2e24シングル...

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全段直結構成のオペアンプICドライブ方式,最大出力4.5W 2E24シングル ハイブリッドバワ”アンプ 岩村保雄iMMURAY。S。。 はじめに 小出力5極管C3mとオーディ オ用オペアンプを組み合わせたハ イブリッドプッシュプルアンプを 本誌2011年2月号に発表しまし た.このハイブリッドアンプが, 予想以上に出力が取れたのは直結 ドライブのメリットと考えられま すが,直結という回路構成は,出 力だけでなく音質に関しても大き なメリットがあると考えています. 信号経路から段間トランスやコ ンデンサーを排除する試みは,古 出力管に送信管2E24とオーディオ用オペアンプを 組み合わせたハイブリッドのシングルパワーアンプ 2E24はグノッド電圧±10Vでドライブできるので バイアス電圧をOVとし,オペアンプと組み合わせ てコンデンサーレスの直結回路を試みた,負帰還童 は少なめの10dBを目標に設定,歪率4%での最大 出力は4.5W,帯域幅は25Hz~40kHz(-1 と物理特性も良好で 出てくる音はハイブリッドと いう寵のイメージと違って,小気味よいパワーが 惑じられた くはロフテン・ホワイトアンプに 遡ることができます.段間トラン スやコンデンサーはアンプの音を 支配する要素であり,一概に悪者 というわけではありません.筆者 もこれまでにトランス結合アンプ を発表してきましたし,その効用 をおおいに評価しています. 直結アンプとはいうものの,先 に発表したC3mプッシュプルア ンプにしても,直結回路構成のロ フチン・ホワイトアンプにしても, 自己バイアス用のバイパスコンデ ンサーが使われていて,信号経路 ∴∴ ∴∴ ご(当、 、∴ ∴∴ ∴: ∴∴ ∴ んi //窪 ∴ ∴∴ ∴∴∴ l ∴∴ ●●. ∴∴●●∴ ∴_∴_∴_∴∴ _三三一一一一1:章 諾\繕 表議 i\ ∴言でi、腰細ト・\∴_∴ :i 「: ÷ _二 少、年11 、\ /置 [写真1]真空管ソケット側のヘアラインのアルミ板は使わ ない孔を隠すためのもの.シャシー前面左はボリューム 2077/7 からコンデンサーがすべて排除さ れているわけではありません.ま た,初段,ドライブ段に真空管を 使った直結回路では どうしても 高いB電圧が必要ですし,動作 点のドリフトが気になるといった マイナス面かつきまといます. 最近はオーディオ用オペアンプ と称するものが高速,低雑音のデ バイスとして幅を利かせ,さまざ まなオーディオ機器で使われてい ます.これは基本的にDCアンプ なので,その直流的な安定度には 目を見張るものがあります.さら i〈/、 ∴㌧:∴ ∴∴一 _ I ㌧. r「 祭謹i 〇・〇〇章一.- \i )∠ /i )映 /吋 ∴∵ [写真2]シャシー背面は左にiEC電源コネクター,中央は 出力端子,右はRCA入力端子 33

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Page 1: 2E24シングル ハイブリッドバワ”アンプ2...2E24シングルハイブリッドパワーアンプ [図7]飽和時の1kHz出力波形 設定が適切だったことを物語って

全段直結構成のオペアンプICドライブ方式,最大出力4.5W

2E24シングル

ハイブリッドバワ”アンプ岩村保雄iMMURAY。S。。

はじめに

小出力5極管C3mとオーディ

オ用オペアンプを組み合わせたハ

イブリッドプッシュプルアンプを

本誌2011年2月号に発表しまし

た.このハイブリッドアンプが,

予想以上に出力が取れたのは直結

ドライブのメリットと考えられま

すが,直結という回路構成は,出

力だけでなく音質に関しても大き

なメリットがあると考えています.

信号経路から段間トランスやコ

ンデンサーを排除する試みは,古

出力管に送信管2E24とオーディオ用オペアンプを

組み合わせたハイブリッドのシングルパワーアンプ

2E24はグノッド電圧±10Vでドライブできるので

バイアス電圧をOVとし,オペアンプと組み合わせ

てコンデンサーレスの直結回路を試みた,負帰還童

は少なめの10dBを目標に設定,歪率4%での最大

出力は4.5W,帯域幅は25Hz~40kHz(-1dB)

と物理特性も良好で 出てくる音はハイブリッドと

いう寵のイメージと違って,小気味よいパワーが

惑じられた

くはロフテン・ホワイトアンプに

遡ることができます.段間トラン

スやコンデンサーはアンプの音を

支配する要素であり,一概に悪者

というわけではありません.筆者

もこれまでにトランス結合アンプ

を発表してきましたし,その効用

をおおいに評価しています.

直結アンプとはいうものの,先

に発表したC3mプッシュプルア

ンプにしても,直結回路構成のロ

フチン・ホワイトアンプにしても,

自己バイアス用のバイパスコンデ

ンサーが使われていて,信号経路

∴ ∴ 一 : ∴∴ ∴

ご(当 、、∴

∴∴ ∴:  ∴ ∴ ∴

んi

//窪

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諾 \繕 表 議 i\          -∴ 言でi、腰 細ト・\ ∴_ ∴

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撥 霧 、\ 讃 緯 線 総 慈 態 題 /置

[写真1]真空管ソケット側のヘアラインのアルミ板は使わない孔を隠すためのもの.シャシー前面左はボリューム

2077/7

からコンデンサーがすべて排除さ

れているわけではありません.ま

た,初段,ドライブ段に真空管を

使った直結回路では どうしても

高いB電圧が必要ですし,動作

点のドリフトが気になるといった

マイナス面かつきまといます.

最近はオーディオ用オペアンプ

と称するものが高速,低雑音のデ

バイスとして幅を利かせ,さまざ

まなオーディオ機器で使われてい

ます.これは基本的にDCアンプ

なので,その直流的な安定度には

目を見張るものがあります.さら

i〈/、

  ∴㌧ :∴

∴∴ 一 一 二 _

I

十㌧ .r 「

祭 謹 i〇・〇〇 章 一 .-  ∴

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[写真2]シャシー背面は左にiEC電源コネクター,中央は出力端子,右はRCA入力端子

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Page 2: 2E24シングル ハイブリッドバワ”アンプ2...2E24シングルハイブリッドパワーアンプ [図7]飽和時の1kHz出力波形 設定が適切だったことを物語って

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[図4]2E24シングル/

パワーアンプの全回路図

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オペアンプ用電源

レート電流のチェックをするため

にプレートと出力トランスの間

に100の抵抗を挿入しています.

負帰還量は5極管接続のアンプ

としては,比較的少なめの10dB

を目処に設定しました.アンプと

しての入力感度と負帰還量は 初

段オペアンプの帰還抵抗33kQと

オーバーオールの帰還抵抗Rf=

15kQの組み合わせで満足できる

特性となりました さらに負帰還

アンプとしての安定性を確保する

ために,150pFをRIと並列に接

続するとともに出力端に15Qと

0.047IIFを接続してあります.

2224は直熱5極管で,電源オ

ンから10秒で動作可能という送

信用の真空管です.この真空管を

オーディオ用として使うには,ど

うしても残留ハムが問題になるの

で,ヒーターは直流点火とせざる

38

を得ません.ここでは6.3Vの巻

線を使ってショットキーバリアダ

イオードで整流し,0.3露と3300

〟Fの簡易平滑回路で直流電圧

6.3Vを得ています.ショットキ

ーバリアダイオードを使うと電圧

降下が小さいので,抵抗なしでは

点灯した状態でも6.6Vと思いの

ほか高い電圧が得られます.

使用部品

真空管2E24はRCAのものが

手に入ります.これまであまり使

われていない真空管なので安価で

すが,それだけに大量に出回って

いるわけでもないようです.2E

24は直熱5極管ですが,同等品

で傍熱管の2226があるので,こ

れを使えばヒーターまわりを簡単

化することができます.

出力トランスにはオリエントコ

ア使用のノダチトランスPMF-

7WSを使っています.PMF-

7WSの特性と結線を図5に示し

ます.巻線抵抗から計算した

PMF-7WSの電力損失は0.6dBで

す.

電源トランスはノグチトランス

PMC-140HGを使います.B電源

用の220Vという比較的低い電圧

で,140mAの電流が取れる割に

は小型なのでこれに決めました.

電流容量は本機には多すぎるほど

ですが,これならば将来,小型の

プッシュプルアンプにも使うこと

ができます.まだ オペアンプ用

電源には基板用の電源トランス

PK20010(20V,100mA)を使い,

半波整流して正負電圧を得てか

ら3端子の可変電圧レギュレータ

ーLM317とLM337を使って±

20Vとしました.

Page 3: 2E24シングル ハイブリッドバワ”アンプ2...2E24シングルハイブリッドパワーアンプ [図7]飽和時の1kHz出力波形 設定が適切だったことを物語って

2E24シングルハイブリッドパワーアンプ

[図7]飽和時の1kHz出力波形

設定が適切だったことを物語って

います.

残留ハムはボリュームを絞り切

った状態で,\∴甘チャンネル動作

で2mVと我慢できるというレベ

ルです.直流点火をしているので

すが,簡略化のためにフィラメン

トの中点を接地しているだけで,

ハムバランサーを省略しているた

めと考えています.この「中点を

接地」というのがかなり曲者で,

電源オンした当初は3mV以上あ

りますが,10分ほどしてフィラ

メントが暖まるに従って小さくな

ります.

NFBを掛ける前とNFBを9.5

dB掛けたときの入出力特性を図

8に示します.最大出力は波形の

観測ならびに歪率(4%)の測定か

ら4.5Wとなりました.

NFBなしとNFBを9.5dB掛け

たときの周波数特性(80出力端

子,出力0.5W)を図9に示しま

す.NFBなしの特性は出力トラ

ンスの周波数特性がそのまま反映

しているようです.NFBを掛け

たときは,安定動作のために位相

補償した後でも帯域幅は25Hz~

40kHz(-ldB)と適当なバラン

スとなっています.

/ダンピングファクターDFの測

定をオン・オフ法で行いました.

図10のように,1本機では中城周

波数でのDFは50Hzから10kHz

でほぼ2.8・「定となっています.

これは大型のスピーカーでは適当

な値ですが 小型スピーカーにと

ってはもう少し大きいほうがよい

かもしれません・

2077/7

〔聖〕 K\㍑下Kヽ

[図8]入出力特性(80出力,1kHz)

[図9]周波数特性(OdB=0.5W)

[図10]ダンピングファクター

〔喜一尺間尺丑

4   6   〔H)

 

 

 

 

 

 

1 〇〇番〃S OS lゝ

NFBなし

i i

・‾_NFB=9.軸日○S     ii

′ ′′ -

′ /

○●

/ ′/ ● t

/ y

0101            0。I l

入力電圧〔∨〕

“   ●   ●i i )

i  i i.

劃 .●   ●●

i 」

- ●-● ● 画  ●●   ●● ●

T●

i + i i

N F B な し

) i

10     100     1k     10k    100k

周波数〔]Z〕

(U n)      0      0

-へ人言Pnへ\告ざらh

lk     10k∴∴∴∴100k周波数〔[Z〕

lkHzで測定した歪率特性を図

11に示します.この図から最大

出力を歪率4%までとしだ場合は

4.5W,2E24の定格表のように歪

率10%までとすると,定格表の

3.9Wに対して本機は5.5Wと,

直結ドライブの効果か,だいぶ大

きな出力となっています.通常の

聴取レベルと考えられる出力0.1

Wでの歪率は約0.3%(lkHz)で

す.この歪率が出力0.6W以下で

0.3%一定という特性は出力トラ

ンスに起因すると想像しています.

方形波応答波形

80の純抵抗を負荷としたとき

47

Page 4: 2E24シングル ハイブリッドバワ”アンプ2...2E24シングルハイブリッドパワーアンプ [図7]飽和時の1kHz出力波形 設定が適切だったことを物語って

○S

●。害

0。01      0、1       1

出力電力〔W〕

: - .細 、

:_空車や

(C)10kHz

[図12]80純抵抗負荷方形波応答

の100Hz,lkHz,10kHzの方形

波応答波形を図12に示します.

100Hzではいくらかのサグが見

られますが,シングルアンプとし

てはかなり良好な波形です.一方

の10kHzの波形でも,角が丸ま

っているだけで十分に高域まで伸

びていることがわかります.

特性の改善のために負帰還を掛

けているアンプでは,その見返り

として負荷の条件によっては動作

が不安定になることがあります.

本機でも9.5dBのNFBを掛けて

いるので動作の安定性を確認す

42

[図11]

歪率特性(1kHz,400Hzローカットフィルターを使用)

(a)80〝0.22I‘F

(b)80〟0.47l‘F

聖雪山

(C)0.47I‘Fのみ

[図13]容量性負荷時の10kHz方形波応答

るために,出力端子に80と0.22

〟Fおよび80と0.47〟Fを並列接

続して容量性負荷としたときの

10kHzの方形波応答波形を観測

しました.

図13(a),(b)の8露と0.221月

および8縄と0.471jFでは出力波

形に若干のリンキングが見られま

すが,この程度ならば十分安定と

考えられます.さらに,出力端子

に0.22〟Fのみを接続した純容量

負荷の場合の出力波形を図13(c)

に示します.容量性負荷の波形と

比べてリンキングが一段と大きく

なりますが 発振に至ることはあ

りません.

試聴とまとめ

いつも試聴しているシステムに

より,TheComplete‘Overseas

(トミー・フラナガン・トリオ)

DIW-488,ムソルグスキー/展覧

会の絵(キーシン)09026638842

を試聴しました.キーシンのピア

ノが圧倒的な迫力で再生されます.

このCDに限らず,本機はピアノ

の再生が得憲なようです.

聴感上ちょっとハイが勝ってい

る気がしますが,特性上では

20Hz~40kHzでldB落ちと問題

ないので,2E24が送信管である

せいでしょうか.かなり小型のア

ンプですが,‘overseas’では小

気味よいパワーが感じられました.

埼玉県蕨市で5月3日に開催し

た試聴会で,この2E24シングル

パワーアンプを聴いていただき,

そのときのアンケートには,ハイ

ブリッドアンプそのもののに肯定

的な意見が多く,さらに「製作し

てみたい」という記述もあり,心

強く感じました‾

本機は2E24のプレート特性か

ら0バイアス動作が可能になり,

オーディオ用オペアンプを採用し

たことと相まって,回路が本当に

シンプルになりました.オペアン

プを使ったパワーアンプとしては

まだまだ詰め切れていない点が

多々あると思いますが本機の発

表によりシングルハイブリッドパ

ワーアンプの可能陸が認識されれ

ば嬉しい限りです.

注)試聴はCDプレ」ヤー:DCD_SlO

Ⅲ-し,自作ラインアンプ(未発表),

スピーカー:アルテック604_8Hウー

ファー+アルテック802D/811Bホー

ン+GOTOSG17Sで行っている.

MJ