1 平成30年住宅・土地統計調査への期待 - stat③土地の有効利用状況...
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平成30年住宅・土地統計調査への期待1今年度実施予定の主要統計調査
■ 高い日本の空き家率 平成25年住宅・土地統計調査の結果は、国内の
みならず、海外からも大きな注目を集めました。日
本の空き家率の高さがあらわになったからです。
空き家率の国際比較は、統計上の空き家の定義
の違いにより厳密には困難ですが、住宅数と世帯
数の乖離から算出した空き家率をみると、日本の
13.5%(平成25年)に対し、イギリスやドイツでは
数%、アメリカは10%程度となっています(公益財
団法人不動産流通近代化センター(当時)調べ)。
日本の空き家率は上昇し続けてきましたが、欧米
先進国の空き家率は、景気の良し悪しなどによっ
て循環的に上下に変動しているに過ぎません。
■ 日本の住宅市場の特徴 こうした日本と欧米における空き家事情
の違いの背景には、次のような点がありま
す。まず、欧米のまちづくりでは総じて、市
街地とそれ以外の線引きが厳格で、どこで
も住宅を建てられるわけではありません。
建てられる区域の中で、長持ちする住宅を
建てて長く使い継いでおり、購入するのは
普通、中古住宅です。欧米の住宅市場で
は、全住宅取引のうち中古が70~90%を
占めるのに対し、日本では14.7%(平成
25年)に過ぎません。
また、日本の住宅寿命は短く、住宅が
取り壊された時点で何年経過していたか
をみると、日本の32年(平成25年)に対
し、アメリカ、イギリスは60~80年です。※中古比率、住宅寿命は、国土交通省が住宅・土地統計 調査から算出した数値です。
■ 空き家を増やさないために 日本では、戦後、高度成長期の住宅不足に対応する
ため、「まち」(市街地)を広げ、新築を大量に造ってき
ましたが、一転して人口、世帯が減少に向かうようにな
ると、条件の悪い地域から空き家になる住宅が増えて
います。空き家を増やさないためには、広がりすぎた
「まち」を縮小するとともに、新築を減らし中古市場を
拡充していく必要があります。
このように、住宅市場の現況を捉える基礎資料とな
る住宅・土地統計調査が今年度実施されます。今回は
空き家の状態を把握するため、空き家所有者への新た
な調査項目が加えられます。結果が注目されます。
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1今年度実施予定の主要統計調査
富士通総研 経済研究所 主席研究員 米山 秀隆
■ 高い日本の空き家率 平成25年住宅・土地統計調査の結果は、国内の
みならず、海外からも大きな注目を集めました。日
本の空き家率の高さがあらわになったからです。
空き家率の国際比較は、統計上の空き家の定義
の違いにより厳密には困難ですが、住宅数と世帯
数の乖離から算出した空き家率をみると、日本の
13.5%(平成25年)に対し、イギリスやドイツでは
数%、アメリカは10%程度となっています(公益財
団法人不動産流通近代化センター(当時)調べ)。
日本の空き家率は上昇し続けてきましたが、欧米
先進国の空き家率は、景気の良し悪しなどによっ
て循環的に上下に変動しているに過ぎません。
■ 日本の住宅市場の特徴 こうした日本と欧米における空き家事情
の違いの背景には、次のような点がありま
す。まず、欧米のまちづくりでは総じて、市
街地とそれ以外の線引きが厳格で、どこで
も住宅を建てられるわけではありません。
建てられる区域の中で、長持ちする住宅を
建てて長く使い継いでおり、購入するのは
普通、中古住宅です。欧米の住宅市場で
は、全住宅取引のうち中古が70~90%を
占めるのに対し、日本では14.7%(平成
25年)に過ぎません。
また、日本の住宅寿命は短く、住宅が
取り壊された時点で何年経過していたか
をみると、日本の32年(平成25年)に対
し、アメリカ、イギリスは60~80年です。※中古比率、住宅寿命は、国土交通省が住宅・土地統計 調査から算出した数値です。
■ 空き家を増やさないために 日本では、戦後、高度成長期の住宅不足に対応する
ため、「まち」(市街地)を広げ、新築を大量に造ってき
ましたが、一転して人口、世帯が減少に向かうようにな
ると、条件の悪い地域から空き家になる住宅が増えて
います。空き家を増やさないためには、広がりすぎた
「まち」を縮小するとともに、新築を減らし中古市場を
拡充していく必要があります。
このように、住宅市場の現況を捉える基礎資料とな
る住宅・土地統計調査が今年度実施されます。今回は
空き家の状態を把握するため、空き家所有者への新た
な調査項目が加えられます。結果が注目されます。
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平成30年住宅・土地統計調査の概要1今年度実施予定の主要統計調査
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調査の目的住宅・土地統計調査は、住宅、土地の保有状況及び世帯の居住状況等の実態を調査し、その現状と推移を全国及び地域別に明らかにする調査です。この調査は、国が実施する統計調査のうち、統計法により特に重要なものとされる「基幹統計調査」で、昭和23年以来5年ごとに実施しており、平成30年調査は15回目に当たります。
今回調査の特徴近年において多様化している国民の居住状況や少子・高齢化等の社会・経済状況の変化、住環境対策としての空き家対策の重要性の高まりを踏まえ、住宅のストックのみならず、次の4点を明らかにすることをねらいとしています。① 少子・高齢社会を支える居住環境② 耐震性・防火性といった住宅性能水準の達成度や省エネルギー性能住宅③ 土地の有効利用状況④ 空き家を含めた住生活の実態
調査の期日平成30年10月1日現在で実施します。
調査の対象無作為に選定した全国約370万住戸・世帯が対象です。
調査事項世帯と住居・敷地について調べる「調査票甲」と、現住居以外に所有する住宅・土地についても調べる「調査票乙」の2種類の調査票により、次の事項を調査します。〈調査票甲・乙共通の調査事項〉(1)住宅等に関する事項…居住室数及び広さ、所有関係に関する事項、床面積 など(2)世帯に関する事項……世帯構成、年間収入、通勤時間、子の住んでいる場所 など〈調査票乙のみの調査事項〉(3)現住居以外の住宅及び土地に関する事項…所有関係に関する事項、利用に関する事項 などこのほかに、調査員が建物の外観等から調査し記入する建物調査票があり、居住世帯のない住宅や住宅の建て方、構造、腐朽・破損の有無等について把握します。
調査方法(1)調査の流れ
(2)調査の方法調査は、調査員が調査対象世帯に対して、「インターネット回答用の調査書類」を配布し、一定期間経過後、紙の調査票を配布することにより行います(二段階配布方式)。なお、調査票の提出は、次のいずれかの方法を世帯が選択することができます。ア インターネット回答イ 調査員にそのまま提出ウ 調査票を封筒に入れて封をして調査員に提出エ 郵送により提出
結果の利用調査の結果は、国や地方公共団体における「住生活基本計画」の成果指標の設定、耐震や防災を中心とした都市計画の策定、空き家対策条例の制定などに幅広く利用されます。
1
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総務省統計局 都道府県 市区町村 指導員 調査員 調査世帯
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平成25年住宅・土地統計調査の結果から
総住宅数は6063万戸で、昭和38年以降一貫して増加●総住宅数・総世帯数及び1住宅当たり延べ面積の推移(昭和38年~平成25年) 平成25年10月1日現在の総住宅数は6063万戸、総世帯数は5245万世帯となっています。平成10年からの15年間では、総住宅数は1000万戸以上、総世帯数は800万世帯以上増加しています。 昭和38年以前には総世帯数が総住宅数を上回っていましたが、43年に逆転し、その後も総住宅数と総世帯数の差は拡大しています。 また、1住宅当たり延べ面積は、平成5年度まで増加していましたが、近年はほぼ横ばいとなっています。
持ち家住宅率が最も高いのは富山県●都道府県別持ち家住宅率(平成25年) 住宅の所有の関係別割合を都道府県別にみると、「持ち家」は富山県が79.4%と最も高く、次いで秋田県(78.1%),山形県(76.7%)、福井県(76.5%)、新潟県(75.5%)などとなっており、東北の日本海側や北陸で高くなっています。一方、東京都が45.8%と最も低く、次いで沖縄県(48.0%)、福岡県(53.8%)、大阪府(54.2%)、北海道(57.7%)などとなっており、大都市のある地域を中心に低くなっています。
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000(㎡)(万戸、万世帯)
100.00
0.00
60.00
70.00
80.00
90.00
43※※ 沖縄県を含まない数値
昭和 38年※ 48 53 58 63
平成5 10 15 20 25
総住宅数(←左目盛) 1住宅当たり延べ面積(右目盛→)総世帯数(←左目盛)
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ここで逆転
1今年度実施予定の主要統計調査
94.42
6063
5245
資料:住宅・土地統計調査結果
資料:住宅・土地統計調査結果
75.0% ~ (5)70.0% ~ 75.0 %(16)65.0% ~ 70.0% (13) ~ 65.0% (13)
( )は分布数
以上 ~ 未満
持ち家率1位
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平成25年住宅・土地統計調査の結果から
空き家について●空き家数及び空き家率の推移―全国(昭和38年~平成25年) 空き家※1の数は、調査の度に増加し、平成5年に448万戸だったところ、平成25年では820万戸と、この20年間で1.8倍になっています。 また、空き家率※2でみると、平成10年に1割を超え11.5%となり、その後も一貫して上昇を続けています。
1今年度実施予定の主要統計調査
空き家数(←左目盛)空き家率(右目盛→)
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0(%)(万戸)
※1 一戸建ての住宅や、アパートのように完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができる住宅において、 ふだん人が居住していない住宅。なお、家庭生活を営むことができないような「廃屋」は、調査の対象外※2 空き家率(%)=空き家数/住宅総数×100 ※3 沖縄県を含まない数値
820
448
昭和 38年※3 43※3 48 53 58 63
平成5 10 15 20 25
06
1.8倍
11.5%
資料:住宅・土地統計調査結果
甲信、四国地方で高い空き家率●都道府県別空き家率(平成25年)
資料:住宅・土地統計調査結果
17.0% ~ (8)15.0% ~16.9 %(10)13.0% ~14.9 %(15) ~12.9% (14)
( )は分布数
以上 ~ 未満
空き家率を都道府県別にみると、山梨県が22.0%、と最も高く、全都道府県で唯一20%を上回っています。次いで長野県(19.8%)、和歌山県(18.1%)などとなっています。 一方、宮城県が9.4%と最も低く、次いで沖縄県(10.4%)、山形県(10.7%)などとなっており、宮城県を除く全ての都道府県で空き家率は10%を上回っています。 空き家のうち、別荘などの二次的住宅を除いた空き家率では、山梨県が17.2%と最も高く、次いで愛媛県(16.9%)、高知県(16.8%)などとなっています。
22.0%