平成 年 月 日 チーム falconチームfalcon...

4
1 平成 30 3 28 チーム FALCON 1 一般財団法人河川情報センター 朝日航洋株式会社 アジア航測株式会社 ルーチェサーチ株式会社 本邦初!~ドローンによる水中レーザー測量システムおよび 低価格の陸上レーザー測量システムの現場実証試験報告~ (国土交通省 革新的河川管理プロジェクト「陸上・水中レーザードローン」中間報告) 一般財団法人河川情報センター 2 、朝日航洋株式会社 3 、アジア航測株式会社 4 、ルーチェサーチ株式 会社 5 の4社は、国土交通省の「革新的河川管理プロジェクト(第一弾)」に「チーム FALCON」とし て参画し「陸上・水中レーザードローン」の共同開発を進めています。 現在、ドローンの利活用は測量の分野においても注目を集めています。特に、河川管理の現場など では川底の地形測量に対するニーズが大きく、ヘリコプターに搭載される航空レーザー測深器(ALBAirborne LiDAR Bathymetry)の一層の小型化やドローンの性能向上が進むことで、ドローンによる機動 的な水中測量の実現が待望されているところです。また、陸上部を測量する近赤外レーザー機器は、 小型化が進んでドローンへの搭載が可能となっていますが、機材が高価であることが普及のネックと なっています。 こうした状況を踏まえて、チーム FALCON は、グリーンレーザー測量機器をドローンに搭載した 本邦初の水中レーザー測量システム(以下水中ドローン)、及び低価格の陸上レーザー測量システム (以下陸上ドローン)を開発し、国土交通省の現場をお借りして実証試験に成功しました。 今回のプロジェクトで新たに開発した技術と実証試験の概要について報告します。 1. 現場実証試験における技術開発の概要 グリーンレーザー測量機器を搭載して安定的に飛行できる国内唯一のドローンを開発 国内で初めてとなる、重量の大きいグリーンレーザー計測機器を搭載し、安定的に飛行すること が可能なドローン「SPIDER-LX8」を、ルーチェサーチが開発しました。 また、SPIDER-LX8 をさらに小型化・軽量化して低価格の陸上レーザーの搭載に適したドローン SPIDER-UD8」を開発しました。 1 SPIDER-LX8 の開発内容 開発重視項目 ポイントとなる性能 強度と軽量化の両立 機体の設計・製造でカーボンモノコック形状による剛性の確保(世界初) 部品点数を極力減らすことでメンテナンス性を向上 重心位置の最適化により振動・揺れを抑制(高精度な測量に寄与) 搭載重量のアップ 25kg の飛行搭載重量を実現(従来比 5 倍以上) 安定した飛行性 18 分の飛行時間を実現(重量物搭載時) 風速 20m/s 下での安定測量を実証 高い運用性 普通自動車で折りたたまずに運搬可能(折りたたみ構造は強度面で脆弱) 地上レーザーと水中レーザーを短時間で交換可能(数分程度) 機体情報の2重通信(PC・コントローラー)確保による安全性確保 1 当開発チームの名称は、チームを構成する F (河川情報センター)、 A (朝日航洋、アジア航測)、 L (ルーチェサーチ) の緊密な連携(CONnection)と、俊敏な動きで空を飛ぶハヤブサにドローンのイメージを重ねて「FALCON」としました。 2 本社:東京都千代田区、理事長:布村明彦 3 本社:東京都江東区、代表取締役社長:尾暮敏範 4 本社:東京都新宿区、代表取締役社長:小川紀一朗 5 本社:広島県広島市、代表取締役社長:渡辺豊

Upload: others

Post on 07-Feb-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 平成 年 月 日 チーム FALCONチームFALCON では、今後、他の測量手法との比較分析などを通じて、ドローンによるレーザ ー測量の長所や限界を整理し、ドローンによる測量が最も効果を発揮する場面、及び効果を発揮

1

平成 30年 3月 28日

チーム FALCON1

一般財団法人河川情報センター

朝日航洋株式会社

アジア航測株式会社

ルーチェサーチ株式会社

本邦初!~ドローンによる水中レーザー測量システムおよび

低価格の陸上レーザー測量システムの現場実証試験報告~

(国土交通省 革新的河川管理プロジェクト「陸上・水中レーザードローン」中間報告)

一般財団法人河川情報センター2、朝日航洋株式会社3、アジア航測株式会社4、ルーチェサーチ株式

会社5の4社は、国土交通省の「革新的河川管理プロジェクト(第一弾)」に「チーム FALCON」とし

て参画し「陸上・水中レーザードローン」の共同開発を進めています。

現在、ドローンの利活用は測量の分野においても注目を集めています。特に、河川管理の現場など

では川底の地形測量に対するニーズが大きく、ヘリコプターに搭載される航空レーザー測深器(ALB:

Airborne LiDAR Bathymetry)の一層の小型化やドローンの性能向上が進むことで、ドローンによる機動

的な水中測量の実現が待望されているところです。また、陸上部を測量する近赤外レーザー機器は、

小型化が進んでドローンへの搭載が可能となっていますが、機材が高価であることが普及のネックと

なっています。

こうした状況を踏まえて、チーム FALCON は、グリーンレーザー測量機器をドローンに搭載した

本邦初の水中レーザー測量システム(以下水中ドローン)、及び低価格の陸上レーザー測量システム

(以下陸上ドローン)を開発し、国土交通省の現場をお借りして実証試験に成功しました。

今回のプロジェクトで新たに開発した技術と実証試験の概要について報告します。

1. 現場実証試験における技術開発の概要

グリーンレーザー測量機器を搭載して安定的に飛行できる国内唯一のドローンを開発

国内で初めてとなる、重量の大きいグリーンレーザー計測機器を搭載し、安定的に飛行すること

が可能なドローン「SPIDER-LX8」を、ルーチェサーチが開発しました。

また、SPIDER-LX8 をさらに小型化・軽量化して低価格の陸上レーザーの搭載に適したドローン

「SPIDER-UD8」を開発しました。

表 1 SPIDER-LX8 の開発内容

開発重視項目 ポイントとなる性能

強度と軽量化の両立 ・ 機体の設計・製造でカーボンモノコック形状による剛性の確保(世界初) ・ 部品点数を極力減らすことでメンテナンス性を向上 ・ 重心位置の最適化により振動・揺れを抑制(高精度な測量に寄与)

搭載重量のアップ ・ 25kg の飛行搭載重量を実現(従来比 5 倍以上)

安定した飛行性 ・ 18 分の飛行時間を実現(重量物搭載時) ・ 風速 20m/s 下での安定測量を実証

高い運用性 ・ 普通自動車で折りたたまずに運搬可能(折りたたみ構造は強度面で脆弱) ・ 地上レーザーと水中レーザーを短時間で交換可能(数分程度) ・ 機体情報の2重通信(PC・コントローラー)確保による安全性確保

1 当開発チームの名称は、チームを構成する F(河川情報センター)、A(朝日航洋、アジア航測)、L(ルーチェサーチ)

の緊密な連携(CONnection)と、俊敏な動きで空を飛ぶハヤブサにドローンのイメージを重ねて「FALCON」としました。 2 本社:東京都千代田区、理事長:布村明彦 3 本社:東京都江東区、代表取締役社長:尾暮敏範 4 本社:東京都新宿区、代表取締役社長:小川紀一朗 5 本社:広島県広島市、代表取締役社長:渡辺豊

Page 2: 平成 年 月 日 チーム FALCONチームFALCON では、今後、他の測量手法との比較分析などを通じて、ドローンによるレーザ ー測量の長所や限界を整理し、ドローンによる測量が最も効果を発揮する場面、及び効果を発揮

2

表 2 SPIDER-LX8、SPIDER-UD8 の主な仕様

ドローンによる水中測量データを短時間で処理できるソフトウェア開発

データ解析における効率の改善を図るため、チーム FALCON とレーザー測量機器メーカーのリ

ーグルジャパン株式会社は、多くの長所を有するソフトウェアを共同で開発しました。

・ 低反射のエコー波形処理の平均化による測深性能の向上

・ 水中測量データに多く含まれるノイズを高精度で除去

・ その他(屈折率を考慮した補正、より短い処理時間、データ処理の効率化等)を国内の河川

に適した仕様でチューニング

ドローンによる計測を効率的に実施できる操作手法を開発

ルーチェサーチは、飛行テストをとおして、ドローンによる計測やデータ処理を効率的に実施で

きる操作手法を開発しました。

・ 水中レーザーの特性に合った飛行ルートの設定方法(飛行高度等)

・ 良好な基線解析処理を行うことができるルートの設定手法(旋回方法等)

2. 現場実証試験の概要

(1) 実施概要

水中ドローンおよび陸上ドローンの現場実証試験は、平成 29年 12月に利根川(埼玉県栗橋地先)

で実施しました。

新たに開発した大型ドローン(SPIDER-LX8)の飛行性能テストを 9 月に行った上で、小型化さ

れたグリーンレーザー測量機器(Riegl 社製 BDF-1)を SPIDER-LX8 に搭載し、水中(水底)と陸

上(堤防・河川敷)の横断形状を一体的に測量しました。

また、低価格の陸上ドローン(SPIDER-UD8に Riegl社製 miniVUX-1UAVを搭載)で河川敷や堤

防形状の面的な測量を行いました。

現場実証試験は風速 10m/s 前後の強風下で行われましたが、SPIDER-LX8、SPIDER-UD8 のいず

れも所定の測量成果をあげることができました。

SPIDER-LX8

項目 SPIDER-LX8(水中) SPIDER-UD8(陸上)

ロータ数 8枚(上下4枚) 8枚(上下4枚)

機体重量

(バッテリー含む)19kg 11kg

最大離陸重量 80kg 50kg

外形寸法 1200×1100×700mm 900×900×450mm

対角サイズ 1634mm 1272mm

駆動電圧 50V 50V

プロペラ 30inch 22inch

飛行時間 最大18分 最大14分 SPIDER-UD8

Page 3: 平成 年 月 日 チーム FALCONチームFALCON では、今後、他の測量手法との比較分析などを通じて、ドローンによるレーザ ー測量の長所や限界を整理し、ドローンによる測量が最も効果を発揮する場面、及び効果を発揮

3

表 3 使用機材と計測内容

*1:ルーチェサーチ社製、*2:リーグル社製

*3:低価格版陸上レーザーと比較するため、リーグル社製 VUX-1UAV を搭載し計測した

表 4 センサー仕様

(2) 測量成果

① 水中ドローン

水中ドローンは、飛行高度などの条件を変えて河川を横断方向に複数回飛行し、水底及び陸上部

を連続して測量しました。測量の成果は、ほぼ同時期に実施した有人機 ALB の測量成果と概ね合

致しており、川の最深部(深さ約 2m)まで測量されていることが確認できました。測量の密度は、

水部、陸部ともに約 10cm に 1 点(対地高度:水面から 40m)で、これは横断形状の把握に十分な

密度と考えられます。

② 陸上ドローン

陸上ドローンでは、堤防や高水敷の面的な測量を

行いました。測量範囲の中に設定した検証点におけ

る測量値を、同じ日にトータルステーションで測量

した値と比較したところ、較差の平均値は、高さ方

向で 0.4mm、水平方向で 31.6mmであり、既存の基

準6に照らして陸上ドローンによる測量成果が十分

な精度を有していることが示されました。

測量密度は、平均 108点/m2(対地高度:高水敷から 100m)で、詳細な地形形状を捉えることが

可能です。

図-1に、水中ドローンと陸上ドローンによる測量成果を、一つの画面に合成したものを示します。

6 無人航空機搭載型レーザースキャナーを用いた出来形管理要領(土工編)(案) 平成 29年 3月 国土交通省

表 5 検証点 精度検証結果

平均値 最大値

高さ方向 0.4 30.0 6

水平方向 31.6 33.7 2

*対地高度:高水敷から100m、速度4m/s

 調整用基準点は4点

実測値との較差(mm)検証点数

水中レーザー 陸上レーザー

BDF-1 miniVUX-1

レーザー 最大パルスレート 4kHz 100kHz

測距機能 最高測定飛行高度 50m 100m

ビーム広がり角 20mm@20m 1.6×0.5mrad

レーザ安全クラス クラス2M クラス1

外形 140×179×448 mm 242×110×85 mm

重量 約5.3kg 約1.6kg

慣性機能 ローリング/ピッチング 0.025 deg 0.015 deg

ヘディング 0.080 deg 0.035 deg

速度 0.015 m/s 0.01 m/s

出力レート 200Hz 200Hz

項目

実施時期 ドローン名*1 レーザー機器名*2 計測内容

9月 SPIDER-LX8VUX-1UAV

*3

(近赤外レーザー)

開発ドローンの飛行性

能確認

SPIDER-LX8BDF-1

(グリーンレーザー)

陸上および水中を対象

とした計測

SPIDER-UD8miniVUX-1UAV

(近赤外レーザー) 陸上を対象とした計測

12月

実証実験の様子

水中ドローン(準備)

水中ドローン(計測中)

水中ドローン(着陸時) chak

Page 4: 平成 年 月 日 チーム FALCONチームFALCON では、今後、他の測量手法との比較分析などを通じて、ドローンによるレーザ ー測量の長所や限界を整理し、ドローンによる測量が最も効果を発揮する場面、及び効果を発揮

4

図 1 陸上/水中ドローンによる計測結果(鳥瞰図)

3. 今後の展望

今回の現場実証試験では、水中ドローンおよび低価格の陸上ドローンの、いずれも実際の現場

で一定の測量成果を得ることができました。実証試験において開発された技術は、これからの河

川管理の現場におけるドローンの利活用や普及に寄与することが期待されます。

チーム FALCONでは、今後、他の測量手法との比較分析などを通じて、ドローンによるレーザ

ー測量の長所や限界を整理し、ドローンによる測量が最も効果を発揮する場面、及び効果を発揮

させるための運用手法等に関する検討を進めてまいります。

【お問合せ先】

資料3

陸上ドローン

陸上ドローン

水中ドローン

【拡大図】

流下方向

1

- 26.925.7 -24.5 -23.3 -22.1 -20.9 -19.6 -18.4 -17.2 -16.0 -14.8 -13.6 -12.4 -11.1 -9.9 -8.7 -

凡例 (Y.P. m)

- 26.915.3 -14.7 -14.0 -13.3 -12.7 -12.0 -11.3 -10.7 -10.0 -9.3 -8.7 -

凡例 (Y.P. m)

50m

経営本部 経営企画部(広報)

TEL:044-969-7290 FAX:044-965-2596

E-mail:[email protected]

http://www.ajiko.co.jp

河川情報研究所 研究第3部

TEL:03-3239-8171 FAX:03-3239-8174

E-mail:[email protected]

http://www.river.or.jp

商品化推進室

TEL:049-256-7862 FAX:049-244-4844

E-mail:https://www.aeroasahi.co.jp/contact/spatial/

https://www.aeroasahi.co.jp/

TEL:082-209-0230

E-mail:[email protected]

https://luce-s.net/

ルーチェサーチ株式会社