オーストリア - vacation in austria: travel information of … オーストリア...

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オーストリア ポケットガイド www.austria.info ヨーロッパの中心に位置し、歴史上に一大帝国を築き上げたオーストリアは、 現代においても豊かで多彩な文化が、大都市や小さな地方都市にも、 そしてアルプスの村々にも息づいています。人々のライフスタイルや文化探訪、 美味しい郷土料理、雄大な山々や澄みきった湖での体験を通して、 オーストリアで至福のひと時をお過ごしください。

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Page 1: オーストリア - Vacation in Austria: Travel Information of … オーストリア ポケットガイド/ 「音楽を愛する団体」であるウィーン楽友協会 の主任案内係、ヴァルター・デイブラー氏は周

オーストリアポケットガイド

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ヨーロッパの中心に位置し、歴史上に一大帝国を築き上げたオーストリアは、現代においても豊かで多彩な文化が、大都市や小さな地方都市にも、

そしてアルプスの村々にも息づいています。人々のライフスタイルや文化探訪、美味しい郷土料理、雄大な山々や澄みきった湖での体験を通して、

オーストリアで至福のひと時をお過ごしください。

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私たちの時代は、技術開発と社会の変化に駆り立てられています。成果を出すためのさらなる重圧、厳しい時間の制約や他の様々なストレスは、自分の存在を無視されたような無力感さえもたらすこともあります。オーストリアの多様な自然と文化が上手に共存している地域では、自然な時の流れに身をまかせ、元 の々自分自身のテンポを取り戻すことができます。オーストリアの滞在では、本当の自分との出会いのために時間を取ってください。

ペトラ・シュトルバオーストリア政府観光局本局長

日本の皆様へ

発行:オーストリア政府観光局 Austrian National Tourist Office編集&デザイン:株式会社東美 印刷:オカムラ印刷株式会社 発行日:2017年3月 記載内容は変更されることがあります。

奥 付

目 次

P. 41P. 02

オーストリアについてオーストリアについての読み物と歴史、芸術やグルメ、地理などをご紹介

グラーツグラーツの見どころグラーツ市街地図

P. 28

ウィーンウィーンの見どころウィーン市街地図ウィーンの郊外へ

P. 44

インスブルック/チロルインスブルックの見どころチロルの美しい渓谷

P. 36

ザルツブルクザルツブルクの見どころザルツブルク市街地図ザルツブルクの郊外へ

旅に役立つ基本情報行事・祝祭日、その他基本情報、ウェブで得られるオーストリア情報、ドイツ語会話集

P. 46

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「音楽を愛する団体」であるウィーン楽友協会の主任案内係、ヴァルター・デイブラー氏は周囲の混乱にも決して動じない、いつも冷静沈着な人物です。土砂降りの雨が降り注ぐウィーンのダウンタウン。もう間もなく、濡れ傘を持って、しずく滴るコートを着た二、三千人の人々が楽友協会のロビーに押し掛けて来ます。スタッフにとっては、それだけでも大事ですが、今日は他にも多数の問題が起こりました  車椅子の常連客が、車椅子ではアクセスできない席のチケットを持って現れ、コストに敏感な二人のコンサートファンが、コートをクロークに預ける料金1.70ユーロの支払いを拒み、ホールのクローク係と口論を始め、回数券保有の会員カップルが家に忘れて来たためにチケットを持たずに、楽友協会の大ホールの入口に立っています。ヴァルター・デイブラー氏は、これくらいの事ではまったく動じません。この53歳の男は、25年間の楽友協会勤務の間に、あらゆる状況を経験してきました。デイブラー氏は君主のような冷静さで、迅速かつ滑らかに、すべてを正常な状態に戻していきます。車椅子のリストのファンには、もっとよく見える別の席を用意し、回数券保有の会員2人には、2枚の代替チケットを新たに発行し、さらにデイブラー氏はマハトマ・ガンジーも称賛するほどの忍耐力で、クローク係に文句を言う2人の客をなだめました。

楽友協会の有名な黄金に輝く大ホールの通路を、客を案内しながら、「ここでの仕事は、私にとって夢の仕事であることは確かです」、とヴァルター・デイブラー氏は言います。「ここで私は、普通の人では絶対にお目に掛かれない方々に、お会いしてきました」。チェチーリア・バルトリ、ニコラウス・アーノンクール、小澤征爾、リッカルド・ムーティ、アンナ・ネトレプコ…。楽友協会で何度も公演した、これらのクラシック音楽界のセレブリティたちを、デイブラー氏はすべて知っています。リング通りを少し外れた所にある、この世界的に有名なコンサート会場は、多くの音楽家にとって未だに特別な場所です。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のホールや、アムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウのメインホールに出演したことのある指揮者、ソリスト、オーケストラのミュージシャンでも、楽友協会で初めて公演するコンサートは、ナイトの爵位を与えられたのと同等の栄誉のようです。

1860年代に、ヨーロッパ歴史主義の名建築家、テオフィル・ハンセンはカールス教会近くの現場でコンサートホールの設計図を起こし始めた時から、ウィーンの中心地に音楽の殿堂を創りたいと望んでいました。この素晴らしいネオクラシックの建物の階段やロビーを通ったことのある人は、その隅々にハンセンが古代ギリシャの大崇拝者であったことをまざまざと見てとれるでしょう。ここには、ウィーン風の快活さと人生への熱意によって高められた、古代アテナイ文明の精神が広がっています。それはとりわけ、コンサートが始まる前にもスパークリングワインが美味しそうに飲まれる、洗練されたスナックバーを見ても明らかです。

音楽の殿堂

ウィーンの由緒ある楽友協会ホールは、146年間にわたり世界第一級のクラシック音楽を提供してきました。その舞台裏は、的確なプロフェッショナルたちの仕事が支えています。

世界のステージ

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それから、ここには黄金に輝く「大ホール」(通称:黄金の間)があります   印象的な天井画、さりげなくエレガントなカリアティッド(女像柱)、大ホールの装飾に使われている大量の金などは、壮麗なリング通りの時代を今に伝える証であり、楽友協会にはその時代の華やかさが、未だに脈 と々息づいています。

1870年に開演されて以来、楽友協会では約4400の作品が上演されました。その中で、多くの作品がここで初演されたものです。その中には、ブラームスやブルックナーの交響曲や、グスタフ・マーラー作曲「亡き子をしのぶ歌」やラヴェル作曲の「左手のためのピアノ協奏曲」などがあります。この伝統は今日でも引き継がれています   楽友協会が重要視している点は、ただ単にクラシック音楽の遺産を保存していくことだけではなく、ここが現代音楽の実験室であるとも考えています。例えば、最近、オーストリアの作曲家フリードリヒ・チェルハの「管弦楽のための三楽章」のプレミア公演がここで行われました。楽友協会には7つのコンサートホールがあり、その内の3つのホールで今夜公演が行われます:グラス・ホール(多目的ホール)では、作曲家イワン・エロートの誕生日コンサートが予定されています。600席があるブラームス・ホール(小ホール)では、ウィーン・モーツァルト・オーケストラが、モーツァルトの夕べで人気のある曲目を演奏します。黄金の間と呼ばれる大ホールでは、フランツ・リストの作品が予定されています。

今、午後7時29分です。指揮者のマルティン・ハーゼルベックが燕尾服を着ました。そして彼は大ホールの袖で、蝶ネクタイが曲がっていないかを確認しています。約二千人の聴衆が、ハーゼルベックがステージに上がるのを待っています。国際的に知られるウィーン・アカデミー管弦楽団の音楽家たちがステージの席に着きました。偉大な音楽家ハーゼルベックが、午後7時30分きっかりに指揮台に向かって大股で歩いて行き、コンサートマスターと握手を交わすと、会場から盛大な拍手が沸き起こりました。ハーゼルベックがマイクを手に取り、簡単

な挨拶をします:「このウィーン・アカデミー管弦楽団は、フランツ・リストの作品をオリジナルの楽器で演奏する世界で唯一のオーケストラです」と紹介します。このように演奏するのは、彼と彼の創設したアンサンブルが、ハンガリーの国民的作曲家に真摯に向かうための試みです、と指揮者は説明します。ハーゼルベックはマイクを置き、指揮棒を手にし、いよいよコンサートが始まります。 プログラムは、リストのオーケストラのためのバージョンで、リストの作品で最もよく知られている曲の一つ「メフィスト・ワルツ作品1番」から始まりました。それから、オルガニストのクリスチャン・シュミットがステージで注目を浴びます。ハーゼルベックと彼のオーケストラとの完璧なアンサンブルよって、オルガンの名演奏家が「コラール“アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム”による幻想曲とフーガ」の演奏を始めました。そして、この曲の力強いクライマックス部分では、大ホールのクリスタルのシャンデリアが静かに振動したようです。曲が終わると、聴衆は雷鳴の如き拍手喝采を送ります。

午後11時05分、疲れ果てた主任案内係のヴァルター・デイブラー氏が、オフィスの椅子に崩れるように座りました。今夜の仕事の感想は、「いつものように、すべてがうまくいった」でした。最後のクローク係が楽友協会を後にしました。デイブラー氏も、そろそろ帰宅する時間です。地元のウィーンっ子であるデイブラー氏は、この後、どのように有意義な夜を過ごすのでしょうか? 彼は言います「ワイングラスを傾けて…」。「もしかすると、リストのCDも掛けるかも知れないね…」。それもそのはず、デイブラー氏は、今夜の大ホールでのコンサートの音楽は、結局ほとんど1音符も聴いていないのです。

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子供のころ探検に出かけて、行く道々で出会うすべてのものに驚き、本当に楽しんだことを覚えていますか? 今でも、それが出来るのは嬉しいことです。まずは団体向けのコースを離れてみてください。幹線ルートを外れて、後は、好奇心のおもむくままに。

リンツから1時間もかからない内に、私はシュタイヤーの街の広場に面した席に座っていました。そこで、すばらしいケーキを一口食べて、それが舌の上でとろけるのを味わいながら、自分を祝福していました。レッドカラントのジャムを添えた、この甘い夢のようなチョコレートとナッツのケーキを注文したことだけではなく、まず初めに、このロマンチックな 街に来ようと思った自分に対して祝福したのです。この歴史ある街の中心は、ヨーロッパで最も素敵な広場の一つとして、大変高い評価を得ています。後期ゴシック様式の館ブンメルハウスは、建築の宝と称えられ、絶対に見逃せないものです。館の名前は、ファサードから下を見下ろす愛嬌のある黄金の獅子のことを、地元の人々が「ブンメル(犬)」と愛情を込めてからかったことに由来しています。この主要広場だけではなく、風変わりな中庭がある歴史的な中心街全体と、シュタイヤー川とエンス川の美しい合流点の景観が、この街を特別なものにしています。この自然景観を眺める一番いい場所は、給水塔の脇にある小さな

デッキです。この展望デッキに行くまでに、まず243段の長い階段を登らなくてはなりません。しかし、一番上にたどり着くと、息を飲む素晴らしい景観というご褒美が私を待っていました。私がここを知ったのは、リンツのレストランのオーナーとおしゃべりしている最中でした。「えっ! シュタイヤーに一度も行ったことがないの?」と彼が少し苛立ったように言いました。後で分かったことですが、そこは彼の生まれ故郷だったのです。「それじゃ、大事なものを見逃しているよ。それから、エンスとグムン デンの街も見た方がいいね」と、彼は付け加えました。こんな会話の中で、偶然にこれらの情報をくれた彼に、私は心の中で感謝しました。

リンツからすぐに行ける街「出発したらあっという間に到着」とは、ちょっとオーバーですが、シュタイヤーへの小旅行の後で私がまず初めに地図を見て確認したところ、何と、エンスもグムンデンもリンツからすぐの距離だと分かり、すぐに興味をそそられました。そして、もう少し後には、私はエンスの街の中心に立っていました。街の地図ですか? そんなものは必要ありません。私は道すがらに出会うものなら、何でも楽しいのですから。

田舎のきら星を発見する喜び

リンツのような都市にはもう既に詳しく、ちょっと時間に余裕があったとしたら、次はどこに行きましょうか。そういう方にお勧めは、その都市周辺の田舎をのんびりと周遊する旅です。大都市とは違って、静かで落ち着いた歴史ある街々、そういう小都市や町がオーストリアにはたくさんあります。

田舎を巡る、発見の旅

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確かに、このオーストリア最古の街には、魅力的な場所が溢れていて、とても楽しむことができます。歴史を重ねた建物のファサードには、愛情を込めて修復されたルネサンス様式の装飾や、荘厳なバロック様式の化粧漆喰が施され、往時を鮮明に証言しています。私は興味を引く案内版を見て、さらに詳細な事実を知りました。例えば、堂 と々した塔、シュタットトゥルムは400年もの間、教会の塔、火の見の塔、時計台、見張り塔として複数の役割を果たしてきた、言わば本物のマルチタレントです。聞くところによると、てっぺんからの眺めは最高のようです。古代の城壁内に建つ、トゥルムホテルに泊まれば、一晩中塔を堪能できるということです。実のところ、私は今日にでもリンツに戻りたかったのですが、でも、こんなユニークな体験ができる機会は、次はいつあるだろうとかと考えると、私は無意識の内に、ここに一晩泊まることに決めました。しかも、あたかも奇跡が起こったように、部屋が空いていたのです。このホテルの一風変わった部屋に、息を切らせて辿りつくには、幸運にもわずか71段の石段を登るだけで済みました。それでも登った価値は十分にありました。丸一晩、私は塔を独り占めにできたのですから。ユニークな部屋の最大の特徴は、正方形のベッドが部屋の真ん中に置いてあることです。この部屋に泊まり、私はまるで王様になった気分でした。召使いが私にナイトガウンを着せるために、部屋に現れなかったのを不思議に思ったくらいです。

湖岸にある街の広場塔の窓から夏の太陽が差し込む次の朝、私は突然泳ぎに行きたいという、強い衝動に駆られました。そこで、朝食後、近くのトラウンゼー湖へ向けて出発しました。青 と々した牧草地と、トラウンシュタイン山脈の驚異的に美しい断崖絶壁に抱かれ、爽やかな風景に囲まれたオーストリアで最深の泳げる湖トラウンゼー。その上、東側の岸辺は、事実上、建物が建っていないので、昔のままの自然の楽園です。

人気のない砂利のビーチから、私は水に飛び込みました。その時の爽快感に、はっきりと目が覚めました! 8月の夏の暑い気温にもかかわらず、水晶のように透明な湖の水温は爽やかな18℃。しかし、数かき泳いだだけで、皮膚がピリピリする快感を覚え、すぐに水から上がって、浜に敷いたタオルの上に手足を伸ばして、陽を浴びながら寝そべると、長い間感じたことがないほど生き返った気分になりました。短時間、湖畔でうたた寝をした後に、湖の北岸にある陶器の街グムンデンに向かいました。ここでは毎年、市庁舎前の広場と、湖岸の散歩道で、オーストリア陶器フェスティバルが開催され、オーストリアの精鋭陶芸家や国際的な陶芸家たちが集います。今はフェスティバルには、まだ時期が少し早いのですが、嬉しいことに年に一度の光の祭典が今週末に開かれるのは、実に幸運な偶然でした。そこで、私はその夜、散歩道に集まった多くの見物人たちに加わり、目の前で繰り広げられる夢のようなスペクタクルに、子供のように目を輝かせて驚嘆していました。光輝く色とりどりの花火が、音楽に合わせて夜空に踊り、暗い水面に反射していました。

旅行プランなど忘れて、時々ふらっと発見の旅に出掛けるのは、本当に価値あることだと考えます。そうでなければ、こんなにも多くの新しく、胸躍る感銘を、こんなに短い間に、体験できることはなかったでしょう。帰路に発つとき、あと1日ここに滞在して、トラウンシュタイン山脈へハイキングに行くべきか否か、ちょっと迷いました。しかし、それはまた次回の機会にとっておこうと決めました。結局、期待に勝る楽しみは、他にないのですから。そして、まだ発見するものはたくさん残されているのですから。FO

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い他の音に気付いたその時…。そこが、秘訣です。背後の松の間を抜ける風の音、湖の対岸のどこかでさえずる鳥の声、石間を縫って下る小さな流れの水音や、蜂の羽音、谷を立ち上る穏やかな鐘の音、また、繰り返し、吐き出し吸い込む、優しい大地が呼吸する音。それが、静寂の音です。

初めて見た瞬間から、虜になるいくつかのオーストリアの地域は、初めて行く時には耳で感じた方が良いと言われます。なぜなら、最初に目で見てしまうと、その素晴らしさに圧倒されてしまうからです。もし、それが本当なら、ホーエ・タウエルン国立公園は、まさにそのような場所の一つです。アルプスの中でも、この場所のように地質と時間の相互作用が、天国のような景色を創り上げた所

3000m以上の山頂が合計226座もそびえる、オーストリアが空に届いてしまうほどの、この驚異的な場所では、人の存在がとても小さく感じられます。ホーエ・タウエルン国立公園の、地質学上のあらゆる雄大な景観に囲まれて、ハイカーは静寂で素晴らしいパノラマを体験できます。そして、時には真の自分自身にも出会うことができます。さあ、ここに来て、わずか数分の間でも、この岩の上に座ってみてください。そして、眼下の湖を見下ろしてみましょう。あれが、聞こえますか? あれが、静けさです。静けさ? 静けさとは、実際に聞こえるものでしょうか? あなた自身が本当に静かにしていれば、聞こえます。特に、今のような早朝の、未だ世界が半分眠っている時刻に、息を吐き、ぴたっと止めると、静けさが聞こえます。普段は聞こえな

はそう多くはありませんし、初めて見た瞬間から人を虜にするこれほどの場所は、そう多くは存在しないでしょう。私たちは昨日到着して、部屋に荷物を運び上げ、窓から山々を最初に一目見た瞬間に、すぐにそのことが分かりました。そして、私たちはあそこに明日登る決心をしました。陽が昇ってすぐの、本当に早い時間。湖のずっと上の地点に座っていると、太陽が山々の頂上の間から顔をのぞかせ、水面がキラキラと煌めきました。この情景を見て、私はまるで魔法にかけられたように魅了されてしまいました。

3000m以上の峰々が226座  これ以上の数の山々がある場所はありませんもちろん、ホーエ・タウエルン国立公園について、もっと具体的に説明することもできます:ケルンテン州、チロル州、ザルツブルク州にまたがる、広さ1800㎢の公園。オーストリアの最高峰グロースグロックナーをその中心に控え、ヴェネディガー山群を西に、ホッホショーバー山を東に、そして、その中間やそれら山々の隣にも、そこら中に山々が並びそびえています。どれもが、小さい山ではありません。その数226峰、標高は3000m以上。しかし、オーストリアの空に届きそうなこの地域に来て、実際の数値などなんの意味があるのでしょうか? 休暇の初日に、てんてこ舞いの毎日から逃げだして来た別世界で、もう既にハイキングをしているような気分になっているこの場所で…? 初めて山上湖を一目見た時に、「これがよく人が言う、この瞬間を楽しめ、ということなのか」と理解できたその場所で…? 実際の数値などなんの意味があるのでしょう? これらすべてが、今ここに来て感じる気分なのです。

オーストリアが空に届く場所ホーエ・タウエルン国立公園には、このように感じられる場所がたくさんあります。まるで魔術のような魅惑的なオーラを発し、美の世界へと開眼させてくれる場所が。私たちは、

山頂と空が互いに触れてしまいそうな、驚異的な絶景を誇るヴァイスゼー氷河ワールドで、そのような場所を見つけました。パステルツェ氷河に登ると、私たちは本当に過去に近づいたのだという気持ちにさせられます…。この氷がこの氷河の最先端まで来るのに、何十年かかったのでしょう? そして、一体何千年かかって水が岩を削り、ライテンカマークラム峡谷のようなゴルジュや、クリムルの滝のような壮観な景観を創り出したのでしょう? 私たちは、白く泡立つ激流がゴーゴーと唸りを上げて流れ下るのを見て、心の内に大きな安らぎが広がって行くのを感じます。それはあたかも、私たちの奥深くで、何かが喜びのためにぐるぐる回転しているかのような感覚でした。

山々は私たちが理解することを助けてくれますところで、国立公園は徒歩で見て回ると一番美しさがわかります。それも、とても静かに、とても穏やかに、とても注意深くです。ウォーキング、ハイキング、クライミングと、いずれを行うにも、極めて良く整備されたコースのネットワークがあります。ガイドを雇ったり、国立公園の管理組織で運営しているツアーに参加することも可能です。私たちは、夕方の6時にアイベックスがどこへ行けば見られるのか、どこの砂をさらえばタウエルンの金の薄片が見付けられるのか等々、色々なことに詳しいパーク・レンジャーと共に公園を見て回りました。ホーエ・タウエルンの秘密を発見するには、時にはしばらくじっと座って待たなければいけない、と彼は教えてくれました。実際、それは本当でした。ここの山々は、特別な魔法を自ら発するのです。山は、私たちに自らを解放し、深呼吸して、しばらくの間、他の世界の雑音を忘れさせてくれます。そして、地球と山の歴史、時には、ほんの少し自分自身のことまでも、色々なことを理解するのを助けてくれます。

ホーエ・タウエルン国立公園では、ものすごい感動が待っています…。あなたは座って、ただただ称賛するだけ…。

ホーエ・タウエルンのうっとりする美しい景色の中で、

思いきり深呼吸を!

ただもう、驚き!

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世界を征服し、帰郷するアルプスの若い人たちは、かなりのパイオニア精神と創造性や独創性に溢れています。へき地の村にさえも聞こえてくる、遠く離れた土地での冒険への欲求を刺激する、大きく広い世界からの誘惑的な歌声に、最初は多くの人々が惹かれたのもうなずけます。しかし、彼らの多くにとって、永久不変で、伝統と特有の人生観を持った故郷は、そう簡単には捨て難く、彼らはたくさんの経験や傑出したトレーニングを積み、プロの専門知識を身に着けて、やがて山里に戻って来ます。彼らが得た経験は、古い伝統に革新的な技術やデザインや職人芸を吹き込み、新しいアイディアを与えてくれます  それも、かなり容易に、そして、生きる喜びを感じながら。

都会での生活は、思いのままです。人は活気ある都会生活を楽しみ、提供される膨大な便利な文化を大いに楽しみ、個人的な満足感を得る機会を巧みに利用します  ただし、それは幸せが見つけられると思える、自分の狭い適所でだけです。クリエイティブな考えを発展させ、幸せを見つけられる肥沃な土地は、騒々しさと、過剰に満ちた都会だけが提供できる場所なのでしょうか? 必ずしも、そうではありません。アルプスもまた、夢を叶えるという、気楽な実験が行える場所です。オーストリアの山では若い世代がリーダーシップを とり、そこに暮らす人々に斬新で革新的な活力を吹き込み、彼らにエネルギーを与えています。

アルプスの秘密とは、何でしょう?ここでは、貴方はまさに貴方です  つまり、貴方は他に類のない、唯一の存在です。山では、貴方を比べる尺度となる大衆は存在しません。貴方は自分に対して忠実でいられますし、自分を進化させ、自分を発見する自由を持ち続ける事ができます。山は親しみある、くつろげる環境であり、また、個人の自己満足が得られる守られた領域を提供してくれる場所でもあります。ここでは、都市社会の匿名性の中で失われてしまったコミュニティの感覚といった価値観が育まれています。村では、皆が互いに知り合いです。お互いに協力することは、称賛されています。人々はいつでもどこでも人を手助けし、夢や目的を実現するために他者を支えます。ここの環境では、自身の活力を十分に生かし、起業家精神の欲するままに行動できます。

自然と調和した平穏アルプスの住民は、仕事や創作でとても忙しいのですが、彼らが失っていないものが一つあります。それは、落ち着きです。アルプスでは、他所とは違った物の考え方をするので、ここにはストレスは存在しません。ここの住民は、社会のリズムに合わせた生活はしません。どちらかと言えば、彼らは物事に対して、自然と調和した自分なりのやり方で対処します。このことは、彼らの日課と密接に結び付いています。つまり、自然の中で生きる者は、自然と共に生きる、という訳です。アルプスの人々は、未だに自然の気性や、その良い面やその状態をよく観察します。都会に住んでいる人たちの一体何人が、赤い夕陽や巻き雲を見て、来たる天候を予測できるでしょうか?

アルプス  そこは、人が自由に呼吸できる場所山は、人が自由を感じることができる所です。ここでは、人を取り囲む物はビルの壁ではなく、そびえ立つ山々です。そして、空をほのかに照らすものは街路灯ではなく、無数の星々

です。人は天気をそのまま受け入れ、パラパラと肌を打つ夏の雨の感触を楽しみます。アルプスは、都会の強すぎる多くの刺激によって鈍ってしまった感覚が、再び鋭く蘇る所です。ここでは、自身は自身に近い存在であり、人生を楽しむ時間が許されています。多くの人は、遠い昔に自分が失くしたと信じているものを見つけたいという思いから、山へ惹きつけらます。それは、真実です。都会を後にした途端に、また、四方から山々がそびえ立ち、何百という色彩の陰影が風景を包んだ瞬間から、アルプスの人生観の火花が、身体の中で再燃するのを感じるでしょう。

アルプスの生活を、共に体験する山では、人々はグループとして、自然を積極的に体験します。人々は自発的に、そして、常にある種の感謝の念を心に抱いて、山登りに向かい、カヌーで渓流を征服しようとし、あるいは、山頂からパラグライダーでゆったりと降下します。このアルプスの人生観を持たずに育った人でさえ、ここで暮らす人々の情熱の虜になります。それは、アルプスの人々が、自分の故郷への愛着を互いに共有し、それを楽しんでいる事と、彼らの他人に対する気取らない見方に、共感できるからです。このように、地元の人も、ここを訪れる観光客も、故郷に戻って来た人も、山ではすべての人々がくつろいだ気持ちになれるのです。そして、ここで得た経験を、将来に渡って役立てていくのです。ここでは、古いものと新しいものが結び付き、伝統は柔軟性と連携します。ここでは、幸せな人生に必要なものすべてがあるので、若者たちが故郷に帰ってくるのも当然です。

「昔気質で、時代遅れ」というのが、一部の都会人が言い表す山での暮らしです。しかし、それはまったく違います。オーストリア・アルプスの若者はコスモポリタンであり、率直な人たちで形式張らずに、気軽に伝統と革新を融合させています。彼らは、私たちが密かにうらやむ自由を叶えているのです。

アルプスの人生観

山で暮らす

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しばしば、内なる自分と再び接触するには、腕時計を外し、ホテルの部屋に携帯電話を残して、一日だけ時間は忘れなさいとよく言われます。約束なし、騒音なし、電話の呼び出しなし…。しかし、それよりもっと物事に邪魔されない、平穏な喜びを強く感じる瞬間があります。それは、朝食前に、冷たい朝露を踏みしめながら、アルプスの牧草地を素足でぶらつくとき、泉から直接飲み、氷のように冷たい純粋な水を味わうとき、もしくは、夕陽の照り返しを受けてオレンジ色に染まる湖畔の夕べの雰囲気に浸るときです。

ウェルネスは、well-being(健康で安心なこと)と fitness(体の健康)という2つの言葉から成り、単に日常のストレスから短時間逃れ、自分を再充電するだけではなく、それ以上の重要なものを意味します。つまり、どのようにしたら長期間にわたって、健康で安心な自分の状態をより良くしていけるのか、ということなのです。

そこには、ただの日帰り旅行以上の充足感がありますもし、感覚を解放し、時と自分自身に完全に集中すれば、心地よいことが徐々に起こり始めていることに気付くでしょう。そして意識が心の騒ぎを消し去り、代わりに温かい充足感が心を満たして行きます。特に、「私だけの時間」を新鮮な空気の中で行う運動と組み合わせて使えば、なお効果的です。汗をかく場所は、サウナだけではありません。ハイキングで近くの山に登っても同様な効果が得られるし、登る間に素敵な思い出作りができるというおまけも付きます。目的地に着いた時点で、自分に対してかなり鼻高々な気分になれますが、それだけではありません。今まで自分では感じた事がない筋肉があることに気付きます。そしてまた、空腹にもなります。その時は、自分への褒美としてボリュームあるスナックをご馳走する最高のタイミングです。食べ物を一口食べる度に、また、飲み物をグイッと一口飲む度に、いつもより倍美味しく感じ、長い間感じた事のなかったほどの元気を実感できるでしょう。

そのような時に、新しいプランやアイディアが浮かんでも、まったく不思議ではありません。自然に囲まれている間に、スケッチブックを取り出しましょうか、それとも、美しい風景をスマートフォンかカメラで記録しましょうか。もしくは、ガイド付きハーブツアーに参加して、普段は見逃しがちな香りのよい薬草について学びませんか。最近、人気上昇中のもう一つのオプションは、オーストリアに多数ある国立公園や農家でしばらく働くことです。実り多き一日を終えて、疲れ果てた体をベッドに横たえる時の気分はまた格別で、明朝が来るのが待ちきれないほど楽しみになります。

自ら課した慌ただしい日常の仕事からの逃避で一番いいことは、そこで得たエネルギーが長持ちする種類の活力である点です。それは、空いている時間に急いで行った健康ジムで得る一瞬の爆発力より、比べ物にならないほど長く持続します。ウェルネスとは本当に、よくあるただの宣伝文句ではありません。ウェルネスは、より優れた健康と安心へと、優しく導いてくれる生活に対する姿勢なのです。大事なことを言い忘れましたが…、自分を取り戻すことでもあります。

ウェルネスとはスチームバスとマッサージのことだと思うのは間違いです。なぜなら、そのような至福の時は、どこででも得られるからです。それとは違い、ウェルネスとはライフスタイルの一環です。やるべきは、ただ立ち止まって、自分の内なる声を聴き、自分の周囲の美しさに集中することです。

私だけの時間

本物のウェルネスとは

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16 17 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

しげに指摘するでしょう。しかし、それに類似したクグロフの確かなルーツが、オーストリアの考古学者たちによって、ニーダーエステライヒ州のカルヌントゥムでも発見されています。

宮廷のケーキ成功には多くの生みの親がいるとよく言われますが、それは人気の食にも言えることです。世界で初めてステーキを焼いた人が誰であったのか知っている、と言える人はいますか? ケーキについても、それと大した違いはありません。人類が砕いた穀物を加熱すると質感が変わり、美味しくなる事を発見して以来、パン焼きの技術には永い歴史があります。それ以来、その技術は進歩し、レシピは洗練されてきました。しかし、自身を甘やかすことにかけては、古代ローマ人の右に出る者はいません。

この甘くて、美しい曲線を持ったオーストリアのケーキ作りの化身は、人類にとって形を変えた神からの贈り物なのでしょうか? たっぷりと粉砂糖をふりかけ、ホイップクリームを添えた、マーブル(大理石模様)のクグロフと、香り高き一杯のメランジェ(泡立てたミルクを上に乗せたミルク入りコーヒー)は、世界中で愛されているウィーンのカフェ文化の最たるものです。しかし、数あるオーストリアの伝統的なケーキの中でも、スターの地位にあるにもかかわらず、実はこのクグロフが、まったくオーストリアのものではないなんて事があるのでしょうか? 狡猾な食の乗っ取りが、過去に起こっていたのでしょうか? 確かに、料理専門のフランスの歴史家はそう言うでしょう。イタリア人は、紀元前二世紀まで遡る古代ローマ時代のクグロフに関する発見の事を、誇ら

古代ローマ人がクグロフの原型を作っていたことが、出土した焼き型に付着していたスポンジの生地や、イーストの練り粉などの残留物から裏付けられました。ローマ時代と十五世紀とのつながりに関する証拠はほとんど発見されていませんが、しかし、それはもちろん、人々がクグロフを全然食べなかったということを意味するわけではありません。それどころか、中世後期には、ブントケーキ用の型に似た、当時は銅で作られた典型的なクグロフの焼き型で、美味しいものが作られていたという証拠があります。その時代以降、ふかふかのスポンジと軽くてフワフワのブリオッシュでできたクグロフの隆盛を止めることは出来ませんでした。皇帝フランツ・ヨーゼフの、レーズン入りクグロフに対する好みと、よくクグロフを彼のために焼いてくれた、長年の愛人カタリーナ・シュラットに対する強い愛情は、ウィーン風クグロフの世界的な知名度を確かなものにしました。

カプチン会修道僧とターバン史実に関する話はここまでとして、ここからは推論の分野を掘り下げて、キリスト教暦の初期まで遡ってみましょう。今、イエスキリストが誕生しました。その後、3人の賢者はベツレヘムから真っすぐ家には帰らず、フランス、アルザス地方の小さな美しい村リボーヴィレを通って回り道をしたようです。彼らは地元の人々の歓待を受けた後、別れのしるしに彼ら自身のターバンの形に似せた、美味しいケーキをもらいました。これが、アルザスのクグロフが誕生した理由です。このケーキの起源ほど、オーストリアのクグロフ神話には想像力はありません。それによると、若いカプチン会の修道僧が修道会に入る時に、cuculla offaというペストリーが与えられます。 cucullaとはラテン語で、修道僧の服の、クグロフの形とよく似たフード(頭巾)のことです。その後、この言葉は、中期(11世紀から15世紀)の高地ドイツ語のgugeleへと変化しました。そして、イーストを意味する接尾辞 hopfが付け加えられて、Gugelhupf(クグロフ)という名前が誕生したのです。さらに、別の説では、ヘッドスカーフを意味するラテン語のcuculusに触れ、市場で美味しいスイーツを売る女性がヘッドスカーフをしていたことから、恐らくクグロフの名を生むことになったのであろう、と言っています。

真ん中に開けられた穴その形がターバンから来ようが、カプチン会の修道僧のフードから来ようが、あるいは、ヘッドスカーフから来ようが、ここで簡単に言える事実は、クグロフは丸いということ、焼かれた生地はオーブンの中で膨れ上がり、焼き上がったものを逆さにすると、事実上、焼き型から飛び出すということです。どのようなタイプのクグロフも、型からとても簡単に取り出せる理由は、型に付けられた溝に加えて、真ん中に開けられた穴のせいです。これらにより、ケーキのすべての面に熱が通り、生地が均一に焼けるためです。また、球状の焼き型は太陽を象徴し、幸せと満足を意味します。なるほど、小型のクグロフが、オーストリアの民話でも重要な役割を果たしている理由がよくわかります。ある地域では、花嫁介添人が結婚式で、燃えたロウソクで飾った小さなクグロフを頭に乗せて踊ります。確かに、この風習は徐々に廃れていますが、それとは対照的に、コーヒーとケーキを食べながら休憩をとる午後の習慣は、ますます定着しています。これはオーストリア全土のカフェやペーストリー・ショップ、各家庭で見られる光景です。ここでは、クグロフが顕著な役割を果たし続けています。

クグロフは、いったいどこから来たのでしょうか? オーストリア? フランス? それとも、もしかしてイタリアから? それにクグロフは、なぜ真ん中に穴が開いているのでしょう? オーストリアの最も人気のあるケーキの歴史を探ってみましょう。

クグロフ喜びのひとかじり

ヨーロッパの食の人 気もの

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18 19 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

つい100年前まで、ハプスブルク家がオーストリアを統治していました。その当時ウィーンは、地理的にヨーロッパの中心に位置していたのです。ハプスブルク家の下、ドイツ人、チェコ人、ハンガリー人、スロヴァキア人、ボスニア人が一つになっていたのです。ハインリッヒ・シュタインフェストは「オーストリアは巨人として眠り、小人として目を覚ました」と、帝国と多民族国家の崩壊をややシニカルに描写しています。

今日でも、皇帝家の遺産がまだ脈々と受け継がれていることを感じ取ることができます。これは、オーストリアが帝国時代と同様、現在も数多くの文化を宿しているためと、ハプスブルク家が無数の立派な建築物を国内の至る所に残したことによります。特にハプスブルク家の居城、ホーフブルク王宮があるウィーンで強く感じることができます。このウィーンから、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世はハプスブルク帝国の運命を68年(1848–1916)もの間、歴代最長にわたり統治してきました。また、オーストリア=ハンガリー二重帝国の輝かしいセレブリティである皇妃シシィ(1837–1898)の面影はあらゆる所で見つけることができます。シシィ博物館やカイザーアパートメント(皇帝の居室)では、シシィの印象的な私生活を垣間見ることができます。刺殺された皇妃シシィのオリジナルのデスマスクなどが訪れた人を感嘆させています。

皇帝家の史跡は、ウィーンの中心部の各所に散りばめられています。ヨーゼフ広場にある

アウグスティーナ教会では、ハプスブルク家の結婚式が挙行され、また葬儀も行われました。皇帝納骨堂には、12人の皇帝、19人の皇妃や王妃が永遠の眠りについています。さらに活気溢れる帝国のシンボルは、バロック様式の城であり華やかな庭園を持つシェーンブルン宮殿です。シェーンブルン宮殿はユネスコ世界文化遺産に登録されています。皇帝たちは夏の間、数えきれないほどの部屋があるこの城で過ごしました。サロンや皇帝一家の居室は今日でも訪れることができます。

ハプスブルク家の人々は暖かい時期に、首都から遠く離れたザルツカンマーグートのバード・イッシュルで過ごしました。多種多様な民族や利害関係を一つの国に統治するのは、とてつもない課題でした。過労が気力を一気に奪っていったとき、皇帝はこの地で執務から離れ休息を取りました。このようにハプスブルク家は、その遺産を豪華な建築物や城の形で残しただけではなく、オーストリア人のメンタリティーという形でも残しました。100年前までは多民族国家として統一されていた土地の多くの文化的影響と文化様式が、今日でも住む人々に感じることができます。ドイツ人の秩序と徹底性、情熱的なスラブ系の気質、ハンガリー人のブラックジョーク、イタリア人の陽気さとジェスチャーの伝統。多国籍国家は、オーストリア人の精髄として人々の中に存在し続けています。

2017年は女帝マリア・テレジア誕生300年を迎え、様々な特別展が開かれます。

ハプスブルク家の史跡を訪ねて

オーストリア全土では今日でも、巨大なハプスブルク家のオーラを感じることができます。しかしそれは、豪華な建築物や都市によるものだけではありません。

オーストリアについて

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20 21 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

屋「ホイリゲ」と切っても切れない関係にあります。また、毎年各地で開催される数多くの音楽祭には、世界中から音楽ファンが集います。最も有名なザルツブルク音楽祭、ウィーン芸術週間、ボーデンゼー湖のブレゲンツ音楽祭、メルビッシュの湖上音楽祭、グラーツのシュティリアルテ音楽祭、フィラッハ /オシアッハのカリンシア夏の音楽祭、シューベルティアーデ、リンツの国際ブルックナー音楽祭やクラングヴォルケ、そしてアイゼンシュタットのハイドン音楽祭、グラーフェネッグ・クラシック音楽祭など、多彩なプログラムが繰りひろげられます。

ウィーンフィルのニューイヤーコンサートとシェーンブルンでの夏のコンサートは毎年、世界中に中継・放映され、音楽ファンを楽しませてくれます。

ヨーロッパの中心に位置するオーストリアは、古来より様々な文化が交錯し、豊かな文化の歴史を育んできました。中でも「音楽」は、オーストリアを紹介する上で最も重要な代名詞といえるでしょう。世界的に名高いウィーン国立オペラ座、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン少年合唱団、フォルクスオーパーなどは、オーストリアの文化使節としても活躍しています。

また、オーストリアの音楽史上「ウィーン古典派」は、偉大な文化遺産の一つに数えられます。そのウィーン古典派は、ハイドンに始まり、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトが含まれます。ロマン派を代表するのは、ブラームス、ヴォルフ、ブルックナー、マーラーです。オペレッタの王と呼ばれるヨハン・シュトラウスとフランツ・レハール、また、シュランメル兄弟の音楽は、ウィーンのワイン居酒

オーストリアのデザイン百数十年も前から受け継がれている職人たちの手仕事を現代に再現した「ウィーンプロダクツ」加盟企業の製品をはじめ、オーストリア発のアクセサリーやファッションが世界的に注目されています。特に、豊かな文化遺産と若く活力あるクリエイティブシーンの両面を持つウィーンは、まさにクリエイティブ業界の中心地です。また、全国に渡りカフェやレストラン、ホテルなどでも、オーストリアならではのデザインを感じることができます。

オーストリアならではの逸品アクセサリーをお求めなら日本でも人気の高い「スワロフスキー」は本場オーストリアのショップを訪れてみてください。ワッテンスの本社に隣接するクリスタルワールドの他、インスブルック、ウィーンにショップがあります。可愛い小物やアクセサリーの数々がショーウィンドウを飾り、その豪華さはメルヘンの世界そのものです。伝統的な品物をお求めなら、高級磁器セットの代名詞「アウガルテン」、美しいガラス製品とテーブルウェアでゴージャスな食卓を演出できる「ロブマイヤー」、独自のアトリエを構えるテーブルウェアやリネンのお店「シュヴェービッシェ・ユングフラウ」、ユーゲントシュテ

ィールの美術工芸品や各種ウィーンプロダクツ商品を展示・販売する「オーストリア工房」、 歴史的なデザインによる家具やハイセンスなインテリアを生産する「フリードリッヒ=オットー・シュミット」などがお勧めです。

ウィーンのファッションでは、バラエティー豊かなデザインを取り揃える帽子店「ミュールバウアー」、伝統的な民族衣装とロマンチックな1950年代ファッションに現代的なエレメントを加えた「レナ・ホシェック」、カラフルで独創的スタイルのモードをアピールする「アートアップ」、軽やかで時代を超越した独自ブランドを展開する「ピア・ミア」、ウィーンで指折りのシックな靴のファッションブティック「シュー !」、選抜きの眼鏡やサングラスの数々をコレクションするアイウェアのお店「シャウシャウ・ブリレ」などが人気です。

ウィーンでちょっとした小物をお探しなら、最高級のナチュラルコスメティックスが揃う「セントチャールズ・コスモテカリー」、アルプス地方の伝統にアイロニーを加えたハンドメイド磁器が揃う「マノ・デザイン」、選び抜かれた愛らしい商品の並ぶ雑貨店「アンナ・シュタイン」などはいかがでしょうか。

オーストリアは長い歴史を通じて音楽と美術の保護を旗印に掲げ、他国ではほとんど例がないほどの資金と労力を注いできました。

芸術の国オーストリア

オーストリアについて

帝国の時代、ハプスブルク家の人々は芸術作品収集に情熱を傾け、幾世紀にわたり世界中から数多くの絵画や美術品の名作が集められました。現在、オーストリア全国にはルーベンスやブリューゲル、ベラスケスなど古典の大家から新進の現代芸術家までの作品を擁する約1000の美術館・博物館があります。特に人気の高い「ユーゲントシュティール」様式を代表するグスタフ・クリムト、エゴン・シーレ、オスカー・ココシュカの絵画は、世界的な名声を博しています。FO

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ヒント

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22 23 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

山小屋「アルムヒュッテ」アルプスの牧草地に建つ山小屋は、元々、夏の間山の中腹の牧場で働く牛飼いや酪農従事者が住むための住居でした。その後、山小屋はアルプス文化と人生の喜びを象徴するものとなりました。よくある板葺きの小屋では、訪れる旅行者やハイカーを親切なオーナーが暖かく迎えてくれます。山小屋では、心尽くしの料理とサワー種の黒パンが供され、楽しい会話とアルプス独特の魅力を味わうことができます。どこに? 山小屋はアルプスのハイキングコースに沿ってあります。フォアアールベルク州、チロル州、ザルツブルク州などオーストリア西部に多く点在します。

ワイン居酒屋「ホイリゲ」オーストリアは人生の楽しみ方をよく知っている国です。そして、ホイリゲはまさにオーストリアの暖かさと居心地の良さを実感できる場所として、この国の人々にはとても馴染み深いところです。地元の人々はホイリゲに集い、ワイン醸造者が造った自慢の新酒と、美味しい家庭料理、自家製のベーコンやチーズなどに舌鼓を打ちます。テーブルには楽しい会話と笑い声があふれ、時が経つにつれて歌声が店内に響き渡ります。ホイリゲで楽しむ伝統は、少なくとも18世紀まで遡ることができます。それは、時の皇帝ヨーゼフ2世が、いつでも誰でも自家製のワインを販売したり、供したりすることを許可する条例を施行した時代でした。どこに? ニーダーエステライヒ州のワイン産地、ウィーン郊外のホイリゲ地区、ブルゲンランド州とシュタイヤマルク州にあります。

地元の人が集まる居酒屋「バイスル」オーストリアの暖かさと居心地の良さを語るとき、3つの場所が挙げられます。それは、カフェとワイン居酒屋、そして昔ながらの居酒屋「バイスル」です。典型的なバイスルの設えは、木製バーカウンターと木製の壁の羽目板、メニューを手書きした黒板を特徴としています。ウィーナー・シュニッツェルやエッグノッケル、古典的な家庭料理がどこのバイスルでも味わえます。どこに? オーストリア中、どこにでもあります。

ソーセージスタンド「ヴュルステルシュタント」ここは単なる伝統的なスナック・バーではありません。仕事の合間にちょっと立ち寄って一息入れる大切な場所なのです。ここで、ケーゼクライナー(チーズ入りソーセージ)にマスタードを添え、パンと食べ、ウィットに富んだ、魅力ある店員と会話を楽しみます。当初、ヴュルステルシュタントは帝国時代に、退役した傷痍軍人たちの生計を立てる仕事を与えるために出現しました。伝説的なケーゼクライナーは、オーストリア人が創作したものです。ソーセージのレシピはスロヴェニアが起源ですが、それをオーストリアの食通が、ソーセージを焼いた時に溶けるチーズを加えて完成させた、手軽で美味しいご馳走なのです。どこに? ウィーンのソーセージスタンドはよく知られていますが、オーストリアのどの主要都市でも見られます。

ケラーガッセ・ワイン祭りワインの生産地域の夏のハイライトが、このワイン祭りです。この時期、人々はワインケラー(ワイン貯蔵所)が立ち並ぶ小路をそぞろ歩き、貯蔵所から貯蔵所へと渡り歩いて、それぞれのワイン醸造者が造った素晴らしい新酒と美味しい料理を味わって回ります。それに加えて、何世紀もの歴史を誇る、見渡す限り続くブドウ畑の風景は、見る者に活力を与えてくれます。どこに? オーストリアのワイン産地、特にニーダーエステライヒ州が有名です。

ビアガーデン夏の暑い夜、人々に愛されている場所の一つが、国中どこにでもあるシャニーガルテン(シャニーとは、オーストリアのニックネームでヨハンの愛称)とも呼ばれるビアガーデンです。仕事の後、オーストリア人はこれら愉快なビアガーデンに立ち寄り、ニワトコの花から作ったホルンダージュースや、ビールで喉の渇きを癒します。店によっては、オリジナルのビールを

醸造して提供しています。このような所では、普通の夕べがささやかな祝杯の席へと変わり、ありふれた日常をしばし忘れさせてくれます。どこに? ザルツブルクが有名ですが、オーストリア中どこにでもあります。

カフェウィーンのカフェ文化は、オーストリア人が食通である事を証明する最適の例でしょう。ウィーンではカフェが、ユネスコにより無形文化遺産として認定されたほどです。その歴史は17世紀末まで遡ることができ、トルコ軍によるウィーンへの包囲攻撃と深い関わりがあります。代表的な古典的カフェのインテリアは、小さな大理石のテーブルに、トーネット・デザインの曲木製の椅子、ボックス席、新聞ラック、歴史主義的意匠の飾り付けを施した内装を特徴としています。そして、カフェで出される水も、オーストリアのカフェ文化を特徴づけています。また、世界で初めてお客様に新聞を提供したのはウィーンのカフェです。どこに? オーストリア中どこにでもありますが、最も有名なのはやはりウィーンのカフェです。

オーストリア人は、人生を謳歌することに長けています。ここでは、人生を最高に楽しむために彼らが通う特別な場所を、いくつかご紹介しましょう。

人生の“愉しみ”を満喫する

オーストリアについて

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24 25 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

ルビッシュ、サンクト・マルガレーテンの野外オペラなど音楽イベントも豊富です。また、良質でおいしいワインの産地としても知られています。州都アイゼンシュタットは、ハイドンとエスターハージー侯爵家ゆかりの街。

ニーダーエステライヒ州ウィーンを囲むようにして広がる州。州東側の丘陵地帯は良質のワイン産地になっており、北部は森林におおわれています。バロック様式の修道院が建つメルクとクレムス間のロマンチックなドナウ河の渓谷は「ワッハウ渓谷」と呼ばれ、ユネスコ世界遺産にも登録されており、ニーダーエステライヒ州でいちばん人気のある休暇地となっています。州都はサンクト・ペルテン。

ウィーンオーストリアの首都ウィーンは古い伝統を持つハプスブルク帝国の都、音楽と芸術が輪舞する街。その一方で、近代的で未来を志向する建築物も多く、スタイリッシュなライフスタイルと活気のあふれる文化の愉しみにあふれています。市の周囲には約1350km²にもおよぶ広大なウィーンの森が広がり、市民の憩いの場所となっていて、これは他のヨーロッパの大都市にはみられない独特の魅力です。 詳しくは28ページをご覧ください。

ブルゲンランド州オーストリアの東端に位置する州。ここには世界遺産のノイジィードラーゼー湖があり、野鳥の宝庫であるゼーウィンケル国立公園も隣接しています。ルストなど、コウノトリがコロニーを作る農村やハンガリー風のエキゾチックな町が魅力。オペレッタ・フェスティバルで有名な湖畔の町メ

オーバーエステライヒ州風光明媚な湖水地方ザルツカンマーグートは、オーバーエステライヒ州にも広がり、保養休暇を過ごすのに理想的な環境を提供します。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇妃「シシィ」はバード・イッシュルで何度も夏を過ごしました。州の北側の森の深いミュールフィアテルの丘陵地帯は、チェコとの国境を形成しており、訪れる人々を惹き付けます。州都のリンツは、音楽家ブルックナーゆかりの街として知られ、モダンなアルスエレクトロニカセンターやレントス美術館など、芸術探訪もおすすめです。

ザルツブルク州ザルツブルク州は、ハイカーや自然愛好家の憧れの場所となっているホーエタウエルン国立公園を含むアルプスの山岳地方。ザルツカンマーグートの大自然の美しさは映画『サウンド・オブ・ミュージック』でお馴染みです。ザルツブルクの名前の由来の「岩塩の城」を体験できるハラインの岩塩坑や、「きよしこの夜」誕生の地オーベルンドルフ、世界一の氷穴があるヴェルフェンなども見どころです。州都はザルツブルク(36ページ参照)。

シュタイヤマルク州森が豊かなことから「緑の州」とも呼ばれており、アルプスの大自然はもちろん、牧歌的な村の風景も美しく、スロヴェニア国境の南シュタイヤマルク地域はワインの名産地として有名。ブッシェンシャンクと呼ばれるワイン生産者の直営店が点在しており、ワイン愛好家におすすめのルートです。数多くの文化財を見ることもできます。一方、バード・アウスゼー周辺のザルツカンマーグートのシュタイヤマルク州側の部分は、美しい湖と山の景観によって、南部とは違った魅力を放っています。州都はグラーツ(41ページ参照)。

ケルンテン州オーストリアの最南部にあるケルンテン州には、ヴェルターゼー湖、オシアッハゼー湖、ミルシュテッターゼー湖など、湖水浴のできる大きな湖があって、水泳や水上スポーツが楽しめるパラダイスとなっています。州の最北端にはオーストリア最高峰のグロースグロックナー山が秀麗な姿を見せています。州都のクラーゲンフルトは、バロックとユーゲントシュティールの建物が建ち並び、芸術や文化の薫り高い見どころの多い古都です。

チロル州牧歌的な山の景色で知られるチロル州の文化の拠点は、インタール渓谷に数珠つながりに存在します。インスブルック、ハル、ラッテンベルク、クーフシュタインなどの魅力的な町が点在します。また、ツィラータール、シュトゥーバイタール、エッツタールなどの渓谷、サンクト・アントンやゼーフェルトはハイカーやスキーヤー、そして休養を求める人々の理想郷として有名です。また、東チロルはザルツブルク州をはさんで離れたところに位置する自然の宝庫です。州都はインスブルック(44ページ参照)。

フォアアールベルク州オーストリアの一番西に位置する州。面積は小さいながらも、シルヴレッタの氷河の世界からライン渓谷の平地にいたる、変化に富んだ自然が特徴です。州都ブレゲンツを有名にしているのが、世界最大のオペラ・フェスティバルの一つ、夏の「ブレゲンツ音楽祭」。個性的な湖上ステージは映画007のロケでも使われました。スキーやハイキングが盛んなアールベルク地方の村レッヒは、世界のセレブが休暇を過ごす高級リゾート地で「ヨーロッパで最も美しい村」に選ばれました。

オーストリアは個性あふれる9つの連邦州からなる共和国です。各州にはそれぞれの魅力と特長があります。

個性あふれる9つの州

オーストリアについて

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26 27 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

1: 2,800,000

ドイツ

イタリアスイス

スロヴェニア

ハンガリー

チェコスロヴァキア

リヒテンシュタイン

オーストリア地図位置と距離

オーストリアについて

オーストリアは中央ヨーロッパの南部に位置し、国土の総面積は83,858平方キロメートル、人口は約850万人。公用語はドイツ語ですが、英語はよく通じます。

(km) ブレゲンツ アイゼンシュタット グラーツ インスブルック クラーゲンフルト リンツ ザルツブルク サンクト・ペルテン ウィーンブレゲンツ - 769 700 187 575 547 429 656 720アイゼンシュタット 769 - 183 582 307 232 347 113 55グラーツ 700 183 - 513 133 215 255 190 210インスブルック 187 582 513 - 377 360 242 469 533クラーゲンフルト 575 307 133 377 - 257 212 339 335リンツ 547 232 215 360 257 - 118 121 185

ザルツブルク 429 347 255 242 212 118 - 230 294サンクト・ペルテン 656 113 190 469 339 121 230 - 65ウィーン 720 55 210 533 335 185 294 65 -

州都間の距離

9つの州と州都ウィーン

ニーダーエステライヒ州オーバー

エステライヒ州

ザルツブルク州ブルゲンランド州

シュタイヤマルク州

ケルンテン州

チロル州

東チロル

フォアアールベルク州

リンツ サンクト・ペルテン

アイゼンシュタット

グラーツ

クラーゲンフルト

インスブルック

ザルツブルクブレゲンツアウトバーン

建設中のアウトバーン

高速道路

建設中の高速道路

幹線道路

主要道路

その他道路

鉄道

国際空港

国境

州境

ヨーロッパ主要都市までの距離 (km)

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28 29 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

ら始まった残存する最古の動物園、大温室パルメンハウス、ネプチューンの噴水、迷路庭園、日本庭園があります。ギリシア風の神殿グロリエッテの中にはカフェがあり、また、宮殿に隣接する馬車博物館には歴代の皇帝たちが使用した豪華な馬車が展示されています。ここでは、2017年は女帝マリア・テレジア誕生300年記念の特別展が開かれます。www.schoenbrunn.at

ベルヴェデーレ宮殿 トルコ戦争の英雄・オイゲン公が夏を過ごした離宮。現在は美術館ベレヴェデーレとして使用されています。上宮には、クリムト、シーレなどユーゲントシュティール、ビーダーマイヤー、歴史主義などの名画が展示され、下宮とオランジェリーでは特別展覧会を開催。MAP P.31 D-3,4 www.belvedere.at

古くよりヨーロッパの東西と南部を結ぶ十字路として、ウィーンは二千年の歴史に育まれてきました。ハプスブルク家が育んだ音楽と芸術の都として知られ、ハプスブルク帝国の重要な歴史的建築が見どころですが、最近ではモダンな現代建築、最新のデザインやファッションの発信地としても知られるようになりました。

シェーンブルン宮殿 ユネスコ世界遺産に指定されたハプスブルク家の夏の宮殿。マリア・テレジア・イエローで彩られた外観が印象的。ロココ様式で統一された内部には、1400もの部屋があり、そのうち40室が公開されています。ウィーン会議の際に舞踏会場として使用された大広間、6歳のモーツァルトが御前演奏した鏡の間は必見です。宮殿の後方に広がる庭園は面積1.7km²。シェーンブルンの名前の由来となった泉、1752年か

シュテファン大聖堂 鮮やかな屋根が街並に花を添えるウィーンのシンボル。南北2つの塔からはウィーンの街が一望にでき、石造りの説教壇や祭壇を彩る絵画など幻想的な内部装飾は必見です。カタコンベ(地下墓地)には歴代皇帝の内蔵が安置されています。MAP P.31 B-3

リング通り 19世紀の中頃、ウィーンの旧市街を取り囲んでいた城壁を皇帝フランツ・ヨーゼフの命により取り壊し、現在の幅広い環状道路が作られました。この通りに沿って、公園、国会議事堂、市庁舎、大学、ブルク劇場、国立オペラ座、美術史/自然史博物館、王宮などが建築図鑑のように立ち並んでいます。MAP P.30,31 A,B,C-2,3,4

ホーフブルク王宮 ハプスブルク家の皇族たちが住居として使用していた居城。帝国の発展に伴い増改築が繰り返され、各時代の建築様式が共存する建物となっています。旧王宮ではシシィ博物館と皇帝の住居を公開しています。銀器コレクションも見事です。宮廷宝物館ではオーストリア帝冠や様々な宝物が

展示されています。新王宮には民族学博物館やローマ時代のエフェソス遺跡から出土した エフェソス博物館などが併設されています。また、隣接する王宮庭園には有名なモーツァルト像があります。MAP P.30 C-2 www.hofburg-wien.at

市庁舎(ラートハウス) 1872年から1883年にかけて作られたネオゴシック様式の建築。手前の市庁舎前広場は各種イベント会場となります。夏には音楽フィルムフェスティバル、11月中旬~12月24日まではクリスマスマーケットを、1~3月はスケートリンク開設。MAP P.30 B-2

ケルントナー通り シュテファン大聖堂から南に延び、国立オペラ座まで続く最も賑やかな歩行者専用の大通り。高級店から人気ブランド店、カフェが並び、いつも街頭ミュージシャンが活躍しています。MAP P.31 C-3

音楽と芸術の都ウィーン宮廷文化が今も華麗に息づく古都

ウィーンの見どころ

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ウィーンにとって2017年は音楽分野の他、様々な分野で記念すべき年

「美しく青きドナウ」作曲から150周年、ウィーン・フィル創設175周年、ウィーン少年合唱団独自のコンサートホールMuTh開設5周年、更にウィーン音楽大学創立200周年、フランツ・シューベルト生誕220周年、そして1998年に急逝した歌手ファルコの生誕60周年に当たります。2017年は王朝の歴史においても、マリア・テレジアの生誕300周年、エリザベート皇妃の生誕180周年です。更にプラーターの大観覧車は120周年を迎え、現存する世界最古の動物園シェーンブルン動物園は開設から265年目になります。

ヒント

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32 3 3 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

音楽の都ウィーンと言えば、誰もがまずクラシック音楽を考えます。毎晩数多くのコンサートが開催され1万人の人々が訪れます。175年前に創設されたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、1498年に創設されたウィーン少年合唱団は、ウィーンが世界に誇る音楽使節です。国立歌劇場、楽友協会、コンツェルトハウスは、ウィーンを訪れる旅行者の必須プログラムとなっています。加えてウィーンには、音楽ファンに魅力的な名所が沢山あります。音楽の家、モーツァルトハウス・ウィーン、ミュージカル劇場などは、その一部に過ぎません。ウィーンはワルツの都でもあります。ヨハン・シュトラウスが作曲した「美しく青きドナウ」の調べに乗せて、人々は既に150年踊り続けています。また、市立公園にある黄金のヨハン・シュトラウス記念碑は、ウィーンで最も人気のある撮影スポットのひとつです。ウィーンには、あらゆる音楽ジャンルのホットスポットがあります。毎年開催される1万

5000のコンサートは、大小様々な規模で全てのジャンルを網羅しています。音楽を聴けるのはコンサートホールだけではありません。コンサートカフェ、舞踏会、ホイリゲ、大晦日のシルヴェスター街道、更にウィーン・シティマラソンでも、マラソンコースに音楽が流れます。個性派の音楽スポットは音楽スナックやクラブ。ギュルテルと呼ばれる環状通りやドナウ運河のプロムナードが人気を集めています。ウィーンの幅広いレパートリーは音楽フェスティバルにも明らかです。ウィーン現代音楽祭、レソナンツ古楽フェスティバル、ドナウインゼル・フェスティバル、ポップ・フェスティバルなどは、その一部に過ぎません。

ウィーン市観光局 Tourist Info ViennaAlbertinaplatz/Maysedergasse, A-1010 ViennaTel.: +43 1 24 555 Fax: +43 1 24 [email protected] www.vienna.info

ウィーンの森 ウィーンの東部を除く北・西・南をぐるりと取り巻くウィーンの森は、市街地の3倍ほどの面積、約1350km²の広さを持っています。アルプス山脈の一部をなしている豊かな丘陵地帯とドナウ河畔の地区ではブドウ畑が広がり、ベートーヴェンやシューベルトゆかりの歴史ある町々が点在しています。グリンツィングは、ウィーン市内ながらホイリゲ(ワインの居酒屋)が何軒も並ぶワインの産地。シュランメル音楽を聴きながら新酒のワインを楽しむのは、ウィーンならではの夜の過ごし方です。ハイリゲンシュタットはベートーヴェンゆかりの地で、記念館や住居、記念像が点在し、田園交響曲の構想を得たベートーヴェンの小路も残っています。プファール広場の住居は、ホイリゲになっています。

アクセス:グリンツィングへはショッテントアから市電38で終点まで約30分。ハイリゲンシュタットのベートーヴェン記念館へは、ショッテントアから市電37を終点で降り、徒歩5分。

ワッハウ渓谷 ドイツの黒い森を起点に、オーストリアや東欧を抜け黒海まで続くドナウ河。全長約2800kmにもおよぶこの大河の一番の見どころは、メルクからクレムスにいたる世界遺産のワッハウ渓谷。その魅力を存分に楽しみたいのなら、ドナウ河クルーズがおすすめです。ウィーン西駅から準急列車で約1時間、パステル色の家並みが美しいメルクの町から出発します。メルク修道院を見学してからクルーズへ。丘陵に広がるぶどう畑や壮麗な古城などが目の前に迫ってきます。川沿いにはリースリングという白ワインの産地ヴァイセンキルヒェンやシュピッツ、中世都市デュルンシュタインなど見どころもたくさん。終点のクレムスの対岸の丘にはゲットヴァイク修道院がそびえています。

運航期間:クルーズ船の運航期間は4月上旬~10月末まで。それ以外の期間は、メルクやデュルンシュタイン、クレムスの町々を列車で訪ねます。ウィーンから観光バスも出ています。

森を歩きワインを味わうウィーンの森、ドナウ河クルーズのハイライトワッハウ渓谷

ウィーンの郊外へ

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ウィーンのリズムにのって豊かな音楽的伝統と現代の豊かな音楽プログラム

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市立公園のヨハン・シュトラウス像(左上)、ウィーン少年合唱団(左下)、ウィーン国立歌劇場(右)

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バラエティとバイタリティに溢れた、オペレッタのジャンルに特化した唯一の劇場オペレッタは、ウィーンならではのものです。ウィーンはオペレッタを上演する本拠地として、ウィーン・フォルクスオーパーを立ち上げました。それにより、ここは世界屈指のオペレッタ劇場となりました。毎夜、一流の歌手達、一流のダンサーとオーケストラが、魔法をかけられたような音楽の妙技を披露します。ヨハン・シュトラウス、フランツ・レハールやエメリッヒ・カールマンが作曲した、例えば、「こうもり」、「メリー・ウィドウ」、

「伯爵夫人マリッツァ」は、世界的に愛されるオペレッタの名作です。ウィーン・フォルクスオーパーでは、ほとんどのオペレッタ公演に英語字幕がつき、プログラムには日本語のあらすじが載せられています。このレパートリー劇場は1,337席あり、毎年9月から6月までのシーズンには、約30の様々な演出による300回の公演が繰り広げられます。

ウィーン・フォルクスオーパーVolksoper WienWähr inger Straße 78, A-1090 WienTel.: +43 1 514 [email protected]

音楽の天才の人生と作品を紹介する殿堂ウィーンで唯一保存されているモーツァルトのアパート、モーツァルトハウス・ウィーン。ここは、モーツァルトが1784年から1787年まで暮らし、どこよりも多くの作品を作曲した場所です。建物は3つの階に渡り、その時代と彼の最も重要な作品に関する資料が総合的に展示され、世界中から訪れるモーツァルトファンを迎えています。ここでの展示は、この偉大な作曲家の創造性が頂点に達したウィーン時代にその焦点を当てています。また、ここでは、さまざまな年齢の方々が楽しく学べ

るための幅広い教育プログラムをご用意しています。例えば、日本語の無料音声ガイド付きの個人ツアーに参加したり、ワークショップで学んだり、または、それらを思い出深いコンサートと組み合わせたりと、ビジターは自分に合った方法で博物館を利用でき、モーツァルトの世界により親しく触れる事がきます。モーツァルトハウス・ウィーンは、毎日午前10時から午後7時まで開館しています。

モーツァルトハウス・ウィーンMozarthaus ViennaDomgasse 5, A-1010 WienTel.: +43 1 512 17 [email protected]

8つの国に接しているオーストリアは、鉄道での入国も多様なルートがあります。ドイツ、イタリア、スイス、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア方面から数多い国際列車が乗り入れています。国内の鉄道網も発達しており移動に大変便利です。国内の主要都市を結ぶオーストリア連邦鉄道ÖBBでは、一枚の乗車券は2日間有効です。片道、往復チケットはそれぞれ一枚のチケットと見なされます。途中下車も可能ですが、その旨を車掌に申し出てください。オーストリアでは高速列車のレイルジェットでも、特急のICでも特急料金はかからず、座席指定も大人は無料で、鉄道旅行は楽しいばかりではなく大変お得な旅行スタイルです。クラスには二等、一等、レイルジェットにはビジネスクラスもあります。

ユーレイルオーストリアパス有効期間内でご自分の旅行日程に合わせて利用日数を決め、ÖBBの全線を自由に乗り降りできる、旅行者には、大変便利な鉄道パスです。有効期間は利用開始日から30日で、その中から3、4、5、または8日を選ぶことができます。大人のパス一枚に対して、11歳までの子供2名まで無料で子供パスが発行できます。この他にユース(12~25歳)とセーバー(26歳以上2~5名のグループ)があります。 特典として、私鉄のウェストバーンにも有効なのは便利です。ユーレイルオーストリアパスは日本の旅行代理店やレイルヨーロッパで販売しています。

オーストリアを列車で周遊する

鉄道の旅

オペレッタ、オペラ、ミュージカル、バレエの殿堂ウィーン・フォルクスオーパー

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ウィーンのモーツァルトの足跡モーツァルトハウス・ウィーン

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r 最新のÖBBオーストリア連邦鉄道の列車なら、オーストリアのすべての地域に簡単にアクセスできます近隣諸国からオーストリアに入る鉄道の旅も、オーストリア国内を巡る鉄道の旅も、今日では大変便利になりました。快適な列車に乗って、アルプスの絶景や緑の渓谷、歴史ある街や美しい村を眺めながら行く旅ほど、楽な手段は他にあるでしょうか? オーストリアのそれぞれの地域には、独自の魅力があり、それぞれÖBBならではの提案があります。例えば、ユネスコ世界遺産のセンメリング鉄道を通って、オーストリア第二の都市グラーツ

への鉄道の旅。車窓を過ぎ去る山々の頂や、城や森林の風景に驚嘆している間に、列車は次の目的地まで、あっという間に皆様をお連れします。 ÖBBならウィーンからグラーツまで、1日16本の列車が運行され、所要時間約2時間30分少々で行けます。ÖBBの列車は、エアコン、大型の荷物棚、エレクトロニクス機器を充電するためのコンセント、および、WLANサービスを完備し、列車の種類によっては車内レストランもあります。

ÖBBオーストリア連邦鉄道ÖBB-Personenverkehr AGAm Hauptbahnhof 2, A-1100 WienTel.: +43 5 17 17 oebb.at

次の観光地まで、リラックスして向かいましょうÖBBオーストリア連邦鉄道

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ザルツブルクは、モーツァルトの故郷、「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台として知られ、世界でもっとも美しい都市のひとつに数えられる古都。ユネスコ世界文化遺産にも登録されています。

ホーエンザルツブルク城 メンヒスベルクの丘の上にたたずむ町のシンボル。中世の城塞建築としては中部ヨーロッパで最も良く保存されたもののひとつです。豪華な装飾で彩られた大司教の居間や黄金の間は圧巻。博物館には昔の武具や工芸品などが展示されており、日本語音声ガイドもあります。テラスからはアルプスの山並みと市街のパノラマが楽しめます。MAP P.37 B-2 www.festung-salzburg.at

ドーム(大聖堂) バロック様式とローマ風の建築様式が見事に調和した華麗な教会。モーツァルトが洗礼を受け、カラヤンの告別式が行われたことでも知られます。約6000本のパイプからなるパイプオルガン、ドーム博物館が見どころ。正面のドーム広場では毎年夏、ザルツブルク音楽祭の恒例演目「イェーダーマン」が上演されます。MAP P.37 B-2 www.domquartier.at

ミラベル庭園 風光明媚なこの庭園では、ザルツァッハ川越しに旧市街のホーエンザルツブルク城とドームや数々の教会の尖塔の麗しい姿を眺望することができます。園内のほぼ中央に位置するミラベル宮殿は、大司教ヴォルフ・ディートリッヒが愛人サロメ・アルトのために建てた別荘です。内部の大理石の間は、室内楽コンサートや結婚式など催し物の会場として使用されています。MAP P.37 A-1

モーツァルトの生家 1756年、旧市街一番の目抜き通りであるゲトライデガッセ通り9番地で、モーツァルトは誕生しました。色鮮やかな黄色い建物は現在、記念館として一般に公開しています。モーツァルトが使用していた子供用バイオリン、コンサート用バイオリン、ピアノ、モーツァルト家の肖像画と書簡などが展示されています。MAP P.37 B-2 www.mozarteum.at

ゲトライデガッセ通り 中世以来のギルドの伝統を受け継ぐさまざまな形をした鉄細工の看板が楽しい、独特の雰囲気を醸し出す小路。

15世紀建築の市庁舎、古い構えの商店や高級ブティックが並ぶショッピングストリートです。MAP P.37 B-1,2

サンクト・ペーター修道院 オーストリア最古のベネディクト派修道院。映画「サウンド・オブ・ミュージック」にも登場しました。修道院内を飾る装飾品の数々は、宗教芸術として価値の高いものばかり。

裏手に広がる墓地には、モーツァルトの姉のナンネルや旧友ミヒャエル・ハイドンが眠っているほか、初期キリスト教徒の祈祷のための洞窟「カタコンベ」は必見です。MAP P.37 B-2 

レジデンツ 歴代大司教の宮殿で、豪華な内部はガイドツアーで見学できます。レジデンツ広場の中央を飾る大噴水は、アルプス以北で最も美しいバロック噴水のひとつとされます。この広場では9月のルペルト祭やクリスマス市など、様々な催し物が行われます。MAP P.37 B-2 www.residenz-salzburg.at

「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台世界でもっとも美しい都市のひとつ

ザルツブルクの見どころ

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ザルツカンマーグート ザルツブルクの東に広がるザルツカンマーグートはオーストリア屈指の景勝地として知られています。1500~2000m級の山々に抱かれた高原内に、大小約50の湖が宝石のようにちりばめられている湖水地帯。この素晴らしい絶景は映画「サウンド・オブ・ミュージック」でも紹介され、多くの人々の心に今も残っています。マーラーやクリムトなどにも愛された地域です。15世紀の古城(現在ホテル)が麗しい姿を水面に映してたたずむ「フッシュル湖」、この地方の中で最も美しいといわれている湖「ヴォルフガング湖」の湖畔の町サンクト・ギルゲンは、リゾート地として人気の高いモーツァルトゆかりの地。対岸のサンクト・ヴォルフガングの町はオペレッタ『白馬亭にて』の舞台となったホテルが残る有名な町でシャーフベルク山へ上る登山鉄道も人気です。サウンド・オブ・ミュージックの結婚式の舞台となった教区教会がある「モント湖」、レハールやブラームスゆかりの温泉地で皇帝の別荘カイザーヴィラ

がある「バード・イッシュル」、ユネスコ世界遺産に登録されている「ハルシュタットとダッハシュタイン地域」などの他、魅力的な湖や町が点在します。アクセス: ザルツブルクからバード・イッシュルまでバスで約1時間30分。ここからサンクト・ヴォルガングまではバスで約30分。ザルツブルクから列車でバード・イッシュルやハルシュタットへ行く場合は、アットナング・プッフハイムで乗り換えます。

ツェル・アム・ゼー/カプルーン ザルツブルクから、南に80kmに位置し、最も美しいアルプスの休暇地の一つと称賛される地域。ツェル・アム・ゼーはキッツシュタインホルン氷河と、シュミッテンヘーエ山などの夢のような山岳風景と、澄み切ったツェル湖に囲まれています。夏でも山頂を白銀に覆われたザルツブルク州の最高峰キッツシュタインホルン(3029m)の雄大な景観が圧巻です。アクセス:ザルツブルクから列車で1時間40分。

グロッケンシュピール 1702年に造られた、レジデンツの反対側にある新レジデンツの鐘楼。音程の異なる35個の鐘がついており、毎日7時、11時、18時に美しく鳴り響きます。MAP P.37 B-2

モーツァルトの住居 モーツァルトが故郷ザルツブルクを捨てウィーンに向かうまでの7年間(1773年~1780年)を過ごした家。現在はモーツァルト一家の博物館になっています。日本語解説あり。MAP P.37 A-2 www.mozarteum.at

ヘルブルン宮殿 旧市街から南へ7キロ、大司教マルクス・シティクスが作らせた宮殿です。見事なバロック庭園には水を利用したさまざまな愉快な仕掛けが施されています。思いがけない所から水が飛び出し、訪問者の歓声が

耐えません。水力で動くミニ人形劇場もあります。4~11月オープン。アクセス:市内からバス25番で20分 www.hellbrunn.at

オーストリア屈指の景勝地ザルツカンマーグート

ザルツブルクの郊外へ

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ホップオン・ホップオフ バス

ザルツブルクに新しい観光バス「ホップオン・ホップオフ バス」が登場。これによって、今までなかなか個人では行きにくかったザルツカンマーグートへ簡単にアクセスできます。ザルツブルク市街はもちろん、「サウンド・オブ・ミュージック」の世界や自然を楽しめます。(オーディオガイドはドイツ語・英語のみ)

ヒント

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4 0 41 オーストリア / ポケットガイド オーストリア / ポケットガイド

ウィーンから南へ列車で約2時間半で行くグラーツは、南欧の雰囲気が漂う文化都市。赤い瓦屋根の並ぶ旧市街は今もなお中世のたたずまいを色濃く残しています。2003年欧州文化首都に指定されたことで、グラーツは他に類をみない独自性のある町に変化しました。古い街並みの中に極めて近代的な建物が溶け込んでおり、旧市街にアクセントを添えています。

シュロスベルク 13世紀の時計塔が立つ小高い山。グラーツはこの山を中心に開けていきました。石段を登ることもできますし、エレベーターを使うことも可能です。頂上には眺めの良いカフェ・レストランもあり、旧市街の大パノラマが楽しめます。MAP P.42 A-1

州立武器庫(ツォイクハウス) 州庁舎隣の武器庫は、トルコの襲撃に対する武器の常備庫として造られました。中世の鎧や鉄砲など1551年以来の武器3万点以上が保管されていており、今でもすぐに使えるほど整備されています。冬期は休館です。MAP P.42 B-1,2

王宮 15世紀に皇帝フリードリッヒ3世が建て、後にその息子マキシミリアン1世が手を加え後期ゴシック様式に改修しました。王宮の主な部分は19世紀に撤去され、現在は州知事官邸となっています。砂岩でできた「二重らせん階段」は非常に有名。MAP P.42 A-2

旧市街と郊外のエッゲンベルク城は世界遺産ウィーンに次ぐオーストリア第2の都市

グラーツの見どころ

グラーツ

アルプスの真ん中を貫くグロースグロックナー・アルプス山岳道路では、雄大な自然の絶景が満喫できます。しかも、モーツァルト生誕の都ザルツブルクから、わずか100キロしか離れていません。世界で最も美しいとされるこのパノラマ・ドライブヴェイは、3000メートル級の峰々に囲まれた、オーストリアの最高峰、標高3,798メートルのグロースグロックナー山の麓を通っています。全長は48キロメートルあり、カーブを曲がるたびに次々と絶景が目に飛び込んで来ます。最高地点は標高2571メートルのエーデルワイス・シュピッツェですが、ぜひとも立ち寄っていただきたいのは、東アルプス最大のパステルツェ氷河の上にそびえ立つフランツ・ヨーゼフスヘーエ展望台です。山岳道路は80年以上前に建設され、ホーエ・タウエルン国立公園の中心部を通っています。ここでは無料で楽しめる近代的な芸術・美術展が9か所に点在し、安全な小道を散策し

ながらパステルツェ氷河も体験することができます。また、ヴィルヘルム・スワロフスキー観測所には、最新の望遠鏡が備えられており、登山者や野生動物を観察できます。山岳道路に沿って建つアルムヒュッテ(山小屋)やレストランに立ち寄るのもいいでしょう。1935年の開通以来、世界中から6,500万人以上の人がグロースグロックナー・アルプス山岳道路を訪れています。山岳道路は、巨大な道路建築物のモニュメントとして、2015年に文化財に指定されました。

グロースグロックナー・アルプス山岳道路Grossglockner Hochalpenstrassen AGRainerstrasse 2, A-5020 SalzburgTel.: +43 662 873673-0Fax: +43 662 [email protected] FO

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グロースグロックナー・アルプス山岳道路アルプスの真ん中を通る最高の峠道世界で最も美しいパノラマ・ドライブウェイ

グロースグロックナーを望む氷河山岳道路(左上)、フッシャー湖(左下)、エーデルワイス山頂から30座の3000m級の峰々を望む(右)

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エッゲンベルク城 市内から市電1番で約15分西に行ったところにあり、この城はヨハン・ウルリッヒ・フォン・エッゲンベルク侯爵が中世の城を基に、1623年に居城として建設しました。豪華な内部はガイドツアーで見学できます(冬期は閉館)。貴重な日本の屏風「豊臣期の大坂」も現在ここに公開されています。また、城内にはアルテギャラリーが入っており500年以上にわたるヨーロッパの絵画、美術品が展示されています(年間オープン)。美しい「惑星の庭園」と公園は四季を通じて市民の憩いの場となっています。

文化とグルメの首都 - オーストリア第二の都市、グラーツを楽しみましょうグラーツは食文化、特に美食の中心地です。ここでは、「黒い黄金」と呼ばれる、シュタイヤマルク州特産のカボチャの種のオイルが有名です。グラーツは、「オーストリアのデリカテッセン」として有名で、数え切れないほどのバー、カフェ、ワインバー、伝統的なシュタイヤマルク・スタイルの居酒屋、高級レストランがあるおかげで、グラーツは「美食の首都」という名声を獲得しました。近隣農家が生産した新鮮でオーガニックな農産物が売られている、

多数のファーマーズマーケットの一つにぜひ立ち寄ってみてください。また、文化好きな人たちには、オーストリアの第一の訪問先としてグラーツがお薦めです。盛んな芸術活動や活気あるストリートライフなど、この街では文化活動がとても活発です。伝統的であり、現代的な影響を受け共存する、この都市のあらゆる分野のカルチャーライフに触れる事ができます。

グラーツ市観光局Graz TourismusHerrengasse 16, A-8010 GrazTel.: +43 316 8075-0Fax: +43 316 [email protected]

州庁舎 北イタリアの宮殿様式で建てられた州庁舎は、支柱の下方に見られる彫刻と豪華な回廊をもつルネッサンス様式の美しい中庭が特徴。MAP P.42 B-1,2

歴史的広場とロマンティックな小路 市庁舎が建つ中央広場、肉屋が多いフランツィスカーナ広場、カフェが立ち並ぶメール広場、伝統と現代文化が融合したフェルバー広場、イベントで賑わうシュロスベルク広場はいずれも明るい雰囲気で、独特で魅力的な文化的風土を生み出しています。ヘレンガッセやシュポールガッセにはシックなブティックが、また、

ザック通りには数多くの美術工芸専門店が並び、ショッピングや市内散策を楽しむことができます。MAP P.42 B-1,2

現代建築モダンな文化施設が多い中でも、クンストハウスはユニークなイベント会場で,現代建築と歴史的な街並みの調和を示す代表的な一例です。また、ムーア川に浮かぶムーアインゼルは半開きの貝殻状のユニークな存在。憩いの場、イベント会場としてグラーツを象徴する建物です。MAP P.42 A-1, B-2

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グラーツオーストリアの秘宝

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オペラ座の公演(9月末から6月中旬)、シュテファニーエンホールのコンサートのほか、グラーツでは一年を通しフェスティバルやイベントが目白押しです。6月のシュティリアルテ音楽祭、ラ・シュトラーダ、シュタイヤマルクの秋・芸術祭、山岳映画祭、数々の広場でのクリスマス市など、宮殿やミュージアム、歴史的建造物の見学の他、数々の楽しみが発見できます。

グラーツのイベントヒント

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インスブルックはハプスブルク帝国の「陰の首都」と呼ばれ、政治、経済、芸術の発展において、ウィーンに次ぐ中心地として栄えました、現在でも中世都市の面影を強く残しています。美しいアルプスの山々が町を取り囲み、自然と文化が融合する魅力的な町です。

黄金の小屋根 ハプスブルク家の黄金時代を築いた皇帝マキシミリアン1世の宮廷用観覧席として建てられた、後期ゴシック様式の張り出しテラス。金箔をはった2657枚の瓦から “黄金の小屋根 "と呼ばれています。欄干は砂岩のレリーフ、壁はフレスコ画が彩り、内部にはマキシミリアン1世の博物館があります。

ホーフブルク王宮 インスブルックの町の中心であるハプスブルク家の2つ目の王宮。ウィーン以外に「ホーフブルク」と名付けられた王宮はここだけです。ジークムント大公が1460年に創建し、その後マリア・テレジアによって改築されました。華麗なシャンデリアや天井画で飾られた大広間は見逃せません。

ノルトケッテンバーン 市の北側に聳え立つノルトケッテ(2300m)へ、ホーフブルク王宮近くの駅からケーブルカーで約30分(フンガーブルク駅でロープウェイに乗り換え)で上ることができます。頂上のノルトパークからはチロルの400以上のアルプスの山々からグロースグロックナーまで眺望できる雄大なパノラマが広がります。前述のベルクイーゼルのジャンプ台と同様、建築家ザハ・ハディドがデザインした4つの駅舎も必見です。

アンブラス城 インスブルック南東の近郊にあり、16世紀にチロルの大公フェルディナントが平民出身の愛妻フィリピーネ・ウェルザーのために建てた白亜の城。美しい自然公園の中にそびえる瀟酒な城館で、大広間や天井画は必見です。併設の博物館ではフェルディナント2世の代から伝わるハプスブルク家の美術品を展示しています。アクセス:サイトシーアバスで訪れましょう

中世の面影をたたえるハプスブルク時代の帝都夏はハイキング、冬はウインタースポーツのメッカ

インスブルックの見どころ

インスブルック

アルプバッハ チロルならではの風物にひたることのできる村アルプバッハ。木造の家々の花一杯のテラスと緑の森はまるで絵葉書のようです。

ゼーフェルト インスブルックにほど近く、三方を山に囲まれた標高1180m、人口2800人のリゾート。駅前から真直ぐにのびる並木道は絵のように美しく牧歌的なメルヘンの世界。

キッツビュール 中世の面影を色濃く残す旧市街地には古風な家々が並び、町中の随所で見られる古い城門もノスタルジックな旅情を誘います。冬はスキーのメッカ。夏はハイキングに最適な地です。北は標高1998mのキッツビューラーホルン、南には標高1650mのハーネンカムがそびえています。

シュトゥーバイタール インスブルックに近い、チロル屈指の美しい谷。この渓谷の中心地はノイシュティフト。谷の最奥シュトゥバイヤーグレッチャーでは1年中氷河スキーを楽しめます。

サンクト・アントン アルペンスキーの発祥地として知られ世界中のスキーヤーを魅了している町。スキー博物館もあります。夏はハイキングや登山のメッカで、お花畑をめぐるハイキングコースがお勧めです。

エッツタール 氷河に深く削られた谷の奥に位置するエッツタール渓谷。セルデンから3056mのガイスラッハ・コーゲルに上ると、チロル州最高峰のヴィルトシュピッツェをはじめ、氷河の山々を眺めることができます。また、最奥地のホーエムート展望台からは、雄大な山岳と大氷河を一望できます。

アルプスの渓谷美と素朴な人々と出会える愛らしいチロルの町々

チロルの美しい渓谷

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イベントカレンダー

1月ニューイヤー・コンサート(各地) 1月1日:ウィーン楽友協会の、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが、世界中にテレビ放映され有名ですが、その他の都市でもニューイヤー・コンサートが開かれ、新年を祝います。三聖王祭 1月6日:各地で3人の王に仮装した少年たちが一晩中家々を訪ね歩き、聖歌を歌い新年を祝います。ペルヒテの祭り(ザルツブルク州) 1月6日:春を象徴する美しいペルヒテと冬を象徴するみにくいペルヒテの仮装行列が町を練り歩きます。

2月オペラ座舞踏会(ウィーン) 国際的な貴賓が集まる祝典。上流階級の令嬢たちが社交界にデビューします。一晩中華麗なワルツや各種ダンスが繰り広げられます。

3月/4月復活祭 ウィーンとザルツブルクではこの時期、イースター音楽祭が開催されます。ウィーンではイースターマーケットが立ち、賑わいます。

5月/6月メーデー 5月1日:ウィーンでは旧市街地を取り巻くリング(環状道路)で労働者たちの行進が行われます。このため午前中はリングを走る市電は運休します。メイポール 全国各地。広場に柱が立てられ、春の到来を祝うとともに、その年の豊作を祈願します。ウィーン芸術週間(ウィーン) 5月中旬~6月中旬:市内各地で演劇、オペラ、コンサートが開かれます。聖霊降臨祭音楽祭 聖霊降臨祭の時期にザルツブルクで開催されるバロック音楽祭。聖体節 国民の祝日となる聖体節にキリスト聖体行列がオーバーエステライヒ州各地で開催。ハルシュタットの湖上行列が有名です。夏至の火祭り チロルやザルツブルク地方の山々で行なわれる山の祭典。

行事・祝祭日、その他インフォメーション

旅に役立つ基 本情 報 7月/8月ザルツブルク音楽祭 7月下旬~ 8月末:市内各地でコンサートやオペラが開催され、世界中から音楽ファンが集います。各地の夏の音楽祭 各地で野外や屋内で夏の音楽祭やフェスティバルが開催されます。聖母昇天祭 8月15日:国民の祝日。チロル州ではブーケをつくり “祝福の板”として各家庭に飾られます。

9月牛祭り アルプスの高原に夏の間、高原に放牧していた牛や羊を、冬に向け村に下ろす村祭り。

11月万聖節 11月1日:国民の祝日。1~2日はお墓参りの日にあてられます。聖マルティン 11月11日:ワイン生産地方でワインの樽を開ける日。クリスマス市 11月下旬~クリスマスイブまで行われます。

12月クランプスの祭り/聖ニコラウス行列 12月5日:バード・ミッテルンドルフやインスブルックなど各地で行なわれる冬の行事。クリスマス 12月24日17時から:オーベルンドルフの “聖しこの夜”礼拝堂でミサ。12月25日:国民の祝日。人々はミサに出かけ、クリスマスを祝います。

詳しい年間のイベントスケジュールはwww.austria.infoで。

商店の営業時間商店は一般的に、月曜日から金曜日は9時~18時(店により8時から)、土曜日は17時まで営業しています。ウィーンのショッピングセンター等は、平日20時まで開いています。業種や季節により営業時間は変更され、特にリゾート地のハイシーズンは時間が延長されることもあります。日曜日や祝祭日は基本的に休業しますが、ミュージアムショップや一部のおみやげ店はオープンしています。その他、ノミの市や冬のクリスマス市でも、オーストリアらしい工芸品や民芸品が数多く見つかりますので、ぜひ訪ねてみてください。

オーストリアの免税システムオーストリアで買う商品には付加価値税(MwSt.)が含まれていますが、外国からの旅行者には、条件をみたす場合に限りその税金を免除する特典があります。通常、商品価格の約13%が払い戻されます。詳細は以下のウェブサイトでご確認ください。http://www.austria.info> 基本情報・アクセス> 役立つ情報> ショッピング・免税手続き

気候と気温、服装地中海の影響により、比較的気候は温暖です。平均気温は青森から北海道に匹敵します。旅のベストシーズンは穏やかな気候が続く5~6月と9~10月。冬は厚手のコート、手袋、マフラーなどの防寒具を忘れずに。1月、2月は都市部でも積雪があります。盛夏7~8月には最高気温がたまに35℃にも達することがありますが、湿度が低いので蒸し暑さは感じません。朝晩は一般的に涼しくしのぎやすいです。

時差日本との時差は-8時間。ただし、3月最終日曜から10月最終土曜まではサマータイムが実施され、時差は-7時間となります。

電圧・電流電圧220V、交流、周波数は50Hz。電気のプラグの形状は2本の丸型のピンが出ているCタイプが一般的です。

通貨と両替通貨はユーロ (€ )。円の現金からの両替は銀行、旅行会社などの両替所、ホテル、郵便局、現金自動両替機などで可能です。

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旅に役立つドイツ語会話集

挨拶

おはようございますGuten Morgen(グーテン モルゲン)

こんにちは、ハロー(朝・昼・晩)Grüß Gott(グリュース ゴット)

こんばんは Guten Abend(グーテン アーベント)

さようならAuf Wiedersehen(アウフ ヴィーダーゼーエン)

どうぞBitte schön(ビッテ シェーン)

ありがとうございますDanke schön(ダンケ シェーン)

あっ、失礼!Entschuldigung!(エントゥシュルディグング)

場所を尋ねる丁寧に聞くために まず、すみませんが…と声をかけましょう

すみませんが…Entschuldigen Sie bitte. (エントゥシュルディゲン ズィ ビッテ)

国立オペラ座はどこですか?Wo ist die Staatsoper?(ヴォー イスト ディ シュターツオーパー)

どこで両替できますか?Wo kann ich Geld wechseln?(ヴォー カン イッヒ ゲルト ヴェクセルン)

駅はどこですか?Wo ist der Bahnhof?(ヴォー イスト デァ バーンホーフ)

コインロッカーはどこですか?Wo gibt es Schließfächer?(ヴォー ギープト エス シュリース フェッヒャー)

郵便局はどこですか?Wo ist das Postamt?(ヴォー イスト ダス ポストアムト)

タクシー乗り場はどこですか?Wo gibt es einen Taxistand?(ヴォー ギープト エス アイン タクシーシュタント)

トイレはどこですか?Wo ist die Toilette?(ヴォー イスト ディ トワレッテ)

左に links(リンクス)

右に rechts(レッヒツ)

便利な言葉と文例

はい Ja(ヤー)

いいえ Nein(ナイン)

わかりませんIch verstehe nicht.(イッヒ フェアシュテーエ ニッヒト)

もう一度言ってくださいNoch einmal bitte.(ノッホ アインマル ビッテ)

ドイツ語はできませんIch kann nicht Deutsch. (イッヒ カン ニッヒト ドイチュ)

英語でお願いしますAuf Englisch bitte.(アウフ エングリッシュ ビッテ)

私は日本から来ましたIch komme aus Japan. (イッヒ コメ アウス ヤーパン)

どちらの方ですか?Woher kommen Sie?(ヴォーヘァ コメン ズィ)

私は花子といいますIch heisse Hanako.(イッヒ ハイセ ハナコ)

あなたのお名前は?Wie heissen Sie?(ヴィー ハイセン ズィ)

それは何ですか?Was ist das?(ヴァス イスト ダス)

ザルツブルクまで、1等(2等) 片道一枚くださいEinmal nach Salzburg einfach erste (zweite) Klasse, bitte.アインマル ナッハ ザルツブルク アインファッハ エアステ (ツヴァイテ) クラッセ、ビッテ

[タクシーの運転手に]○○○○ホテルまで行ってくださいFahren Sie bitte zm Hotel ○○○○ .ファーレン ズィ ビッテ ツーム ホテル ○○○○

お釣りは取っておいてくださいStimmt schon!(シュティムト ショーン)

ショッピング

ちょっと見せてもらっていいですか?Darf ich mal schauen? (ダルフ イッヒ マル シャウエン)

それを見せてくださいZeigen Sie mir bitte das. (ツァィゲン ズィ ミァ ビッテ ダス)

…がほしいのですがIch möchte … haben.(イッヒ メヒテ … ハーベン)

これはいくらですか?Wieviel kostet das?(ヴィーフィール コステット ダス)

レストラン

日替わり定食をお願いしますIch nehme das Tagesmenü.(イッヒ ネーメ ダス ターゲスメニュー)

あちらのあれと同じものにしますGeben Sie mir bitte dasselbe wie das dort.(ゲーベン ズィ ミァ ビッテ ダスゼルベ ヴィー ダス ドルト)

ここのお勧め料理はなんですか?Was ist Ihre Spezialität?(ヴァス イスト イーレ シュペツィアリテート)

乾杯!Zum Wohl!(ツム ヴォール)

ウェーターさん!Herr Ober!(へァ オーバー)

ウェイトレスさん!Fräulein!(フロイライン)

お勘定をお願いしますZahlen bitte! (ツァーレン ビッテ)

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オーストリアへのアクセス

飛行機 オーストリア航空をはじめ様々な航空会社がオーストリアと世界の主要都市を結んでいます。日本からの直行便は現在飛んでいませんので、ルフトハンザドイツ航空、フィンランド航空などを利用し、乗り換えの便利なルートでオーストリアへアクセスしてください。ウィーン国際空港シュヴェッヒャートの他、グラーツ、ザルツブルク、インスブルック、リンツ、クラーゲンフルトの6都市に空港があります。

鉄道 隣接するオーストリア周辺諸国から、ウィーン及びオーストリア各地へ快適な鉄道網が整備されています。また、一部では車ごと列車に乗せて走るカー・トレインの路線もあります。鉄道の旅に関する詳細な情報は、オーストリア政府観光局のホームページをご覧ください。

自動車 オーストリアのアウトバーン及びその他の高速道路網は極めて良く整備されており、気ままな個人旅行には最適の交通手段です。高速道路は有料のため、利用にはビニエット(ステッカー)が必要です。キオスク、ガソリンスタンドでも購入できます。www.vignette.at

ウェブで得られるオーストリア情報

www.austria.infoオーストリア政府観光局の公式サイト。オーストリア全国の多彩なデスティネーションを網羅しており、有益なアドバイスや楽しい話題も豊富です。旅の計画づくりにお役立てください。

www.facebook.com/austria.fanbookオーストリアからの直送の、あるいは日本国内でのオーストリアに関する最も新鮮な情報を発信しています。Facebookを有効にご活用ください。

www.youtube.com/austria冬はスキーや雪山のハイキングなどのアクティビティ、夏は緑の草原を行くハイキングや雄大な山岳登山を紹介する動画が各種リストアップされています。ビデオで躍動するオーストリアのハイライトをご覧ください。

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