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  • 特定健診・特定保健指導がスタートして早1年が経過しました。平成18年の医療制度改革の一環と

    して制度化されてから実施までの間に、その準備のために関係者による多くの努力が注がれましたが、

    初年度を終わってみてまだ解決すべき多くの課題が山積しています。そのため平成21年度以降、初年

    度の取組みを評価し改善に繋げていくことが求められています。

    厚生労働省国民健康保険課は国保の保険者として生活習慣病の予防活動を支援するため、特定健

    診・特定保健指導が制度化される以前の平成14年度から16年度までの3年間、国保ヘルスアップモデ

    ル事業に取り組み、「個別健康支援プログラム」を開発しました。このモデル事業の成果を踏まえ、平

    成17年度から国保の一般事業として国保ヘルスアップ事業が展開され、平成18年度には全国343市町

    村で実施されました。「個別健康支援プログラム」の開発に当たっては、生活習慣病の予備群(境界域)

    の人を対象として、生活習慣の行動変容を促すことに明確な目的をおいて取り組んできました。この

    ように国保は行動変容を目的とした保健指導の分野で先導的な役割を果たして来ました。この取組み

    の中で行われた意見交換会や発表会で、モデル市町村となった現場の保健師さんなど関係者から、他

    の市町村の取組みを知ることができて大変参考になったという話をしばしば耳にしました。特定健

    診・特定保健指導の初年度を終了し、解決すべき課題山積の中で、担当者が解決の方向を検討すると

    き役に立つ情報システムを作ることが求められています。

    「国保ヘルスアップ事業を踏まえた市町村国保における特定保健指導の実践事例集」は、市町村国保

    の担当者が特定健診・特定保健指導を更に推進するため自分たちが直面している問題の解決策を検討

    するに当たり、他の国保がどのように取り組んでいるか知りたい、解決のヒントを得たいという要請

    に応える目的で、平成19年度の国保ヘルスアップ事業での取組みを踏まえて実践事例集を作成したも

    のです。特定健診・特定保健指導は、これからも走りながら考えるという覚悟が必要です。毎年実績

    を評価し、必要な軌道修正をしていく心構えが必要と考えます。

    最後に本書の作成に当たっては、「市町村国保における特定健診・保健指導に関する検討会」に設置

    されたワーキンググループの安村リーダーをはじめとする委員ほか関係者の皆様に感謝するとともに、

    引き続き検討会へのご協力をお願いする次第です。

    市町村国保における特定健診・保健指導に関する検討会 座長 伊藤雅治

    巻頭言

    iWIC-3

  • 【保健事業と特定健診・特定保健指導の義務化】

    医療制度改革により、疾病の予防の重視と医療費適正化の観点から、生活習慣病予防を中心とした

    取組みとして、平成20年4月に内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)に着目した特定健診・

    特定保健指導が施行され、1年が過ぎました。各市町村国保においては、それぞれが策定した特定健康

    診査等実施計画に基づき、計画的に実施されてきたと思います。しかし平成20年度は初年度であり、

    実施体制の整備等、新たな制度への対応に追われた1年でもあったのではないかと思います。この制度

    が定着するには、もう少し時間がかかるかも知れません。

    国民健康保険では、従来から保険給付の確保とともに、保健事業の推進に取り組んできました。保

    健事業は、国民健康保険事業の重要な柱として、制度創設当時から実施されてきたものであり、従来

    から、地域の実状を踏まえたきめ細かな、創意工夫を生かした様々な取組みが展開されております。

    こうした中、予防重視の取組みが制度化された訳ですが、施行に合わせて「市町村国保における特定

    健診・保健指導に関する検討会」を設置しました。

    【検討会による事例集の作成】

    「市町村国保における特定健診・保健指導に関する検討会」においては、制度の円滑な実施に向け、

    市町村国保として取り組むべき方策等を検討しています。平成20年度においては、特定保健指導の準

    備事業として行われた平成19年度国保ヘルスアップ事業の成果を踏まえて、この新制度の導入に向け

    た取組みについて現地調査によるヒアリングを行い、実際の取組みを市町村国保において進めるうえ

    で参考となるよう、事例集の作成作業に取り組んできました。

    平成19年度の国保ヘルスアップ事業にかかる経費は保健事業として助成を行っていましたが、平成

    20年度以降の特定健診・特定保健指導にかかる財源は、主として保険料により賄われることを考慮す

    れば、効果的・効率的な実施すなわち費用対効果を十分に考えた事業展開が望まれます。

    特定健診・特定保健指導は2年目を迎えます。多くの市町村国保では1年目の事業実施の評価を踏ま

    え、各地域で工夫した一層の取組みが進められることを期待しておりますが、この事例集が円滑な実

    施に向けた一助になれば幸いです。

    最後に、本事例集の作成に当たり、ご指導賜りました検討会の委員各位、ならびにご協力いただい

    た実施市町村関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

    厚生労働省保険局国民健康保険課長 武田俊彦

    はじめに

    iiWIC-4

  • 【本書のねらい】

    本書は、市町村国保が特定健診・特定保健指導を実施するに当たり、他の国保がどのような取組み

    を行っているのか知りたい、自分たちが抱える問題点の解決に向けてヒントとなることを得たい等の

    要請に応えるために作成されたものである。内容は、特定健診・特定保健指導の体制整備事業として

    位置づけた、平成19年度国保ヘルスアップ事業での取組みの実践集である。

    【本書の構成】

    本書の構成は、保険者としての市町村国保に期待される役割と、特定健診・特定保健指導を円滑に

    実施するためのヒントとなりうる事項をとりまとめた第1章~第2章と、第2章で取り上げている事例

    について紹介している第3章、参考資料として、平成19年度国保ヘルスアップ事業の実施状況と成果

    に関して整理したものから成っている。

    特に第2章では、市町村国保が特定健診・特定保健指導を実施する際に課題になると考えられる下図

    に示す項目について、事例における取組みと、平成19年度に作成した「国保ヘルスアップモデル事業

    の実績をふまえた特定保健指導を核とした市町村国保における保健事業実施のための手引書」(以下、

    「保健事業実施のための手引書」と記す)1を基礎として、円滑な実施の際の留意事項について整理した。

    そこで、より詳細なマニュアル的な説明を読みたい方のために「保健事業実施のための手引書」の該

    当頁を示し、参照できるようにしてある。また、事例における具体的な取組みについて知りたい方の

    ために、第3章で事例を紹介している。

    1「国保ヘルスアップモデル事業の実績をふまえた特定保健指導を核とした市町村国保における保健事業実施のための手引書」は厚生労働省のホームページから入手できる。

    → http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0629-1.html

    本書第2章「特定健診・特定保健指導の円滑な実施」特定健診・特定保健指導の運営に当たり想定される課題について簡潔に整理されている。

    1)計画づくりと評価2)健診結果・レセプト分析の活用3)実施体制の構築4)人材の確保・育成5)事業の特徴的な展開方法6)受診率、実施率、継続率の向上7)アウトソーシング(外部委託)の  展開方法とその課題

    「国保ヘルスアップモデル事業の実績をふまえた特定保健指導を核とした市町村国保における保健事業実施のための手引書」発行(厚生労働省保険局国民健康保険課:平成19年度)

    本書第3章「事例紹介」

    より詳細なより詳細な解説を読みたい解説を読みたい

    具体的な取組みを具体的な取組みを知りたい知りたい

    より詳細な解説を読みたい

    具体的な取組みを知りたい

    本書の構成と活用方法

    本書の構成と活用方法

    iiiWIC-5

  • 第3章の事例紹介では、平成19年度国保ヘルスアップ事業特別加算実施の市町村国保の中から、事

    業実施状況報告等を参考に、保険者の規模や地域が偏らないよう考慮し、次の視点に基づいて事例を

    選定し、その取組みを紹介した。

    1)効果的な保健指導プログラムを行っている

    2)保健指導プログラムの効果をあげるために特徴的な工夫がみられる

    ・岩手県軽米町

    ・群馬県太田市

    ・千葉県君津市

    ・和歌山県御坊市外三ケ町

    ・兵庫県尼崎市

    ・岡山県倉敷市

    ・福岡県北九州市

    ・宮崎県日南市

    ・沖縄県宜野湾市

    参考資料は、平成19年度国保ヘルスアップ事業を実施した市町村国保を対象としたアンケート調査

    の結果を集計したものである。規模が同等の市町村国保の状況を参考とすることができるように配慮

    した。

    【本書の活用方法】

    本書は、冒頭から読むばかりではなく、課題に着目して第2章から読み始める、あるいは、自身と同

    等規模の国保がどのような取組みを進めているかという観点で第3章から読み始めることも可能なよう

    に構成してあるため、関心度に応じて、柔軟に活用していただきたい。

    事例地域の一覧

    ivWIC-6

  • 巻頭言 …………………………………………………………………………………………………i

    はじめに………………………………………………………………………………………………ii

    本書の構成と活用方法………………………………………………………………………………iii

    第1章 保険者としての市町村国保の役割………………………………………………1

    1.国民健康保険の保健活動の歩み ……………………………………………………1

    2.保険者機能を生かした予防活動 ……………………………………………………2

    3.市町村国保における特定健診・特定保健指導の特徴 ……………………………2

    第2章 特定健診・特定保健指導の円滑な実施…………………………………………4

    1.計画づくりと評価 ……………………………………………………………………4

    2.健診結果・レセプト分析の活用 ……………………………………………………5

    3.実施体制の構築 ………………………………………………………………………7

    4.人材の確保・育成……………………………………………………………………8

    5.事業の特徴的な展開方法…………………………………………………………10

    6.受診率、実施率、継続率の向上……………………………………………………11

    7.アウトソーシング(外部委託)の展開方法とその課題 ………………………13

    第3章 事例紹介 …………………………………………………………………………15

    事例の概要 ………………………………………………………………………………15

    1.岩手県軽米町 ………………………………………………………………………16

    2.宮崎県日南市 ………………………………………………………………………24

    3.和歌山県御坊市外三ケ町 …………………………………………………………31

    4.千葉県君津市 ………………………………………………………………………36

    5.沖縄県宜野湾市 ……………………………………………………………………42

    6.群馬県太田市 ………………………………………………………………………48

    7.兵庫県尼崎市 ………………………………………………………………………53

    8.岡山県倉敷市 ………………………………………………………………………60

    9.福岡県北九州市 ……………………………………………………………………65

    参考資料

    1 平成19年度国保ヘルスアップ事業とその取組み ………………………………71

    2 平成19年度国保ヘルスアップ事業の概要 ………………………………………72

    3 市町村国保における特定健診・保健指導に関する検討会委員 ………………85

    目次

    WIC-7

  • 第1章保険者としての市町村国保の役割

    国民健康保険の保健活動の歩み

    医療制度改革により、平成20年度からは特定健診・特定保健指導の実施が保険者に義務

    づけられ、生活習慣病の一次予防において保険者の果たす役割が明確化された。国保には、

    特定健診・特定保健指導を核として、これまでの保健事業のノウハウを生かした効果的な健

    康増進の取組みが期待されている。

    そこで、国保が目指す被保険者の健康管理と健康増進としての保健事業の取組みと、特定

    健診・特定保健指導のあり方を考えるに当たり、保険者としての役割をまず再認識するため

    国保の保健活動の歴史を振り返ってみたい。

    (1)制度創設時から地域保健活動に取り組む昭和13年に国民健康保険法が公布され、その目的は、農村の医療費負担の軽減や医師及

    び医療機関の確保であった。国保の保険者は「医療給付とは別に被保険者の健康の保持増進

    と疾病予防のための保健施設事業を行うことができる」とされていた。

    保健施設活動の一環として保健婦が配置され、地域保健活動が展開され始めた。

    (2)疾病の早期発見と衛生思想の普及、公衆衛生との連携による保健活動の展開

    制度創設から国民健康保険では、被保険者の健康管理のため、病気の早期発見と衛生思想

    の普及、感染症対策等に取り組み、レセプトで把握した病人等への健康相談や家庭訪問活動

    により、医療費の軽減を図っていた。この保健活動は、公衆衛生の第一線機関である保健所

    との連携により行われていた。

    昭和36年には国民皆保険制度が実施された。その後の国保の保健活動は、公衆衛生行政

    (保健所)と協力援助し合いながら、役割分担を行ってきた。

    (3)疾病構造・保健ニーズの変化により、成人病予防を中心とした保健活動へ昭和53年には、市町村保健婦が、市町村の衛生部門に一元化された。保健活動は、疾病

    構造や地域住民の保健ニーズの変化により、成人病予防を中心とし、寝たきり解消・予防事

    業へと変わった。その取組みは市町村の衛生部門と一体的に行われるようになり、国保の保

    健活動は、国民の健康づくり推進事業と競合・重複のないよう留意して取り組まれ、適正受

    診等に関する教育指導として多受診・重複受診者への生活指導が行われた。

    (4)老人保健法制定、ヘルスパイオニアタウン事業による総合的な健康づくりの推進

    昭和57年の老人保健法の制定をうけ、住民の健康づくりの一層の充実を図るため、老健

    法の保健事業をはじめとする公衆衛生と行政が一体となり、総合的な事業を推進するヘルス

    パイオニアタウン事業を創設し、成人病中心の疾病構造に加え、高齢化社会への対応を行っ

    てきた。平成12年の健康日本21の推進とともに、国保の保健事業も生活習慣病の一次予防

    を重視した保健活動に取り組み始め、平成14年度からは国保ヘルスアップモデル事業を創

    1 1

    1WIC-8

  • 設し、その取組みの定着を図ってきた。

    平成19年度には国保ヘルスアップ事業を、特定健診・特定保健指導の実施体制づくりと位置づけ、その実施に積

    極的に取り組んだ。この取組みは、市町村衛生部門と一体的に行われている。

    (5)医療制度改革、特定健康診査・特定保健指導の導入平成18年の医療制度改革関連法の成立をうけ、平成20年度から高齢者の医療の確保に関する法律が施行され、特

    定健診・特定保健指導が保険者に義務づけられた。この制度は、これまでの老人保健法に基づいた疾病の早期発見・

    早期治療のための健診とは異なり、内臓脂肪型肥満に着目した早期介入・行動変容につながる保健指導を行うため、

    保健指導の対象者を明確にするための健診として位置づけられ、評価の仕組みが取り入れられている。このため、市

    町村国保では、その効果的・効率的な実施のために、地域の現状等を踏まえた創意工夫による取組みを行っている。

    保険者機能を生かした予防活動

    ○医療費分析と健診結果の分析から、実施計画の見直しを!

    ○保険者機能を生かした健康づくり施策への積極的な連携を!

    今回、保険者に生活習慣病の一次予防として特定健診・特定保健指導が義務づけられた意味は大きく、先にも述べ

    たように被保険者の健康を守ることが保険者の役割であることを再認識する意義は大きい。また、保険者として取り

    組む保健事業や特定健診・特定保健指導は、医療財源の有効利用、費用負担の軽減等に効果をもたらすものであるこ

    とから、保険者が主体性を持った、その地域性を踏まえたきめ細かい適正な事業の実施が求められる。

    市町村国保は、小規模保険者が多く、保険財源の安定化や財政基盤の強化の課題を抱えているところが多い。この

    ため、保健事業の実施には効率性が求められる。現在、保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき実施しているが、

    医療情報や健診結果情報を活用した事業評価を行い計画の見直しを行っていくことが重要である。

    また、都道府県では、その調整機能の発揮による医療計画や健康増進計画の推進において、市町村段階でも、健康

    づくり施策へ積極的にかかわっていくべきものであると考える。

    →「保健事業実施のための手引書」81~95頁参照

    市町村国保における特定健診・特定保健指導の特徴

    平成20年度から、保険者には特定健診・特定保健指導によるハイリスク者の生活習慣の改善に対する成果が期待

    されている。市町村国保の特性としては、1)小規模保険者が多く保険財政の安定化や財政基盤の強化が課題、2)

    被保険者に年齢階層の高い人が多く高齢化による健康課題や医療費への影響が大きいこと等があげられる。限られた

    保険料財源を活用した保健事業の実施に当たっては、こうした市町村国保独自の特性を踏まえた効果的・効率的な事

    業のあり方を検討する必要があり、次のような視点を生かして取り組むことが求められる。

    3

    2

    国民健康保険法第82条第1項「保険者は、特定健康診査等を行うものとするほか、これらの事業以外の事業であって、健康教育、健康相談、健康診査その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならない」

    2WIC-9

  • 市町村国保の従来の保健事業は、「生活習慣病対策への重点化」「きめ細かい保健指導の実現」「地域の特性に応じ

    た保健事業の展開」の3つを基本的な考え方として、被保険者の健康増進のための事業を実施してきた。

    平成20年度からの特定健診・特定保健指導の実施による生活習慣の改善に向けた取組みは、個々の被保険者の生

    涯にわたる生活の質(QOL)の維持及び向上に大きく影響し、ひいては医療費全体の適正化にも資するものである。

    市町村国保においては、効果的・効率的な事業実施のため、市町村衛生部門と連携を図りながら、次のような取組み

    が行われている。

    取組みの例○健診未受診者へのアプローチと支援○重症化防止の視点からの治療中の者への保健指導の取組み○早期介入による生活習慣病対策

    市町村国保に求められる視点○地域保健活動(地区組織や地域の社会資源等)を基盤にした特定保健指導の展開○地域特性に応じた、きめ細かい保健事業の取組み○ポピュレーションアプローチとの連携による効果的な実施

    3

    WIC-10

  • 第2章特定健診・特定保健指導の円滑な実施

    計画づくりと評価

    (1)Plan、Do、See、Showを意識した事業運営近年、市町村国保を取り巻く財政状況は大変厳しくなっており、限られた財源の中にあっ

    て、人材や設備、ネットワークなどの資源を十分に活用して最大限の効果をあげることが求

    められている。特に保険料をもとに保健事業を実施する市町村国保にあっては、住民の視点

    に立ち成果を重視し、住民に対する説明責任を果たすために、Plan(計画)、Do(実施)、

    See(評価)、Show(情報公開)からなるサイクルを実施することが求められる。

    →「保健事業実施のための手引書」81~83頁参照

    (2)平成21年度実施計画の見直し市町村国保は、平成19年度に特定健康診査等実施計画を策定し、20年度からはこれに従

    って特定健診・特定保健指導事業を実施しているところである。

    市町村国保にとって特定健診・特定保健指導事業は新規の事業であるため、平成19年度

    はいわば手探りの中での計画策定であった。しかし、これまでの保健事業の経験と実績の上

    に、平成20年度からの事業の取組みにより経験を積む中で、事業運営上の詳細なノウハウ

    が蓄積されていると考えられる。そこで、平成21年度の事業運営に向け、事業関係者が集

    まり、平成20年度に発生した問題点及び課題を洗い出し、解決方策をあらかじめ検討して

    おくことが望ましい。

    Plan(計画)事業の目標を定め、被保険者の健康状態と医療費の現況、地域資源等を把握する現状分析を行い、具体的な事業対象者を定め、事業量を見積る。これらの基礎情報をもとに、事業の実施体制を検討する。事業の進捗、成果を評価するための評価項目、評価基準もここで検討しておく。

    See(評価)事業の実施状況を確認し、Plan段階で検討しておいた評価項目、評価基準により、事業の進捗状況、事業の効果を評価する。

    Do(実施)計画に従い、もっとも効果的と思われる実施体制を構築し、事業を遂行する。

    Show(情報公開)住民に対し説明責任を果たす。

    12

    4WIC-11

  • 特定健診・特定保健指導の実施については、市町村国保は下に示す平成24年度の国の参酌標準値を目標として実

    施計画を立てている。計画策定では、事業の趣旨や市町村国保が抱える独自の状況を踏まえ、数値目標は段階的に設

    定している。

    平成19年度国保ヘルスアップ事業の特別加算に取り組んだ国保への事例調査では、特定健診・特定保健指導の受

    診率・実施率・減少率の向上だけに留まらず、地域保健活動の観点から、国保として地域づくりなどのねらいを持っ

    た戦略的な事業展開がなされていた。また、それにかかわる担当者や担当保健師は生き生きと活動している様子がう

    かがわれた。

    実施計画を見直す際には、当初設定した数値目標の達成状況のみにとらわれることなく、国保という立場で特定健

    診・特定保健指導を推進する意味を問い直し、目指す方向の中で事業を位置づけることが望まれる。

    健診結果・レセプト分析の活用

    (1)地域における疾病構造の分析保健事業を実施する際には、地域における疾病構造を分析し、全国及び都道府県平均や周辺市町村国保等との比較

    や、過去からの時系列的な検証を行い、地域の被保険者の健康課題を客観的に把握し、事業内容の検討及び事業運営

    に生かしていくことが必要である。

    現状分析には、下記のようなデータを活用することが考えられる。健診結果や医療費データは、データの整備状況、

    異なった組織等が保有するデータの結合可能性などの懸案事項があるが、世帯や個人の属性情報別に集計することに

    2

    国保としてめざす方向と特定健診・特定保健指導の位置づけ、取組み例

    被保険者の健康な生活を守る。徹底した生活習慣病予防により予備群・該当者を出さない。

    健診受診者の全数に対して面談を行い、動機付け支援以上の保健指導を実施。(尼崎市)

    → 第3章54・55頁参照

    保健指導を、健康づくりの視点からの“まちづくり”と位置づけ、地域の活性化をめざす。

    保健指導プログラム終了者が、次回のプログラム展開を主導。保険者は、行政として市民活動を支援。(日南市)

    → 第3章25・30頁参照

    特定保健指導を契機として、幅広い地域住民の健康づくりへの意識の向上をめざす。

    食育を兼ね地域特産物を学童に配布し、メッセンジャーになってもらい、家族の健康意識の向上と保健事業への参加を促す。(軽米町)

    → 第3章17・22頁参照

    めざす方向 取組み例

    ねらい

    計画目標

    生活習慣を改善し健康を保持することにより生活習慣病を予防し、もって医療費の適正化

    に寄与する。

    参酌標準(平成24年度の国の参酌標準値)

    特定健診の受診率 65%

    特定保健指導の実施率 45%

    内臓脂肪症候群の該当者・予備群の減少率 平成20年度比10%減少

    全国目標:目標値の参酌標準(特定健康診査等実施計画)

    5

    WIC-12

  • より、地域や性、年齢、職業、生活習慣等による健康状態や医療費の実態を把握することができ、保健指導プログラ

    ムの内容を検討する際に有効である。集計結果は、地域情報として集約して保存するとともに、地域住民に情報発信

    して健康への意識を高め、セルフマネジメントができるような環境を整備することが望ましい。

    また、特定健診・特定保健指導の事業を円滑に進めるためには、マーケティングの観点からも事業を捉えなおして

    みることも有効である。この観点からは、事業運営に当たって対象者の生活様式(ライフスタイル)やニーズを把握

    して事業の内容に反映させなければ、せっかく提供するサービスが対象者に受け入れられない(受診率、実施率が高

    まらない)こともありうることに気づかされる。住民生活実態調査データは、新たに調査を実施してデータを収集す

    る必要があると考えられるが、このような観点から事業の有効性を再検討するためには必要な情報である。

    →「保健事業実施のための手引書」17~27頁参照

    (2)ポピュレーションアプローチとの連携生活習慣病を予防するためには、特定健診・特定保健指導のハイリスクアプローチを実施するだけではなく、対象

    者全体の健康意識へ予防的な介入を行い、集団全体の生活習慣病リスクを低下させることが重要となる。市町村国保

    は同じ組織に健康づくりの主体である衛生部門があり、地域住民に密着した包括的な保険者サービスの提供が可能で

    あることが特徴としてあげられる。

    市町村国保は、国保ヘルスアップモデル事業により評価の仕組みを取り入れ個別健康支援プログラムの開発を行い、

    その後は国保ヘルスアップ事業に取り組んできた。また、市町村の衛生部門等では、健康教育や健康相談、各種教室

    等の保健事業や、住民組織と連携したポピュレーションアプローチを実施してきた。市町村国保にあっては、こうし

    た経験と組織内の連携を生かし、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ(被保険者全体を対象とした

    健康づくり活動)とを組み合わせることで、特定健診・特定保健指導の事業効果をより高めることが期待される。

    市町村国保として、ポピュレーションアプローチと組み合わせた活動を実施する場合、下記の視点を踏まえた展開

    を図ることが望ましい。

    事例事業における取組み例・介護保険、国民健康保険、基本健診などのデータを集計し整理した「地域健康づくりデータベース」を構築し、地域単位で住民の健康状態を把握している。(北九州市)→ 第3章65頁参照・被保険者の疾病分析を行い、地域の実状を考慮して生活習慣病対策を展開している。(尼崎市)→ 第3章55頁参照・地域における疾病構造を分析して各地域の自治会にて結果説明会を行い、地域ぐるみの健康意識の高揚を図った。(君津市)→ 第3章39頁参照

    データの種類

    国保被保険者台帳

    特定健診等の検診

    結果データ

    医療費レセプトデータ

    人口動態

    住民生活実態調査

    データ

    想定される所在

    国民健康保険所管部署

    衛生所管部署

    国民健康保険所管部署、

    国保連合会

    都道府県、

    保健所設置政令市

    衛生所管部署、

    特定健診・特定保健指導

    実施計画作成部署

    データの内容

    ・被保険者の性、年齢

    ・健診受診者の身体状況

    ・医療費

    ・性、年齢別人口

    ・死亡原因

    ・調査回答者の性、年齢、職業

    ・食事習慣、運動習慣、生活習慣

    ・受診可能曜日、時間帯

    ・希望自己負担額 など

    備考

    ・国保被保険者以外

    のデータもある。

    ・傷病が特定できな

    ・新たにデータ収集

    も必要である。

    現状分析に使用できるデータ

    6WIC-13

  • ○医療保険者として加入者の健康課題や医療費分析の視点を持っていること

    ○一般衛生部門との連携を図ること

    →「保健事業実施のための手引書」76~79頁参照

    実施体制の構築

    (1)体制構築の流れ特定健診・特定保健指導の実施体制を構築するためには、まずサービス提供対象である被保険者の健康・疾病状況

    及び生活の実態を把握する必要がある。これを踏まえ、市町村国保として特定健診・特定保健指導をどのように位置

    づけ戦略的に実施していくか、基本的な考え方を整理する。また、基本的な考え方を踏まえて具体的な保健指導プロ

    グラムや実施方法を検討し、プログラムを円滑に実施するために、保険者が持つ特徴を生かした実施体制を構築する。

    事例事業における取組み例○被保険者の生活習慣の把握・過去5年間健診未受診者を対象にアンケート調査を行い、未受診理由等を確認した。(宜野湾市)→ 第3章43・44頁参照○保健指導プログラムと実施パターンの検討・通信、出前、夜間など保健指導プログラムを複数用意し、親しみを持てるコース名をつけた。(軽米町、宜野湾市、倉敷市)→ 第3章18頁、44頁、62頁参照・セミナー、教室などは、同じ内容を2日間、あるいは午前・午後の両方で実施して、選択できるようにした。(軽米町、太田市、倉敷市)→ 第3章17・22頁、49頁、63頁参照

    地域における疾病構造の把握

    被保険者の健康・疾病状況、生活実態の把握

    対象の把握

    基本的考え方の検討

    プログラム検討

    庁内体制の整備 外部体制の構築実施体制構築

    特定健診・特定保健指導の基本的考え方の検討

    保健指導プログラムと実施方法の検討

    地域の多様な団体・組織への働きかけ

    事業推進

    3

    事例事業における取組み例・外来診療を受けず重症化してから入院する例が多いという地域の特性を踏まえて、従前からメタボ体操の創作、メタボ対策教室の開催など、ポピュレーションアプローチを展開しており、その経験を特定保健指導にも活用している。(宜野湾市)→ 第3章42頁参照

    7

    WIC-14

  • (2)庁内体制の整備特定健診・特定保健指導の実施義務は医療保険者にある。しかしながら、健康づくり施策や事業は市町村の衛生部

    門が実施主体である。そこで、特定保健指導の実施体制を構築する際には、まず国保部門と衛生部門の庁内協力・連

    携体制を構築しておくことが必要である。

    協力・連携体制の構築に当たっては、下表のような形態が考えられるが、次の点について留意しての体制づくりが

    望ましい。

    ○国保部門と衛生部門の組織形態

    ・①別々の組織のままで事業を協働実施する場合、②特定健診・特定保健指導を担当する専任部署を設置し両部

    門から人材を供出する場合、③衛生部門が国保部門から執行委任を受けて実施する場合、④国保部門にて直接

    実施する場合等が考えられる。

    ○国保部門と衛生部門の役割分担

    ・国保部門は、保険者として事業の企画、実施管理、評価、計画の見直しに責任を持つ立場にある。保健師等の

    専門職種の配置が不十分なところもある。

    ・衛生部門は、保健師等の専門職が配置され、基本健康診査や健康教育事業、健康相談事業を実施してきた実績

    を持ち、ノウハウや情報を保有する。

    →「保健事業実施のための手引書」14頁参照

    人材の確保・育成

    (1)事業規模拡大に応じた人員数の確保の必要性大多数の保険者において、特定健診・特定保健指導の事業規模は、これまでの基本健康診査の実施と比べ極めて大

    きくなっている。特に新たな仕組みで導入された特定保健指導の実施と電子媒体を用いたデータの収受については、

    4

    国保部門の比重

    が高い

    衛生部門の比重

    が高い

    企画、実施ともに国保部門、実施支援を衛生部門(尼崎市、北九州市)

    → 第3章56・57頁、67頁参照

    国保、衛生の両部門にて企画から実施まで協働(宜野湾市、倉敷市)

    → 第3章45頁、63頁参照

    予算・支出管理を国保部門、事業の企画・実施・実施管理を衛生部門(軽米町、日南市、

    御坊市外三ケ町、君津市、太田市)→第3章17頁、28頁、33頁、38・39頁、50・51頁参照

    ○外部体制の構築・医師会の協力を得て、かかりつけ医による小学校区単位での保健指導実施体制を築いた。協力を得るために、事業の内容とともに、市として何を目指しているのか、資料を用いて詳細に説明した。説明に際し、事業の実施要領(マニュアル)と市民からの問合せを想定したQ&A集を作成し配布した。また、協力医療機関には特定健診ステッカーを配布した。(北九州市)→ 第3章66・68頁参照○地域の多様な団体・組織への働きかけ・地域特産物(雑穀)をキッズメッセンジャーが家庭に配布し、生活習慣病予防の重要性をアピールした。このために、学校や保育園・幼稚園・児童館などにも協力を依頼した。秋祭りには山車を用意して地域に広報した。(軽米町)→ 第3章17・22頁参照・ショッピングセンターで広報活動したり、既存のまちおこしグループや地域婦人連絡協議会、農協などへの働きかけを行った。(日南市)→ 第3章30頁参照・国保被保険者の業種構成を踏まえ、農協と漁協に協力依頼し集団健診を実施した。(北九州市)→ 第3章69頁参照・商工会議所、商店連盟、理美容組合、酒販組合、株式会社TMO(Town Management Organization:中心市街地活性化をめざすまちづくり機関)から司法書士会、社会保険労務士会まで、考えられるあらゆる団体、機関に協力を依頼している。(尼崎市)→ 第3章56頁参照

    8WIC-15

  • 保険者の実施量が拡大された部分である。そこで、保険者においては、特定健診・特定保健指導を運営、実施する担当

    者数をいかに確保し、また担当者の知識、技術レベルを標準化し、さらに高めていくための取組みが必要になっている。

    (2)保険者に所属する専門職に求められる役割保険者所属の保健師、管理栄養士等の専門職は、事業実施上重要な2つの役割を担っている。第1は特定健診・特

    定保健指導事業の企画、調整、運営・管理を行う専門職技能を生かした行政官としての役割、第2は健診、保健指導

    を実施する際の専門職としての役割である。

    とりわけ、第2の専門職としての役割については、保険者の所在する地域(人口規模)によって運営形態が異なる

    ため、業務範囲は必ずしも同一ではない。そのため、運営形態別に人材の確保・育成に当たっては以下のような取組

    みが必要であると考えられる。

    ①市町村で直接実施する特定保健指導

    すでに、老人保健事業等を通じて培ってきた保健指導のノウハウは、十分に活用されているところである。特定

    保健指導では個別の対象者の生活習慣に着目し、知識提供を主とした生活改善をサポートする役割が重要となる。

    特定保健指導が新たに義務化されたことで社会的認識も高まり、専門職に対して、効果的な保健指導実施の期待が

    高まっている。

    ②委託により実施する特定保健指導

    特定保健指導を委託により実施する場合は、保険者の方が過去の健診結果や地域の疾病構造、被保険者の生活実

    態などを詳細に把握していることを踏まえて、委託先と協働を図ることが必要となる。また、委託先が行っている

    特定保健指導の内容等を事前に確認し、実施上の問題点や質の標準化、改善方策について提案、管理する視点が求

    められる。こうした技術の獲得には、外部機関の保健指導メニューについての情報を広く集めるとともに、保険者

    間の情報交換や、地元大学等の学識経験者、研究者等と委託先の事業内容について評価、分析を行う等の方法も考

    えられる。

    (3)他の保険者及び地域専門職団体等との連携による人材確保と人材育成他の保険者との情報共有及び専門職養成機関や医師会・医療機関、看護協会、栄養士会、健康運動指導士会、在宅

    保健師会等の専門職能団体、民間等の健診事業者・保健指導事業者との情報交換を通じて、新たな人材を確保するた

    めの方策や技術力を高めるための研修方法等を検討することが求められる。

    各専門職団体等では、必ずしも特定健診・特定保健指導に関する情報を十分に有していない可能性もある。また団

    体として人材の輩出や育成に関与しようという考えはあっても、具体的な道筋がつかず試行錯誤の段階に留まってい

    ることも推測される。

    一方で、特定健診・特定保健指導の実施規模は、実施率が上がるほどに従来の基本健診と比べ事業規模を拡大する

    ことが見込まれ、そのための人材確保が必要となってくる。これにより、年度ごとに新たな専門職が特定健診・特定

    保健指導に加わることが想定され、専門職の実施技能に関する質の標準化を図るための仕組みづくりも重要な課題に

    なるといえる。

    →「保健事業実施のための手引書」13頁参照

    事例事業における取組み例・医療機関における保健指導の内容と質をそろえるために、CD-ROMによる学習教材を用意して医療機関に配布した。また、医師会での研修の受講を義務付けた。(北九州市)→ 第3章67頁参照

    9

    WIC-16

  • (4)地域組織、住民組織の育成と活用特定保健指導期間内で専門職が、対象者と直接かかわることができる回数は限られている。このような条件下で生

    活習慣改善の効果を高めるためには、対象者が暮らす地域において活用できる健康づくり施設などの情報の提供、仲

    間づくりに関する支援が有効であると考えられる。具体的な方法としては、健康活動等を継続するための仲間づくり

    組織の育成、調理体験、学習会等が考えられる。

    こうした組織の育成は、地域の健康づくりへの意識向上につながり、特定健診・特定保健指導の参加者を増やすた

    めの取組みにつながるものと考えられる。このようなことから、既存の組織の有効活用と新たな自主グループ活動の

    育成、ボランティアリーダーの養成等が必要であると考えられる。

    また、特定健診・特定保健指導の対象年齢者のみならず、生活習慣病の一次予防は、20歳代・30歳代や学齢期の

    児童等の幅広い年代層に働きかけるための人材を育成していくことも重要であると考えられる。

    →「保健事業実施のための手引書」52頁参照

    事業の特徴的な展開方法

    特定健診・特定保健指導の具体的な事業展開は、事業のねらいとするところ、市町村国保のおかれた状況、地域の

    事情等により多様な形態が想定される。

    今回、調査を行った事例をもとに特徴的な事業展開に着目すると、特定健診・特定保健指導の基本的考え方など大

    枠にかかわるものとしては、国保の立場から“まちづくり”的な発想で事業展開を図る国保、地域産業の活性化にも

    資する展開を進める国保などがあげられる。このような大きなねらいを定めると、庁内関係部署との調整が必要とな

    るが、相手部署にもメリットがあることから協力が得られやすくなるという利点がある。

    保健指導プログラムの内容や実施体制に関するものとしては、健診受診者全員の保健指導への誘導を志向する国保、

    モデル地区を設定して少ない経営資源を重点投入する国保などがあげられる。いずれも方法論は異なるものの、地域

    の事情の中で最大限の事業効果を得ようとしている。また、④(4)でも述べたように特定保健指導プログラムに小

    グループからなる仲間づくりを取り入れると期間中や終了後の保健指導の効果の継続に有効と考えられ、ポピュレー

    ションアプローチも兼ねて多様なイベントや取組みが併行して実施されている。

    事例事業における取組み例○地域づくりを意識した保健指導・参加者が地域で健康活動の核となるように、参加者の自己効力感が高まるようなプログラムを実施するとともに、活躍の場として“2008笑顔がいちばん 元気にちなんフェスタ”を開催した。(日南市)→ 第3章26・30頁参照○地域産業の活性化に配慮して地元企業の協賛を獲得・株式会社TMO(Town Management Organization:中心市街地活性化をめざすまちづくり機関)などに協力を依頼し、「頑張る尼崎市民を応援するサポーター企業(協賛企業)」を募集し、協賛企業を市民に紹介した。(尼崎市)→ 第3章56・57頁参照○保健指導の全員実施・健診受診者全員に対して保健指導を実施した。そのために、健診受診の際に指導実施日を予約するようにした。(尼崎市)→ 第3章55頁参照

    5

    事例事業における取組み例・運動教室を各地域で広範囲に実施するために、中核となる人材としてボランティアを育成する事業を実施した。(太田市)→ 第3章50・51頁参照・プログラム終了者が、地域でリーダーとして活躍できるよう、活躍の場と機会を設けた。(日南市)→ 第3章29・30頁参照

    10WIC-17

  • 受診率、実施率、継続率の向上

    (1)受診率特定健診の受診率向上を目指し、各保険者で様々な取組みがなされているところである。とりわけ壮年期の被保険

    者は、時間的制約等により受診率が高まりにくい傾向にある。

    今回の事例では、確実に受診率を高めていくための方策として、1)受診勧奨方法の工夫(広報誌をはじめとする

    媒体、配付方法、情報提供機会の検討(駅、飲食店、小売店等の住民の目につく公的施設への掲示、子ども会、老人

    クラブ、地域のお祭り等での広報))、2)農協や商工会、地区組織等に対する組織的働きかけ、3)受診機会の拡充

    (時間帯、実施場所)等があげられる。また、健診結果をできるだけ早く対象者に通知することや、その結果通知と

    併せて助言、指導を行い受診の動機づけを行う等の方法も考えられる。

    (2)実施率特定保健指導の実施率は、初年度であり、特定健診・特定保健指導の実施体制づくりに時間を要したことや必ずし

    も十分ではなかったこともあり伸びなかった面がある。今後は、実施率を高めるために、国保ヘルスアップ事業を通

    じて培われた先行的なアイディア等を活用して積極的な取組みが期待されるところである。

    今回の事例による具体的な取組みとしては、1)勧奨方法の工夫、2)特定健診終了後から保健指導開始までの期

    間短縮の工夫(対象者の関心を維持するため)、3)指導実施機関(実施場所、時間帯、保健指導プログラム等)の選

    択可能性の確保等があげられる。

    事例事業における取組み例・(従来の基本健診は集団形式のみであったので)かかりつけ医での個別健診を加え、曜日・時間帯を選べるようにした。また、医療機関や商業施設にポスターを掲示したり、モデル地区を設定して職員が戸別訪問して健診受診を促した。(宜野湾市)→ 第3章43~45頁参照・地域集会場等にて巡回健診を行うとともに、駅ターミナル、本庁舎でも健診を実施している。実施時間帯も、土日・祝日・早朝にも受診できるようにしている。(尼崎市)→ 第3章54頁参照・特定健診実施の協力を得る医療機関に、市で作成した特定健診マーク(ステッカー)を配布して市民へのアピールができるようにした。また、農協、漁協に協力を依頼して集団健診も実施した。(北九州市)→ 第3章66・69頁参照

    6

    ○モデル地区の設定・モデル地区を設定し、職員が50歳代を対象に戸別訪問して健診、保健指導への参加を促した。(宜野湾市)→ 第3章45頁参照○仲間づくり・5~6人のグループワークで目標設定などを行った。いろいろな人の様子がわかること、定期的に顔を合わせることが継続に奏効した。(軽米町、日南市)→ 第3章23頁、29頁参照・グループ支援を多く取り入れたコースでは、プログラム終了後の自主グループ化につながりやすかった。(倉敷市)→ 第3章64頁参照・仲間づくりが有効と考え、運動施設にて集団運動教室を実施したり、レクチャー形式の栄養教室をワークショップ形式に変更したりした。(御坊市外三ケ町)→ 第3章32頁参照○多様な企画事業を併行実施・メタボ川柳の募集、「健康くらしき21」の一環で考案した健康マーチの普及など、様々な企画を並行して実施した。(倉敷市)→ 第3章64頁参照・保健指導終了後も修了者が自ら運動実践を継続できるように、水中エクササイズコースを増設した。(宜野湾市)→ 第3章43頁参照

    11

    WIC-18

  • (3)継続率継続率には2つの意味がある。第1に特定保健指導受診者が、最終指導期間まで指導を継続して受けた率(以下、

    指導継続率)、第2に特定保健指導終了後も生活習慣改善が維持・継続されている率(以下、生活習慣改善継続率)で

    ある。

    →「保健事業実施のための手引書」43頁参照

    ①指導継続率

    指導継続率は、特定保健指導の評価指標として重要な視点の1つといえる。実施時間、場所の工夫、対象者の動

    機づけ、指導効果の向上を目指した様々な工夫が求められる。

    ②生活習慣改善継続率

    特定保健指導の最終的な目的は、対象者が獲得した生活習慣を自らで指導終了後も維持、継続していくことであ

    る。このためにはフォローアップ活動の充実、ポピュレーションアプローチとの連携等の方法が求められる。

    事例事業における取組み例○資料、ツールの工夫・ヘルスアップ通信を作成し、支援レターと一緒に送付した。(御坊市外三ケ町)→ 第3章34頁参照・自己実践コースと個別相談コースにおいて、保健指導期間中に起こりうるつまずきを想定したアドバイスを掲載したヘルスアップブックを作成して配布した。ヘルスアップブックには、自分をほめたり、言い訳を書くコーナーも用意し、セルフマネジメントしやすいように工夫した。また、通信コースの配布資料には、各種情報提供を載せるコーナーを設けた。(宜野湾市)→ 第3章45頁参照・改善に成功した人の体験談を聴く機会を設けたり、グループワークを取り入れ仲間づくりを進めたり、行動や意識の変化を客観的にみえるように工夫をした。(倉敷市)→ 第3章63頁参照○具体的な目標設定・“腹囲を○○cm減らす”ではなく、“ファスナーを自分で上げられるようにする”など、具体的かつ親しみを持てる目標を設定した。(御坊市外三ケ町)→第3章34頁参照・対象者自身により具体的な目標設定(例えば、腹囲3cm減少とか体重3kg減少ではなく、達成したら○○するなど生活や趣味にまで落とし込んだ目標設定)ができるように誘導した。(倉敷市)→ 第3章63頁参照

    事例事業における取組み例○資料、ツールの工夫・保健指導対象者に送付する通知の文章を、受領しても否定的に受け止められないように配慮した。(日南市)→ 第3章30頁参照○保健指導の迅速な開始・健診実施1ヵ月後に保健指導を実施できるよう工夫し、利用者の動機付けに配慮している。(日南市)→ 第3章25頁参照・検体検査機関の協力を得て、特定健診の結果を2週間以内に受診者に返すようにしている。(北九州市)→ 第3章66頁参照○プログラムの選択可能性の確保・通信プログラムや出前プログラムなどによる保健指導コースを用意し、対象者の選択可能性を確保するとともに、親しみを持てるコース名をつけてアピールした。(軽米町、宜野湾市、倉敷市)→ 第3章18頁、44頁、62頁参照・セミナー、教室などは、同じ内容のプログラムを、2日間もしくは午前・午後・夜間など複数用意し、選択できるようにした。また、家族ぐるみの参加を促したりした。(軽米町、太田市、倉敷市)→ 第3章17・22頁、49頁、63頁参照

    12WIC-19

  • アウトソーシング(外部委託)の展開方法とその課題

    (1)アウトソーシング(外務委託)の活用特定健診・特定保健指導の実施に当たり、今後の事業規模の拡大に対応するために、地域によっては、民間事業者、

    公益団体等にアウトソーシング(外部委託)することも考えていかなければならない。

    アウトソーシングには、メリットとデメリットがある。それらを整理すると下記のようなものが考えられる。

    アウトソーシングを行う場合は、以上を踏まえて、デメリットを最小限にとどめるべく、対応方針をあらかじめ考

    えておく必要がある。

    →「保健事業実施のための手引書」53~56頁参照

    事例事業における取組み例・アウトソーシングは、対人コミュニケーション(参加者のひきつけ方)や見やすい教材などに学ぶことがあった。(軽米町、君津市、太田市)→ 第3章22頁、38頁、50頁参照・(行政と民間事業者という立場の違いから)地域特性の指導への反映、評価の考え方、緊密な連携の保持等に課題があった。(君津市)→ 第3章38頁参照・行政側の保健師、管理栄養士等と外部委託先との連絡調整をいかにスムーズに行うかが課題である。(御坊市外三ケ町)→ 第3章35頁参照

    メリット

    デメリット

    ・内部資源(人材、施設・設備など)では対応困難な取組みが実現できる。

    ・接客サービスの観点から、自治体では難しいとされる利用者志向の取組みを実施できる

    ことがある。

    ・費用対効果をより意識した事業運営が図れる。

    ・事業の趣旨や発注者の意向、プログラムのコンセプトが十分に伝わらない場合がある。

    ・調整にかかる時間、負担が増大する可能性がある。

    ・行き過ぎた価格競争におちいると、サービスの質の低下が考えられる。

    7

    ○きめ細かなフォロー・通信コースの場合、行動記録が送られてきたら1日以内に返事を出した。また、通信以外に来所や電話でも相談を受けられるようにした。(宜野湾市)→ 第3章45頁参照・実践記録票に支援スケジュールを明記しておくとともに、教室終了後にすぐ次回の予約をとるようにし、教室開催日の直前に連絡をとった。また、教室開催日の前のタイミングに栄養指導やグループ面談をあててはげましを行った。(太田市)→第3章51頁参照・教室終了後に電話でその後の取組み状況の確認や次回教室の案内を行った。(倉敷市)→ 第3章63頁参照○継続に向けたフォロー・保健指導終了後に白紙の実践記録票を1枚配布しセルフモニタリングを促した。(太田市)→ 第3章51頁参照

    ・プログラム終了後も健康行動の継続に向けた自主グループ化が図れるように、地域の関係組織団体等と連携して人材育成研修会やフォローアップ教室を開催した。(日南市)→ 第3章29頁参照・事業終了後も電話等で終了者のフォローを行っている。(御坊市外三ケ町)→ 第3章34頁参照

    13

    WIC-20

  • (2)事業者の適切な選定と活用方法事業者の選定に当たっては、下記に留意することが求められる。また、保健指導等の実施者の人員基準、施設基準、

    留意事項については、「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」についても参考にされたい。

    →「保健事業実施のための手引書」56~66頁参照

    具体的な選定手続きは、①募集要項と仕様書の作成、②事業者の募集、③説明会の実施、④選定、⑤契約という手

    順をふむ。選定に当たっては、事務部門(例えば国保部門)のみならず、実施部門(例えば衛生部門)や現場の専門

    職を加えた選定チームを作ることが望ましい。また、選定チームにて、選定に際し注目する事項と期待水準について

    協議し、あらかじめシートに整理しておくべきである。

    事業者の選定後は、事業実施を委託事業者にまかせっぱなし(いわゆる丸投げ)にならないよう、①業務全体の目

    的の共有化、②詳細な役割分担、③達成水準等に関する共通理解等に努める。また、委託した事業が円滑に遂行され

    ているか、機に応じて事業の実施状況や実施内容を現場にて確認し、必要な修正を行うことが必要である。

    2 外部委託に関する基準の詳細は、「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」(厚生労働省保険局、平成19年7月)55~60頁を参照のこと。

    事例事業における取組み例・実施する教室ごとに事業者をモニタリングする担当保健師を置き、保健指導技術の質の維持を図るとともに、ノウハウの移転を図った。(太田市)→ 第3章51頁参照・事業開始前に、行政として目指す方向や保健指導にかける思いや考え方などをしっかりと伝えた。また、事業進捗状況について日常的に情報共有を図るよう努めた。(軽米町、日南市)→ 第3章22頁、29頁参照

    項目

    事業者の規模

    実績

    人員

    施設または設備

    保健指導の内容

    情報の取扱い

    運営

    継続性確保

    利用勧奨

    評価

    その他特徴的事項

    評価事項

    資本金、人員数

    特定保健指導の実績

    類似事業の実績

    業務統括者、面接者、実践的指導実施者

    部屋、設備、緊急対応マニュアル、受動喫煙防止措置

    マニュアル整備、科学的根拠、柔軟対応、学習教材

    プライバシーマーク、保管、管理、情報システム対策

    利便性配慮、迅速対応、財務基盤、苦情対応

    脱落者防止策

    終了後の継続性確保策

    利用勧奨策

    評価方法

    特徴的事項

    評価内容、理由 評定

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    優・良・可

    事業者

    実施体制

    特徴

    費用

    選定シートの例

    事業者選定のポイント○委託業務の目的の明確化、仕様と期待する役割、水準の提示○委託先の「人員体制」「施設・設備」「精度管理」「情報の取扱い」「運営」(以上、特定健診)、もしくは「人員体制」「施設・設備」「特定保健指導の内容」「情報の取扱い」「運営」(以上、特定保健指導)について、求める水準を満たしているかの確認2

    ○委託先における保健指導実施スタッフの技術レベルの確認○委託先との連絡、打合せの方法、規模についての確認

    14WIC-21

  • 3

    15

    第3章事例紹介

    事例の概要

    本章に掲載した事例は、平成19年度国保ヘルスアップ事業特別加算実施の市町村国保の

    中から、事業実施状況報告等を参考に、保険者の規模や地域が偏らないように考慮しつつ、

    以下の視点に基づいて選定したものである。

    1)効果的な保健指導プログラムを行っている

    2)保健指導プログラムの効果をあげるために特徴的な工夫がみられる

    事例は、自市町村と同じくらいの規模の国保の取組みを参照しやすいように、人口規模の

    小さい順に掲載されている。

    参加率 プログラムにて実施される事業の延べ実施回数(回数×実施者数)に占める実

    施者の延べ出席回数の百分率(参考資料82頁参照)

    終了率 プログラムの実施者数に占める終了者数の百分率(参考資料83頁参照)

    変化率 保健指導実施前の数値を100%とした場合の、実施後の数値の増減量を百分率

    で示したもの(参考資料83頁参照)

    岩手県軽米町宮崎県日南市和歌山県御坊市外三ケ町千葉県君津市沖縄県宜野湾市群馬県太田市兵庫県尼崎市岡山県倉敷市福岡県北九州市

    人口(人)

    11,079

    42,848

    49,303

    90,194 91,486

    218,981

    461,120

    472,611 982,718

    被保険者数(人)

    4,905

    13,511

    23,237

    36,057 38,666

    64,841

    180,135

    157,054

    370,759

    保健指導実施体制

    一部委託

    直営

    一部委託

    一部委託

    直営

    一部委託

    一部委託

    直営と委託*

    委託

    参加率

    70.0

    94.5

    59.4

    72.5~100.0

    91.3

    60.0

    60.0~88.0

    78.4

    終了率

    100.0

    100.0

    95.5

    78.6

    71.4~89.7

    86.5

    63.0

    76.9~100.0

    76.3

    実施者数

    56

    10

    22

    56

    7~39*

    104

    378

    2~216*

    38

    ポイント数

    180

    500

    380

    310

    200~860*

    280

    260

    190~1040*

    180

    平成19年度国保ヘルスアップ事業

    (*)複数プログラムが用意されているため、プログラムにより異なる。

    WIC-22

  • 岩手県軽米町

    (1)事例選定のポイント○対象者の利便性を高めることを目的に、地域密着型支援(地域資源活用、夜間実施等)によるプログラムの実施

    体制を構築

    ○キッズメッセンジャーによる雑穀(地域特産品)の配布を行うなど、健康増進活動への取組み意識を高めるポピ

    ュレーションアプローチと組み合わせる

    (2)保険者の概要軽米町は人口11千人、国保被保険者数は5千人である。

    (3)平成20年度 特定健診・特定保健指導について 1)実施計画の概要

    特定健診・特定保健指導の平成20年度計画値と調査時点までの実績値は次ページのとおりである。計画値を上

    回るペースの実績者数が示されている。

    人口

    被保険者数

    H19年度

    基本健診受診者数

    11,079人(平成20年4月1日現在)

    4,905人(平成20年4月1日現在)

    うち40~64歳 2,107人、65~74歳 1,334人

    2,421人(うち国保被保険者40歳から74歳1,540人) 受診率43%

    1

    岩手県軽米町

    宮崎県日南市

    和歌山県御坊市外三ケ町

    千葉県君津市

    沖縄県宜野湾市

    群馬県太田市

    兵庫県尼崎市

    岡山県倉敷市

    福岡県北九州市

    男性

    -4%

    -3%

    0~-9%

    -4%

    -3%

    -3~-9%

    女性

    -2%

    -4%

    -4~-5%

    -5%

    -4%

    1~-11%

    男性

    -1%

    -3%

    -7%

    -4%

    -2~-9%

    -5%

    -2%

    1~-10%

    -1%

    女性

    -2%

    -3%

    -5%

    -2%

    -1~-5%

    -4%

    -5%

    1~-6%

    -3%

    事業の特徴

    ○地域密着型支援(地域資源活用、夜間実施等)によるプログラムの実施体制を構築

    ○キッズメッセンジャーによる雑穀の配布を行うなど、ポピュレーションアプローチと組み合わせ

    ○保健指導を、健康づくりの視点からの“まちづくり”として展開○保健指導プログラム終了者が“地域人材”となり、次年度のプログラム展開を主導○広域事務組合で国保ヘルスアップ事業に取り組む

    ○病態分析を行い、各地域の自治会において結果説明会を実施○健診受診率が低い土地柄にあって、通信型など複数のプログラムを用意して参加勧奨を展開○事業を通して翌年度の特定保健指導に向けたボランティア等の人材を育成○国保ヘルスアップ事業としては多人数の事業を実施して良好な終了率をおさめる○被保険者の健康実態分析を行い、地域の実状を考慮して生活習慣病対策を展開○「ヘルスアップ尼崎戦略」を策定し、生活習慣病対策事業を構築

    ○地域企業の協力を得るしくみを企画し、地域産業の活性化にもつながるように工夫

    ○国保被保険者のライフスタイルやニーズに配慮した保健指導プログラムを多数用意

    ○国保ヘルスアップ事業の成果を、他の健診結果と合わせて整理、保管

    ○かかりつけ医に健診・保健指導を委託

    掲載頁

    16頁

    24頁

    31頁

    36頁

    42頁

    48頁

    53頁

    60頁

    65頁

    平成19年度国保ヘルスアップ事業BMI変化率(%) 腹囲変化率(%)

    16WIC-23

  • 2)実施体制

    【直営による特定健診、特定保健指導】

    特定健診、特定保健指導ともに衛生部門が直営で実施している。平成19年度には、運動教室への講師派遣と前後

    のアセスメントの一部を外部に委託していたが、本年度は保健指導のコースを整理するとともにすべて直営とした。

    【昼、夜の2部体制】

    特定保健指導のプログラムは、平成19年度国保ヘルスアップ事業にて実施したものを基本的には継続し、教室

    の開催など「昼の部」「夜の部」を設けて実施している。

    【キッズメッセンジャー事業と組合せ】

    併行してキッズメッセンジャー事業を実施している。これは、児童館、保育園、幼稚園児を対象として健康教室

    を開催し、家族向けにスプーン1杯の雑穀を持って帰ってもらい、保護者に言葉を添えて渡す食育事業である。

    また、特定健診のPRのために、町内の図書館などにメタボ特集コーナーを設けて、書籍やパンフレット、自作

    のメタボ確認テープ等を設置し、住民の関心を喚起している。

    3)平成19年度国保ヘルスアップ事業を踏まえたポイント

    【直営体制の強化】

    平成19年度国保ヘルスアップ事業では、運動教室への講師派遣など、一部を外部に委託していたが、事業を通

    じて特定保健指導の運営や教材作成のノウハウが得られたので、平成20年度は直営体制を強化した。

    【保健指導コースの集約】

    同時に、限られた人員体制による実施効率を考え、保健指導コースを集約した。例えば、動機付け支援と積極的

    支援プログラムの一部の面談、教室を一緒に実施しているが、この形態は運営負担が軽くなるだけでなく、参加者

    のモチベーションにもよい影響があると考えている。また、広報パンフレットに参加申し込み書を付けてFAXで

    そのまま記入して返信できるようにしたり、平成19年度事業の参加者の感想や声を掲載する等、印刷物には細か

    な改善、工夫を施している。

    【昼、夜の2部体制】

    教室を昼、夜の2部体制としているのは、平成19年度事業の参加者アンケートにて、夜の部があったことが参加

    のきっかけや継続につながったとの声が多かったことによる。

    4)平成21年度に向けた展望

    【未受診者を対象とした調査の実施】

    特定健診・特定保健指導の成果をさらにあげるためには、まず健診受診率を高めることがポイントと考えている。

    そこで、平成21年度には、平成20年度特定健診の未受診者を対象として、未受診の理由やどうすれば受診できる

    か等を把握する調査を実施することを予定している。その結果を踏まえて、さらに特定健診・特定保健指導の実施

    方法を工夫していきたい。

    計画値

    実績値

    対象者数

    3,321人

    3,341人

    動機付け

    259人

    228人

    積極的

    139人

    113人

    動機付け65人

    (25.1%)62人

    (27.2%)

    積極的35人

    (25.2%)32人

    (28.3%)

    受診者数

    1,494人(45.0%)1,450人(43.4%)

    特定保健指導特定健診対象者数 実施者数

    平成20年度計画値及び実績値

    17

    WIC-24

  • 【参加率の向上】

    また、保健指導プログラムの個々の教室などの参加率の向上も課題である。課題解決に向けては、当地では教室

    等の実施施設(会場)に通うための交通手段が不足している点が問題であると感じている。

    【フォローアップ体制の構築】

    さらに、特定保健指導を終了した対象者に対するフォローアップ体制をどのように構築するかも課題である。一

    案として、1.5ヵ月に1回程度の頻度で教室を開催してはどうかと考えている。しかしながら、スタッフの負担、

    開催日の増加による他事業への影響など、懸念されることも多い。

    【食育事業との連携】

    キッズメッセンジャー事業は、子どものころからの健康づくりをめざす当町の「健康かるまい21プラン」を実

    現するための方法として、食育事業とも連携しながら継続していきたい。

    (4)平成19年度 国保ヘルスアップ事業について 1)事業概要

    平成19年度基本健康診査の結果をもとに保健指導プログラムを実施した。対象は、平成20年度から開始される

    特定健診・特定保健指導の基準に合わせて、メタボリック症候群該当者(「積極的支援」該当者)及びメタボリッ

    ク症候群予備群(「動機付け支援」該当者)とした。

    特定健診・特定保健指導に準じて以下の基準で対象者を選定し、該当する398名に参加募集を行った。

    ①健康診査の結果、「積極的支援」または「動機付け支援」に該当する者

    ②高血圧症、脂質異常症、糖尿病にて治療中でない者

    ③軽米町国民健康保険加入者

    ④40歳から74歳

    呼びかけ方法は、対象者に案内状を送付するとともに、検査値の高い対象者には電話により参加を呼びかけた。

    保健指導は、「集中指導群」と「通常指導群」に分けて行った。「集中指導群」は、さらに特定健診・特定保健指

    導の階層化に準じて「積極的支援」と「動機付け支援」に区分した。「集中指導群積極的支援」は“やまどりコー

    ス”、「集中指導群動機付け支援」は“こぶしコース”、「通常指導群」は“いちいコース”と名づけた。これらの名

    前は、軽米町に関連した鳥と植物の名前からとったものである。

    「集中指導群」は月1回の指導を行った。指導は集団と個別指導を組み合わせ、テーマを栄養と運動とし、講話、

    実技、グループワークを組み合わせた。「通常指導群」は、健康講話を中心にプログラムを設計した。

    募集参加者

    参加希望者

    参加率

    男性

    女性

    男性

    女性

    男性

    女性

    積極的支援

    99人

    40人

    139人

    28人

    13人

    41人

    28.3%

    32.5%

    29.5%

    動機付け支援

    130人

    129人

    259人

    37人

    44人

    81人

    28.5%

    34.1%

    31.3%

    229人

    169人

    398人

    65人

    57人

    122人

    28.4%

    33.7%

    30.7%

    性・階層別の募集者数及び参加希望者数

    18WIC-25

  • 開校式

    説明会

    第1回

    第2回

    第3回

    第4回

    第5回

    第6回

    10月15日

    10月29日

    11月26日

    1月10日

    ・11日

    2月8日

    3月7日

    3月24日

    実施項目

    オリエンテー

    ション(1)

    オリエンテー

    ション(2)

    運動指導(1)

    個別指導

    運動指導(2)

    栄養指導

    閉講式

    実施内容

    ・医師講話「メタボリック予防教室 メタ防クラ

    ブ」

    ・プログラムについてのオリエンテーション

    ・アセスメント表配布

    ・参加同意取得

    ・プログラムについてのオリエンテーション

    ・アセスメント表回収

    ・自己測定機器取扱説明

    ・食事調査説明

    ・エクササイズ実技

    ・グループ支援(自己測定機器結果提示と自己評

    価)

    ・栄養相談・栄養指導

    ・自己測定機器結果説明

    ・エクササイズ実技

    ・グループ支援(自己測定機器結果提示と自己評

    価、これまでを振り返って)

    ・栄養講話「バランスのよい食事について」

    ・グループ支援(食生活の変化のまとめ)

    ・医師講話「メタボリックシンドロームの怖さ:継

    続は力なり」

    ・事後アセスメント表記入

    ・表彰式

    ポイント数

    グループ

    支援40P

    グループ

    支援40P

    個別指導

    20P

    グループ

    支援40P

    グループ

    支援40P

    (合計ポイント数=

    180P)

    集中指導群(積極的支援)「やまどりコース」に対するプログラムの詳細

    第1回

    第2回

    第3回

    第4回

    第5回

    第6回

    積極的支援

    “やまどりコース”

    180ポイント,6ヵ月

    開講式・説明会

    オリエンテーション

    運動指導(1)

    個別指導

    運動指導(2)

    栄養指導

    閉講式

    動機付け支援

    “こぶしコース”

    開講式・説明会

    オリエンテーション

    運動指導(1)

    栄養講話

    個別指導

    運動指導(2)

    閉講式

    通常指導群

    “いちいコース”

    開講式・説明会

    健康講話(1)

    健康講話(2)

    閉講式

    集中指導群

    事業プログラムの内容(概要)

    19

    WIC-26

  • プログラムに関心をもってもらうために、教室に「メタ防クラブ」という名称をつけて普及に努めた。

    広報チラシを作成する際、参加してみたいという関心を高めるための案内文の工夫点として「あなたが危ない」

    「町が危ない」「国が危ない」というキャッチフレーズをつけた。健康づくりとともに、医療費の適正化についても、

    町民の関心を高めたと考えている。

    開校式

    説明会

    第1回

    第2回

    第3回

    10月15日

    10月30日

    2月12日

    3月25日

    実施項目

    オリエンテー

    ション

    健康講話(1)

    健康講話(2)

    閉講式

    実施内容

    ・医師講話「メタボリック予防教室 メタ防クラブ」

    ・プログラムについてのオリエンテーション

    ・アセスメント表配布

    ・参加同意取得

    ・医師講話「メタボリックシンドローム予防のために」

    ・アセスメント表回収

    ・グループ支援(自己目標の作成)

    ・医師講話「お腹の脂肪と動脈硬化」

    ・グループ指導(これまでの振り返りと今後の過ごし方)

    ・医師講話「メタボリックシンドロームの怖さ:継続は力なり」

    ・事後アセスメント表記入

    ・表彰式

    通常指導群「いちいコース」に対するプログラムの詳細

    開校式

    説明会

    第1回

    第2回

    第3回

    第4回

    第5回

    第6回

    10月15日

    10月29日

    11月27日

    12月15日

    1月21日

    ・22日

    2月19日

    3月24日

    実施項目

    オリエンテー

    ション(1)

    オリエンテー

    ション(2)

    運動指導(1)

    栄養講話

    個別指導

    運動指導(2)

    閉講式

    実施内容

    ・医師講話「メタボリック予防教室 メタ防クラブ」

    ・プログラムについてのオリエンテーション

    ・アセスメント表配布

    ・参加同意取得

    ・プログラムについてのオリエンテーション

    ・アセスメント表回収

    ・自己測定機器取扱説明

    ・食事調査説明

    ・エクササイズ実技

    ・グループ支援(自己測定機器結果提示と自己評価)

    ・栄養講話「あなたはご存じ? メタボリック症候群の怖さを」

    ・レター支援(自己測定機器結果送付と自己評価)

    ・栄養相談・栄養指導

    ・自己測定機器結果説明

    ・エクササイズ実技

    ・レター支援(自己測定機器結果提示と自己評価)

    ・医師講話「メタボリックシンドロームの怖さ:継続は力なり」

    ・事後アセスメント表記入

    ・表彰式

    集中指導群(動機付け支援)「こぶしコース」に対するプログラムの詳細

    20WIC-27

  • 広報チラシ

    21

    WIC-28

  • 2)実施体制

    本事業は、国立保健医療科学院疫学部の協力の下に、軽米町が実施した。事業の企画及び健康支援プログラムの

    検討は、軽米町と国立保健医療科学院が行った。参加者の募集は軽米町が中心となり、実施に当たっては一部で民

    間事業者の協力を得た。事業結果は、北海道大学大学院医学研究科環境医学分野に評価していただいた。

    事業の外部委託(アウトソーシング)は、住民の目から見れば不安を感じるものなので、本事業では保健指導は

    直営とし、運動教室への講師派遣のみをお願いした。委託先の選定は、県からの紹介や他の自治体の動向を参考と

    し、講義等の現場に行き、自分たちの目で確認して決定した。民間事業者の講師には、参加者のひきつけ方などの

    対人コミュニケーションや見やすい教材の活用法などに学ぶことがあった。

    3)特別加算で実施したこと

    特別加算部分を用いて、以下を行った。

    ①対象者の利便性向上

    同一プログラムを、夜間にも実施(昼2グループ、夜2グループ)。

    ②地域資源を活用したポピュレーションアプローチ

    地域産物である雑穀をリーフレットに添付して配布。

    キッズメッセンジャーを企画、実施。

    ③セルフケア向上プログラム

    体重、腹囲、血圧、血糖値、歩数の自己測定。

    4)受入れ体制構築(地域連携)のポイント

    広報に際して、県立軽米病院、岩手県予防医学協会の協力を得た。例えば、県立軽米病院の協力で夜間の健康教

    室を行っているが、その中で開催される講座で本事業を紹介していただいた。また、岩手県国保医療課、岩手県国