20100306 第1回勉強会発表資料

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図書館史勉強会@関西 関西文脈の会の第1回勉強会発表資料

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『図書館を育てた人々 日本編I』を読む(1)

2010年3月6日 図書館史勉強会@関西 於キャンパスプラザ京都

大場利康(国立国会図書館関西館)

1

何故、『図書館を育てた人々』なのか

図書館史の勉強会・読書会で何を読む?

最初に思い付いたのは通史

大抵の場合、面白くない

歴史的名著・重要資料

東京の真似して『中小レポート』

歴史的文脈知らずに読んで分かる?

「人」を切り口にしたら尐しは入りやすいかもしれない

2

『図書館を育てた人々』の良い所

薄くて軽くて持ち運びに便利

多くの公共図書館・大学図書館が所蔵している

1983年刊行なのに、未だに在庫がある(良いのか?)

色々な人が出てくる

3

登場する人物と主要館歴(1)

田中稲城(1856-1925)

東京図書館、帝国大学図書館、帝国図書館

伊東平蔵(1856-1929)

大橋図書館、日比谷図書館、宮城県立図書館、私立佐賀図書館、横浜市図書館

湯浅吉郎(1858-1942)

京都帝国大学附属図書館、京都府立図書館

4

登場する人物と主要館歴(2)

市島謙吉(1860-1944)

早稲田大学図書館

佐野友三郎(1864-1920)

秋田県立図書館、山口県立図書館

太田為三郎(1864-1936)

東京図書館、帝国図書館、台湾総督府図書館

和田万吉(1865-1934)

(東京)帝国大学図書館

5

登場する人物と主要館歴(3)

島文次郎(1871-1945)

京都帝国大学附属図書館

田中敬(1880-1958)

東北帝国大学図書館

今沢慈海(1882-1968)

日比谷図書館、成田図書館

山中樵(1882-1947)

宮城県立図書館、新潟県立図書館

6

登場する人物と主要館歴(4)

衛藤利夫(1883-1953)

満鉄奉天図書館

植松安(1885-1946)

東大図書館

竹内善作(1885-1950)

東京市立図書館(四谷簡易、台南、一橋、日比谷、浅草)、大橋図書館

7

登場する人物と主要館歴(5)

間宮不二雄(1890-1970)

(間宮商店)

波多野賢一(1896-1943)

台湾総督府図書館、日比谷図書館

鈴木賢祐(1897-1967)

大阪府立図書館、和歌山商業高等学校、上海近代科学図書館、東京帝大図書館、山口県立図書館

8

登場する人物と主要館歴(9)

中田邦造(1897-1967)

石川県立図書館、東京帝国大学附属図書館、日比谷図書館

計18名

9

人物の傾向

私立/公立公共図書館、大学図書館関係者が主

両者のバランスは比較的よい感じ?

学校図書館、専門図書館関係者がいない

限界はあるが、戦前の図書館について、人物を通して見ていくには良いのでは

10

本書の成立経緯

石井敦「あとがき」によると…

「若い図書館員」(当時)が先人の活躍を知らない

『図書館雑誌』連載「先人を語る」(1978.10〜1982.1)を元に加筆・増補

人選の基準

(1)図書館の発展に貢献した人

(2)主として戦前に活躍した人物であること

(3)但し現存者は除く

11

本書の謎

掲載順は、雑誌連載順でも、生年順でもなく、主な活躍時期の順

…とあるが、ほぼ生年順に掲載

連載では採り上げられていた「内田魯庵」(1980年9月号)は、「本書の意図に外れるので割愛」された

しかし、「本書の意図」は説明されていない

12

田中稲城(1856~1925)我が国最初の図書館学者

西村正守(国立国会図書館)

13

田中稲城の経歴(1)

1856 周防国(現・山口県)生

1875 東京開成学校

1881 東京大学和漢文学科卒業

1881 東京大学御用掛 文学部・法学部准講師

1882 三学部出勤図書課取締役兼勤、助教授

14

田中稲城の経歴(2)

1886 東京図書館詰、東京教育博物館兼詰

1888-90 「図書館ニ関スル学術修業」のため米英留学

1890- 文科大学教授・東京図書館長兼任、帝国大学図書館管理

1893 東京図書館長専任

15

田中稲城の経歴(3)

1897 帝国図書館創設・初代館長

1921 退官

1925.2.22 没

16

田中稲城の主な業績

帝国図書館の設立

1892年日本文庫協会(日本図書館協会の前身)設立

主著は『図書館管理法』(文部省, 1900)とされているが、文部省名義 改訂版(金港堂書籍, 1912)が決定版との説も(『近代日本公

共図書館年表』)

東京大学の図書館においても活躍? 男沢淳,1972,「ある大学図書館長の意見 : 田中稲城と和田万

吉の場合」『大学図書館研究』1:41-44.

17

田中稲城と手島精一

手島精一(1849〜1918)

アメリカ遊学の先輩でもあり、文部省において、博覧会、工業・職業教育に活躍

学制整備の際に、東京図書館が存続したのも手島の功績?

東京図書館の担当者として田中稲城を推挙

晩年の田中が、手島の墓前で瞑想するエピソードが…

18

帝国図書館に至るまで

1872 書籍館

1875 東京書籍館

1877 東京府書籍館(東京府に移管)

1880 東京図書館(文部省に戻る)

1885 東京教育博物館と合併

1889 東京図書館官制(独立)

1897 帝国図書館官制

1906 帝国図書館新館開館式典 国立国会図書館ホームページより

http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/outline_history.html

19

帝国図書館設立活動

田中は、欧米留学後、国立図書館設立の必要性を訴え、要望書、計画書を作成

『東京図書館に関する意見要略』→近代デジタルライブラリーにあり

活動が実を結び、1890年帝国図書館設立

日露戦争の影響により、完成した建築は1/4程度(後に増築したがそれでも1/3程度)→現在の国際子ども図書館

20

国立図書館を必要とする理由

帝国図書館を必要とする理由多しと雖も、要、四項に帰す、(『帝国図書館設立案』)

(一)一国の図書記録の保存は、国家の責任なり、

(二)国家が国内の出版図書を知認し、且つ、学芸を上進せしむるに必要なり、

(三)外国の知識を取て、我進歩に資するに必要なり、

(四)国立図書館は、国民全体の一大学校にして、其資料は私人の能く弁ずる所に非ず

21

日本図書館協会設立との関係

本稿ではあまり触れられていない

発会式の主役だったことだけ

……何かあるのか?

22

晩年の田中

低い評価

「今浦島」「上野の仙人」「上野の狸」

孤立して退官?

弟子の太田為三郎「館長の無気力も亦甚だしというべし」

その死は自殺?(衛藤利夫の証言)

23

田中稲城を研究した文献

戦後は文献があまり(見つから)ない。

有泉貞夫,1970,「田中稲城と帝国図書館の設立」『参考書誌研究』(1):2-19.

戦前は、竹林熊彦による研究あり

24

田中稲城文書

同志社大学総合情報センター(今出川図書館)所蔵

田中による意見書の草稿や書翰など1,339点 長く未整理だったが、2005年4月に公開

井上真琴・大野愛耶・熊野絢子,2005,「公開なった田中稲城文書(同志社大学所蔵)--日本近代図書館成立期の「証言者」たる資料群」『図書館雑誌』99(3):170-171.

井上真琴・小川千代子,2006,「アーカイブ資料整理へのひとつの試み--同志社大学所蔵田中稲城文書・竹林熊彦文書の場合(小特集 図書館におけるアーカイブズ)」『大学図書館研究』(77):1-11.

しかし、その後も田中に関する論文が発表されている形跡は……

25

伊東平蔵(1856〜1929)先覚者の中の先覚者

竹内悊(図書館情報大学教授)

26

伊東平蔵の経歴(1)

1856 徳島生まれ

明治初期 文部省勤務

1886〜88 パリ、イタリアを歴訪

1889 東京外国語学校教授(〜1913)、帝国教育会図書館勤務

1902 大橋図書館主事(田中稲城の推薦による)

1905 東京市通俗図書館建設設計案調査委員

27

伊東平蔵の経歴(2)

1906 日比谷図書館開館準備主事

1908 宮城県立図書館の設計に参加

1913 佐賀図書館創立計画委員

1914 同副館長

1917 同館長

1919 横浜市図書館の設計に参加、館長に

28

伊東平蔵の経歴(3)

1926 横浜市立図書館館長退職、神奈川県図書館視察指導員

1929 5月2日逝去

29

伊東平蔵の人物

自称「あちこち卵を生みっぱなしにするアヒル館長」

日伊親善に尽くし、イタリア王室から勲章も 大槻文彦(1847-1928、日本初の本格的国語辞典『言海』を編纂)、穂積陳重(1856-1926、民法起草に参画した法学者)とも交渉あり

「資性謹厚、学問該博」「兼好音曲歌舞」(墓誌)

夫人は依田学海(1833-1909、漢学者、劇作家、演劇改良運動に関与)の二女・琴柱

30

伊東平蔵と図書館事項講習会

第一回図書館事項講習会

1903年(明治36)8月1日〜14日開催

日本文庫協会主催、会場は東京麹町の大橋図書館

54名の参加者中37名が終了

全国各地の図書館指導者を育成

この会場を提供、実際の運営、講義を行なったのが、大橋図書館主事であった伊東

31

伊東平蔵の図書館観 建築

図書館は社会と結びつかねばならない

利用者が「簡便・敏捷に」利用できる館舎が必要

堅牢・実用・美観が条件

条件を建築当事者に理解してもらうため、図書館員が(建築の素人であっても)建築に参加すべき

32

伊東平蔵の図書館観 図書

資料収集を重視

利用者の必要を満たすためにこそ資料を収集すべき

1882年(明治15)に伊東が起草にあたった図書館示諭事項においても利用者の「志念ヲ完ウスル」ための図書館を提示

生徒への課外読物の提供を思想惑乱とするのは誤認と強く主張

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伊東平蔵の図書館観 図書館員

図書館が利用されないのは図書館員の責任

来られない人がいるなら、こちらから届ける 佐賀図書館副館長時代に、官庁と個人に対する図書館資料の配達を実施

職務を全うするための「素養」が必要(→図書館事項講習会)

図書館員の任務は「利用者のための図書館」という目標を、建築においても資料の収集から貸出に至るあらゆる局面において実現すること

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どこで図書館について学んだのか

不明

1886年〜88年のイタリアで何を見たのか?

ナポリ大学の図書館学の授業?

国立図書館での図書館教育?

どこかで優れた図書館奉仕に出会った?

帰国途中に米国で?

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伊東平蔵の府県立図書館論

1927年全国図書館大会「府県立図書館と大都市の市立図書館とは、将来其機能を明確に区別する必要なきか」 府県行政の参考府、社会教育の重要中心機関、 府県行政の参考書、行政記録、現状と発達を示す一切の資料、府県民衆の知徳涵養に必須の図書を収集、整理

館外貸出中心、管内の学校図書館及び希望者に供給

管内公市立図書館の普及改善を促進(連絡、指導、無償での巡回文庫貸付実施)

府県行政の参考図書館→本部を県庁内又は付近に

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伊東平蔵文書の行方

本稿執筆時には「伊東平蔵氏令孫祐慶氏から著者に貸与された、日誌、書簡」が存在

これらは今どこに?

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おしまい

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次回の日程などなど

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