2020 年(令和2年度) 『宅地建物取引士』資格試 …2020 年(令和2年度)...

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2020 年(令和2年度) 『宅地建物取引士』資格試験対策 宅建試験は、その年の4月1日現在で施行されている法令から出題されま す。特に今年度は、『民法の大改正』が出題範囲となる最初の年です。 この資料は、今年度の宅建試験の受験対策として、特に重要な改正点を 中心に、近時の重要な改正点で本試験に未出題のものも一部掲載していま す。また、併せて『統計』に関する最新情報も掲載してあります。 これにより正しい知識を得て、必ず、合格を勝ち取って下さい。 日 建 学 院 真夏 の!

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2020年(令和2年度)

『宅地建物取引士』資格試験対策

宅建試験は、その年の4月1日現在で施行されている法令から出題されま

す。特に今年度は、『民法の大改正』が出題範囲となる最初の年です。

この資料は、今年度の宅建試験の受験対策として、特に重要な改正点を

中心に、近時の重要な改正点で本試験に未出題のものも一部掲載していま

す。また、併せて『統計』に関する最新情報も掲載してあります。

これにより正しい知識を得て、必ず、合格を勝ち取って下さい。

日 建 学 院

真夏

の!

― 1 ―

○権利関係

1.民法の改正 ① 債権に関する改正(2017 年(平成 29年)5月 26日成立、6月2日公布)

⇒2020(令和2)年4月1日施行(原則))

「民法の一部を改正する法律」が 2017年5月 26日に成立し、6月2日に公布されました。

これは、『民法の債権分野に関する全面的な改正』です。民法の債権関係の規定(契約等)は、明治

29年(1896年)に民法が制定された後、約 120 年間ほとんど全面的な改正がなされていませんでした。

ですから、今回は“民法制定以来の大改正”だといってもよいでしょう。

この改正は、一部の規定を除き、2020(令和2)年4月1日に施行されました。したがって、今年度

の令和2年度宅建試験から出題範囲となります。

② 相続に関する改正(2018 年(平成 30年)7月6日成立、7月 13 日公布)

⇒2019(令和元)年7月1日施行(原則)

具体的には、配偶者の居住権の保護、遺産分割、遺言、遺留分、相続の効力等、相続人以外の者の貢

献を考慮するための方策などが主な内容です。

このうちの多くの規定は、2019 年7月1日施行です(ただし、配偶者の居住権等に関しては、2020

年4月1日施行)。したがって、こちらも今年度の令和2年度宅建試験から出題範囲となります。

※ この民法の改正に関しては、非常に多くの改正点があるため、すべて掲載することはできませ

ん。以下では、特に宅建試験対策として重要だと思われるものを中心に説明をしていきます。

(例えば、一般的には重要な改正とされている「個人貸金等根保証契約」や「定型約款」などは、

宅建試験対策としての重要度は必ずしも高いとはいえないため、あえて掲載していません)。

【参考】 未成年者に関する改正(2018年 6月 13日可決、6月 20 日公布、2022年4月1日施行)

主な改正点は、成年年齢の引き下げ(20歳→18歳)などです。

ただし、この改正については、2020 年4月1日現在では施行されていません。

したがって、令和2年度の宅建試験の出題範囲ではありません。

― 2 ―

(1)意思能力

①意思無能力の無効の明文化

従来から、判例や学説で「意思無能力者(例.幼児、酩酊者)がした法律行為が無効」であることは

認められていましたが、民法に明文の規定はありませんでした。

改正では、国民一般に分かりやすいものとする観点から、「意思能力を有しない者がした法律行為は

無効」とすることを明文化しました(新民法3条の2)。

(2)意思表示

① 錯誤

改正前 改正後

① 無効 取消し

② 法律行為の要素の錯誤 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通

念に照らして重要なもの

③ いわゆる“動機の錯誤” 表意者が法律行為の基礎とした事情につい

てのその認識が真実に反する錯誤

表意者に重大な過失があったときは、表意者

は、自らその無効を主張することができない。

⇒ (例外の規定なし)

錯誤が表意者の重大な過失によるものであっ

た場合には、原則として、意思表示の取消しを

することができない。

⇒ 以下の2つの場合には、例外として、取

消しをすることができる。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知

り、又は重大な過失によって知らなかっ

たとき

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥って

いたとき

⑤ (第三者保護の明文無し) 善意・無過失の第三者に対抗することがで

きない

意思表示では、「錯誤」が最も大きな改正があった項目です(95条)。

1)「無効」から「取消し」へ

改正前では、錯誤の効果は、「無効」とされてきましたが、これが「取消し」となりました。従来、

錯誤の無効は、いわゆる『取消的無効』とされて、いつ誰でも主張できるものではないと解されてきま

したが、これが「取消し」と変更されました。ですから、宅建試験の受験生は、しっかりと覚え直さな

ければなりません。

なお、「取消し」となったことに伴い、取消権者(瑕疵ある意思表示をした者と、その代理人・承継

人)と期間(追認することができる時から5年、行為の時から 20年)を制限する規定(120条、126条)

がそのまま適用されるようになったことにも注意をする必要があります。

改正前 改正後

(新設) 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有

しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

― 3 ―

2)要素の錯誤

また、主張するための要件として、“重要な部分の勘違い”といった意味合いで、改正前は法律行為

の「要素の錯誤」といった用語が使われていましたが、これが「法律行為の目的及び取引上の社会通念

に照らして重要なもの」といった表現になっています。従来の「要素の錯誤」という表現は、必ずしも

分かり易いものではなかったのですが、法律の世界のより一般的な表現となっています。

3)2つの錯誤の定義

まず、一般的な錯誤(表示行為の錯誤)については、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」と定義

されています。

これに対して、いわゆる「動機の錯誤」(意思の形成過程の錯誤)については、従来は、解釈によっ

て「原則として無効を主張することはできないが、相手方に表示したときに限って、主張することがで

きる」とされてきました。この点、まず、いわゆる「動機の錯誤」について、条文上、「表意者が法律

行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」という定義規定が置かれました。そ

して、「取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、するこ

とができる」旨が明示されました。

4)表意者に重過失がある場合の「例外」

従来は、「表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない」

という規定があるだけで、特に例外は定められていませんでした。これに対して、改正では、「錯誤が

表意者の重大な過失によるものであった場合には、意思表示の取消しをすることができない」のが原則

であることを示しつつ、①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らな

かったとき、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときについては、「例外」であることが明示

されました。

5)第三者の保護規定

従来は、錯誤については、第三者を保護する明文の規定はありませんでした。ただ、判例等によって、

善意の第三者にも対抗ができると解されていました。これが、錯誤の取消しに併せて、「善意でかつ過

失がない第三者に対抗することができない」とされました(この点は、後述の「詐欺の取消し」と同じ

規定となりました)。表意者とのバランス等を考慮し、第三者が保護されるためには、善意であるだけ

で足りず、「無過失」でなければならないとなった点には、注意してください。

② 心裡留保

従来は、第三者を保護する明文の規定はありませんでした。ただ、解釈によって心裡留保の無効を

「善意の第三者には対抗することができない」と解されてきました。

そこで、心裡留保による「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」旨の規定

が新たに設けられました(93条2項)。

③ 詐欺

改正前 改正後

善意の第三者に対抗できない 善意・無過失の第三者に対抗できない

第三者の詐欺:取消しができる場合

相手方が悪意のときに限り、

第三者の詐欺:取消しができる場合

相手方が悪意・有過失のときに限り、

従来は、「詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない」と規定され

ていました。これが、改正により「詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に

対抗することができない」となりました(96条3項)。

改正前 改正後

(新設) 善意の第三者に対抗することができない

― 4 ―

また、第三者の詐欺については、従来は「相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表

示を取り消すことができる」とされていましたが、「相手方がその事実を知り、又は知ることができ

たときに限り、その意思表示を取り消すことができる」となりました(96 条2項)。

どちらも、「過失」に関する内容が新たに追加されています。

(3)代理

① 代理人の行為能力

従来の「代理人は、行為能力者であることを要しない」という表現が、改正により「制限行為能力者

が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない」と変更されました。

そして、「制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為」については取消しで

きるという規定を新たに設けました。「他の制限行為能力者」の保護を図る必要があるとともに、本人

である「他の制限行為能力者」が自ら代理人を選任しているわけでもないからです(102条)。

② 復代理

従来は、復代理人を選任した任意代理人の責任に関する規定がありましたが、改正により、規定が削

除されました(旧 105条参照)。その結果、復代理人を選任した任意代理人は、債務不履行責任の一般

原則に従って責任を負うことになります。つまり、本人との間の委任契約等に基づいて必要となる事務

処理がなされていなかったことによる責任を原則として負うことになります。

③ 代理権の濫用

改正前 改正後

(新設)

代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の

範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知

り、または知ることができた(=悪意または善意有過失)と

きは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

改正前 改正後

代理人は、行為能力者であることを要し

ない。

(新設)

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力

の制限によっては取り消すことができない。

ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定

代理人としてした行為については、この限りでない。

改正前 改正後

1 代理人は、前条の規定により復代理人を選

任したときは、その選任及び監督について、本

人に対してその責任を負う。

2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を

選任したときは、前項の責任を負わない。ただ

し、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠

実であることを知りながら、その旨を本人に

通知し又は復代理人を解任することを怠った

ときは、この限りでない。

(規定削除)

※ ⇒復代理人を選任した任意代理人は、債務不

履行責任の一般原則に従って責任を負うことに

なる。

― 5 ―

代理権の濫用については、従来から判例が確立していたものの、明文規定がありませんでした。そこ

で、改正により、「代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為」をした場合

において、「相手方がその目的を知り、または知ることができた」(=悪意または善意有過失の)とき

は、その行為は、「代理権を有しない者がした行為」(=無権代理行為)とみなす旨の規定が新設されま

した(107 条)。

④ 自己契約及び双方代理等

自己契約・双方代理の効果について、従来は明確に規定していませんでしたが、改正により、「代理

権を有しない者がした行為とみなす」という規定に変更し、無権代理行為とみなすことを明確化しま

した。

なお、自己契約・双方代理以外の利益相反行為についても、本人があらかじめ許諾したものを除き、

無権代理行為とみなす旨の明文規定が新たに設けられました(108条)。

⑤ 無権代理人の責任

無権代理人の責任(履行または損害賠償の責任)について、従来は、相手方が善意無過失の場合にの

み負うことになっていましたが、改正により、無権代理人が悪意のときは、相手方に過失が有っても責

任を負うことになりました。無権代理人と取引の相手方の公平を図るためです(117 条 2項)。

改正前 改正後

【自己契約・双方代理】

同一の法律行為については、相手方の代

理人となり、又は当事者双方の代理人とな

ることはできない。ただし、債務の履行お

よび本人があらかじめ許諾した行為につ

いては、この限りでない。

【自己契約・双方代理以外の利益相反行為】

(新設)

【自己契約・双方代理】

同一の法律行為について、相手方の代理人とし

て、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代

理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債

務の履行および本人があらかじめ許諾した行為に

ついては、この限りでない。

【自己契約・双方代理以外の利益相反行為】

自己契約・双方代理『以外の』代理人と本人との

利益が相反する行為についても、代理権を有しない

者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ

許諾した行為については、この限りでない。

改正前 改正後

無権代理人は、無権代理人が代理権を有し

ないことについて善意無過失の相手方に対

してのみ、責任(履行または損害賠償の責任)

を負う。

(新設)

原則:無権代理人は、善意無過失の相手方に対しての

み、責任(履行または損害賠償の責任)を負う。

例外:無権代理人は、自己に代理権がないことについ

て悪意のときは、無権代理人が代理権を有しないこ

とについて善意有過失の相手方に対しても、責任を

負う。

― 6 ―

(4)時効

① 消滅時効の期間と起算点

改正前 改正後

一般の債権

権利を行使することができ

る時から 10 年

(商行為によって生じた債

権は5年)

債権

権利を行使できることを知った時から5年

権利を行使することができる時から 10 年

(人の生命・身体の侵害の場合は 20 年)

短期

消滅時効

飲食料・宿泊料など1年

廃止 弁護士の報酬など 2年

医師の報酬など 3年

消滅時効の期間と起算点については、上記のように大きく変更されました。

まず、いわゆる短期消滅時効として、細かく分かれていた規定はすべて廃止され、シンプルに統一化

されました。ただ、時効が長期化してしまう不都合を避けるため、「権利を行使することができること

を知った時から5年」という規定が新たに追加されました。また、「人の生命・身体の侵害による損害

賠償請求権」については、特に厚く保護するため、権利を行使することができる時から「20 年」と時

効期間が長期となりました。

今後は、宅建試験でも、直接年数などが問われることが予想されますので、しっかり暗記しておきま

しょう。

② 時効の完成猶予・更新

改正前 改正後

裁判上の請求等

強制執行等

仮差押え等

時効の中断

時効の完成猶予+時効の更新

時効の完成猶予 催告 時効の中断(一時的なもの)

協議を行う旨の

書面の合意 (新設)

債務の承認 時効の中断 時効の更新

天災等 時効の停止

(天災等については2週間)

時効の完成猶予

(天災等については3か月)

従来、「時効の中断(および時効の停止)」とされてきたものが、概念自体が見直され、新しく「時効

の完成猶予」と「時効の更新」として整理し直されました。これは、単に用語を置き換えただけでなく、

その発想自体が一部変更されていますので、従来の考え方で学習してきた人は、特に注意が必要です。

従来では、訴えの提起などの「裁判上の請求」がされた場合、時効が「中断」するとされていました。

そして、訴えの取下げや却下、請求棄却の場合、『さかのぼって』時効が中断しなかったという扱いに

なっていました(結果として、法的には何の効果も生じなかったことになります)。

これが、改正により、所定の事由から生じる効果を「時効の完成の猶予」と「時効の更新」にはっき

り区別することになりました。その結果、「裁判上の請求」がされた場合、少なくとも裁判が終了等す

るまでは、時効が完成しないという「時効の完成猶予」の効果が生じます。この点は、訴えの取下げや

却下などがあっても、さかのぼって消滅することはありません。

そして、確定判決等により権利が確定したときに、それまでの時効期間がリセットされて、ゼロから

新たに時効の進行が始まります。これが「時効の更新」です。

― 7 ―

(5)法定利率

改正前 改正後

年5分 年3%

→3年を1期とした変動制

法定利率が「年5分」から「年3パーセント」となりました。かつ、従来のいわゆる固定制から3年

を1期としたいわゆる変動制となります(404 条)。

これは、昨今の超低金利の時代においては、民法の規定の利率があまりにも時代にそぐわなくなって

いたため、改定されたものです。

※ 変動制

短期貸付けの平均利率の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%

以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動します。(つまり、法定利率には小

数点以下の値の定めはせず、整数のみの利率になるということです)。

なお、宅建試験での「法定利率」自体の出題頻度はそれほど高くありません。ただ、内容の変更が

あった改正グループの典型例の一つであり、覚えるべき数値自体が変わっていますので、確認だけは

しておきましょう。

(6)連帯債務、連帯保証、保証債務

① 連帯債務の絶対効

改正前 改正後

①履行の請求、②更改、③相殺、

④免除、⑤混同、⑥時効の完成

①更改、②相殺、

③混同

※ 履行の請求、免除、時効の完成が削除された。

連帯債務については、「絶対的効力(=連帯債務者の1人について生じた事由が、他の連帯債務者に

対しても効力を生じる事由)」の一部が、改正によって削除されました。

具体的には、「履行の請求」「免除」「時効の完成」が削除されて、「更改」「相殺」「混同」だけが残り

ました。結果として、弁済を除くと、今まで「6つ」あった絶対的効力(絶対効)が「3つ」になった

ことになります。

※ ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に

対する効力は、その意思に従う旨の規定が新設されています。

覚えるべき項目が減ったこと自体は、多くの受験生にとって歓迎すべきことかもしれません。ただ、

従来の宅建試験では、削除された3つの項目の方がよく出題されていましたので、今後は、この項目の

出題が減少するかもしれません(近年はあまり多くありませんでした)。

【参考】連帯債権

従来、民法には定められていなかった「連帯債権」に関する規定が新たに設けられました。

これは、「各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、

全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。」というものです。

性質上可分な債権について、法令の規定または当事者の意思表示によって「連帯債権」となります。

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【連帯債務と連帯債権の絶対的効力のまとめ】

絶対的効力 ①履行の請求 ②更改 ③免除 ④相殺 ⑤混同

連帯債務 × 〇 × 〇 〇

連帯債権 〇 〇 〇 〇 〇

※ 連帯債権では、「履行の請求」と「免除」も絶対的効力である点がポイントです。

② 連帯保証人への履行の請求

改正前 改正後

連帯保証人に対する『履行の請求』は、

主たる債務者に及ぶ

連帯保証人に対する『履行の請求』は、

主たる債務者に及ばない

従来、連帯保証人に対する「履行の請求」は、主たる債務者にも効力が及んでいました。これは、付

従性の「例外」と捉えることができます。

しかし、改正によって、連帯保証人に対する「履行の請求」の効力は、主たる債務者には及ばないこ

ととなりました。つまり、連帯保証人に対する履行の請求についても、付従性の原則通り、主たる債務

者には効果が及ばなくなったということです。

この点は、連帯保証の頻出ポイントでしたので、試験対策上の影響は大きいでしょう。

③ 保証債務

改正前 改正後

(新設)

①【主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務】

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請

求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び

主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのも

のについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来して

いるものの額に関する情報を提供しなければならない。

②【主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務】

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したとき

は、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2箇月以内に、そ

の旨を通知しなければならない。

従来は、保証人になるに当たって、主債務者の財産状況等(保証のリスク)を十分に把握していない

事例が少なくありませんでした。これによって思わぬ損害を受けることがありました。

そこで、改正により、債権者は、保証人に対して、主たる債務に関する所定の情報を提供しなければ

ならないという規定が新たに設けられました(新 458条の2、458条の3)。

(7)債権譲渡

① 譲渡制限の意思表示

改正前 改正後

譲渡禁止特約⇒債権譲渡は「無効」

ただし、善意・無重過失の第三者に対抗する

ことができない

譲渡制限の意思表示⇒債権譲渡は「有効」

ただし、悪意・重過失の第三者に対して、債務者は、

債務の履行を拒むことができる

従来、当事者間で債権の「譲渡禁止特約」をした場合は、債権譲渡自体が「無効」となっていました。

しかし、善意・無重過失の第三者に対しては、その無効を対抗することができないとされてきました。

これが改正によって、当事者間で債権の「譲渡制限の意思表示(=債権の譲渡を禁止・制限する旨の

意思表示)」をしたときであっても、債権譲渡は有効となりました。ただし、譲渡制限の意思表示につ

― 9 ―

いて悪意・重過失の第三者(譲受人等)に対しては、債務者は、債務の履行を拒むことができます。ま

た、譲渡人に対する弁済その他債務を消滅させる事由を対抗することができます。

⇒ 要するに、改正によって『原則・例外の関係』が逆となりましたので、かなり意識して整理して

おく必要があります。

※ 「預金債権・貯金債権」については、銀行等金融機関の事務処理が煩雑となり、迅速な払戻しに

支障が出るおそれがあるため、譲渡制限の意思表示について悪意・善意重過失の第三者に対抗する

ことができる(債権譲渡の効力が生じない)となっています。ここはむしろ従来に近い扱いとなっ

ていますので、ご注意ください。

② 将来発生する債権の譲渡

改正前 改正後

(規定なし) 債権の譲渡は、その意思表示の時に

債権が現に発生していることを要しない

従来、判例等によって認められてきた将来発生する債権の譲渡について、改正によって「債権の譲渡

は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」旨の明文の規定が設けられました。

③ 債務者の抗弁

改正前 改正後

債務者が異議をとどめないで承諾をしたと

きは、譲渡人に対抗することができた事由が

あっても、これをもって譲受人に対抗するこ

とができない。

・債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して

生じた事由をもって譲受人に対抗することができ

る。

・債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡

人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗

することができる。

従来あった「異議をとどめない承諾」の規定が廃止され、「債務者の抗弁」等に関する規定が新たに

設けられました。つまり、債務者は、対抗要件が備わる前に持っていた抗弁であれば、譲受人に対抗す

ることができます。

(8)弁済

① 第三者による弁済

改正前 改正後

利害関係を有しない第三者は、債務者の意思

に反し弁済をすることができない。

(新設)

(新設)

①弁済をするについて正当な利益を有しない第三者

は、債務者の意思に反して弁済をすることができ

ない。

ただし、債務者の意思に反することを債権者が

知らなかったときは、この限りでない。

②弁済をするについて正当な利益を有しない第三者

は、債権者の意思に反して弁済をすることができな

い。

従来、「利害関係を有しない第三者」としていた文言を、改正により、「弁済をするについて正当な利

益を有しない第三者」へと変更されました。

その上で、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済

をすることができない」旨規定されました。この部分は、宅建試験対策上は、実質的には変更がないと

― 10 ―

考えてよいでしょう。

ただし、「債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない」という規定

が新設されています。

また、新たに「(弁済をするについて正当な利益を有する者でない)第三者は、『債権者』の意思に反

して弁済をすることができない」旨の規定も設けられています。

② 受領権者としての外観を有する者に対する弁済

改正前 改正後

債権の準占有者に対してした弁済は、その弁

済をした者が善意であり、かつ、過失がなか

ったときに限り、その効力を有する。

受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照ら

して受領権者としての外観を有するものに対してし

た弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過

失がなかったときに限り、その効力を有する。

従来、「債権の準占有者に対する弁済」などとして規定されていたものが、改正により、「受領権者以

外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、

その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する」旨の規定とな

りました。ここで、「受領権者」というのは、債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁

済を受領する権限を付与された第三者のことをいいます。

(※ 従来の「受取証書の持参人に対する弁済」も、この規定に統合されています。)

(9)相殺

① 加害者からの相殺の制限

改正前 改正後

債務が不法行為によって生じたときは、その

債務者は、相殺をもって債権者に対抗するこ

とができない。

次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に

対抗することができない。ただし、その債権者がその

債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この

限りでない。

① 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務

② 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務

従来、不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺は一律に禁止されていました。つまり、加害

者からの相殺は、その債権の内容や種類等を問わず、常にできないとされていたのです。

これが、加害者からの相殺が禁止されるのは、①悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務と、②

人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務に限定されることになりました。

したがって、例えば、悪意によらない「物損だけ」の交通事故などでは、加害者側からの相殺も可

能ということになります。

― 11 ―

(10)契約の解除

改正前 改正後

【帰責事由との関係】

債権者は、債務者に帰責事由がない場合には、契

約の解除をすることができない。

【帰責事由との関係】

・債権者は、債務者の帰責事由がなくても、契約

の解除をすることができる。

・債権者は、債権者に帰責事由がある場合、契約

の解除ができない。

【債務不履行が軽微である場合】

(新設)

【債務不履行が軽微である場合】

催告期間を経過した時における債務の不履行

がその契約および取引上の社会通念に照らして

軽微であるときは、債権者は、契約の解除をする

ことができない。

【金銭以外の物を返還する場合】

(新設)

【金銭以外の物を返還する場合】

契約の解除によって契約当事者が負うことに

なる原状回復義務について、金銭以外の物を返

還するときは、その受領の時以後に生じた果実

をも返還しなければならない。

① 帰責事由

従来は、履行不能について、債務者に帰責事由がない場合には債権者は契約の解除をすることができ

ない旨を規定していました。また、履行遅滞についても、明文の規定はなかったものの、同様に解され

ていました。

しかし、債務の履行を得られない債権者が契約に拘束され続けるのは望ましくありません。しかも、

このことは債務者の帰責事由の有無に関係は無いといえます。そこで、改正により、債務者の帰責事由

がなくても、契約の解除をすることができるようになりました。

同時に、債権者に帰責事由がある場合は、契約の解除ができない旨の規定も設けられました。

② 債務不履行が軽微な場合

債務不履行が「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」であるときは、債権者は契約の解除

をすることができない旨の規定が追加されました。

③ 金銭以外の物の原状回復義務

金銭以外の物についても、原状回復義務として返還する場合、受領の時以降に生じた果実(例:借賃

相当額の使用料など)を要することが明記されるようになりました。

― 12 ―

(11)危険負担

① 債権者主義の廃止

改正前 改正後

第 534条(債権者の危険負担)

1 特定物に関する物権の設定又は移転を双務

契約の目的とした場合において、その物が債務

者の責めに帰することができない事由によっ

て滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は

損傷は、債権者の負担に帰する。

⇒原則として「債権者主義」

(=買主は代金全額を支払わなければならない)

削除

→第 536条(債務者の危険負担等)

1 当事者双方の責めに帰することができない

事由によって債務を履行することができなく

なったときは、債権者は、反対給付の履行を拒

むことができる。

⇒原則として「債務者主義」

(=買主は代金の支払いを拒否できる)

従来、不動産の売買などの「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合」の危

険負担については「債権者主義」がとられていました。つまり、契約の当事者双方の責めに帰すること

ができない事由によって目的物が滅失等した場合、引渡し債務に関する債権者である買主は、原則とし

て、代金全額を支払う義務を負うことになっていました。

しかし、この結論は、一般的な常識に反すると思われることが多く、実際は、これと異なる特約をし

ておくことがほとんどでした。

そこで、改正により、この債権者主義の規定が削除されました。その結果、原則である「債務者主義」

によることとなりました。これにより、危険負担の場面では、買主は、代金の支払いを拒むことができ

るようになりました。

(12)売買

① 手付

改正前 改正後

【解約手付】

当事者の一方が履行に着手するまでは、買主

は手付を放棄して、売主は手付の倍額を償還し

て、契約を解除することができる。

【解約手付】

契約の相手方が履行に着手するまでは、買主は

手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供

して、契約を解除することができる。

手付解除の時期の制限について、従来の「当事者の一方が履行に着手するまでは」との文言を、改正

により、「契約の相手方が履行に着手するまでは」と変更されています。

また、売主からの手付解除の要件について、従来の「売主は手付の倍額を償還して」との文言を、「売

主は手付の倍額を現実に提供して」と変更されています。

いずれも、確立した判例を明文化したものですので、内容的に大きな変更はありませんが、宅建業法

の自ら売主となる制限(8種制限)でもよく問われていますので、確認をしておきましょう。

② 契約不適合責任

従来の瑕疵担保責任などの「売主の担保責任」は、全面的に制度が改められて、いわゆる『契約不適

合責任』として、まったく異なる内容に変わりました。今回の民法大改正の中でも、もっとも重要な改

正点の一つです。

― 13 ―

新旧制度の大まかな対応関係は、以下の通りです(ただし、完全に一致するわけではありません)。

改正前 改正後

⑥瑕疵担保責任 目的物の『種類・品質』の契約不適合責任

③数量指示売買の担保責任 目的物の『数量』の契約不適合責任

②一部他人物売買の担保責任

④地上権等の用益的権利の制限の担保責任

⑤抵当権等の担保物権の制限の担保責任

『権利』の契約不適合責任

①全部他人物売買 (一般の債務不履行責任へ)

〔旧・売主の担保責任〕

種類 買主 損害賠償 解除 代金減額請求 追及期間

①全部他人物売買 善意 〇 〇 制限なし

悪意 × 〇 制限なし

②一部他人物売買 善意 〇 〇 〇 知った時から1年

悪意 × × 〇 契約時から1年

③数量指示売買 善意 〇 〇 〇 知った時から1年

悪意 × × ×

④地上権等の用益的権利

の制限

善意 〇 〇 知った時から1年

悪意 × ×

⑤抵当権等の担保物権

の制限

善意 〇 〇 制限なし

悪意 〇 〇 制限なし

⑥瑕疵担保責任 善意 〇 〇 知った時から1年

悪意 × ×

〔新・契約不適合責任〕

目的物の「種類・品質・数量」が

契約の内容に適合しない場合

「権利」が

契約の内容に適合しない場合

① 履行の追完請求

→目的物の修繕、代替物の引渡し、不足分の引渡し

例:ⅰ)一部他人物売買

ⅱ)賃借権等の制限

ⅲ)抵当権等の実行

⇒左記の①②③準用

② 代金の減額請求

③ 損害賠償請求・契約の解除(債務不履行責任)

※ 目的物の種類・品質に契約不適合(数量は除く)

⇒買主が不適合を知った時から1年以内に売主に

「通知」しないときは、①②③はできない

従来は規定がなかった「履行の追完請求」が認められるようになるとともに、一部しか認められて

いなかった「代金の減額請求」が全面的に認められるようになっています。

そして、従来は、担保責任の「追及期間」自体が、買主が事実を知った時から1年といったように

制限されていました。しかし、改正後は、買主がその不適合を「知った時から1年以内」にその旨を

売主に『通知』しないときは、買主は、請求をすることができない(ただし、売主が悪意・重過失の

場合を除く)といったように、『通知期間』の制限となりました。この点、見た目は同じようでも、

発想自体が大きく変更していますので、特に注意をする必要があります。

⇒この点は、宅建業法の宅建業者が自ら売主となる場合の「担保責任の特約の制限」にもそのまま

影響しますので、試験対策上も、大変重要です。

― 14 ―

※ なお、従来の担保責任では、買主が「善意であるか・悪意であるか」によって、責任追及の可否

できるかどうかの大半が決まっていました。しかし、改正後の契約不適合責任では『契約の内容に

適合するかどうか』を総合的に判断しますので、単純に「買主が悪意だから、請求できない」とい

うようなことではなくなっていますので、注意する必要があります。

また、従来は、瑕疵担保責任で契約の解除をする場合などでは、「契約をした目的を達成するこ

とができないとき」に限定されていました。しかし、改正後には、このような制限はありません。

(13)請負

① 請負人の担保責任

仕事の目的物の「種類・品質・数量」が契約の内容に適合しない場合

① 履行の追完請求

→目的物の修繕、代替物の引渡し、不足分の引渡し

② 報酬の減額請求

③ 損害賠償請求・契約の解除※(債務不履行責任) ※建物その他土地の工作物でも可。

◎ 目的物の種類・品質に契約不適合(数量は除く)

⇒注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人に「通知」しないときは、①②③はできない

改正前 改正後

建物その他土地の工作物については、契約の解除

をすることはできない。

建物その他土地の工作物についても、契約の解除

をすることは可能。

売買の担保責任の改正を受けて、請負の担保責任に関しても同様に変更がなされています。請負人

の担保責任独自の規定の多くが削除され、基本的には売買の担保責任の規定が準用されています。

宅建試験対策としては、従来は「建物その他土地の工作物」に関しては、「契約の解除」をすること

ができませんでしたが、改正によって可能となった点が、大きな変更点です。

② 割合的報酬請求

所定の場合には、請負人が完成した仕事の割合に応じて報酬を請求できる明文の規定が、新たに制定

されました。

次の1)または2)の場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち「可分な部分の給付」によ

って注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、この場合において、請負人は、注

文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(634条)。

1)注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき

2)請負が仕事の完成前に解除されたとき。

(14)賃貸借

① 存続期間

改正前 改正後

賃貸借の存続期間

⇒20年を超えることができない。

賃貸借の存続期間

⇒50 年を超えることができない。

賃貸借契約の最長期間が「20年」から「50 年」へと変更されました。

これにより、賃貸借の存続期間は、50 年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めた

ときであっても、その期間は 50 年となります。

― 15 ―

② 原状回復義務

改正前 改正後

(新設)

【賃借人の原状回復義務】

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに

生じた損傷(通常の使用及び収益によって生

じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を

除く)がある場合において、賃貸借が終了し

たときは、その損傷を原状に復する義務を負

う。

ただし、その損傷が賃借人の責めに帰する

ことができない事由によるものであるとき

は、この限りでない。

③ 敷金

改正前 改正後

(新設)

【敷金】

(1)「敷金」とは、いかなる名目によるか

を問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づい

て生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付

を目的とする債務を担保する目的で、賃借人

が賃貸人に交付する金銭をいう。

敷金を受け取っている場合において、次に

掲げるときは、賃借人に対し、その受け取っ

た敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借

人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする

債務の額を控除した残額を返還しなければな

らない。

① 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を

受けたとき

② 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき

(2)賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて

生じた金銭の給付を目的とする債務を履行し

ないときは、敷金をその債務の弁済に充てる

ことができる。この場合において、賃借人

は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に

充てることを請求することができない。

「原状回復義務」「敷金」ともに、判例(条例)・実務上の取扱いなどによってルール化されてきた

ものが、改正により新規の規定として明文化されました。

したがって、その内容そのものが従来と大きく変わるものではありませんが、もともと重要であっ

た内容が明文化されたことにより、宅建試験での重要性は増し、予想される出題可能性はかなり上が

っています。

― 16 ―

(15)不法行為

① 損害賠償請求権の消滅時効

改正前 改正後

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者

はその法定代理人が損害及び加害者を知った

時から3年間行使しないときは、時効によっ

て消滅する。

不法行為の時から 20年を経過したときも、同

様とする。

(新設)

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲

げる場合には、時効によって消滅する。

① 被害者又はその法定代理人が損害及び加

害者を知った時から3年間行使しないと

き。

② 不法行為の時から 20 年間行使しないと

き。

人の生命又は身体を害する不法行為による

損害賠償請求権の消滅時効についての①の規

定の適用については、「3年間」とあるのは、

「5年間」とする。

人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権については、特に厚く保護する必要性が高いた

め、原則の期間である「知った時から3年間」を「知った時から5年間」に延長する規定が新たに設け

られました。宅建試験対策上は、この数をそのまま覚えておく必要があります。

(16)相続

① 遺留分侵害額の請求権

改正前 改正後

遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保

全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規

定する贈与の減殺を請求することができる。

遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定

財産承継遺言により財産を承継し又は相続分

の指定を受けた相続人を含む)又は受贈者に

対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を

請求することができる。

従来の「遺留分減殺請求」は、遺贈された物そのものの返還を求めるものでした。しかし、これでは

遺言者がその物(不動産等)をその受遺者等に与えたいという意思に反することにもなりかねません。

また、対象となった物(不動産等)が共有状態となってしまい、不必要に権利関係が複雑になってしま

うおそれがあります。

そこで、「遺留分侵害額の請求」では、遺贈された物は受遺者のもとに残し、遺留分権利者が、遺留

分に相当する『金銭』の支払いを請求することができる制度となりました。

② 預貯金債権の行使

改正により、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に

当該共同相続人の相続分を乗じた額(金融機関ごとに 150 万円を限度)については、単独でその権利

を行使することができるとの規定を設けました(909条の2)。

遺産に属する預貯金債権は遺産分割の対象になるため、従来は、遺産分割協議が確定しないと、必要

な費用についても預貯金を下ろして使用することができず、非常に不便でした。これを一定の限度で可

能としたものです。

― 17 ―

③ 配偶者居住権

改正前 改正後

新設

1)【配偶者短期居住権】

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属

した建物に相続開始の時に無償で居住してい

た場合には、一定の日までの間、その居住建物

の所有権を相続または遺贈により取得した者

に対し、居住建物について無償で使用する権

利を有する。

2)【配偶者居住権】

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属

した建物に相続開始の時に居住していた場合

において、次の①②のいずれかに該当すると

きは、被相続人が相続開始の時に居住建物を

配偶者以外の者と共有していた場合を除き、

その居住していた建物の全部について無償で

使用および収益をする権利を取得する。

① 遺産の分割によって配偶者居住権を取

得するものとされたとき

②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

1) 夫婦の一方の死亡がしたときに、残された配偶者が直ちに住み慣れた住居を退去しなければなら

ないとすると、配偶者にとって非常に酷です。そこで、残された配偶者が、最低でも6か月間は、無償

で住み慣れた住居に住み続けることができる制度が創設されました。これが「配偶者短期居住権」で

す。

2)また、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに、

老後の生活資金として預貯金等の資産も確保したいと希望することも多いと考えられます。そこで、

遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が、無償で、住み慣れた住居に居住する権利を取得すること

ができる制度も創設されました。これが「配偶者居住権」です。

― 18 ―

○宅建業法

(1)民法改正を受けての変更

〇民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成 29(2017)年5月 26

日成立、6月2日公布、令和2(2020)年4月1日施行) 重要度 A

① 重要事項の説明・記載事項(宅建業法 35 条1項 13号)

旧 新

当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の

履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で

国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずる

かどうか、及びその措置を講ずる場合における

その措置の概要

当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契

約の内容に適合しない場合におけるその不適合

を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の

締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定

めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ず

る場合におけるその措置の概要

民法の改正により、従来のいわゆる「瑕疵担保責任」から、いわゆる「契約不適合責任」に代わりま

したので、それに伴う改正です。

これを受けて、宅建業法施行規則でも、より詳細な規定が改訂されました。

・宅建業法施行規則 16条の4の2

※ なお、住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)では、民法改正

後においても『瑕疵担保責任』という用語自体が、そのまま残されていますので、注意が必要です。

つまり、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では「瑕疵」とは、「種類又は品質に関

して契約の内容に適合しない状態をいう」と定義されていますが、これを受けて、特定住宅瑕疵担保

履行法では「不適合」を「瑕疵」といったように読み替えているからです。

ですから、上記4号(=特定住宅瑕疵担保履行法で資力確保措置が義務となっている場合)では、

「瑕疵担保責任」という言葉がそのまま変更されず残っているのです。

旧 新

1 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任

の履行に関する保証保険契約又は責任保険契

約の締結

2 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任

の履行に関する保証保険又は責任保険を付保

することを委託する契約の締結

3 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任

の履行に関する債務について銀行等が連帯し

て保証することを委託する契約の締結

4 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関

する法律 11条1項に規定する住宅販売瑕疵

担保保証金の供託

1 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して

契約の内容に適合しない場合におけるその不

適合を担保すべき責任の履行に関する保証保

険契約又は責任保険契約の締結

2 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して

契約の内容に適合しない場合におけるその不

適合を担保すべき責任の履行に関する保証保

険又は責任保険を付保することを委託する契

約の締結

3 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して

契約の内容に適合しない場合におけるその不

適合を担保すべき責任の履行に関する債務に

ついて銀行等が連帯して保証することを委託

する契約の締結

4 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関

する法律 11条1項に規定する住宅販売瑕疵担

保保証金の供託

― 19 ―

② 37 条書面の記載事項(宅建業法 37条1項 11号)

旧 新

当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責

任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保

険契約の締結その他の措置についての定めがあ

るときは、その内容

当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に

関して契約の内容に適合しない場合におけるそ

の不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行

に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の

措置についての定めがあるときは、その内容

こちらも、民法の改正により、従来の「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に代わりましたので、

それに伴う改正です。

③ 手付解除(宅建業法 39 条2項)

旧 新

宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地

又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領

したときは、その手附がいかなる性質のものであ

つても、当事者の一方が契約の履行に着手するま

では、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物

取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をす

ることができる。

宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は

建物の売買契約の締結に際して手付を受領した

ときは、その手付がいかなる性質のものであつて

も、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取

引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除

をすることができる。ただし、その相手方が契約

の履行に着手した後は、この限りでない。

1)売主が手付解除する場合は、単に償還する旨を告げるだけでは足りず、手付の倍額を現実に提供

しなければならないこと、2)相手方が履行に着手した後は、手付解除をすることができないこと、こ

れらは、従来、民法の明文では規定されていませんでしたが、判例等によって確立した解釈でした。

それを改正によって民法の規定で明確に示すこととなりましたので、宅建業法もそれに合わせた改

正がなされました。したがって、従来と比べて実質的な内容の変更があるわけではありません。ただ、

これ自体は、重要な内容です。

④ 担保責任の特約の制限(宅建業法 40条、民法 566条)

旧 新

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は

建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担

保すべき責任に関し、民法 570 条において準用す

る同法 566 条3項に規定する期間についてその

目的物の引渡しの日から2年以上となる特約を

する場合を除き、同条に規定するものより買主に

不利となる特約をしてはならない。

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は

建物の売買契約において、その目的物が種類又は

品質に関して契約の内容に適合しない場合にお

けるその不適合を担保すべき責任に関し、民法

566条に規定する期間についてその目的物の引渡

しの日から2年以上となる特約をする場合を除

き、同条に規定するものより買主に不利となる特

約をしてはならない。

従来、民法では「瑕疵担保責任の追及期間」を買主が瑕疵の事実を「知った時から1年以内」として

いました。そして、宅建業者が自ら売主となる場合は、原則として民法の規定より買主に不利となる特

約が禁止されますが、瑕疵担保責任の追及期間について目的物の「引渡しから2年以上」となる特約に

ついては、例外として行うことができる旨の規定となっていました。

これが改正により、民法のいわゆる契約不適合責任については、買主が不適合である旨を「知った時

から1年以内」に売主に『通知』しないときは、買主は、原則として担保責任の請求をすることができ

ないとなりました。これにより、宅建業者が自ら売主となる場合は、原則として民法の規定より買主に

不利となる特約が禁止されることは同様ですが、その期間は、担保責任そのものの追及期間ではなく、

買主が不適合である旨を売主に「通知する期間」に関する特約ということになります。

― 20 ―

(2)成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に

関する法律(令和元年6月7日成立、6月 14日公布、令和元年9月 14日施行) 重要度 B

これは、成年被後見人等(成年被後見人・被保佐人)の人権が尊重され、成年被後見人等であること

を理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等を一律に排除している欠格条項を削除し、心身の故

障等の状況の個別的・実質的な審査により必要な能力の有無を判断する規定(個別審査規定)の整備等

を行うための改正です。

① 免許の基準(宅建業法5条1項 10 号(旧1号)、宅建業法施行規則3条の2)

旧 新

1 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者

で復権を得ない者

(新設)

1 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない

(⇒成年被後見人・被保佐人を削除)

10 心身の故障により宅地建物取引業を適正に

営むことができない者として国土交通省令で

定めるもの

⇒精神の機能の障害により宅地建物取引業等

を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び

意思疎通を適切に行うことができない者

※ 以上に伴い、「宅地建物取引業者(個人に限り、未成年者を除く。)が宅地建物取引業の業務に関し

行った行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。」という規定も新設されました。

② 登録の基準(宅建業法 18条1項 12号(旧2項)、施行規則)

旧 新

2 成年被後見人若しくは被保佐人

(新設)

2 (削除)

12 心身の故障により宅地建物取引士の事務を

適正に営むことができない者として国土交通

省令で定めるもの

⇒精神の機能の障害により宅地建物取引士の

事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断

及び意思疎通を適切に行うことができない者

③ 死亡等の届出(宅建業法 21条3号)

旧 新

18条1項2号(成年被後見人又は被保佐人)

に該当するに至った場合

(届出義務者)

3 その後見人又は保佐人

18 条1項 12 号(心身の故障により宅地建物取引

士の事務を適正に行うことができない者として国

土交通省令で定めるもの)に該当するに至った場合

(届出義務者)

3 本人又はその法定代理人若しくは同居の親族

― 21 ―

○法令上の制限

1.建築基準法

〇建築基準法の一部を改正する法律(平成 30 年6月 20 日成立、平成 30年6月 27 日公布)

(1)令和元年6月 25日施行分(※今年度から宅建試験の範囲となるもの)

① 特殊建築物

旧 新

別表第一(い)欄に掲げる用途に供する「特殊

建築物」で、その用途に供する部分の床面積の

合計が 100 ㎡を超えるもの

別表第一(い)欄に掲げる用途に供する「特殊

建築物」で、その用途に供する部分の床面積の合

計が 200 ㎡を超えるもの

「特殊建築物」について、当該用途に供する部分の床面積の合計の要件が「100 ㎡」から「200 ㎡」

へと変更されました。建築確認の要否などに直接影響しますので、要注意です。

② 防火壁等

旧 新

延べ面積が 1,000 ㎡を超える建築物は、防火

上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、

かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ 1,000

㎡以内としなければならない。

ただし、①耐火建築物又は準耐火建築物

延べ面積が 1,000 ㎡を超える建築物は、防火上

有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に

区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ

1,000㎡以内としなければならない。

ただし、①耐火建築物又は準耐火建築物

防火上有効に区画するのは、従来は、「防火壁」だけが規定されていましたが、改正によって、「防

火床」も付け加えられました。

③ 長屋又は共同住宅の各戸の界壁

旧 新

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又

は天井裏に達するものとするほか、その構造を

遮音性能(隣接する住戸からの日常生活に伴い

生ずる音を衛生上支障がないように低減するた

めに界壁に必要とされる性能をいう。)に関して

政令で定める技術的基準に適合するもので、国

土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は

国土交通大臣の認定を受けたものとしなければ

ならない。

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げ

る基準に適合するものとしなければならない。

① その構造が、隣接する住戸からの日常生活に

伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減

するために界壁に必要とされる性能に関して

政令で定める技術的基準に適合するもので、国

土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又

は国土交通大臣の認定を受けたものであるこ

と。

② 小屋裏又は天井裏に達するものであること

2 前項②の規定は、長屋又は共同住宅の天井の

構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生

ずる音を衛生上支障がないように低減するた

めに天井に必要とされる性能に関して政令で

定める技術的基準に適合するもので、国土交通

大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土

交通大臣の認定を受けたものである場合にお

いては、適用しない。

― 22 ―

長屋又は共同住宅の各戸の界壁については、従来は、「小屋裏又は天井裏に達するものとすること」

が必須でしたが、改正によって、所定の基準に適合するなどの条件を満たせば、必ずしもその必要はな

くなりました。

④ 建蔽率の緩和

従来は、「防火地域内の耐火建築物」のみに、建蔽率を 10 分の1緩和する措置が規定されていまし

た。

これが、改正により、1)「耐火建築物」だけでなく、「これと同等以上の延焼防止性能を有するもの

として政令で定める建築物」についても、緩和措置が講じられることになりました。

(なお、「耐火建築物」と「これと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物」

とを併せて『耐火建築物等』といいます。)

そして、新たに、2)「準防火地域」についても、「耐火建築物等」、さらには、「準耐火建築物等(=

準耐火建築物+これと同等以上の延焼防止性能を有する建築物)」についても、同様の緩和措置が適用

されることになりました。

〔ポイント〕

耐火建築物等 準耐火建築物等

防火地域内

【耐火建築物等】

・耐火建築物

・これと同等以上の延焼防止性能を

有する建築物

×

準防火地域

【耐火建築物等】

・耐火建築物

・これと同等以上の延焼防止性能を

有する建築物

【準耐火建築物等】

・準耐火建築物

・これと同等以上の延焼防止性能を

有する建築物

※ 防火地域内の準耐火建築物等については、建蔽率の緩和措置はないことに注意。

⑤ 防火地域・準防火地域の規制

「防火地域内の建築物」については、従来は、原則として「階数が3以上であり、又は延べ床面積が

100㎡を超える建築物は耐火建築物とし、その他の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければ

ならない」とされてきました(旧 61条1項)。

同様に、「準防火地域内の建築物」については、従来は、原則として「地階を除く階数が4以上であ

る建築物又は延べ床面積が 1,500㎡を超える建築物は耐火建築物とし、~(略)~建築物としなければ

ならない」とされてきました(旧 62条1項)。

しかし、これが改正によって、建築基準法自体には、具体的な数値等の定めは規定せず、一般的なル

ールが定められるだけとなりました(以下の〔参考〕を参照)。これを受けて、建築基準法施行令 136

条の2に、新たな建築物の基準等を導入しつつも、ほぼ従来と同じ数値等が定められています。

したがって、一見すると外見上大きな変更があるように見えますが、こと宅建試験対策としては、覚

えるべき数字が変わるなどの大幅な内容の変更等はないといってよいでしょう。

〔参考:建築基準法新 61 条〕

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸

その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通

常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防

火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が

定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

― 23 ―

ただし、門又は塀で、高さ2メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除

く。)に附属するものについては、この限りでない。

(2)平成 30 年9月 25 日施行分(※昨年度から宅建試験の範囲となっていたもの)

① いわゆる2項道路の定義 重要度Bランク

建築基準法 42条2項の規定について、以下のような変更がありました(下線部追加)。

「都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基

づく条例の制定若しくは改正によりこの章(=建築基準法第3章)の規定(=いわゆる集団規定)が適

用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道~」

⇒改正前の規定は、最初に建築基準法が制定されることを前提とした規定だといえます。しかし、現

在では建築基準法が最初に施行されてからかなりの年月が経ちます。そこで、現実的に建築基準法の制

定後に適用の変更が生じうる場合を条文に明記したものです。

具体的には、ⅰ)都市計画区域・準都市計画区域の指定・変更、ⅱ)条例の制定・改正の2つの場合

が、新たに集団規定が適用される場合として明文で規定されることとなりました。

② 接道義務の例外の追加 重要度Aランク

建築物の敷地は、4m以上の道路に2m以上接しなければならないのが「原則」です(接道義務)。

従来は、敷地に2m以上接しなくてもよい「例外」として、以下のものが規定されていました。

「その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、

特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可した

もの」(建築基準法 43条2項)

今回の改正で、さらに以下のものが「接道義務の例外」として、新たに追加して規定されました。

「その敷地が幅員4メートル以上の『道』(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な

国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。=農道その他これに類する公共の用に供する道であ

ること、施行令 144 条の4第1項各号に掲げる基準に適合する道であること)に2メートル以上接する

建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適

合するもの(延べ面積が 200 ㎡以内の一戸建ての住宅)で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び

衛生上支障がないと認めるもの」

⇒建築審査会の同意は、不要となりました。

③ 容積率の算定の基礎となる延べ面積への不算入の特例 重要度Bランク

老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(老人ホーム等)の共用の廊下又は階段の用に供

する部分について、共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分と同様に,容積率の算定の基礎とな

る延べ面積に算入しないこととなりました。

※ なお、「地下室については、容積率の算定の際に延べ床面積の3分の1を限度として、算入し

ない」旨の特例については、既に平成 27年6月1日の改正によって、「住宅」に加え「老人ホ

ーム、福祉ホームその他これらに類するもの」ついても適用することができるようになっていま

す。

④ 宅配ボックス設置部分の容積率の延べ面積への不算入 重要度Bランク

「共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分」については、容積率の算定の基礎となる

延べ面積には算入されません。

「宅配ボックス」については、既に平成 29 年 11 月 10日の国土交通省の通知により、共同住宅の

共用の廊下と一体となった一定の部分については、その部分の床面積を容積率の算定の基礎となる延

べ面積には算入しないこととなっていました。

― 24 ―

それが、建築基準法施行令の改正により、「宅配ボックスを設ける部分(宅配ボックス設置部分)」

について、一律に延べ床面積に算入しないこととなりました。つまり、設置されている建物の用途や

設置場所によらず、特例の対象となるということです。

ただし、各階の床面積の合計の 100分の1が限度となります。

なお、ここで「宅配ボックス」というのは、配達された物品(荷受人が不在その他の事由により受

け取ることができないものに限る)の一時保管のための荷受箱をいいます。

― 25 ―

○税 法

1.固定資産税

(1)現に所有している者の申告の制度化(令和2年度改正) 重要度Bランク

市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿等に所有者として登記等がされている個

人が死亡している場合、当該土地又は家屋を現に所有している者(現所有者)に、当該市町村の条例で

定めるところにより、当該現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させ

ることができるようになりました。

(2)使用者を所有者とみなす制度の拡大(令和2年度改正) 重要度Bランク

市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その

使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができること

になりました。使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録しようとする場合には、その旨を当

該使用者に通知します。

※ なお、この制度が実際に適用されるようになるのは、令和3年度以後の固定資産税の課税につい

てです。

(3)新築住宅の税額減額(令和2年度改正) 重要度Aランク

新築住宅に係る固定資産税の減額措置(120㎡までの部分について3年間(3階建以上の耐火・準耐

火構造では、5年間)にわたって固定資産税が「2分の1」となる措置)に関して、適用期限が2年延

長されています(令和4年3月 31 日まで)。

2.不動産取得税

(1)宅建業者等が取得する新築住宅の取得日に係る特例措置(令和2年度改正) 重要度B

ランク

不動産取得税について、新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日

から1年(本則6月)を経過した日に緩和する特例措置は、適用期限が2年延長されています(令和4

年3月 31 日まで)。

(2)住宅用土地の税額の減額措置(令和2年度改正) 重要度Cランク

一定の住宅用土地(新築住宅用土地)に対する不動産取得税の税額の軽減措置(=床面積の2倍(200

㎡を限度)相当額等の減額)を受ける場合の土地の取得から新築までの期間要件を2年から3年とする

特例措置は、適用期間が2年延長されています(令和4年3月 31日まで)。

(3)住宅・土地の税率の特例(平成 30年度改正) 重要度Aランク

住宅及び土地に係る不動産取得税の税率を3%(本則4%)とする特例措置は、適用期限が3年延長

されています(平成 33年3月 31日まで)。

(4)宅地評価土地の課税標準を2分の1とする特例(平成 30 年度改正) 重要度Aランク

宅地評価土地に係る不動産取得税の課税標準を2分の1とする特例措置は、適用期限が3年延長さ

れています(平成 33年3月 31日まで)。

4.登録免許税

(1)個人の住宅の取得等に関する税率の軽減措置(令和2年度改正) 重要度Aランク

適用期限が2年間延長されています(令和4年3月 31日まで)。

― 26 ―

登記の種類 本則 軽減税率

①所有権の保存登記 1000分の4 1000 分の 1.5

②所有権の移転登記(売買・競売) 1000分の 20 1000 分の3

③抵当権の設定登記 1000分の4 1000 分の1

本特例は、一定の要件を満たした「住宅」にのみ適用することができます。

(2)土地に関する特例(平成 31 年度改正) 重要度Bランク

土地に関する売買による所有権の移転登記等の税率を軽減する特例に関して、適用期限が2年間延

長されています(平成 33(令和3)年3月 31日まで)。

登記の種類 課税対象 本則税率 特例

売買による

所有権の移転登記

土地 1000分の 20 1000分の 15

建物 1000分の 20 なし

(参考)所有権の「信託」の登記は、1000 分の4から「1000 分の3」に軽減されます。

(3)特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の

軽減措置(令和2年度改正) 重要度Bランク

「特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する税率の軽減措置」は、適用期限が

2年延長されています(令和4年3月 31日まで)。

個人が、宅建業者により一定の増改築等(取得後2年以内)が行われた居住用家屋(新築後 10 年経

過した既存住宅、床面積 50㎡以上)を取得して居住の用に供した場合、取得後1年以内に登記を受け

るものに限り、その居住用家屋の所有権の移転の登記については、登録免許税が軽減されます(本則

1,000分の 20→1,000分の1)。

(4)相続による土地の所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置(平成 30年度改正)

重要度Cランク

① 相続により土地を取得した個人が登記をしないで死亡した場合の免税措置

相続により土地の所有権を取得した者が当該土地の所有権の移転の登記を受けないで死亡し、その

者の相続人等が平成 30 年4月1日から平成 33(令和3)年3月 31 日までの間に、その死亡した者を

登記名義人とするために受ける所有権の移転の登記(本則 0.4%)に対する登録免許税を免税とする措

置が創設されました。

② 少額の土地を相続により取得した場合の免税措置

個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から平成 33(令和3)年

3月 31日までの間に、相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地について相続による所有権の

移転登記を受ける場合において、当該移転登記の時における当該土地の価額が 10万円以下であるとき

は、当該相続による土地の所有権の移転登記(本則 0.4%)に対する登録免許税を免税とする措置が創

設されました。

5.贈与税

(1)今年度の適用効果(非課税の特例) 重要度Bランク

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の限度額について、『令和2

年中』に住宅取得等資金の贈与を受けた場合は、以下のようになります。

省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋 1,500万円

それ以外の(一般的な)住宅用家屋 1,000万円

― 27 ―

6.譲渡所得

(1)特例の適用期間が延長されたもの(令和2年度改正) 重要度Bランク

① いわゆる「買換え特例(特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例)」

の適用期限が、2年延長されています(令和3年 12月 31日まで)。

② 「譲渡損失の繰越控除等(ⅰ居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、ⅱ

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)」の適用期限が、2年延長されています(令和3

年 12月 31 日まで)。

③ 「優良住宅地の造成等のための軽減税率(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長

期譲渡所得の課税の特例)」の適用期限が、3年延長されています。なお、適用対象から一定の譲渡が

除外されています(令和4年 12月 31日まで)。

(2)空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(平成 31年度改正) 重要度Bランク

相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(「被相続人居住用家屋」)及びそ

の敷地の用に供されていた土地等を当該相続により取得をした個人が、一定の譲渡をした場合には、当

該譲渡に係る譲渡所得の金額について『居住用財産の譲渡所得の 3,000 万円特別控除』を適用するこ

とができる特例措置は、適用期間が4年延長されています(平成 35(=令和5)年 12 月 31 日まで)。

※ 「被相続人居住用家屋」とは、昭和 56 年5月 31 日以前に建築された家屋(=旧耐震基準建築物)

であって、当該相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったもの。

ただし、区分所有建築物は除きます。

〔主な適用要件〕

① 当該相続の時から当該相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで

の間にしたものであること

② 当該譲渡の対価の額が1億円を超えないこと

③ 当該相続の時から当該譲渡・除却の時まで、事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたこ

とがないこと

④ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準(耐震基準)に適合す

るものであること

※ 以下の場合が、改正により新規に追加(平成 31 年度改正)

空き家に係る譲渡所得の 3,000 万円特別控除の特例について、居住の用に供することができない事

由として政令で定める事由(特定事由)、例えば相続開始直前まで老人ホーム等に入所をしていたなど、

以下の要件を満たした場合は、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていたも

のとして、平成 31 年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋(敷地等)の譲渡について、特例を適用

することができるようになりました。

① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等

に入所をしていたこと

② 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者に

よる一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されてい

たことがないこと

【参考】空き家に係る譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除)は、以下の特例と併用して適用を受

けることができます。⇔いずれも、一般の 3,000 万円特別控除とは併用不可のもの

― 28 ―

〇 一般の 3,000万円特別控除(同一年内合わせて 3,000万円が限度)

〇 買換え特例(特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)

〇 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

〇 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

〇 住宅ローン控除(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)

7.住宅ローン控除

(1)他の特例との併用関係(令和2年度改正) 重要度Bランク

取得等をした「新規住宅」を居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から従

来「2年目」であったものが、改正により『3年目』に該当する年中に「従前の住宅等」の譲渡をし

た場合に、従前住宅等の譲渡について、次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住

宅ローン控除の適用を受けることができないことになりました。

①居住用財産の軽減税率の特例(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)

②3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡所得の特別控除)

③特定の買換え特例(特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例)

改正前 改正後

(上記の特例の適用を受けるのが)

適用を受ける年度

前年分・前々年

翌年・翌々年中

(上記の特例の適用を受けるのが)

適用を受ける年度

前年分・前々年

翌年以後3年以内

これは、特に「3,000 万円特別控除」については、居住しなくなってから「3年目」の年末までに

譲渡すれば、特例の適用を受けることができるとされている関係から、住宅ローン控除の適用を受け

ている者が、その3年目に以前居住していた住宅等を譲渡すると、本来重複適用が禁止されているは

ずの 3,000 万円特別控除の適用を受けることができてしまうことになります。このような脱法的な脱

税行為を防止するための改正です。

(2)今年度の適用効果 重要度Bランク

一般住宅を令和2年に居住の用に供した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等を有する場合の所得税

額の特別控除の特例)の対象となる年末残高は、「4,000万円以下」です。

居住年 控除期間 控除率

令和2年

1年~10年 (年末残高等)

×1%

11年~13 年 (住宅取得等対価の額-消費税等相当額)

×2%÷3 ※

※ 実質的に、消費税等の8%から 10%への税率上昇分の2%の額を3年間控除するものです。

― 29 ―

○ 統 計

〔統計:年度別出題項目一覧〕 年度

項目 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 R1

地価公示 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ◎

建築着工統計 ◎ ○ ○ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ○

土地白書 ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

法人企業統計 ○ ○ ○ ◎ ○ 〇 ○ ○

国土交通白書 ◎ 〇 ○

その他 ○注

※ ◎は、正解肢としての出題(平成 23年度は、誤記を訂正して表示しています)。

注 平成 27年度は「不動産価格指標(住宅)」から初めて出題がありました。

1.地価公示 ~ 直近 10年間で9回出題(正解肢3回) ~

「地価公示」は、官報で、毎年3月に公表されるのが通例となっています。宅建試験では、ほぼ毎

年出題されている項目です。

〔暗記のポイント-令和2年地価公示(令和2年3月 19日公表)〕

平成 31年1月以降の1年間の地価について

〇 全国平均

「全用途平均」が5年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大し上昇基調を強めている。

「住宅地」は3年連続、「商業地」は5年連続、「工業地」は4年連続の上昇となり、いずれ

も上昇基調を強めている。

〇 三大都市圏

全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれについても、各圏域で上昇が継続し、東京圏及

び大阪圏では上昇基調を強めている。

〇 地方圏

「全用途平均・住宅地」が2年連続、「商業地・工業地」は3年連続の上昇となり、いずれも

上昇基調を強めている。

(地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で上昇が継続し、上昇基調を

強めている。地方四市を除くその他の地域においても、全用途平均・商業地が平成4年以来 28

年ぶりに上昇、住宅地は平成8年から続いた下落から横ばいとなり、工業地は2年連続の上昇

となった。)

【前年と比較した地価変動率と傾向】

住宅地 商業地 全用途平均

全国平均 0.8%

(3年連続の上昇)

3.1%

(5年連続の上昇)

1.4%

(5年連続の上昇)

三大都市圏 1.1% 5.4% 2.1%

地方圏 0.5%

(2年連続の上昇)

1.5%

(3年連続の上昇)

0.8%

(2年連続の上昇)

― 30 ―

2.建築着工統計 ~ 直近 10年間で 10回出題(正解肢4回) ~

「建築着工統計」(「住宅着工統計」と表記されることもあります)も、ほぼ毎年出題される頻出項

目です。なかでも、「新設住宅着工戸数」が出題のほとんどを占めます。

建築着工統計調査には、「年計(1月~12月)」(例年1月末公表)のものと「年度計(4月~3月)」

(例年4月末公表)の2種類ありますが、近年の宅建試験では「年計」から出題されていますので、

「年計」をきちんと準備しましょう(年度計は、余力がある人が念のためみておけばよいです)。

出題年度

出題統計

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

「年」

統計 ○ 未

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 〇 〇

「年度」

統計 ○ ○ ○

〔暗記のポイント―建築着工統計調査報告(国土交通省)〕

●令和元年計(令和2年1月 31日公表)

令和元年の新設住宅着工は、持家及び分譲住宅は増加したが、貸家が減少したため、全

体で減少となった。

① 戸数

令和元年の新設住宅着工戸数は、約 91 万戸。

⇒前年比では4.0%減となり、3年連続の減少。

② 利用関係別戸数

持家 ⇒3年ぶりの増加(1.9%増、約 28.9 万戸)

貸家 ⇒2年連続の減少(13.7%減、約 34.2万戸)

分譲住宅 ⇒5年連続の増加(4.9%増、約 26.8 万戸)

・マンション →昨年の減少から再びの増加(6.6%増、約 11.8 万戸)

・一戸建住宅 →4年連続の増加(3.6%増、約 14.8万戸)

〔用語〕持家:建築主が自分で居住する目的で建築するもの

貸家:建築主が賃貸する目的で建築するもの

分譲住宅:建て売り又は分譲の目的で建築するもの

〔プラスアルファ〕 新設住宅着工床面積

約 7,500万㎡、前年比 0.6%減、3年連続の減少。

→ 新設住宅着工床面積は、近年では平成 16年度に出題されただけですので、

余力があれば押さえておく程度でよいでしょう。

〔参考〕●令和元年度(令和2年4月 30日公表)

令和元年度の新設住宅着工戸数は、前年度と比較すると、全体で7.3%の減少となった。

①総戸数

令和元年度の新設住宅着工戸数は、約88万戸。

⇒前年度比では 7.3%減となり、昨年度の増加から再びの減少。

②利用関係別戸数

〇持家 ⇒昨年度の増加から再びの減少

〇貸家 ⇒3年度連続の減少

〇分譲住宅 ⇒昨年度の増加から再びの減少

・マンション→昨年度の増加から再びの減少

・一戸建て →5年度連続の増加

― 31 ―

〔プラスアルファ〕 新設住宅着工床面積

約 7,300万㎡、前年度比 4.5%減、昨年度の増加から再びの減少。

3.土地白書 ~ 直近 10年間で9回出題(正解肢1回) ~

こちらも最もよく出題される項目の1つです。出題項目では、「土地取引件数(売買による所有権の

移転登記の件数)」が、一番多く出題されています。

そして、「土地利用の概況」は、平成 24年度と平成 28年度に出題されています。

① 土地取引件数

〔暗記のポイント― 令和2年版土地白書(令和2年6月 16 日公表)〕

② 土地利用の概況

平成 30年における我が国の国土面積は約 3,780 万 ha であり、このうち森林が約 2,503 万 haと最も

多く、次いで農地が 442 万 ha となっており、これらで全国土面積の約8割を占めている。このほか、

住宅地、工業用地等の宅地は約 196万 ha、道路は約 140万 ha、水面・河川・水路が約 135万 ha、原野

等が約 35 万 haとなっている。

4.法人企業統計 ~ 直近 10年間で8回出題(正解肢1回) ~

近年コンスタントによく出題されている項目です。宅建試験では、「不動産業」の統計から出題され

ます。

〔暗記ポイント-平成 30 年度法人企業統計年報(財務省、令和元年9月2日公表)〕

〔参考〕平成 30年度の不動産業の「売上高経常利益率」

〇11.1% 前年度比 2.9%減(3年ぶりの減少)

※ 全産業の売上高経常利益率は 5.5%であり、不動産業の方が高い。

5.国土交通白書 ~ 直近 10年間で3回出題(正解肢1回) ~

国土交通白書からは、近年では、平成 18 年度、21 年度、24 年度、28 年度、令和元年度に「宅地建

物取引業者数」が出題されています。

〔暗記のポイント-令和2年版国土交通白書(令和2年6月 26日公表)〕

土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、令和元

年の全国の土地取引件数は約 131 万件となり、横ばいで推移している。(法務省「登記統

計月報」)

●平成 30年度の不動産業の「売上高」

・約 46 兆 5,000 億円 前年度比 7.1%増で、4年連続の増加

●平成 30年度の不動産業の「経常利益」

・約5兆 2,000 億円 前年度比 15.0%減で、3年ぶりの減少

宅地建物取引業者数は,平成30年度末(平成31年3月末)において約12万4,000(124,451)業者

となっている。

⇒ 5年連続の増加

― 32 ―

【参考】 住宅・土地統計調査 ~ 直近 10年間で0回出題(正解肢0回) ~

「住宅・土地統計調査」は5年ごとに実施されていて、我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状

況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査です。最新の「平成 30

年住宅・土地統計調査」の「住宅及び世帯に関する基本集計」が令和元年9月に公表され、今年度の令

和2年度の宅建試験から出題範囲に含まれるようになりました(今年度が、最も出題可能性が高い5年

に1度の年です)。

近年の宅建試験では、平成7年度、11年度、13年度に出題されています。

(暗記のポイント-平成 30年住宅・土地統計調査-総務省統計局、令和元年9月 30 日公表)

● 2018(平成 30)年 10月1日現在における我が国の総住宅数は 6,240万7千戸、総世

帯数は 5,400 万1千世帯となっており,2013(平成 25)年と比べ,総住宅数は 177 万

9千戸(2.9%)増,総世帯数は 154 万9千世帯(3.0%)増となっている。

※ 総住宅数が総世帯数を上回っている。1世帯当たりの住宅数も上昇傾向にあるが,近

年はその傾向が緩やかになってきており,2018 年は 1.16戸と,2013(平成 25)年と同

水準となっている。

● 空き家数は 848 万9千戸と 3.6%の増加、2013(平成 25)年と比べ 29 万3千戸(3.6%)

の増加となっている。

空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は 13.6%と、過去最高となっている。

(2013(平成 25年)から 0.1%上昇)。