質量分析 ～イオン化と分析計～

九州大学大学院薬学研究院

宮本智文

生体高分子の同定と構造解析手法の開発

生体高分子の質量分析におけるソフト脱離イオン化法の開発

生体高分子の核磁気共鳴スペクトルによる三次元立体構造解析手法の開発

質量分析（Mass Spectrometry)

クロマトグラフィー（GLC,HPLC,TLC)

試料調製

ESI

MALDI

FAB

EI

CI

磁場型

四重極型

飛行時間型

イオントラップ型

検出器

データ処理システム

m/z

イオン強度

74.17147.33

1+2+

試料導入からマススペクトルが得られるまでの概念図

間接

直接

イオン源 分析計

MS/MS

イオン化法について

＊エレクトロスプレーイオン化（ESI）法

2002年 Jhon B. Fenn

＊マトリックス支援レーザー脱離イオン化（MALDI）法

2002年 Koichi Tanaka

＊高速原子衝撃（FAB）法

＊電子イオン化（EI）法

＊化学イオン化（CI）法

1950～60年代1970年代1980年代1990年代

EI法CI法FAB法ESI,MALDI法

M + NH4+ [M + NH4]+

分子（中性）

- -

＋（カチオン）

＋

中性脱離分子

イオン

イオン化

フラグメンテーション

M + e- [M] + 2e-+

分子イオン（カチオンラジカル）

EI, CI法：分子量が1000程度以下の揮発性の高い低分子の試料

凝集相にある試料化合物をイオンとして気相に取り出すこと

EICI

EI : Electro Ionization CI : Chemical Ionization

電子イオン化法 (EI) / 化学イオン化法 (CI)

EI, CI法：分子量1000程度以下の揮発性の高い低分子の試料

CIでは、イオン化室内に試薬ガスを封入することで、試料分子より先に試薬ガスがイオン化し、次に試料がそれらによってイオン化されるためEIよりもソフトなイオン化ができる

GCMS-QP5050A(Shimadzu)

高速原子衝撃（FAB）法

M + H, Na, K, -H[M+H]+

[M+Na]+

[M+K]+

[M-H]-

FAB法：分子量が3000程度までの熱に不安定な試料や難揮発性の試料

SX102(JEOL)

二次電子増倍管

測定プローブ

マトリックス（グリセロール）＋サンプル

ESI : Electrospray Ionization APCI : Atmosphere Pressure Chemical Ionization

• 分子量10万程度まで• 難揮発性や熱に不安定な試料

エレクトロスプレーイオン化法 (ESI) / 大気圧化学イオン化法 (APCI)

• 分子量10万程度まで• 低～中極性化合物に適用

エレクトロスプレーイオン化（ESI）法

エレクトロスプレーイオン化（ESI）法

M + nH+ [M + nH]n+

[M - nH]n-M - nH+

microTOF II (BRUKER)

マトリックス支援レーザー脱離イオン化（MALDI）法

MALDI法：分子量が100万程度までの分子について測定可能。現在使用されている質量分析計のイオン化法の中で最も高質量領域まで測定可能。

M

パルスレーザー（3ns, 337nm）

[M+H]+

[M+Na]+

[M-H]-

マトリックス

UFMP

超微粒金属粉末（Ultra Fine Metal Powder)

グリセロール

Autoflex III (BRUKER)

分析計について

磁場型

四重極型

イオントラップ型

飛行時間型

イオンを質量の違いで分離する分析計

+++

+++磁場型

四重極型

イオントラップ型

飛行時間型TOF(time-of flight) k=qVk=1/2mv2

t = 72.0 ｘ l ｘ m/z ｘ 1/V

質量100万ダルトンの

１価タンパク質を20kVで加速すると2mの距離を飛ぶのに要する時間はたったの1msである。

k: イオンの運動エネルギーq: イオンの電気量V: イオンの加速電圧v: イオンの速度m: イオンの質量t: 飛行時間(μs)l: 飛行距離(m)z: イオンの価数

測定装置の選択

測定法

溶解性

物 性

試 料測定試料

（分子量の異なる混合物）

分子量 ： 700以下

融 点 ： 200℃以下

脂溶性 水溶性

高分子量

難揮発性・熱分解性

脂溶性 水溶性

GC-MSDI-MS

FAB-MS ESI-MS

MALDI-TOF-MS

イオン化法の選択

イオン化法 対象試料 分子量 試料量

EI, CI揮発性の高い固体、液体、気体（400℃程度で10-2～10-4Paの蒸気圧を有する有機化合物）

1,000 u以下 1 ng 以下

SIMS, FAB 熱不安定物質、難揮発性物質、生体内物質

10,000 u以下 数百pmol 以上

MALDI 熱不安定物質、難揮発性物質、生体高分子、合成ポリマー

1,000,000 u以下 数fmol以上

APCI 熱に不安定な中性～中極性有機化合物 1,000 u以下 数十pmol以上

ESI 熱不安定物質、難揮発性物質、生体高分子、複合糖質、極性有機化合物

200,000 u以下 数 pmol以上

参 考 文 献

１）志田保夫 他著「これならわかるマススペクトロメトリー」、化学同人（２００１）

２）大島泰郎 他著「日本生化学会編、基礎生化学実験法 第３巻」、東京化学同人（２００１）

３）平山和雄 他著「マススペクトロメトリーってなあに」、日本質量分析化学会（２００１）

４）池内俊彦 著、「タンパク質の生命科学」、中央公論新社（２００１）５）泉 美治 他編

「生物化学実験のてびき２，タンパク質の分離・分析法」、化学同人（１９８５）６）「化学」１月号、第５８巻、化学同人（２００３）７）田中耕一、「産官学連携サミット特別講演」２００２年１１月１８日８）島津製作所、「AXIMA-CFRデーター集」９）ノーベル電子ミュージアム公式ホームページ（http://ww.nobel.se/）１０）日本質量分析学会ホームページ（http://www.mssj.jp/）１１）島津製作所ホームページ（http://www.shimadzu.co.jp/）