がん大国ニッポンはがん対策後進国

東大病院放射線科准教授・緩和ケア診療部長

中川恵一

米国では、がん死亡は減り

日本では、依然増えている

日米の人口10万人あたりのがん死亡数

２人に１人が、癌になり、３人に１人が癌で死ぬ！

年

全結核

脳血管疾患

心疾患

肝疾患

肺炎

悪性新生物

~ 歳

総数（男）

総数（女）

「人口動態統計」厚生労働省（ 年確定数）

人口

万対

癌は年齢とともに増える

のキズの蓄積に時間がかかる年齢とともにがん細胞の発生が増え免疫機能が落ちるがんが育つのに時間がかかる

癌になるまで長生きするようになった日本人

日本人の平均寿命の推移

がんは老化↓

世界一の長寿国＝世界一のがん大国

キーワード

日本人の死生観の喪失↓

「死なない」感覚↓

がんを知ることができない↓

がん＝“ひみつ”↓

がん対策後進国

都市化と自然の喪失

核家族化と病院死宗教の喪失急激な長寿生が、苦では快楽に

死が、生活や意識から、なくなった！？

医療機関における死亡割合の年次推移

’510

’54 ’57 ’60 ’63 ’66 ’69 ’72 ’75 ’78 ’81 ’84 ’87 ’90 ’93 ’96 ’99 ’02

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

自宅で死亡する者の割合

医療機関で死亡する者の割合

年

資料：「人口動態統計」（厚生労働省大臣官房統計情報部）

最期は家でと思うが・・・

死生観の喪失

「死んだ人が生きかえることがあると思いますか？」

ある： 例 ％）ない： 例 ％）分からない： 例 ％

合計372名（小学生）３年生：74名４年生：126名５年生：66名６年生：106名

がん死亡の内訳 「がんの欧米化」が進行

部位別がん死亡率胃がん（アジア型） 肺がん、前立腺がん、乳がん（西欧型）

ベターを食べれば、がんも、バタ臭くなる

Annual mortality trend in Japan

胃がんは、冷蔵庫の普及で減っています

肺がん

胃がん

アメリカ男性のがん死亡率

前立腺がん大腸がん

09.1.16

がんの治療は、そんなに進歩していない !

予防と早期発見が大事

まずは、がんにならない ＋

なっても、早期発見・早期治療 （早期がんの90%は完治） " 「がん検診」が大事

がん細胞 の誕生 １ｃｍ １0ｃｍ

１５年

2ｃｍ

１.５年 3.５年

部位別がん死亡率

ニッポンのがん治療＝手術の理由

がん≒胃がん（過去の話）

胃がんの治療＝手術

がんの治療＝手術 のまま

結果的に

がんの医者＝外科

現実の変化に

制度や心理が対応できていない

手術 放射線

手術と放射線治療はライバル日本では、手術>>放射線治療

がんの完治には、手術か放射線治療

放射線治療は外来通院（平日毎日、約１ヶ月）がベース。１回の照射で、温度は、 度だけ上昇する。

2Gy=2J/Kg=2/4.2cal/1000≒1/2000cal/g=1/2000℃

乳がん

乳房切除 乳房温存＝がん摘出＋放射線治療

Ⅰ期

Ⅱ期

Ⅲ期

仏 独 英 米 日本子宮頸癌)手術,行.割合

年度群 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 4

90

80

70

60

50

40

30

10

20

医療費の低減に貢献

注：VATS： Video Assisted Thoracic Surgery（ビデオガイド下胸腔鏡手術）

肺癌に対する放射線治療は、手術と同じ効果で、手術より ～ 低い。

放射線治療は安い！

その他％

消化器

％

筋5骨格％

呼吸器

％

がん％

循環器％

国民総医療費兆 億円

その他％

がん診療費２兆 億円

画像％手術％

投薬％

検査％

注射％

放射線治療（２％）

放射線治療費億円

リニアック％

治療管理料（ ％）

国内医薬品売上 トップ３億円億円億円

１位：ノルバスク（降圧剤）２位：プロブレス（降圧剤）３位：ディオバン（降圧剤）

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル合計消費量

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

1997 1998 1999 2000 2001

× ×× ×

×◆

◆

◆

◆◆

◆

×

米国

カナダ

フランス

ドイツ

イギリス

世界平均

日本

(g/百万人)

日本

｢がん治療最前線｣P.18(2004.5月号)

がんの痛みが余命に及ぼす影響～Kaplan-Meier plot～

切除不能と診断され、かつ、疼痛（VAS>3）を認めた膵癌患者を対象とし、腹腔神経叢への50%アルコール注入による内臓神経ブロック療法を施行した群（除痛群）と緩衝液注入による非除痛群（プラセボ群）に無作為に振り分け、追跡した。

Lillemoe K .D . et. al.:Annals of Surgery,217,447-457,1993.

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 0

20

40

60

80

追跡期間（月）

除痛群 n=20非除痛（プラセボ）群 n=14

生存患者%割合

100 （%）

Logrankp=0.0001

がんの治療

診断時 死亡

がんの治療

緩和ケア

診断時 死亡

本来のがん治療

日本の現状

がんの治療とケアのあり方

死亡の直前まで

抗がん剤を使う

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治療とケアをバランスよく組み合わせる

“治癒”＝治す＋癒す

再発・転移＝不治・死 「治す」＞＞「癒す」

脊髄圧迫の放射線治療

麻痺の出現後

24時間以内に照射を開始する