第1章.株式市場 (2)株式の流通市場
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第 1 章.株式市場(2)株式の流通市場
上場(株式公開):• 取引所でその企業の株式の売買が認められること
上場基準:• 上場のために満たしていなければならない基準
(株式の数・分布や企業の純資産・利益)
上場廃止:• 一定の要件(上場廃止基準)に該当した場合、上
場廃止とする。幅広い投資家に投資してもらうには、不適格となった場合。
• 日本航空 (2010.1) 、ライブドア (06.4) 、カネボウ (05.6) 、の上場廃止
2日本証券経済研究所『図説日本の証券市場 2008 年版』 p.137
3日本証券経済研究所『図説日本の証券市場 2008 年版』 p.141
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○日本航空の再上場・これまでの経緯2009 年 10 月:企業再生支援機構による日本航空の再
建・支援の決定企業再生支援機構 : 経営不振に陥った企業を再建・支援する半官半民のファンド、事業再生支援・債権買取り・出融資等を行う。
2010 年1月:会社更生法適用申請9592 億円の債務超過、 100 %減資、日本航空株の上場廃止
2010 年 11 月:東京地裁が更生計画認可5216 億円の債権カット(銀行融資、社債):カット率 87.5%cf. 日航の Credit Default Swap の清算価格: 20% ( 2010 年 4月)企業年金の減額: OB 平均 3 割、現役平均 5 割、
企業再生支援機構による 3500 億円の出資2010 年 12 月:企業再生支援機構が 3500 億円を出資し
完全子会社化
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日経新聞 09.01.20
6日経新聞 10.01.10
7日経新聞 12.09.20
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2011 年 3 月:会社更生手続き完了 民間企業 8 社から 127 億円の出資受け入れ 2012 年 9 月 19 日:日本航空株、東証一部へ再上場
● 日航株再上場の内容・再上場に際し、株式の新規発行は行わず、既存株主保
有株の投資家への売り出しのみを行う公募:新規に発行する株式を投資家に販売
株式の発行代金は企業が受け取る売出し:既存の株主保有の株式を投資家に販売
株式の販売代金は既存の株主が受け取る・ cf. フェイスブックの公募・売出し 2012 年 5 月
公募が 43% 、売出しが 57%
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・日航の売出し価格: 3790 円、初値: 3810 円、当日の終値: 3830 円
・日航の時価総額: 6900 億円(初値で計算) cf. 全日空: 6400 億円
・ PER : Price Earnings Ratio株価収益率=株価/ 1 株当たり企業収益( 1 年間の)
・企業が稼ぐ利益に対して株価がどの程度高くなるのか・企業の成長が見込める程、 PER は高くなる
・日本航空の予想 PER :約 5 倍(公開日初値で計算)cf. 全日空: 16 倍、フェイスブック: 110 倍(公開日初値で計算)
・企業再生支援機構は保有株 1 億 7500 万株をすべて売却:日航株の取得価格 2000 円→売却価格 3790 円売却益: 3132 億 5000 万円
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取引所市場:立会取引と立会外取引 (売買)立会取引
• 取引所の取引時間内でオークション方式で取引 立会外取引( ToSTNeT 取引)
• 取引所の取引時間外で取引(時間外取引)• をスムーズに行うために97
年から開始、売買立会取引での値段に準じた値段で取引(相対交渉取引、終値取引)
• 大口の注文を立会取引に出すと、値段が大きく動いてしまう( )のを避ける or 取引がそもそも成立しづらい。
• 証券会社間取引が中心、上場会社の自社株取得にも利用
• 東証取引高の 6~ 7 %程度を占める
11日本証券経済研究所『現代日本の証券市場: 2006 年版』
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○取引所での株式売買状況 2011年:部門別
個人: 17.7 % ( 21.9 % ):保有比率 20.4% 銀行: 0.1 ( 0.1 ) : 4.8 事業法人: 0.9 ( 1.1 ) : 23.5 保険: 0.4 ( 0.5 ) : 6.4 投資信託: 1.8 ( 2.2 ) : 4.7 外国人 : 53.2 ( 65.8 ) : 26.3 証券会社の自己売買: 19.1 : 1.3 ( )内は証券会社自己売買を除く割合
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○株式売買状況の特徴
• 4 分の 1 から 5 分の 1 売買取引を活発に行っている(株式保有比率
に比較して)部門
売買をほとんど行っていない部門• 銀行、事業法人、保険
その中間• 投資信託
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○株式持ち合い・株式持ち合いとは
企業や銀行がお互いに株式を保有し合うこと
・株式持ち合いの狙い
、取引関係の強化
・デメリット
→ 企業経営が内向き・閉鎖的・保守的になり、コーポレート・ガバナンスの弛緩が生じる
バブル期にそうした傾向が強まり、不効率な経営が行われたとして、バブル崩壊後に批判された。
(時価会計制度の導入 2001 年 9 月)
15『大和総研調査季報』 2011 年新春号 Vol. 1 p.11
・株式持ち合いは 1990 年代以降減少傾向
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・株式持ち合い解消の要因 バブル崩壊後の企業の損失埋め合わせ、銀行の不良債権処理のため、含み益のある株式の売却
株式保有に伴うリスクを軽減するための株式売却 銀行に関しては、株式保有リスクを軽減するため政策的に保有株式を削減• 銀行株式保有制限法 2001 年:保有株式を中核的自己
資本 Tier 1以下に• 銀行保有株式のスムーズな削減のため、「銀行等保有
株式取得機構」の設立と日銀による株式買取り• リーマンショック以降にも、「機構」と日銀は再度、
株式買取りを実施
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○外国人による日本株保有・各国の外国人株式保有比率日本: 28.3%(2007)→26.3% (2011)
米国: 11% (2007)→13.1% (2011)
ドイツ: 21.3% (2006)
イギリス: 40% (2007)
フランス: 41.1% (2007)
ヨーロッパ 27ヵ国: 37% (2007)
・外国人の日本株保有比率は、世界的に見て高いわけではない。 ヨーロッパ諸国では外国人株式保有比率は日本よりかなり高い
吉川真裕「ヨーロッパの株式保有構造」『証券レポート』 No.1652
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株価は低迷しているのに、なぜ外国人は日本株に投資するのか?
• 分散投資の効果:リターン(期待収益率)を低めずに、リスク(収益率の変動)を低めることができる
• 分散投資の効果は、相関係数が小さい程大きい• Cf. 前期の「証券経済論」第 3 章リスクの配分・管理、
( 1 )資産運用・投資におけるリスク分散
• 外国人(アメリカ人)から見た日本株投資の収益率
• 日本株自体の投資収益率+(ドルに対する)円の値上り率
• 円高が見込まれる状況では、外国人から見た日本株投資の収益率は上昇
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外国人投資家増大の日本経済への影響• 日本企業のコーポレート・ガバナンスへの影響
• Cf. 前期の「証券経済論」第 1 章金融仲介、金融システムの比較(市場型と相対型)、④コーポレート・ガバナンス機能
• 外国人投資家は日本企業の現状に対して批判的• 2008 年のアデランスの株主総会では、会社提案の取締
役再任議案が外国人株主により否決される(外国人持株比率 55% )
• 日本の株価形成への外国人投資家の影響力増大
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2007 年海外機関投資家
2007 年国内投資信託会社
会社提案:買収防衛策導入
反対 82% 反対 26%
会社提案:退職慰労金支給
反対 82% 反対 25%
会社提案:監査役選任 反対 59% 反対 22%
株主提案:役員報酬の個別開示
賛成 85% 賛成 56%
株主提案:増配 賛成 47% 賛成 32%
・日経新聞 07.12.22
・外国人投資家は日本の投資家より、日本企業の 現状に対して批判的(株主の立場を強く主張)
21・東京証券取引所「投資部門別売買状況」
・外国人投資家:上昇相場で買い (2005 年 ) 、下落相場で売り( 2008 年):順張り・日本の個人投資家:株価が高い時売り (2006 年 ) 、安い時買う( 2008 年)
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・外国人投資家:上昇相場で買い (11 年 1,2 月、 12 年 1,2 月 ) 、 下落相場で売り( 11 年 8 月、 12 年 5 月) 東日本大震災の 11 年 3 月は下がり過ぎと判断し買い・日本の個人投資家:安い時買う( 11 年 8 月、 12 年 5 月)、 高い時に売る( 11 年) 2 月
・東京証券取引所「投資部門別売買状況」
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