論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

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後ろ向き研究 Peer-reviewed journal掲載を目標に Academic Writing for Retrospective Study. Sachiyuki Tsukada M.D., Ph.D. 塚田 幸行(つかだ・さちゆき) 北水会記念病院 人工膝関節センター

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Page 1: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

論 文 の 書 き 方

後ろ向き研究 の Peer-reviewed journal掲載を目標に

Academic Writing for Retrospective Study. Sachiyuki Tsukada M.D., Ph.D.

塚田 幸行(つかだ・さちゆき)

北水会記念病院 人工膝関節センター

Page 2: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

1.絶対に仮説検証型スタイルで書く

2.IntroductionとDiscussionを短く

Materials & MethodsとResultを長くする

3.Materials & Methodsが最も重要

他の研究者が完全に再現できるくらい詳細に書く

鉄則

Page 3: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

1. Introduction 問題の提起

2. Materials & Methods 研究手法の詳細

3. Results 研究で得られたデータを客観的に報告

4. Discussion 研究で得られたデータの解釈

論文の流れ

Page 4: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

1. Introduction 問題の提起

2. Materials & Methods 研究手法の詳細

3. Results 研究で得られたデータを客観的に報告

4. Discussion 研究で得られたデータの解釈

仮説検証型

仮説を設定する

仮説が検定できるデータの収集と解析

仮説が正しかったか否か

仮説の結果の解釈からはじめる

一貫して仮説について書く

論文の流れ

Page 5: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

仮説は統計学的に検定可能(testable)である必要がある

仮説の設定のコツ

Page 6: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

仮説は統計学的に検定可能(testable)である必要がある

仮説の設定のコツ

1. 仮説の答えが連続変数で表されるものを選ぶ 連続変数が最も統計学的有意差が出やすい

2. 仮説の答えが『・・・と比べて差がある』となるものを選ぶ 『差が無い』を示すのは非常に多いサンプルサイズが必要

3. 2群比較にする(Group A・Bと2グループまでにする)

3群以上だと(Group Cまで入ってしまうと)有意差が出づらい

仮説の答えの結果が『・・・%』で表される場合 連続変数ではなく カテゴリー変数であることがあるので確認しましょう

Page 7: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

-15 -10 -5 0 5 10 15 20

Introduction, Discussionは

とにかく短くする!

各セクションのボリューム

短すぎる 長すぎる

Introduction

Materials & Methods

Results

Discussion

国際誌にアクセプトされる医学論文(Byrne 著、木原訳)

回答者数

Page 8: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Introductionの書き方

Page 9: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Introductionの書き方

必ず 3パート

1. Known

2. Unknown

3. Hypothesis

すでにわかっていること

まだわかっていないこと

仮説

Page 10: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

硬膜外麻酔と関節周囲カクテル注射のどちらが

人工膝関節手術後の痛みに対してより有効かは判明していない

人工膝関節の手術後の痛み対策として硬膜外麻酔がよく使われている

近年、関節周囲カクテル注射の有用性が報告されるようになった

Known 研究テーマについて

どこまで判明しているかを、超簡潔に書く!

Unknown 研究テーマについて

① 判明していないもの

② Controversialなもの

が何かを書く!

Page 11: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Unknownで使った単語を使い仮説として言い直す

Hypothesis

本研究の仮説は、「硬膜外麻酔よりも関節周囲カクテル注射を行った方が

人工膝関節の手術後の痛みが小さい」、というものである

読者(査読者も)は一度にいろいろ理解できない!

とにかく情報量を少なく(シンプルに)する!

Tsukada et al.JBJS Am 2014

Page 12: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

論文作成時は、、

研究結果から論文の仮説を書く!

もちろん、研究開始時は逆です

後ろ向き研究から得られた結果 筋非切離人工骨頭置換術と、従来型人工骨頭置換術の機能スコアを比較すると、

術後1か月の時点では筋非切離で行った方が機能スコアが良好だった

Introductionに記載する仮説 我々は以下の仮説を検証した

筋非切離人工骨頭置換術は従来法と比べて術後1か月での機能スコアが良好

① Introductionの最終段落

② Resultsの第2段落

③ Discussionの第1段落は、同じ内容になる

Tsukada et al. J Orthop Sci 2010

※ 仮説・・・機能スコアは連続変数(厳密には順序変数)、2群比較、差がある(筋非切離で良好)

Page 13: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Introductionの長さ

Introductionの長さがResultsの2/3を超えたら長すぎる!

短く!

Page 14: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Clin Orthop Relat Resの投稿規定

• Introduction (500 words) The Introduction, typically the shortest of sections.

• Materials and Methods (1000–1500 words)

• Results (500 words)

• Discussion (1000 words)

参考 Brand Clin Orthop Relat Res 2008

Clin Orthop Relat Resは、整形外科のJournalの中で最も論文の記載法が厳密に定められています。 前の編集長のBrandが投稿規定を論文化しています(2008 466:239–247)。 論文の投稿先を迷っている先生には、私は必ずClin Orthop Relat Resを勧めています。

Introductionは最も短く

Page 15: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

前向き研究の場合

• まず仮説を立てる

• 関連する全ての論文を読む (後ろ向き研究の場合もですが)

• 研究をデザイン、倫理委員会を通す

• 臨床試験登録 • 研究開始

RCTのみでなく、観察研究も

『結果→仮説』 では 不正です

『結果→仮説』は、あくまで後ろ向き研究の論文の書き方のテクニック

参考

Page 16: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

M&Mの書き方

Page 17: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

M&M(Materials & Methods)の書き方

• とにかく詳細に書く

• 実験をだれがやっても再現できるように (整形外科では手術・リハビリ・周術期投薬・フォローアップ法などを含め再現できるように)

M&Mが長すぎる、と指摘されることは無い!

でも、内容の重複は罰せられる(表があるのに本文にも書く、など)

Page 18: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Rejectされる原因となるセクションは?

国際誌にアクセプトされる医学論文(Byrne 著、木原訳)

Materials & Methods が

論文における最も重要なセクション!

回答者数

0 2 4 6 8 10 12 14 16

Discussion

Results

M&M

Introduction

Page 19: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

臨床研究のM&Mに何を書く?

CONSORT声明にすべて書いてある!!!

RCTでなくてもCONSORTを意識して書く

参考:

JBJS AmはCONSORTチェックリストの提出を

義務付けている

Page 20: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

CONSORT声明とは? 偉い人たち(しかもかなり偉い人たち)が

『RCTの論文を書くときは、必ずこう書くべし』 と決めたもの

RCTを始めるときは

CONSORTの全項目を回答できるかを確認してから

「観察研究ならばSTROBE」などいろいろあるがまずは必ずCONSORT

① 25のチェックリスト と ② Flow diagram

Page 21: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

TAKE HOME MESSAGE 1

RCTでなくても

CONSORTを意識すべき! http://www.consort-statement.org/

『CONSORT』で検索すると

日本語のページも沢山あります

Page 22: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

CONSORT 特に重要な項目 ①

• Introduction 仮説が明記されているか?

• M&M 患者の選択基準・除外基準が明記されているか?

Outcomeの測定法が完全に定義されているか?

サンプルサイズの算出が明記されているか?

Results, Discussionについては後述 (これらも強力です)

Page 23: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

• 術式はころころ変わる(Daily?)

• 術者によって言葉の定義もアイマイ

• 手術の研究は、薬の研究よりも

厳密にM&Mを書かないと誤った情報が流布しやすい

私見

Page 24: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

後ろ向き研究のM&M

データの妥当性の説明がすべて

後ろ向き研究 = データがあやしい

というのが大前提 (絶対に覆せない壁)

Page 25: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

あやしいデータを補強するために、、

① どのようにデータを集めたか

② ちゃんと必要なサンプルサイズを満たしているか

③ 測定・評価法の信頼性を計算したか

後ろ向き研究では(前向き研究でも)これらは必須

Page 26: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

どのようにデータを集めたか?

いわゆる5Wを書く

(Who, What, When, Where, Why)

Who: 著者の中のひとりが調査した

What: 選択基準は2004-10年に川口工業病院で人工膝関節手術を受けた患者

除外基準は外反膝と手術後1年以内に再手術を受けた患者

When: 2012年に調べた

Where: 川口工業病院(人工関節センターあり)の病院内で、データベースを使用して調べた

Why: 手術中の軟部組織バランスと術後可動域の関係を調べるため (Introductionの最後に記載)

Whereが軽視されがちだが重要:Setting

外傷センター versus 一般病院 など

This study was conducted at a single orthopaedic clinic, which specialized in knee and hip surgery.

Tsukada et al. JBJS Am 2015

Tsukada et al. Arch Orthop Trauma Surg 2013

Page 27: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

比較研究のサンプルサイズ

Page 28: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

n = ∞ ならば、すべての比較は有意差あり

学会の発表、何例のデータを集めれば良いですか?

サンプルサイズの計算法

大前提

臨床現場で意味のある差を検出しないと無意味 『少なすぎる n 』 のみでなく、『多すぎる n 』 も誤った結論を導く

Page 29: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

n = ∞ ならば、すべての比較は有意差あり

学会の発表、何例のデータを集めれば良いですか?

サンプルサイズの計算法

大前提

臨床現場で意味のある差を検出しないと無意味 『少なすぎる n 』 のみでなく、『多すぎる n 』 も誤った結論を導く

計算式: ① 臨床現場で意味のある差の値が必要

Page 30: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

『① 臨床現場で意味のある差』

→ 計算では求められない

臨床家が決める

Page 31: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

『① 臨床現場で意味のある差』

→ 計算では求められない

臨床家が決める

あとは ② データのばらつき(標準偏差)がわかればOK!

A B C D 0 0

100 100 VAS VAS

有意差ありそう 沢山 調べないと心配

Page 32: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

サンプルサイズ計算の αエラー と βエラー

α = 0.05 β = 0.20

αエラー = α(あ)わてもの: 本当は差がないのにあるとするエラー

βエラー = β(ぼ)んやりもの: 本当は差があるのにないとするエラー

神田善伸 フリー統計ソフトEZRで誰でも簡単統計解析

Page 33: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

① VAS 20を臨床上意味のあるちがい ② 先行研究で標準偏差が±30だった

③ α = 0.05、β = 0.20 Tsukada et al. Bone Joint J 2016

EZR

もともと この2つだけ空欄

Page 34: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

① VAS 20を臨床上意味のあるちがい ② 先行研究で標準偏差が±30だった

③ α = 0.05、β = 0.20 Tsukada et al. Bone Joint J 2016

EZR

Page 35: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

TAKE HOME MESSAGE 2

サンプルサイズの計算に必要なもの

① 臨床現場で意味のある差

② 標準偏差

Page 36: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

論文記載の実際 参考

Based on previous studies, we considered a 20-point decrease in the VAS score as

clinically meaningful when comparing different regimens of pain control after TKA.

We calculated that with a sample of 74 patients (37 patients per treatment

group), the study would have 80% power to detect a 20-point mean decrease in the

VAS score, with a type I error of 5%.

For power analysis, we used a standard deviation of 30 in the VAS score for

the data of a previous study in post-operative unilateral TKA patients managed under

spinal anaesthesia and periarticular injection.

Tsukada et al. Bone Joint J 2016

異なる鎮痛方法によるTKA後の疼痛スコアを比べるとき、VAS 20 mmの改善を「臨床上意味のある差」とした。

αエラーを0.05、βエラーを0.20とした場合、必要サンプルサイズは74患者(各群37患者)と算出された。

標準偏差は過去のデータからVAS 30 mmを採用した。

Page 37: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Reliability(信頼性)の計算

Page 38: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

一般的でない評価法・検査では絶対に算出

そこそこ一般的と思われるものでも算出すべき

後ろ向き研究:

データがあやしい → Reliabilityの計算は必須

・ 人工関節の設置角度の計測

・ X線での骨癒合 有り・無し など 例

骨癒合していますか?

Page 39: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

実際の計算法

• 連続変数(角度など) → 級内相関係数(ICC)

• あり/なし(骨癒合の判定など) → カッパ係数

Reliabilityにはいろいろありますが

この2つで十分に戦うことができます!

Page 40: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

級内相関係数(ICC)、Kappa係数ともに

無料でダウンロードできる統計ソフトで計算できます

改変Rコマンダー

http://www.hs.hirosaki-u.ac.jp/~pteiki/research/stat/S/

Page 41: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Excelで2人分データを打ち込めば

ICCが(95%信頼区間付きで)算出されます

Page 42: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

実際の論文での記載 参考

Two assessors measured the alpha angles of five plain radiographic projections in a blinded

manner using computer software. To test interobserver reliability, the intraclass correlation

coefficient (ICC) was calculated for two assessors.

Saito, Tsukada et al. KSSTA 2016

Two investigators (ST and MW) separately evaluated the articular cartilage repair. One of the two

investigators (ST) evaluated the repair twice with a 6-month interval.

The agreement for arthroscopic evaluation of articular cartilage repair was assessed

with use of the weighted Cohen’s kappa coefficient.

Tsukada et al. KSSTA 2015

2名の評価者がレントゲン写真でα角を測定した。

Interobserver reliabilityを計算するためICCを算出した。

2名の評価者が別個に軟骨修復を評価した。うち1名の評価者は6か月の間隔をあけて2回評価した。

修復の評価の信頼性は重み付きカッパ係数で評価した。

Page 43: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Missing data (欠損値)の取り扱い

Page 44: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Missing data(欠損値)の取り扱い

どんな研究でもMissing dataは絶対に存在します(無いほうがおかしい)

Missing dataをどう扱ったかをM&Mに明記する!

(1) 欠損値を1つでも含むサンプル(症例)は除外する

(2) 欠損値を1つのグループとして扱う

(3) 欠損値に他の症例の平均値や中央値などの単一の値を当てはめる

または他の独立変数から重回帰・ロジスティック回帰などによって推測される値を当てはめる

Page 45: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

実際の論文での記載 参考

We replaced VAS scores either by linear interpolation in cases when the

missing scores fell between 2 valid scores or with the median scores for the

other patients of the same treatment group at the same point in time.

Kurosaka, Tsukada et al. J Arthroplasty 2016

Lydersen Ann Rheum Dis 2015

統計の査読コメント ランキング1位

『Missing dataの取り扱いをどうしたか?』

VASスコアの欠損値を、

① 欠損値の前後の値がある場合は線形補間で

② 無い場合は同じ治療群の中央値で

置き換えた。

Page 46: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Resultsの書き方

Page 47: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Resultsの書き方

とにかく理解しやすく!

1.必ずM&Mの順番通りに書く!

2.Figure・Tableをセンスよく使う!(かなり難しい)

3.Figure legendは命がけで書く!

論文の本文までみてくれる人はほとんどいない!!

図をチラッとみるだけの人が多い!

Page 48: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Results Patient flow diagramを書いたか?

除外になった人数とその理由を詳細に書いたか?

それぞれのGroupのBaseline dataを書いたか?(いわゆるTable 1)

最終的に何人を解析したかを書いたか?

後ろ向き研究でも Flow diagramは必須!

後ろ向き比較研究だったら100%必要!

Case seriesでも書きましょう!

CONSORT 特に重要な項目 ②

Page 49: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Results

第一段落に書くもの

→ サンプルの記述

選択基準を満たしたのが・・・人

除外されたのが・・・人

除外された理由は・・・

これを視覚化したのが Flow diagram!

Page 50: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Tsukada et al. JBJS Am 2014

RCTのFlow diagram

Page 51: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Tsukada et al. J Arthroplasty 2016

Case series の Flow diagram

Page 52: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

TAKE HOME MESSAGE 3

後ろ向き研究こそFlow diagramを書く

Page 53: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Results

第二段落に書くもの

→ 一番重要な結果 (Primary Outcomeの結果)

あとは、M&Mで書いた順番通りに

Secondary Outcomeの結果を書いていく

※ ポイント: ResultsはDiscussionではない!

結果だけを書く

『・・・という驚くべき結果が得られた』 と Resultsに記載 → Reject!

Page 54: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Discussionの書き方

Page 55: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

短く!

Discussionの長さ

Page 56: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

第一段落 研究で得られた最も大切な結果を書く

= 仮説の答え

禁忌: Discussionを研究テーマの歴史からはじめる

→ Rapid Rejection !!

研究で得られた大切な結果が複数ある場合

それらもつづけて書く(簡潔に)

Discussionの書き方

Page 57: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

KSSTAのReviewer instruction

The discussion should always start with a brief section dealing

with the principal findings of the study.

参考

KSSTAの査読過程では、2nd revisionで 「Discussionの書き出しを『The most important finding of this study was that』にせよ」と

Editorに必ず言われます。

Discussionのセクションは、

常にその研究についての最も重要な所見から

始めるべきである

Page 58: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

第二段落 研究で得られた最も大切な結果の妥当性を補強する

① 過去の文献との比較による補強

② 自分で理論武装した補強(理屈の上でも結果が妥当、と

いうことを示す。これは最小に。書かなくてもよい。)

Discussionの書き方

参考文献は厳選!

すべて網羅しようとするのはみっともない

参考文献も多いよりは少ないほうがよい

Page 59: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

参考文献の数を増やさないための技

… as described by Mochizuki et al. (2014) and references therein,

孫引きまで含ませるテクニック

Page 60: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

第三段落 研究で得られた重要な知見が2つ以上あるとき

→ 第三段落にそれに対する妥当性を書く

(要領は第二段落と同じ)

Discussionの書き方

Page 61: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

最悪な Discussion

自分の研究のResultsに書いていない内容を論じる

→ Reject!

それは、あなたがそう思いこんでいるだけでしょ!

と思われ、科学的な論文でないと扱われる

Page 62: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

第四段落 Strength & Limitation

① Strengthはできれば書きたい!

② Limitationの記載はDiscussionで最も重要

Discussionの書き方

Limitationを制する者が世界を制す!

Page 63: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Strength

過去の同様の研究と比べて

最もEvidence levelが高いデザイン (はじめてのRCTなど)

→ 文句なしのStrength !!

算出したサンプルサイズを満たす → 『nが多い』ではStrengthではない!!

過去の研究で考慮していない・・・を考慮した

・ 患者背景の統一

・ 新しい評価法

Page 64: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

• Non randomizedである → いつもの書き方

• Sample sizeが少ない → これは許されない(誤った結果を導いている可能性がある)

Sample size計算に見合う症例数は揃える!

Limitation

Limitationでは、自分の研究のバイアスを指摘する

『nが少ない→ nを増やして検討する必要がある』

というのは最低のLimitationの記載

→ nを増やしてから論文書けよ、と言われてReject!

Page 65: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

RCTで無いことに対するLimitationの書き方

Our retrospective study was performed without the randomization of patient selection.

The divided groups in our study underwent posterior stabilized TKA with

same implant and rehabilitation protocol and the preoperative patient background

characteristics had no significant differences in terms of sex, height, weight, body

mass index, preoperative diagnosis, and preoperative range of motion.

But the factor which could not be assessed could distort our results because

of no randomization.

患者背景(既知の交絡因子を網羅)に両群に差は無い。

しかし、ランダム化していないので測定不能な因子によるバイアスがあるだろう。

Tsukada et al. Arch Orthop Trauma Surg 2013

後ろ向き比較試験

Page 66: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Case seriesのLimitationの書き方

This was a case series, and did not include a control group for

statistical analysis of the effectiveness of the BiCONTACT N stem.

比較群が無いので、統計学的な分析ができない

Tsukada et al. J Arthroplasty 2016

Page 67: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

の Limitation返し技

バイオメカ解析を含んでいないというLimitationがあった

The present study also provides important information

for future biomechanical studies not only to clarify the

biomechanics of the fan-like extension fibers but also to

create mathematical models of ACL. Mochizuki et al. KSSTA 2014

Page 68: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Abstractの書き方

Page 69: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Abstractは本文から独立した存在!

前 提 本文を読まなくても

Abstractだけ読めば論文を理解できる

Page 70: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Titleの書き方

Page 71: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

論文を読んでもらえるかは、Title次第!

自分の研究に読者の目をとめさせる

唯一の手段

『この論文の内容を短い文1つで

伝えるとしたら?』の答えがTitle

Page 72: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

最悪のTitle

Studies of…ではじまる

Results of …ではじまる

Report of a case of …ではじまる

Page 73: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Titleの原則

簡潔で短い

研究デザインを示す

断定的でない

Page 74: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Titleの原則

個人的にはBMJのTitleのつけ方が最も優れていると思います。

Page 75: 論文の書き方 後ろ向き研究のアカデミックライティング

Take home messageまとめ

1.RCTではなくてもCONSORTを意識して書く

2.サンプルサイズの計算に必要なもの ① 臨床現場で意味のある差

② 標準偏差

3.後ろ向き研究こそFlow diagramを書く

内容の問い合わせは塚田(北水会記念病院 人工膝関節センター)に

ご連絡ください [email protected]