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22
は じ め に 『読む力  ちゅう きゅう 』は、大学や大学院、専 せん もん 学校で学んでいる人、これから学ぼうとする 人、そして、「中級のかべ 」を越えたいと思っている人をたい しょう にしたきょう ざい です。読むことにお いて「中級の壁」というのは、社会や専門分野で出会うさまざまなぶん しょう しょう さい てん までかい したり、 ひょう めん てき な意見や じょう ほう ばかりでなく、がん された意見や立場なども理解したりす ることを言います。この壁を越えれば、大学などで学ぶための じゅん が十分に ととの った読みの 上級者になることができます。本書は、上級者をして「中級の壁」を越えるだい 一歩をみ出したいと思っている学習者のために作りました。 みなさんは、日本語の文章を読んだときに、「ことばの意味は分かるのに、言いたいこと が分からない」というけい けん はありませんか。母語で書かれた文章を読むときにも、同じこ とが起こります。 げん いん は四つ考えられます。一つ目は、文章自体に問題があるあい です。これは書き手の問 題ですから、分からなくてとうぜん です。二つ目は、文章のテーマや話題について、読み手に あまりしき や経験がない場合です。三つ目は、読み手にひょう げん の知識と文またはだん (文 章)のぶんぽう 知識が足りない場合です。そして、四つ目は、読み手の文章の理解力が低 ひく い場合 です。文章の理解力というのは、ことばの文字通りの意味だけではなく、文と文やだんらく 段落などのかんけいせい 係性や話のてんかい などを考えながら、書き手がつた えようとするないよう や情報、ある いは意図やしゅ ちょう を理解するのう りょく です。少し むずか しいこと でいうと、にん しょ の能力というこ とです。 「中級の壁」を越えるには、特に、三つ目の日本語の知識と四つ目の文章の理解力、つま り認知処理の能力がひつよう です。大学等 など で学ぶということは、文章のテーマや話題になって いる専門 りょう いき の知識を得 たり、考え方を学んだり、そこでの問題をかいけつ したりする力を やしな うことです。そのためには、日本語の知識と認知処理の能力がひっ です。 本書は、専門領域の内容そのものは あつか いませんが、みなさんが専門分野の文章を読むと きにやく つと考えられる内容で、書き手の立場やてん めいかく な文章をえら んであります。そし て、日本語の知識と認知処理を日本語で行うための力をにつける問題をかずおお く入れま した。その認知処理のスキルをめい したのが、本書の新しい点です。 本書が、みなさんにとって、上級者への一歩を踏み出す一助となればさいわ いです。 2011 年 こう にてを待ちつつ おく じゅん iii 「著作権保護コンテンツ」

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は じ め に

 『読む力 中ちゅう

級きゅう

』は、大学や大学院、専せん

門もん

学校で学んでいる人、これから学ぼうとする

人、そして、「中級の壁かべ

」を越えたいと思っている人を対たい

象しょう

にした教きょう

材ざい

です。読むことにお

いて「中級の壁」というのは、社会や専門分野で出会うさまざまな文ぶん

章しょう

を詳しょう

細さい

な点てん

まで理り

解かい

したり、表ひょう

面めん

的てき

な意見や情じょう

報ほう

ばかりでなく、含がん

意い

された意見や立場なども理解したりす

ることを言います。この壁を越えれば、大学などで学ぶための準じゅん

備び

が十分に整ととの

った読みの

上級者になることができます。本書は、上級者を目め ざ

指して「中級の壁」を越える第だい

一歩を踏ふ

み出したいと思っている学習者のために作りました。

 みなさんは、日本語の文章を読んだときに、「ことばの意味は分かるのに、言いたいこと

が分からない」という経けい

験けん

はありませんか。母語で書かれた文章を読むときにも、同じこ

とが起こります。

 原げん

因いん

は四つ考えられます。一つ目は、文章自体に問題がある場ば

合あい

です。これは書き手の問

題ですから、分からなくて当とうぜん

然です。二つ目は、文章のテーマや話題について、読み手に

あまり知ち

識しき

や経験がない場合です。三つ目は、読み手に語ご い

彙 ・ 表ひょう

現げん

の知識と文または談だん

話わ(文

章)の文ぶんぽう

法知識が足りない場合です。そして、四つ目は、読み手の文章の理解力が低ひく

い場合

です。文章の理解力というのは、ことばの文字通りの意味だけではなく、文と文や段だんらく

落と

段落などの関かんけいせい

係性や話の展てんかい

開などを考えながら、書き手が伝つた

えようとする内ないよう

容や情報、ある

いは意図や主しゅ

張ちょう

を理解する能のう

力りょく

です。少し難むずか

しい言こと

葉ば

でいうと、認にん

知ち

処しょ

理り

の能力というこ

とです。

 「中級の壁」を越えるには、特に、三つ目の日本語の知識と四つ目の文章の理解力、つま

り認知処理の能力が必ひつよう

要です。大学等など

で学ぶということは、文章のテーマや話題になって

いる専門領りょう

域いき

の知識を得え

たり、考え方を学んだり、そこでの問題を解かいけつ

決したりする力を 養やしな

うことです。そのためには、日本語の知識と認知処理の能力が必ひっ

須す

です。

 本書は、専門領域の内容そのものは扱あつか

いませんが、みなさんが専門分野の文章を読むと

きに役やく

立だ

つと考えられる内容で、書き手の立場や視し

点てん

が明めいかく

確な文章を選えら

んであります。そし

て、日本語の知識と認知処理を日本語で行うための基き そ

礎力を身み

につける問題を数かずおお

多く入れま

した。その認知処理のスキルを明めい

示じ

したのが、本書の新しい点です。

 本書が、みなさんにとって、上級者への一歩を踏み出す一助となれば幸さいわ

いです。

2011 年 神こう

戸べ

にて東こ

風ち

を待ちつつ

奥おく

田だ

純じゅん

子こ

iii「著作権保護コンテンツ」

目  次

はじめに ....... iii     この本の使い方 ....... v

第1課 心のバリアフリー —靴と車椅子 ...................................................................................... 1 □乙武洋匡(著)

第2課 30 代ビジネスマンの「心の病」を考える ................................................ 9 □香山リカ(著)

第3課 「少女マンガ家ぐらし」へ —夢を叶える ................................................................. 19 □北原菜里子(著)、岩波書店編集部(編)

第4課 プロフィール —夢を実現させ続ける外食産業の雄 ........................................................... 27 □村上龍(著)、テレビ東京報道局(編)

第5課 インタビュー —夢に日付を入れれば、今日やるべきことがわかる ................................ 35 □村上龍(著)、テレビ東京報道局(編)

第6課 いつも学びがある —患者からも学ぶ。それを伝える役割がある。 ............................ 45 □テレビ東京報道局(編)

第7課 「早朝時間」のフル活用で成功した人たち .................................................. 53 □箱田忠昭(著)

第8課 緑のカーテン .......................................................................................................................... 65 □『西日本新聞』「春秋」2007.8.10

第9課 環境立国ニッポンの挑戦 —第 1 章 水資源(4)進む廃水浄化 再利用「当たり前」 .. 73

□『産経新聞』2008.1.23

第10課 渡り鳥はなぜ迷わない? ............................................................................................. 81 □東嶋和子(著)、北海道新聞取材班(著)

第11課 フリーズする脳 —思考が止まる、言葉に詰まる ............................................................. 91 □築山節(著)

iv 「著作権保護コンテンツ」

対た い

象しょう

とする学習者

○大学、専せん

門もん

学校等など

で学んでいる人、学ぼうとしている人

○アカデミックな日本語を読めるようになりたい人

○日本語能のう

力りょく

試験(N1、N2)、日本留りゅう

学がく

試験に向けて読どっ

解かい

の勉強をしたい人

この本の特と く

徴ちょう

特徴 1 ... 学習目もく

標ひょう

が見える!

この本で達たっ

成せい

する大きな学習目標です。

[できること 1]を細こま

かく分けたのが、[できること 2]です。その課の勉強は

何のためか、これを勉強することによって何ができるようになるのかがわ

かります。

できること 1できること 2

第1課〜第5課

比ひ

較かく

的てき

身み

近ぢか

なテーマのコラム・エッセイ・伝

でん記き

・対たい

話わ

を読んで、事じ

実じつ

関かん

係けい

や物事の経

けい緯い

、筆ひっ

者しゃ

の主しゅ

張ちょう

や意い

図と

が把は

握あく

できる

コラムやエッセイを読んで、筆者の主張や意図が把握できる

第 1課、第 2課

プロフィールや伝記を読んで、描えがかれた人物がたどっ

た経緯が把握できる第 3課、第 4課

対話形けい式しきのテキストを読んで、テーマに沿

そって発言の

要よう点てんが把握できる

第 5課

第6課〜第11課

新聞・雑ざっ

誌し

のコラムや解かい

説せつ

文、教きょう

養よう

書しょ

を読んで、詳しょう

細さい

な事実関係や現げん

状じょう

、展てん

望ぼう

背はい

景けい

、因いん

果が

関係、理り

由ゆう

、根こん

拠きょ

などが把握できる

伝記やドキュメンタリーを読んで、描かれた人物の特

徴が把握できる

第 6課

自じ己こ啓けい発はつ書の一

いっ節せつを読んで、筆者の提

てい案あんとその根拠が把

握できる

第 7課

新聞のコラムや特集記事を読んで、取とり上

あげられた事

象しょうの現状、展望、原因、問

もん題だい点てんなどが把握できる

第 8課、第 9課

一般向けの解説文を読んで、事実関係、背景、方ほう法ほう、

原因、理由などが把握できる

第10課、第 11 課

できること 1 できること 2

◉ 各かく

課か

の学習目標には[できること 1]と[できること 2]の2つがあります。

v

こ の 本 の 使 い 方

「著作権保護コンテンツ」

特とく

徴ちょう

2 ... 必ひつ

要よう

なスキル(技ぎ

能のう

)がはっきりわかる!

◉ 課か

のはじめに「この課で身み

につけるスキル(スキル表ひょう

)」があります。スキルは、全ぜん

体たい

把は

握あく

と認にん

知ち

タスクを解と

くことによって確かく

認にん

できます。「タスク(問題)」⇒「スキル(技能)」⇒「学習目もく

標ひょう

(できること)」というつながりがはっきり見えます(スキルの内ない

容よう

については pp.xi-xii を参さん

照しょう

)。

vi

比ひ

較かく

的てき

身み

近ぢか

なテーマのコラム・エッセイ・伝でん

記き

・対たい

話わ

を読んで、事じ

実じつ

関かん

係けい

や物事の経けい

緯い

、筆ひっ

者しゃ

の主しゅ

張ちょう

や意い

図と

が把は

握あく

できる

コラムやエッセイを読んで、筆者の主張や意図が把握できる

タスク番号扌

自分でわかった

授業でわかった

メタ・コンテンツを把握する 【全体 1】

論ろん

点てん

を把握する

◦ 文章全体の論点が何かを把握する 【認知 9】

論ろん

理り

展てん

開かい

を予よ

測そく

・ 把握する◦ 「障害者は、障害者でなくなる」という主張の論拠を

把握する【認知 1】

◦ 障害者の移動について「環境が整っている/いない」とは具体的に何を指すかを把握する

【認知 2】

◦ 何が障害を生み出していると言っているかを把握する 【認知 3】

◦ 「車椅子の人」を「かわいそう」と見る論拠を把握する【認知 6】

できること 1

できること 2

スキル表

>全体 論点を把握する

9. 筆者の論点として適当なものを選びなさい。

a. 環境が整備されれば、体の不自由な障害者は障害者でなくなる。

b. 社会は障害者を守るためにもっと努ど力りょくすべきだ。

c. 障害者は何でも一人でできるので、援えん助じょは最小限にすべきだ。

d. 環境が変わり、障害者が自由に行動できる世の中になった。

タスク

この課のスキルを身に

つけるとできること

このタスクを解くと

身につくスキル

﹇できること1・2﹈

達成に必要なスキル

このスキルを使って

解くタスク

この課で身につけるスキル

チェックボックスタスク番号【全体 1】→ 全体把握 1.【認知 1】→ 認知タスク 1.

評ひょう価かしてみよう

「著作権保護コンテンツ」

◉ 巻末には「スキル一覧表」があります。その課の学習を終えて、それぞれのスキルが身につ

いたかどうかを自じ

己こ

評ひょう

価か

し、チェック してみましょう。得意なスキル、苦手なスキル(あ

なたに必要なスキル)を把握して、スキル向こう

上じょう

に役やく

立だ

てましょう。

習 目 標

できること① 比較的身近なテーマのコラム・エッセイ・伝記・対話を読んで、事実関係や物事の経緯、筆者の主張や意図が把握できる

できること②コラムやエッセイを読んで、筆者の主張や意図が把握できる

プロフィールや伝記を読んで、描かれた人物がたどった経緯が把握できる

各課詳細

課 第 1 課 第 2 課 第 3 課

タイトル心のバリアフリー 30 代ビジネスマ

ンの「心の病」を考える

「少女マンガ家ぐらし」へ

   身 に つ け る ス キ ル

メタ・コンテンツを把握する ● ● ●

全体の流れを把握する ● ●

テーマを把握する

論点を把握する ● ●

論理展開を予測 ・ 把握する ● ● ●

明示的な主張・意図を把握する ● ●

結論を把握する

vii

◉「この課か

で身み

につけるスキル(スキル表ひょう

)」のチェックの仕方

タスクを解く

タスクを解と

いた後、自分で「この課で身につけるスキル(スキル表)」や巻かん

末まつ

の「スキル一いち

覧らん

表」

にチェック してみてください。得とく

意い

なスキル、苦にが

手て

なスキル(あなたに必ひつ

要よう

なスキル)がわ

かります。自分の弱よわ

い部ぶ

分ぶん

を知って勉強すれば、読む力が確かく

実じつ

に身につきます。

何ができたの?→得意なスキル

何ができるようになったの?→苦手なスキル=必要なスキル

タスク番号扌

自分でわかった

授業でわかった

論ろん

点てん

を把は

握あく

する

◦ 筆者の論点を把握する 【認知 9】

評価してみよう

チェックボックス

「著作権保護コンテンツ」

特とく

徴ちょう

3 ... アカデミックな読みをするための 3 種しゅ

類るい

のタスク

◉大学、専せん

門もん

学校で必ひつ

要よう

とされるアカデミックな読みとは?

◉ 各課にはアカデミックな読みをするための 3 種類のタスク (「全体把握」「言語タスク」「認知タ

スク」) があります。

■ 言語処しょ

理り

とは?

ことばの意味や用よう

法ほう

文ぶん

法ぽう

な ど の 知ち

識しき

使って、文ぶん

章しょう

を文字

通りに理り

解かい

すること

⇩アカデミックな読み

1.全体把握 

2.言語タスク

3.認知タスク

メタ・コンテンツ(次ページ参照)と文章の種類を問うタスクです。段だん

落らく

を正しい順じゅん

序じょ

に並なら

べ替か

えたり、どのような読どく

者しゃ

層そう

を対たい

象しょう

に書かれた文章か把握したりするタスクもあります。

テキストを読んで、そこに書かれたことはつまり何なのか、というメタ・コンテンツの 形かたち

にまとめる力は、レジュメやレポートを書くときに必要です。まず、時間をかけずにサッ

と読んで、解と

いてみてください。もし、分からなかったら、「言語タスク」「認知タスク」

を解いた後でもう一度考えてみてください。

「認知タスク」を解くために必要な言語処理を問う問題なので、「認知タスク」を解く前に

解いた方が効こう

果か

的てき

です。

言語処理だけでなく、認知処理を同時に必要とするアカデミックな問題です。

言語処理 認知処理

例:語ご

彙い

・文法 例:論ろん

理り

展てん

開かい

  把は

握あく

viii

■ 認にん

知ち

処理とは?

文字通りの意味を理解する(言語

処理)だけでなく、

「この文章で一番大切なことは?」

「筆ひっ

者しゃ

が言いたいことは?」

「これとこれとの関かん

係けい

は?」

「分かりやすく整せい

理り

するとどうなる?」

「この例れい

は何を説せつ

明めい

している?」

などを考えて理解すること

「著作権保護コンテンツ」

メタ・コンテンツとは?

 コンテンツ(内ない

容よう

)そのものではなく、内容をメタ(meta-)に(ひとつ上のレベルから)

捉とら

え直なお

し、名めい

詞し

句く

で端たん

的てき

にまとめたものです。要よう

点てん

や要よう

約やく

ではありません。

 ➡「コンテンツ」と「メタ・コンテンツ」の違いは?

① 明日は朝のうちは晴は

れますが、午後から崩くず

れだし、雨になるところもあ

るでしょう。

△ 明日の天気が悪くなる ←コンテンツ

○ 明日の天気予よ

報ほう

 ←メタ・コンテンツ

② 電車内では、周まわ

りのお客きゃく

様さま

のご迷めい

惑わく

にならないよう、携けい

帯たい

電話はマナー

モードに設せっ

定てい

し、車内での通話はご遠えん

慮りょ

ください。優ゆう

先せん

席せき

付ふ

近きん

では、電でん

源げん

をお切りください。皆みな

様さま

のご協きょう

力りょく

をお願ねが

い致いた

します。

△ 電車内では携帯電話を使わないでほしい ←コンテンツ

○ 電車内での携帯電話使用に関するお願い ←メタ・コンテンツ

③ 冬になると空気が乾かんそう

燥し、風か ぜ

邪のウイルスの活かつ

動どう

が活発になります。

風邪を予よ

防ぼう

するには、ウイルスを体内に入れないことです。出かける

ときは、人ごみを避さ

け、帰ったら手て

洗あら

いとうがいをしましょう。また、

抵てい

抗こう

力りょく

を高めることも大切です。そのためには、十分な睡すいみん

眠をとり、

栄えいよう

養のバランスの取と

れた食事をしましょう。

△ 風邪を予防するにはウイルスを体内に入れないことと、抵抗力を高め

ることが重要だ ←コンテンツ

○ 風邪の予防のためのアドバイス ←メタ・コンテンツ

ix「著作権保護コンテンツ」

この本の構こ う

成せ い

■ 読む前に 皆

みなさん自

じ身しん

の考え方、ふるさとの文ぶん

化か

などに関かん

する簡かん

単たん

な質問や、短みじか

い文ぶん

章しょう

が書かれています。

これは、テキストを読む前に、そのテーマやトピックに関する皆さんの知ち

識しき

を引ひ

き出して、興きょう

味み

関心をもってもらうためのものです。クラスでその質問や文章について話し合あ

い、共きょう

有ゆう

しておけば、

より多くの知識を持ってテキストを読むことができます。もし、皆さんがそのテーマやトピックに

関してあまり知らない場ば

合あい

は、テキストを読むために必ひつ

要よう

な知識を得え

ることもできます。

■ 学習目もく

標ひょう

 この課か

の学習を通じて、何ができるようになるのかが、[できること 1][できること 2]に書か

れています(詳くわ

しくは p.v を参さん

照しょう

)。文章を読むとき、普ふ

通つう

は「この機き

械かい

の使い方を知りたい」とか

「手紙の用よう

件けん

を知りたい」など具ぐ

体たい

的てき

な目的があります。この本の本文を読むときにも、「これを読

み取と

ろう」という目的を持って読むことによって、なんとなく読むよりも読む力が格かく

段だん

に高まりま

す。

■ この課で身み

につけるスキル(スキル表ひょう

) この課の学習目標を達

たっ成せい

するために必要なスキルが挙あ

げてあります。これらのスキルは、問題を

解と

くときに使うスキルでもあります。スキルは、全ぜん

体たい

把は

握あく

と認にん

知ち

タスクを解くことによって確かく

認にん

きます。この課の学習を終えたあとで、自分がそのスキルを使えるようになったか、自じ

己こ

評ひょう

価か

して

みてください。最さい

初しょ

に問題を解いたとき、自分ひとりですぐにできた場合は、「自分でわかった」に

チェック を入れましょう。最初はわからなかったけれど、授じゅ

業ぎょう

の中でクラスメートや先生の助たす

けを借りながら理り

解かい

できたという場合は、「授業でわかった」にチェック しましょう(詳しくは

p.vi 〜 vii を参照)。

 各かく

課の評価が済す

んだら、「自分でわかった」が多いスキルと、「授業でわかった」が多いスキルが

見えてきます。読どっ

解かい

に関する自分の得とく

意い

なところと、これからもっと伸の

ばしたいところを、この自

己評価を通じて把握しましょう。

 スキル表のふりがなは、日本語能のうりょく

力試験(旧きゅう

試験)の 2 級きゅう

以上(2 級、1 級、級外)の漢字を使う語

と、固こ ゆ う め い し

有名詞についています(ページ初出のみ)。

 また、2 課、7 課、8 課のスキル表の最後にある「関かん

連れん

語ご

彙い

と表ひょう

現げん

」は、互いに意味上のつなが

りのある語彙や表現です。このつながりに注意すると、テキストの理解が深ふか

まります。

x 「著作権保護コンテンツ」

スキル表の内容

メタ・コンテンツを把は

握あく

するGrasp the meta-contents of the text /掌握大意 / 주요내용을 파악한다

メタ・コンテンツとは、内ない

容よう

をメタに(ひとつ上のレベルから)捉

とらえ直

なおし、名

めい詞し

句く

で端たん

的てき

にまとめたものです。内容の要

よう約やく

ではありません(詳しくは、p.ixを参照)。

全体の流なが

れを把握するGrasp the overall flow of meaning of the text / 掌握总体的流程 / 전체의 흐름을 파악한다

文ぶん

章しょう

全ぜん

体たい

をひとつの話として理り

解かい

することです。話のつながりがわかり、段

だん落らく

を正しい順じゅん

序じょ

に並なら

べ替か

えることができます。

テーマを把握するGrasp the theme / 掌握主题 / 테마를 파악한다

その文章が扱あつか

っているテーマ(主題)を的てき

確かく

に捉えることです。テーマとトピック(話題)が異

ことなる場

ば合あい

や、テーマが直ちょく

接せつ

的てき

に書かれていない場合もあります。

論ろん

点てん

を把握するGrasp the point of argument / 掌握论点 / 논점을 파악한다

論点とは、そこに書かれた主しゅ

張ちょう

やその根こん

拠きょ

の核かく

心しん

(一いち

番ばん

中心的なポイント)です。つまり、「要するに何が言いたいか」です。

論ろん

理り

展てん

開かい

を予よ

測そく

・ 把握するPredict/understand the logical development / 预测掌握逻辑展开/ 논리 전개를 예측・파악한다

書かれたことを論理的に追い、「なぜそう言えるのか」を理

り解かい

すること、論理的に考えて前後の展開や結けつろん

論を推すいそく

測することです。

明めい

示じ

的てき

な主張・意図を把握するGrasp the explicit assertion/intention / 掌握明确的主张・意图 /

명시적인 주장・의도를 파악한다

文中に筆ひっしゃ

者の主張(意見)や意図(言いたいこと)がはっきり表

あらわれているときに、それが読

よみ取

とれるこ

とです。

結論を把握するGrasp the conclusion / 掌握结论 / 결론을 파악한다

筆者の最さい

終しゅう

的てき

な判はん

断だん

を一言でまとめるとどうなるかがわかることです。結論ははっきり書かれている場合とそうでない場合があります。あとの場合は、書かれたことをもとに推測する必要があります。

特とく

定てい

の情じょう

報ほう

のみを抽ちゅう

出しゅつ

するExtract specific information / 只提取特定的信息 /특정의 정보만을 추출한다

必要な情報がどこに書かれているか見つけ出すことです。要

いらないものを捨

すて、必要な部

ぶ分ぶん

だけを取り出します。

比ひ

較かく

・対たい

照しょう

するCompare/contrast / 比较・对照 / 비교・대조한다

「A はこうだが、B はこうだ」と何かを比くら

べた文章を理解することです。分

ぶんるい類の視

し点てん

が筆者独どくとく

特の場合、何と何を対比しているのかを的確に捉えることがポイントになります。

原げん

因いん

と結けっ

果か

の関かん

係けい

を把握するGrasp the relationship between cause and result /掌握原因和结果的关系 / 원인과 결과의 관계를 파악한다

因いん

果が

関係を理解することです。文中で原因と結果が離はな

れている場合や、直接的に書かれていない場合もあります。

構こう

造ぞう

・法ほう

則そく

性せい

を把握するGrasp the structure/principle / 掌握构造・法则性 /구조・법칙을 파악한다

書かれている内容について論理的な構造や法則性(こういう場合はこうなるなど)を整

せい理り

して理解することです(ここで言う「構造」は、文章の文

ぶんぽうてき法的・

言語的構造ではありません)。

xi「著作権保護コンテンツ」

何の例れい

かを把握するGrasp what the example is for / 掌握例举的事例 /

무슨 예인지를 파악한다

例を挙あ

げて何かを説せつめい

明しているとき、「それが何を説明するための例なのか」を理

り解かい

することです。「どんな例か」ではありません。

直ちょく

接せつ

的てき

・間接的引いん

用よう

に注意するPay attention to the direct/indirect quotation /注意直接的・间接的引用 / 직접적・간접적인용에 주의한다

他ほか

の人の言こと

葉ば

や本の内ない

容よう

などを伝つた

える引用部ぶ

分ぶん

と、地の文(筆

ひっ者しゃ

の述の

べていること)を区く べ つ

別して理解することです。引用でも「 」がある場

ば合あい

とない場合があります。

非ひ

明めい

示じ

的てき

な背はい

景けい

・意図を推すい

測そく

するSpeculate on the implicit background/intention / 推测非明确的背景和意图 / 비명시적인 배경이나 의도를 추측한다

書かれたことの背景や意図が直接的ではないが推測できるように書かれている場合に、それを捉

とらえるこ

とです。

複ふく

数すう

の情じょう

報ほう

を関かん

連れん

付づ

けるRelate two or more pieces of information with each other /把复数的信息联系起来 / 복수의 정보를 관련 짓는다

書かれている複数のことが互たが

いに関連している場合に、その関

かんけい係を正しく理解し、関連するもの同

どう士し

を結むす

びつけることです。

発話者を特とく

定てい

するSpecify the speaker / 认定发话者 / 화자를 특정시킨다

文中に複数の人物が登とうじょう

場する場合に、ある言葉を「誰

だれが言ったのか」を正しく捉えることです。

アナロジー・比ひ

喩ゆ

がわかるUnderstand the analogy/metaphor / 判明类推・比喻 /

유추・비유를 알 수 있다

アナロジー(類るい

推すい

)というのは、新しい物事や考え方を説

せつ明めい

するときに、すでに知っていることと比くら

べてみることです。「ああ、こういうことかな」と類推してわかってもらうための説明の手

しゅ法ほう

です。

比喩は、「太たい

陽よう

のように明るい人」や「人生は旅だ」のように、一つのものを何か他のものに喩

たとえること

です。「人生は旅だ。計画してもその通りには行かない。だが、そこがおもしろい。」のように、喩えるものの間に共

きょう通つう

の物語や関係や構こう

造ぞう

があるものは、比喩でもあり、同時にアナロジーでもあります。

❖[アナロジーを使った説明の例れい

]「過

か こ去にこだわらずに前に進

すすむこと」を説明するた

めに、下か

線せん

部ぶ

のコップの話を、アナロジーとして使っています。

 ときどき、これまでのやり方や過去の成せいこう

功体験にこだわって、新しい方法や考え方を受

うけ入れられな

い人がいる。だが、それでは進しん

歩ぽ

も成長もない。過去にこだわらずに前に進もう。コップに新しい水を入れるには、今、入っている水を捨

すてなければなら

ないのだ。

xii 「著作権保護コンテンツ」

■ テキスト 文

ぶん章しょう

の種しゅ

類るい

としてはエッセイ、対たい

話わ

文、新聞記き

事じ

、解かい

説せつ

文など、ジャンルとしては自じ

己こ

啓けい

発はつ

、経けい

済ざい

、環かん

境きょう

、福祉など、大学などにおいて出会う多た

様よう

なものが選えら

ばれています。内ない

容よう

的てき

には、専せん

門もん

的てき

なテキストを読む前まえ

段だん

階かい

として、一いっ

般ぱん

向む

けの文章で認にん

知ち

処しょ

理り

が必ひつ

要よう

なものが選ばれています。全すべ

て、

日本人向む

けに書かれた生の文章です。

 ふりがなは、日本語能のうりょく

力試験(旧きゅう

試験)の 1 級きゅう

以上(1 級と級外)の漢字を使う語と、固こ

有ゆう

名めい

詞し

につ

いています(ページ初出のみ)。それ以外で読み方のわからない語は、語ご

彙い

リストで調しら

べましょう。

■ 全体把握・言語タスク・認知タスク

 「この本の特とく

徴ちょう

 特徴3(p.viii)」を参さん

照しょう

してください。

■ 巻かん

末まつ

「スキル一いち

覧らん

表ひょう

」 巻末の「スキル一覧表」には、各

かく課か

の学習目もく

標ひょう([できること 1][できること 2])、「この課で身

につけるスキル」が一覧で示しめ

してあります。その課の学習を終えたら、身についたスキルを自己評ひょう

価か

し、チェックを入れましょう(詳くわ

しくは p.vii を参照)。

タスクを解と

「この課か

で身み

につけるスキル(スキル表)」をチェック

巻末「スキル一覧表」もチェック

チェックの多いスキルは? 少ないスキルは?あなたに必

ひつよう要なスキルがわかる

身につけたいスキルを勉強できる課を「スキル一覧表」で探

さがす

自分が身につけたいスキルに対たいおう

応した課のタスクを解いてみる

⬇ ⬇

⬇⬇

▶▶▶こんな使い方ができます

スキルがアップ!= 読む力がアップ!

xiii「著作権保護コンテンツ」

■ 別べっ

冊さつ

「語ご

彙い

リスト」その課の語彙の英語、中国語、韓

かん国こく

語訳がついています。予よ

習しゅう

、復ふく

習しゅう

に使ってください。

■ 第 2 課 30 代ビジネスマンの「心の病」を考える

2 病 やまい illness 病患 병

~傾向にある ~けいこうに ある to have a tendency to~ 有~倾向 경향이 있다

外 メンタルヘルス mental health 心理健康 정신적 건강

1 対応する たいおう -する to correspond 对应,应付 대응하다, 대처하다

2 回復する かいふく -する to recover 恢复 회복되다

外 直属 ちょくぞく direct; immediate 直属 직속

外◆ 法務 ほうむ legal affairs 司法 법무

級 ことば 読み方 英語 中国語 韓国語

[凡 例]1=日本語能

のう力りょく

試験(旧きゅう

試験)の1級きゅう

の語彙、2=2 級、3=3 級、4=4 級(*旧試験の1級はおよそ新試験のN1に、2級はN2に、3級はN4に、4級はN5に相当します。)

外=日本語能力試験の級外で覚おぼ

えたほうがよいもの

外◆=級外の理り

解かい

語彙でよいもの.......................

○日本語能力試験 3 級、4 級の語彙は漢字の読みが難むずか

しいものだけ載の

せています。

○2語以上のフレーズで載せているものは、級が書かれていません。

例:不調を訴える

○複ふく

合ごう

語ご

の2つの語の級が違う場合は、上の級が書かれています。

例: 重なり合う⇒ 2 級

重なる⇒ 2 級、合う⇒ 3 級

xiv 「著作権保護コンテンツ」

第1課

 昭しょう和わ51 年 4 月 6 日。満開の桜

さくらに、

やわらかな陽ひ射ざし。やさしい一日だっ

た。「オギャー、オギャー」 火が付いた

かのような泣き声とともに、ひとりの赤

ん坊が生まれた。元気な男の子だ。平へい凡ぼん

な夫婦の、平凡な出産。ただひとつ、そ

の男の子に手と足がないということ以外

は。先せん天てん性せい四し肢し切せつ断だん。分かりやすく言

えば、「あなたには生まれつき手と足が

心のバリアフリー靴と車

くるま椅

い子

1. 下の文は筆者自身の生活体験をつづった『五体不満足』のまえがき冒ぼ う

頭と う

部分です。筆者についてどのようなことが分かりますか。

2. あなたの国では、交通機関や建物に障しょう

害が い

を持った人のための設備がありますか。また、それはどのような設備ですか。

読 む 前 に

ありません」という障害だ。出産時のト

ラブルでも、その当時、騒さわがれていた

サリドマイド薬害の影えい響きょうでもない。原

因は、いまだに分かっていない。とに

かくボクは、超個性的な姿すがたで誕生し、

周囲を驚おどろかせた。生まれてきただけで

ビックリされるなんて、桃もも太た郎ろうとボク

くらいのものだろう。

「著作権保護コンテンツ」

2

比ひ較かく的てき身み近ぢかなテーマのコラム・エッセイ・伝

でん記き・対たい話わを読んで、

事じ実じつ関かん係けいや物事の経

けい緯い、筆ひっ者しゃの主しゅ張ちょうや意

い図とが把

は握あくできる

コラムやエッセイを読んで、筆者の主張や意図が把握できる

タスク番号➡

自分でわかった

授業でわかった

メタ・コンテンツを把握する 【全体 1】

論ろん点てんを把握する

◦ 文章全体の論点が何かを把握する 【認知 9】

論理展てん開かいを予

よ測そく・ 把握する

◦「障しょう害がい者しゃは、障害者でなくなる」という主張の論

ろん拠きょを

把握する【認知 1】

◦ 障害者の移い動どうについて「環

かん境きょうが整

ととのっている/いない」

とは具ぐ体たい的てきに何を指

さすかを把握する

【認知 2】

◦ 何が障害を生み出していると言っているかを把握する【認知 3】

◦「車くるま椅い子すの人」を「かわいそう」と見る論拠を把握する【認知 6】

明めい示じ的てきな主張・意図を把握する

◦「環境さえ整っていれば、・・・・・・ 障害者は、障害者で

なくなる」ということの意図を把握する【認知 1】

◦「かわいそうな人など ・・・・・・ 少ない方がいい」という

意図を把握する【認知 7】

◦「あるべき姿すがたが現げんじつ実となる」というのが具体的にどう

なることなのかを把握する【認知 8】

比ひ較かく・対たい照しょうする

◦「環境が整っている場合」と「環境が整っていない場合」

を対比する【認知 2】

◦「メガネをかけること」と「車椅子に乗のること」の類

るい

似じ点を把握する

【認知 4】

◦「メガネをかけること」と「車椅子に乗ること」の相そう

違い点を把握する

【認知 5】

こ の 課 で 身 に つ け る ス キ ル

できること 1

できること 2

評ひょう

価か

してみよう

「著作権保護コンテンツ」

第  課

心のバリアフリー

1

3

心のバリアフリー靴と車

くるま椅

い子

乙おと

武たけ

洋ひろ

匡ただ

(著)(『五体不満足』講こう談だん社しゃ1998)

――車椅子の方は、付つ

き添そ

いの方と一緒にご利用ください――

 デパートや図書館などの施し

設せつ

にあるエレベーターの横には、こんな注意書きがある

場合が多い。しかし、ボクの場合は、電動車椅子を操そう

作さ

してエレベーターに乗り込み、

行きたい階のボタンを自分で押して、その階で降りるという一連の動作が、自分ひと

りで可能だ。それでも、付き添いと一緒でなければいけないのだろうか。

 ①「車椅子に乗った人が、ひとりで行動するのは危険だ」 「障しょう

害がい

者しゃ

は、社会で守っ

てあげなければならない弱者である」

 注意書きの背景にあるのは、このような考え方ではないだろうか。しかし、ここで

根本的な問題をあらためて問い直したい。果たして、障害者は本当に社会から守って

もらわなければならない弱者なのだろうか。

 たいへん残念なことではあるが、たしかに今の日本では、障害を持った人々が街まち

なかを自由に動き回るのは困難だし、ひとりで生活をすることもむずかしい。そこで、

多くの手助けを必要とするのも否めない事実だ。だが、障害者を②そのような立場に

追い込んでいるのは「環かん

境きょう

」なのだ。

 ボクは日ひ

頃ごろ

から、「環境さえ整ととの

っていれば、ボクのような体の不自由な障害者は、

③障害者でなくなる」と考えている。例えば、ボクが A 地点から B 地点まで行きたい

とする。ところが ア という状況では、A 地点から B 地点ま

での移動が不可能、または困難になる。その時、たしかにボクは「障害者」だ。

 しかし、 イ といった時、そこに障害はなくなる。一般的

には、家を出掛ける時に玄げん

関かん

で靴を履は

くが、ボクの場合は、靴の代わりに車椅子に

乗る。靴と車椅子の違いがあるだけで、自分の力で A 地点から B 地点まで移動した

ということに、なんの違いもない。「障害者」を生み出しているのは、紛まぎ

れもなく、

1

2

3

4

5

6

「著作権保護コンテンツ」

4

ウ なのだ。

 子どもたちの前でよくこんな話をする。「みんなのなかにも、メガネをかけてい

る人がいるよね。それは、眼め

が悪いからだね。ボクも、足が不自由だから車くるま

椅い

子す

乗っているんだ」と言うと、子どもたちは「じゃあ、一緒だね」と笑う。そこで、「メ

ガネをかけている人って、かわいそう?」という質問をすると誰だれ

もうなずかないのに、

「じゃあ、車椅子に乗っている人は?」という質問には、ほとんどの子が口を揃そろ

えて

「かわいそうだ」と言う。

 「みんなは、眼が悪いからメガネをかけるのと、足が不自由だから車椅子に乗って

いるのは同じだと言ったのに、どうして車椅子の人だけ、かわいそうなのかな」と言

うと、「眼が悪い人は、メガネをかけることで見えるようになるけど、足が不自由な

人は、車椅子に乗ってもできないことがたくさんあるから、やっぱりかわいそうだ」

という答えが返ってくる。

 子どもたちの意見は、的を射い

ているように思う。障しょう

害がい

者しゃ

が「かわいそう」に見えて

しまうのも、  エ 。 ④かわいそうな人など、多いより少ない

方がいいに決まっている。

 誰もが自由に行動できるような社会。⑤あるべき姿すがた

が現実となる日は、まだまだ遠

いのだろうか。

7

8

9

10

「著作権保護コンテンツ」

第  課

心のバリアフリー

1

5

1. この文章のメタ・コンテンツは何ですか。{ }の中の適当なものを選びなさい。

メタ・コンテンツを把握する

体の不自由な筆者が{a. 研究者 b. 障しょう

害がい

者しゃ

 c. 医者}の立場から{a. 社会のあるべき姿

b. 障害者の気持ち c. 車くるま

椅い

子す

の便利さ}を問いかけた{a. 報告 b. 解説 c. 問題提てい

起き}

2. 文章の種類は何ですか。適当なものを選びなさい。

a. エッセイ  b. 新聞の特集記事  c. 小説  d. 研究論文

> 1 ~ 3 段落

1. 下線部①は、誰だれ

の考えとして書かれていますか。適当なものを選びなさい。

a. デパートや図書館の人に代表される社会一般の人々

b. 筆者

c. 車椅子に乗っている障害者一般

d. 体の不自由な障害者の家族

> 4 段落

2. 下線部②は、どのような立場ですか。適当なものを選びなさい。

a. 周りからの多くの手助けを必要とする立場

b. 手助けなく、一人で生活できるような立場

c. 街まち

のなかを自由に動き回ることのできる立場

d. 周りの人の手助けをあまり必要としない立場

■ 言 語 タ ス ク ■

■ 全 体 把 握 ■

「著作権保護コンテンツ」

6

> 7 ~ 8 段落

3. テキストに出てくる子どもたちの意見と合うように{  }の中の適当な言葉を選びなさい。また、(  )に適当な言葉を書きなさい。

{同じ・違う} {同じ・違う}

眼め

悪い ⇨ メガネをかける ⇨ 見えるようになる ⇨かわいそう

・ かわいそうではない

足が

不自由 ⇨ (    ) ⇨ (     )⇨かわいそう

・ かわいそうではない

■ 認 知 タ ス ク ■

> 5 ~ 6 段落 論理展開を予測・把握する 明示的な主張・意図を把握する

1. 下線部③は、どのような意味ですか。適当なものを選びなさい。

a. 医療体制が整ととの

い、障しょう

害がい

を治してもらえるようになる。

b. 人に助けてもらわなくても自由に行動することができるようになる。

c. 障害に対する認識が変わり、社会から守ってもらえるようになる。

d. 皆が助けてくれるようになり、どこにでも自由に行けるようになる。

> 5 ~ 6 段落 論理展開を予測・把握する 比較・対照する

2. 次の文は、本文中の ア イ のどちらに入りますか。(   )にアかイを書きなさい。

(   )駅にはエレベーターも付いてない。

(   )駅にはエレベーターも付いている。

(   )ホームと電車の間も隙すき

間ま

や段差がなく、スムーズな乗り入れが可能。

(   )バスやタクシーにもリフトが付いていて、車くるま

椅い

子す

のまま乗り込める。

(   )バスやタクシーも車椅子のままでは利用できない。

「著作権保護コンテンツ」

第  課

心のバリアフリー

1

7

> 5 ~ 6 段落 論理展開を予測・把握する

3. ウ に入る言葉として、適当なものを選びなさい。

a. 車くるま

椅い

子す

の性能

b. 医療技術の遅れ

c. 人びとの考え方

d. 環かん

境きょう

の不備

> 7 ~ 8 段落 比較・対照する

4. 筆者と子どもたちとの話では、メガネをかけるのと車椅子に乗るのは、何が同じだと言っていますか。適当なものを選びなさい。

a. 道具によって身体的な障しょう

害がい

をカバーしている点

b. 道具によって障害による不自由さがなくなる点

c. 道具を使わなければならないために、かわいそうだと思われる点

d. 道具によって人から助けてもらう必要がなくなる点

> 7 ~ 8 段落 比較・対照する

5. 筆者と子どもたちとの話では、メガネをかけるのと車椅子に乗るのは、何が違うと言っていますか。適当なものを選びなさい。

a. 身体的な障害を持つ人にとっての道具の必要度

b. 道具を使うときの操そう

作さ

方法の複雑さ

c. 道具を使うことで得られる行動の自由度

d. 道具の使用に対する一般の人々の印象

> 9 段落 論理展開を予測・把握する

6. エ に入る言葉として、適当なものを選びなさい。

a. 精神的な壁かべ

を越えられず、なかなか外に出て行けないためだ

b. 子どもたちの考えがまだ幼いためだ

c. 足が不自由で、車椅子に乗らなければならないためだ

d. 物理的な壁による「できないこと」が多いためだ

「著作権保護コンテンツ」

8

> 9 段落 明示的な主張・意図を把握する

7. 下線部④は、どのような意味ですか。適当なものを選びなさい。

a. 障しょう

害がい

者しゃ

はなるべく生まれてこないほうがいい。

b. 障害者は環かん

境きょう

が整ととの

うまでは街まち

に出ないほうがいい。

c. 誰だれ

もが自由に行動できる環境に整えたほうがいい。

d. 環境より障害者に対する見方を変えたほうがいい。

> 10 段落 明示的な主張・意図を把握する

8. 下線部⑤は、何がどのようになることですか。適当なものを選びなさい。

a. 社会全体が障害者に対して同情心を持ってあたたかく接するようになること

b. 障害者が障害を気にせず、どんどん積極的に社会に出て行くようになること

c. 地域や職場などで、障害者を特とく

別べつ

視し

せずに、平等に受け入れるようになること

d. 街の環境が整って、様々な障害のある人も自由に行動できるようになること

>全体 論点を把握する

9. 筆者の論点として適当なものを選びなさい。

a. 環境が整備されれば、体の不自由な障害者は障害者でなくなる。

b. 社会は障害者を守るためにもっと努力すべきだ。

c. 障害者は何でも一人でできるので、援えん

助じょ

は最小限にすべきだ。

d. 環境が変わり、障害者が自由に行動できる世の中になった。

「著作権保護コンテンツ」

■ 出 典 ■

乙武洋匡(著)1998「心のバリアフリー —靴と車椅子」『五体不満足』講談社

香山リカ(著) 2006 「30 代ビジネスマンの「心の病」を考える」『月刊 Forbes 日本版 11 月号』ぎょうせい

北原菜里子(著)、岩波書店編集部(編)「少女マンガ家ぐらし」へ —夢を叶える

村上龍(著)、テレビ東京報道局(編)2007「PROFILE —夢を実現させ続ける外食産業の雄」『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』日本経済新聞出版社

村上龍(著)、テレビ東京報道局(編)2007「INTERVIEW—夢に日付を入れれば、今日やるべきことがわかる」『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』日本経済新聞出版社

テレビ東京報道局(編) 2007 「日野原重明:いつも学びがある。患者からも学ぶ。それを伝える役割がある。」『ガイアの夜明け —不屈の 100 人—』日本経済新聞出版社

箱田忠昭(著)2006 「「早朝時間」のフル活用で成功した人たち」『200% フル活用!頭のいい「時間」術』三笠書房<知的生きかた文庫>

西日本新聞 (2007 年 8 月 10 日朝刊)「春秋:緑のカーテン」

産経新聞 (2008 年 1 月 23 日)「環境立国ニッポンの挑戦 —第 1 章 水資源(4) 進む廃水浄化 再利用「当たり前」」

東嶋和子(著)、北海道新聞取材班(著) 1996 「渡り鳥はなぜ迷わない?」『科学・知ってるつもり 77』講談社

築山節(著) 2005 「フリーズする脳 —思考が止まる、言葉に詰まる」『フリーズする脳—思考が止まる、言葉に詰まる』NHK 出版<生活人新書>

101「著作権保護コンテンツ」

-----------------------------------------■ 語彙翻訳中国語:于 維強韓国語:林 慧暻英 語:David Polen

■ 装丁折原カズヒロ

■ レイアウト市川麻里子

読よ

む力ちから

 中ちゅう

級きゅう

2011 年 6 月 8 日  第 1 刷 発行

[監修] 奥おく

田だ

純じゅん

子こ

[編著] 竹たけ

田だ

悦えつ

子こ

・久ひさ

次つぎ

優ゆう

子こ

・丸まる

山やま

友とも

子こ

八やつ

塚づか

祥さち

江え

・尾お の え

上正まさ

紀のり

・矢や

田だ

まり子こ

[発行] くろしお出版 〒113-0033  東京都文京区本郷3-21-10 Tel : 03・5684・3389  Fax : 03・5684・4762 URL : http://www.9640.jp Mail : [email protected]

[印刷] シナノ書籍印刷

ⓒ 2011 Etsuko Takeda, Yuko Hisatsugi, Tomoko Maruyama, Sachie Yatsuzuka, Masanori Onoe, Mariko Yada Printed in JapanISBN 978-4-87424-518-7 C0081

乱丁・落丁はお取り替えいたします。本書の無断転載・複製を禁じます。

■ 監 修 者 ・ 編 著 者 紹 介 ■

監修者: コミュニカ学院学院長 奥田純子 (おくだ じゅんこ)

編著者: コミュニカ学院 学習リソース開発チーム 竹田悦子 (たけだ えつこ) 久次優子 (ひさつぎ ゆうこ) 丸山友子 (まるやま ともこ) 八塚祥江 (やつづか さちえ) 尾上正紀 (おのえ まさのり) 矢田まり子 (やだ まりこ)  (コミュニカ学院ウェブサイト URL: http://www.communica-institute.org)

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