アジアにおける 国際資源循環型リサイクル事業 拡 …アジアにおける...

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アジアにおける 国際資源循環型リサイクル事業 拡大に向けた調査 報告書 平成31年3月 経済産業省 (委託先) 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社 ����������������������������

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  • アジアにおける

    国際資源循環型リサイクル事業

    拡大に向けた調査

    報告書

    平成31年3月

    経済産業省

    (委託先) 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社

    平成30年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費

  • ■結果概要■

    本事業では、「省エネ型資源循環システムのアジア展開に向けた実証事

    業」における採択案件に対しての、対象国へのリサイクル制度導入・運用

    改善可能性を検討するとともに、制度構築や運用改善を働きかけていくた

    めの政策対話開催の支援業務を行った。 また、今後、我が国リサイクル事業者がリサイクルビジネス海外展開検

    討を行うための海外リサイクルビジネス状況調査として、調査対象国 8か国(中国、インド、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレー

    シア、日本)における廃棄物発生量およびリサイクル関連市場の市場規模

    の推計を行った。加えて、上記の調査対象国 8か国におけるリサイクル関連企業の展開状況について網羅的な調査を行った。

  • 目 次 第1章 調査の目的・概要 ................................................................................................... 1

    1. 調査背景と目的 ................................................................................................... 1 2. 調査概要 .............................................................................................................. 1

    第2章 タイにおける政策対話の実施 ................................................................................ 3 I. タイのリサイクル関連市場・法制度の現状 ............................................................... 3 1. リサイクル関連市場の現状 ................................................................................ 3 2. リサイクル関連法制度の整備状況、運用実態 .................................................. 9 3. 現行法制度の課題と制度構築の方向性 ............................................................ 15

    II. 政策対話の実施 ........................................................................................................ 19 1. 政策対話事前ヒアリング .................................................................................. 19 2. 政策対話 ............................................................................................................ 23

    第3章 リサイクル関連事業のアジア展開検討に必要となる基礎データの整理 ........... 25 I. アジア諸国における廃棄物発生量・市場規模推計 ................................................. 25 1. 推計対象 ............................................................................................................ 25 2. 廃棄物発生量の推計 .......................................................................................... 25 3. 市場規模の推計 ................................................................................................. 86 4. 結果のまとめ ................................................................................................... 119

    II. アジア諸国におけるリサイクル関連企業展開状況調査 ...................................... 123 1. 横断的調査 ....................................................................................................... 123 2. 国別調査 .......................................................................................................... 124 3. 結果のまとめ ................................................................................................... 200

    III. 中国における廃棄物輸入規制による東南アジア諸国への影響 ......................... 206 1. 中国における廃棄物輸入規制の経緯 ............................................................. 206 2. 東南アジア諸国への影響と対応 ..................................................................... 206

  • 1

    第1章 調査の目的・概要

    1.調査背景と目的

    経済産業省産業技術環境局資源循環経済課では、資源・エネルギーの安定供給を促進

    し、資源リサイクルにおける温室効果ガス排出量を削減するため、アジアでの省エネル

    ギー型資源循環制度を実現することを目的とした実証事業として「省エネ型資源循環シ

    ステムのアジア展開に向けた実証事業」を実施している。本事業では、相手国・自治体

    において適切な制度が構築されるよう、我が国・自治体が過去に実施してきた政策ツー

    ルや技術・システムの活用などの環境負荷を低減させてきたノウハウを提供し、政策対

    話や実現可能性調査等を踏まえた、制度、技術・システム一体となった海外実証事業を

    実施するとともに、国内でも、動静脈の連携による資源リサイクルの効率化・高度化を

    図る実証事業や国際規格への対応のサポートを行うことで、我が国資源循環システムの

    円滑なアジア展開を促進している。

    本事業においては、「省エネ型資源循環システムのアジア展開に向けた実証事業」と一

    体的に事業を実施し、採択案件に対しての、対象国へのリサイクル制度導入・運用改善

    可能性を検討するとともに、制度構築や運用改善を働きかけていくための政策対話を行

    った。また、今後、我が国リサイクル事業者がリサイクルビジネス海外展開検討を行う

    ための海外リサイクルビジネス状況調査を行った。

    2.調査概要

    本調査事業における調査項目と本報告書との対応は図表 1 に示すとおりである。本報

    告書は大きく第 2章と第 3章から構成される。

    図表 1 本調査の全体像

    報告書の対応実施項目

    (1)政策対話の実施

    (2)リサイクル関連事業のアジア展開検討に必要となる基礎データの整理

    ①アジア諸国における廃棄物発生量・市場規模

    ②アジア諸国におけるリサイクル関連企業展開状況調査

    ③その他必要な事項調査

    第2章

    第3章

    Ⅰ.タイのリサイクル関連市場・法制度の現状

    Ⅱ.タイにおける政策対話の実施

    Ⅰ.アジア諸国における廃棄物発生量・市場規模

    Ⅱ.アジア諸国におけるリサイクル関連企業展開状況調査

    Ⅲ.中国における廃棄物輸入規制による東南アジア諸国への影響

    タイにおけるリサイクル関連市場・法制度の現状の調査

    政策対話および事前ヒアリングの実施概要

    アジア諸国における廃棄物4品目の発生量および市場規模の推計

    アジア諸国へ展開するリサイクル関連企業の網羅的な調査

    中国における廃棄物輸入規制が東南アジア諸国へ与えた影響についての調査分析

  • 2

    第 2章「 アジア諸国のリサイクル関連ビジネスを取り巻く環境」に係る調査では、文

    献・インターネットを中心とした調査結果を踏まえ、計 2回タイを訪問し、政策対話の実

    施支援を行った。

    図表 2 現地調査訪問国及び日程

    訪問国 実施期間

    第1回現地訪問 タイ 2019年 2月 11日~2月 12日

    第2回現地訪問 タイ 2019年 3月 18日~3月 19日

    第 3章の内容は、調査対象国として、中国、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、

    フィリピン、ベトナム、日本を選定し、これらアジア諸国のリサイクル関連市場規模およ

    びリサイクル関連企業の展開状況調査を実施した。

    図表 3 調査対象国

  • 3

    第2章 タイにおける政策対話の実施

    I. タイのリサイクル関連市場・法制度の現状

    1.リサイクル関連市場の現状

    1.1 電気電子機器廃棄物(WEEE、e-waste) 1.1.1 全体フロー

    タイにおける WEEE のフロー図を以下に示す。産業由来の WEEE については、多

    くが工場法に定められる工場にて処理され、比較的適正な処理・リサイクルが進んで

    いると考えられる。

    一方で、家庭由来の WEEEについては、多くがインフォーマルセクターに流れてい

    る状況である。家庭によって排出される WEEEは、廃棄物を取扱う業者に持ち込まれ

    売却される場合もあれば、一般廃棄物と同様に廃棄され、最終的にいわゆるスカベン

    ジャーによって回収される場合もある。廃棄物取扱業者によって買い取られた WEEE

    は、高値で買い取られる事業者に販売されるため、より価格競争力のある事業者(工

    場法上の認定事業者にあたらないインフォーマルセクター)に回収されることが一般

    的である。

    図表 4 タイにおける WEEEフロー

    (出所)各種資料より作成

    適正処理 リサイクル

    製品のリユース

    処理

    リサイクル工場

    廃棄(Dump)

    使用中&

    退蔵

    有害物質

    中古品

    製品販売

    有害物質

    低価値のWEEE

    フォーマルセクターへ

    再利用製品

    産業発生WEEE

    リサイクル可能物

    WEEEとして売却

    リサイクル可能物

    高価値のWEEE

    廃棄物取扱業者

    インフォーマル・セクターへ

  • 4

    1.1.2 リサイクルに係る段階別の状況(発生~再資源化まで)

    (1)発生段階

    タイにおける電気電子機器の使用済廃棄台数の推計結果を以下に示す。

    2030年における廃棄台数は、エアコンが約 5,200千台、テレビが約 2,700千台、冷

    蔵庫が約 1,300千台、洗濯機が約 1,300千台、デスクトップ PCが約 1,400千台、ノ

    ート PCが約 2,700千台、携帯電話が約 31,000千台と推計された。2050年における

    廃棄台数は、エアコンが約 15,000千台、テレビが約 3,100千台、冷蔵庫が約 1,900千

    台、洗濯機が約 2,400千台、デスクトップ PCが約 1,700千台、ノート PCが約 3,400

    千台と推計された。

    図表 5 使用済み家電・PC発生量の推計結果(タイ)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    (2)回収段階

    1)家庭由来品

    家庭由来の WEEEについて、必ずしも工場法上の認定事業者のもとへ集荷されて

    いない。一般市民が認定事業者であるか否かを問わずリサイクル業者に持ち込み売

    却する場合もあれば、放置されている WEEEを非正規事業者(いわゆるスカベンジ

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    2017

    2018

    2019

    2020

    2021

    2022

    2023

    2024

    2025

    2026

    2027

    2028

    2029

    2030

    2031

    2032

    2033

    2034

    2035

    2036

    2037

    2038

    2039

    2040

    2041

    2042

    2043

    2044

    2045

    2046

    2047

    2048

    2049

    2050

    廃棄

    台数

    (千

    台)

    タイ

    エアコン テレビ 冷蔵庫 洗濯機 デスクトップPC ノートPC

  • 5

    ャー)が回収することもあると指摘されている1。家庭由来の WEEEは工場法上の認

    定事業者にあたらない事業者(いわゆるインフォーマルセクター)に回収されること

    が一般的のようである。WEEE が都市ごみに混入することもあるが、適正処理が行

    われていないのが現状のようである。また、宗教上の理由から、WEEEを慈善団体へ

    と寄付する家庭も存在する2。

    ただし、一部の認定事業者には、家庭由来の WEEEを回収、処理することに積極

    的な事業者も存在し、その場合には適正な処理が行われているものと考えられる3。

    2)産業由来品

    産業由来の WEEE(工場発生分を含む)は、工場法上の認定事業者によって、適正

    に回収、保管、処理、処分されているものと考えられる4。

    (3)処理・処理後段階

    1)家庭由来品

    家庭由来の WEEEで認定事業者以外の事業者(いわゆるインフォーマルセクター)

    によって回収されたものの多くは、そのまま当該事業者に処理されるか、認定事業者

    以外の処理事業者に売却されているものと考えられる。例えば、ジャンクショップ

    (廃品回収・修理業者)に回収された WEEEからは、手解体によって鉄、同、アル

    ミ、基板、プラスチック類が回収される 2。

    認定事業者以外の処理事業者は不適正な処理を行い、作業者の健康被害の問題や

    水質・土壌汚染などの環境問題を引き起こしていることも指摘されている 2。一方、

    一部の認定事業者によって回収された WEEEは認定事業者によって適正処理されて

    いると考えられる。

    2)産業由来品

    産業由来の WEEEは、工場法上の 101、105または 106の許可5を保有する事業者

    に引き渡され、処理されている。105の許認可を有する施設は 1,459箇所、106許認

    1 NEDO「タイ王国バンコクにおける電気・電子機器廃棄物の国際循環リサイクルシステム実証事業」 2 経済産業省「アジアにおけるリサイクル法制度及びリサイクルビジネスの現状等に関する調査」 3 経済産業省「アジアにおけるリサイクル法制度及びリサイクルビジネスの現状等に関する調査」によれば、「Wongpanit(ウォンパニ)に見られるライセンス保有事業者が回収しているケースもある。」とのことである。

    4 NEDO「タイ王国バンコクにおける電気・電子機器廃棄物の国際循環リサイクルシステム実証事業」によれば、「企業から排出される WEEEとしては、生産工場にて発生する不良品、不良品、不良在庫、工程ロス品等があるが、各企業の運用基準に基づき、リサイクル事業者へ販売、若しくは処理委託さ

    れている」とのことである。 5 101、105、106は工場の分類を示すものであり、101(焼却・排水処理)、105(廃棄物の分別・埋立処分施設)、106(再利用・リサイクル施設)となっている。

  • 6

    可を有する施設は 796箇所である。(2018年 11月時点)主な事業者については、第

    3章にて整理する。

    認定事業者によって回収された WEEEは解体(手解体等)・選別工程を経て、金、

    銀、銅、アルミ、ステンレス、鉄、プラスチック等が回収され、売却されほか、(手

    解体後)基板の状態で売却される場合もある 1。また、残渣もセメント会社に燃料と

    して販売されるケースがある 1。一部の資源は、海外へ輸出されているものとみられ

    る。

    1.2 使用済自動車(ELV) 1.2.1 全体フロー

    既存調査6によって推計されたタイにおける ELVのフロー図を以下に示す。タイに

    おいては、自動車は修理・部品交換が繰り返され、数十年間使用されることが多い。

    そのため最終的に動かなくなった自動車(ELV)は、中古部品販売業者、整備・板金

    業者(修理業者)、スクラップ業者、中古車部品販売業者等に回収されることが多いと

    見られる。

    同調査によるとタイでは年間約 80,000台程度の ELVが発生すると推計されており7、そのうち輸出が約 30,000台、残りの 50,000台がタイ国内で処理されているとみら

    れる。

    図表 6 タイにおける ELVフロー

    (出所)NEDO(2018)「アジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業海外実証「タイ王国で発生する使用済自動車の効率的かつ適正な資源循環システム構築(実現可能性調査)」」

    6 NEDO(2018)「アジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業海外実証「タイ王国で発生する ELVの効率的かつ適正な資源循環システム構築(実現可能性調査)」」

    7 後段の ELV発生量推計(2017年において約 40万台)と乖離があるが、これは使用年数や発生確率に関する分布等の前提の違いに起因するものと考えられる。

  • 7

    1.2.2 リサイクルに係る段階別の状況(発生~再資源化まで)

    (1)発生段階

    タイにおける ELVの発生量の推計結果を以下に示す。

    2030年における発生量は約 800千台と推計され、2050年における発生量は約 1,900

    千台と推計された。

    図表 7 ELV発生量の推計結果(タイ)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    (2)回収段階

    タイでは、自動車は補修や部品交換を繰り返して、数十年間使用されることが多

    い。そのため、ELVは整備・板金業者(修理業者)、中古車部品販売業に回収される

    ことが多いと考えられる。一部、保険会社を介した流通も存在する模様である。また、

    ELV の処理、リサイクルに関する法制度が存在しないため、ELV を回収する専門の

    事業者は存在せず、必ずしも適正処理が実施されるような処理事業者へと引き渡さ

    れているとは限らない。新車の下取り率が 10%、代替率が 12%程度との報告もある1。

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    1,600

    1,800

    2,000

    2017

    2018

    2019

    2020

    2021

    2022

    2023

    2024

    2025

    2026

    2027

    2028

    2029

    2030

    2031

    2032

    2033

    2034

    2035

    2036

    2037

    2038

    2039

    2040

    2041

    2042

    2043

    2044

    2045

    2046

    2047

    2048

    2049

    2050

    廃棄

    台数

    (千

    台)

    タイ

    Thailand

  • 8

    (3)処理・処理後段階

    ELVの処理は、整備・板金業者、中古部品販売業者、スクラップ業者等によって行

    われている 1。これらの業者による処理は、手解体で非効率的であること、フロンの

    回収を行っていないこと、廃油や廃液が垂れ流しとなっていること等の労働問題や

    環境問題を引き起こしているとの指摘がある。

    ELVを解体し、中古部品、金属スクラップ(鉄、アルミ等)、プラスチック、廃油

    等が回収され、売却可能なものは売却されている模様である 2。一方、触媒、バッテ

    リー等は専門の回収業者によって回収されているようである。タイにおける ELVリ

    サイクルの実態としては、資源回収が十分にされていないといった指摘がされてい

    る 1。

  • 9

    2.リサイクル関連法制度の整備状況、運用実態

    2.1 タイのリサイクル法制度概観

    図表 8 タイにおける廃棄物関連の法令 法令名 主な所管省庁 概要 工場法(及び

    それに基づく

    法令)

    工業省:MOI (工場局:DIW)

    工場操業に関する規定を定める法律であ

    り、廃棄物(WEEEを含む)の処理のための許可(工場を操業するための許可)について

    定めているほか、有害廃棄物リストなどを

    規定する。 有害物質法

    (及びそれに

    基づく法令)

    工業省:MOI (工場局:DIW)

    危険物質の定義や製造、輸入、輸出、所有に

    は許可等について規定する。

    国家環境保全

    推進法(及び

    それに基づく

    法令)

    天然資源環境省:MONRE (公害管理局:

    PCD)

    環境関連全般についての法律であり、産業

    廃棄物等に関連する環境計画や環境基準、

    モニタリング、環境影響評価等に関して規

    定する。

    公衆衛生法

    (及びそれに

    基づく法令)

    保健省:MOPH 地方行政(内務省)

    公衆衛生法は市中発生の廃棄物に関して、

    廃棄物の定義や許可などを規定している。

    WEEE関連法(案)

    天然資源環境省:MONRE (公害管理局:

    PCD)

    WEEE 管理戦略に基づき検討されている法令であり、家庭由来の WEEEの回収、処理等に関して規定される予定である。

    (出所)各種資料を基に三菱 UFJリサーチ&コンサルティング作成

    2.2 工場法および有害物質法とそれに基づく法令の整備状況/運用実態 工場法は、工場操業を規制する法律であり、廃棄物(WEEEを含む)の処理のため

    の許可について定めている。廃棄物の焼却を実施する工場は(工場コード)101 に分

    類され、該当する許可を取得する必要がある。廃棄物の選別、埋立てのいずれか、ま

    たは両方を実施する工場は(工場コード)105 に分類され、該当する許可を取得する

    必要があるとしている。また、産業廃棄物を加工して再生産を行う工場は(工場コー

    ド)106に分類され、該当する許可を取得する必要がある。

    なお、工場法が対象とする事業者(「工場」の定義に当てはまる事業者)は、「製造、

    生産、組立、充填、修理、メンテナンス、試験、改良、改造、輸送、保全、または破

    壊のために合計で五馬力以上と同等の力を持つ機械を使用する、あるいは機械の使用

    とは関係なく労働者を七人以上使用する建物、場所、または輸送機械を意味する8。」

    とされており、これを満たさない事業者は、同法の管轄外となる。

    また、工場法に基づく産業廃棄物の廃棄に関する告示では、「廃棄物」の定義は「原

    8 日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコクセンター編「工場法」

  • 10

    材料由来の廃棄物、製造工程由来の廃棄物、オフスペック品および使用できない物質

    または有害な成分や有害な性質を持つ廃水を含む産業活動から発生する使用できな

    い物質またはあらゆるタイプの廃棄物9」とされており、同法の主な対象は産業由来の

    廃棄物となっている。同法の対象となる廃棄物リストも同法令に掲載されており、有

    害廃棄物も同法令にて規定されている。WEEE や ELV 及びそれらから回収される廃

    部品等も対象に含まれるものの、同法令の対象が産業由来の廃棄物に限定されている

    ため、家庭由来の WEEEや ELV 及びそれらから回収される廃部品等は対象外と考え

    られる。

    有害物質法は、危険物質の製造、輸入、輸出、所有には許可が必要である旨を規定

    している(危険物質製造許可書、危険物質輸入許可書、危険物質輸出許可書、危険物

    質所有許可書について規定)。有害物質に関する基準を設けており、WEEEや ELV及

    びその部品等も有害物質にあたるため、WEEE や ELV の取扱いに際しては同法に従

    う必要があるものと考えられる。

    9 Notification of Ministry of Industry Re: Industrial Waste Disposal B.E. 2548 (2005)をもとに MURC和訳

  • 11

    図表 9 end-of-life vehicles from different means of transport (including off-road

    machinery) and wastes from dismantling of end-of-life vehicles and vehicle maintenance

    (except 13, 14, 16 06 and 16 08)に含まれる廃棄物 コード HA/HM 名称 16 01 03 End-of-life tyres 16 01 04 HM End-of-life vehicles 16 01 06 End-of-life vehicles, containing neither liquids nor other

    hazardous components 16 01 07 HA Oil filters 16 01 08 HM Components containing mercury 16 01 09 HA Components containing PCBs 16 01 10 HA Explosive components (for example air bags) 16 01 11 HM Brake pads containing asbestos 16 01 12 Brake pads other than those mentioned in 16 01 11 16 01 13 HA Brake fluids 16 01 14 HM Antifreeze fluids containing dangerous substances 16 01 15 Antifreeze fluids other than those mentioned in 16 01 14 16 01 16 Tanks for liquefied gas 16 01 17 Ferrous metal 16 01 18 Non-ferrous metal 16 01 19 Plastic 16 01 20 Glass 16 01 21 HM Hazardous components other than those mentioned in 16 01

    07 to 16 01 11 and 16 01 13 and 16 01 14 16 01 22 Components not otherwise specified 16 01 80 HA Radiator coolant fluids containing dangerous substances such

    as glycol 16 01 81 Radiator coolant fluids other than those mentioned in 16 01

    80 16 01 99 Wastes not otherwise specified (注)HA(Hazardous waste – Absolute entry)に含まれる廃棄物はすべて有害廃棄物とみなされる

    が、HM(Hazardous waste – Mirror entry)に含まれる廃棄物は、成分情報や危険物質の濃縮度等によって有害廃棄物とみなされるか否かが変わる可能性のある廃棄物である。

    (出所)Notification of Ministry of Industry Re: Industrial Waste Disposal B.E. 2548 (2005)を基に三菱 UFJリサーチ&コンサルティング作成

  • 12

    図表 10 Wastes from electrical and electronic equipmentに含まれる廃棄物 コード HA/HM 名称 160209 HA Transformers and capacitors containing PCBs 160210 HA Discarded equipment containing or contaminated by PCBs

    other than those mentioned in 16 02 09 160211 HM Discarded equipment containing chlorofluorocarbons, HCFC,

    HFC 160212 HM Discarded equipment containing free asbestos 160213 HM Discarded equipment containing hazardous components

    (Hazardous components from electrical and electronic equipment may include accumulators and batteries mentioned in 16 06 and marked as hazardous; mercury switches, glass from cathode ray tubes and other activated glass, etc.) other than those mentioned in 16 02 09 to 16 02 12

    160214 Discarded equipment other than those mentioned in 16 02 09 to 16 02 13

    160215 HA Hazardous components removed from discarded equipment 160216 Components removed from discarded equipment other than

    those mentioned in 16 02 15 (出所)Notification of Ministry of Industry Re: Industrial Waste Disposal B.E. 2548 (2005)を基に三

    菱 UFJリサーチ&コンサルティング作成

    工場法及び有害物質法を運用している機関は DIWである。DIWは、事業者から提

    出される書類等の審査や管理を行うほか、事業者に対して監査を実施し、法令遵守を

    確保することになっている。一方で、人材不足や仕組みが不十分であることから、監

    査が十分に行われていないことも指摘されている。また、上述の「工場」にあたらな

    い小規模事業者は、同法の管轄外とされるため、「工場」にあたらない事業者による不

    適正処理を管理できていないのが現状となっている。

    2.3 国家環境保全推進法とそれに基づく法令の整備状況/運用実態 国家環境保全推進法は、環境関連全般についての法律であり、産業廃棄物等に関連

    する環境計画や環境基準、モニタリング、環境影響評価等に関して規定している。同

    法では、「廃棄物」を「汚染源より放棄された、またはもたらされた固体、液体、また

    は塵芥、汚物、排水、汚染空気、汚染物質またはその他の危険物、並びにそれらの残

    渣、沈殿物及び残留物をいう 10。」としている。

    有害物質法で基準が定められていない有害な廃棄物の取扱いについて、国家環境保

    全推進法で許可の取得が必要であることを定めている。具体的には、「特に規制する法

    律がない場合、大臣は、公害規制委員会の助言の下に、生産または工業、農業、公衆

    衛生及びその他の生産工程において化学物質または危険物の使用から発生する危険

    廃棄物の種類と種別を省令にて規定し、規制する権限を有する。この場合、上記危険

    廃棄物の保管、収集、保安、輸送移動、輸出入、及び管理、浄化及び処理の原則、基

  • 13

    準及び方法を、関連技術理論に従い適切かつ正しい方法に基づき規定すること10。」と

    している。

    国家環境保全推進法を運用する主な機関は PCD である。また、「第 78 条に基づく

    汚染源に関し、法的にその汚染源を監督管理する権限を持つ係官に対し、許可証の停

    止、使用禁止または取消命令、あるいは一切の使用または利用停止命令を出すよう提

    言する 10。」とあり、PCD から DIW へと提言を行うことになっているものとみられ

    る。PCDとDIWとの間での連携がどれほど円滑に実施されているかは不明確であり、

    この連携システムの構築が課題になるものと考えられる。

    2.4 公衆衛生法とそれに基づく法令の整備状況/運用実態 公衆衛生法は市中発生の廃棄物に関して、廃棄物の定義や許可などを規定している。

    同法では、「固形廃棄物」が「廃紙、廃衣類、廃食品、廃製品、ビニル袋、食品容器、

    煤、動物の糞尿または死体、その他道路、市場、農場または他の場所から清掃された

    ものを含む11。」となっている。

    また、同法では市中発生の廃棄物の収集・運搬・処理・処分に従事する民間事業者

    は許可を取得しなければならないと定められている。許可を発行する主体は地方政府

    とされており、その他許可の更新等についても地方政府が対応することとなっている。

    公衆衛生法を運用する主な主体は、公衆衛生省及び地方政府となっている。上述の

    通り許可発行の権限が与えられているなど、地方政府の役割も大きくなっている。市

    中発生の e-waste については、廃棄物と中古品を判別する基準が明確でないため、e-

    waste を必ずしも廃棄物と捉えることができないという運用上の問題がある(なお、

    工場法における 106リサイクル工場では、基本的に産業由来の廃棄物のみが対象とな

    ると解釈できる)。そのため、中古品回収業者などが、中古品という扱いで e-wasteの

    処理を行っているような問題も指摘されている。

    2.5 輸出入に関する法制度の整備状況/運用実態 有害廃棄物の輸出入に関する規制は、有害物質法及びそれに基づく法令によって定

    められている。e-wasteも有害廃棄物に含まれているため、同法に基づき、輸入につい

    ては許可が必要となり、DIW及び PCD によって厳格に管理されている。一方で、有

    害廃棄物の輸出については、許可の取得も容易であり、比較的実施しやすい12。

    2017年に発表された中国の輸入規制を受けて、タイへ廃棄物が大量に流入すること

    になり、タイでも廃棄物の輸入規制を厳格化する動きがでている。従来の基準に従っ

    10 JETRO「1992年国家環境保全推進法 和訳」 11 公衆衛生法より 12 日本貿易振興機構アジア経済研究所『アジア各国における産業廃棄物・リサイクル政策情報提供事業報告書』経済産業省委託、2007 年

  • 14

    て、違法な輸入によって e-waste を処理する工場への取り締まりが強化されている。

    まず、廃プラスチックや e-wasteについて、2018年 7月に一時禁輸措置がとられた。

    2018年には新たな輸入制限措置が発表され、廃プラスチックについては一部の港で廃

    プラ積載コンテナの荷揚げを禁止、2021年までに全面禁輸の方針となっている13。e-

    wasteも全面禁輸の方向性となっている14。

    また、ELV関連では、中古車が「輸入許可取得必要品目」に含まれており、輸入規

    制の対象となっている。中古車の輸入許可取得のためには、新車と同様、規格基準へ

    の適合(車両重量 3,500kg以下)が求められる15。 2017 年の中国の輸入規制以降、タイ政府はリサイクル工場での厳格な立ち入り検

    査、違法事業者の取り締まりを行っている。e-wasteを違法に輸入し処理をしていたた

    めに許可をはく奪されているケースもみられ、有害廃棄物の検査、取り締まりは上述

    の法令に基づいて実施されていたものの、厳格な管理がされてこなかったものとみら

    れる。

    2.6 WEEE法案の策定状況 2015 年 3 月に内閣で承認された WEEE 管理戦略(National WEEE Management

    Strategy (Year2014-2021))に基づき、WEEE法案及び関連制度の構築が進められてい

    る。WEEE法案は、都市廃棄物中の使用済み電気電子機器の回収(実際に管理を行う

    のは内務省とその傘下の地方行政)、運搬(実際に管理を行うのは運輸省)、回収され

    た使用済み電気電子機器の中間処理及び再資源化(実際に管理を行うのは工業省とそ

    の傘下の DIW)における関係各者の役割や必要な許認可を定めたものとなる。同法案においては、コンピューター(PC)、電話機・コードレス電話機(携帯電話・スマー

    トフォン)、空調機、テレビ、冷蔵庫、省令で定める電気・電子機器廃棄物が対象品目

    としてあげられている 1。

    同法案におけるシステム上の各省庁役割分担について、回収から輸送、また処理に

    至るまでのすべてに関する法令制定の法案作成を PCD が行い、(PCD が作成した)法に則って回収や輸送等は内務省(自治体の監督省庁)、処理は DIWの管轄となる見込みである。なお、あくまで市中から発生する WEEE が対象であり、工場から発生するオフスペック品等は WEEE 法案の対象外である(あくまで産業廃棄物の扱い)16。 また、同法案では EPR の考え方が導入されているため、製造事業者(及び輸入事

    業者)には、リサイクルの管理・費用負担の義務が規定される可能性があり、リサイ

    13 JETRO ウェブサイト https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/65eed0d39714520c.html 14 国際環境経済研究所ウェブサイト http://ieei.or.jp/2018/10/expl181010/ 15 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-101001.html 16 現地ヒアリングより

  • 15

    クル料金の負担、リサイクルスキームの構築等を実施することが求められるものと見

    込まれる 1。リサイクル料金の費用負担をユーザーに転嫁できる可能性などが現在議

    論されているようである17。

    3.現行法制度の課題と制度構築の方向性

    3.1 現行のリサイクル関連法制度上の課題 現行のリサイクル関連法制度上の課題について、政府及び自治体が抱える課題と進

    出中の日本企業が抱える課題を以下の通り整理した。

    ELV、WEEEのリサイクルに共通する課題として、現状は適正処理を促すための法

    制度が存在しないことから、不適正な処理を行う業者での処理が中心となっているこ

    とが挙げられる。これらの処理業者は、処理に係る費用が小さく高い競争力を有する

    ことから、適正な処理を行う日本企業としては、回収面で劣後してしまうことが課題

    となっている。

    図表 11 現行のリサイクル関連法制度上の課題

    (出所)三菱 UFJリサーチ&コンサルティング作成

    17 現地ヒアリングより

    政府及び自治体が抱える課題 進出中の日本企業が抱える課題

    収集・運搬・使用済み製品の定義・判断基準が明確でないため、法律上の扱いが不明確

    ・価格競争において不利な立場となる日本企業は集荷力で優位に立つことが困難・家庭由来のWEEEやELVを回収する枠組みが存在せず、日本企業独自での家庭由来のWEEEやELVの回収は困難

    処理・再資源化

    ・工場の定義を満たさない事業者に規制が及ばない・産業有害廃棄物に関する許可制度はあるが、WEEEやELVに特化した許可制度が存在しない・家庭由来のWEEEやELVの処理・再資源化を行う工場に対する許可・管理制度が明確になっていない(家庭由来WEEEについては、WEEE法案にて整備中)・監査等を厳格に実施することが困難

    ・適正に処理できる企業とそうでない企業が明確になっていない。そのような状況においては、高コストで適正処理を行う日本企業は、価格競争において不利となる

    全般

    ・DIW(工場局)、PCD(公害管理局)、MOPH(公衆衛生省)の役割分担(工場法、有害物質法、国家環境保全推進法、公衆衛生法等の法令間の整合性)

  • 16

    3.2 社会情勢の影響を受けて発生するタイ独自の問題(中国の影響など) 中国の輸入規制はタイに 2つの側面から影響を与えている。1つ目は、中国に輸出

    できなくなった廃棄物がタイに大量に流入することである。2018年 6月には、第一期

    における廃棄物の輸入量が 10 万トンを超えていたことが報告されている(前年は 7

    万トン)。これを受けてタイでは輸入禁止に向けた取組を進めている。

    2つ目は、中国国内で廃プラスチックや第 7類スクラップ(非鉄金属を含有してい

    る廃設備等(主に廃モーター・廃電線・ケーブル等含む))を輸入し、処理を行ってき

    た事業者がタイ国内へと進出してくる可能性である。中国国内では 2017 年末に家庭

    由来の廃プラスチック等、2018年に第 7類スクラップ等の輸入を禁止しており、中国

    国内のいくつかの事業者は集荷が困難になり、事業継続のために何らかの対応に迫ら

    れている。以上のような事業者の一部は、東南アジア等へと進出し、現地で廃プラス

    チックやスクラップ(WEEE含む)を処理、原料化したものを輸入するビジネスモデ

    ルを展開することも予想される。これによって価格競争力の高い、中国資本の事業者

    がタイの市場へと参入することになる。

    以上のような動きが進めば、タイ国内でこれまでリサイクル事業を実施してきた事

    業者の集荷が困難になることも予想される。中国の輸入規制による市場の変化も踏ま

    えて、適正なリサイクルを実施する事業者が競争力を持ち、適正な資源循環を確保す

    る制度構築をしていくことが課題になるものと見込まれる。

    3.3 制度構築の方向性 3.3.1 WEEE

    現行の法制度においては、廃棄物処理・リサイクルや有害物質の取扱いに関する許

    可制度(工場法、公衆衛生法、有害物質法)は存在するものの、WEEEに特化した許

    可制度が存在しない。特に、産業から発生する WEEEについては概ね管理されている

    が、家庭から発生する WEEEについては回収システムが存在しない状況である。また、

    WEEEを適正処理できる事業者とできない事業者を明確に区別できていないため、違

    法業者以外においても、WEEEの適正処理を確保することが難しいことが課題である。

    これらの課題を克服するため、今後の制度構築の方向性として、以下に示す4つの

    ステップを踏む必要があると考えられる。このうち STEP1.については WEEE法案が

    成立した場合には回収ルートが確立し解決するとみられることから、今後は STEP2.

    以降について詳細をより具体化し検討していく必要があると考えられる。

  • 17

    図表 12 WEEEの適正なリサイクルに向けた課題と制度構築の方向性 課題 制度構築の方向性 ①家庭から出る WEEE を回収する仕組みがない

    STEP1. 消費者のための回収システム構築

    ②WEEE を適正処理できる業者が不明のため、誰に引き

    渡してよいか分からない

    STEP2. 認定工場の要件を設定し、認定業者以外への引渡しを禁止

    ③適正に処理できる事業者

    が少ない STEP3. 認定事業者が増加するための仕組み構築(インセ

    ンティブ、リサイクル料金分配、義務付け等) ④WEEE のフローをモニタリングする仕組みがない

    STEP4. マニフェスト制度により法律を遵守しないプレイヤーを排除

    図表 13 WEEEの適正なリサイクルに向けた制度構築のステップ

    3.3.2 ELV

    上述の通りタイにおいては、そもそも ELV の概念が浸透しておらず、ELV リサイ

    クルに係る法制度の制定について具体的な検討はなされていない状況である。一方で、

    タイにおける自動車販売台数は過去急激に増加してきたことから、今後 ELV の発生

    台数は急増することが予測され、それに備えた法制度の整備が求められる。

    現状の制度上の課題として、市場原理のもと高値で引き取られる不適正処理業者に

    ELV が集まっていることや、ユーザーから ELV を回収する仕組みがないことが挙げ

    られる。さらに、タイにおいては自動車の抹消登録制度は存在するものの、その認知

  • 18

    度が高くなく、ELVに関するデータの管理が徹底できていない状況である。

    これらの課題を克服するため、今後の制度構築の方向性として、以下に示す4つの

    ステップを踏む必要があると考えられる。まずは STEP1.として解体ライセンスの要

    件を設定し、適切に自動車解体を実施できる事業者を見分けるための仕組みを構築し

    ていく必要がある。

    図表 14 ELVの適正なリサイクルに向けた課題と制度構築の方向性 課題 制度構築の方向性 ①ELV を適正に解体できる業者が不明のため、高値で引

    き取られる業者に集まる

    STEP1. 解体ライセンスの要件を設定し、認定業者以外への引渡しを禁止

    ②ユーザーから ELV を回収する仕組みがない

    STEP2. ユーザーと解体ライセンス保有業者と繋ぐ仕組み構築

    ③ELV を適正に解体できる事業者が少ない

    STEP3. 解体ライセンス保有業者が増加するための仕組み構築(インセンティブ、リサイクル料金分配、

    義務付け等) ④ELV のフローを管理する仕組みがない

    STEP4. 抹消登録・移動報告制度により法律を遵守しないプレイヤーを排除

    図表 15 ELVの適正なリサイクルに向けた制度構築のステップ

  • 19

    II. 政策対話の実施

    1.政策対話事前ヒアリング

    1.1 訪問趣旨・訪問概要 以下の関連機関・部署を訪問し、タイにおける廃棄物処理・リサイクルに係る問題意

    識、課題、制度制定動向、日タイ協力の方向性等について聴取を行った。

    日時 訪問先

    2019年 2月 11日(月) 10:00~11:30

    DIW(工業省工場局:Department of Industrial Works, Ministry of Industry)

    13:00~14:00 MOI(工業省:Ministry of Industry)

    15:00~16:30 Chulalongkorn University(チュラロンコン大学)

    2019年 2月 12日(火) 12:30~13:30

    DPIM(工業省基礎工業鉱業局 Department Primary Industries and Mines, Ministry of Industry)

    14:30~16:30 PCD(天然資源環境省公害管理局 Pollution Control Department, Ministry of Natural Resources and Environment)

    1.2 聴取事項 タイ側からの課題・協力の方向性としては、以下のような意見が寄せられた。

    1.2.1 タイ側の課題・問題意識

    タイにおける廃棄物処理・リサイクルに係る課題としては、人員不足により管理体

    制面が十分に整っていないことが挙げられた。政府としては、電子マニフェストや許

    認可の電子申請等、電子化によって手続きの簡素化を図る方向性だが、完全に浸透し

    ているわけではないと考えられる。また人員不足によって違法で輸入される廃棄物の

    管理が徹底できない状況であることも課題として挙げられている。

    また、DIW管轄の工場の許可(105、106)について、許可取得のための厳しい条件

    が規定されているわけではないため、優良なリサイクル業者と劣悪なリサイクル業者

    の見分けがつかないことが、適正なリサイクルを進める上での課題として挙げられた。

    ・ タイには電子マニフェスト制度があるが、使用している事業者の割合は少ない。 ・ 現在は GPSによる廃棄物の追跡にも取り組んでいる。 ・ 電子マニフェスト(E-manifest)、許認可の電子申請(e-license)、GPSによる追跡等を進めたいと考えているが、人員不足等の課題によって十分に促進できていな

    い。 ・ DIW 管轄の工場の許可(105、106)はあるが、許可取得のための厳しい条件が

  • 20

    規定されているわけではないため、優良なリサイクル業者と劣悪なリサイクル業

    者の見分けがつかないことが課題である。 ・ 人員不足によって、電子マニフェスト上の正式な取引が進んでいないだけでなく、違法で輸入されている廃棄物を管理しきれていない場合がある。

    (出所)現地ヒアリングより

    1.2.2 関心事項について

    タイ側の関心事項としては、Circular Economy(CE)に関心を持っていることが確

    認され、政策対話の中で CEの推進に関する提案に対しては前向きに検討していきた

    いとの意見が得られた。また、日本側からより具体的な CEのイメージの提案がある

    と望ましいとの意見も得られ、日本における CEビジネスの市場規模や PaaSの事例に

    ついて紹介頂きたいとのことであった。

    その他、直近の課題として焼却灰の処理や環境汚染地域の回復、PM2.5に問題意識

    を持っており、これに関する技術事例の紹介に関心があるとの意見が得られた。

    ・ Circular Economy(CE)に関心を持っている。日タイの政策対話の中で CEの推進に関して METIから提案があれば、内容に対して前向きに検討していきたい。

    ・ 政策対話では、日本側からより具体的な CEのイメージを提案頂けると望ましい。資源循環の分野では、CE に関連した具体的なプロジェクトは現在のところ進んでおらず、日本側から紹介があると興味深い。

    ・ その他、環境汚染地域の回復、焼却灰の処理に関心がある。 ・ PaaS(Product as a Service)の具体的な事例や詳細について関心がある。例えば次のような内容を教えてもらえると良い。(新たな CEビジネスの市場規模はどの程度か、PaaSの事例はどの程度日本で普及しているか。)

    ・ 現在抱えている課題としては、PM 2.5 や PM10 等の大気汚染の問題が挙げられる。国民が工場を排出源としてみなしているため、誤解を解き説明しようと努力

    している。 ・ 最近のタイでのホットトピックは、廃棄物発電、e-waste、プラスチック、海洋プラ、食品廃棄物などである。

    ・ タイでは、CEやアップサイクリング等のキーワードが上がることも増えており、関心のあるテーマとなってきている。アップサイクリングの例としては、家庭か

    らの固形廃棄物やプラスチックなど価値のないものに付加価値(RDFや発電などを付け、販売することである。

    ・ 生ごみの堆肥化を促進したいと考えている。堆肥化のインセンティブの仕組みが日本にはあると聞いており、関心がある。堆肥化の装置が高価で買えないことか

    ら、実用的な技術・仕組みがあれば紹介してほしい。技術の条件として、都市部

    で使われることを想定しているため、臭いがしないことが必要。 (出所)現地ヒアリングより

  • 21

    1.2.3 WEEE法案

    タイにて現在検討中の WEEE 法案については、2019 年 2 月現在、法制委員会事務

    局での審議中とされており、法成立の見込みは 50:50とのことである。

    ・ WEEE 法案の成立可能性について言及することは難しい。うまくいって 50:50ぐらいかもしれない。現在、PCDで法案の起草は済み、内閣傘下の法制委員会事務局で審査を行っている。週に3回ほど問い合わせがあり、PCDではその回答対応に追われている状況である。EPRの概念が導入されているので、製造業による費用負担の問題などについて質問が寄せられてくる。日々、こうした法

    制委員会事務局からの問い合わせに対応して「ディフェンス」しなければなら

    ない。 ・ 法制委員会事務局での審査が済み次第、議会審議にかけられる。ただし、選挙を直前に控えており、国民や企業に不人気の法案をこの段階で議会にかけるど

    うかどうか読めない。現在のところ、WEEE法案に賛成する政府与党は議員総数の半数程度であり、反対する議員も半数程度である。

    ・ 法案起草にあたっては、これまでにもメーカーや NPO 等の意見を取り入れてきた。過去5年間で 10 回ほどの公聴会を開催し、そこで得られた意見を法案に反映させている。ただし、メーカーなどは費用負担が増加するということで、

    概ね反対の方向にある。WEEE法案の意義については理解してもらえるようになったが、リサイクル料金の費用負担を販売時にユーザー転嫁できると明文化

    させて欲しいと考えているようである(このままでは利益率が低下するため)。 ・ PCDでは法案成立を見越し、法令に連なる各種施行令(ガイドライン)の準備等も並行して進めている。

    ・ 1992年に制定された国家環境保全推進法に基づき、環境管理委員会(俗称:環境内閣)が設置されている。ここでは、環境政策に関わる省庁の代表者が 20人近く集まり、環境関連政策の方向性等を議論するようになっている。この環境

    管理委員会の事務局は PCDに設置されている。 ・ 環境管理委員会には複数の小委員会(Subcommittee)が設置されており、そうした小委員会のうちの一つで WEEEを取扱う小委員会がある。WEEE法案の方向性などもその小委員会で議論を行っている(法案そのものを議論するわけで

    はない)。 ・ WEEE法案でみた関係省庁の役割をみると、上流(廃棄物の発生抑制・改修等)~下流(再資源化)それぞれで担当省庁が異なる。上流から下流に至るまでの

    廃棄物管理の大きな方針、また関連法案の起草等は PCDが行う。また、廃棄物に限らず、大気汚染防止、公衆衛生、水質汚濁防止等でも同様である。環境関

    連法制の全体方針、関連基準、大学との連携方針を定める立場にある。 ・ 廃棄物管理でみた場合、都市廃棄物の上流(発生抑制や回収)などは地方行政の全体管理を担当している内務省が担当している。同様に産業廃棄物の上流な

    どは工業省が担当している。また、廃棄物の由来に関わらず、廃棄物のリサイ

    クル工場はすべて工場局(DIW)の担当である。今回の WEEE法案は、都市廃棄物中の使用済み電気電子機器の回収(実際に管理を行うのは内務省とその傘

    下の地方行政)、運搬(実際に管理を行うのは運輸省)、回収された使用済み電

    気電子機器の中間処理及び再資源化(実際に管理を行うのは工業省とその傘下

    の DIW)における関係各者の役割や必要な許認可を定めたものとなる。 (出所)現地ヒアリングより

  • 22

    1.3 各機関の関係性について 現地ヒアリング結果をもとに、タイにおける各省庁・機関の役割分担・関係性を整理

    すると、以下のように図示される。

    図表 16 タイにおける各省庁・機関の役割分担・相関図

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

    工業省

    (MOI)工業工場局

    (DIW)

    基礎工業鉱業局

    (DPIM)

    ・・・

    ・・・

    リサイクル技術開発センター

    ・・・

    天然資源環境省

    (MONRE)

    ・・・

    首相府

    (OPM)

    法制委員会事務局

    (OCS)

    ・・・

    内閣資源循環経

    済課

    NEDO

    経済

    産業省

    循環型

    社会推進室環境省

    政策対話

    MOU(ELVs)

    MOU?(WEEE)

    チュラロンコン大学

    (Sujitra研究員)

    固体廃棄物管理協会(SWAT)

    (Patarapol氏)

    工場法に基づくリサイクル工場(101類(有害廃棄物)、105類(分別・埋立)・106類(リサイク

    ル))の監督権を有する

    各省から提出された法案の確認、国民立法議会(NLA)への提案準備等を行う(~2/26?)

    工場法に規定されるリサイクル工場の許認可審査に関する新たなガイドライン(充

    足すべき要素のチェックリスト)草案を作成

    タマサート大学

    (Kriengkrai准教授)

    WEEEインベントリ分析

    有害物質

    管理事務局(HSCB)

    国際協力・環境インフラ戦略室

    ELVsインベントリ分析

    公害管理局

    (PCD)

    政策対話

    廃棄物関連の法令制定を行う(WEEE法案の起草含)

    委託調査

    協議

    導入技術(リサイクル技術含む)の評価及び許認可判断への助言を行う

  • 23

    2.政策対話

    2.1 開催概要 2019年 3月、経済産業省とタイ政府の政策対話を以下の通り開催した。

    図表 17 政策対話の開催概要 日時 2019年 3月 18日(月)13:00~17:30 場所 OIE(Office of Industrial Economics, Ministry of Industry) 202会議室 プログラム 1. OPENING REMARKS

    Mr. Aditad Vasinonta from OIE and Ms. Mami Fukuchi from METI 2. WEEE 2.1. Sharing consideration situation and issues of WEEE law in Thailand (DIW) 2.2. WEEE circulation systems in Japan and ideas for cooperation with

    Thailand(METI) 2.3. The Demonstration Project For The Energy-Saving Resource Circulation

    System to Utilize-waste of Electronic and Electrical Equipment in Thailand (NEDO)

    2.4. Discussion Coffee Break

    3. ELV 3.1. Sharing issues about ELV circulation in Thailand (MoI) 3.2. ELV circulation systems in Japan and ideas for cooperation with Thailand

    (METI) 3.3. The Demonstration Project For The Energy-Saving Resource Circulation

    System to Establish Efficient and Suitable Resource Recycling For End-Of-Life Vehicles in Thailand (NEDO)

    3.4. Discussion 4. OTHER ITEM 4.1. Sharing issues about soil contamination, air pollution, and fly ash (DIW) 4.2. Introduce Japanese technology about air pollution, and fly

    ash(METI/NEDO) 4.3. Other(Marine plastics litter/Circular economy)(METI) 4.4. Discussion 5. CLOSING

    Director from OIE and Ms. Mami Fukuchi from METI

  • 24

    2.2 議事要旨 ・ 日本側からは経済産業省、NEDO、JETROが出席し、タイ側からは DIW(工業省工

    場局)、OIE(工業省産業経済局)、DPIM(工業省基礎工業鉱業局)、および IEAT(工

    業団地公社)が出席した。

    ・ NEDO 実証事業に関する WEEEの MOU 締結に向けては、日タイで方向性は一致し

    ていることが確認された。タイ外務省の要求として、契約でなく MOU(両国が義務

    を負わない形)の内容となるよう調整が必要との見解が得られていることが確認さ

    れ、MOU締結に向けて両国で連携して調整を進めることで合意した。

    ・ タイにおける ELVの現状として、タイでは自動車の使用年数が長く ELVを専門に処

    理する事業者がほぼ存在しないことが説明された。これに対して、タイでは自動車の

    保有が伸びており、きちんとしたリサイクル制度を構築しておくことが、今後の持続

    的な発展のためには重要であることを共有した。

    ・ タイでは ELVのリサイクルだけでなく、リマニュファクチャリング(及びそれに伴

    う認証等)にも関心があることが確認された。日本側からは、NEDO実証ではリサイ

    クルを想定しているが、リマニュファクチャリングにおける課題については、実証事

    業とは別途に政策対話の議題にできると良い旨を伝えた。

  • 25

    第3章 リサイクル関連事業のアジア展開検討に必要となる基礎データの整理

    I. アジア諸国における廃棄物発生量・市場規模推計

    1.推計対象

    本章では、アジア諸国における廃棄物発生量および市場規模の推計を行う。

    推計の対象としては、使用済み電気電子機器(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ、

    PC、携帯電話)、ELV、バッテリー、廃プラスチックの 4品目を選定した。

    推計の対象国としては、日本、中国、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシ

    ア、タイ、ベトナムの 8か国を選定し、推計期間は現在時点から 2050年までとした。

    推計対象廃棄物 使用済み電気電子機器 ELV バッテリー 廃プラスチック

    推計対象国 日本、中国、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナム

    推計期間 2017 年(現在)~2050 年

    2.廃棄物発生量の推計

    2.1 推計方法 2.1.1 電気電子機器

    (1)国内販売量推計

    1)推計の考え方

    本調査においては、単位人口当たりの製品販売台数を一人あたり GDP から推計す

    る推計式を求め、推計された販売台数と将来人口推計を掛け合わせて将来の販売台数

    を推計するアプローチを採用する。

    将来の製品販売量の推計は、過去の販売実績と同様の成長率を用いる方法も考えら

    れるが、長期の予想の場合には、成長率を一定と置く仮定は強すぎると考えられ、信

    頼できる結果が得られない可能性がある。本調査における推計では、2050年までの長

    期に渡り廃製品発生量を予測することから、製品販売量の成長率を一定とする推計は

    現実的ではないと考えられる。

    そのほか、製品販売台数の推計方法としては、一人当たり GDP から製品普及率を

  • 26

    予測する推計式を作成するアプローチも考えられる18。その場合、普及率から普及台

    数を推計し、普及台数のt年とt-1年における差およびt年の廃棄台数から販売台

    数を推計することになるが、国ごとに一世帯当たりの製品保有台数は大きく異なるこ

    とが予測されることから、本調査では採用しないこととした。

    図表 18 販売台数の推計方針

    2)推計式の作成

    製品販売台数と一人当たり GDPの関係性を確認するため、一人当たり GDPと、人

    口 100 人当たりの製品販売台数のデータをプロットした(使用したデータは 2004 年

    ~2023年。ただし 2018年以降は予測値)。

    ① 家電 4品目

    家電 4品目(エアコン、洗濯機、冷蔵庫、テレビ)については、GDPの上昇ととも

    に単位人口あたり販売台数が増加し、一定の販売台数水準に達したところで増加量が

    逓減することが確認された。耐久消費財の場合は、一定程度普及した後は、買い替え

    需要のみが発生することが原因と考えられる。実際に、単位人口あたり販売台数予測

    のための推計式としては、一人当たり GDP の対数に回帰した場合に当てはまりが良

    18平成 26 年度新興国市場開拓事業(相手国の産業政策・制度構築の支援事業(新興国における主要物品の需要拡大予測を踏まえた国際展開モデルの構築に関する調査))調査報告書 2015年 2月

  • 27

    かったことから、一人当たり販売台数を一人当たり GDP の対数に回帰することとし

    た19。また、平均世帯人数や気候条件が異なることから、一人当たり GDP水準が同じ

    であっても国ごとに単位人口当たり販売台数は異なることが予測されたことから、国

    ごとにそれぞれ回帰式を作成することとした。

    図表 19 エアコンの一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    19 ただし、日本のテレビの販売台数に関しては、2010 年前後に地上デジタル放送への移行に伴う特需が発生し販売量が急激に上昇していることから、2012 年以降の値を用いた線形回帰により将来値を推計した。

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    エアコン

    China India Indonesia Japan Malaysia PhilippinesThailand Vietnam 対数 (China) 対数 (India) 対数 (Indonesia) 対数 (Japan)対数 (Malaysia) 対数 (Philippines) 対数 (Thailand) 対数 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    Vietnam

    Philippines

    Indonesia

    D =α ∗ ln GDP + β D :国 i の製品 j における t 年の 100 人当たり販売台数 台/100 人 GDP :国 i における t 年の一人あたり GDP α , β :パラメータ

  • 28

    図表 20 洗濯機の一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    洗濯機

    China India Indonesia Japan Malaysia PhilippinesThailand Vietnam 対数 (China) 対数 (India) 対数 (Indonesia) 対数 (Japan)対数 (Malaysia) 対数 (Philippines) 対数 (Thailand) 対数 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    VietnamPhilippines

    Indonesia

  • 29

    図表 21 冷蔵庫の一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    冷蔵庫

    China India Indonesia Japan Malaysia PhilippinesThailand Vietnam 対数 (China) 対数 (India) 対数 (Indonesia) 対数 (Japan)対数 (Malaysia) 対数 (Philippines) 対数 (Thailand) 対数 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    Vietnam Philippines

    Indonesia

  • 30

    図表 22 テレビの一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    TVChina India Indonesia Japan Malaysia PhilippinesThailand Vietnam 対数 (China) 対数 (India) 対数 (Indonesia) 対数 (Japan)対数 (Malaysia) 対数 (Philippines) 対数 (Thailand) 対数 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    Vietnam

    PhilippinesIndonesia

  • 31

    ② PC

    PC については、いずれの国についても単位人口あたり販売台数が一定程度上昇し

    た後、減少に転じていることが確認された。このデータを用いて推計式を求めた場合、

    一人当たり GDPの上昇に伴い、PCの販売台数が長期的に減少する推計式となる。特

    に新興国においてこの想定は現実的でないと考えられることから、国横断的な PC 販

    売量データを利用し、一人当たり GDP と人口あたり販売台数の推計式を求めた。推

    計式としては、線形の関係を想定した。販売台数の予測にあたっては、国ごとの差異

    を反映させるため、傾きのみ推計式のパラメータを用いることとした。

    また、ノート PC とデスクトップ PC の内訳については、データが横並びで取得で

    きない場合もあったことから、我が国における販売実績の比率を他国にも適用して推

    計することとした。

    図表 23 PCの一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    20

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    PC

    China India Indonesia Japan Malaysia Philippines Thailand Vietnam

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    Vietnam

    Philippines

    Indonesia

  • 32

    図表 24 PCの一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性(国別・2017年)

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    China

    India

    Indonesia

    Japan

    Malaysia

    Phi l ippines

    Tha iland

    Vietnam

    -

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    1,000 10,000 100,000

    100人

    あた

    り販

    売量

    (台/

    100人

    一人あたりGDP(USD/人)

    PC

  • 33

    ③ 携帯電話

    携帯電話については、単位人口あたり販売台数予測のための推計式として、一人当

    たり GDP の対数に回帰した場合に当てはまりが良かったことから、一人当たり販売

    台数を一人当たり GDP の対数に回帰することとした。また、平均世帯人数や気候条

    件が異なることから、一人当たり GDP 水準が同じであっても国ごとに単位人口当た

    り販売台数は異なることが予測されたことから、国ごとにそれぞれ回帰式を作成する

    こととした。

    図表 25 携帯電話の一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    45

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    携帯電話

    China India Indonesia Japan

    Malaysia Philippines Thailand Vietnam

    対数 (China) 対数 (India) 対数 (Indonesia) 対数 (Japan)

    対数 (Malaysia) 対数 (Philippines) 対数 (Thailand) 対数 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    Vietnam

    Philippines

    Indonesia

  • 34

    (2)国内廃棄量推計

    上記で求めた販売量をもとに、製品廃棄量の推計に係る分野における一般的な手法

    として、製品寿命をワイブル分布で近似し、推計年次より前の各年の販売量から廃棄

    量の推計を行う。

    図表 26 廃棄モデルに基づく使用済み製品発生量推計のイメージ

    ( ) ( )å=

    -×=t

    tiii tifQtE

    0

    0

    E(t):t年度における製品廃棄量

    Qi:i年度に出荷された製品量

    fi(t):i年度に出荷された製品の廃棄確率分布関数

    t0:基準年

    廃棄モデルに基づく使用済み製品の発生量推計イメージ

    使用済製品の廃

    棄確率

    2000年に出荷された製品の廃

    棄量分布

    製品の平均使用年数:t年

    2001年に出荷された製品の廃

    棄量分布

    2002年に出荷された製品の廃

    棄量分布

    2000+(t-1)年に出荷された製

    品の廃棄量分

    製品の廃棄確率の分布は、

    平均使用年数を変数とす

    るワイブル分布に従う。

    2000年 2000+t年 2000+2t年

    破線部内の数量の和

    が2000+t年に排出される使用済み製品量と

    なる

    2000年に出荷された製品の内、2000+t年に廃棄される量

    2002年に出荷された製品の内、2000+t年に廃棄される量

  • 35

    2.1.2 自動車

    (1)国内販売量推計

    1)推計の考え方

    自動車の販売台数については、電気電子機器と同様、単位人口当たりの製品販売台

    数を一人あたり GDP から推計する推計式を求め、推計された販売台数と将来人口推

    計を掛け合わせて将来の販売台数を推計するアプローチを採用する。

    2)推計式の作成

    製品販売台数と一人当たり GDPの関係性を確認するため、一人当たり GDPと、人

    口 100人当たりの製品販売台数のデータをプロットした(プロットしたデータは 2005

    年~2017年)。

    GDPの上昇とともに販売台数が増加し、一定の販売台数水準に達したところで増加

    量が逓減することが確認された。電気電子機器製品とは異なり、自動車については人

    口あたり販売台数が一人あたり GDP に対して線形で増加することが確認されたこと

    から、一人当たり販売台数を一人当たり GDPに回帰することとした。また、平均世帯

    人数や気候条件が異なることから、一人当たり GDP 水準が同じであっても国ごとに

    単位人口当たり販売台数は異なることが予測されたことから、国ごとにそれぞれ回帰

    式を作成することとした。

    D =α ∗ GDP + β D :国 i における t 年の 100 人当たり販売台数 台/100 人 GDP :国 i における t 年の一人あたり GDP α , β :パラメータ

  • 36

    図表 27 自動車の一人当たり GDPと人口あたり販売台数の関係性

    (出所)Euromonitor より MURC作成

    (2)国内廃棄量推計

    上記で求めた販売量をもとに、製品廃棄量の推計に係る分野における一般的な手法

    として、製品寿命をワイブル分布で近似し、推計年次より前の各年の販売量から廃棄

    量の推計を行う。

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    0 1 10 100

    100人

    当た

    り販

    売台

    一人当たりGDP(1,000$)

    自動車

    China India Indonesia Japan Malaysia PhilippinesThailand Vietnam 線形 (China) 線形 (India) 線形 (Indonesia) 線形 (Japan)線形 (Malaysia) 線形 (Philippines) 線形 (Thailand) 線形 (Vietnam)

    Japan

    Malaysia

    China

    Thailand

    India

    VietnamPhilippines

    Indonesia

  • 37

    2.1.3 バッテリー(鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池)

    (1)販売量推計の考え方

    バッテリーは製品ではなく、製品中の部品であることから、対象とするバッテリー

    が含まれている製品の販売量を推計し、製品中に含まれるバッテリーの重量比率から

    バッテリーの販売量を推計する。

    本調査においては、鉛蓄電池の用途としては自動車を、リチウムイオン二次電池の

    用途としては携帯電話、ノート PC、電気自動車を想定した。ELV、携帯電話、ノート

    PCの発生量の推計については上述の通りである。電気自動車については、国ごとの販

    売台数の値を入手することが難しいことから、全世界における販売台数予測値から電

    気自動車の販売比率を用い、按分することで推計することとした。

    対象廃棄物 推計対象とする用途 鉛蓄電池 ・ELV

    リチウムイオン二次電池(LiB)

    ・携帯電話 ・ノート PC ・電気自動車

    (2)廃棄量推計

    WEEE及び廃電子電気機器の発生量の推計結果を利用し、各製品中一台あたりに含

    有する鉛蓄電池またはリチウムイオン二次電池の重量との積を取ることで推計を行

    う。

    LiB 含有量(g/台) 電気自動車 265,000 ノート PC 350 携帯電話 20

    (出所)経済産業省「レアメタルリサイクルの経済性に関する分析」

    鉛蓄電池含有量(kg/台) 自動車 7.6

    (出所)工業統計

  • 38

    2.1.4 プラスチック

    (1)推計の考え方

    本調査においては、単位人口当たりの廃プラスチック消費量を一人あたり GDP か

    ら推計する推計式を求め、推計された消費量と将来人口推計を掛け合わせて将来の消

    費量を推計するアプローチを採用する。推計対象国内全体のプラスチック消費量を推

    計ののち、用途別の割合を乗じることで、各用途のプラスチック消費量を推計する。

    図表 28 プラスチック利用量の推計フロー

    一人当たりGDPから一人あたりプラスチック消費量を予測する回帰式の作成

    一人あたり消費量(t年)

    世界orアジア地域における過年度の一人当たりGDPとプラスチック消費量

    データ

    人口予測

    プラスチック消費量(全体)の推計一人あたり消費量(t年)×人口(t年)

    プラスチック消費量(全体・t年)

    GDP予測

    一人あたり将来プラスチック消費量の推計

    各用途比率

    用途別プラスチック消費量の推計プラスチック消費量(全体)×各用途割合

    用途別プラスチック消費量(用途別・t年)

  • 39

    図表 29 プラスチックの国別・用途別利用割合

    China India Indonesia Japan Malaysia Thailand Vietnam

    Packaging 41.6 44.9 49.2 46 50.3 46.4 48

    Automotive 7 6.3 6.9 7.2 5.7 7.1 6.5

    Construction industry 23 22 16.1 17.2 17.1 17.9 18.6

    Electrical, electronics & telecom

    6.8 4.8 5.1 7 6.2 5.9 5.7

    Others 21.7 22.1 22.7 22.5 20.8 22.6 21.2

    Total 100 100 100 100 100 100 100 (出所)EUROMAP “Plastics Resin Production and Consumption in 63 Countries Worldwide 2009 –

    2020”

    (2)推計式の作成

    プラスチック消費量と一人当たり GDPの関係性を確認するため、一人当たり GDP

    と、人口一人当たりのプラスチック消費量のデータをプロットした。国によってばら

    つきは生じるが、基本的に GDP の上昇とともに一人当たりプラスチック消費量が増

    加していることが確認された。近似式としては、線形および片対数が候補として考え

    られるが、昨今のプラスチック削減への世界的な動向を踏まえ、片対数による近似を

    想定した。

    D=α ∗ ln GDP + β D :国 i における 1 人当たりプラスチック利用量 kg/人 GDP :国 i の一人あたり GDP α , β :パラメータ

  • 40

    図表 30 一人あたりプラスチック消費量と GDPの関係(2015年)

    (出所)EUROMAP “Plastics Resin Production and Consumption in 63 Countries Worldwide 2009 –

    2020” からMURC作成

    (3)廃棄量推計

    上記で求めたプラスチック利用量をもとに、製品廃棄量の推計に係る分野における

    一般的な手法として、製品寿命を確率分布で近似し、推計年次より前の各年の販売量

    から廃棄量の推計を行う。既存研究で廃棄年数の分布を対数正規分布で近似する手法

    が採られていることから、これを踏襲する。

    China

    IndiaIndonesia

    Japan

    Malaysia

    Tha iland

    Vietnam

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180

    1000 10000 100000

    一人

    当た

    りプ

    ラス

    チッ

    ク消

    費量

    (kg

    /年)

    一人当たりGDP($)

    プラスチック

    近似式(対数)

    近似式(線形)

  • 41

    図表 31 プラスチックの用途別寿命

    (出所)Geyer, R., Jambeck, J. R., & Law, K. L. (2017). Production, use, and fate of all plastics ever

    made.Science advances,3(7), e1700782.の平均年数と標準偏差をもとに作成

    図表 32 プラスチックの用途別寿命の平均と標準偏差

    平均年数 標準偏差

    Packaging 0.5 0.1 Transportation 13 3 Building and Construction 35 7 Electrical/ Electronic 8 2 Consumer & Institutional Products 3 1 Industrial Machinery 20 3 Other 5 1.5 Textiles 5 1.5

    (出所)Geyer, R., Jambeck, J. R., & Law, K. L. (2017). Supplementary Materials for Production, use, and fate of all plastics ever made.Science advances,3(7), e1700782.

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

    確率

    密度

    分布

    経過年数

    Packaging Electrical/ Electronic

    Building and Construction Transportation

    012345

    0 0.25 0.5 0.75 1

    確率

    密度

    分布

    経過年数

  • 42

    2.2 推計結果20 2.2.1 電気電子機器

    (1)中国

    中国における電気電子機器の使用済廃棄台数の推計結果を以下に示す。

    2030年における廃棄台数は、エアコンが約 82,000千台、テレビが約 51,000千台、

    冷蔵庫が約 32,000 千台、洗濯機が約 30,000 千台、デスクトップ PC が約 17,000 千

    台、ノート PCが約 33,000千台、携帯電話が約 530,000千台と推計された。2050年

    における廃棄台数は、エアコンが約 260,000千台、テレビが約 60,000千台、冷蔵庫

    が約 62,000千台、洗濯機が 54,000千台、デスクトップ PCが約 35,000千台、ノート

    PCが約 70,000千台、携帯電話が約 640,000千台と推計された。

    図表 33 使用済み家電・PC発生量の推計結果(中国)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    20 本推計は販売量に基づいて使用済み製品の発生量を推計したものであり、中古品として輸出される量については結果に反映されていないことから、当該国における市場のポテンシャルとして解釈でき

    るものである。

    0

    100,000

    200,000

    300,000

    400,000

    500,000

    600,000

    2017

    2018

    2019

    2020

    2021

    2022

    2023

    2024

    2025

    2026

    2027

    2028

    2029

    2030

    2031

    2032

    2033

    2034

    2035

    2036

    2037

    2038

    2039

    2040

    2041

    2042

    2043

    2044

    2045

    2046

    2047

    2048

    2049

    2050

    廃棄

    台数

    (千

    台)

    中国

    エアコン テレビ 冷蔵庫 洗濯機 デスクトップPC ノートPC

  • 43

    図表 34 使用済み携帯電話発生量の推計結果(中国)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    (2)インド

    インドにおける電気電子機器の使用済廃棄台数の推計結果を以下に示す。

    2030年における廃棄台数は、エアコンが約 24,000千台、テレビが約 21,000千台、

    冷蔵庫が約 5,900千台、洗濯機が約 5,700千台、デスクトップ PCが約 3,800千台、

    ノート PCが約 7,400千台、携帯電話が約 380,000千台と推計された。2050年におけ

    る廃棄台数は、エアコンが約 75,000千台、テレビが約 29,000千台、冷蔵庫が約 25,000

    千台、洗濯機が約 16,000千台、デスクトップ PCが約 15,000千台、ノート PCが約

    30,000千台、携帯電話が約 550,000千台と推計された。

    0

    100,000

    200,000

    300,000

    400,000

    500,000

    600,000

    700,00020

    1720

    1820

    1920

    2020

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    4020

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    4420

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    4820

    4920

    50

    廃棄

    台数

    (千

    台)

    中国

    携帯電話

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    図表 35 使用済み家電・PC発生量の推計結果(インド)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    図表 36 使用済み携帯電話発生量の推計結果(インド)

    (出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング推計

    0

    50,000

    100,000

    150,000

    200,000

    250,00020

    1720

    1820

    1920

    2020

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    2520

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    4020

    4120