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エアロバーコ計量換気システム Vol.2 . 1980 2003.10.01 MADE IN SWEDEN

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Page 1: エアロバーコ計量換気システムエアロバーコ計量換気システム 基本知識Vol.2. 1980年から日本に換気システムを輸入 換気を科学するディックス

エ ア ロ バ ー コ 計 量 換 気 シ ス テ ム

基 本 知 識 V o l . 2 .

1 9 8 0 年 か ら 日 本 に 換 気 シ ス テ ム を 輸 入

換 気 を 科 学 す る デ ィ ッ ク ス

2 0 0 3 . 1 0 . 0 1

M A D E I N S W E D E N

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目 次 2-1 換気の歩み;「空気量と空気質」 換気損失とシックハウス

2-2 熱損失中に占める換気損失量 2-3 熱損失の削減方法と性能確認 2-4 省エネルギーの三要素と歩み 熱の歩み、気密の歩み、

換気の歩み 2-5 設計換気量の敵「風と隙間」 ドラフトより風圧の影響が大 2-6 健康に影響する換気量

屋内空気を汚す原因物質

換気回数と屋内空気質 空気の成分と人の摂取量 有害化学物質の各国基準 厚生労働省のガイドライン シックハウス症候群と

化学物質過敏症、食物連鎖 2-7 換気方式と機器

換気方式の区分

熱回収器の起源、分類、意義

セントラル換気システム

第一種換気システム

第二種換気システム

第三種換気システム

給気用アクセサリー

排気用アクセサリー

ダクトの種類

風量コントローラー

台所レンジフード

排水トラップ

2-12 換気システムの施工管理と保守

建物構造上の留意点

設計プラン上の留意点

ダクトの気密

保守対応

付帯(別途依頼)工事

2-13 試運転と換気量の計測

2-14 換気システムのメンテナンス

2-15 換気と湿度の関係

2-17 付録 (1) 気密テスト

(2)エアロパスカル VH2000S

(3)建築基準法での換気回数

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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2-1 換気の歩み;「空気の量と質」 住宅における「換気」は、 ① 1960 年代後半から北欧ではセントラル換気シ

ステムが常識化し、 ② 1980 年代初頭から北海道・北東北・カナダで北

欧等よりセントラル換気が導入され始め、 ③ 1990 年前後から南東北・関東・長野でもセント

ラル換気が関心を呼ぶようになった。 ④ どの国、どの地域でも 初は「省エネルギー対

応=空気量」、そして次には「シックハウス対応

=空気質」との関連で、セントラル換気システ

ムは大きな関心を呼ぶようになった。 ⑤ 日本では2003年7月より建築基準法の一部が改

正され「シックハウス対応条項」がようやく規

定され、機械による連続換気が注目され始めた。 従って「住宅の換気」を計画するときには、常に

次の二つの要素を念頭におくことが重要である。 (1)「熱損失を 小限にする目的での空気量」 (2)「健康を維持する目的での空気質」

つまり換気設計にあたっては、空気の「量と質」の

両面を同時に考慮する必要がある。

2-2 熱損失中に占める換気損失量 右図のような建物の熱損失の算出方法において、

建物外殻(屋内外の境界である天井・外壁・窓・床)

を通過(=高温度から低温度へ伝熱)する「伝熱損

失(=w/m2・K)」と、建物屋内外の空気交換(=以

降換気と言う)による「換気損失(=換気損失w/m3・

K)」の二大熱損失(=熱移動)が主になる。(この他に輻

射や潜熱による負荷がある。) 表の右欄に二大熱損失の構成比(%)を表す。

熱損失が少ないほど、暖房・冷房いずれにおいても

ランニングコストが低下するから、熱損失を可能な

限り 小限にすることが求められる。 2-3 熱損失の削減方法と性能確認

建物外殻(屋内外の境界である天井・外壁・窓・

床)を通過する伝熱損失を減少させる手法の一番目

が、外殻(外気に面する天井、外壁、床、窓)に断

熱材を付加し、窓ガラスを複層化するなどの「断熱」

の導入である。 二番目に、建物屋内外の空気交換による換気損失

を必要 小限にするために「計画換気」(=建物の全

換気量を適正量に人工的コントロールができる換気

システム)の導入である。 [伝熱損失と換気損失の構成例…暖房] 図表-1

*0.5 回/h,換気時; 熱損失全体の約 29%が換気損失の例

伝熱 56.5 24.7%

換気装置(0.5回/h)

玄関開閉 0.98

レンジフード排気 3.26

建物漏気(ACH=3) 10.15

Qt 229.11

S 118.40

q 1.94

27.98

W/m2K

16.30

日射 0.0

日射 0.0

伝熱 0.0

7.1%

0.31

22.2%50.77

6.3%

区分

伝熱損失71.5%

換気損失28.5%

100%

12.3%

27.4%

部位断面図

62.86

延べ床相当面積 m2

熱損失係数 W/m2 K

総熱損失 w/h,K

従って熱損失計算値をより正確に求めるには、 ① 建物外殻(天井・外壁・窓・床)の断面仕

換 気

土間床

標準床

天 井

部 

屋 

外 

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

様書で「断熱性能値」を計算したり、出来れば施工

現場で断熱施工状態の観察するなどして確認する。 加えて、建物に安定した設計換気量(=m3/h)を

もたらすために、 ② 気密テスト実施によって「建物気密性能値」を

確認する。 ③ 設計換気量を連続して得られる換気装置を採用

し、設計風量値が得られるよう風量測定器によ

って竣工時「換気装置の換気量」を調整する。

2

以上の確認と調整が重要となる。 ①は伝熱損失を把握するのに必要であり、②と③

は換気損失を正確に把握するのに必要となる。 理想的には建物一戸毎であるが、少なくとも抜き打

ち的に何戸かに一戸の割合で、上記3つの性能確認

を実施することが熱損失値の把握に役立つ。

2-4 省エネルギーの三要素と歩み 世界的にエネルギー価格の高騰を招いた1973年、

そして 1979 年の二度に亘るオイルショック以降、

産業用並びに民生用の製品製造・仕様などに於いて

省エネルギー化が急速に進んできた。 民生用の分野では住宅も例外でなく、寒冷気候の

北欧やカナダなどが率先して省エネルギー建築技術

開発のために断熱・気密・換気関連の法的整備や優

遇融資などを進めた。これらの国々では建物竣工時

には、気密テストを行って施工精度の確認をし、加

えて換気装置の換気量の調整も重要視した。 「断熱」と「気密」を向上させた上で「換気」量

を適当な量(約0.5 回/h)にコントロールさせた

住宅の熱性能は、1980 年代の間歇・部分暖房方式の

日本住宅が一冬に必要とした燃料代の約 1/4 レベ

ルで、建物全館を 24 時間平均 18℃程度に連続暖房

できる熱性能となる。 一方、日本は北海道で 1980 年代から北欧・カナ

ダを手本に民間人が先進技術を導入し、東北北三県

がこれに追随したが、全国的には 2000 年以降にな

っても省エネルギーの三要素「断熱・気密・換気」

共に水準は未だに低い状況にある。

(1)断熱の歩み

北欧・カナダでは、断熱は単に厚さや密度が大で

あれば良いと言うことで無く、断熱効果を左右する

実際の施工精度を重要視した。 表は、同程度の冬季気候である札幌地域とストック

ホルム地域(スウェーデン)の年代別断熱水準に関

しての概略比較である。 図表-2

*1987 年欄は、両地区とも進歩的住宅の断熱仕様を使用した。

1974 SBN

1975 SBN 1980 1987S

BN

北海道 省 エ

ネ 基

準 北海道

平均気温℃と 平均湿度%

年代 断熱 区分

断熱厚=mm 11~4 年平均

天井 200 260 300 400 外壁 150 190 200 270

厚 床 150 200 200 200 kg/m3 ~28 28 32 32

ク窓ガラス 2枠 3枠又はトリプル

0.1℃

87.7%

6.6℃

82%

天井 50/100 100 300 外壁 50/100 100 145

厚 床 50/100 100 235 kg/m3 10 10 16/24

区窓ガラス アルミ枠サッシ、W PVC,W

0.15℃ 70.5%

8.06℃

73%

日本は断熱材の質、量ともに改善の余地が多い。 特に関東以西の後進性が目立つところである。

(2)気密の歩み 建物気密性能は気密テストによってのみ確認で

きる。従来の建物外殻のように隙間が多い建物の場

合は、風圧などの力で屋内外の空気が隙間を通じて

自由気ままに入れ替わる「自然換気」が発生する。

気密を必要とする理由は、建物に隙間があれば換気

装置による計画換気量のほかに変動的な隙間換気

量が付加されので、計画空気量(=建物の全換気量

が人工的に制御されている状態)が失われて、結果

的に換気量増大=熱損失量増加と屋内温度分布の

不快を招くからである。 建物の気密測定は、建物外殻に残る「隙間」を調

べられるので、建物完成時に測定をして隙間の原因

を調べれば、自然換気の殆ど発生しない気密(隙間

を減らした)住宅の施工技術開発に役立つ。 また、隙間の多少を知ることで建物の総換気量(計

画換気量と自然換気量)が推測できるから、現実的

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

な換気負荷(熱損失)を計算するのに役立つ。 (どの程度の気密性能が建築に求められるかは、5.設計換気量の敵

「風と隙間」、で説明する。)

3

下の三表は、北半球3カ国で制定された建物気密

基準について年代順に比較したものである。

①スウェーデンの気密基準 (1975 年 SBN) 図表-3

*相当隙間面積への換算は、隙間特性値(n)が定数では無いた

め正確に換算できない。上記の換算は n=1.5 とした場合の換 算である。実際には建物の隙間の性質により、表の数字をも とに±30%程度の偏差が生じる可能性が有る。

②カナダの気密基準 (1985 年頃 CHBA) 図表-4

*R2000 住宅は、スウェーデンの影響を強く受けている。

R2000 住宅の設計施工技術は、日本に導入されている。

③日本の気密基準 (IBEC)

日本は気密性能を表すときに国際標準のACH(=

漏気回数/h)を使わず、相当隙間面積C (=cm2

以下/床1m2)を使っている。

各表での、ACH と相当隙間面積相互への換算は隙

間特性値 n=1.5 として換算してあるので、測定物件

によって±30%程度の偏差が生じる可能性がある

ことを断っておく。

表を見て判る通り1980年省エネルギー基準、1992

年新省エネルギー基準、1999 年次世代省エネルギー

基準の日本基準はいずれも欧米水準より劣る。

図表-5

制定 年代 住宅建築地域 相当隙間

面積(C 値)

漏気回数 換算

(ACH) 1980 日本全国 指針なし ―

Ⅰ,Ⅱ地域 (北海道、東北地

区北3県) 1992 Ⅲ地域以南

(南東北3県以

西)

5.0cm2以下

/m28.3 回/

h,50pa

Ⅰ,Ⅱ地域 (北海道、東北北

3県)

2.0cm2以下

/m23.3 回/

h,50pa 1999

Ⅲ地域以南 (東北南3県以

西)

5.0cm2以下

/m28.2 回/

h,50pa

制定 年代 住宅の区分 漏気回数

(ACH)

相当隙間

面積換算

(C 値)

1975 1.5 階、連結 3 回以下

/h,50pa 1.8cm2/

m2

1975 2 階建て 2 回以下

/h,50pa 1.2cm2/

m2

1975 3階建て以上 1回以下

/h,50pa 0.6cm2

/m2

1985 電気暖房住

宅 1回以下

/h,50pa 0.6cm2

/m2

*日本は気密性能を表すときに国際標準のACH(漏気回数/h)を

使わず、相当隙間面積C (cm2以下/床 1m2)を使っている。

(3)換気の歩み;システム化のルーツは北欧

住宅の換気量を法的に規定したのは北欧が早く、

特にスウェーデンは 1970 年代には法律でシックハ

ウス対策を念頭に置いた推奨換気量を決めていた。

又、住宅の換気方法として清掃性に優れたスパイラ

ルダクトを使用した「セントラル換気システム」を

推奨し、換気の総量や各部所への空気分配技術も確

立させた。 制定 年代 住宅の区分 漏気回数

(ACH)

相当隙

間面積

換算 (C 値)

R2000 住宅 1.5 回以下

/h,50pa 0.9cm2

/m21985

竣工時の 目標値

0.8 回以下

/h,50pa 0.5cm2

/m2

図表-6

排気バルブ

80,100,125φスパイラルダクトを

使ったセントラル換気システム

(スウェーデンなど北欧各国の 24 時間連続換気システムの例)

今日、世界的に住宅の推奨換気量を「0.5回以上

/h」とする例が多いが、この考え方のルーツは北

欧の 24 時間連続運転のセントラル換気システム設

計値である。このシステムは 1979 年から北海道に

輸入され、全国的な関心を集め、各地の先進省エネ

住宅に採用された。

もともと日本は、住宅の居室に換気口や換気扇を

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

装着している例は極めて少なく、唯一北海道では昔

ブロック造住宅の各居室に結露低減の目的で自然

換気口を取付け、その習慣が住宅全体に広がった。

(この官主導の住宅での湿度は高く約 10 年で床が

抜けた建物もあったと言われている。)

そして、換気口の有無にかかわらず 1998 年頃ま

では省エネ住宅と称しても、熱損失計算時の換気回

数は毎時1~1.5 回/h程度も設定するような公的

指針値が使われた。

1992 年の新省エネ基準から0.5 回/hの換気回

数を寒冷地域では計算上用いることになったが、実

態として換気回数0.5 回/hを法制化したのは

2003年7月の改正建築基準法で常時機械換気設備の

設置を義務化した時点からである。しかし、建材か

ら居室に発散するシックハウス症の原因物質の一つ

であるホルムアルデヒドガス希釈にのみ偏重してお

り、換気対象気積も押入れや納戸など除外部分を設

けているなど、内容改善の余地が残されている。

4

2-5 設計換気量の敵「風と隙間」 建物の気密が低ければ、換気量は安定しないから、

熱損失計算が正確に算出できない(現実的には換気

熱損失は増加することが考えられる)。 低気密の建物の換気量が増大する主因は「風」で

ある。自然界では風速0mという時は少ない。冬季

に限って地区別の平均風速を見てみよう。 ■各地の平均風速(冬季) 図表-7 札幌 室蘭 函館 帯広 旭川 八戸 秋田 11~4月

m/s 2.7 5.9 3.9 2.4 2.2 4.6 4.9 時 速

km/h 9.7 21.2 14.0 8.6 7.9 16.6 17.6

冬季の屋内外温度差によるドラフトでも隙間換

気(=自然換気)が発生するが、次式のようになる

ので風速から見れば温度差の影響は明らかに少ない。 温度差の影響 < 風速 1.5m/s < 風速の影響

それでは風速による影響で換気量がどの位増加

するかを次表で見てみよう。

表の見方は、 ① グラフの Y 軸=換気回数(回/h) Y 軸の 0.5 は、換気システムの風量調整値を0.5 回

/hにセットした建物を表わす。 ② グラフの X 軸=風速(m/s)

③ グラフでの3つの右上がり曲線は、気密測定で

漏気回数/h(ACH 評価)が、ACH=3 回、2 回、

1回、の計3種類の場合を表す。 ④ それぞれの曲線において、各風速(m/s)に

おける換気回数の増加(右上がり)が表されている。 図表-8

Ventilation/h=換気回数/h, Wind speed=外部風速 m/s

Air changes/h,50pa=漏気回数/h.

例えば、風速0m/s の時はどの曲線(=どの気

密水準の建物)も換気システムで調整した設計換気

回数0.5回/hで安定している。

しかし、風速が6m/s に上がった場合は、当初

換気回数0.5回/hが、およそ次のような換気回数

に変化するとされている (SWEDEN) 。

表から読み取れるのは、

① ACH=1の建物の換気は0.5回/hで安定。

② ACH=2の建物の換気は0.7回/hに増加。

③ ACH=3の建物の換気は1.1回/hに増加。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

平均風速はあくまで平均値でしかなく、実際の風

速は±数m/sは振幅するであろうから、①のACH=1(相当隙間面積換算では約 0.6cm2/m2)程度の

建物の気密が、換気による熱損失を 小限にする(=

換気システムの設計換気量に安定させる)目的のた

めには望ましいと言うことが分かる。

注意すべきことは、

(1)設計換気量 m3/h ―(2)風による隙間換気

(1)-(2)=換気システム換気量

には、ならないと言うことである。その理

a.風による隙間換気(=自然換気)は

あり、風が吹かなければ停止するし

いていても風速次第で変動し、安定

熱損失を確定できないからである。

b.平均風速はあくまで長期間の平均で

均値に実際値が存在しない恐れが十

c. 元々、機械換気量+計算上の自然換気

計換気量にはならない。 従って、換気設備の設計換気量を決める

隙間(自然)換気量は当てにせず無視すべき

以上のことより、換気システムで換気によ

を適正にコントロールするためには、建物

が如何に重要であるかが理解できる。

2-6 健康に影響する換気量 一方、換気設計において省エネルギー(

の安定)と共に住宅内の「空気質」をいか

に保つかも重要な問題となる。ヨーロッパ

年代、日本では 2000 年頃から「SBS=

症候群」の発生が社会問題となった。 屋内空気質の汚染、いわゆるシックハウ

ことが原因で起きるアレルギー症の多発問

ある。

(1)屋内空気を汚す原因物質 (a) 呼吸器と皮膚のアレルギー疾患(免疫系異常)

の原因となるハウスダスト 人やペットのフケやアカ・タバコの煙・外部から

持ち込まれた花粉・埃・カビ・ダニなどの微生物は、

気管支喘息・クシャミ・アレルギー性鼻炎や、アト

ピー性皮膚炎・水泡・涙目などが発症する原因とさ

れる。

X

m3/h (b) 肺癌の原因となる放射性同位元素ラドン

Y m3/h コンクリート・レンガ・岩石・石膏・土・アスベ Z

5

由は、

不安定で

、風が吹

せず換気

あり、平 分にある。

量=合

場合には、

である。 る熱損失

の気密化

=換気量 に健康的

では 1970病的建物

スに住む

題などで

ストなどから放出され、肺に吸入されて肺癌の発症

原因になるとされる。

(c) 癌や神経疾患の原因となる揮発性有機溶剤 (VOC,VVOC,SVOC,POM)

新築時の新建材、そして持ち込まれた家具・カー

テン・壁クロス・ドア・造り付け家具・台所セット・

洗面台・家電品などに塗布された塗料やコーキング

剤や接着剤、床ワックス・メンテナンス洗剤・芳香

剤など、多数の物から揮発性有機溶剤のガスなどが

放散する。 これらに触れたり吸引することで化学物質過敏

症(=有機系化学物質により自立神経系に直接異常

をもたらす。肺から血管経由では脳障害)の発症原

因となるとされる。

(d) カビやダニを繁殖原因となる生活湿度 カビやダニは屋内空気の相対湿度が 40%を超え

る空気環境下で大量に発生する。理由は、冬季の建

物外殻(低温外気に接する天井・床や、特に窓ガラ

スや外壁)の屋内側表面側が室温よりも低温になり

がちで、これらの低温部に生活で放出された湿気が

触れ、相対湿度が上昇し結露が発生するからである。

結露が発生するとカビが育ちやすくなる。カビを

餌とするダニも繁殖し、ダニの糞が空中に飛散し、

呼吸で吸い込むとアレルギー性喘息に至るとされて

いる。 人の生活で1日当たりに屋内に放出される湿気

量は、例えば 4 人家族の場合で次のような試算値が

ある。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

図表-9

① 人体から 4.0 リットル ② 炊事で 1.6 リットル ③ 家事で 1.0 リットル ④ 洗濯乾燥 0.9 リットル ⑤ 入浴で 1.3 リットル ⑥ 観葉植物 0.6 リットル

6

生活湿度 合計 9.4 リットル /1日 このような「生活湿度」は、換気して外に放出し

なければ、屋内に大量蓄積されることになる。 暖房温度が 17℃以上あっても、窓に水滴が発生し

敷居にまで水が流れ落ちるような場合は、明らかに

生活湿度の残留と、換気不足が濃厚である。 下表は、冬季のガラス表面温度(屋内側)である。

(出所;北海道住宅新聞記事より抜粋)

図表-10

室内の相対湿度を計測して、空気線図を使えば結

露になるガラス温度との関係が判断できる。 ガラスの温度は、窓の屋内側に障子やカーテンが

配置されている場合には、表の温度よりも極端に低

温になるので注意を要する。

(e)各種の匂い・臭気

我々は身体、化粧品・芳香剤・調理などの匂いを

屋内に常に放出している。或いはペットや植物や洗

剤及び家具や建材からも臭気が出る。臭気は往々に

して有害ガスを含んでいる。マニュキァを除去する

徐光液にはアセトンが含まれているし、塗料臭には

VOC、そして建材臭にはフォルムアルデヒドが含

まれているであろう。 外気が爽やかなように屋内空気も出来るだけ臭

いが薄い方が快適であり、濃い臭気の滞留は健康に

よくない空気の判断材料となる。

(f) 農薬、肥料、排気ガス、粉塵、ごみ これらの人工的な生産物や、タイヤの磨耗やエン

ジン・燃焼機器の排気ガス、民生・工業生産の過程

で排出されるゴミも又、空気汚染の原因となり建物

内や屋外などで人間や動植物に悪影響を与える原因

となる。

以上のことから、換気設計では省エネ的な「換気 の量」に加え、衛生的な「空気の質」を確保するこ

とがより重要になることが分る。 (2)換気回数と屋内空気質

屋外空気の成分がきれいであるという前提にた

って、屋内空気と外気を交換し、すなわち屋内空気

浄化のために「換気」を行うことは健康を維持する

上で必要不可欠なものとなる。 暖冷房のランニングコスト抑制に配慮しながら、

殆どの人が不快を訴えないレベルの換気量は、北欧

の経験値を基に換気回数 0.5 回以上/h という値が

世界的に支持されている。 つまり、屋内の空気容積の 50%が 1 時間で外気と

入れ替わる率の 24 時間連続換気量である。 但し、この換気量を 24 時間維持しても、有害成

分が常時発散している建物は、濃度希釈はできても、

根本的な安全性までは確保できない。

日本の建築基準法では、居室気積のみが換気対象

となっており、押入れや納戸などを原則対象外とし、

結果的に国際標準で言う 0.5 回/hより実質的に低

くなってしまう換気回数となる不可解な計算基準

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

なので注意が必要である。 ■ 毎時当りの換気回数とは次式で求められる。

図表-11

換気回数(回/h) =

7

・毎時換気量(m3/h)=住宅で換気される全ての

換気量(1時間当り)。

・換気対象容積(m3)=住宅内で換気対象となる

気積。

世界的には、外殻から内

側の住空間全て(但し、

階間の空間は除かれる)。

(3)空気の成分と人の摂取量 空気の性質と成分を見てみよう。

(国際単位系での表示 Système International d’Unitès)

① 空気の重さ;

0.83m3/kg (1.204819kg/m3),dry air,293K

② 気圧;

101,325pa,Standard absolute pressure, 760Hg, 293K,9.8g

③ 空気の成分;

Fresh air =新鮮空気、

Expiration=呼吸後の吐気

N2 O2 CO2 H2O Fresh air 78.8 20.70 0.03 0.47 % Expiration 78.8 15.32 4.38 1.50 %

④ 人が生命維持に必要とする三要素

図表-12

①1日当たり1kgの食料

②1日当たり2kg(2リットル)の水

③1日当たり 15kg の空気

三要素は、(いずれも1人当り)

1日当たり 15kgの空気とは、約12.5m3(3.2

帖間)の体積であり、このうち約 21%が「酸素」で

ある。

酸素がないと人は死に至る。

この空気量で呼吸には間に合うが、体臭に加えて、

建物(建材・家具類)から発散する健康上有害な化

学物質など空気汚染を薄める目的での空気量が加

わり、呼吸量以上の新鮮空気が必要となる。

毎時換気量(m3/h)

換気対象容積(m3)

それらのためには0.5回以上/hの換気回数が住

宅に必要である事が、1970 年代北欧などの経験から

割り出され、以降世界的にもこの換気量の妥当性が

認知されるに至ったのである。

我々がセントラル換気システムの設計を担当す

る場合には、日本の建築基準法での対象気積を換気

対象気積とするのではなく、世界的な標準である

「外殻から内側の住空間全て(但し、階間気積は除

かれる)」を換気対象気積とすることの方が賢明で

あろう。

建築基準法は、設計換気回数の下限を規定してい

るに過ぎないから、換気量を増加させることは違法

にはならず、安全側となるからである。

次に空気質の基準をいくつかと、シックハウス症 候群、化学物質過敏症の区分と主な症状例を紹介す

る。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム a.ホルムアルデヒド;各国の基準と発ガン率(参考試算) 図表-13

b.化学物質の空気濃度ガイドライン(厚生労働省設定の化学物質室内濃度 2002,01 現在) 図表-14

ホルムアルデヒドの室内濃度基準値 暴露による発ガン予測率

日本 0.08ppm

スウェーデン ドイツ オランダ

0.10ppm

アメリカ カリフォルニア アメリカ ウイスコン

0.20ppm

WHO(世界保健機構) 0.08ppm

毎週 125Hr x 5年間 に亘ってホ

ルムアルデヒドを吸引し続けた場

合の発ガン予測率 0.01ppm ⇒ 8 人/100 万人 0.10ppm ⇒ 1人/1 万人 1.00ppm ⇒ 14 人/1 万人 *上記は EPA 資料をもとにした試算例

化学物質 指針値 *ppm=体積比, μg=重量/m3換算(右側) 主な用途

①ホルムアルデヒド 0.08ppm 100μg/m3

合板、パーティクルボード、

壁紙用接着剤等に用いられ

る尿素系、メラミン系、フ

ェノール系等の合成樹指、

接着剤 ・一部のノリなどの防腐剤

②アセトアルデヒド 0.03ppm 48μg/m3 ホルムアルヒデ同様一部の

接着剤、防腐剤等

③トルエン 0.07ppm 260μg/m3 内装材等の施工用接着剤、

塗料等

④キシレン 0.20ppm 870μg/m3 内装材等の施工用接着剤、

塗料等

⑤エチルベンゼン 0.88ppm 3,800μg/m3 内装材等の施工用接着剤、

塗料等

⑥スチレン 0.05ppm 220μg/m3 ポリスチレン樹指等を使用

した断熱材等

⑦バラジクロベンゼン 0.04ppm 240μg/m3 衣類の防虫剤、トイレの芳

香剤等 ⑧テトラデカン 0.04ppm 330μg/m3 灯油、塗料等の溶剤 ⑨ク口ルピリホス 0.07ppb(小児の場合

0.007ppb) 1μg/m3 (少児 0.1) 防蟻剤

⑩フヱノブカルブ 3.8ppb 33μg/m3 防蟻剤 ⑪ダイアジノン 0.02ppb 0.29μg/m3 殺虫剤 ⑫フタル酸ジ-n-ブチル 0.02ppm 220μg/m3 塗料、接着剤等の可塑

カ ソ

剤 ⑬フタル酸ジ‐2‐工チルヘ

キシル 7.6ppb 120μg/m3 壁紙、床材等の可塑剤

⑭総揮発性有機化合物量

(TVOC) 暫定目標値 400μg/m3

※ 23℃でホルムアルデヒドの重量 0.1mg/m3 (=厚生労働省指針値の空気濃度 0.08ppm) ホルムアルデヒドの指針値を量的に分り易く言うと、浴槽 200 リットルに対し約2滴の換算。

8

※ ppm=化学物質の体積/空気体積の比。(例えば、0.1ppm とは、空気 1,000 リットルに対して 0.1ml(=10 滴分程度)。 *ppm=100 万分の 1 の濃度(マイクログラム)。

アレルギー(免疫系に異常)を起こす濃度レベル *ppb=10 億分の 1 の濃度。(ナノグラム)

化学物質過敏症(有機系化学物質により自立神経系に直接異常。肺から血管経由で脳障害)を起こす濃度レベル *ppt=1兆分の1の濃度。(ピコグラム)

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

9

C.シックハウス症候群と化学物質過敏症 シックハウス症候群と化学物質過敏症は、症状は

似ていても医学的には一応区分されている。 ①シックハウス症候群 厚生労働省の空気濃度ガイドライン値以上の

VOC 濃度環境で症状が起きるが、原因となる建物

(シックハウス)から離れると症状が軽くなったり

解消するものを言う。 ②化学物質過敏症 厚生労働省の空気濃度ガイドライン値以下の低濃

度では問題にならないとされる微量濃度(VOC で基

準値の 10%~20%程度)でも症状が起きる場合を言

う。 この場合は、居住建物空間のみならず、あらゆる

場所や日常使用している物品の影響でも発症する。

つまり、広く社会生活を行う上での行動制限要素が

出てくるようになる。

①②により人体に現われる主な症状は下記の通り。

従って、どちらの場合も屋内は 24 時間連続換気

を行って、有害物質の空気濃度を低下させることが

有効となる。 但し、根本的解決は有害物質の発生原因を取り除く

ことしかない。安易に換気のみで諸症状が完全解決

するなどと考えてはいけない。 換気の他に、中和剤や吸着剤の塗布や、触媒方式

による汚染物質の解消方法があるが、これらはいず

れも期待ほどの効果を発揮しないとされる。その理

由は、汚染物質を含んだ空気がこれらの塗布面や触

媒器に触れないと効果が無いからである。 つまり常時有害物質が発散している場合は、空気

中に継続拡散するから、これらを集めて瞬時に塗布

面や触媒に触れさせること自体が無理である。 建材や持込家具類、床洗剤、床ワックス、壁クロ

スのり、建材の接着剤、塗料などから発散する化学

物質を科学的に分解・中和・吸収することが出来る

と言う各種の触媒や中和剤、吸着剤があるが、これ

らも継続発散している化学物質が室内にある限りは

期待するほどの効果は無いとされる。 (3)自然材の含有成分によるアレルギー 自然の木材であっても健康に悪影響を与える。 木材の樹種例や症状例を図表-15 に挙げた。

図表-15 症状 樹種

眼や呼吸器

の疾患 皮膚の炎症 気管支 喘息

チーク ● ● ベイ杉 ● ● ● ローズウッド ● ● コクタン ● ● マホガニー ● ● ネズコ ● ● ●

免疫障害 内耳障害 眼科的障害皮膚の炎症・ぜん

そ く ・ 自 己 免 疫 疾

患・皮下出血

めまい・耳鳴り・ふ

らつき感

視力異常・結膜刺激

感・調整機能異常・な

みだ目

自立神経障害 精神障害 気道障害

疲れやすい・発汗・

手 足 の 冷 え ・ め ま

い・頭痛・

不安・うつ・不眠・記

憶 力 や 集 中 力 低

下・食欲減退

のどや鼻の痛み・口

内の渇き・気道閉塞

感・鼻血・鼻汁異常・

クシャミ

運動器障害 消化器等障害 循環器障害

手指のしびれ・筋肉

痛・関節痛・筋力低

下・頭のしびれ

便 秘 ・ 下 痢 ・ 悪 心

感・排尿異常・婦人

科異常

胸痛・不整脈・動悸・

循環異常

(4)食物連鎖 アレルギー症状は空気汚染に起因する以外に、食

物に含まれる汚染物質の摂取も原因のひとつになる。

この場合食物とは陸上の動物肉や水中の魚肉も含ま

れるのであって、それらの餌に植物も当然含まれる。

したがって人間が汚染空気や汚水、有害ガスなどを

排出すれば、植物を汚染することになり廻りまわっ

て再び人間が汚染物質を摂取する食物連鎖が起きる。

連鎖の結果、毒性が濃縮される場合も多い。 このようなことから世界保健機構(WHO)では、

人間と植物に分けて、それぞれに悪影響のある物質

による空気汚染レベルに関するガイドラインを 10数年前に発表している。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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2-7 換気方式と関連機器

(1)換気方式の区分 換気方式は大きくは次の 2 つに分類される。

① 自然換気 パッシブ換気とも表現するが、例えば窓を開放す

るとか外壁に換気レジスターを取り付けるなどして、

「風や屋内外温度差のドラフト」の力で屋内の空気

が外気と入れ替える方式を言い、電気的機械動力(=

電動ファンなど)を使わないで換気を行う。 換気の動力は不安定な風力を利用することから言

って、換気の計画的コントロールは全く出来ない。 ② 強制換気 制御できる人工動力で換気ファンを作動させて、

屋内外の空気を入れ替える方式。 主な動力は電気であり、建物が気密(ACH=1 回以

下/h,50pa)であるという条件の下にファンモータ

ーで換気量をコントロールできる。セントラルダク

ト方式を採用すれば、建物全体の計画的換気が容易

に実現できる。 強制換気は更に下表のように細分化される。

図表-16

上記表に、前述の「①自然換気」を“第四種換気”

と表現して付け加える場合がある。

尚、第一種・第二種・第三種などの呼称は日本だ

けのものである。

(2)熱回収換気の起源、分類、意義

換気装置に熱交換器を内蔵するか、または接続さ

せた起源は、元々は北欧などの厳寒地域(マイナス

40℃に達する)で外気を屋内に直接導入した場合

に、不快な低温の影響を緩和する目的で「外気加温」

をしたことに端を発する。

つまり、電熱ヒーターで外気を加温するのを主熱源

とするが、この電力エネルギーを少しでも減少させ

るのに、換気の排気熱を利用したことに始まる。俗

に言う単純な省エネ目的発想では無く、むしろトー

タルコストは他の換気方式よりも増加する。

熱交換部は次のように分類できる。

① プレート式熱交換器

導入外気と排出空気を複数のプレート(薄い板状)

を境にして交差させて熱移動させる。

プレートは、アルミニュームなどの金属と、紙や

プラスチック製の場合がある。

プレート材質が金属の場合は「顕熱交換器」で、

紙や繊維の場合は「全熱交換器」となる。

図表-17

バーコ ACF

プレート式ヒートエクスチレンジャー

種 類 換気方式 給気方法 排気方法

①個別(ノンダクト)換気 強制 強制

②熱回収個別換気 強制 強制

③セントラル換気 強制 強制 第一種

④熱回収セントラル換気 強制 強制

⑤個別(ノンダクト)換気 強制 自然 第二種

⑥セントラル換気 強制 自然

⑦個別(ノンダクト)換気 自然 強制

⑧セントラル換気 自然 強制 第三種

⑨熱回収セントラル換気 自然 強制

給気=外気を屋内導入する。

排気=屋内空気を外に排出する。

強制=電動ファンモーターによる換気。

熱回収=熱交換器を装着した換気装置。

(空気対空気、または空気対水の熱交換がある。)

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② ロータリー式熱交換器

薄い通気性円筒を、二つ(180°ずつ)に仕切りを

入れた風洞内で回転させる。

仕切られた風洞の片側に排出空気を通過させて

円筒=熱交換エレメントを冷やし(または温め)、

この冷やされた(または温まった)部分が回転して

もう一方の側の風洞に位置したときに、導入外気を

この熱交換エレメントに通過させて熱移動させる。

図表-18

ロータリー式ヒートエクスチェンジャー

エレメントは、アルミニュームなどの金属製と、

紙やプラスチック製の場合がある。表面はダンボー

ル紙の筒面に似ている。ロータリー式は材質に関係

なく「全熱交換器」であるから衛生的ではない。

③ ヒートパイプ式熱交換器

風洞を 2 つに仕切り、その仕切りを貫通してヒー

トパイプを複数本配置する。

風洞の片側に排気を通過させ、もう一方の側に外

気を通過させる。両方の温度差はヒートパイプによ

って顕熱交換される。

ヒートパイプ式の原理図

OA

ヒートパイプ

蒸発 冷却

熱移動

EA 排気 SA 加温空気

図表-19

④ リターン式熱交換器

一定時間毎に、排気と新鮮外気のダクト空気流が

逆転する。双方のダクト内に熱交換エレメント(例

えばアルミニューム)があり、蓄熱と放熱を繰り返

す。従って、全熱交換器である。

図表-20

この形式は 1970 年代に登場したが 1980 年代に消

滅した。衛生的ではないからであった。

⑤ ヒートポンプ式熱交換器

ヒートポンプの受熱エレメントに換気の排出空気

を吹きつける。ヒートポンプは排気の熱を水タンク

に移動させる。主に排気型セントラル換気システム

で採用されていて、北欧では 1970 年代に市販された。

外部への 換気装置からの

排気出口+5℃ 排気入口 +20℃

ヒートポンプュニット 図表-21

その後 1990 年代初めに空気対空気の熱交換器が

非衛生的と判明し、再びこの方式が脚光を浴び始め

ているが普及数は少ない。

⑥ 熱回収の意義と衛生面は?

元々スウェーデンなどでは、熱交換器が有効に機

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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能する気候は、年間平均気温7℃(札幌程度)より

低温の地域としている。

それでも第一種熱回収換気装置は、第三種換気装

置よりも運転電力消費が多くなるから省エネになる

とはされず、電熱ヒーターによる外気加温用の電力

費が幾分節約になるという表現のみである。

衛生面では、ヨーロッパ各国では住居用熱交換器

の方式に関し、1970 年代から全熱交換方式は非衛生

的と断定しており、熱交換方式は「顕熱交換方式」

を使う。その理由は「全熱交換器は、排気空気内

の水分・汚染物が全熱交換器のエレメントを通過し

てしまい、衛生的であるべき給気側に汚染物質がリ

ークする」という理由からである。

更に衛生上の点で付け加えると、給気を長いダク

トで行うことや、熱交換器の利用は、いずれもその

構造内にカビなどが繁殖することを防げず、シック

ハウスの原因となることが長い経験より判明し、

1990 年代初めにダクト内などの清掃を強制化する

法律を作るに至った。

このように熱交換器の衛生性が完璧でないことか

ら、北欧では排気型セントラル換気の排気熱を水に

移すヒートポンプ方式の熱回収が衛生面で有利と

1990 年頃再び見直されたのである。

しかし、いずれの熱回収方式であっても総合的に

(=資材生産+下降・組立て+施工資材生産+施工

+運送+装置運転など)に要する各エネルギー消費

は多くなり、トータル的には省エネルギー貢献やCO2

削減及びランニングコスト削減にはならない。

従って、日本で言うような“省エネになるから”

との理由は正当性がない。

そもそも、日本では全国的に見て 24 時間全館連続

暖房をすることが非常に少なく、間欠暖房や一部の

部屋の暖房しか行わないのが圧倒的多数であり、こ

のような建物に熱回収換気装置を採用するのは意味

が無い。

夏の場合も同じく 24 時間全館連続冷房が皆無に

近く、例え全館連続冷房したとしても冷房の設計温

度は「(外気℃)-(8℃)」程度であるから、僅か

10℃弱の温度差しかない屋内外温度差では熱交換器

の貢献度は現実的に期待できない。

(3)セントラル換気システム そもそも換気装置には、換気扇のように単体で換

気を行う機器もあるが、建物全体の換気で今後求め

られる「計画的な風量」と「計画的な換気経路」を

達成する上ではセントラル換気システムの方が維

持・保守管理面で圧倒的に優れている。 次に、セントラル換気システムを構成する機器を

紹介する。 ① 第一種換気装置 (a) バランス式

熱交換器を装備しないで、ただ単に給気モーター ファンと排気モーターファンを装備している換気

装置である。温暖地では用いることが可能となるが

冷暖房システムが必要な(屋内外温度差が大きい)

地域では機器に結露が発生し使えない。もし寒冷地

で使う場合は、給気側に電熱ヒーターなどの加温装

置が必要となる。 (b) ヒートリカバリー式(熱回収式)

バランス式に熱交換器を装備(内蔵もしくは連結) した換気装置である。 すでに説明したとおり、熱交換器には全熱交換タイ プと顕熱交換タイプとがある。写真で示した例はい ずれも衛生上有利な顕熱交換型セントラル換気装置 の本体である。

熱回収効率は日本製で約 45~60%、ヨーロッパ 製で約 70~90%である。 熱交換装置本体の設置場所は暖房空間内でなけれ

ばならない。

第一種換気システムはいずれも、給気量が排気量

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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よりも少ないことの方が多いから、全屋内は外部よ りマイナス圧になる。

図表-22

スウェーデン製

熱回収換気装置 熱回収温度効率 92% 壁掛型

このシステムを採用する場合、住居全体の換気を

すべて熱回収装置を通過させることが当然であり、

WC や水周りの換気を換気扇などに代わらせてはい

けない。又、隙間風が入ると熱回収換気の貢献度が

下がるし、外風の影響を受けやすいシステムでもあ るので、前述したように第三種換気システムよりも

更に高い気密性(=スウェーデンでは 1987 年基準

で 0.6cm2/m2程度)が建物に要求される。 熱回収換気システムの換気経路 図表-23

北欧で 1970 年代に完成していた熱回収換気システムの例

② 第二種換気装置

一般住宅では、セントラル換気システムで外気を 室内に導入する例は極めて少なく、もしあったとし

ても単独換気扇で行うであろう。 もともと屋内をプラス圧にする例は、IC 製造室や

病院の手術室などである。これらは埃や病原菌の侵

入防止という目的からである。 通常の建物では、強制換気が使われていなくても

室内はマイナス圧になるのが自然状態なので、これ

を人工的にプラス圧にした場合は自然に逆らうこ

とになる。その結果、隙間換気が増加しエネルギー

ロスが増加するとされている。いずれにしても住宅

の換気にはあまり利用されないし、セントラル方式

の機器も皆無に近いので写真の紹介は省く。 ③ 第三種換気装置 第三種換気システムは一般に排気型と考えられて、

全てが熱回収しないシステムとの印象が強いが間違

いである。排気熱をヒートポンプで水タンクに移動

させ、給湯の熱源の一部にする装置が古くからヨー

ロッパで利用されている例がある。 1990 年代初期に第一種熱回収換気が衛生上の弊

害を指摘されて、それ以降第三種熱回収換気装置の

衛生さが高いことが再評価された経緯がある。 但し、第一種熱回収換気装置と同じく経済的には第

三種に熱交換器を付加しても投資の元は取れないの

で、熱回収付き第三種換気システムの普及数は少な

い。 ヒートポンプ式セントラル排気システムの換気経路

図表-24

図表-25

スウェーデン製 排気専用換気装置 エアロバーコ E

2003 年初頭に世界的に発生した SARS 騒動の際

に、患者の病室をマイナス圧にしてウイルスの拡散

を防いだが、その方法は正に第三種換気方式である。

病原菌や毒のある気体の拡散を防ぐほかに、住居

内の湿気や臭いの発生する部分の空気をその場所か

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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らすぐに抜き取って、多湿に拡散するのを防止する

のに役立たせようというのが、この排気型換気シス

テムの特長である。 イメージ的に排気バルブのある部所がよりマイナス 圧とされるが、住宅の場合には微々たるもので体感 することすら出来ない程度である。 排気型システムは、住宅の気密水準が低くても、

換気システムとしてうまく動作する。 (ACH=3 回以下/h,50pa≒1.8cm2/m2,9.8paで十分とされる。)更に低気密でも環境改善にはなる。

一部に言われているような「第三種は高気密な建

物にのみ適す」というのは間違いである。

装置構造も簡単な製品が多く、長年月使うならば一

番保守管理がしやすい。普及数も他の換気システム

より多く、全体の 65%以上を占めていると推測され

る。

④ 給気用アクセサリー、排気用アクセサリー セントラル換気システムは、換気装置本体に、ダ

クトと給気レジスター(又はディフュザー)と排気

バルブなどとの組み合わせで構成される。

現在各種の部材が市販されているが、選定のポイ

ントはデザインよりも、空気量の調整が出来るかど

うかという点と、メンテナンスが簡単であるかどう

かが先ず重要であろう。

図表-27

天井付け給気ディフュザー、天井・壁兼用排気バルブ

サイレンサー、壁付け給気デフュザー (スウェーデン製)

これらの部品の内で、排気用の部品は第三種換気

システムの排気部品としても兼用できる。

図表-28

給気ディフュザー例(日本製) 排気バルブ例(日本製)

次に第三種セントラル換気システム用の給排気

部品を紹介する。

図表-29

Fresh-80 給気レジスター(外壁取付け、スウェーデン製)

図表-30

バーコ用排気バルブ(ヨーロッパ製)

⑤ ダクトの種類と使用上の制約

ダクト類は、すべてのセントラル換気システムで

用いられる。

配置する部所に応じて、「保温無しダクト」と「断

熱ダクト」を使い分ける必要がある。

一般的に冬期間中一時的にでも 16℃以下になる場

所に配置されるダクトは保温されていなければなら

ない。保温は建物の断熱材を頼ってはいけない。あ

くまでダクトに直接巻きつける。

図表-31

樹脂フレキシブルダクトと分岐部材例(日本製)

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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又、熱回収換気システムの外部(OA,EA)用ダクト

は給排気ともに防湿されていなければならない。

そして第一種熱回収換気装置本体からは、ドレン用

のパイプ設置が必要となる。

図表-32

アルミフレキシブルダクト (保温無しと保温付き、バーコ用)

フレキシブルダクトを施工する場合は、出来るだ

け引き伸ばして使い、接続部のシール(気密保持)

には十分な注意が必要である。

曲がり部は鋭角にしないことも重要である。

図表-33

スパイラルダクトと気密保持ラバー付きエルボ、チーズ

(スウェーデン製)

図表-34

気密保持ラバー付きエルボ、チーズ(日本、栗本製)

スパイラルダクトを使用する場合は、原則としてフ

レキシブルダクトを併用しないようにすることが

大切である。そのためにエルボやチーズが用意され

ている。スパイラルダクトは給気用として特に 適

である。

ダクトの外壁端末に取り付けるウエザーカバー

は、給気側は雨除けのひさし付き構造にしなければ

ならないが、排気側は簡単な水返しフィンがついて

いる程度で良い。いずれも低圧損タイプが必要であ

り、防火地域の場合は防火ダンパー付を使用するこ

とが必要となる。

ウエザーカバー(給気側の例) (排気側の例) 図表-35

これらのウエザーカバーに、虫除けネットが付い ている製品を使ってはならない。

⑥ コントローラ

セントラル換気システムは、メンテナンス時以外

は停止さてはいけない。従って、簡単に電源を切る

ことが出来ない機構のコントローラーが必要で、機

能的には設計風量に風量調整できる制御回路付が必

要となる。

コントローラーの例 図表-36

バーコ用

単なる電源入り切り機構や強中弱しかないタイプ

はあまり良くない。

⑦ 台所レンジフードファン

換気システムと機械的には接続されないが、住宅

の中には調理用レンジフードファンが存在する。日

本の場合は必ず排気を外部に捨てるので、レンジフ

ードファンが停止している時間帯に、外気が侵入し

てくることになる。

それを防いで、セントラル換気システムの換気経

路を保持することが必要となる。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

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図表-37

レンジフードファン

に内蔵された例

(富士工業製の例)

写真に示したのは、国産メーカの台所レンジフー

ドファンに内蔵されている電動シャッター例である。

レンジフードの運転時のみ自動的にこのダンパー

が開いて排気し、停止時にはダンパーが閉じて外気

をシャットする。

風圧ダンパーでは不完全なので、このような電動

シャッター付きのレンジフードファンの採用を建築

側に指定することが必要である。

⑧ 排水トラップ

換気システムの役割のひとつは住宅内の臭いの

解消である。しかし排水口から常

時汚臭が出てくるのを防止して

おかなければ、臭いは無くならな

い。水洗WC以外の排水パイプは

屋外の枡の手前にトラッ図表 -38

プをつけてもらうことを建築側

に依頼することが必要である。

通常の台所シンクや洗面ユニットにはトラップ

が付属されている。しかし、この付属トラップに蛇

腹ホースなどが接続されているので、床の排水口に

このホースを差し込むことになる。このような方法

であると、排水口とホースの隙間があることになり、

臭気が室内に出てくる。

差込部分周囲をシールする粘着部材があるが、効

き目は弱い。排水枡の手前にトラップがあることの

方が、これらの不備を解消できる。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

17

2-8 セントラル換気システムの設計

住宅の換気設計のために把握しておかなけれ

ばならない数値内容などを説明する。

(1) 建築士から事前に把握する数値など

① 住宅の全容積(m3)

② 換気対象居室名、各対象室気積(m3)、各対象

室面積(m2)

③ 特別に換気を必要とする部分(例えば、外断熱建

物の小屋裏や床下空間など)の名称と対象気積

(m3)

④ 設計換気回数

通常は 0.5 回/h。(但し、建築基準法ではシック

ハウス原因物質を含んだ建材等級によっては 0.7

回/h指定の場合もあるし、住宅以外の建物にお

いては 0.3,0.5,0.7 回/hの 3 種類がある。更に

天井高によって緩和回数がある。

尚、建築基準法の場合は換気対象気積が住宅内の

全てでは無いから対象気積の考え方を明確にする

必要がある。)

⑤ 換気対象に含まれない居室名と、その室気積

(m3)及び各室面積(m2)

⑥ 建築平面図(部屋名と用途、宅地の用途(防火)

区分など記入のもので縮尺 1/50)、断面図、梁伏

図。

⑦ 換気装置本体の設置位置、保守用改め口

⑧ 台所レンジフードファンの気密仕様

⑨ ドアのアンダーカットなど空気経路を確保でき

ているか否かの詳細。

⑩ ボイラーなど燃焼ガスの発生する位置、冷房の屋

外機など音が発生する位置、カーポートなど排ガ

スと音が発生する位置。

⑪ 建物周辺(隣家に関し、前述⑦⑧⑨の位置。交通

道路)状況資料。

⑫ 特別の強風方向、近接する高層建物の有無。

⑬ 排水パイプ系のトラップ仕様

(2) 換気装置メーカーデータより把握す

る数値

① 換気装置本体、排気バルブ、給気レジスター、 デフューザ、フレキシブルダクト、スパイラル ダクト、などの圧損ダイアグラム(P-Q 線図) やダクト保温材の性能値。

② 換気装置の電気容量、リモコン配線材

③ 換気部材の寸法図

④ 換気システムの設計・施工マニュアル

⑤ 取り扱いマニュアル

⑥ 保守・サービスマニュアル

(3) 換気経路の決定

換気計画の重要ポイントは適正換気量(m3/h)

を 初に決定することから始まる。次にこの計画換

気量を住居内各場所に「排気ゾ-ン」と「給気ゾー

ン」を明確に分けた上で配分することになる。

つまり各場所ごとの換気量には一応注意を払うと

しても、各場所に任意の換気量を設定してから、そ

の合計が計画換気量という加算方式にはならない原

則に注意を要する。

① 排気するゾーン

排気するゾーンは、先ず「湿気と臭気の発生する

部所」である。限られた換気量を分配するに当たっ

ては、分配箇所をむやみに増やすと、結果的に 1ヶ

所毎の換気量が少なくなりすぎる場合も出てくる。

全ての居室に給気と排気の両設備を配置する事

は原則として行なわない。

以上のことを念頭において、優先的に排気バルブ

を取り付ける場所を図表-39 に示す。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

18

排気バルブの取付け部所 図表-39

汚染ゾーン

居室 ホール

② 給気するゾーン

第一種あるいは第二種、第三種など換気方式に関

係無く、各居室のみが対象となる。

図表-40

給気ディフュー

ザ取付け場所 原 則

第一種、第二

種換気シス

テム

リビングルーム、

寝室を含む各居

住室

①天井若しくは壁、

床などに取付け。

②人の顔が位置する

近くには付けない。

③外気取入れダクト

先端は、外部からの

排気ガス侵入を避け

た位置に取付ける。

給気レジスター

取付け場所 原 則

第三種換気

システム

リビングルーム、

寝室を含む各居

住室

①壁若しくは天井な

どに取付け可能。

②人の顔が位置する

近くには付けない。

③外部からの騒音

や、排気ガス侵入を

避けた位置に取付け

る。

*建築設計士に宅地の配置(隣家の状況)を確認すること。

排気バルブ

取付け場所 原 則

WC

浴室

台所室

各排気バルブは、床よ

り 2m以上の高さに取

り付ける。(床面には

取付けない原則。)

主寝室 通常は連結したクロ

ゼット内に取付ける。

上階の

ホール

又は、ホールに出入り

口のあるWC,納戸、

乾燥室内に取付ける

ことで兼ねても良い。

優先箇所

老人室 又は工作室など、臭気

のこもりやすい室。

外断熱基礎内 床下の多湿緩和目的。

断熱材よりも

屋内側小屋裏

建材臭、夏季温度上昇

の緩和。 二次的箇所

物置、ボイラ室 臭い・湿気の発生場所

③ エアーオーバーフロー

屋内の空気の流れは、[新鮮外気が各居住室に入り

⇒ドアを通じて廊下などに流出し⇒WCや浴室・台

所など汚染ゾーンに流れつき⇒各汚染ゾーン内に

取付けられている排気バルブで吸引され⇒換気シ

ステム本体を経由してから⇒屋外に排気される。]

この流れを換気の経路と言い、換気方式の区別に

関係なく全ての方式に共通した空気の流れである。

このようにドアなどから空気流が通過する部分をエ

アーオーバーフロー(部)と言う。

図表-41 換気の経路イメージ図

換気径路の中間部(汚染ゾーンに向かって通過す

る部分…ホール、洗面脱衣室など)には、給気レジ

スタ類も排気バルブも原則的に不要である。階間(天

井内)に排気バルブを付けるなども馬鹿げた考えな

ので取付けない方がよい。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

(4)換気システムの設計フローチャート

図表-42

(5)バーコマルチポート 80 フレキシブルダ

クトシステム

バーコマルチポート 80 の場合は、換気装置本体認

①対象気積Ai(=m3)の確

に 8 系統もの汚染空気吸引用ダクトが直接接続でき、

各系統の端末排気バルブまで独立して配置される。認

②換気回数n(=回/h)の確

従って途中に分岐部が無いため、ダクト長(m)の

みによって排気バルブのコーン回転数(ダクト系統

③設計換気風量Qt(=m3/h)算出

Qt=Ai x n

相互の圧力損失のバランス調整値)があらかじめ予

定できるから(前述のような難解な計算を省略して

も)簡単に系統別圧損と風量バランス調整ができる

④排気バルブ、給気レジスター、デフ

ューザ、換気装置本体の配置を建築

平面図に書き込む。

ようになっている。機器は図表-57 参照。

(6)システム設計上での注意点

計算結果からも分かるように第一種セントラル換

排気バルブ、給気レジスター、デフ

ューザ、換気装置本体、ウェザーカ

バーを連結するダクトを書き込む

気システムの場合は、給気系・排気系の各送風機別 に計算を行うと、給排気両系統の圧力損失値に差が

当然生じる。従って両系統のダクト圧力損失のバラ

ンスに配慮することが重要になる。出来る限りバラ

ンスの取れたダクト設計と、給排気端末やダクトダ

ンパー等の部分で風量バランスが取れる部材を使用

し、完成時に念入りなシステム調整を実施すること

が望ましい。

設計風量Qt(=m3/h)を、各排気バ

ルブ、デフューザに分配する。

同一風量区画毎に、風量に適した

(若しくはメーカーの推奨する)ダ

クト口径(φ)を記入する。

第三種ダクト方式の場合は、給気系ダクトが不要

であるから、排気系のみを配慮すれば良いことにな

り簡単である。 風量区画毎に、ダクト口径(φ)と

設計風量(m3/h)とから各区間圧

力損失値(pa)を算出する。

各排気バルブ(若しくは各デフュー

ザ)から換気装置本体を経由し外壁

ウェザーカバーまでに至るダクト

経路の各区間圧力損失値(pa)を各合

計し、 大圧力損失値 Pmax を得る。

大圧力損失値(Pmax)と設計風

(Q)の交点をファンモーターの

イアグラム上にプロットする。

19

次にフレキシブルダクトタイプのバーコを写真で紹

介する。 交点位置がファンモーターの能力

曲線内であれば、設計したシステム

は設計換気風量を満足させられる。

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20

バーコマルチポート 80 本体

図表-57

屋外排気 127

戻り 82φ8 系統 アルミフレキダクト 82φ

コーン 排気バルブ ダクトの長さ

に応じて調整可能 Fresh-80.100. 給気レジスター

分解図 (フィルター内蔵)

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

21

2-12 換気システムの施工管理と保守

(1) 建物構造に関する留意点 建物は強度上の構造材や、断熱、気密、防湿、防

水、防風などのための建材多数によって構成されて

いる。設備施工者も当然これらの使用目的や特性を

知っておかなければならない。そして、換気システ

ムの装置本体やダクト、給排気部品を取付け施工す

る際には、これらの建物構成材を安易に損傷させて

はならない。数mmの小さな貫通穴の場合でも、予

め建築設計者や施工監理者に確認することが必要

である。コーキングや断熱補修も忘れず行うことが

肝要である。 (2) 設計プラン上の留意点 ① 屋内の空気温度、ファン運転音

外気直接給気用レジスターや、第一種換気システ

ムの新鮮空気給気用デフュザーの取付け位置は、人

が長時間いる位置から遠ざけることがベターである。

たとえ熱回収後の給気であっても不快を覚える低温

であるから注意すべきである。 給気位置はエアーオーバーフローするドアの対角

線位置が良いなどと言う人がいるが、家具類を置い

たら対角線上の換気流が阻害されることは容易に有

り得るし、もともと空気は温度差や含有成分の濃度

差を自動的に解消し均等になる性質を有しているこ

とを知るべきである。 住人の生活実態に合わせて、

a.机上の理論よりも、温度とか音の問題は経験を

優先するべき。 b.電磁波なども同様に人から 2m以上離すことで

トラブルを防げる場合が多い。

② 外部の換気システム外気取入れ口 給気する位置は特に注意が必要である。これらの

位置から水平方向や垂直方向に、自分の建物からの

燃焼ガスや台所レンジフード排気の有無を確認した

り、隣家に関しても確認すべきである。又、自分が

被害者になることばかり考えず、加害者になっても

いけない。

③ ダクトの気密、保温筒の風密と防湿

ダクトの接続部は全て空気洩れの無いように細心 の注意を払うべきである。ダクトテープの使用のみ

によるシールは特に注意を要する。ダクトの表面に

油や水分、埃などが付着している場合は良くあるこ

とで、テープのノリが効かなくなる。 ヨーロッパではダクト自体の気密テスト法が確立し

ている程である。 ダクトに保温を巻きつけた場合、保温筒はダクト

に密着していなければ効果が激減する。 オーバーサイズの場合は、保温筒の両端を針金など

でしっかりと締め付けて、空気が動かないようにす

る処置が必要となる。又、保温筒はダクト内の空気

温度が周辺温度と比べて、高いか低いかで保温筒の

表面に防湿材を付加する場合と、付加してはいけな

い場合がある。ダクトシステム内の温度とシステム

の用途、気温によって判断することが求められる。 ④ 保守対応

清掃しやすい機器の取付け位置や、改め口の大き さを決める配慮が必要となる。

⑤ 付帯事項(別途工事)

他の専門業者に依存する工事を、予め建築元請会

社に依頼しておかねばならない。 a. 電源(V,A)、アース b. ドレン(熱回収換気装置に必要) c. 改め口(縦mm x 横mm) d. 機器取付け用の木下地 e. ダクト用シャフト f. 二重天井造作 g. ドアのアンダーカット、トップカット、ガラリ

など h. スリーブ i. 台所レンジフードファン、個別換気扇やバスル

ーム暖房乾燥機などが取付けられる場合は、停

止時に自動的に外気通路を遮断する電動ダン

パー付きの製品 j. 排水パイプにトラップ k. その他、製品によって独自の留意点があるかも

しれない。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

22

2-13 試運転と換気量の計測

試運転は各機器のメーカーが指示する手順で行

う。いずれにしても給排気とも各端末の流量バラン

スを忘れず調整することが重要である。 施工者が設備業者である場合、 良の試運転法は

換気量を測定器で測定するが望ましい。 風量メーターで測定している例 図表-58

ディックスの

エアロプロップ

P-10 風量測定器

その場合、標準と 大、 小の換気量の内で、

設計換気量である標準時の換気量を把握することが

重要である。 測定器が熱線式やピトー管式の場合は、測定値が

極めて不正確になるので注意を要する。 熱線式もピトー管式も平均風速を捉えるに難点があ

り、実際値よりも測定値が大幅に増減する例がよく

ある。熱線式は湿度や熱線表面の汚れが不正確の原

因になり約 6 ヶ月に 1 回の校正が必要とされる。

測定に当たっては、自然給気レジスターの空気量

を計測する必要性は無い。給気レジスターは風速の

影響で常時空気量が変動しているからである。

2-14 換気システムのメンテナンス

機器(換気装置本体のファンや熱交換器)は通常

6ヶ月間隔で清掃が必要となる。暖冷房をかねた換

気装置本体の場合は、1ヶ月間隔のフィルター清掃

を必要とする場合もある。 部品(給気レジスターや、排気バルブ類)は6ヶ月

間隔の清掃が 低条件となる。外部環境や屋内状況

によっては、もっと短い間隔での清掃が必要となる。 花粉類のフィルターは1シーズンでの使い捨て

になるであろう。 ダクトの清掃は可能な場合と不可能な場合がある。

可能なのは金属製のスパイラルダクトである。 口径に余裕のある場合は、短年で塞がることは先ず

無い。ただし、第一種換気システムと第二種換気シ

ステムのように、新鮮外気をダクトで屋内に供給し

ている場合は、ダクトが詰まるからというよりは、

衛生上の問題でダクトの内面をきれいに保つ必要性

がある。 このようなことからスウェーデンはダクトの清掃

を法律で義務付けしているが、日本の場合は残念な

がらあいまいである。 その点で第三種換気システムの場合は、ダクトを排

気系にのみ使用しているので、衛生上の問題は起き

にくい。 清掃をユーザーに説明するときは、先ず機器の電

源を切り、手を保護してから行うよう注意すること。

2-15 換気と湿度の関係

換気をすると空気が乾燥すると言うのは、正確には

誤りである。空気線図を使って空気の性質を見てみ

よう ① 0℃で相対湿度 70%の空気は、空気 1kg 中に 水 2.64g を水蒸気として含んでいる。

② この空気を 20℃まで加熱した場合、相対湿度 は 19.6%になる。しかし空気 1kg 中に含んでい

る水は 2.64g で変化は全く無い。

つまり温度変化で乾燥したことになり、温度変化

が無ければ換気しても湿度の変化はない。 その逆に、

③ 20℃で相対湿度 70%の空気は、空気 1kg 中に 水 10.276g を水蒸気として含んでいる。

④ この空気を 15℃まで冷却した場合、相対湿度 は 96.58%になる。しかし空気 1kg 中に含んで

いる水は 10.276g で変化は全く無い。 (15℃の空気が 大含める水分量は 10.64g

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

23

/kg である。)

スウェーデンの空気線図

⑤ 14℃の空気が 大含める水分量は 9.961g/ kg であるから、もし 14℃まで冷却したら、↗

10.276-9.961=0.315g/kgが空気中からはみ 出して「水」となって現われる。これが結露現象で ある。

図表-59

冬季に換気が乾燥原因に見えるのは、人が生活で

加えた湿気を空気交換で排出してくれるからであり、

もともとあった空気中の水分まで排出してくれるわ

けではない。冷房でも乾燥する。つまり、空気温度

を人工的に上下させるほど乾燥するのである。

電気蓄熱暖房機を使った場合に乾燥がひどいの

は、蓄熱暖房機は停止しても実際には放熱が継続し

ているので、室温がコントロールできずに高温にな

ってしまうからである。断熱や気密の悪い住宅は足

元が寒いから、ついつい高温にするために乾燥感が

強い。また、南面屋根にルーフウインドウを取付け

た住宅も日射が強く高温になり乾燥する。 カナダの例

図表-60

湿度は夏期と冬期で快適範囲が異なる。図に示した

快適範囲グラフは、カナダの書物からの紹介である。

相対湿度が 30%以下でも快適範囲に入っている。

そもそも欧米では、相対湿度が 20%を下回って初

めて乾燥という。寒冷地で冬期屋内湿度が 40%を超

えると暖房していても屋内表面結露が発生しやすく

↗ なり、ダニ・カビが多発しやすい。乾燥よりも空

気のきれいさの方をまず重要視するのが健康に取っ

て安全側と言える。従って、北欧では 24時間運転の

セントラル換気システムを 1960 年代末から実用化

させている。

また、外気温度が低い地域は暖房による人工的昇

温幅が大きいから、相対湿度はどうしても低くなる。

従って国土が南北に長い日本は冬期の外気温度に大

きな差が有るから、

全ての地域に共通の

快適室温や快適湿度

は無いに等しい。東

京発の学問書をみて

も当てにはならない

ことを顧客にも理解

させるべきであろう。

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

24

2-16 ユーザーへの説明

セントラル換気システムは、単品商品と異なり建物一

棟毎にシステム構成上の違いが出てくる可能性がある。

又、使用する人も子供から老人までになる可能性があ

る。したがって長期間を考えた時に顧客に使用マニュア

ルを確実に提供することが大切である。

使用した機器メーカーやシステムの種類によりメンテ

ナンス方法は異なるであろうが、少なくとも次の要点を

マニュアルに記載することが望ましい。

①システム全体の機能

②運転操作方法

③保守の必要部分(コントローラや端末部品の調整値、

清掃箇所、定期交換部品など)と保守方法、保守の

必要サイクル

① 禁止事項

ⅰ.機器に対する禁止

ⅱ.人体に対する禁止

ⅲ.建物に対する禁止

⑤製造メーカー、施工店の連絡窓口と電話番号など

―おことわりー

★当技術マニュアルの執筆に当たっては、下記の出所から文献・写真・資料

の転載又は提供若しくは引用をした。

協力者名、若しくは出典;

スウェーデン【換気メーカーカタログ写真、技術資料、建築

基準法、気密住宅建築技術マニュアル】

ノルディック委員会【屋内環境に関するガイドライン】

フィンランド【換気メーカーカタログ写真】

カナダ 【R2000 住宅設計マニュアル】

参考資料(DIX ユーザー向けカタログなど);

三菱電機㈱ 【カタログ写真など】

松下精工㈱ 【カタログ写真】

㈱栗本鐵工所【カタログ写真】

㈱ユニックス【カタログ写真】

国土交通省 【建築基準法抜粋】

厚生労働省 【ガイドライン抜粋】

北海道住宅新聞社【記事中の表を抜粋】

日本住宅新聞社 【記事参考】

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Vol.2 エアロバーコ換気システム 2-17 付録-

◆(1)気密テスト ① 外壁に、水を入れたス

トローをU字型に曲

げて貫通させたとし

ます。 ② 気密測定機で建物内

の空気を屋外に排出

する。 ③ 建物がある程度、気密

の場合は建物内が減

圧され、ストロー内の

水面に高低差ができ

ます。

図表-61

気密測定の原理図

ストロー

M 気密測定機

空気量m3/h

水面差 mm

① 漏気回数;ACH( 回/h)……国際的な気密

評価基準。

気密測定により、50pa(水面差 5.1mmAq)の

差圧を発生させるのに必要な空気量q(m3/h)

を、建物外皮内全容積V(m3)で除して算出し

ます。

25

* 水面差=5.1mmの場合が、差圧 50pa(パスカル)状態。

*50pa の差圧を発生させるのに必要な空気量 q(=m3/h)を気密測定機から読み取り、 *q( m3/h)÷全容積V(m3)=ACH(回/h) ACHは、小さいほど気密が良い。

建物内外の圧力差は日常的に風で起きている。 単純に言ってΔpa=50pa は風速9m/sec に近い。 つまり、風が強く吹くと毎時どのくらい空気が洩れ

るかを表している。気密レベルと換気量との関連が

良く分かる。日本でもツーバイフォー建築協会がこ

の方法を使っている。

② αA(総相当隙間面積=c㎡ )とC(相当隙

間面積=c㎡/㎡)……日本の気密評価基準。 気密測定により、9.8pa(水面差 1mmAq)の差圧

を発生させるのに必要な空気量(m3/h)を基に

してαAを算出し、その上でCを算出します。 建の表

また

外国

隙間

う。

* 水面差=1mmの場合が、差圧

9.8pa(パスカル)状態 *9.8paの差圧を発生させるのに必要な空

気量a(=m3/h,9.8pa)を気密測定機で読

み取り、 その空気量q(m3/h)×0.69=αA * αA÷S(=建物延べ床 ㎡)=C (cm

2/m2) αA,Cは小さいほど気密が良い。

物の床にのみ隙間があるわけではないので、こ

現は建物外殻の隙間を表すのに分かりづらい。 、換気量との関連も分かりづらい。 の建物と比較する場合も不便な表示法である。 を言うなら外殻全面積に当てはめるべきであろ

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

26

◆(2)エアロパスカル VH2000S

気密測定機の例(ディックス製)

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Vol.2 エアロバーコ換気システム

27

付録-(2)

◆建築基準法での換気回数 1990 年代後半日本でも、防蟻剤クロルピリ

ホスや、新建材やクロスなどに含有しているホル

ムアルデヒドから発散するガスが屋内に滞留し、

健康に悪影響を及ぼす「SBS=シック ビルディン

グ シンドローム」、つまりシックハウス病(アレ

ルギーや化学物質過敏症)の多発が大きな社会問

題になった。

その結果、2003 年7月より建築基準法が改正

されるところとなり、同法第 20 条各項で住宅な

どに用いる建材などの仕様制限や仕様面積制限、

換気回数の設定と連続機械換気設備の設置が義

務づけられた。 健康に悪影響を及ぼす屋内空気汚染に関係する

資料や、建築基準法の内容の一部を次に紹介する。

■ 改正建築基準法 第二十条の五の1~4、

六-1の主旨 *二十条-五、1項一~四.に関して。

建築材料に防蟻剤クロルピリホスの使用禁止、屋

内の建材などに含有するホルムアルデヒド発散量

が一定のレベルを超える場合は、規定以上の換気量

確保が出来る機械換気設備の設置を義務づけると

共に、ホルムアルデヒド含有建材の使用面積を概略

以下のように規定している。

住宅等の居室の換気量と建材面積 建材のホルムアルデヒド含有種別で、0.5 回以

上/h、又は 0.7 回以上/h の換気量別に、ホルムア

ルデヒド含有建材の 大使用可能面積を規定。

住宅等の居室以外の居室の換気量と建材面積 建材のホルムアルデヒド含有種別で、0.3 回以

上/h、0.5 回以上/h、又は 0.7 回以上/h の換気量

別に、ホルムアルデヒド含有建材の 大建材使

用可能面積を規定。

*二十条-六、1項一.に関して。 住宅等の居室の換気量

住宅の各居室、下宿の宿泊室、寄宿舎・ホテ ル・旅館の寝室、家具類等の物品売場は、「有

効換気量 0.5 回以上/毎時 の機械換気設備」 を設置すること。

その他の居室の換気量 「有効換気量 0.3回以上/毎時 の機械換気設

備」 を設置すること。 *その他の居室=事務所、物品販売業の店・売場など

**参考 * 二十条六、1項一イ(1)で言う、その他の居室=住宅等の居

室以外の居室、事務所、物品販売業の店・売場に類する居

室。

*ドアのアンダーカットなどで換気上有効な通気が居室と

でなされる部分(WC,浴室、廊下など)は居室と見な される。 但し、納戸・押入れ・クロゼットなどに関して建築基準法 では、小屋裏と同じ扱いとしていて換気対象気積に含めな くとも良いことになっている。しかも、換気システムの排 気バルブがこれらの部所に配置してあっても、外気を取り 入れる給気レジスターが無ければ、同じく気積に含めなく とも良いとしている。 このような不可解な考え方は、日本独特のものであり疑問 視されているところである。 有効換気回数は、例えば 0.5 回以上/h などと「回以上」 と規定されているから、安全側として前述の除外部所を換 気対象気積に算入する考え方の方が、換気システムの設計 に携わる者としては賢明であろう。

* 建築基準法は難解であるから、換気設計に当たっては建築

設計士に「換気対象容積と設計換気回数」の2つを責任提

示してもらうことが賢明である。

改正建築基準法は、クロルピリホスとホルムア

ルデヒドの 2 物質しか規制しておらず、建物内の

全空間を対象としていないので実質換気回数は

少なく、シックハウスの根本的な対策には不足で

今後の改定が必要視されている。 改正建築基準法の趣旨をまとめて表にしたも

のを次頁に示す。併せて、厚生労働省が作成した

化学物質の空気濃度ガイドライン(2002 年 1 月

現在)を掲示する。

Page 30: エアロバーコ計量換気システムエアロバーコ計量換気システム 基本知識Vol.2. 1980年から日本に換気システムを輸入 換気を科学するディックス

Vol.2 エアロバーコ換気システム ■建築基準法第二十条の六、1項の一のイ(1).で定める有効換気量(=換気回数/h)b 図表-62

居室区分 機械換気設備の有効換気量 (換気回数/h)

建材種別、天井高さによる 換気量の増加と緩和

1 住宅等の居室 0.5回以上/h

2 住宅等の居室以外の居室 0.3回以上/h 有り(下段の各表参照)

*住宅等の居室=住宅・下宿・ホテルの宿泊室・家具売場。*住宅等の居室以外の居室=事務所、物品販売業の店・売場など *建築基準法での換気対象気積は「居室」部となっていて、建物内の全気積が対象で無いため、実質換気回数は少なくなる。 ■天井高さによる換気回数(回/h)緩和 *但し、システム換気は天井高全同の時。 国土交通省告示第 273 号

図表-63

*住宅等の居室=住宅・下宿・ホテルの宿泊室・家具売場。*住宅等の居室以外の居室=事務所、物品販売業の店・売場など。

28

■ホルムアルデヒド放散規定の新 JIS 表示と建築基準法 図表-64 ■建材等級F☆☆☆、F☆☆の使用面積制限内容 第二十条の五第一項第四号の表より 図表-65

天井高さ (m) 2.7m 以上

3.3m未満 3.3 以上

4.1m 未満 4.1 以上

5.4m 未満 5.4 以上

8.1m 未満 8.1 以上

16.1m 未満 16.1m 以上

0.7 回以上/h

に相当する換気

が確保される居

室の構造方法 緩和換気回数/h 0.6 回以上 0.5 回以上 0.4 回以上 0.3 回以上 0.2 回以上

0.1 回 以上

天井高さ (m) 2.9m 以上

3.9m未満 3.9 以上 5.8m 未満 5.8 以上 11.5m 未満 11.5m 以上

第二十条

の五 第一項四号 の規定に

基づく 住宅等の 居室

0.5 回以上/h

に相当する換気

が確保される居

室の構造方法 緩和換気回数/h 0.4 回以上 0.3 回以上 0.2 回以上 0.1 回以上

天井高さ (m) 3.5m 以上

6.9m 未満 6.9 以上 13.8m 未満 13.8m 以上 住宅等の 居室以外

の居室

0.3 回以上/h

に相当する換気

が確保さ れる

「居室以外の居

室」の構造方法 緩和換気回数/h

0.2 回以上 0.1 回以上 0.05 回以上

建築基準法 2003,07,01~ JIS などで規定

する等級 (記号) ホルムアルデヒド

の発散量 建築材料種別 内装仕上げ材の使用制限の有

F☆☆☆☆ 0.005mg以下/m2h ― 使用面積制限無し

F☆☆☆ (旧 FC0,E0)

0.005mg超/m2h 0.02mg以下/m2h

第三種ホルムアルデ

ヒド発散建築材料

当建材か、0.2mm プラスチック

フィルムか、気流止めの使用

で、遮音シート・ブローイ

ング、構造用合板の使用可 F☆☆

(旧 FC1,E1) 0.02mg超/m2h 0.12mg以下/m2h

第二種ホルムアルデ

ヒド発散建築材料 ―

使用面

積の制 限あり

F☆ (JAS) (旧 FC2,E2)

0.12mg超/m2h 第一種ホルムアルデ

ヒド発散建築材料 使用禁止

建材の種別使用可能面積 (床面積に対する比率)

居室の種類 換気設備の 有効換気量 (回/h)

建材等級 F☆☆☆☆ F☆☆☆ 第三種

ホルムアルデヒド

発散建築材料

F☆☆ 第二種

ホルムアルデヒド

発散建築材料

0.5 回以上/h 床面積x2倍迄 床面積x0.3 倍迄 住宅等の居室 0.7 回以上/h

面積制限無し 床面積x5倍迄 床面積x0.8 倍迄

0.3 回以上/h 床面積x2 倍迄 床面積x0.3 倍迄 0.5 回以上/h 床面積x4 倍迄 床面積x0.7 倍迄 住宅等の居室以

外の居室 0.7 回以上/h

面積制限無し 床面積x6.6 倍迄 床面積x1.1 倍迄

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Vol.2 エアロバーコ換気システム MEMO:

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■やっぱり問題になった「個別換気扇 複数設置」方式(ダクトレスの実態) ★現地調査(風量測定調査)では、メーカー表示能力の 50%落ちが実態!

換 気 扇 を 浴 室 ・

WC・脱衣室・クロゼ

ットなどに何台も取

り付ける換気を「ダ

クトレス換気」とか

「ノンダクト換気」

と呼んでいます。 カタログ表示の換気

量は、建築基準法上

の換気量を満足させ

ますが… しかし実態は法律で

規定している換気量

の約 50%しか得ら

れない様です! 建て主が若し測定し

てこの事実が知れ

ば、業者の責任が発

生するのは当然のこ

とになります。 余裕ある風量をもつ

バーコをお勧めしま

す。

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