平成28年度全国学力・学習状況調査の結果および考察nishi-es.osakasayama.ed.jp/index.cfm/1,1022,c,html/1022/20161128... ·...
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平成28年度全国学力・学習状況調査の結果および考察
大阪狭山市立西小学校
1.本年度の学力・学習状況調査結果の概要について
・国語の「知識」に関する問題では、漢字を書く領域で改善が見られましたが、一方で、ローマ字
を活用する力の定着が不十分でした。日常生活の中で、視覚的・体験的に学べる環境を意図的に工
夫し、自然に学習内容を定着させるしかけが必要です。
・国語の「活用」に関する問題では、複数の情報を関連付けて読むことに改善が見られました。し
かし、筆者の意図を想定して自分なりの考えを書く活動では、複数の条件をすべて満たしながら、
決められた分量にまとめることに課題がみられました。国語に対する関心意欲が算数に比べて低く、
苦手意識を改善する必要があります。
・算数の「知識」に関する問題では、基本的な「知識・技能」がおおむね定着していました。
・算数の「活用」に関する問題では、全体的に良好な結果でした。今後も、少人数習熟度別学習を
通して、算数が苦手な児童と算数が得意な児童の両方の学習状況を踏まえて、適切な指導方法の工
夫をはかっていきます
2.各教科における成果と課題について
成 果 課 題
<
主として知識>
国語A
・朝学習や宿題で、反復練習・復習を毎日続
けることで漢字の定着が進んできました。特
に、漢字を書く領域で、正答率が6割から7
割に伸び、全国平均値との差も縮まっていま
す。
・インタビュー等で、相手の話を聞きながら
計画を修正したり変更したりして、話の展開
に沿って質問することに課題がありました。
・ローマ字学習を活用する力の定着が不十分
でした。
<
主として活用>
国語B
・写真や図・グラフを読み取ったり、複数の
情報を関連付けたりしながら、わかったこと
を端的に表現することに改善が見られまし
た。
・読み取った情報から筆者の意図や考えを想
定し、自分の考えを明確にして書くことに課
題がありました。
・解答の方法で、複数の条件をすべて満たし、
分量を考えながら答えることに課題があり
ました。
<
主として知識>
算数A
・計算技能だけでなく数の仕組みやテープ図
の見方など基本的な知識が定着してきてい
ます。
・“単位量当たりの数”や“空間概念を必要
とする図形”では課題が残りました。特に、
空間概念を必要とする図形や立体の学習は、
授業における操作活動の学習の工夫が必要
です。
<
主として活用>
算数B
・示された図や情報をもとに場面を的確にと
らえ、具体的に数値をあてはめて問題解決す
る学習に成果が見られました。
・正答率分布グラフの山が4割正解程度から
6割正解強に伸び、算数の学習に対する意欲
が高まってきたように感じます。
・考えや式の妥当性を証明するような問題に
ついて、説明に必要な要素をすべて網羅して
記述することに課題がありました。
3.本校の学力向上に関する現在の取り組みについて
【 西小学校 学力向上計画 】
活動づくり(主体性やつながる力を育てる)
♦子どもが主体的に企画・運営できる活動を、発達段階に合わせて積み上げる。
♦児童会や委員会、縦割り活動を通じて、学校のリーダーとしての高学年の意識を
高める。
全校クラス対抗ドッチボール大会
低学年と高学年が対戦できる工夫を
体育委員会が考えました。
あいさつ運動・廊下を走らない運動
「にっこりあいさつ しっかり返事 きっちり
そうじ」のスローガンを実現するため、生活委
員会が様々な手立てを次々と企画しています。
幼稚園との交流会、
5年生が企画運営しました
3年生は、班長会議や係
会議で考えたことを、ク
ラスの皆にアピールし、
実践に移します。
学力づくり(基礎基本の定着)
♦朝学習や反復練習 ♦家庭学習のススメ
♦少人数学習の工夫
授業づくり(視覚化・焦点化・共有化)
わからないことは何でも質問。
少人数だから何度でも発言。
隣同士で発表の練習もできる。
自分たちで問題
を解く方法を話
しあって、皆に
説明する学習が
できます。他の
グループの解決
方法も気になり
ます。
自主学習ノートや授業ノ
ートの書き込みの工夫を
紹介しています
子どもたちが積極的に、友達と意見交換しながら発言
できる授業にするための工夫を研究しています。
朝の会の時間は、復習課題や読
書をしています。
4.今後の取組みの方向性について
♦各教室の小さな活動から、児童会や委員会など学校全体にかかわる活動まで、子どもたちが主体
的に企画・運営し、仲間同士のつながりを深め、達成感につながるよう活動づくりを工夫し支援
していきます。そのため、朝礼の時間を生かすとともに、子ども発信のインタビューや依頼活動
を育てていきます。
♦学力づくりとして、朝学習や宿題、家庭学習で基礎基本の反復練習を継続し定着を図るとともに、
学んだことが生活の中で生かせるよう、教室環境や生活とつながる学びの場を工夫します。今年
度後期は、3年から6年までの算数の九九の定着度を調査し、「時々つまずく」をなくすため、毎
週金曜日の朝学習で繰り返し練習を行っています。また、1・2年生は、金曜日の朝に、足し算
引き算の定着に取り組んでいます。
♦子どもたちの、「よくわかった」「意欲的にとりくんだ」「考えが深まった」と実感できる授業づ
くりについて研究を推進します。そのため、学習内容や場面、ねらいを焦点化する「10のしかけ」
について研究・実践しています。そして、自分の考えを書き、それをもってペアや班で共有する
学習を毎時間取り入れ、深い学びにつながるよう、授業づくりを工夫しています。
♦「総合的な学習の時間」の展開の仕方を見直し、課題解決力・発信力・仲間との深めあいの力が
育つ授業づくりを工夫します。今年度は「総合的な学習の時間」のねらいや育成する力について、
学校全体の系統的なカリキュラムについて整理しなおします。
5.児童質問紙調査の結果の概要
<取組みの成果があらわれていたり、特徴的であると思われる事項について>
0
20
40
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100
国語と算数に対する印象
国語(西小) 算数(西小)
50
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90
100
学校生活について
西小 全国
➋今年度の児童質問紙では、右のグラフのよ
うに、「国語が好き」と回答した児童の割合と、
「算数が好き」と回答した児童の割合との間
に差が見られました。一方で、「大切な教科だ」
「学習内容はよく分かっている」「将来役に立
つ」の項目では大きな差は見られませんでし
た。また、これらの質問では、全国平均値と
の差はあまり見られませんでした。
そこで、国語と算数の他の特徴的なデータ
についても検討してみました。
➊学校生活に対する子どもたちの
意識は全体に肯定的で、特に「学級
で協力して何かをやり遂げ、うれし
かったことがありますか」の項目
で、全国と比較しても高い結果が出
ています。昨年度の反省から、後期
より、子どもたちの主体性を引き出
す取り組みとして、子どもたちが企
画・計画した学級・学年活動を支援
し、達成感につなげるよう意識して
きたことが、良い印象を持たせてい
ると感じます。
0
20
40
60
80
100
①学習目標と
まとめ
②道徳
学校の学習について
西小 全国
0 20 40 60 80
①自分の考えを
話したり書いたり
②組み立てて発表
③理由をつけて書く
国語の特徴的な項目西小全国
算数では、「新しい問題に意欲的に挑戦している」「わからない時もあきらめないで様々な手立
てを考える」「もっと簡単に解く方法がないか考える」の項目が、全国と比較しても肯定的にと
らえられていることから、問題を解くこと、自力解決すること、人と違う方法を考えることなど、
算数の面白さを体験し、楽しんで学習していることが伺えます。
これに対し、国語では、「自分の考えを話したり書いたりする」「うまく伝わるように考えを組
み立てて発表する」「自分の考えを理由がわかるように書く」の項目で課題がみられました。
これらは、算数の少人数学習の問題解決場面で、自力解決や発表・説明の時間が保証され、成
功体験を積み上げることができているのに対し、国語の学習で、自分の考えを持ち、整理して分
かりやすく伝え、相手の話を聞きながら、自分の考えを深める学習が、楽しい活動になっていな
いことが大きな要因だと思われます。現在研究している、「この時間に何について考えるのか」「ど
んな方法で考えるのか」「誰と考えるのか」がシンプルでわかりやすく、楽しいと感じられる授
業の工夫を推進していきます。
0 20 40 60 80
①挑戦意欲
②あきらめない
③別の方法
算数の特徴的な項目西小
全国
➌学校の学習についてたずねる項目で特徴的な結果が
出たものに、①「ノートに学習の目標(めあて・ねら
い)とまとめを書いていたと思いますか」②「道徳の
時間では、自分の考えを深めたり、話し合ったりする
活動に取り組んでいたと思いますか」があります。い
ずれも、全国比でも肯定的評価が高くなっています。
①は授業のユニバーサルデザイン化によって授業の終
わりにたどりつく目標をはっきりさせてきたこと、②
は道徳の授業づくりについて教師のミニ学習会を重
ね、授業のための教材・教具の整備をすすめ、考えさ
せる授業展開について研究してきたことが成果として
表れていると思います。授業に対する視覚支援の充実
と、安心感が肯定的に受け止められた原因だと思いま
す。
<今後に向けて、課題と思われる事項について>
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総合的な学習について
西小 全国
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西小全国西小全国西小全国西小全国西小全国
TV・
DVD視
聴
ゲーム スマホや
携帯
平日の
学習時間
休日の
学習時間
家庭でのゲームや学習時間
2時間以下 2時間以上 4時間以上
➋右のグラフのように、本校児童の生活の中で、
テレビや DVD の視聴、ゲーム、スマホや携帯を
触っている時間が全国と比較しても長いことが
わかります。特に、テレビや DVD の視聴時間で
は、4時間以上の児童が3割います。「家族と学
校の出来事について話をしますか」の項目でも、
全国平均より少なく半分を切っています。学校
での、仲間と話し合ったり、許し合ったりする
生活を、家庭へ戻ってから応用実践できれば、
子どもたちの力へとつながっていきます。ご家
庭の後押しを、ぜひお願いします。
また、家庭学習の時間も、全国と比較すると、
平日は全国平均以上に学習時間をとっているの
に対し、休日はずいぶん少なくなっています。
それぞれのご家庭の事情もあると思いますが、
調べ学習など子どもたちの発想を後押ししてい
ただくと、学習の予習になり学校での授業も楽
しくなると思います。学校も、子どもたちが家庭
学習で主体的な取り組みができるように、課題の
出し方や評価の仕方を工夫していきますので、ぜ
ひご協力をお願いします。
➊今後に向けて課題と思われる項目として、
「総合的な学習の時間」の取り組み方があり
ます。子どもたちは、好きな学習時間だと認
識していますが、「自分で課題を立てて情報
を集め整理して、調べたことを発表する」と
いった課題解決学習に取り組んだかどうか
では、約50%の児童が否定的で、意識が弱
いと言えます。総合的な学習以外でも、「自
分の考えを発表する」「自分たちで課題を立
てて解決に向けた取り組みをする」ことにつ
いては自信が持てていないことを考えると、
「総合的な学習の時間」の学習方法や展開の
仕方を工夫し、授業づくりについて改善する
必要があります。
6.保護者・児童のみなさんへ
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読書に関すること
西小 全国
○児童の皆さんは、授業に真剣に取り組み、宿題や予習・復習をしっかりやろうと努力し
ています。このことが、当たり前のように続けられていることが素晴らしいです。これ
からも、この姿勢を大切にし、努力を続けましょう。
○児童の皆さんには、与えられた学習以外の「自主的な学習」に積極的に取り組んでもら
いたいです。休日こそ、計画を立てて、ワクワクするような学習・読書を増やしましょ
う。
○児童の皆さんの、日頃の「あいさつ」は元気でさわやかです。今年は特に元気がよくな
りました。地域の皆さんにもほめていただいています。いい伝統にしましょう。
○学校では、自分たちで課題を決め、情報を集め、整理したことを仲間と話し合い、発表
したり書いたりする学習をどんどん取り入れていきたいと思います。発表や話し合いを
どんどん経験して、自分の意見を表現することに慣れましょう。
○保護者の皆さまには、子どもたちが元気で楽しく学校に通えるよう、生活のリズムを整
え、送り出していただいていることに感謝します。上記で述べましたように、子どもた
ちは与えられた学習や課題に対しては、真摯に向き合い一生懸命頑張っています。しか
し、発表したり話し合ったりするのが苦手で、自分の考えに自信が持てないという傾向
があり、発信力に課題が出ています。また、ご家庭でも TV や DVD の視聴時間が長か
ったり、ゲームに興じることが一番の楽しみになっていて、学校以外で人とつながりコ
ミュニケーションすることが少なくなっているように感じます。休日の学習や読書時間
が短いのも、「~ねばならない」以上のことは避ける結果だと感じます。本当の学習の
楽しさ、読書の楽しさを体験することが、「子どもたちの主体的な生活・学習を育てて
いく」ことになり、学力向上の近道だと考えますので、ご協力よろしくお願いします。
➌読書量の少なさは依然課題で
す。学校では様々な読書活動を企
画していますが、なかなか改善に
至っていません。西小学校は、学
校図書館以外に市立図書館も校区
にあり、読書環境としては恵まれ
ています。読書は、集中力や想像
力などを高め、学力の基礎が育ま
れます。学校と家庭が協力して改
善すべき課題です。