分子のイオン化法acc · 2007-09-19 · 2...

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1 分子のイオン化法 日立製作所中央研究所 平林

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Page 1: 分子のイオン化法acc · 2007-09-19 · 2 分子のイオン化法は、質量分析分野を中心に発達。 以下では、気相、液相、固相サンプルに対し、

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分子のイオン化法

日立製作所中央研究所

平林 集

Page 2: 分子のイオン化法acc · 2007-09-19 · 2 分子のイオン化法は、質量分析分野を中心に発達。 以下では、気相、液相、固相サンプルに対し、

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分子のイオン化法は、質量分析分野を中心に発達。

以下では、気相、液相、固相サンプルに対し、各々代表的なイオン化法を駆け足で紹介。

イオン化法:

・昔から知られるイオン化現象を利用。

・効果があれば実用化。

エネルギー領域は、数eVが主。

はじめにはじめに

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3

1.はじめに

2.質量分析法の応用

3.気相分子のイオン化

4.液相分子の噴霧イオン化

5.固相分子の脱離イオン化

目次目次

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タンパク質解析用の質量分析装置タンパク質解析用の質量分析装置

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試料 イオン源質量

分析部検出部

質量分析計

情報処理

質量分析計とは質量分析計とは

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質量分析法におけるイオン生成質量分析法におけるイオン生成

イオン

窒素、アルゴン

衝突

衝突誘起解離(CID)を用いたMS/MS分析

前駆体イオン(特定のイオン)

フラグメントイオン

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質量分析法におけるイオン生成質量分析法におけるイオン生成

気体分析 不揮発性物質、生体物質の分析

ポイント:分子量関連イオンの高効率生成。

電子イオン化

電界イオン化表面イオン化光イオン化化学イオン化噴霧イオン化脱離イオン化

破壊的なイオン化

イオン化

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2.質量分析法の応用

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GC(ガスクロマトグラフ)、LC(液体クロマトグラフ)を結合GC(ガスクロマトグラフ)、LC(液体クロマトグラフ)を結合

混合サンプル分離

(GC, LC,,)質量分析計

(MS)

GC/MSやLC/MSによる分析GC/MSやLC/MSによる分析

•m/zが重なるイオンを識別。

•イオン強度の定量性を確保。

インターフェース:イオン源インターフェース:イオン源

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LC/MSを用いた農薬の一斉分析LC/MSを用いた農薬の一斉分析

液体クロマトグラフ

質量分析計

混合サンプル 液体クロマトグラフ

LC

質量分析計

MS

イオン源

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LC/MSを用いた農薬の一斉分析LC/MSを用いた農薬の一斉分析

BUNSEKI KAGAKU 50 (2001)149.

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

0.90

0.95

1.00

1.05

(x10

**6)

a) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 161+163b) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 233c) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 242+198d) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 141+227e) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 370f) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 199g) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 213h) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 239i) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 229j) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 307k) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 326l) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 219

3

2

1 4

5

6

78910

11

12

13

16

14 15

Retention Time(min)

Ion

Inte

nsity

10

0

5

10 20 30 40Retention Time (min)

×105

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

0.90

0.95

1.00

1.05

(x10

**6)

a) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 161+163b) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 233c) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 242+198d) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 141+227e) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 370f) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 199g) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 213h) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 239i) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 229j) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 307k) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 326l) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 219

3

2

1 4

5

6

78910

11

12

13

16

14 15

Retention Time(min)

Ion

Inte

nsity

10

0

5

10 20 30 40Retention Time (min)

×105

保持時間(分)

イオン強度

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

0.90

0.95

1.00

1.05

(x10

**6)

a) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 161+163b) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 233c) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 242+198d) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 141+227e) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 370f) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 199g) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 213h) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 239i) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 229j) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 307k) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 326l) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 219Retention Time(min)

Ion

Inte

nsity

10

0

5

10 20 30 40Retention Time (min)

×105

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

0.90

0.95

1.00

1.05

(x10

**6)

a) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 161+163b) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 233c) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 242+198d) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 141+227e) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 370f) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 199g) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 213h) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 239i) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 229j) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 307k) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 326l) 酸性農薬 0.5S/SSI - 0428 バイアル 1 注入 1 STD 1 - スタンダードスキャン 219Retention Time(min)

Ion

Inte

nsity

10

0

5

10 20 30 40Retention Time (min)

×105

保持時間(分)

イオン強度

マスクロマトグラム(特定のm/zにおけるイオン強度の時間変化)

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ピーク面積

Cx0

100000

200000

300000

400000

500000

600000

700000

800000

900000

1000000

0 10 20 30 40 50 60

試料量(pg)

標準物質による検量線(ピーク面積より、実サンプル量を決定)

LC/MSを用いた農薬の一斉分析LC/MSを用いた農薬の一斉分析

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5 10 15 20 25 30 35 40 45

保持時間(min)

200000

300000

400000

信号強度

保持時間(分)

4020

4

2

×105+H

NHCONHC

CH3

CH3

CH3

151

0

0.2 ppbDymron (M.W. 268)

LC/MSを用いた農薬の一斉分析LC/MSを用いた農薬の一斉分析

全イオン強度

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LC/MSを用いた農薬の一斉分析LC/MSを用いた農薬の一斉分析

m/z

291231

269

m/z

0

100

m/z

269

0

100

151

m/z0

100100 151

0

Ion

Inte

nsity

(a. u

.)Io

n In

tens

ity (a

. u.)

Dymron? Dymronの

標準試料

Dymronの

標準試料MS/MS

衝突誘起解離(CID)

MS/MSスペクトル

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DNA

mRNA

アミノ酸

リポソーム核

アミノ酸が配列したもの⇒ タンパク質

タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)

遺伝子情報 タンパク質

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16100 480 860 1240 1620 2000

m/z

0

20

40

60

80

100

FD L L S L D G T A N K

相対イオン強度(%)

G D L S L L F

A V D D F L L S L D G T A N K

タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)

MS/MSスペクトル

アミノ酸配列:

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照合

タンパク質タンパク質サンプルサンプル

同定同定タンパク質タンパク質

ナノLC MS

DB

MSスペクトル

MS/MSスペクトル

タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)タンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)

0 16.2 32.4 48.6 64.8 81.0020406080

100

保持時間 (分)

全イオン電流

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3.気相分子のイオン化

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磁石

磁石

引き出し電極

リペラー電極

試料ガス

電子ビーム

フィラメント

静電レンズ

イオン放出穴

B

E

e-

P ~ 10-4 Pa

Ⅰ.電子イオン化法(EI)Ⅰ.電子イオン化法(EI)

MS

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Ⅰ.電子イオン化法(EI)Ⅰ.電子イオン化法(EI)

イオンは、分子量関連イオンまたはフラグメントイオン

M + e- → M+ ・ + 2e- (電子エネルギー~70eV)(大抵の物質はイオン化エネルギーが10eV程度。)

M+ ・ → F1+ , F2

+ , F3+ , ,

(フラグメント化)

•分子量が1000以下の揮発性有機化合物の分析に有効。

(炭化水素、油脂、アルカロイド、ステロイド、農薬、ダイオキシン、香料、芳香剤など)

•豊富なフラグメントイオン情報により、物質の特定に有利。

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Ⅰ.電子イオン化法(EI)Ⅰ.電子イオン化法(EI)

大抵は、正イオンが検出。質量スペクトルDB利用可能。http://www.nist.gov/srd/nist1a.htm

M+ ・

ダイアジノン(M.W. 304)の質量スペクトル

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Ⅱ.化学イオン化法(CI)Ⅱ.化学イオン化法(CI)

CIイオン源は、EIイオン源で気体圧力を約10倍上昇させたもの。

⇒ イオン源で、イオンと分子との衝突回数が増加。⇒ 分子量関連イオン生成に有利。

C4H10 + e- → C4H9+ + H + 2e-

C4H9+ + M → [M+H]+ + C4H8

①反応イオンの生成(イソブタンの例)

②化学イオン化(イオン分子反応)

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Ⅱ.化学イオン化法(CI)Ⅱ.化学イオン化法(CI)

代表的なイオン分子反応

[M1+H]+ + M2 → [M2+H]+ + M1

1.プロトン移動反応:プロトン親和力が支配

He+ + O2 → O2+ + He

2.電荷移動反応:イオン化エネルギーが支配

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Ⅱ.化学イオン化法(CI)Ⅱ.化学イオン化法(CI)

ダイアジノン(M.W. 304)の質量スペクトル

EI

CI

M+・

[M+H]+

日立テクニカルデータシート、No. 64.

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Ⅱ.化学イオン化法(CI)Ⅱ.化学イオン化法(CI)

負イオン検出にも有利。

1.電子捕獲(付着)反応:電子親和力(EA)の高い物質に有効。

(電子の多数回衝突→低エネルギー電子の発生)

2.アニオン付加反応(ハロゲン化合物ガスによるF-, Cl-, Br-, I-,等の反応イオン発生)

e- + M → M-・ (電子エネルギー<1eV)

Cl- + M → [M+Cl]-

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Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)

CIは、イオン源圧力が高いほど、イオン化(反応)効率が高い。⇒ イオン源を真空中から大気中に移動(大気圧CI:圧力106倍)

⇒ 反応イオン生成には、コロナ放電を利用。(電子ビーム利用困難)

差動排気部(中間圧力部)

真空ポンプ 真空ポンプ

MS試料ガス

コロナ放電プラズマ(弱電離プラズマ)

約4kV

放電電極(針)

電子エネルギーが比較的低く、試料を破壊しない。

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Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)

放電プラズマは全体で中性だが、正負イオンは分離される。⇒ APCIでは、放電電極への印加電圧の極性に応じて、

分析イオンの極性を変更することができる。

MS

+HV

放電電極(針)

正イオンモード

MS

-HV

放電電極(針)

負イオンモード

[M+H]+ [M-H]-

M-e-

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Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)Ⅲ.大気圧化学イオン化法(APCI)

イオン電流

10-7

10-8

10-9

10-10

0 10 20 30 40時間(秒)

(A)

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

20 70 120m/z

信号強度 64

96

12898

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

20 70 120m/z

信号強度 64

96

12898

S2-

S3-

S4-

青線:m/z = 96赤線:m/z = 98

危険物の実時間モニター

黒色火薬

10-11

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難揮発性物質のイオン化難揮発性物質のイオン化

加熱による気化?

気体化せずに直接イオン化する?

熱分解し、分子量関連イオンが生成しない。

1.噴霧イオン化現象の利用2.脱離イオン化現象の利用

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4.液相分子の噴霧イオン化

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31

0

20

40

60

80

100

0 200 400 600 800 1000m/z

n=16

n=17

n=18

n=19

n=15

n=14

n=13

[M + nH] n+

チトクロムC(M.W. 12300)

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

イオン強度

プロトン付加分子が生成、高極性物質の場合は多価イオン生成。

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大気テイラーコーン

帯電液滴細管(キャピラリー)

MS

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

1.高電界により液体コーンが形成。2.先端から帯電液滴が静電力により生成。

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Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

印加電圧

全イオン量

ESI 放電

200V

使用範囲

不安定

不安定

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テイラーコーン 帯電液滴

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

安定なテイラーコーン ⇒ 直径の揃った帯電液滴

30 /)( KQgd εεε= ~ 1ミクロン

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Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

帯電液滴(約1μm)

イオン間静電反発力と液体表面張力が同等に。

レイリー限界

液滴は不安定化、複数の液滴に分裂

気化

溶媒の蒸発

帯電液滴(約10nm)

噴霧

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Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

Rayleighの不安定条件

クーロン反発力が液体の表面張力と同等になると、液滴は分裂する(Rayleigh分裂)

ddNe πγ

πε2

41

2

22

0

=

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+

+

d=3μm d=1.9μm

d=0.2μm

d=1.7μm

d=0.02μm

462μs

72μs

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

Anal. Chem. 65 (1993) 972A.

Rayleigh分裂は不均等。

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電荷残留

イオン蒸発

表面電界~1V/nm

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

帯電液滴からのイオン生成

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+S

SS

SS

SS

+S

SS

SS

SS

droplet

+S

SS

SS

SS+

SS

S

SS

SS

x

δ

帯電液滴から溶媒和イオン蒸発

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

( )

( )⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

−+Δ−

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

−+

δπε

πεπε

22

1622

0

2

2

0

2

0

dNeG

xe

xdNeG

s

x

エネルギー障壁ΔG:ΔGxの最大値

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+S

SS

SS

SS

+S

SS

SS

SS

droplet

+S

SS

SS

SS+

SS

S

SS

SS

x

δ

帯電液滴から溶媒和イオン蒸発

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

SGd

NeG Δ−−

−=Δ2

144 0

2

πε

E~109 V/m の場合に、

イオン蒸発を確認。

ΔG≦0の場合にイオン蒸発が発生。⇒ N∝d2 の関係が成立。

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Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

液体コーン(テイラーコーン)

安定なテイラーコーン形成が重要。・液体の電気伝導度、表面張力、流量により決定。

純水(低い電気伝導度、高い表面張力)の噴霧は困難。通常、液体に酢酸や蟻酸を0.1-1%だけ添加。

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開発初期のESI:流量=1~10μL/分

ナノESI:流量≦1μL/分

蒸発

Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)Ⅰ.エレクトロスプレーイオン化法(ESI)

蒸発

蒸発効果抑制→安定な液体コーン形成

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Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)

試料溶液

ガス流

・高速ガス流を用いた噴霧により、イオン生成。・生成イオン量はガス流速に依存し、音速時に最大。

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10ns-flash shadowgraph

Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)

液体

ガス

ガス

剪断力による液滴の生成

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00.20.4

0.60.81

0 1 2 3 4 5 6

音速

ガス流量 (L/min)Droplet Diameter ( m)μ

イオン強度

0

20

40

60

80

100

0 1 2 3 4 5

トリエチレングリコール

(不揮発性液体)

Abu

ndan

ce (%

)

噴霧により生成される液滴のサイズは音速時に最小。

Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)

Anal. Chem. 66 (1994) 4557.

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帯電液滴

ガス流

Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)

Droplet surface

0.1μm

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Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)Ⅱ.ソニックスプレーイオン化法(SSI)

0.1 1.0

帯電液滴の直径 (μm)

μ = 1.1 x 10-5

(m /V2 s)

4.8 x 10-6

1.8 x 10-6電荷数

移動度(印加電圧)

Int. J. Mass Spectrom. Ion Proc. 175 (1998) 277.

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1.ガス噴霧により、帯電液滴の気化を促進。2.噴霧ガスには、窒素ガスを使用。3.液体流量:1~1000μL/分

液体コーン(テイラーコーン)

液滴金属キャピラリー

大気

噴霧ガス

ガス

Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法

ガス噴霧支援エレクトロスプレー

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大気

帯電液滴

細管(キャピラリー)

MS

ガス

差動排気部

Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法

移動度の差により帯電液滴を排除。

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50窒素ガス

質量分析部

ガス イオン取り込み細孔(径0.4mm)差動排気部

RP(500L/分)

TMP(300L/分)

カウンターガス

オクタポールイオンガイド

Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法

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1

067.0PP

Dl =Po P1

超音速噴流 マッハディスク

高圧側 l

Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法Ⅲ.ガス噴霧支援エレクトロスプレーイオン化法

断熱膨張 ⇒ 冷却によるクラスター化

細孔(内径D)

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5.固相分子の脱離イオン化

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Ⅰ.レーザー脱離イオン化法Ⅰ.レーザー脱離イオン化法

サンプルイオンレーザー光

サンプルプレート

パルスレーザー光照射による固体表面のスパッター現象を利用。

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Ⅰ.レーザー脱離イオン化Ⅰ.レーザー脱離イオン化

Appl. Phys. Lett. 77 (2000) 2464.

銅板にピコ秒(35ps)のNd:YAGレーザー(λ1.06μm)を照射。

表面の銅が局所的に溶解、気化。電子(密度~1026m-3、数10eV)が表面から放出。EIによりイオン化。

イオン生成に数100ps必要。

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Ⅰ.レーザー脱離イオン化Ⅰ.レーザー脱離イオン化

金属表面に有機物を塗布し、レーザー光を照射しても、分子量関連イオンが生成されない。⇒ 多種類のフラグメントイオンが観測されるが、解析困難。

そこで、試料にグリセリンなどの難揮発性物質(マトリックス)を混合。

さらに、金属微粒子をマトリックスに混入。

⇒ 分子量34,000のタンパク質の分析に成功。

K. Tanaka, et. al., Proceedings of the Second Japan-China Joint Symposium on Mass Spectrometry, Osaka, 1987, p. 185.

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サンプルプレート

5~20 μL 乾燥、結晶化

Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

サンプルプレート

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Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

マトリックスの急激な温度上昇による気化、及び、イオン化。

過剰エネルギーはマトリックスが吸収。

+

レーザー光

マトリックス分子

+

-

-

ターゲットプレート

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Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

ターゲットプレート

[m-H]- [M+H]+

[M+H]+

[m-H]-レーザー光

マトリックス分子

[m-H]-

帯電したマトリックスクラスター

脱離の初期

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Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

1.脱離の初期:統計的な帯電

2.高温、高圧プルームでの反応

結晶中のイオンが、帯電クラスターに。帯電クラスターからマトリックス分子が気化。

気相イオン分子反応。(プロトン移動、電荷交換)

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Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

1.レーザー(UV, IR)

2.マトリックスの選択 ⇒・レーザー光波長での

吸収係数が高い。・試料分子が電荷を

帯びる環境を提供。

3.大過剰マトリックスに試料を混合、結晶化

3.レーザー光強度(数10~100J/m2)

マトリックス 主な対象物質

DHBA (2, 5-dihydroxybenzoic acid)

合成高分子、

低分子有機化合物、糖類

HABA (2-(4-hydroxyphenylazo) benzoic acid)

合成高分子、

低分子有機化合物

SA (Sinapinic acid) タンパク質、

ペプチド

CHCA (α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)

ペプチド

代表的なマトリックス

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Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

飛行時間型質量分析計(TOFMS)との結合では、

「イオンがエネルギー的、空間的に収束される」

ことが、感度や分解能に重要。

ところが、レーザー光照射直後は、イオンのエネルギー幅が広い。 ⇒ 待つ。

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レーザー光照射

プルーム(高温高圧プラズマ)

冷却

~1μs

Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

レーザー光照射から1μs程度遅らせ、イオンビームを発生させる。⇒ Delayed Extraction

ビーム

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レーザーミラー

デフレクター

レンズ

サンプルプレート

TOF

V1 V2

Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)Ⅱ.マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)

Delayed Extraction法:レーザー光照射後、1μs程待つ。

V1

V2

~1μs

Anal. Chem. 67 (1995) 1998.

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気相分子のイオン化法

EI:電子との衝突によるイオン化。

CI, APCI:反応イオンの生成と気相イオン分子反応。

液相分子の噴霧イオン化法ESI:安定な液体コーンからの帯電液滴の静電的な放出。SSI:音速ガス流の剪断力による帯電液滴の生成。噴霧ガス支援ESI:静電力と剪断力による帯電液滴の生成。

固相分子の脱離イオン化法

LD:レーザー光照射によるスパッター(溶解、気化、EI)。

MALDI:マトリックス中イオンによる統計的帯電とCI。

まとめまとめ