#12 ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る - nhk...− 3 −...

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− 1 − 高校講座・学習メモ ラジオ 学習メモ #12 今回はギタリストの中 なか むら しのぶ さんにお話を伺います。 高校生のときからギターを弾き始め、大学を卒業後、 実力をつけるためアメリカのボストンにあるバーク リー音楽大学へ留学。世界中から才能が集まる大学でギタリストとしての挫折 を経験しますが、目指すべき道も見つけたそうです。今はギタリストとしてさ まざまなライブやレコーディングに参加し、さらにCM音楽をプロデュースす るなど、多方面で活躍されています。「みんなで協力してハーモニーを作る」 ことが音楽の喜びでもあり驚きでもあると語る中村さんの仕事をご紹介します。 ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る ギタリストとは ライブやレコーディングなどでギターを演奏する人のことです。演奏の確かさはもちろんです が、他の楽器を演奏するミュージシャンとのコミュニケーション能力や、自分のイメージする演 奏をするため、絶えず練習をし続けるストイックさなどが求められます。音楽を通じて、リスナー に感動を届けることができる仕事とも言えるでしょう。 ギタリストになるには 独学してグループやソロのギタリストとして活動したり、楽器の演奏や曲の理論などを学ぶ専 門学校や芸術系の大学を卒業して活動をしたりするなど、さまざまなルートがあるようです。華 やかな世界に思えますが、プロとして活動するにはさまざまな音楽の知識やテクニックは当然で すが、音楽業界との人脈の形成なども必要なようです。 MC・リポーター 井本彩花

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  • − 1 − 高校講座・学習メモ

    ラジオ学習メモ

    #12

    今回はギタリストの中なか

    村むら

    忍しのぶ

    さんにお話を伺います。高校生のときからギターを弾き始め、大学を卒業後、実力をつけるためアメリカのボストンにあるバークリー音楽大学へ留学。世界中から才能が集まる大学でギタリストとしての挫折を経験しますが、目指すべき道も見つけたそうです。今はギタリストとしてさまざまなライブやレコーディングに参加し、さらにCM音楽をプロデュースするなど、多方面で活躍されています。「みんなで協力してハーモニーを作る」ことが音楽の喜びでもあり驚きでもあると語る中村さんの仕事をご紹介します。

    ギタリストみんなで協力してハーモニーを作る

    ギタリストとは

    ライブやレコーディングなどでギターを演奏する人のことです。演奏の確かさはもちろんですが、他の楽器を演奏するミュージシャンとのコミュニケーション能力や、自分のイメージする演奏をするため、絶えず練習をし続けるストイックさなどが求められます。音楽を通じて、リスナーに感動を届けることができる仕事とも言えるでしょう。

    ギタリストになるには

    独学してグループやソロのギタリストとして活動したり、楽器の演奏や曲の理論などを学ぶ専門学校や芸術系の大学を卒業して活動をしたりするなど、さまざまなルートがあるようです。華やかな世界に思えますが、プロとして活動するにはさまざまな音楽の知識やテクニックは当然ですが、音楽業界との人脈の形成なども必要なようです。

     

    MC・リポーター

    井本彩花

  • − 2 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    ギタリスト 中村 忍さんに聞きました!

    ギタリストになろうと思ったきっかけ

    井本:さっそくなんですけど、ギタリストになろうと思ったきっかけはなんですか?中村:高校1年生ぐらいだったと思うんですけど、もうすでに解散したイギリスのバンドでレッ

    ドツェッペリンっていうバンドがあって、そのバンドの映画が映画館でやってたんですよ。ドキュメント映画みたいな。ライブの映像もあるみたいな。それを見てなんてすごいんだろうと思いまして、高校生くらいのときだからただ感動してみたいな感じで、こういう人になりたいな……と思ったのが最初の出発点かなと思いまして。最初に考えてみたらロックだったなと思いまして、エレキギターの大きな音で弾くみたいなギターに憧れたって感じですね。理性で思ったっていうよりも、火がついちゃったみたいな。衝動としてどうしてもなりたいって思っちゃって。とにかくやってみたい……と。

    井本:ギタリストになろうと思ってどのようなことをされていたんですか?中村:その映画を見て、さっそくバンドを組んで。高校の友達とかを集めてですね。当時、高校

    生とかが出られるアマチュアのコンテストみたいなものがありまして、そういうものに出たりですとか、地元のライブハウスに出て、いわゆるライブ活動みたいなものを始めて、お客さんの前でギターを弾くようなことを始めていったみたいな感じです。

    井本:高校生のころからバンドを組んですごいですね。中村:僕がそのとき好きだったレッドツェッペリンってバンドのギターの人が、自分でギターも

    弾いて、作曲もしてプロデュースもする、というようなスタンスの人だったんですね。ジミー・ペイジって人だったんですけど。それで自分も曲を作ってプロデュースっていうとおおげさですけど、バンドをまとめて、そのバンドをどうやってライブハウスに出るようにしたらいいかとか、売り込みに行ったりとか、そういうこともちょっとやり始めたかなという感じです。

    井本:高校生のころはギターしかやってなかったって感じなんですか?中村:それがね。ギターもやってたんですけど、部活でボクシングやってたんですよ。 井本:え? じゃぁバンド組みながら、ボクシングもされてたんですか?中村:結局、部活とギターばっかりやってたものですから、全然学校の勉強なんて……教室に

    ずっと教科書置きっぱなしで帰ってましたみたいな。井本:じゃぁ学校のテストの点数とかも……。中村:全部マークシートになればいいのにって思ってました。マークシートじゃなかったんで大

    変でしたけどね。でもまぁなんとか卒業できましたってかんじでしたけど。

    井本リポート

  • − 3 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    ギタリストとして仕事をしていくために:自分になにが足りないのかを考えた  

    井本:音楽の中でもいろんなジャンルがあると思うんですけど、その中でもロックにひかれたんですか?

    中村:最初はそうですね。10代のころは大好きでしたね。で、ずっとロックが好きでロックばっかり聞いていたんですけれど、当時LPっていわれるもので聞いていたんですけれども、その中にライナーノーツって解説書みたいなものが入っていたんですよ。で、それの中に、このアーティストはどういう影響を受けてこういう音楽を作った……、みたいな解説がいろいろ書いてあったりとか、音楽評論家の人たちが書いているのがあって。ジミー・ペイジなんかもマイルス・デイビスってジャズのトランペットの人がいるんですけれど、そのグループでギターも弾いていたジョン・マクラフリンっていう人にジャズギターを習っているって書いてあって、「あ! そうなんだ!」って思って、じゃあ、ジャズっていうのも聞いてみようと思っていろいろ聞いてみたんですけどね。それはそれで別のジャンルですごく衝撃を受けたというか。譜面にないことをアドリブでどんどん弾くみたいな、演奏するみたいなそのスタイルが若いころ刺激的で、そっちもちょっとやってみたいなってなりつつ、ロックも練習しつつ、ジャズもちょっと練習してみたいと思い始めたっていう感じです。

    井本:音楽が楽しくてしかたのない高校時代だったと思うんですけど、それからはどうされたんですか?

    中村:大学には進学したんですけれど、音楽の大学ではなくて、そのときは経営学部の普通の学部だったんですが、その中でもずっと音楽音楽って言っていて、相変わらずライブハウスなんかも出たりとかしましたが、だんだん仕事みたいにしていきたいな……と自分の中で思いつつ、お店でいわゆるハコバンっていうやつですね。ライブハウスなんだけどお食事もできるみたいな、レギュラーバンドが入っているお店が当時あったんですよ。定期的に、何曜日は何時から何時まではこのバンドが演奏しますと……いうようなバンドにちょっと大学生のときに入れてもらって、そこでギター弾いたりとか。あと単発でCMみたいな。1曲単位で弾かしてもらったりとか。

    そういうことをやり始めて、まぁちょっとアルバイト的にギャランティーも入るようになって、ますますのめり込んでいったって感じです。で、その中でロックだけじゃなくてジャズみたいなものも、ジャンルを広くしていかないと……幅広くいろんなことをできるようにしたほうが、仕事がたくさん入ってくると思ったんで、まぁ平行してジャズの理論みたいなものも本を買ってきて勉強し始めたかなみたいな感じですね。

    井本:それでギタリストとして活躍されながら、大学生活を送られて来たんですね。中村:そういう感じでギターもやってたんですけど、ゼミにも入っていたんですよ。卒業論文と

    かも書いて。周りの友達はみんな、どこそこの会社に入ると……。いうようにやってるけれど、中村君はどうするんだ?って指導教授に聞かれて、そのままギター弾いてますって言って、「え?」って。先生もちょっとびっくり……みたいな感じでしたけど、そのまま続けたいという意志のもと、相変わらず仕事にトライしていって、少しでも多くの仕事を

  • − 4 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    いただけるように活動し始めたという感じです。ただ、ギターだけで仕事が来るのを待っているだけだと、収入の面でも不安定なので、

    できれば自分でプロデュースじゃないですけど、プロジェクトを考えながら仕事として成立させていきたいな……と思い始めて、そのために何が自分に足りないのかな……と思ったときに、やっぱりもっと音楽理論ですとか、人脈ですとか経験とか(を築いていく)、そのためには例えばギターをただ弾くだけじゃなくて、曲を作ったりとか、譜面も全部書いて、それで結果自分が弾くということのほうがプロジェクトとして仕事として大きいので、そういうことを目指し始めたというのが大学の終わりぐらいかな。4年生ぐらいのときに。思ったんでしょうね……。

    バークリー音楽大学へ留学:視野が広がった

    井本:それからどうされたんですか?中村:自分で足りない部分は何だろうかって考えたわけですよ。たぶん大学を卒業するか

    直前ぐらいのときで半年ぐらいすごい悩んでいて、どうしたらいいかなと思っているうちに、圧倒的に自分の実力をつけるしかないなと思い、もっと勉強しようかなと思いまして、すこし準備期間を経てアメリカのボストンにあるバークリー音楽大学という所に留学しました。

    井本:そのバークリー音楽大学っていうのはどのような所なんですか?中村:ボストンにあって、ジャズを勉強したいんだったらそこに行きましょう……みたいな。世

    界から有名なミュージシャンが集まって来るみたいな所で。井本:実際に入ってみてどうでした?中村:自分が今まで聞いていたレコードで弾いている有名な人とか、そういう人が先生やってい

    たりして感激しましたね。僕が習った中で有名な人だと、スティーヴ・カーンってギターの人がいるんですけど、ビリー・ジョエルのストレンジャーって曲のイントロとか弾いてる人とか、その人はスティーリー・ダンってバンドでもギターを弾いていたりしたんですけど、高校のとき、自分の部屋で聞いていたあのレコードで弾いていた人が目の前で教えてくれるんだ……と思ったらちょっと感激しましたけど。

    井本:実際にその大学に入られて、どのように過ごして来られたんですか? 中村:ほとんど音楽漬けで、そのときは1日でもう12時間ぐらいギター弾いてたり、触った

    り……でもやっぱりものすごいうまい人いるんですよ。5歳ぐらいとかからギター弾いてますとか。スタートがすごい早かったりとか、ギター以外何もできなくていいや……ぐらいのことを言っている人とかが確かにいて……それはいい意味でですけれども、本当になんかこう、ちょっとショックを受けたというか、努力も必要だけど努力だけではできないところも確かにあるのかな……って何となくちょっとブルーになったりしましたけど……やっぱりみんなうまかったものですから。

    井本:実際行ってみて、よかったんですか?中村:それは本当によかったと思います。ギターだけじゃなくて自分が得意なのはなんなんだろ

    うとか、自分を見つめ直す機会にもなったし、ギターも弾いてましたけど専攻で編曲って

  • − 5 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    いうアレンジって言われている歌にいろいろな楽器の伴奏を考える……みたいな編曲作業の専攻になったんですね。そこで編曲を勉強して最後、期末試験みたいな変わりに曲を書いて、その曲をプロジェクトバンドって言って、すごいうまい人が演奏してくれるっていう……で、君の編曲はこんな感じですね……みたいなものをやってくれるというのがあって、それがすごく気持ちよくて、自分で考えた曲をみんなが弾いてくれるのってこんなにおもしろいんだな……というのがあって、ギターだけじゃなくてプロデュース業みたいなものをやってみたいな……っていうふうに思い始めたというのがあって、ギターの部分ではすごいうまい人がたくさんいてちょっと挫折した気分もあったんですけど、逆に前向きに視野が広がったかなと思いましたので、アメリカには行ってよかったなと思っています。

    井本:その後は大学を卒業されて日本に戻って来られたんですか?中村:日本に帰ってきて、プロデュースとか編曲とかやってみたかったんで、レコード会社とい

    うか……そっちに入ろうと。当時インディーズレーベルって言われていたんですけれども、そういうところから初めて、レコード会社のいわゆる制作マンっていうやつですかね。そんな形から仕事を始めて、新人開発したりとか企画のCD作ったりとかですね。

    ギターがコミュニケーション・ツール

    井本:ギターをやっていて、一番よかったなって思うことは何ですか?中村:アメリカに行っていたときは特に感じたんですけれど、英語に慣れていないときとか、ギ

    ターが変わりに自分のコミュニケーションのツールになったなと思っていて、音楽でいろいろな知り合いができたとか。特にアメリカで思っていたことなんですけど、すごいミュージシャンがたくさん周りにいて、いろんな人たちといっしょに演奏すると自分の力以上のものというか、その中で弾かせてもらうと自分が普段弾けなかった音が、結果的にみんなの和音というかハーモニーで音楽としてできているなというのが、ある種喜びというか驚きというか、自分の能力にプラス、周りの人たちが手助けしてくれるというか、皆で協力していろんなものができるんだな……というのをギターというものを通して実感できたかな……というのがあります。

    井本:英語がしゃべれなくても音楽の力でやっていけるってことですね。中村:まぁだけど最終的にはちょっと英語もできないと(笑)。井本:ギタリストとしてここまで続けてこられたの

    はどうしてですか?中村:やっぱり好きだったんだと思いますけれどね。

    ギター弾くのが。あんまりだから弾いていて苦痛っていうのは、そんなに無かったかなと思っていて。もしかするとそれが向いていたことなのかなってちょっと思たりするんですけど、つらい部分ももしかするとあったのかもしれないけれど、つらいというのをつらいと思わなかったってことなのかなって思って。

  • − 6 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    仕事で大切にしていること:100パーセントの力を常に出す!

    井本:今現在、中村さんはどんな仕事をされているんでしょうか?中村:ギタリストとして活動もしていますけれど、CM音楽プロデュースなんかもやったりとか

    ですね、それを会社としてやっていて、自分が経営者になってやっていますので、音楽にまつわることすべてをやっているという感じです。今考えるとそれで自分の初志貫徹じゃないですけれど、やりたいことを貫いてよかったかななんて思っていますけれど。

    井本:ギタリストとして仕事で大切にしていることは何ですか?中村:誠実に。自分の100パーセントの力を自分で常に出すように努力すると。その100パーセ

    ントっていうのは人によって違うかもしれませんけど、自分にとってベストを尽くすっていうのが誠実さだと思ってますので、そこを常に意識して仕事したいな……と思ってますけど。

    井本:コミュニケーションを取ることが苦手だという高校生もいると思うんですけど、何かアドバイスはありますか?

    中村:よく考えたら、相手がいれば話を聞くほうに回ってもいいのかなって。結局コミュニケーションって1人じゃ無理ですから、2人以上でやるものですから。目の前の相手と一緒に楽しい関係を作るっていうふうに思って、相手の話をちょっと聞いてみよう……っていうようなスタンスがあると、割と自分のことも話しやすいのかもしれないと思っているんですけど。

    井本:ギタリストとして将来やってみたいと思っている人は、どんな準備が必要なんでしょうか? 中村:プロとしてやっていくために必要な準備ってあると思うので。まずはたくさん練習する。

    そしてたくさん音源を聞く。プロの人たちの音源を聞くとかライブを見に行くとか、音楽にすごく触れることですよね。

    井本:自分がどんな仕事に向いているか、いろいろ悩んでいる高校生にアドバイスをお願いします。中村:自分が好きだ!ということを一生懸命やってみるっていうのはどうでしょうか。

    それが例えば違うことのほうが向いているという結果になったとしても、そのとき何かに対して努力したってことっていうのは無駄にならないと思うので、自分が今やりたいと思っていることをとりあえずやってみるというので、見つかって来るんじゃないかと思います。

    ギターを習いたくなりました!

  • − 7 − 高校講座・学習メモ

    � ギタリスト みんなで協力してハーモニーを作る

    ★あなたにとって、自分に足りないと思うことはどんなことだと思いますか?

    ★あなたにとって、今コミュニケーション・ツールと呼べるものはなんですか?

    ★あなたが、今好きだ! と思うことはなんですか?