解ゲルが残ってしまった場合、遠心分離により除去する。必要であればアルコール沈殿・精製を行う。

注 6) 回収したDNA溶液を電気泳動する場合、酵素を熱処理(90℃、5分間)で失活させるか、フェノール・クロロホルム処理をしてから用いる。

1%~2%ゲル in TAE(40 mmol/l Tris-acetate, 1 mmol/l EDTA)

必要なDNAフラグメントをカッターナイフで切り出し、

200 µlのゲルブロックをチューブに入れる。

95℃で5~10分間保温し、ゲルを完全に融解する注2)

30~60秒ほど放置し、50~65℃まで冷ます

Thermostable β-Agarase(1 unit/µl) 2~5 µl 注3)

50~65℃で5~10分間保温し、アガロースを分解する注4)

氷上に静置し、再凝固しないことを確認する注5)

70%エタノール ~1 ml

12K×g, 4℃, 5分間

(必要に応じてアルコール沈殿・精製を行う)

0.1倍量 3 mol/l Sodium acetate

0.8~1倍量 イソプロパノール(または2.5倍量 エタノール)

混合し、室温で2~10分間静置

12K×g, 4℃, 10分間

DNA溶液注6)

DNA溶液

沈 殿

乾燥後、適当量のTEバッファーにて溶解

沈 殿

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                       プロトコール 3低融点タイプアガロースゲルからのアガラーゼを用いた抽出

注 1) 50 kbp 以上のDNA断片を回収する場合にはDNA 断片が分解しやすいので取り扱いに注意する。ボルテックスによる混合操作は避ける。

注 2) 完全に融解していないとβ-Agarase Ⅰ(Code No. 316-02551)の反応に影響するので、必ず確認する。

注 3) ここで加える塩は、塩化ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化リチウムでもよい。

                       プロトコール 2低融点タイプアガロースゲルからのフェノールを用いた抽出

注 1) 切り出すアガロースゲルブロックはできる限り小さくする。注 2) フェノール抽出の後、ジエチルエーテル抽出を 1~ 2回行うことによってアガ

ロースの残留物を取り除く効果が高まる。注 3) 酢酸ナトリウムのかわりに 0.5 倍量の 7.5 mol/l 酢酸アンモニウム(pH 7.5)を、

次いで 2.5 倍量のエタノールを加える方法が、夾雑物を除く効果が大きい。また、 適量の 2-butanol で濃縮した方が回収率も上がる。2-butanol はエーテルで除く。

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                             プロトコール 4 パルスフィールド電気泳動用染色体DNAの調製

〈大腸菌〉 〈酵母〉

〈制限酵素による切断〉 〈パルスフィールド電気泳動〉

注1 ) 0.125 mol/l EDTA 溶液(pH 7.5)で 1% Agarose GB を調製する。注 2 ) Solution A 10 mmol/l Tris-HCl(pH 7.5), 1 mol/l NaCl, 100 mmol/l EDTA(pH 7.5), 0.2% Sodium

Deoxycholate(Wako),0.5% Sodium N-Lauroyl Sarcosinate(Wako), 20 µg/ml RNase(DNase free), 1 mg/ml Lysozyme注 3 ) Solution B 100 mmol/l EDTA(pH 8.0), 1% Sodium N-Lauroyl Sarcosinate, 1 mg/ml Proteinase K

(Wako)注 4 ) Solution C 10 mmol/l Tris-HCl(pH 8.0), 1 mmol/l EDTA(pH 8.0), 1mmol/l Phenylmethylsulfonyl Fluoride(Wako)注 5 ) ゲルブロックはSolution D の中で 4℃保存する。およそ 1年間保存可能である。 Solution D:10 mmol/l Tris-HCl(pH 8.0), 100 mmol/l EDTA(pH 8.0)注 6 ) YPD培地 1% Yeast Extract(Difco), 2% Glucose, 2% Bacto Tryptone(Difco)注 7 ) LET buff er 0.5 mol/l EDTA(pH 8.0), 0.01 mol/l Tris-HCl(pH 7.5), 7.5% 2-Mercaptoethanol注 8 ) NDS buff er 0.5 mol/l EDTA(pH 8.0), 0.01 mol/l Tris-HCl(pH 7.5), 1% Sodium N-Lauroyl Sarcosinate, 1 mg/ml Proteinase K注 9 ) ゲルブロックは 0.05 mol/l EDTA 溶液(pH 8.0)の中で保存する。およそ 1年間保存可能

である。注 10) ニッポンジーンの制限酵素には 10倍濃度の酵素反応バッファーが添付されているのでこ

れを利用するとよい。

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1. ISOGENの原理ISOGEN および ISOGEN-LS は、ヒト、動物、植物および細

菌からの RNA抽出用試薬である。液相分離による方法を用いており、同一試料からDNAおよびタンパク質も単離することが可能である。一連の操作でRNA、DNAおよびタンパク質を単離できるので、貴重な試料を有効に分析する目的には最適である。また、操作が簡単なので試料数が多い場合にも便利である。ISOGEN および ISOGEN-LS は、フェノールとチオシアン酸

グアニジンを含む均一な液体であり、ISOGEN は組織や培養細胞などの試料に、ISOGEN-LSは血液などの容量が大きく、さら

RNA Extraction (ISOGEN, ISOGEN-LS)

に濃縮が面倒な液体試料に有効である。試料に ISOGENおよびISOGEN-LS を加えて溶解またはホモジナイゼーションした後、クロロホルムを加えて遠心分離するとホモジネートは水相、中間相および有機相の 3相に分離する。水相には RNAのみが存在し、DNAおよびタンパク質は中間相以下に存在する。したがって、まず水相を採取し、イソプロパノールを加え、RNAを沈殿させ、残った中間相と有機相にエタノールを加えてDNAを、さらに、イソプロパノールを加えてタンパク質を沈殿させることによりRNA、DNAおよびタンパク質を順次単離することができる。

ISOGENまたは、ISOGEN-LSホモジナイズ(または溶解)

試 料

クロロホルム

イソプロパノール

イソプロパノール

エタノール

上清 沈殿 洗浄

洗浄

沈殿

沈殿

洗浄

タンパク質

DNA

RNA水相

中間相

有機相

RNAを含む

DNAおよびタンパク質を含む

2. ISOGENの実際ISOGENおよび ISOGEN-LSは医薬用外劇物(フェノール製剤)

なので、取り扱いに注意する。使用の際には手袋や眼鏡を着用する。また、蒸気を吸入しないようにし、換気を十分に行う。もし、目に入ったり皮膚に付着した場合は大量の水で少なくとも15分間は洗い流し、医師の診断を受ける。

RNAの単離 ISOGEN および ISOGEN-LS を用いて RNA を単離すると約

1時間で無傷の RNA を高収率で単離することができる。得られた RNA は、DNA やタンパク質の混入がほとんどなく、そのまま DNase などの処理をしなくてもノーザン分析、ドットブロットハイブリダイゼーションなどに用いることができる。またISOGEN および ISOGEN-LS を用いると同一の試料から RNA、DNAおよびタンパク質を単離することにより、ノーザン分析をゲノムDNAあたりに標準化することができるので大変有効である。

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[プロトコール RNAの単離]下記の操作は、RNase のコンタミを防ぐとともに安全のために手袋を着用し、清潔な環境で行う。なお、クロロホルム、イソプロパノー

ルおよびエタノールは別に準備しなければならない。また、チューブは透明なポリプロピレン製を用いるとよい。

sample注1)

0.5 ml isopropanol(or 0.8 volume isopropanol)注5)

store for 5~10 min. at room temperature注8)

12K × g for 10 min. at 4℃

aqueous phase注7)

(for ISOGEN 50~100 mg tissue, 10 cm2 of culture plate, 5~10×106 cells)(for ISOGEN-LS 0.25 ml liquid sample)1 ml ISOGEN or 0.75 ml ISOGEN-LSlysis or homogenization注2)

store for 5 min. at room temperature注3)

0.2 ml chloroform注4)

shake vigorously for 15 sec.store for 2~3 min. at room temperature

12K × g for 15 min. at 4℃注5)

at least 1 ml 70% ethanolvortex注10)

7.5K × g for 5 min. at 4℃注11)

precipitate注9)

precipitate

total RNA solution注7)注13)

for subsequent isolation of DNA and protein

dry briefly注12)

ddH2O, TE(pH 8.0)or 0.5% SDSdissolve

interphase and organic phase注6)

注 1 ) 1.5 mlプラスチックチューブを用いて処理する場合、組織や培養細胞など、試料の体積が 100 µl 以下のものには ISOGEN、血液など、試料の体積が大きい(100 µlを越える)ものには ISOGEN-LS が有効である。試料の体積が大きくても濃縮により 100 µl以下にできる場合には ISOGENを使用することができる。培養細胞などの試料の場合、培地などの水分は可能な限り除去する。ISOGEN-LS を用いて液体試料を処理する場合、試料の容量が 0.25 ml以下の場合には、水を加えて 0.25 mlにする。ISOGEN-LS と試料の容量比が常に 3 : 1 になるようにする。血液や血清のように多くの成分が含まれる液体試料は水で 2倍に希釈してから、ISOGEN-LS を加える。ヘパリンが逆転写酵素活性を阻害するため、ヘパリン採血した試料より抽出した total RNA を RT-PCRや PCRに用いるとうまくいかないことがある。EDTAは逆転写酵素活性を阻害しない。

注 2 ) 組織の場合は、ガラス・テフロンあるいはポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイゼーションする。また、培養皿に付着して増殖した細胞の場合には 10 cm2 あたり1mlの ISOGENを直接加えてピペットで吸出して溶解する。細胞懸濁液の場合には遠心分離して沈殿させた後、5~ 10× 106 cells あたり 1 mlの ISOGENを加えて同様にピペットで吸出して溶解する。筋、脂肪細胞、植物のようにタンパク質、脂質、糖などを多く含む試料の場合は、ホモジナイゼーション後に一度遠心分離(12 K × g, 4℃ , 10分間)して、上清を以下の操作に用いる。この時脂肪は最上層に位置することに注意する。

注 3 ) この状態で- 70℃で少なくとも 1か月は保存できる。注 4 ) イソアミルアルコールの添加されたクロロホルムは使用できない。注 5 ) ホモジネートは、遠心分離により下層の有機相、中間相および上層の水相に分かれる。RNAは水相に含まれるが、この水相にはDNAやタンパク質はほとんど含まれない。

この時の水相の体積は、加えた ISOGENの体積の約 60%(ISOGEN-LS の場合は 70%)である。 もし 60%より少ない場合には、この後の操作で添加する isopropanol 量は分取した水相の体積に対して 0.8 倍量を添加する。30%以下の場合は組織量を減らすなどして、再

度抽出し直すことを奨める。注 6 ) ここで得られた中間相と有機相はそれぞれDNAおよびタンパク質を単離するために 4℃にて保存する。ただし、中間相や有機相中に多量の不溶物(カス状、繊維状のものなど)

がある場合、DNAおよびタンパク質の単離には適さない。注 7 ) DNA やタンパク質との夾雑を少なくすることにより RNAの回収率を上げるため、有機相や中間相ができるだけ混入しないように、水相を新しいチューブに移して以下の操

作を行う。ゲノムDNAのコンタミが予想される場合には新しいチューブに移した水相に等量のクロロホルムを加え、再抽出を行う。ポリサッカライド、プロテオグリカン、グリコーゲンなどの夾雑物が含まれることが予想される場合、あるいは最終的に得られた RNAに含まれていることが確認された場合には、High-Salt Precipitation Solution(1.2 mol/l NaCl, 0.8 mol/l Sodium citrate, pH 未調整 , Code No. 313-06341)とイソプロパノールをそれぞれ水相の 1/2 容量加えてイソプロパノール沈殿を行い、10 K × g, 15 分間遠心分離してRNAのみを沈殿させると効果的である。この後 70%エタノールによる洗浄を行う。

RNA量が 10 µg 以下の場合は、ホモジナイゼーション後に 3 µlのEthachinmate を加えるか、水相にEthachinmate を加えることにより、RNAの収率を上げることができる。注 8 ) この状態で、通常RNAの沈殿は見えない。注 9 ) RNAの沈殿は、ゲル様のペレットとしてチューブの内壁と底に付着する。注 10) この状態で 4℃で少なくとも 1週間、- 20℃であれば 1年間保存することができる。注 11) もし RNAの沈殿が内壁から流れ出しそうな状態の場合は、エタノール洗浄後の遠心分離は 12 K × gにて行う。注 12) RNA の沈殿は、風乾または 5~ 10分間真空乾燥する。真空遠心機を用いて乾燥してはいけない。沈殿を完全に乾燥してしまうと溶解性が著しく減少する。溶解性が減少し

たRNAの OD260/OD280 は、1.6 以下なので目安となる。得られたRNAは、ddH2O、TE(pH 8.0)または 0.5% SDSにピペットチップで吸出して溶解し、55~ 60℃にて 10~ 15分間保温するとよい。溶解する蒸留水、0.5% SDSは、あらかじめジエチルピロカーボネート(DEPC)処理によってRNase フリーにしておくか、RNase フリーグレードの市販品を用いる。

注 13) 得られた RNAをアガロースゲル電気泳動すると、主に約 2 kb と 5 kb のリボソームRNAのバンドの他に 0.1 ~ 0.3 kb の低分子 RNAと、7~ 15 kb の高分子 RNAを観察することができる。得られたRNAの OD260/OD280 は 1.6 ~ 1.8 である。OD260/OD280 を測定する際には、pH> 7.5 の水もしくはバッファーに溶解して測定する。

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収量の目安は次の通りである。試     料 収     量

組織マウス

liverspleenkidneyskeletal musclesbrainplacenta

6~10 µg RNA/mg tissue6~10 µg RNA/mg tissue3~4 µg RNA/mg tissue1~1.5 µg RNA/mg tissue1~1.5 µg RNA/mg tissue1~4 µg RNA/mg tissue4~8 µg RNA/1 ~ 5 mg tissueラット下垂体またはヒト肝針生検材料

植物 Arabidopsis または Tobacco 150 ~ 200 µg/0.5 ~ 1 g fresh weight tissue

培養細胞epithelial cellsfi broblasts

8~15 µg RNA/106 cells5~7 µg RNA/106 cells

血液 ヒトまたは動物 7~15 µg RNA/ml blood

トラブルシューティング

ト ラ ブ ル 対     策

低収量・ISOGENまたは ISOGEN-LS 添加後の溶解(またはホモジナイゼーション)を十分に行って下さい。・得られたRNA沈殿を十分溶解して下さい。

OD260/OD280 < 1.65

・ 試料に加える ISOGEN または ISOGEN-LS 量を増やして下さい。この場合、後の操作は加えたISOGENまたは ISOGEN-LS 量に比例して増やして下さい。

・ ISOGENまたは ISOGEN-LS による溶解(またはホモジナイゼーション)後、室温で 5分間置かず、ただちにクロロホルムを加えて下さい。

・水相を採取する際、フェノール相を絶対に混入させないで下さい。・得られたRNA沈殿を十分溶解して下さい。・ 試料にクロロホルムを加える前に 12K× gで 5分間遠心し、沈殿物を除去した後にクロロホルムを加え、後のプロトコールに従って下さい。

・OD260/OD280 を測定する際には、pH> 7.5 の水もしくはバッファーに溶解して測定して下さい。

RNAの分解

・新鮮な試料を用いて下さい。・用いる溶液や容器は、加熱処理を十分行って下さい。・ アガロースゲル電気泳動の際、用いるホルムアルデヒドの pHが、中性であることを確認して下さい。 (pH 3.5 以下だと分解が起こります)

DNAのコンタミ

・ 試料に加える ISOGEN または ISOGEN-LS 量を増やして下さい。この場合、後の操作は、加えたISOGENまたは、ISOGEN-LS 量に比例して増やして下さい。

・ エタノールやDMSOなどの有機溶媒や強緩衝液やアルカリ性溶液を含む試料を用いないで下さい。・ コンタミしたDNAを除去するには、ISOGENまたは ISOGEN-LS を加えてもう一度操作を繰り返して下さい。または、等量のクロロホルムを用いて再抽出を行って下さい。

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1. ISOGENⅡの原理ISOGEN Ⅱ(アイソジェンⅡ)は、動物組織および培養細胞

からの total RNA および small RNA 抽出用試薬である。本品は、フェノールとグアニジンを含む均一な液体であり、細

胞成分との相互作用により、シングルステップで RNAを単離できる。試料に ISOGENⅡを加えて溶解またはホモジナイズした後、水を添加すると、DNA、タンパク質、ポリサッカライドなどは沈殿(不溶化)するため、遠心分離によって除去できる(下図)。上清をエタノール沈殿、洗浄、溶解すると、高純度なRNAが単離できる。

2. 使用上の注意ISOGEN Ⅱは医薬用外劇物(フェノール製剤)なので、取り

扱いには注意する。使用の際には適切な手袋や眼鏡などを着用する。また、蒸気を吸入しないようにし、換気を十分に行う。もし、目に入ったり皮膚に付着したりした場合は、大量の水で

少なくとも 15分間は洗い流し、医師の診察を受ける。

3. プロトコール・ 本品以外に RNase フリー水、エタノール、イソプロパノールを用意する。

・ 必要に応じて、別途 p-Bromoanisole(Code No. 027-16801)、Glycogen(Code No. 077-05311)を用意する。

・ チューブは透明なポリプロピレン製を用いるとよい。使用前に、遠心分離の強度 (12 K × g)と ISOGENⅡ(フェノール)に対する耐性があるか確認する。

・ プロトコールでは 1 mlの ISOGENⅡを添加する方法を記載しており、その場合 2.0 ml容量のチューブが必要であるが、抽出スケールを使用する遠心チューブの容量に合わせてもよい。例えば、プロトコールを 0.8 倍にスケールダウンすると 1.5 ml容量のチューブで使用できる(組織~ 80 mg + ISOGENⅡ 0.8 ml+RNase フリー水 0.32 mlの混合物を遠心分離して、上清を 0.8 ml回収する)。

・ 全ての操作は室温で行えるが、遠心は 4~ 28℃で行うことを奨める。

サンプル、目的に応じてAまたは Bの方法でRNAを単離する。    A: total RNA の単離

(高分子RNAと small RNA を別々に単離する場合)    A-1:高分子 RNAの単離    A-2:small RNA の単離

    B: total RNA の単離(高分子RNAとsmall RNAを合わせて単離する場合)

RNA Extraction (ISOGENⅡ) A: total RNA の単離(高分子RNAと small RNA を別々に単離する場合)A-1:高分子RNAの単離 

上 清

沈 殿

サンプル注1)

5 µl(または0.5%量) p-Bromoanisole  オプション注6)

15秒間、シェイクして混合室温 3~5分間 放置遠心(12 K×g, 10分間)

上 清(1 ml:このとき上清は全量取らない)注5)

(組織:~100 mg、細胞:培養ディッシュ(10 cm2) または~107細胞、液体試料:0.4 ml)

1 ml ISOGENⅡ溶解またはホモジナイゼーション注2)

0.4 ml(または0.4倍量) RNaseフリー水15秒間、激しくシェイクして混合室温 5~15分間注3) 放置遠心(12 K×g, 15分間)注4)

0.4 ml(または0.4倍量) 75%エタノール 転倒混和室温 10分間 放置遠心(12 K×g, 8分間)

上 清

沈 殿注7)        上 清注8) A-2. small RNAの単離に使用

沈 殿

高分子RNA溶液注11) (高分子RNA >200 base)

0.5 ml 75% エタノール注9)

遠心(4 K~8 K×g, 1~3分間)    もう一回繰り返す

RNaseフリー水注10)

A-2:small RNAの単離

A-1のエタノール沈殿後に得られた上清注8)

0.5 ml 70%イソプロパノール注9)

遠心(4 K~8 K×g, 1~3分間)    もう一回繰り返す

沈 殿注13)

2 µl Glycogen注12)

ボルテックス0.8倍量のイソプロパノール 転倒混和4℃ 30分間 放置遠心(12 K×g, 15分間)

RNaseフリー水注10)

沈 殿

small RNA溶液注14) (small RNA 10~200 base)

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B: total RNA の単離(高分子RNAと small RNA を合わせて単離する場合)

サンプル注1)

5 µl(または0.5%量) p-Bromoanisole  オプション注6)

15秒間、シェイクして混合室温 3~5分間 放置遠心(12 K×g, 10分間)

上 清(1 ml:このとき上清は全量取らない)注5)

(組織:~100 mg、細胞:培養ディッシュ(10 cm2) または~107細胞、液体試料:0.4 ml)

1 ml ISOGENⅡ溶解またはホモジナイゼーション注2)

0.4 ml(または0.4倍量) RNaseフリー水15秒間、激しくシェイクして混合室温 5~15分間注3) 放置遠心(12 K×g, 15分間)注4)

1 ml(または等倍量) イソプロパノール 転倒混和室温 10分間 放置遠心(12 K×g, 10分間)

上 清

沈 殿注7)

沈 殿

total RNA溶液注15)

0.5 ml 75% エタノール注9)

遠心(4 K~8 K×g, 1~3分間)   もう一回繰り返す

RNaseフリー水注10)

 脂質が多い試料の場合、ホモジネートを一度 12 K × g で 5分間遠心する。このとき脂肪はチューブの最上層に集まるので、ピペットやシリンジで脂肪層を貫通して上清を取り、新しいチューブに移す。遠心操作を 4~10℃で行うと、脂肪層が固まり、操作しやすくなる。

注 2) RNA の純度と収量を維持するため、組織の摘出を素早くすることと効果的にホモジナイズすることが重要である。

・ 摘出した組織は ISOGENⅡ中ですぐにホモジナイズするか、速やかに液体窒素中で凍結させる。

・ ホモジナイズ方法は、ハイスピードにセットしたポリトロンホモジナイザーで2~ 3分破砕する方法が最も効果的である。脳サンプルは泡立ちやすいので、ガラステフロン製のホモジナイザーを使用する。

・ RNase を多く含む組織の場合、RNA の分解を防ぐため、冷したISOGENⅡを使用する。

・ 組織の重量を測定する際には、チューブにあらかじめ ISOGENⅡを 1~ 5 ml入れ、電子天秤に載せてゼロ合わせする。その中に摘出直後の新鮮な組織または凍結組織を入れて重量を測定し、すぐにホモジナイズする。組織をいったん破砕した後、不足分のISOGENⅡを追加し、再懸濁する(例えば、組織 80 mg に対してISOGENⅡ 1 mlの比率にする)。

・ ホモジネートは 4℃で一晩、- 20℃または- 70℃で少なくとも 1年間保存できる。凍結保存していたホモジネートは、37 ~40℃で 5分間インキュベートすると融解する。

注 3) サンプル処理濃度上限の100 mgの組織に1 mlの ISOGENⅡで処理した場合やDNAが多く含まれるサンプルの場合、15分間放置する。

注 4) 遠心後、DNA、タンパク質、ポリサッカライドなどの多くは、チュー

ブの底に青色の半固体の沈殿を形成する。RNAは上清に溶解している。例えば、組織 100 mg に対して ISOGENⅡ 1 mlで処理した場合、DNAとタンパク質の沈殿は、ホモジネートと水の混合液のトータル容量の約 10%になる(組織 80 mg に対して ISOGENⅡ 1 mlであれば、約 8%)。

注 5) 上の方から慎重に上清を 1 ml(上清のトータル容量の 75%)を取り、新しいチューブに移す。このときの上清には青色が残っている。沈殿にはDNAが含まれているので、沈殿近くの上清は残し、DNAを混入させないように注意する。

注 6) このオプション操作を行うことで、混入していたDNA、タンパク質、ポリサッカライドなどが沈殿するため、夾雑物の多いサンプル(特に肝臓、腎臓、脾臓、筋肉などの組織)の場合に有効である。

注 7) RNAの白い沈殿は、チューブの底に付着する。

注 8) 上清を新しいチューブに移し、small RNA を単離するために 4℃または- 20℃で保存しておく。このとき高分子RNAの混入を防ぐため、上の方から慎重に上清の 85%量を取るようにする。このときの上清には薄く青色が残っている。この上清は、- 20℃で少なくとも 1年間保存することができる。

注 9) この状態で、室温で一晩、4℃で 1週間、- 20℃または- 70℃で1年間保存することができる。

注 10) 上清をマイクロピペットで取り除いた後、RNA沈殿は、乾燥させずに適量のRNaseフリー水で溶解する。RNA沈殿を乾燥させると、溶解性が著しく減少する。RNA沈殿は、ボルテックスやピペッティングで溶解させ、室温で 2~ 5分間放置するとよい。 使用するチューブはRNase フリーのものを用意する。

注 11) ここで単離した RNA は、200 base 以上の高分子 RNA で、rRNAと mRNA が含まれる。これらの RNA は、細胞内の RNA の約 80~ 85%を占める。残りの small RNA 画分はプロトコールA-2 で単離できる。

注 12) Glycogenを添加すると、効率良くsmall RNAを回収することができる。

注 13) このときの沈殿はかなり小さく見えにくいことがあるので注意する。

注 14) ここで単離したRNAは、10~ 200 base の small RNA である。

注 15) ここで単離した RNA は、高分子 RNA と small RNA を含む total RNA である。

注 1) 組織の場合、ISOGENⅡ 1 mlあたり 100 mg を上限として、ガラステフロンホモジナイザーまたはポリトロンホモジナイザーでホモジナイゼーションする。夾雑物の多い組織(肝臓や脾臓など)の場合、ISOGEN Ⅱ 1 mlあたり使用する組織の量は 50 mg にする。プロトコールでは 1 mlの ISOGENⅡを添加する方法を記載しているが、使用する遠心チューブの容量に合わせてもよい。残りのホモジネートは凍結して保存できる。注 2)参照

 接着細胞の場合、培養ディッシュから培地を除去し、3.5 cm ディッシュ(10 cm2)あたり少なくとも 1 mlの ISOGENⅡを加え、ピペッティングして完全に溶解する。使用するISOGENⅡの量は、細胞数ではなく培養ディッシュの面積をもとにする。 浮遊細胞の場合、遠心分離して細胞を沈殿させた後、培地を除去し、107 細胞あたり少なくとも 1 mlの ISOGENⅡを加え、ピペッティングして細胞を溶解する。 培養細胞は、トリプシン処理や洗浄などの前処理をすると、RNAの分解が起こる可能性があるため、培地の除去後すぐに ISOGENⅡを加える。また、使用する ISOGENⅡの量が試料に対して不十分な場合、単離したRNAに DNAが混入することがある。

 液体試料の場合、0.4 mlまでの液体試料に対し 1 mlの ISOGENⅡを加え、溶解する。0.4 mlに満たない少量の液体試料で行う場合は、試料と1 mlの ISOGENⅡをいったん混合した後、混合液がトータル 1.4 mlになるように RNase フリー水を追加する。この後、室温で 5~ 15 分間放置する操作に進む。 全血の場合、ISOGEN-LS の使用を奨める。

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トラブルシューティング

ト ラ ブ ル 対     策

低収量・ サンプルのホモジナイゼーションまたは溶解を十分に行う。前ページの注 2)参照・得られたRNA 沈殿の溶解を十分に行う。

A260/A280 < 1.6

・ 試料の量に対して添加する ISOGENⅡの量を増やす。・ 吸光度測定には、TE(pH 8.0)などpH 8.0 以上のバッファーを使用する。・ 得られたRNA 沈殿の溶解を十分に行う。・ プロテオグリカンやポリサッカライドが混入している可能性があるので、下記の対策を行う。

RNAの分解

・ 組織を摘出後、すぐに ISOGENⅡで処理する。または速やかに液体窒素で凍結させる。・ 凍結させた試料は-70℃で保存する。・ 培養細胞の場合、トリプシン処理や洗浄などの前処理を行わない。・ RNA 溶解用の溶液やチューブは、RNaseフリーのものを使用する。・ オプション操作を行う。前ページの注 6)参照

DNAの混入

・ 試料の量に対して添加する ISOGENⅡの量を増やす。・ 有機溶媒、強緩衝液、塩、アルカリ性溶液を含む試料を用いない。・ ホモジネートに水を添加した後の混合液を15 分間放置し、16 K×gで遠心し、DNAを沈殿させる。・ DNA 沈殿後の上清は慎重に取る。前ページの注 5)参照

脂肪、プロテオグリカン、ポリサッカライドの混入

・ ホモジネートを遠心(12 K×g、10 分間)して、脂肪や沈殿(不溶物)を除去する。・ オプション操作を行う。前ページの注 6)参照

プロトコールA-1 および Bで得られるRNAの収量の目安は次の通りである。

試料 プロトコールA-1 プロトコールB

組 織

肝臓 5~ 7 µg RNA/mg tissue 6 ~ 8 µg RNA/mg tissue

腎臓、脾臓 3~ 4 µg RNA/mg tissue 3 ~ 4 µg RNA/mg tissue

骨格筋、脳、肺 0.5 ~ 1.5 µg RNA/mg tissue 0.5 ~ 1.5 µg RNA/mg tissue

胎盤 1~ 3 µg RNA/mg tissue 1 ~ 3 µg RNA/mg tissue

培 養細 胞

上皮細胞 5~ 8 µg RNA/106 cells 5 ~ 10 µg RNA/106 cells

繊維芽細胞 3~ 5 µg RNA/106 cells 4 ~ 6 µg RNA/106 cells

単離した RNAの A260/A280 は 1.7 ~ 2.1 である。

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Immuno-Aptamer ™ を用いたウエスタンブロッティング(North-Western 法)Immuno-Aptamer ™ , Rabbit IgG(Code No. 310-07211) / Mouse IgG(Code No. 313-07201)

1. 製品説明本品は、Rabbit IgG またはMouse IgG に対して特異的に結合

する Aptamer を使用している。この Aptamer は Native Form のIgGにのみ結合し、変性した IgGには結合しないため、免疫沈降後のサンプルのウエスタンブロットにおいて、通常の二次抗体を本品に置き換えることにより、免疫沈降に用いた抗体のH鎖やL鎖のバックグラウンドが検出されず、目的のバンドのみを検出できる。また、Aptamer の 5’末端は、biotin で修飾されているので、

streptavidin を介した検出が可能である。下記の使用例では、Streptavidin-Horseradish Peroxidase Conjugate(SA-HRP)と化学発光検出試薬を使用した方法を記載している。

2. 製品内容1)Immuno-Aptamer™, Rabbit IgG / Mouse IgG 1本 (凍結乾燥品)*

2)100 × Blocking Reagent 0.8 ml × 1 本3)RNase Free Water 1.0 ml × 1 本

* 本品をご使用になる前に、Immuno-Aptamer™ (凍結乾燥品)が入ったチューブにキット添付のRNase Free Water 23 µlを添加し、溶解後は、4~ 5 µlずつRNase Free チューブに小分けし、- 20℃で保存して下さい。

3. 使用上の注意・ 本品は、North-Western 法による検出以外の目的には使用できない。

・ 本品に添付の Immuno-Aptamer™は RNA をベースに製造されているため、RNase の混入がないように、全ての操作は使い捨て手袋着用で行い、実験台、ピンセット、はさみは常に清潔に保ち、可能な限り使い捨てのプラスチック製器具を使用して下さい。

・ Immuno-Aptamer™ , Mouse IgG は、mouse IgG1, IgG2a, IgG3に対して交差性が確認されている。

・ コントロールとして細胞ライセート(Input サンプル)を泳動した場合、ライセートに含まれるビオチン化タンパク質が非特異的なバンドとして検出される。Input サンプルでの検出には使用できない。

4. 使用例・ 本使用例は、33 cm2(5.5 cm× 6 cm)のメンブレンを使用した場合の例である。

・ 試薬の量は、使用するメンブレンのサイズに合わせて調整する。・ メンブレンはピンセットで角を軽くつまんで扱い、サンプルを転写した面に触れないように注意する。

〈本品以外に必要な試薬、機器など〉・ 20 × TBS(Code No. 317-90371)・ Acetylated BSA(50 mg/ml;Code No. 316-07291)・ 1 M MgCl2(Code No. 310-90361)・ 蒸留滅菌水(Distilled Water, Deionized, Sterile;Code No. 318-90105)

・ Tween® 20(Code No. 166-21115 など)・ Streptavidin-Horseradish Peroxidase Conjugate(SA-HRP)・ イムノスター LD(Code No. 292-69903 など)・ 目的のタンパク質を認識する一次抗体・ SDS-PAGE装置一式

・ ブロッティング装置・ シーソー式シェーカー・ ローテーター・ ヒートブロックまたはサーマルサイクラー・ PVDFメンブレンまたはニトロセルロースメンブレン・ X線フィルム・ 洗浄用プラスチック容器・ ハイブリバッグ・ ハイブリバッグ用シーラー・ ラップ・ ピンセット、はさみ

〈試薬の調製〉・ Dilution buff er (10 ml):0.5 mlの 20× TBSと 50 µlの 1 M MgCl2 を混合し、蒸留滅菌水またはMilliQ 水で 10 mlにメスアップする。

・ TBS-T(Mg) (1 L):50 ml の 20 × TBS と 5 ml の 1 M MgCl2、最終濃度 0.05%になるように Tween® 20 を加え、蒸留滅菌水またはMilliQ 水で 1 L にメスアップする。

・ Blocking Buff er (3 ml、用時調製): 0.03 mlの100× Blocking Reagent(キット添付)と0.6 mlの50 mg/ml Acetylated BSAに 2.37 mlのTBS-T(Mg)を加え、混合する。

1)SDS-PAGEおよびブロッティング 定法に従って、SDS-PAGE、ブロッティングを行う。

2)ブロッキング ① ブロッティング後のメンブレンをTBS-T(Mg)で軽く洗浄する。② メンブレンと1 mlのBlocking Buff er をハイブリバッグに入れ

シールし注1)、室温で 1時間、ローテーターでゆっくり回転させる(15 rpm)。

③ ブロッキング中に抗体溶液を準備する。一次抗体を 1 mlのBlocking Buff er で希釈する注2)。

3)一次抗体反応 ① メンブレンをハイブリバッグから取り出し、新しいハイブリ

バッグにメンブレンと2)- ③で調製した一次抗体溶液を入れてシールし注1)、室温で1時間、ローテーターでゆっくり回転させる(15 rpm)。

② 一次抗体反応中に Immuno-Aptamer ™溶液を準備する。RNase Free Water で溶解した Immuno-Aptamer ™ 1 µlと9 µlのDilution Buff er を混合し、95℃ 2分間加熱した後、室温で10分間放置する。そこにBlocking Buff er で希釈したSA-HRP注3)

を 10 µl 加え、さらに室温で10分間放置する。この Immuno-Aptamer ™ 溶液(20 µl)に、1 mlのBlocking Buff er を加えて混合し、Immuno-Aptamer™溶液を調製する。使用するまで室温に置いておく。

③ 抗体反応終了後、メンブレンをプラスチック容器に移す。15 mlの TBS-T(Mg)を加え、室温で 5分間、シーソー式シェーカーで激しく振とうした後、この溶液を捨てる。この洗浄操作をさらに 2回繰り返す。

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4)Immuno-Aptamer™との反応 ① 新しいハイブリバッグにメンブレンと 3) - ②で調製した

Immuno-Aptamer™溶液を入れてシールし注1)、室温で15分間、ローテーターでゆっくり回転させる(15 rpm)。

② Immuno-Aptamer ™との反応終了後、メンブレンをプラスチック容器に移す。15 mlのTBS-T(Mg)を加え室温で5分間、シーソー式シェーカーで激しく振とうした後、溶液を捨てる。この操作をさらに2回繰り返す。

5)化学発光の検出 注 4) ① ラップの上にメンブレンを置いてHRP用検出試薬を滴下し、

室温で 5分間放置する。

② 余分な溶液を除き、メンブレンをラップで包む。③ X 線フィルムに露光し、フィルムを現像する。最初に 1分~

数分間露光したフィルムを現像し、露光時間を決める。

注1) ハイブリバッグをシールする際は、できるだけ気泡が入らないようにして下さい。注 2) 一次抗体の濃度および量は、個別に最適化を行って下さい。注 3) 希釈倍率は、ご使用の試薬のマニュアルに従って決定して下さい。注 4) 化学発光の検出は、ご使用の試薬のマニュアルに従って操作して下さい。

トラブルシューティング

トラブル 予想される原因 対   策

シグナルが出ない。

Immuno-Aptamer ™が分解している。使用する試薬・器具はRNase free のものを使用する。実験中、使い捨て手袋を着用する。

Immuno-Aptamer ™が外れている。マグネシウムイオン (Mg2+) のないバッファーで洗浄するとImmuno-Aptamer ™が外れるので、バッファーにマグネシウムイオンが入っていることを確認する。

ゲルからメンブレンへの転写がうまくいっていない。

ブロッティング操作を再確認する。

検出系の問題。一次抗体の濃度を検討する。

使用している検出試薬のトラブルシューティングを確認する。

シグナルが弱い。

露光時間が短い。 露光時間を長くする(5分間以上)。

検出系の問題。一次抗体の濃度を検討する。

より感度の高い検出試薬を使用する。

シグナルが強い。 露光時間が長い。 露光時間を短くする。

バックグラウンドが高い。

ブロッキングが不十分。

ブロッキング時間を長くする。

Blocking Buff er に添加する 100 × Blocking Reagent を通常の 2倍量使用する。調製方法(3 ml、用時調製):0.06 mlの100×Blocking Reagentと 0.6 mlの50 mg/ml Actylated BSAに 2.34 mlのTBS-T(Mg)を加え、混合する。100×Blocking Reagentが不足する場合は、単品でご購入下さい。

洗浄が不十分。 洗浄バッファーの量や洗浄の回数を増やす。

露光時間が長い。 露光時間を短くする。

非特異的バンドが出る。

ビオチン化タンパク質を認識している。

Immuno-Aptamer™なしのコントロール実験を行う(一次抗体反応後、SA-HRP反応を行う)。細胞ライセート(Input サンプル)には、ビオチン化タンパク質が含まれるので、検出に Input サンプルを使用しない。

一次抗体濃度が高い。 一次抗体濃度を下げる。

文   献1) Yoshida Y, Sakai N, Masuda H, Furuichi M, Nishikawa F, Nishikawa S, Mizuno H, Waga I: Anal Biochem, 375, 217-22 (2008)2) Sakai N, Masuda H, Akitomi J, Yagi H, Yoshida Y, Horii K, Furuichi M, Waga I: Nucleic Acids Symp Ser (Oxf ), 52, 487-8 (2008)

ライセンス情報:This product is made under licenses from NEC Soft and SomaLogic, Inc.

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DNA Extractor®WB Kit の応用例  1. 組織からのDNA抽出本キットを用いて組織からDNAを単離すると約 2時間の操作

で、ゲノムDNAを効率よく回収することができる。抽出操作は現品説明書のプロトコールに 2、3の簡単な操作を追加するだけで行える。得られたDNAは、RNAやタンパク質の混入がほとんどなく、

そのまま制限酵素処理、PCR、サザンブロット分析、フィンガープリンティングなどに用いることができる。

プロトコール(組織からのDNA抽出)

注1 ) ガラス、テフロンホモジナイザーなどを用いてホモジネーションを行う。この操作は氷上で行う。

注 2 ) マイクロチューブミキサーは、MT-360(トミー精工)を使用している。もし、ない場合は約 1分間、チューブを転倒させながら混合する。

注 3 ) 以上の操作は、DNase によるゲノムDNAの分解が考えられるので、できるだけ迅速に行う。

注 4 ) 組織、培養細胞では核内の RNAがかなり多量に存在する場合が多いので、終濃度が 20 µg/ml の RNase 処理を行う。

注 5 ) 反応の途中に、2~ 3回軽く振る。注 6 ) 白い糸状のDNAが完全に見えてくるまで混合する。注 7 ) 上清を除いた後に、容器をろ紙の上に逆さまに置いて、器壁に残った溶液を十

分に除去する。注 8 )沈殿が器壁からはがれるまで十分に混合する。注 9 ) 乾燥しすぎると、DNAの溶解が困難になるので、乾燥時間は 3分間以内で行う。

2. PCR によるラット遺伝子の検出例ラットの各組織から抽出した DNA を鋳型としてラット

GAPDH遺伝子断片(983 bp)の増幅を行った。

(結果) 各組織から抽出したDNAすべて983 bpのバンドを検出できた。

3. DNA Extractor®WB Kit を用いてラットの各組織から抽出したDNAの回収量および純度

組織  項目 DNA回収量(µg/100 mg 組織) A260/A280

胃 175 1.92腸 396 1.96肝臓 286 1.95膵臓 624 1.95骨格筋 67 1.85

(結果)組織あたりのDNAの収率は異なるが、高純度のDNAを抽出することができた。

4. 保存血液からのDNA抽出一般に、血液を 4℃で保存すると保存血液中のDNAが徐々に

分解され減少してくるため、採血当日、16日、23 日、31 日後の 4℃で保存した血液からDNAを抽出し、その収量、制限酵素による切断、PCRを行いDNAの保存による影響を調べた。また、- 70℃保存した血液のDNA回収率についても検討を行った。

保存条件:4℃

保存期間 項目

DNA回収率 制限酵素切断 PCR

当日100%

(51.3 µg/ml 血液)良好 良好

16日 94% 良好 良好23日 91% 良好 良好31日 69% 良好 良好

注) DNAの回収率は、1日目の新鮮な血液から抽出したDNA量を 100%として計算した。(1か月以上の長期保存の場合は、凍結保存をお奨めします。)

- 70℃で凍結保存した血液を融解、凍結を繰り返してもDNAの回収率には全く影響をおよぼしません。1か月以上の長期保存の場合は、凍結保存をお奨めします。

Enzyme

(A)

(B)

Lane 1:マーカーDNA(φ X174/Hae Ⅲ)Lane 2:胃Lane 3:腸Lane 4:肝臓Lane 5:膵臓Lane 6:骨格筋Lane 7:陰性コントロールLane 8:陽性コントロール

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5. ウマ、ウシの全血からのゲノムDNA抽出通常のプロトコールを一部変更することにより、ウマ、ウシ

の全血から効率よく、高純度のゲノムDNAを抽出することができる。ウマの血液ではタンパク質分解酵素処理を 2時間、ウシの血液では溶解液による洗浄操作を 4回繰り返し行い、さらに、タンパク質分解酵素処理を 4時間行う。操作時間はウマで約 3時間、ウシで約 5時間である。なお、血液サンプルは抗血液凝固剤としてEDTA・2Naまたはヘパリンを添加したものを用いた。

操作方法:

ウマの血液からの抽出 タンパク質分解酵素処理を 2時間行い、核のペレットがなく

なるまで行う。この操作以外は、通常のプロトコールに従う。

ウシの血液からの抽出 溶解液を加え細胞中の細胞核を特異的に分離するステップで、

プロトコール通り 2回の操作ではヘモグロビンなど他の夾雑物が除去されにくいため、この操作を 4~ 5回繰り返し行う。目安は、赤色のペレットが透明になるまでである。なお、遠心分離後のペレットが非常にはがれやすいのでデカンテーションを行う際は十分注意する。また、タンパク質分解酵素での処理は約 4時間行う。

ウマ、ウシから抽出したゲノムDNAの電気泳動写真:

Lane 1:λ /Hind ⅢLane 2:ウマ(EDTA・2Na)Lane 3:ウマ(Heparin)Lane 4:ウシ(EDTA・2Na)

100 µlのDNA溶液から 3 µl取り、 1%アガロースゲルに供して電気泳動を行った。

DNAの収量および純度サンプル DNA回収量(µg/ml 血液) A260/A280

ウマ(EDTA・2Na) 56.62 1.91ウマ(Heparin) 48.34 1.88ウシ(EDTA・2Na) 22.04 1.86

注)ウマの血液サンプルはそれぞれ別個体から採取した。

6. DNA Extractor®WB Kit の Q&AQ 1 . DNA Extractor®WB Kit の原理は?A 1 . 本キットは全血および培養細胞から、ゲノムDNAを抽出

するキットですが、最初に界面活性剤を含む溶解液を加えることにより、細胞核のみを特異的に回収します。次に、タンパク質分解酵素処理で核膜および夾雑物を分解し、DNAを溶出させます。次に、よう化ナトリウムによりタンパク質を可溶化した後、イソプロパノールを加えることによりゲノムDNAのみを沈殿させ、回収します。また、本法はDNAの全抽出工程を 1チューブ内で行うことができます。

Q 2 . RNA の混入はないのか?A 2 . 全血からの抽出においては RNAの混入は非常に少ないで

すが、培養細胞では多少 RNAが混入してきますので、この場合、37℃、10 分間の RNase 処理を基本プロトコールに新たに付け加えるだけで、ほぼ完全に RNAが除去できます。

Q 3 . DNA の回収率が悪いが、どうしてか?A 3 . 以下の原因が考えられます。 1. 最初の遠心分離操作 10K × g、20 秒間の遠心分離操作は、完全に遠心分離

機が 10K × g になってから、20 秒間遠心分離を行って下さい。遠心分離機のスタートボタンを押してから20 秒間ですと、細胞核が完全に落ちないため、DNAの回収率が20~ 30%減少することがあります。なお、遠心分離機により異なりますが、卓上遠心分離機の場合、10K× gは約 12,000 rpm に相当します。

2. 遠心分離後の上清の除去操作 すべてデカンテーションで行って下さい。ピペットで

除去するとDNAの回収率が低くなる原因になります。 3. DNAの溶解 高濃度のDNAが抽出されるので、TEバッファー(100

~ 200 µl)を加えた後、室温で 3時間または 4℃で一晩かけてゆっくりと溶解して下さい。短時間の溶解ですと完全にDNAが溶けず、見かけ上回収率が低くなる原因になります。

Q 4 . 100 µlの血液からDNAを抽出できるか?A 4 . 可能です。この場合、標準のプロトコールをスケールダウ

ンして行って下さい。また 100 µl以下の血液の場合は、生理的食塩水で 100 µlにした後に同様の操作を行って下さい。血液 100 µlからですと、1キットで 250 回使用できます。

Q 5 . 抗血液凝固剤として EDTA の代わりにヘパリンを使用した場合、DNAは抽出できるか?

A 5 . 一般に、使用されるヘパリン濃度(10 units/ml 血液)以下ですと、問題なく抽出できますが、濃度が 20 units/mlあたりから、回収率が著しく減少します。また、ヘパリンを加えた血液から抽出した DNA は、制限酵素処理や PCRに影響をおよぼすことがありますので、EDTA・2Na または EDTA・2K(1 mg/ml血液)の使用をお奨めします。

Q 6 . 保存血から抽出できるか?A 6 . 4℃で3週間以内であれば、問題なく抽出できます。しかし、

1か月以上の長期保存では、DNAが徐々に分解されてきます。血液を長期保存する場合は、冷凍保存して下さい。

Q 7 . マイクロチューブミキサーがないがどうすればよいか?A 7 . 約 1 ~ 2分間、転倒混和して下さい。

Q 8 . 実験を途中で止めたいが?A 8 . 溶解液を加えて遠心分離した沈殿を-20℃保存して下さい。

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文   献

1) Wang, L., Hirayasu, K., Ishizawa, M. and Kobayashi, Y. : Nucleic Acids Res., 22, 1774(1994)2) Katakukra, Y., Yamamoto, K., Miyake, O., Yasuda, T., Uehara, N., Nakata, E., Kawamoto, S. and Shirahata, S. : Biochemical and Biophysical Research Communications, 237, 313(1997)

3) Kubota, N., Hayashi, J., Inada, T. and Iwamura, Y. : RADIATION RESEARCH, 148, 395(1997)4) Helbock, H. J., Bechman, K. B., Shigenaga, M. K., Walter, P. B., Woodall, A. A., Yeo, H. C. and Ames, B. N. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 288(1998)

5) Hamilton, ML., Guo, Z., Fuller, CD., Van Remmen, H., W ard, WF., Austad, SN., Troyer, DA., Thompson, I. and Richardson A. : Nucleic Acids Research, 29, No10, 2117(2001)

Q 9 . 冷却遠心分離機がないが?A 9 . 卓上遠心分離機でも可能ですが、その場合すばやく行って

下さい。

Q10. 1 ml 血液からどれくらいのDNAが抽出できるか?A10. 個人差がありますが、正常なヒトで約 20~ 70 µg 抽出で

きます。

Q11. 本キットを用いて組織からDNAを抽出できるか?A11. 可能です。組織をホモジナイズしてバラバラにすることに

より抽出できます。

Q12. 培養細胞からDNAを抽出する際、細胞数はどれくらいでスタートすればよいか?

A12. 103 ~ 106 細胞あれば、十分抽出することができます。培養細胞の場合、RNAが混入してきますので、タンパク質分解酵素処理の前に、20 µg/mlの RNase A を加えて、37℃、10分間処理して下さい。

Q13. ミトコンドリアDNAは抽出できるか?A13. 可能です。下記文献を参照下さい。ミトコンドリアDNA

のみを抽出する場合は、mtDNA Extractor®WB(Kit Code No.293-54401)およびmtDNA Extractor®CT(Kit Code No.291-55301)の使用をお奨めします。

Kubota, N., Hayashi, J., Inada, T. and Iwamura, Y. :RADIATION RESEARCH, 148, 395(1997)

Q14. DNA Extractor®Kit(Code No.295-50201)とどこが異なっているのか?

A14. 使用目的が異なります。DNA Extractor®Kit は、血清中に微量に混入するウイルスDNA(B型肝炎ウイルスのようなDNAウイルス)や生物製剤中に微量に混入する細菌由来のDNAを抽出するキットですが、DNA Extractor®WB Kit は全血や培養細胞からゲノムDNA を特異的に抽出するキットです。

Q15. タンパク質分解酵素の調製後の保存は?A15. - 20℃で保存すれば半年間は安定です。

Q16. DNA Extractor®WB-Rapid Kit とどこが異なるのか?A16. DNA Extractor®WB-Rapid Kit は、約 20分で抽出できる

ように、改良した製品です。小量多検体処理に適したキットです。

Q17. 37℃、1時間のタンパク質分解処理後に、まだ不溶物が残っているがどうすればよいか?

A17. 1 時間で消化できないのは、最初のステップの溶解液による洗浄が不十分なためだと考えられます。最初の細胞核を沈殿させる際にヘモグロビン由来の赤色色素がとれるまで洗浄を繰り返して行って下さい。

Q18. 培養細胞からDNAの抽出を行ったところ、よう化ナトリウムを加えた時点で白い不溶性の物質が浮いてきたが、この物質を除いた後に、次のステップに移った方がよいか?

A18. 培養細胞の種類により、不溶性の物質が見られることがあります。この場合、この物質を除かずに、次の洗浄液(A)の洗浄操作に移って問題ありません。洗浄液(A)を加えることで不溶性物質が溶解されます。最終的に抽出したDNAの純度が低い場合は、細胞溶解液による細胞核沈殿の操作を繰り返し行うことをお奨めします。

Q19. DNA の A260/A280 比が 1.8 以上になるが、どうすればよいか ?

A19. おそらくDNA中によう化ナトリウムが混入していると思われます。この場合、 洗浄液(B)による洗浄を繰り返し行って下さい。

Q20. 参考文献は?A20. Wang, L., Hirayasu, K., Ishizawa, M. and Kobayashi, Y.

:Nucl. Acids Res., 22, 1774(1994)を参照下さい。

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microRNA Isolation Kit, Human Ago2(292-66701), microRNA Isolation Kit, Mouse Ago2(292-67301) 追加マニュアル

1. 本キットの適用範囲と精製RNAのプラットフォームApplications Platforms

Cell lines Tissues Secretes Cloning qRT-PCR Microarray Deep Sequencing○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

HumanRodents5 × 106

~2× 107

・Lung・Liver・Brain・Testis・Pancreas・Muscle etc・・・ 25~ 50 mg

・Plasma・Serum・Red blood cell

Wako microRNA Cloning Kit ABI

・TORAY 3D-Gene・Agilent miRNA array・Affi metrix GeneChip

・Illumina ・Solexa ・ABI SOLID

2. Ago IP RNA画分に含まれるmicroRNA量の測定本キットで精製した RNA の濃度は、分光光度計(A260/

A280)やバイオアナライザー(Agilent 社)での測定を推奨しません。測定機器のメンテナンス状態や機種の違いにより small RNA を含む RNA画分の測定値がばらつくためです。microRNA量の測定には、Urea-PAGE後の核酸銀染色(CLEAR

STAIN Ag Code No.311-03961)によって‘‘推定’’することを推奨します。核酸銀染色のプロトコールは右記に紹介します。本キットで精製した RNA画分には、夾雑 RNA(tRNA, rRNA

などの分解産物)がほとんど含まれないため、従来のサイズ分画法で精製した RNA画分(夾雑 RNAを多く含む)よりも吸光度が見かけ上、低く測定される事がありますが、マイクロアレイ、リアルタイム qPCR、クローニングには問題なく使用できることを確認しています。また、精製されるmicroRNA 量は、実験に使用した細胞株・

組織によって異なります。従って、精製 RNA 画分を用いたmicroRNA クローニング、リアルタイム qPCR、microRNA マイクロアレイなどに使用する際には、上記の核酸銀染色を行い、精製されたmicroRNA量を確認することをお奨めします。

3. 変性 Urea-PAGEプロトコール【10% 変性 Acrylamide mini gel 組成】40% Acrylamide gel sol.(19:1) 2.5 mlUrea 4.8 g5xTBE 1 ml蒸留水 2.5 ml 10 ml にメスアップAPS 80 µlTEMED 10 µl

【サンプル調製】microRNA Isolation Kit 溶出サンプル 5 µl ← Formamide 10 µl98℃で 3分間インキュベート 氷冷 サンプルアプライ

【電気泳動条件】泳動 buff er:0.5 × TBE電流:10 mA 定電流泳動時間:45-50 min(マーカーのDye で確認)

【検出】CLEAR STAIN Ag コードNo.311-03961

4. Ago IP RNA画分を用いたリアルタイム qPCR 例 特定のmicroRNA を細胞内で過剰発現またはトランスフェクションさせ、microRNA の標的mRNAとの相互作用やその機能を解析す

るGain of Function 解析を行う場合のリアルタイム qPCRのプロトコールを紹介する。

[解析の流れ]

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■ miR-122 導入細胞の RISC-miR-122 複合体の回収・定量

1) HepG2 細胞(5 × 106)に 2 本鎖 RNA 600 pmol (miR-122 ガイド鎖を含む dsRNA)をトランスフェクションする。

2) 24 時間後に細胞を回収する。3) microRNA Isolation Kit, Human Ago2(Code No. 292-

66701)をもちいてAgo2 IP を行う。4) 免疫沈降 RNA溶液量を 20 µlに調製する。5) 免疫沈降 RNA溶液 2 µlを各社市販の逆転写反応キット注1)で

逆転写(20 µl 反応系)し、miR-122 を cDNA化する。6) 逆転写反応後の溶液 1 µlをテンプレートに用い、各社市販の

リアルタイム qPCRキット注2)でリアルタイム定量 PCRを行います。

注 1) 逆転写反応キット:TaqMan® MicroRNA Assays(品番:4427975)、TaqMan® MicroRNA RT Kit(品番:4366596)

注 2) 逆転写反応キット:TaqMan® Universal Master Mix, No AmpErase® UNG(5 ml)(品番:4324018)

導入miR-122 の Ago2 への取り込み確認

■ miR-122 導入細胞の RISC に取り込まれたmiR-122 の標的mRNAの回収・定量

1) HepG2細胞(5× 106)に 2本鎖 RNA 600 pmol (miR-122 のガイド鎖を含む dsRNA)をトランスフェクションする。

2) 24 時間後に細胞を回収する。3) microRNA Isolation Kit, Human Ago2(Code No. 292-

66701)をもちいてAgo2 IP を行う。 4) 免疫沈降 RNA溶液量を 50 µlに調製する。5) 免疫沈降 RNA溶液 10 µlを各社市販の逆転写反応キットで

逆転写(20 µl反応系)し、mRNAを cDNA化する。6) 逆転写反応後の溶液を 4倍希釈する。7) この希釈溶液 2 µlをテンプレートとして用い、各社市販のリ

アルタイム qPCRキット注2)でリアルタイム定量PCR(20 µl反応系)を行います。

5. Ago2 IP RNAをもちいたマイクロアレイ解析例

スタート試料(HeLa 1 × 107 cells)

microRNA expression profi le

3D-Gene miRNA Oligo chip

microRNA expression profi le

3D-Gene Human Oligo chip 25K

Ago2 IP RNA fraction

microRNA Isolation Kit, Human Ago2

3D-Gene miRNA Oligo chip 3D-Gene Human Oligo chip 25K

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HeLa 細胞 1 × 107 個

Ago2 IP RNA Ago2 IP RNAor

Total RNAAgo2 IP RNA(107 個細胞由来)=全量Total RNA = 0.5 µg(推奨量 0.750 µg)

Quality Check

CIP 処理、Hy5 標識

ハイブリ

洗浄、スキャンmicroRNAの高感度発現解析が可能

5-1.Ago2 IP microRNA発現解析フロー[解析手順] [microRNA Isolation Kit, Humna Ago2 原理]

[使用サンプル量]

[3D-Gene miRNA Oligo chip Ver. 11.1]

Human

搭載プローブ名 microRNA検出用オリゴDNAプローブ

搭載遺伝子数 約 850Negative control 非ヒト由来の配列

microRNA Isolation Kit, Human Ago2

東レ(株)3D-Gene miRNA Oligo chip

[解析結果]  1× 105 個細胞からmicroRNAのマイクロアレイ解析が可能です。

1× 105~ 7 個細胞から調製した Ago2 IP RNA を用いて得られた発現プロファイルは各細胞数の実験区間で相関性を確認している。

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Ago2 IP RNA(test)

Mix each equal volume

Hybridization

Washing

Scanning

Total RNA(reference)

Cy3 アンチセンス鎖Cy3

Cy5 アンチセンス鎖

5-2.Ago2 IP mRNA発現解析フロー

A>B A=B A<B

[解析手順]

Ago2 IP RNAサンプルと東レ(株)3D-Gene を併用することで、高感度にmicroRNAの発現解析が可能であることが示された。

[3D-Gene Human Oligo chip 25K]

● 1× 107 個細胞から免疫沈降した 1サンプル分で発現解析が可能● Total RNA を用いた場合より、より多くのスポットを検出可能●核酸銀染色では検出できなかった 1× 105 個細胞でも検出可能

 (データ非掲載) Ago2 IP RNAと Total RNA を用いたmicroRNA発現スポット数

搭載プローブ名 AROS ™搭載遺伝子数 約 25000Positive control ACTBNegative control 非ヒト由来の配列

Sample RNA Signal SpotsAgo2 IP 522Total RNA 420

※ Sanger Institute miRBase ver. 11.1 のデータ。

Reverse transcription2 × Amplifi cation

Labeling

3D-Gene Human Oligo chip 25K

Cy5

検出用DNA(センス鎖)

Sample 1st aRNA 2nd aRNAAgo2 IP RNA 0.48 µg 82.01 µgTotal RNA 29.26 µg 128.25 µg25

200

500

1,000

2,000

4,000

(Base)

1 2 3 4 5

TotalRNA

Ago2 IPRNA

Lane 1:M.W. MarkerLane 2, 4:1st Amplifi cationLane 3, 5:2nd Amplifi cation

[解析結果]

■ Ago2 IP RNAに含まれているmRNAの多く(約 60%)は高発現microRNAの seed 配列を含んでいた。■ 東レ 3D-Gene を用いることで 1× 107 個細胞の Ago2 IP RNAからmicroRNAの標的mRNAの予測が可能であることが示された。

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6. ヒト・マウス組織からmicroRNA精製プロトコール例1. ヒト・マウス組織抽出液の調製

凍結組織約25~50 mg

上 清

新しい2.0 mlチューブに回収(細胞溶解液)

Cell Lysis Solution 1 ml破砕(テフロンホモジナイザー使用)氷上で静置, 15分間 (14,500 rpmまたは20 K×g, 4℃, 20分)

0.45 µmのフィルターでろ過

2. 抗体ビーズの使用前洗浄① Anti Ago Antibody Beads Solution 50 ~ 100 µlを1.5 mlマ

イクロ遠心チューブに移す。 ② 4℃、5,600 rpm(3K× g)で 30秒間遠心分離し、上清を除く。 ③ ビーズペレットをCell Lysis Solution 1ml で懸濁し、4℃、5,600 rpm(3K×g)で30秒間遠心分離後、上清を除く。(洗浄済みビーズ溶液)

3. microRNA画分の精製a)抗原 -抗体反応 ① 前洗浄済み Anti Mouse Ago2 Antibody Beads Solution に、1 ml 細胞溶解液(組織25 mg由来) を添加しボルテックスミキサーで懸濁する。

② 4℃でローテーターにより転倒混和し、3時間抗原抗体反応を行う。

③ 4℃、5,600 rpm(3K × g)で 30秒間遠心分離し、上清を除く。

b)反応後の洗浄 ① ビーズペレットにCell Lysis Solution 1mlを添加し、ボルテックスミキサーで懸濁する。

② 4℃、5,600 rpm(3K× g)で 30秒間遠心分離し上清を除く。 ③ ①~②の操作をさらに2回繰り返す。洗浄操作は計3回行う。

c)抗原溶出とmicroRNAの精製 ① ビーズペレットにElution Solution注 1)50 µlを添加し、ボルテックスミキサーで懸濁する。

② 4℃、5,600 rpm(3K × g)で 30秒間遠心分離し、上清を1.5mlマイクロ遠心チューブに移す。注2)

③ 滅菌水 350 µl、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)400 µlを添加し、ボルテックスミキサーで懸濁する。

④ 室温、14,500 rpm(20K × g)で 10分間遠心分離する。 ⑤ 上層(水層)を1.5 mlマイクロ遠心チューブに移し注3)、クロロホルム400 µlを添加し、ボルテックスミキサーで混合する。

⑥ 室温、14,500 rpm(20K× g)で 10分間遠心分離する。⑦ 上 層( 水 層 )を 1.5 ml マ イ ク ロ 遠 心 チ ュ ー ブ に 移 し、Ethachinmate 3 µl、3 mol/l Sodium Acetate 40 µl、99.5% エタノール1 mlを添加し、ボルテックスミキサーで混合する。

⑧ 4℃、14,500 rpm(20K×g)で15分間遠心分離し、上清を除く。 ⑨ 沈殿に 70% エタノール 溶液 1 mlを添加し、ボルテックスミキサーで混合する。

⑩ 4℃、14,500 rpm(20K ×g)で10分間遠心分離し、上清を除く。⑪ チューブの蓋を開けて室温で 20分間放置し、ペレットを風乾する。

⑫ ペレットを滅菌水、またはTEバッファー10 µlに溶解する。注4)

ヒト、マウス組織からのmicroRNA精製本キットを用いてヒト、マウスから採取した生体組織からmicroRNA の精製を行った。その後、精製したmicroRNA 画分についてUrea-PAGEによる分離および銀染色による核酸検出を行った。

注1) Elution Solution は冷蔵保存により成分が析出していますので、使用前に室温に戻し、ボルテックスミキサーで攪拌後、成分が完全に溶解していることを確認してから使用して下さい。

注 2) 上清をマイクロピペッターで吸う際に、ビーズペレットを吸わないように注意して下さい。ビーズに非特異吸着した核酸が混入する場合があります。

注 3) 上層(水層)をマイクロピペッターで吸う際に、中間層を吸わないように注意して下さい。

注 4)溶解後のサンプルは- 80℃で保存して下さい。

microRNA Isolation Kit, Human Ago2

microRNA Isolation Kit, Mouse Ago2

ImmunoprecipitationUrea PAGE

ImmunoprecipitationUrea PAGE

M

M 1 2 3 4

(nt)

(nt)

200

100

50

20

1 2 3

M:RNA 分子量マーカーLane1:22n.t. 合成 RNA(1 ng)Lane2:ヒト Liver(組織 12.5 mg 相当 /lane)Lane3:ヒト Testis(組織 12.5 mg 相当 /lane)

M:RNA 分子量マーカーLane1:合成 1本鎖 RNA (22nt)Lane2:マウス Lung(組織 12.5 mg 相当 /lane)Lane3:マウス Liver(組織 12.5 mg 相当 /lane)Lane4:マウスBrain(組織 12.5 mg 相当 /lane)

microRNA

microRNA20

30

40

50

100

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microRNA Cloning Kit Wako(290-66501)追加マニュアル

1. HeLa 細胞からのmicroRNA抽出~クローニング本キットを使用して下記プロトコールでmicroRNAのクローニングを行った。1. HeLa 細胞(1× 107 cells) より ISOGENにて Total RNA を抽出する。2. Total RNA から small RNA 画分をカラム抽出し、15% 変性アクリルアミドゲルにて 200 nt 以下の small RNA 画分を電気泳動後、

20~ 23 nt 付近を切り出し抽出する。3. microRNA Cloning Kit Wako で microRNAをコードする cDNAを合成し、T- ベクターにクローニングする。4. 大腸菌へ T- ベクターを導入し、抗生物質を含む LB寒天培地にて形質転換体を選抜する。5. コロニー PCR にて cDNAの挿入を確認する。6. シークエンスによって得られた配列を、サンガー研究所miRBase と照合する。

90→

(bp)

dPAGE cDNA 合成 80→

≦ 200 nt →

20 nt →

70 →

60→

50→microRNACloning Kit Wako

(nt) (nt) ゲル切り出し

Cloning(nt)60 60

6050 50

5040 40

4030 30

30

1st PCR 2nd PCRGel

pick up

small RNA 画分(≦ 200 nt)抽出 microRNA Cloning Kit Wako でcDNA 合成

microRNA画分 抽出

コロニーPCR配列解析後、miRBase と照合

プラスミド抽出

シークエンス

miRBase と照合

クローニング

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2. クローニングに使用するmicroRNA画分の抽出・精製法本法は、本品の現品説明書に記載している変性ゲルからの抽出法に相当します。 1) 5 × 106~7 細胞から ISOGENをもちいてTotal RNAを抽出す

る。(Total RNAは 20~ 50 µg で十分。)2) 精製した Total RNAから 200 nt 以下の small RNA画分を調

製する。MicroRNA Isolation Kit(BioChain 社 Code コードNo.KS34102)を使用。

3) 精製した small RNA画分(≦ 200nt)を変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動。電気泳動結果は下記のとおり。新しく作製した 0.5 µg/ml臭化エチジウム溶液でゲルを 10分間染色する。

4) 20 nt 前後の領域を切り出し、下記プロトコールに従ってmicroRNA画分を調製します。

① バイオマッシャー(Code No.304-30761)のフィルターチューブを1.5 mlマイクロチューブにセットする。

② フィルターチューブに切り出したゲルを挿入。③ 1×M Buff er(下記) 100 µlをフィルターチューブに加える。④ 破砕棒を上から挿入し、フィルターチューブに押し付けながら、左右に回転させ、ゲルをすり潰す。

⑤ 4℃、14,000 rpm(18,8K× g)で 5分間遠心分離する。⑥ 破砕棒をフィルターチューブより抜き、再び 1×M Buff er 100 µlをフィルターチューブに加える。破砕棒に付着したゲルはピンセットなどで落として、フィルターチューブに入れる。

⑦ 室温で 30~ 60分間静置。⑧ 破砕棒を上から挿入し、フィルターチューブに押し付けなが ら、左右に回転させ、ゲルをすり潰す。

⑨ 4℃、14,000 rpm(18,8K× g)で 5分間遠心分離する。⑩ 上清を1.5 mlまたは0.5 mlマイクロチューブに移し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)等量を加え、ボルテックスミキサーで混合する。

⑪ 4℃、14,000 rpm(18,8K× g)で 5分間遠心分離し、水層(上層)1.5 mlまたは0.5 mlをマイクロチューブに移す。

⑫ Ethachinmate(Code No.312-01791) 1 µl、回収した水層注1)

の 1/4量の 10mol/l Ammonium Acetate注 2)、全容量の2倍量の99.5%エタノールを加え、ボルテックスミキサーで混合し、室温で30分間以上静置する。(例えば、回収した水層 120 µlの場合には、10 mol/l Ammonium Acetate 30 µl 、99.5%エタノール300 µlを加える。)

⑬ 4℃、14,000 rpm(18,8K × g)で 15分間遠心分離し、沈殿を吸わないように上清を除き、沈殿を70%エタノールで2回洗浄する。

⑭ 45℃以下で乾燥後、沈殿を10 µl の RNase 活性チェック済みの滅菌水に溶解する。(サンプル調製完了)

注 1) 回収水層量を正確に計量して下さい。注 2) 3 mol/l 酢酸ナトリウムは使用しないで下さい。

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MicroRNA Isolation Kit(BioChain 社 Code No.KS34102)

Lane1:≧ 200 ntLane2:≧ 200 nt

←≦ 200nt small RNA 画分

0.5 µg/ml臭化エチジウム溶液電気泳動 Buff er 200 ml10 mg/ml臭化エチジウム溶液 10 µlよく混合する

10 × M Buff erTris 0.121gNaCl 0.292gMgCl2 0.095gDTT 0.154g滅菌水 8 mlに溶解し pH7.5 に調製後、10 mlにメスアップ。

終濃度500 mmol/l NaCl ,100 mmol/l Tris-HCl(pH7.5),100 mmol/l MgCl2 , 10 mmol/l DTT

この部分を切出し

20 nt →

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