10月 17日(土)開催 - 東京大学3 15 september 2015 第15号...

1 15 SEPTEMBER 2015 1527 10 17 調発行人/東京大学社会学研究室同窓会 発行所/〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学文学部社会学研究室内 クローネ会ホームページ http://www.l.u-tokyo.ac.jp/ sociology/krone/index.htm 2015915 15 東京大学 社会学研究室 同窓会 会報 27 10 17 懇親会は、法文1号館215教室です。会費3,000円 幹事会は、総会に先立ち、15:00より開催します。 1. 総会審議 2. 記念講演 毎日新聞社主筆 伊藤芳明氏(1974年卒) 「イスラムと日本」(仮) 東京大学本郷キャンパス 法文1号館214教室 2015年10月17日㊏ 15:30より 場所 日時 平成27年度 クロネ会総会 本年度の当番期は、卒業年次 末尾が「5」の期の方です。65 年、75年、85年、95年、2005 年、2015年の各期取りまとめ 担当幹事の方にはご協力をお 願いいたしますとともに、各期 の同窓会の呼びかけ・開催な どをお願いいたします。 本年の当番期は「5」 総会当日に第14回 東京大学ホームカミ ングデイが開 催され ます。 さまざまな催しが 予定されております。 クローネ会開始前の お時間まで、ふるって ご参加ください。 第14回東京大学ホームカミングデイ 10月17日(土)開催 詳細は、 http://www.alumni.u-tokyo.ac.jp/hcd/ でご覧くになれます。

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Page 1: 10月 17日(土)開催 - 東京大学3 15 september 2015 第15号 うございました。させてくださりまことにありがと勤めいただき、クローネ会を発展

1 15 SEPTEMBER 2015 第15号

 

平成27年度クローネ会の総会を

10月17日(土)に開催いたします。

本年も、東京大学ホームカミング

デーと歩調を合わせての同日開催

です。ホームカミングデーの様々

な催しと合わせて、懐かしいキャ

ンパスを訪れる機会としてくださ

い。

 

総会審議終了後に恒例の記念講

演を行ないます。今回の記念講演

は、毎日新聞社専務取締役・主

筆・編集編成担当の伊藤芳明氏に

「イスラムと日本(仮)」と題して、

お話しいただきます。

クローネ会

クローネ会

発行人/東京大学社会学研究室同窓会発行所/〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学文学部社会学研究室内クローネ会ホームページhttp://www.l.u-tokyo.ac.jp/sociology/krone/index.htm

2015年9月15日第15号

東京大学社会学研究室同窓会 会報

平成27年度クローネ会総会は

  

10月17日(土)開催

懇親会は、法文1号館215教室です。会費3,000円幹事会は、総会に先立ち、15:00より開催します。

 1. 総会審議 2. 記念講演 毎日新聞社主筆 伊藤芳明氏(1974年卒)        「イスラムと日本」(仮)

東京大学本郷キャンパス 法文1号館214教室

2015年10月17日㊏ 15:30より

場所

日時

平成27年度 クローネ会総会

本年度の当番期は、卒業年次末尾が「5」の期の方です。65年、75年、85年、95年、2005年、2015年の各期取りまとめ担当幹事の方にはご協力をお願いいたしますとともに、各期の同窓会の呼びかけ・開催などをお願いいたします。

本年の当番期は「5」 総会当日に第14回東京大学ホームカミングデイが開催されます。 さまざまな催しが予定されております。クローネ会開始前のお時間まで、ふるってご参加ください。

第14回東京大学ホームカミングデイ 10月17日(土)開催

詳細は、http://www.alumni.u-tokyo.ac.jp/hcd/でご覧くになれます。

 

伊藤氏は、一九七四年に社会学

科を卒業後、毎日新聞社大阪本社

社会部、東京本社外信部、カイロ

支局、ジュネーブ支局、ワシント

ン支局、外信部長を経て、現在は、

公益社団法人日本記者クラブ理事

長も務めておられます。

 

世界の現場を豊富に踏んでこら

れた氏に、国際情勢の要となる話

題を、変化していく情勢に合わせ

て提供していただくことは、大変

貴重な機会かと存じます。

 

記念講演の終了後に懇親会が予

定されております。

 

なお、総会に先立ち、幹事会が

開催されます。常任幹事のみなら

ず、当番期幹事、各期幹事の皆様

もご出席いただけますようお願い

いたします。

 

一人でも多くのクローネ会員の

皆様のご参加をお待ち申し上げて

おります。

Page 2: 10月 17日(土)開催 - 東京大学3 15 september 2015 第15号 うございました。させてくださりまことにありがと勤めいただき、クローネ会を発展

2第15号 15 SEPTEMBER 2015

会長交代をふくめて、

10年ぶりの大幅な役員改選

平成26年度

クローネ会総会・顧問挨拶

 平成26年度のクローネ会総会

の役員改選において、創立以来

会長を務め来られた中江利忠会

長が、引退して顧問に、新会長

に、山本進氏か就任されました。

 なお、副会長には、長尾立子、

藤田太寅の両氏にかわり、大橋

浩介、加納孝代の両氏が就任。

 新たに常任幹事として、桃井

恒和氏(69年卒)、大村公美子氏

(85年卒)が、会計幹事として、

大森三起子氏(86年卒)が、加

わりました。

 また、提案により、常任幹事

から、田中秀隆(81年卒)氏が

事務局長に選任されました。

□中江利忠顧問挨拶

 

私たちクローネ会が平成15年11

月22日の設立総会で発足しまし

て、もう11年になります。その初

代会長を務めさせていただき、

もっと早くバトンタッチをと考え

ながら延び延びになっていました

が、このたび16年後輩の山本進さ

んに次期会長を引き受けていただ

くことになりました。この間、副

会長の藤田さんや山本さんをはじ

め常任幹事など役員の皆さん、約

400人の会員のみなさんから全

面的なご支援、ご協力を頂いて何

とか任務を果たすことが出来まし

たことを、あらためて深く感謝申

し上げます。

 

社会学研究室のスタートから

ちょうど50年の昭和28年に卒業し

た私の同期生たちが、100周年

を期して同窓会を立ち上げようと

研究室に働きかけたのが始まりで

したが、先輩、同輩、後輩の皆様

全体の協力でめでたく12回目の総

会を迎え、今後一層の発展が見通

されております。これも、同窓会

の発展を力強くご支援いただいて

おります研究室の先生方のお蔭で

ありまして、「クローネ交流会」

の開催、「クローネ賞」の創設な

どで具体的に進んだ同窓と現役と

の実りある交流が、いま最も期待

されている「越境する知」として

の社会学の発展、貢献にも、大き

く役立っていることを、喜びたい

と思います。

 

クローネ会が山本新会長と新役

員体制のもと、今後ともさらに発

展し前進を遂げられますよう、心

から祈っております。ありがとう

ございました。

□山本会長挨拶

 

中江様には創立以来、会長をお

中江利忠 顧問

Page 3: 10月 17日(土)開催 - 東京大学3 15 september 2015 第15号 うございました。させてくださりまことにありがと勤めいただき、クローネ会を発展

3 15 SEPTEMBER 2015 第15号

勤めいただき、クローネ会を発展

させてくださりまことにありがと

うございました。

 

さて小学校、中学校、高等学校

といろいろな同窓会があります

が、私は一度も出席したことがな

く、会費を払ったことも一度も

ありません。そんな私がさきほ

ど中江前会長のお話に出ていた

二〇〇三年の少し前に、一〇〇周

年記念事業として卒業生として何

かやろうじゃないかという動きが

出た時に、中江会長と中江会長の

同期生で亡くなった嶋澄先生、実

は私の仲人なのですが、お二人か

ら強引に準備会に引き入れられま

した。以来同窓会というあまり好

きではない世界とのおつきあいが

始まって、あげくのはてにこうし

て会長になったということです。

 

中江会長は朝日新聞の経済記者

を長年されていた訳で経験豊富な

方だったのですが、私は最後はス

ポーツニッポンという少々変わっ

た新聞の社長をいたしまして、あ

まり知性的でも論理的でもなく、

むしろ感性を大切にする世界で生

きてきましたので、上手くいくか

どうか分かりません。しかし、た

またま今回副会長をしてくれる大

橋さん、そして加納さん、実をい

うと二人とも私より卒業年度は一

級上ですが、入学は一緒だったん

ですが(笑)、私は勉強に励んだ

もので卒業だけ1年遅れたのです

が、ともに二〇〇三年のスタート

の時から一緒にクローネ会をやっ

てきた仲間です。ヘビー級からフ

ライ級へかなり格が落ちる内閣に

なるかもしれないかもしれません

が、この三人を中心に、また若い

人たちも幹事に入ってくると思い

ます。もっとも、新常任幹事の桃

井恒和君は若くはありません、私

と同じ卒業年次ですが、加えて巨

人軍会長として巨人軍が不調で危

ないという状況をかかえています

が、早く優勝を決めてこちらにも

力を貸してほしいと思います。ほ

かに若い常任幹事も二人増えたこ

とですし、全員野球という言い方

がありますが、全員幹事会という

ことで進めて行きたいと思います。

 

このクローネ会設立の趣旨は、

もちろん同窓生の親睦をはかると

いうことにありますが、それに加

えて社会学研究室の発展を何らか

の形で応援するということだと思

います。この面では交流会、クロー

ネ賞などを含めて、研究室側も非

山本進 新会長

常に協力的な体制をとって頂いて

います。むしろ課題は、同窓会員

の親睦を広げるということにあり

そうで、さきほどの決算・予算を

聞いておりますと、繰越金が減っ

ておりまして、この二年間で

八〇万円減っておりますので、こ

のままでは一〇年ほどでなくなっ

てしまうのではないかという危険

性も感じます。

 

こういった点への対応を強固な

ものにするには、総会のたびに年

度幹事の方達などにも知恵を絞っ

て頂いて、みなさんのご支援ご協

力を得て進めていきたいと思いま

す。よろしくお願いいたします。

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4第15号 15 SEPTEMBER 2015

生きることと思索すること

   

 │ヴェブレンの大学論を手がかりに│

2014年度クローネ会総会 

記念講演

 

東京大学文学部名誉教授 

稲上 

 

皆様は、ヴェブレンという名前はお聞

きになったことがあるでしょう。しか

し、どういう学者であったかをご存知

の方はほとんどといらっしゃらない。し

かし、私にとって、ヴェブレンはとても魅

力的な学者なのです。どれくらい魅力

的かというと『ヴェブレンとその時代』

の原稿を書き終えた後、思わず、ポー

ル・ニューマン(1925­­

―2008年)を

主役にして、「ヴェブレン」という映画が

つくれなかったかな、と呟いたぐらいな

のです。

 

私は、日本社会の変化をインダスト

リー(産業資本主義)からファイナンス

(証券型金融資本主義)へ、労働から

経営へ、コーポレート・ガバナンス改革な

どの側面からとらえてまいりました。

その視点からするとヴェブレンはインダ

ストリアリストです。ヴェブレンの主著

である『営利企業の理論』(1904

年)の図式──「産業」対「企業」、「機

械過程」­

対「営利原則」が重要になる

わけですが、本日は、ヴェブレンの大学

論を中心にお話ししたいと思います。­

□ヴェブレンの大学生活史

 

ヴェブレンの大学生活史は、3つのフ

ロンティアを渡り歩いた人間として位

置付けられます。第1に、ノルウェーか

らの中西部フロンティア移民の子とし

て、第2に、大学革新の最先端を歩み、

第3に、独創的な社会理論のフロン

ティアを切り開ました。ヴェブレンは、

未完の人として理解するのが適切だ

と思っています。

 

一方、ヴェブレンが大学生活を送った

19世紀第4四半期以降のアメリカ高

等教育は、「カレッジからユニバーシ

ティーへ」と変化していく変革期であ

りました。ヴェブレン自身、カールトン

大学というプロテスタント会衆派の聖

職者養成機関から、アメリカ最初の研

究大学院のジョンホプキンス大学へと進

んでいます。アメリカの大学の系統発

生史と重複する個体発生史と申せま

しょう。さらに、イェール大学に進んで

博士号を取得しますが、博士論文

(「因果応報説の倫理的基礎」)は現

在、行方不明です。私も探しましたが

見つかりませんでした。処女論文(「カ

ントの判断力批判」)をみますとこれ

は、カントの判断力批判を丁寧にた

どったものというよりも、ヴェブレンの

方法序説といった方が良いもので、ジョ

ンホプキンス大学で邂逅したチャール

ズ・パースの影響を反映しています。ち

なみに、ヴェブレンは、パース・ゼミでジョ

ン・デューイに出会っています。さて、

コーネル大学の大学院に再入学した

ヴェブレンは、経済学者ローレンス・ラフ

リンとの出会い。スペンサーvs.フェビアン

論争をめぐって双方を批判した「社会

主義論」が好評を博します。シカゴ大

学に奉職して以来、スタンフォード大、

ミズーリ大、ニューヨーク新社会研究学

院と移っていったヴェブレンは、終生、教

授職に就くことはありませんでした。

学会にも所属しませんでした。

 

さて、この当時のアメリカの学問状

況に触れておきましょう。「遅れてき

た」アメリカの学問には、イギリスとド

イツという二つの先進国がありまし

た。とくにディシプリン形成期のドイ

ツ留学ブームには、目を見張るものが

あり、多くの気鋭の歴史学者、哲学

者、心理学者、経済学者、政治学者、社

会学者(スモール、パークなど)がドイツ

に留学しています。先進イギリスとド

イツの後塵を拝しながら、東部の常識

哲学とフロンティアの『過激な』自由主

義という舞台のうえに、ドイツ観念論

から社会的ダーウィン主義までが短時

日のうちに登場し、それとパラレルに、

経済社会問題の深刻化を背景にして

社会主義的あるいは社会改良主義的

な運動が台頭したのであり、そのなか

で社会研究が急速に専門分化しなが

ら大学のなかにそれぞれのディシプリ

ンにそって制度化されていった時代でし

た。

 

社会研究が専門分化していく時代

に活動したヴェブレンは経済学者か社

会学者か、という問いかけが良くなさ

れます。ヴェブレンみずから「唯一の重

要な著作」といったのは『製作者本能』

(1914年)です。いずれの大学でも

「文明における経済的要因」という講

義を担当しました。これは、『有閑階

級の理論』(1899年)で先鞭をつけ、

『製作者本能』で集大成された考えを

述べたものです。

□ヴェブレンの大学論

 

ヴェブレンの大学論としては、文献が

四つあります。それぞれの題と論旨を

簡単にご紹介しましょう。

A「近代文明における科学の地位」

(1906年)

 

ヴェブレンは「思考習慣」の3類型を

提示します。それは、①未開→「神話

(擬人観とアニミズム)」②野蛮→「プ

ラグマティズム(実利的便宜性と技

術)」③近代→「科学(非人格的・非目

的論的な無味乾燥さ)」ということで

す。そして、近代の思考習慣を特徴づ

ける科学に関しては、「科学者の探究

は、神話の作り手と同じく、実利的有

用性にたいして『無欲(idle

)』である」

とも、近代文明における科学の地位

は、「天国の生命の樹、神の館の栄光の

灯火」にもひとしいと述べています。

B「戦争と高等学術」(1918年)

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5 15 SEPTEMBER 2015 第15号

 

この中では、ヴェブレンは、科学にかん

する定言命法を提示しています。具

体的には、「科学は階級や利害集団を

超え、国境を超える。」、「科学は「機

械過程」を支える、社会的共通資本で

ある。」、「科学は、「製作者本能」と

「無垢の好奇心」が生み出すもの。」

「科学が衰退すれば、掠奪精神と営利

原則が跋扈する。」、「科学は、社会に

平和と高い生産性をもたらす。」とい

うものです。掠奪精神は愛国心を煽

り、国家をして戦争に駆り立て、営利

原則は浪費とサボタージュをもたら

し、庶民の生活水準を押し下がると

考えたヴェブレンは、世界中の研究者

が自由に活用できる知識と情報の

ネットワーク、国際的学術交流セン

ターづくりの必要性を訴えておりま

す。今日でいえば、ウィッキペディアや

オープン・リバティ・ライブリイに相当す

るものです。

C『アメリカの高等学術』(1918年)

 

この論文では、ヴェブレンは、「営利原

則」と「機械過程」、実利的な大学経

営と製作者本能・無垢な好奇心にも

とづく科学研究との確執を指摘し、

営利原則によるカレッジの管理運営手

法を、科学的探究を目的とするユニ

バーシティーに適用することの空しさ

と愚かさを嘆いています。そして、第一

次世界大戦後に再構築されるべき平

和な秩序の基礎をなす、「利益なき知

識探究」としての科学という基本的な

見方を提示しています。ヴェブレンの語

る当時の大学の実態は、理事会の中心

人物は、かつては聖職者であったが、い

まは企業家になったことを指摘しま

す。また、「学識の総帥(captain­of­

erudition

)」たる学長に問われている

のは、営利原則による経営手腕。一般的

に、学者としての能力は平均以下であ

ると述べています。学長または理事会

が、教員の任免・昇進・処遇を決定する

に関して、採用時の宗教的踏み絵、大

学教員の低い給与と体面維持のため

の高い経費、教員間の大きな給与格

差、不安定な雇用、儀礼を疎んじる不

作法な研究者の冷遇を指摘し、一握り

の優れた研究者の確保も必要である

ことを訴えています。また、研究内容

に関しては、現行秩序の肯定とその効

率化への貢献するものであるとし、多

彩な職業教育メニューを前にして「神

学校からビジネス・スクールへ」と変貌

した大学のプラグマティズムを批判し、

科学的知識の達成度は計量的な短期

的評価に馴染まないことを指摘しま

す。しかし、大学を支配しているのは、

標準化と数の論理、有形の事象への集

中的関心、官僚制的組織、他の大学・

学部との競争、社会的な名声と暖簾

の確保、学生数と寄付金の多寡などで

あることを指摘します。ヴェブレンの

大学改革案は、営利原則が幅を利か

すかぎり、真の大学の蘇生はないが、

研究教育の実質的権限をその直接的

な担い手である担当部局に委譲する

こと(学部自治)、そして、研究スタッフ

が自らに関係することがらを自ら管

理し、決定していくことを提案してい

ます。

D「近代ヨーロッパにおけるユダヤ人の

知的卓越」(1919年)

 

この中で、ヴェブレンは、近代科学の

世界で創造的な仕事をするための最

たる要件は、懐疑主義的な精神構造

をもつこと。「故郷に戻ることのない、

誰もいない知的世界を彷徨いつづけ

る」異邦人となってはじめて、懐疑主

義的精神を身につけることができる、

としています。弟子ウェズレー・ミッチェ

ルは、ヴェブレンを評して、「かれは懐疑

主義者であり、演技者的性癖の持ち

主だった。人生の裏面を強調し、事実

に即していないものであれば、いかなる

理論でも不遜な態度でそれを黙殺し

てかかった。そのため、ヒュームと同じよ

うに、ヴェブレンはかれの同時代人から

理解されず、丁重に迎え入れられるこ

ともなかった」と記しています。

 『ヴェブレンとその時代』(新曜社)を

書き上げた時に、もしヴェブレンが、シ

カゴかセントルイス(国際芸術科学会

議)で、あるいはパリ(講和会議)で

ウェーバーに会っていたら、どんな会話

をしただろうか、という強い思いに駆

られました。というのも、ヴェーバーは

ヴェブレンに言及しておりますが、ヴェ

ブレンはヴェーバーに言及していないか

らです。しかも、ヴェブレンは、ウェー

バーに二度会うチャンスがあったので

す。

 一九〇四年にセントルイス万博の一環

として、国際芸術科学会議が開催さ

れ、ドイツからは、ウェーバー、テンニー

ス、ゾンバルト、トレルチなどが参加して

います。また、『平和論』を著わした

ヴェブレンは、第一次世界大戦後のパリ

講和会議のアメリカ代表団の一員になっ

ていたかもしれないのです。妄想の類

になってしまうかもしれませんが、この

講和会議にはドイツからウェーバーが

講話代表団の一員として参加していま

す。また、イギリスからは若き大蔵官

僚ケインズが参加し、有名な『平和の

経済的帰結』を著わしております。も

し、アメリカからこの会議に最年長の

ヴェブレンが参加していたら、そしても

しかれらに語らう機会があったとした

ら、いかなる鼎談が成り立ち得たの

か、という強い想いにいまだに駆られて

おります。

 

ご清聴ありがとうございました。

講演する稲上毅 氏

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6第15号 15 SEPTEMBER 2015

クールジャパンの

   

最前線から

佐貫 僚つかさ

氏 株式会社 Crisp

代表取締役

クローネ交流会講演

 

初めまして。平成17年学部卒・平成

19年修士卒の佐貫僚です。

 

このところのクローネ交流会では、教

授陣による講演が続きましたが、たま

には、異色の卒業生に社会経験を語ら

せてみてはどうかというお話が挙がり

まして、この度お話しさせて頂く機会

を頂戴しました。

 

私は大学院の修士課程を修了後、外

資系コンサルティング会社で戦略コンサ

ルティング、外資系ネット通販会社の事

業立上を経て、起業いたしました。創業

4年、現在は、Web/アプリの企画・開

発、経営/ITのコンサル、法人・大学・N

PO等での講師活動に従事しておりま

す。いわゆる文系職種ですが、独学でプ

ログラミングを学び、自らアプリ開発も

行なっております。大学院から一般企業

に就職・起業したという点、文系職種で

ありながらプログラミングも行ない、理

系職種の世界にも通じている点で、独

特かと思います。 

 

また、「踊ってみた」(アニメや初音ミク

の曲に合わせて踊る昨今のダンスパ

フォーマンス)や「アニソンDJ(アニメや

初音ミクの曲によるDJパフォーマンス)

等、「秋葉系ライブエンタテイメント」を

世界に発信するWeb/アプリ「SOP」

(Super­Otaku­Perform

ers

)を運営

し、フランスのジャパンエキスポにも参加、

日本のオタク文化が海外でどのように

受け止められているかを肌で感じてお

ります。一見奇異に見られがちです

が、こうしたサブカルチャー×グローバル×

ITという領域は、理系的思考の強いI

Tベンチャーの世界で、社会学卒業生が

自分たち独自の視点を活かしやすい領

域だと日々感じています。キャリアに加

えて事業内容という点でも、私の立ち

位置は独特とされているようですが、

それが本講演の題目となっているゆえん

です。

◯ 

 

まず、会社の事業についてお話しして

いきたいと思います。弊社では、①Web

による事業再構築、②インキュベーショ

ン、③マーケティング新手法の研究開発

を事業の3本柱としています。

 

①は、戦略コンサルとITベンチャーで

の経験から、大企業がWebを取り入

れ、事業を再構築していく過程を支援

しております。日本でも戦略コンサルタ

ント人口は大分増えましたが、Webが

得意な人種というのはまだまだ少ない

ので、Webを活用したいという顧客ニー

ズとの需給差は依然としてあります。

 

②は、2011年前後から「起業ブー

ム」と呼ばれるほどに数多く増えてき

たベンチャー企業を対象に、彼らの事業

立上を支援しております。出版や不動

産など、非ITの産業から参入してく

る起業家も多く、非IT領域には強い

ものの、ITが苦手な起業家も実は少

なくなく、ITによる既存産業の変革

を加速させる支援をしております。

 

③は、近年、スマホ・SNS・動画等、We

bのマーケティング手法は複雑分化して

おり、例えば、一口に動画といっても、

YouTube

・ニコニコ動画のような分単位

の長尺動画、Vine・ミックスチャンネルの

ような秒単位の単尺動画、ツイキャス・

Periscope

のようなモバイル生放送等、

多岐に渡り、理解は容易ではありませ

ん。Web・広告のプロでも、新しいトレン

ドに付いていくのは年々難しくなってお

り、広告代理店や事業会社等から、先

端のWebをどう活用したらよいのか、

ご相談を受けることが多々あります。

 

①・②・③、いずれにも共通しますが、

近年はWebの複雑分化があまりにも

急速すぎるのではないかと感じており

ます。コンサル会社・投資ファンド・広告

代理店等から相談を頂きますが、これ

らプロの会社も、Webの変化の急速さ

には手を焼いている印象があります。

急速に変化していくWebと、既存のプ

ロ集団の間隙を埋めていく形で、弊社の

事業を形成してきたのがこの4年間で

した。Webが進化していく中で、プロ

フェッショナルサービスをどう再構築す

るかは、業界全体の課題だと言えるか

と思います。

◯ 

 

さて、掲題の「クールジャパンの最前

線」のお話に入りたいと思います。

 

クールジャパンと称する日本文化を

海外に発信していこうというトレンド

は、ここ3、4年盛んで、世界各国での

ジャパンイベントへの出展企業・公演アー

ティスト・イベント主催者等、様々な形

で、日本人・日本企業はクールジャパンを

推進しています。

 

私の方はというと、出演者側に立って、

「踊ってみた」や「アニソンDJ」のライブ

に関わっております。海外の日本好きの

2015年6月5日

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7 15 SEPTEMBER 2015 第15号

方は、インターネット動画サイトを通じ

て、日本のパフォーマーたちの熱心なファ

ンになっているので、初めてみる生のライ

ブを前にして、「ようやくこのときが来

たか」と喜び、大変な盛り上がりを見

せます。

 

クールジャパン系の海外イベントに出

展するというのは、当然、旅費・交通費・

宿泊費・ブース設置費など、それなりの

予算が掛かります。しかし、対面で見

て頂く以上、掛けた予算以上の効果を

出すというのは決して容易ではありま

せんので、そこに課題感を持っている日

本企業は少なくありません。ただ、問

題として、もう1つあると私は思ってお

ります。それが、私が「流通構造」と呼

んでいる問題です。

 

海外の日本好きが喜ぶような漫画・

アニメ・フィギュアといった製品・コンテンツ

は、既に、日本の作家・出版社から始ま

り、玩具メーカー、1次代理店、2次代

理店、販売店、ファン、と国内も海外も

流通構造がほぼ出来上がっており、新

規参入が難しくなっております。ここに

切り込もうとし、苦労した企業は、これ

までのクールジャパンの取り組みの中で、

少なくなかったようです。確かに、漫画・

アニメ・フィギュアは、外国人への引き合い

がよいのですが、これを新規参入でビジ

ネスにしようとすると、各国には現地

の書店・玩具店がありますので、入り込

むには相応の競争を伴う、ということに

なります。

­­

一方、私は「パフォーマンス領域」と呼ん

でいるのですが、「踊ってみた」や「歌って

みた」・「コスプレ」などは、上記の「コンテ

ンツ領域」の後に生まれた比較的新しい

カルチャーなので、事業基盤が未確立で

す。YouT

ube

を筆頭に、パフォーマンス

が無料で閲覧できる動画サイトはある

ものの、ライブ体験できる実環境やグッ

ズを購入できる通販サイトなどは十分

でなく、対海外の流通構造が整備され

ていないのが現状です。ですので、海外で

ライブできる環境を整備したり(ジャパ

ンエキスポへの参加もその一貫です)、有

料配信も可能にする自社の動画サイ

トを構築したりすることで、「パフォーマ

ンス領域」のグローバルな事業基盤を

作っていくことが、私のミッションになり

ます。

­­

「流通構造」というのはあまり馴染み

にくい呼び方であり、もっと良い言い方

はないかをこの先考えていきたいとは思

うのですが、文化そのもののメジャーさ・

マイナーさの規模を問わず、「海外の

人々が日本の文化に日常的に触れ、楽

しんでいく。その結果、対価を得る」と

いう文化伝達・流通の構造は、作っていか

ねばなりません。厳密性はさておき、分

かりやすい例えを挙げるならば、相撲

はどんなに外国人力士が台頭しても、

その流通は両国国技館を筆頭とする

国内場所が流通構造の中心であり、相

撲は日本を中心に展開される文化で

す。一方、柔道は世界中で大会が開催さ

れ、当然日本の大会もありますが、必

ずしも日本の大会が中心地であるとは

限りませんので、流通構造に中心はあ

りません。それゆえに、海外で「一人歩

き」をし、独自の進化を遂げてもおか

しくはないことになります。同様に、「コ

スプレ」というサブカルチャーは、海外で

イベントが盛り上がり、外国人の間での

スターが生まれるなど、日本発ではある

ものの、海外で独自の進化を遂げている

側面もなくはありません。必ずしも、

日本で生まれた文化は日本が常に中心

地でなければならないとは限らないの

ですが、文化戦略として、その是非はど

うか、という問いは常時保持しておく

必要があります。

 いま、世の中の流れとして、「起業ブー

ム」であり、起業する人間が増えていま

す。起業しない側でも、大企業が「アク

セラレータ・プログラム」と称して、社内

外の起業を推進したり、ベンチャーと協

業したりする流れが強まっています。そ

の中で、重視されるのはテクノロジーが

第一であり、経営技術がその次に来る

のでしょう。その中で、社会学を学ぶと

いうのはどういうことかを、修士までい

た身として考えるのですが、「文化」・

「社会」という視点で考えられることに

あると私は思うのです。いまは全体傾

向として「技術」の時代であり、その中で

「文化」・「社会」の側として、自分たち

にしかできないビジネス・社会活動をし

ていくことが、社会学関係者ならでは

価値でありミッションなのではないかと

思います。私自身というのは道半ば、途

上にある人間ですが、私のこの社会経

験の話が、元・社会学徒ならではの価値・

役割を追求していくクローネ会会員の

皆様の何かしらの参考・インスピレーショ

ンになれば、何よりに存じます。

◯ 

 

本講演では、クローネ会会員の皆様

とインタラクティブに、質疑応答を交え

ながら進めさせて頂きました。講演を

きっかけに交流を深めさせて頂いている

方もおります。本講演に参加された方

も、欠席された方も、ぜひ継続的に交

流を深めていければと思いますので、ご

興味あれば、佐貫宛(contact@

crisp.bz

もしくはhttp://crisp.bz/

)にご連絡

下さいますと幸いです。この度は、あり

がとうございました。今後ともよろし

くお願いいたします。

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8第15号 15 SEPTEMBER 2015

 外国での経験

 

私の人生の唯一の特徴あるエピソード

として、父の仕事の関係で、10代の前半

にヨーロッパのオーストリアで過ごしてい

たというものがあります。とても綺麗

な国で、今でも時折帰りたくなること

があります。ただ、「日本人」というだ

けでちょっとした嫌がらせも受けること

も多く、良い事ばかりではありませんで

した。しかし、それも今思えば、貴重な

経験だったように思います。なぜなら、

自分に対して無理解で、自分とは価値

観が全く異なる人々が存在することを

若いうちに直接的に知ることが出来た

からです。そのおかげで、自分が慣れ親

しんでいた「社会」とは異なる「社会」へ

の興味を持ち始めることになりまし

た。

 東京大学/大学院への進学

 

駒場での二年間は「異質な他者をど

のようにしたら理解することが出来る

のか」ということを漠然と考えながら、

専門を文化人類学にするのか、社会学

にするのかで悩んでいました。今思えば

大きな人生の岐路だったと思います。悩

んでいた私は、あろうことか、アポイント

もとらずに社会学研究室に直接行っ

て、当時助手だった矢野善郎先生に進

路相談をするという失礼な行動に出て

しまったのを今でも覚えています。突然

やってきた素性も良くわからない学部

生を受け入れ、話を優しく聞きつつ、社

会学という学問に導いて下さった矢野

先生には心から感謝しています。社会

学研究室は色々なタイプの人間を受け

入れる度量の深さのようなものがある

と思うのですが、その恩恵を受けさせ

て頂きました。

 

ただ、不義理なことに、真面目な学生

生活をその後送ったとは到底言えず、

色々なことに興味を持ってはフラフラし

ていました。部活動(フィールドホッケー

部)をやっていたこともあり、授業やゼ

ミ、調査実習にあまり参加できず、同

級生に何度も助けてもらったのを覚え

ています。それでも大学院進学を志望

したのは、決まったテーマ、問いや研究方

法を先生から伝授されるのではなく、

個々の学生が自分の問題関心のもと、

好きな事を自分なりの方法で研究す

るという社会学研究室の「レールの無

さ」に魅力を感じたからでした。

 

もちろんそれはニヒリズムに陥ってい

たわけではなく、多くの先生方の指導

を受けることで自分の視野は広がってい

きました。特に修士課程から博士論文

を書くまでの長い間、佐藤健二先生には

「社会学的な料理の仕方」を学ばせて

頂きました。事細かに作り方を書いて

あるレシピを伝授して頂いたわけでは

なく、素材を扱う際のアイディアの出し

方を見せて頂いたように思います(ほと

んどその技術を盗めていないのです

が)。また、今思い返してみても、先生に

厳しく叱責されるよう

なことは一度もなく、いつ

も優しく見守って頂き

ました。気持ちが弱い私

の性格を見抜いていらっ

しゃったのだろうと思い

ます。

 今後の研究の展望

 

素晴らしい教育環境

にいたにも関わらず博士

論文を執筆するのに時間がかかってし

まいました。博士論文では、都市空間と

いう多様な利害が錯綜する場における

対立や共生を都市社会学(地域社会

学)がこれまでどのような問題設定や

方法で論じてきたのかという方法史的

検討を行いました。また同時に、現実の

都市紛争を対象に分析を行うことで、

より望ましい社会学的な問題設定や方

法論を検討しました。「共生」という社

会学の原問題をめぐって、理論、方法、

経験的対象の関係を柔軟に思考するこ

とで、都市社会学(地域社会学)の認識

や方法を切り拓くことが目的でした

が、今振り返ると、10代からの問題意

識を社会学研究室の伝統の中で論究し

たものだったように思います。今後はこ

れまでの蓄積を活かしながら、都市や

地域において、どのような問題が生じ、

どのような対立が起きているのか、そこ

にはどのような打開策があるのか、そし

てこれらの点に関して社会学的にどの

ように迫ることができるのかということ

を検討していきたいと考えています。

 助教としての抱負

 

また今後は助教として、社会学研究

室の発展の為に尽力していく所存です。

「社会」について様々な視点で勉強でき

る場として社会学研究室が存在するこ

とは言うまでもありませんが、学問的

な側面だけではなく、生涯の友人達と

出会い、交流し、まさに「社会」を実感で

きる場としても研究室が機能するよう

に、微力ながら貢献していきたいと考え

ています。就職活動や研究は大変なこ

とが多く、大学生活・大学院生活は必

ずしも楽しいことばかりではないと思い

ますが、多くの学生が辛い時に支え合っ

たりしながら、卒業した後も関係性を

維持し、研究室に愛着を持ち続けても

らえるように、出来る事があれば何で

もしていきたいと考えています(青臭い

ですが)。

社会学研究室 新任担当教官

三浦 倫平 助教

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9 15 SEPTEMBER 2015 第15号

◇事業報告および事業計画について

 

平成25・26年度は、事業計画通り

幹事会・総会・クローネ交流会を実

施しました。クローネ交流会につい

ては、年二回実施を目標に掲げた時

もありましたが、このところの状況

からは、年一回の実施が適切かと感

じております。

 

クローネ会10周年記念事業に制

定したクローネ賞については、結果

発表を卒業式で行ったり、受賞論文

に関しては、金文字に製本を行うな

ど在校生への周知徹底の協力を研

究室より行っていただいています。

 

平成26・27年度について。

総会開催に関しては、記念、ホーム

カミングデイに合わせるか、独自

の日程で実施するかの模索をつづ

けておりました。しかし、いろいろ

な行事が実施されることを勘案し

てホームカミングデイに合わせて

実施することを基本といたします。

◇会計報告および予算について

 

平成22・23年度会計に、はじめて

単年度会計で赤字を記録して以来、

本年度も赤字の決算となりました。

繰越金には、終身会費も含まれてお

りますので、ある程度の赤字は、会

費の還元という位置づけもできま

しょう。しかし、会計担当としては、

繰越金の減少はできるだけ避けたい

ので、総会・クローネ会の積極的な

参加や、未納の知り合いがいたら納

入を促していただくなどのご協力を

いただきたいと考えております。

クローネ会(東京大学社会学研究室同窓会)

平成25・26年度

事業報告および会計報告

平成年26・27度

事業計画および予算

経験的対象の関係を柔軟に思考するこ

とで、都市社会学(地域社会学)の認識

や方法を切り拓くことが目的でした

が、今振り返ると、10代からの問題意

識を社会学研究室の伝統の中で論究し

たものだったように思います。今後はこ

れまでの蓄積を活かしながら、都市や

地域において、どのような問題が生じ、

どのような対立が起きているのか、そこ

にはどのような打開策があるのか、そし

てこれらの点に関して社会学的にどの

ように迫ることができるのかということ

を検討していきたいと考えています。

 助教としての抱負

 

また今後は助教として、社会学研究

室の発展の為に尽力していく所存です。

「社会」について様々な視点で勉強でき

る場として社会学研究室が存在するこ

とは言うまでもありませんが、学問的

な側面だけではなく、生涯の友人達と

出会い、交流し、まさに「社会」を実感で

きる場としても研究室が機能するよう

に、微力ながら貢献していきたいと考え

ています。就職活動や研究は大変なこ

とが多く、大学生活・大学院生活は必

ずしも楽しいことばかりではないと思い

ますが、多くの学生が辛い時に支え合っ

たりしながら、卒業した後も関係性を

維持し、研究室に愛着を持ち続けても

らえるように、出来る事があれば何で

もしていきたいと考えています(青臭い

ですが)。

予算収入

平成26年9月1日~平成27年8月31日

平成26-27年度会費(3,000円×150名) 450,000懇親会会費(4,000円×30名) 90,000平成25-26年度からの繰越 8,637,228 計 9,177,228

支出会報(第14号:印刷・通信・人件費) 500,000幹事会(会議・通信費) 50,000総会(印刷・通信・会議・人件費) 250,000運営事務費 120,000クローネ交流会 100,000クローネ賞 100,000予備費 50,000平成27-28年度への繰越 8,007,228 計 9,177,228

会計報告収入

平成25年9月1日~平成26年8月31日

平成25-26年度会費(3,000円×155名) 465,000 その他年会費 11,000終身会費(30,000円×8名) 240,000懇親会費(40,00円×17名) 68,000銀行利息 73平成24-25年度からの繰越 8,790,758 計 9,574,831

支出会報(第13号:印刷・通信・人件費) 513,643幹事会(会議・通信費) 17,554総会・懇親会 (印刷・通信・人件費・懇親会費補助) 151,420運営事務費(会費入金DB管理等) 51,590クローネ交流会補助 26,364クローネ賞 80,053その他(運営事務用PC) 96,979平成26-27年度への繰越 8,637,228 計 9,574,831

残高内訳ゆうちょ 8,425,450みずほ 113,734研究室 98,044 計 8,637,228

(平成26年8月31日現在)

(単位:円)

(単位:円)

 本年度のクローネ会費の納入をお願いいたします。別紙振替用紙で、クローネ会指定の郵便局口座に振り込んでください。

 クローネ会の維持発展のために、会費納入へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

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研究室

だより

研究室

だより

10第15号 15 SEPTEMBER 2015

●研究室体制

 

今年度は、教授四名(松本三和

夫、武川正吾、佐藤健二、白波瀬

佐和子)、準教授五名(小林真理、

本田洋、赤川学、出口剛司、祐成

保志)、助教一名(三浦倫平)の

体制です。学外からは山田一成先

生(東洋大学)、奥村隆先生(立

教大学)、太郎丸博先生(京都大

学)、森千香子先生(一橋大学)、

林雄亮先生(武蔵大学)、学内か

ら石田浩先生、有田伸先生(社研)、

三谷武司先生(情報学環)、藤原

翔先生(社研)をお招きし、学生

及び院生の教育にご尽力いただい

ております。現在、百一六名の学

部学生、四五名の大学院生が本研

究室で学んでいます。

●卒業論文題目

 

昨年度の卒業論文は「ネット炎

上における匿名集団に関する一考

察」「現代日本における共食の必

要性について」「香川県高松市丸

亀町商店街からみる地方商店街の

再興」「原発広域避難と被災自治

体の復興-

富岡町を事例に」「公

衆はいかにして科学技術を意味づ

けるか」「建設産業における技能

承継問題」「現代日本における結

婚の変容-配偶者選択の個人化に

着目して│」「教育からみる「外

国人親をもつ子ども」の現状と課

題-国際学力調査ミクロデータの

比較分析を通してみる日本│」「日

本における同性間パートナーシッ

プ承認の可能性-結婚の歴史的展

開とパートナーシップを問い直す

まなざしより」「転勤に着目した

女性の継続就業に関する実証研

究」「嫌われ者のオスプレイ│M

V―22Bオスプレイ配備反対運動

に関する考察│」「明治・大正期

における学生寮の研究│旧制一高

生の友情論と社会道徳論│」「日

本の生命保険業界の海外展開への

展望とその社会的意義」「「学び」

から開く芸術の公共性│アマチュ

ア合唱団における〈ミュージッキ

ング〉に注目して│「大学生の「お

ごり」の分析│タテ社会における

交換│」「メディア時代の都市に

おける人々と文化の多層性│「『オ

タクの聖地』秋葉原」の事例から

│」「福井の地域ブランディング

は何故成功しないのか」「大学生

の日本企業に対するイメージ│ア

ジア学生調査の二次分析を通して

│」「戦後日本のファッションデ

ザイナーという職業の形成過程」

「若年期の離転職からみる職業選

択│早期離転職の機能│」「ソー

シャル・キャピタル論におけるミ

クロ-

マクロ・リンクの検討」「サー

カスの文化社会学」「日本コカ・

コーラ株式会社の広告におけるメ

ディアの影響と言葉の変化」「埼

玉県南地域コミュニティの空間分

析研究│パーソントップ調査を用

いて│」といったように多種多様

なテーマで書かれています。

●卒業証書授与式及び卒業生進路

 

三月二十五日、クローネ会より

山本進氏を来賓としてお迎えし、

卒業証書授与式を実施し、六二名

の卒業生を送り出しました。卒業

生の主な進路は以下の通りです。

サントリー、住友化学、アマゾン

ジャパン、三菱商事、伊藤忠商事、

三井物産、ゆうちょ銀行、三井住

友信託銀行、日本生命保険、日本

テレビ、共同通信社、博報堂、電

通、JTB、リクルートジョブズ、

東京都庁、山梨県庁、石川県庁、

国立歴史民族博物館。大学院につ

いては、人文社会系研究科(社会

学)の他、学際情報学府社会情報

学、公共政策大学院、一橋大学商

学部などに進学しています。

●研究室関連新刊案内

 

佐藤健二、『論文の書きかた』

弘文堂

 

佐藤健二、『柳田国男の歴史社

会学│続・読書空間の近代』せり

か書房

 

祐成保志訳、ジム・ケメニー著

『ハウジングと福祉国家 

居住空

間の社会的構築』、新曜社