2016年熊本地震 地盤被害と復旧状況 一次: 日~17日2016 年熊本地震...
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2016年熊本地震地盤被害と復旧状況
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一次: 4月16日~17日二次: 4月22日~24日
三次: 4月29日~5月1日
東京大学生産技術研究所 清田 隆 (一次・二次・三次)
長岡技術科学大学 池田隆明 (一次・二次)
東京大学 内村太郎 (一次)
横浜国立大学 小長井一男 (二次・三次)
学生:萩野・前川(東大生研)、梶原・志賀・富田・奥田(横国) (三次)
益城エリア
阿蘇エリア
西原エリア
熊本南部
断層の大まかな位置
調査ルート(全体)
熊本南部
調査個所
• 秋津川堤防と近隣住宅地
• 西熊本駅周辺
• 熊本港 4/22 秋津川右岸 堤防沈下
Keyword: 液状化
秋津川堤防周辺
西熊本駅周辺
熊本港
堤防被害
A BC
旧河道
• 堤防の側方変位・沈下・亀裂が、多数確認された。
• 橋梁と盛土部との段差は多く生じたが、主な道路の応急復旧はほぼ完了(4/22)
• 家屋への直接的な被害は比較的少ない。
• 被災箇所は、旧河道や氾濫原(治水地形分類図より)に位置するケースが多い
約50cm
堤防道路と法面に亀裂が入り、河道へ変位。旧河道箇所に相当する
埋設埋戻土の液状化による沈下?
A B
C
治水地形分類図:国土地理院
写真:国土交通省九州地方整備局河川部河川計画課)4/15
堤防被害
加勢川右岸の堤防4/14の前震で被害4/16の本震で被害が拡大したかは不明。
4/22 復旧状況
• 堤防の沈下・変状は雨期の洪水に繋がるが、液状化により背後地盤も沈下していると、浸水域は拡大する恐れ(要調査)。
約60cm
秋津川堤防の沈下と変位(橋脚は動いていない)
河道沿いの住宅地
• 間島地区の北側の一部家屋が傾斜• 道路に亀裂が生じている• メートル単位の流動は生じていない• 4/22 噴砂は確認されなかった
3~4°
間島地区の堤防道路の亀裂 埋立土
治水地形分類図:国土地理院
3~4°
4/16 レークタウン北側の道路が液状化安田先生・石川先生(東京電機大学) 4/22 清田撮影(前日に降雨)
河道沿いの住宅地
埋立土
• 埋立地に位置する秋津レークタウン• 街区北側道路に噴砂跡有• 4/22 タウン内に液状化の痕跡は確認されず。家屋被
害も無し。擁壁・道路の有意な変状も確認されず。
調査個所
治水地形図:国土地理院
西熊本駅周辺
液状化確認範囲
• JR線路東側で噴砂の発生や構造物被害を確認• このエリアで5、6軒の家屋沈下・傾斜が発生• 自然堤防に位置する。水路が横切っている。
• JR高架の地盤で噴砂と亀裂が確認された
・3階建て建物が大きくめり込み沈下(約50cm)・構造に変状認められず、窓も割れていない
4°
熊本港フェリーターミナル周辺
4/22 噴砂が確認されたが、岸壁に変状は認められない。 4/22 道路復旧工事中。液状化発生の報告有
4/22 熊本港夢咲島南岸を調査液状化の痕跡は見られるが、大きな被害は確認されず。
Google Earthに加筆
熊本港夢咲島
液状化の発生は広範囲で生じており、主に道路と堤防に被害が出ている。(地盤工学会災害報告よりhttps://www.jiban.or.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=1845:201
6-4-14-kumamotojishin-top)4/22時点において、液状化被害の全貌は明らかではない。今後情報が集まるのでは。
液状化の発生状況は、安田先生・石川先生(東京電機大学)の調査報告も参考にされたいhttp://yasuda.g.dendai.ac.jp/
噴砂を確認した個所4/22噴砂未確認だが、液状化が生じたと思われる個所
再液状化の確認(秋津川右岸・秋津)1889年熊本地震(M6.3)で液状化履歴有
噴砂を確認した個所4/22
若松(2011):日本の液状化履歴マップを参考とし、1889年の地震と同じ地域での液状化の発生を確認。
液状化発生個所は氾濫原にあたる。
噴砂
治水地形分類図:国土地理院
Google Earthに加筆
益城エリア
• 県道28号線沿いの家屋被害
• 九州自動車道盛土被害
• 国道443号線寺迫
高速盛土と周辺家屋被害
寺迫周辺の国道と家屋被害
Keyword: 家屋被害・道路被害と復旧
・倒壊率は非常に高い。・新基準以降と思われる家の倒壊も目立つ・4/14前震で大きな被害を受け、4/16本震で倒壊に至ったという証言が多い。・倒壊家屋による住宅道路の閉塞が多く発生・被害地域は緩傾斜地で、崖錐堆積物を含むやや緩い地盤であった可能性
県道28号沿線の住宅被害
地盤の変状の影響は?
南北ひび割れ
噴砂あり
この通りで最大の道路亀裂
マンホール浮上
• 県道28号線南側は、緩い傾斜地盤であるため、東日本大震災時の造成地被害(例:折立)と同様の傾向(地すべり)があるか調査(4/30)
• 道路に数cm~10cm程度の小クラック多数。埋め戻し土の沈下も生じている。• 連続性のある大亀裂は確認されず、地域全体の基礎地盤が地すべりのように一様に変状した可能性は低い。
調査範囲
• 調査地南部の河道に近づくと平地で軟弱地盤とリンクする地勢へ変化• 家屋の倒壊率は極端に低くなる。マンホール浮上が増える• 軟弱地盤による免震効果の可能性。
益城町 家屋被害に及ぼす地盤変位の影響
益城町 家屋被害に及ぼす地盤変位の影響
地域全体にわたる一様な地盤変状は無いが、個々の宅地の変状よる被害は散見される。
益城町のその他の被害
ボックスカルバートの被害 橋の段差、盛土沈下・変位 橋脚のせん断破壊
土砂流出
H= 2.5~3m
国道443号線(寺迫)
崖錐
木が大きく傾く
地山?崖錐堆積物?
崩壊は4/14前震で発生 治水地形分類図によると、崩壊箇所は地山と崖錐
の境界に相当 崖錐部分のすべり破壊が原因か 寺迫交差点南側の道路も被害大(氾濫原に相当)
治水地形分類図:国土地理院
国道443号線(寺迫)の迅速な復旧
4/16
4/16
4/22
4/22
寺迫交差点北側
寺迫交差点南側
写真:国土地理院
写真:NEXCO西日本
治水地形分類図(国土地理院)
九州自動車道(益城熊本空港IC南部)盛土被害
湿地
被害は4/14前震で発生 被害箇所は橋台裏の盛土であり、軟弱地盤(氾濫原)に相当。
盛土のため水路を変更したとの報告もある 高速道路面は大きく沈下し、法面ははらみ出している 考えられる原因: 軟弱な基礎地盤もしくは高い地下水位によ
り飽和した盛土下部が、振動によりせん断抵抗が低下、その層が沈下・せん断変形し、追従して道路盛土全体が変形(lateral spreading)
すぐ脇の家屋は大きく傾斜している(液状化?)。軟弱な基礎地盤を示唆する。
水路が狭くなった(住民談)
大きく傾斜した家屋被害箇所
4月中に復旧予定
九州自動車道の復旧(4/30)
4/22
4/30
高速道路の中央にシートパイルを打設し、縁切りをした後に道路を解放
崩壊部分を掘削中(4/30)
シートパイル
西原エリア
• 大切畑ダム周辺道路と橋梁
• 俵山トンネル
大切畑ダム北側道路の斜面崩壊
俵山トンネル
大切畑ダム周辺
Keyword: 斜面崩壊・漏水浸食・橋桁・トンネル
大切畑ダム北側道路の被害
大切畑大橋の橋げた被害
大切畑ダム
大切畑大橋の桁の支承からの落下 大切畑大橋南側斜面の崩壊 大切畑ダムの漏水が報告された。ダム堤体には決壊に繋がる顕著な変状は見らな
かったが、道路に埋設されている排水管が損傷し、道路盛土を浸食していた。
斜面崩壊
橋梁背面地盤被害擁壁転倒
Google Earth
大切畑ダム施設と北側道路周辺の被害
高い擁壁(約3m)はバックリング低い擁壁(約1.8m)は転倒
旧道の橋梁(昭和48年竣工)背面盛土が沈下し、大きな段差(1m程度)
ダム放水路の擁壁が破壊され、前面に傾斜
大切畑大橋(平成13年竣工) 西詰から撮影
支承
支承からの落下
橋桁が1~1.5m程度移動 橋の右側で斜面崩壊が生じているが、崩壊
土砂は橋脚に変状を及ぼしていない
大切畑大橋 西詰
支承も台から落下
東詰
50cm程度
支承から落ちたので沈下
大切畑大橋北側 斜面崩壊
崩壊前(Google)
表層の火山灰質土の崩壊(L=約130m) 吹付コンクリートが施工されていた 遮断された側道に復旧のためと思われ
る重機が取り残されていた。小崩壊が4/14前震で生じ、4/16本震で大崩壊に至ったと考えられる。
大切畑大橋北側道路 盛土被害
航空写真比較より、被害箇所は盛土部にあたる ダム決壊が懸念されて排水されたと思われる水
が、盛土内に回り込み道路を浸食
2016年
1975年
国土地理院
大切畑大橋北側道路盛土被害
盛土道路の埋設排水管の損傷により大量の漏水
盛土を大きく浸食している(撮影日が異なることに注意)
4/16撮影
4/22撮影
大切畑地区の家屋被害宅地の被害も確認
大切畑大橋付近から撮影 高い倒壊率。ダム決壊の恐れのため避難中(4/16)
俵山トンネルの被害調査範囲:坑口(西側)周辺、および坑口より300m程度被害状況:①坑口(西側)手前の斜面崩壊
②覆工コンクリートの剥落45m、50m、100m、120m、250m付近トンネル軸方向の圧縮破壊
崩落250m
100-120m
45-50m
トンネル坑口(西側)手前で大きな崩壊が発生
45~50m付近の被害覆工コンクリートの亀裂と剥落
250m付近の被害トンネルが軸方向に圧縮され、覆工コンクリートの剥落
および路面が持ち上りが見られる
• 震動に起因する家屋被害
• 阿蘇大橋流出
• 大規模斜面災害
• 造成地の家屋被害
• 補強土擁壁の被害
• 北東-南西に連続する地盤沈下
阿蘇エリア Keyword: 斜面崩壊・火山堆積物・断層・造成盛土
阿蘇大橋西側の斜面崩壊阿蘇大橋
多数の斜面崩壊と家屋被害
連続する地盤沈下
断層周辺で生じた家屋被害
資料:アジア航測
河陽、黒川地区では地表面断層がはっきり現れた。 周辺家屋の被害率はかなり高い
地震後の空中写真:国土地理院
低層構造で一階部分が潰れるパターンの被害が多い 断層直上の建物は変位による損傷パターンもある
断層直上の建物
斜面崩壊と阿蘇大橋流出(阿蘇大橋東側からの撮影)
崩壊箇所は緩い谷地形であった?Google earth
斜面崩壊と阿蘇大橋の流出
橋台と道路面は残っている
火山灰質土の表層崩壊 斜面の観察より、3つの崩壊痕が見ら
れ、最上部の崩壊は比較的深層まで達する。
最上部の崩壊土砂の流路は斜面に向かって左側を通り、阿蘇大橋に向かっているように見える
阿蘇大橋の橋台と裏の道路面は残存している。
阿蘇大橋は上路アーチ橋であった。橋流出が崩壊土砂の直撃によるものか、谷の下の基礎部が崩壊したかは不明
崩壊斜面の時間変化(7日後)
4/17
4/17
4/24
4/24 一部の樹木と大礫が少なくなった 斜面表面は滑らかに。降雨による流出か
4/17
4/24
地震後の降雨の影響
阿蘇大橋東側の斜面崩壊から南を望む
地震による表層崩壊が、一週間後に規模拡大
撮影方向
地震後の空中写真:国土地理院
その他の斜面災害 斜面の傾斜は10°程度かそれ以下 救出作業中のため、自衛隊による斜面監視 UAV撮影実施(4/29)
末端までの距離:約600m
崩壊した土砂を受けた家屋 崩壊地下部の住宅は震動による被害は確認されない
地震後の空中写真:国土地理院
同じ丘の反対方向での斜面崩壊 UAV撮影実施(5/1)
その他の斜面災害 崩壊部の傾斜は約20°
末端までの距離:約250m
地震後の空中写真:国土地理院
斜面の傾斜は約10°
その他の斜面災害
末端までの距離:約90m
滑落崖の横の住宅は震動による被害は確認されない
滑落崖(高さ10m程度)
地震後の空中写真:国土地理院
その他の斜面災害
元の斜面の平均傾斜は約12°
45m程度
地震後の空中写真:国土地理院
• 火山灰を主体とした表層崩壊
• 崩壊斜面の傾斜角が非常になだらか(10°以下もある)
• 非常になだらかだが、流下距離が長い。残留強度が非常に低いor液状化に近い状態で流下しているのでは
• 斜面崩壊は断層の両側に分布。横ずれが卓越する断層運動のためでは
阿蘇エリアの斜面災害の特徴
Histogram of slope gradient of earthquake-induced landslide by 2004 earthquake, Yamazaki, 2008
中越地震の地すべりは平均20°程度
Slope angle (deg.)
Landslides due to the EQ
地すべり分布:国土地理院
斜面崩壊多発
被害の少ない住宅地
家屋だけでなく、道路にも亀裂変状はほとんど確認されず
顕著な被害を受けた住宅地
阿蘇地域の対象的な
被害の分布
地震後の空中写真:国土地理院
阿蘇地区
住宅地の被害
北側住宅地の道路および宅地に大きな亀裂が走る。
家屋の構造被害は限定的
撮影方向(次スライド)
地震後の空中写真:国土地理院
阿蘇地区 住宅地の被害
崩壊斜面上に多数の住宅
深刻な住宅被害 深刻な被害は、北側谷沿いに多い
道路・宅地を問わず大きな亀裂多数
家屋構造の損傷は限定的
地盤の問題
UAV撮影実施(5/1)
阿蘇地区 住宅地の被害
地震後の空中写真:国土地理院
造成前1975年 2016年
やや低い=盛土層厚大
住宅地造成前後の比較
造成前の土地はフラットではないため、盛土と切土で地盤を整形
盛土と思われる部分は、深刻な被害家屋の位置と対応する
住宅地の地盤評価の重要性を示唆する
地震後の空中写真:国土地理院
補強土擁壁の被害
道路盛土の崩壊と、その下部の補強土擁壁(テールアルメ擁壁)の崩壊が発生
補強土擁壁のストリップが確認できる
道路の崩壊幅は、約40m
ストリップ?
道路の崩壊。この下に補強土壁
道路の崩壊
地震後の空中写真:国土地理院
河道閉塞 小さな河道が幅約50mの地すべりにより閉塞
せき止められた河川水があふれて周辺の田んぼを流れる
自衛隊により崩壊土砂の撤去作業(4/23) 崩壊は断層の延長線上に位置する
崩壊土砂
斜面崩壊
地震後の空中写真:国土地理院
河道閉塞の解消
4/23
4/29
河道をせき止めていた土塊が排除された
元の河道を流下
原因不明の地盤沈下
断層延長線上の田畑に最大1.5m程度の地盤沈下が連続して発生(北東-南西方向)
地盤沈下の幅は数十メートル程度
UAV撮影実施(5/1)
原因不明の地盤沈下
段差直上の家屋被害 段差は約1.6m
沈下は数十mの幅を持って分布(奥に反対側の段差が発生している)
段差直上の高層構造物基礎が抜けている
原因不明の地盤沈下(旧河道か断層の影響か?)
本調査ルートと主要な写真(kmzファイル)は、以下のHPからダウンロードできます。
内容は随時修正・アップデートされます。
東京大学生産技術研究所 清田研究室
http://www.gdm.iis.u-tokyo.ac.jp/index.html