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非ARDS と 低一回換気量

葛飾医療センター 臨床工学部 奥田晃久

JAMA. 2018 Nov 13;320(18):1872-80. PMID: 30357256

背景

• ICUで最も頻繁に行われている侵襲的換気は、有害なものであると認識されている。

• 低一回換気量を用いた肺保護換気がARDS患者の生存率を改善するというエビデンスはあるが、一回換気量制限が非ARDS患者に有益がどうかは確かでない。

Slutsky AS, Ranieri VM. Ventilator-induced lung injury. N Engl J Med. 2013;369(22):2126-2136.

Ventilation with lower tidal volumes as compared with traditional tidal volumes for acute lung injury and the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med. 2000; 342(18):1301-1308.

6mL/kgPBW vs 12mL/kgPBW (死亡率 31.0% vs 39.8% p=0.007)

初回一回換気量6.5mL/kgPBWから1mL/kgPBWの増加は、ICU死亡リスクを23%増加させる(ハザード比1.23, 95%CI 1.06-1.44, p=0.008)

Timing of low tidal volume ventilation and ICU mortality in ARDS: a prospective cohort study. Am J Respir Crit Care Med. 2014;191(2):177-185

• 2つのRCTで非ARDS患者に対し、一回換気量の減少が肺合併症の減少と関連していることが判明。

• 2つのメタアナリシスは一回換気量の減少が人工呼吸

期間を短縮するかもしれないことを示唆した。

6mL/kgPBW vs 12mL/kgPBW (肺炎の発症 4.3% vs 17.9% p=0.061)

Are low tidal volumes safe? Chest. 1990;97(2):430-434.

≦7mL/kgPBW vs 7-10mL/kgPBW vs ≧10mL/kgPBW 肺合併症の発症: 23% vs 28% vs 31% オッズ比0.72, 95%CI 0.52-0.98, p=0.042 ARDSの発症: 12% vs 16% vs 23% オッズ比0.48, 95%CI 0.32-0.71, p<0.01

Lung-protective ventilation with low tidal volumes and the occurrence of pulmonary complications in patients without acute respiratory distress syndrome: a systematic review and individual patient data analysis. Crit Care Med. 2015;43(10): 2155-2163.

Crit Care. 2010;14(1):R1

目的: 侵襲的換気開始時に非ALI患者における肺炎および肺損傷の発生に対する、従来の一回換気量(10mL/kgPBW)とより低い一回換気量(6mL/kgPBW)の効果を比較

方法: Randomized controlled nonblinded preventive trial ●:10mL/kgPBW, ○:6mL/kgPBW

低一回換気量では、 4日目の肺損傷スコアが有意に低い

P=0.003

低一回換気量では、 ALI/ARDS発症が有意に低い..

Intensive Care Med (2014) 40:950–957

目的: 一回換気量の減少が、患者の不快感及び鎮静の必要性を増し、その結果長期の人工呼吸管理になり得るかもしれないという仮説の下、非ARDS患者における一回換気量のサイズ、人工呼吸器装着期間、鎮静の必要性の関連性を評価。

方法: 一回換気量を3グループに分ける(黒線:≦6mL/kgPBW, 黒い破線:6-10mL/kgPBW、黒い点線:≧10mL/kgPBW)

p=0.001

低一回換気量で、 人工呼吸器フリー日数が有意に高い

• しかしながら、低一回換気量はより多い呼吸数、患者-人工呼吸器の非同調、及び代償的な吸気努力による自身での肺損傷のために、鎮静の必要性が高まる可能性がある。また、せん妄のリスクを高める可能性も。

8mL/kgPBW vs 7mL/kgPBW vs 6mL/kgPBW vs 5mL/kgPBW 患者のWOB, J/L: 0.86±0.32 vs 1.05±0.40 vs 1.22±0.36 vs 1.57±0.43, p<0.05

Effects of tidal volume on work of breathing during lung-protective ventilation in patients with acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med. 2006;34(1):8-14.

自発 強制換気 補助換気

同じ一回換気量を作るにも、 肺胞内圧の増減幅が大きいためストレスが掛かる Mechanical ventilation to minimize progression of lung injury in acute respiratory failure. Am J Respir Crit Care Med. 2017;195(4):438-442.

陰圧から陽圧と 振れ幅が大きい

• PreVENT試験を実施し、低一回換気量戦略が中一回換気量戦略より人工呼吸器フリー日数、28日生存率が優れているかを評価した。

PRotective VENTilation in Patients without ARDS at Start of Ventilation

PreVENT 主目的 非ARDS患者で人工呼吸管理されたICUの患者において、一回換気量の多い低呼吸数の換気戦略と、一回換気量の少ない高呼吸数の換気戦略を比較すること。 副目的 一回換気量の大きさがICU・入院期間および死亡率に与える影響、ARDS発症率、肺炎、無気肺、気胸、蓄積使用と鎮静薬期間、神経筋遮断薬の使用率、ICUせん妄とICU-AWの獲得、患者-人工呼吸器の非同調、機器の死腔の除去の必要性を調査。

オランダ6施設の研究集団

方法

Study Design

• オランダの6つの病院のICU

• RCT

• PreVENTプロトコールを使用

• 独立した委員会が試験の実施、および有害事象を監視しながら、2つの事前定義された時点で主要評価項目を盲目化しながら、試験を継続することを推奨した。

• 中間分析は行われなかった

Patients

• ICU入室前、または入室後に人工呼吸管理を受けた患者、および無作為後から24時間以内に抜管されないと予測された患者を登録。

• 患者はICUで換気開始から1時間以内に無作為化する

• ベルリン定義の基準に従って、ARDS患者は除外する

• その他の除外基準 18歳未満、妊娠、ICU入室前に12時間以上の人工呼吸管理、制御不能な頭蓋内圧上昇、肺疾患の既往、新しい肺血栓塞栓症。

ランダム化とマスキング

• 低一回換気量戦略群と中一回換気量戦略群に1:1の比率で無作為化した

• Webベースの自動化ランダム化システム(ALEAソフトウェアを備えたSSL暗号化webサイト、TenALEAコンソーシアム)を使用

• 無作為化は最小2名、最大6名の患者のランダムブロックサイズを用いて行われ、挿管場所(ICU内か外)と同様に中央に層別化された。

低一回換気量戦略群

• 6mL/minで開始し、VCVまたはPCVを使用。 • 一回換気量を1時間毎に1mL/kgPBWずつ減少させ

て、最低を4mL/kgPBWとした。 • PSVでは、目標一回換気量に到達のためのPS圧を最

低5cmH2Oとした。 • 最小PSVで一回換気量が8mL/kgPBWを超えて増加

した場合は、受け入れられた。 • 重度の呼吸困難(より多くの鎮静の必要性の有無に係

わらず不快感レベルの上昇、35回を超える呼吸数、制御不能なアシドーシス、患者-人工呼吸器非同調)の場合、VCVまたはPSVの患者は1時間あたり1mL/kgPBWの増加を許された。

中一回換気量戦略群

• 10mL/kgPBWのVCVで開始 • プラトー圧が25cmH2Oを超える場合、一回換気量を1

時間当たり1mL/kgPBWに減少した。 • PSVでは最高気道内圧を25cmH2O未満に保ちながら、

PS圧を目標一回換気量に達するように調整した。 • 人工呼吸器の設定は、少なくとも8時間毎にチェックし、

必要に応じてプロトコルに従って再調整した。

• 両群の換気戦略を可能にする目的で、鎮静または筋弛緩剤をさらに使用することは許可されなかった。

• 換気戦略は最大28日間続けられた。 • 患者が期間内に再挿管した場合には、無作為化した

時の換気戦略で再開した。

標準治療 • 臨床ガイドラインに従って治療を行った

人工呼吸器のウィーニング • FIO2<0.4、PEEPおよびFIO2が前日よりも低くなった時

にPSVで呼吸を評価。

• 担当看護師、医師が十分に目覚めていると判断した場合にPSVに切替えた。

• 患者-人工呼吸器非同調が認められた場合(無効な換気、ダブルトリガー、呼吸補助筋の使用)は、PSVで呼吸機能を評価した。

抜管基準1

以下の基準が30分満たされた場合 • 十分な咳反射

• FIO2≦40で、PaO2>200mmHg

• 呼吸数8~30/min

• 呼吸困難感がない

• PS圧が低一回換気量戦略群では7cmH2O以下、中一回換気量戦略群では12cmH2O以下

• 38.5℃以下、36.0℃以上

• 制御不能な不整脈なし

• 血行動態安定(sABP80-160mmHg、HR40-130bpm)

抜管基準2

• 医師および看護師は、抜管前にPS圧を下げて患者が最低PS圧で換気できるか判断する。

• PS圧は7cmH2O以下になるまで、1時間あたり2-5cmH2Oの幅で下げられた。

• PS圧が条件に従って軽減されない場合は、無作為化に従った一回換気量を維持するPS圧に戻し、翌日に再評価された。

• 主治医が抜管の最終決定をした。

• 期間内の非侵襲的換気は許容されるが、同程度の一回換気量になるよう試みるべきである。

気管切開

• 人工呼吸管理10日以内の気管切開が望ましい

• 14日を超えることが予想される人工呼吸管理の場合

• GCS7未満で咳反射、嚥下不良、または痰の貯留がある場合

• ICU-AWの場合

• 抜管後の繰り返す呼吸不全の場合

Outcome

Primary outcome .1

• 28日目の生存と人工呼吸器を使用していない日数

• 換気補助がない期間が24時間以上連続した場合に算出した

• 挿管及び抜管を繰り返す場合、人工呼吸換気がなく、少なくとも24時間連続して続く期間を合計した

• 人工呼吸期間は時間数で、主要評価項目は日数で表した

• 長期の人工呼吸管理は、VAPやICU-AWを含む生理学的及び心理学的な合併症と関連している。

Primary outcome .2

• 人工呼吸期間を短くすることはコスト削減に関連する

• 人工呼吸器フリー日数および生存期間は、本トライアルの基準を満たすために人工呼吸期間15%削減に近づくであろう

• 気管切開していない患者は、24時間以内に再挿管を必要としない場合に成功と定義する

• 気管切開患者は、少なくとも24時間外れている場合に成功と定義する

Secondary outcome

• ICU滞在期間、入院期間 • ICUと院内の28-90日死亡率 • ARDSの発生、VAP、重症の無気肺、および気胸を含む合

併症の発生 • 鎮静剤の投与量、鎮静剤および神経筋遮断薬の使用、輸

血、死腔削減の必要性、せん妄の発生 • ICU-AWの発生、横隔膜信号の電気的活動変化、呼気の

揮発性有機化合物の組成は信頼できるデータ収集できず

Other Study Parameters

• 医療関連費用は、人工呼吸管理費用、ICU・院内滞在時間、鎮静薬および神経筋遮断薬の使用、気管切開の施行、ならびにVAPの治療に関する費用を集計した

• 医療関連費用に関する分析は本試験では報告していない。

統計分析 • 患者数952人のサンプルサイズは28日目の人工呼吸

器フリー日数の5日間の標準偏差(SD)との相違を示す80%の統計的検出力を有すると推定された

• ベースライン特性は、数とパーセンテージ、または中央値と四分位置(IQRs)として報告した

• 群間の一回換気量の経時的な比較は、病院と患者に対する無作為切片を用いた混合モデルを用いて行い、時間は連続変数として扱われた

• Primary outcomeの分析に、t検定を95%CIと共に使用

• sensitivity分析では、無作為効果として層化抽出法を持つ無秩序化混合モデルで検証された

• ICUと入院期間及び死亡率は、Kaplan-Meier生存曲線を用いて比較され、Cox比例ハザードモデルから計算されたハザード比として報告

• 変換された時間に対するSchoenfeld残差は、比例ハザード仮定の検定に使用

• 生存期間は無作為化の時点から、何らかの原因による死亡時または患者の追跡調査に失敗した検閲までの生存時間を計算した

• 他の二次的結果は、リスク比とWald尤度比近似値検定および仮設検定のためのX2検定で計算された95%CIで評価した

• ICUと入院期間に対する介入の効果は、逆ガウス分布を用いた一般化線形モデルで推定した

• 事前に特定された探索分析において、主要転機に対する介入の効果は、以下の患者カテゴリーに基づくサブグループにおいて調査された

肺炎のあり、なし

敗血症のあり、なし

P/F比が200より小さいか、大きいか

肺障害予測スコアが4以上か、未満か

外科か、内科か

SAPSⅡスコアが50以上か、未満か

無作為化前の人工呼吸管理が6時間以上か、未満か

挿管がICU内か、外か

2014年9月1日~2017年8月20日

低一回換気量戦略群 中一回換気量戦略群

結果

無作為化前は、両群に特に差はなし

換気開始から無作為化までの時間の中央値は0.88時間(IQR, 0.36-2.01) ICUでの換気開始から無作為化までの時間の中央値は0.57時間(IQR, 0.23-1.00)

低一回換気量戦略群にて呼吸性アシド―シス、 呼吸数が有意に多い

有意差はあるが、 許容される範囲

VCV

低一回換気量戦略群にて呼吸数が有意に多い

PSV

低一回換気量戦略群 ではあるが、 一回換気量が多い?

PCV ASV NAVA

それ程人数は多くないが 一回換気量の差も少ない

両群のDriving pressureが高い

VCV

低一回換気量戦略群 ではPaCO2が高く、 呼吸性アシドーシス が有意に多い

PSV

呼吸性アシドーシス、 PaCO2に有意差なし

PCV ASV NAVA 両群共に無作為化直後のFIO2が他のモードに比べると高めである

28日後の人工呼吸器フリー日数

中央値 21日(IQR, 0-26) 平均値-0.27(95%CI -1.74-1.19) p=0.71

人工呼吸器フリー 90日生存率

ICU滞在日数 院内滞在日数

RASSが深め?

人数は少ないが酸素化 の悪い人がいた?

28日間の人工呼吸器フリー日数への影響

換気開始が、ICUか、ICU外かにおいて有意差があり

考察 • 24時間以内に抜管されないと予想される非ARDS患者

には、低一回換気量戦略は中一回換気量戦略より人工呼吸器フリー日数、28日生存率とも効果的でなかった

• 入院期間、死亡率、肺合併症の発生に差がなかった

• 低一回換気量戦略は呼吸性アシドーシスと関連した

• この研究は、非ARDS患者における一回換気量の役割を調査し、臨床的に関連性のある患者中心の転帰を測定するための最大の無作為化臨床試験であった

• この研究は、実用的なプロトコルを使用することによってバイアスを最小にするよう設計された

• キャリーオーバーの可能性を最小限に抑えるため、ICUで換気を開始してから1時間以内に、またできるだけ早く無作為化を実行することを目的とした

• 患者は3年間にわたり試験に登録され、その間も標準治療は変わらなかった。

• 本研究は2つの同様の研究と比較していくつか違いがあった。

• この研究では、換気開始から無作為化までの時間と、必要な換気量を予測する期間が他の研究よりはるかに短かった

• 他の研究の一回換気量は、9mL/kgPBWと、10および12mL/kgPBWであり、吸気圧は制限されていた

• 無作為化前の換気期間、VCV時間、鎮静期間は、前の研究よりも短かった

• PSVが頻繁に使用されたので、低一回換気量群の一回換気量は他の研究より僅かに高かった

• 人工呼吸器フリー日数は、世界的な観察研究で報告された日数と同程度であり、両群間で差はなく、以前のデータと一致した

• 両群間で人工呼吸器を使用しない日数に差がないことに対する考えられる説明は、中一回換気量によって誘発される膨張圧のレベルが非ARDS患者の保護範囲内であったこと

• さらに、低一回換気量戦略は、呼吸性アシドーシスと関連していたが、それは換気期間に影響を与えた可能性がある

• 感度分析の1つでは、ICUでの挿管と低一回換気量戦略への割り当ての組み合わせが、人工呼吸器フリー日数の減少に関連していることが示唆された

• これらの調査結果は、中一回換気量戦略の代わりに低一回換気量戦略を追求することは必要でないかもしれないという考えを支持する

• VCVとPSVの一回換気量の制限は、CO2貯留と呼吸性アシドーシスの増加に関連していた

• VCVにおけるPCO2の増加は、一定の分時換気量によって反映されるように、呼吸数の増加によって十分に代償されなかった

• 従って、VCVにおけるより高い呼吸数のみでは、PSVにおける呼吸数と一回換気量の複合的な増加よりも生理学的ではない可能性がある

• 低一回換気量戦略は、中一回換気量戦略よりも効率の低い肺胞換気を促進することを示した

Limitation

1.盲目化は不可能 ⇒ スタッフの介入は結果に特別関与せず、呼吸器ケア、

鎮静方法、救命治療において差はなかった

2.多くの患者が無作為化のため除外された ⇒ 無作為化が可能であった短時間の理解可能な結果

3.ICUでの換気開始1時間以内に患者を無作為化することを意図していたが、この時点での無作為化は実用的でない、または不可能であった。 ⇒ 患者の大多数は1時間以内に無作為化された

4.これらのデータは、本試験で使用した一回換気量よりも高い又は低い一回換気量からの潜在的な害は排除しない。

結語 • 24時間以内に抜管されないと予想された非ARDSの

ICUの患者では、低一回換気量戦略は中一回換気量戦略と比較してより多くの人工呼吸器フリー日数をもたらさなかった。

私見

• 非ARDS患者においては、低一回換気量に拘らない • 肺胞低換気は回避すること • Driving pressure は重要 ⇒ 15cmH2O以下に管理

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